夕映が探偵事務所で資料を読んでいると、外に気配がしだした。だが、一向に入ってこない。
「空いてるですよ」
「お、お邪魔します……」
「夕映~失礼するで~」
「ん」
入ってきたのは3人で、ネギ、木乃香、ルーテシアだった。ネギは不安そうにしているが、残り2人はネギを連れてきたようだ。そんな3人を魔法使いの帽子にYシャツにズボン姿の夕映がお出迎えする。だが、その身長から言って、Yシャツ姿だけにも見える。
「よく来たのです。とりあえずそこに座るのですよ」
「はっ、はい。あの、夕映さんは……」
「ネギ君、とりあえず座ろうや」
「う、うん……」
夕映が試験管とビーカーなどを使ってコーヒーとお茶を沸かす。それも魔法を使ってさっさと入れてしまう。
「はい、どうぞなのです」
「やっぱり夕映さんは……」
「夕映も魔法使いなん?」
「そうなのです。いえ、正確には魔法使いでもあるという事なのですが」
「一般人に話しては駄目なんじゃ……」
「一般人などこの場に居ないのですよ」
「え?」
「うちもそうなん?」
「木乃香……ここは貴方のお祖父様の学園ですよ。敢えて言うなら貴方は関西呪術協会のトップの娘なのです」
「……普通の神社やなかったんやな……」
「ルーテシアに関しては我々がネギ先生の為に(超から)依頼されてクローン技術で作り上げた過去の英霊です」
「ええ!?」
「そうなんや……」
あっさりとミスリードも含めつつバラす夕映。
「それで、何用ですか? まあ、大方昨日の事件ですか」
「しっ、知ってるんだ……」
「ええ、英雄の息子がボロ負けしたという不祥事なのです」
「あうっ!?」
「夕映は勝つ方法知ってるん?」
「ええ、もちろんなのです。至極簡単な方法なのです。ルーテシアと木乃香をネギ先生のパートナーにすればそれだけで勝てるはずなのです」
「そっ、そうなんですかっ!?」
「ええ。ルーテシアの力は今、魔力不足で1%も発揮できてないのですから」
「ん~るーちゃんの力があれば勝てるんやね。うちも入れば確実なん?」
「木乃香のサポート能力があれば確実でしょう。という訳で、さっさと契約するのです。そうすればネギ先生の問題も片付くのです」
「問題……?」
ネギ本人はあまり自覚していないが、有り得ない問題点が存在する。
「魔力暴走。くしゃみで武装解除を発動させるなど半人前どころか、魔法使いとして失格なのです」
「っ!?」
「この麻帆良に来てからネギ先生がオコジョにされるに値する事を既に数十回行なっているのです。わかりますか? 貴方が英雄の息子というだけで免れているだけなのです。つまり、親の七光りなのですよ」
「言い過ぎやで」
「うっ、うぅ……」
「ですが、これは事実です。お陰でルーテシアに要らぬ機能まで付けるハメになったのですよ」
「私には契約者の魔力コントロール機能が追加されている」
「つまり、簡単に言えば初心者用ロッドから超一流まで対応できる最高級品なのですよ、ルーテシアは」
「でも、クローンとはいえ、人なんやよね?」
「人ですよ。人間、という括りを些か逸脱はしておりますが、私達はルーテシアを人間として認めても居るのです。なので、自由意志でネギ先生と契約するかは決めさせるのです」
「ん、契約、大丈夫」
「だそうです。すくなくともルーテシアと契約は問題ないでしょう。これも真のマギステル・マギになるために必要な事です。貴方も自力でお父様のようになりたいでしょう?」
「う、うん……わかった。契約するよ。その、木乃香さんもお願いできます?」
「うちは……」
「木乃香もいずれは政略結婚させられるのです。なら、今からネギ先生を好みに育て上げれば……」
「光源氏計画やん!」
夕映が木乃香に悪魔の囁きを行う。それに加えて飲み物などにも色々と仕込まれている為、木乃香もすんなりと受け入れていく。
(木乃香、木乃香はネギ先生とくっつくのは未来では確定していたのです。なら、逃れられない木乃香にとって幸せな道は無理矢理にでも作成させてもらうのですよ)
「では、契約の儀式をするのです」
夕映がパンッと手を叩くと本契約の魔法陣が作成される。仮契約の魔法陣など見た事のないネギ達にとって、夕映の行っている事をしるよしもない。
「では、まずは木乃香とお願いするです。ネギ先生」
「わかりました。木乃香さん」
「ん、緊張するけどええで。なんかええ気分やし」
「では、キスしてください。唇ですよ」
「わかったで。ネギ君」
「木乃香さん……」
2人が魔法陣の上でキスをする。そして、本契約が終了し、木乃香の元に彼女のアーティファクトが送られる。その力は仮契約時よりも遥かに強力で、数分の間全回復が、数週間までという圧倒的な出力となって現れていた。
「では、次にルーテシアとお願いするです」
「はい」
「ん」
ルーテシアは直ぐにネギとキスをする。魔力パスが繋がり、膨大な魔力がルーテシアに流れ込む。しかし、それを見た夕映の表情は不満げだった。何より本来でるはずの物が出ていないのだ。
「ちっ、推定以上に出力が足りないのです。流石は神話生物なのですか……」
「な、何か間違ってましたか?」
「いえ、こちらの想定外だっただけです。しかし、足りないのならば増やせばいいのです。木乃香、魔法陣に入って同じようにルーテシアとキスをするのです」
「それでええのん?」
「3人でパスが繋がり、より魔力の効率が良くなるはずなのです」
「わかったで」
「木乃香、する」
2人がキスする事により、木乃香を増幅器として木乃香の魔力とネギの魔力が混じり合い、ルーテシアに流れ込む。その魔力を更にルーテシアが増幅してネギに送って改めて木乃香へとアスラクラインのようなシステムが構築され、無尽蔵に魔力が高まっていく。それにより、木乃香とネギに変化が現れる。
「痛っ!?」
「な、なんや、右手が痛いでっ!?」
「ぼ、ボクは左手が……つぅっ!?」
「「ぁあああああああああああぁぁぁぁっ!!」」
2人の手には令呪が刻まれていた。正確には姿形が同じなだけで別物ではある。溜め込んだ魔力により超常の現象を巻き起こす増幅装置という意味では同じだが。
「ああ、安心してください。それはいわばブースト装置なのです。これでネギ先生と木乃香はパートナーとなり、ルーテシアは2人のサーヴァントとなったのです」
「そ、そうなんですか?」
「その1画ごとに強大な強化をルーテシアに与えられるのです。ルーテシアは通常でナギ・スプリングフィールドとまともに戦える程度の戦闘能力は持ち合わせているのですが、令呪を使えば軽く超えていくのです。ああ、ネギ先生と木乃香、ルーテシアの3人が揃っていれば端的に言って、超一流でも簡単に倒せるのです。クレイジーな存在以外は、という限定はつきますけど(私とか」
夕映の説明を受けて納得するネギ。それ程までに現在の3人の保有する魔力量はかなりの物となっている。既にネギの数百倍の魔力量が生み出されて令呪へと変えられている。その膨大な魔力を学園に居る魔法関係者の中でも一部が感じていた。夕映の結界を超えて感知されるほど強大なのだ。
「さて、そろそろいいのです。解除するのですよ」
「了解」
ルーテシアが増幅をやめると元の状態まで落ち着いていく。ルーテシアのスペックを十全に稼働させるだけの魔力は溜まったのだ。
「さて、ネギ先生。ルーテシアは石化の魔眼を持っていたりするので使用上の注意はしっかりと覚えるのです。それと戦闘経験はあまりないので気を付けるのですよ」
「わ、わかりました……」
「まあ、石化も木乃香に治して貰えば直ぐでしょう。お二人はルーテシアの攻撃の対象外になるはずなのですが、油断はしないように。試作品なので不具合は必ずある、と思うのです」
「わかったで」
「はい」
「平気。2人は守る」
愛衣と再戦する為に得た力は強大だが、色々と危ない存在に力を借りた事を知らない2人。魔王は代価を求めるのだから。
(ペガサスの召喚は期待できるのです)