ルーテシアの魔眼が発動する。彼女の魔眼は最上位と呼ばれる金剛石級の石化の魔眼キュベレイ。抵抗力がC以下の者を石化し、Bでも条件次第で石化する。たとえ石化しなくとも全ての能力を1ランク低下させる重圧の負荷を与える。この効果は距離を置くと薄れるが、ルーテシアが認識せずとも相手がライダーを認識しただけで石化が始まるというとんでもない物だ。
『誰アルカ! こんなとんでも仕掛けた奴は!』
『お前だ馬鹿者が!』
『こっちまで石化が来るとは……凄いのです。まあ、レジストは余裕なのですが』
『まあな』
『ヘルプヘルプあるよ!!』
『私達はそんな事できませんから!!』
『ち』
遠くの見学者達も魔眼の影響を受けてしまう。夕映とエヴァンジェリンは楽にレジストするが、ハカセと超はそうはいかない。ハカセは完全な石化へと向かい、超は部分石化だ。その為、エヴァンジェリンと夕映がレジストしていく。では、愛衣はというと……
「これは……面倒ですね」
黄金色にか光り輝く炎の浄化の力で防いでいた。天馬に乗り、超高速で炎を迂回しながら突っ込んでくるルーテシアに対して愛衣がとった方法は非常に簡単だ。
「早すぎて追えないのなら、全方位攻撃をすれば問題ありません!」
ほぼ隙間なく無数の炎弾を生み出してばら撒く愛衣。大精霊と融合しているからこそできる荒業である。普通なら魔力が瞬時に枯渇してしまう。そして、これはもう一つの効果を得られる。それは――
「うわぁァっ!?」
「や、やばいってこれぇ!?」
「くっ!」
――全方位攻撃。ルーテシアを相手に手加減という言葉を抜け落ちかけている愛衣が放った攻撃は当然というか、ネギと木乃香にもその身を焼き尽くさんと襲いかかるのだ。炎弾一発一発が既に上級魔法に匹敵する威力まで跳ね上がっており、ネギの持つ魔法で防御しようにも数秒も持たないといった無理ゲー状態だった。もちろん、ルーテシアがカバーに入って2人を鎖で巻き上げて天馬に乗せて避ける事で事なきを得た。
「速度が鈍りましたね?」
「なんや、滅茶苦茶嫌な予感がするんやけど……」
「僕もです」
「……危険度増大。撤退を進言」
「逃げましょう!」
急いで逃げるネギ達。だが、逃がしてもらえない。
「えっと、どこにいこうというのだね~」
「あ、ラピュタやね」
空高くに描かれた真紅の巨大な魔法陣に膨大なエネルギーが収束される。
「旧約聖書に刻まれしソドムとゴモラを焼き払った天の火、またはインドラの矢と呼ばれし一撃をその身に受けて……」
ぐるぐる目になりながら愛衣は口走っていく。それはもう危険な事を。どうやら魔眼のレジストに部分的に失敗して混乱状態のようだ。
『おい、これはやばいんじゃないか? 坊や達が消し飛ぶぞ』
『流石にこれは……麻帆良結界と私達が張った結界も消し飛ぶのです』
『やばいアルなー。完全にイってるアルよ』
これはまずいと動き出す監視者達。だが、同時にネギ達も動き出そうとしていた。
「なんや方法はないん?」
「ある」
「あるんですか?」
「……危険な賭け。接近しないと無理」
「やりましょう。このままだと大変な事になります。どうにかできるなら、僕達がするべきです」
「ネギ君……」
「ごめんなさい、木乃香さん。し、死んじゃうかもしれませんけど……」
震えるネギを木乃香が優しく抱きしめる。
「あっ……」
「大丈夫やよ。うちは2人を死んでてるからな」
「ん」
「はい。ルーテシア、お願いします」
「頼むでルーちゃん!」
「了解。固定する」
鎖で自身の身体と天馬にネギと木乃香の身体をしっかりと抱きしめる。それから急上昇していく天馬。
『お? 何かする気か?』
『まあ、彼女達の、ルーテシアの取れる手段は一つなのですけどね』
『宝具アルね』
高高度に上がったルーテシアは急降下して愛衣を目指す。当然、迎撃するように放たれる炎弾に突撃していく。
「騎兵の手綱(ベルレフォーン)」
宝具を発動させて天馬の能力を底上げし、時速400~500kmという猛スピードで、流星のごとき光を放って突貫していく。
「風花(フランス、 風障壁(バリエース・アエリアーリス)最大(マーキシム)!!!」
物理的な10tトラックの衝撃クラスから身を守ることができるこの魔法をネギが使い、斜めに配置する事で物理的な風の壁を作り炎弾の直撃を防ぐ。
「……だめ、速度が足りない」
「そんな時はこれやね! 礼呪を持って命じるで。ゴーや!」
木乃香が礼呪を使った事で膨大な魔力を得た天馬が更に加速する。数倍に膨れ上がった速度にネギと木乃香はルーテシアに守られているとはいえ、抱き合って震える。
「……完成。掃射開始です」
そう愛衣が呟いた瞬間。天馬が愛衣の横を駆け抜けてくる。それを愛衣は回避する。通り抜けた天馬は地面にクレーターを作成しながら着地する。
「無駄なあがきですよ……」
「そうでもない」
「え? って、なんですかこれ!?」
触手のようなものが伸びた眼帯が愛衣の頭部を覆い尽くし、強制的に眼帯を装着させる。
「自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)」
石化の魔眼キュベレイを封じる強力な幻術結界であると同時に、相手の能力発露も封じる事が出来る対人宝具というチートな能力を持つ。では、能力の発露を封じられた愛衣はというと、炎を消して落ちて来る。そもそも、精霊王と融合しているとはいえ半分人間であり、精霊王の権限が一部封じられた事になる。
「炎がでない……取れないですよ……」
「これで形勢逆転ですね」
「くっ……そうですね。でも、まだ……」
愛衣はくるくると箒を回して構える。それはまるで見えているかのようにネギ達の方向を向いている。
「戦えないって訳じゃありませんよ。ちょっと1%以下の力しか出ないだけです。それに――」
懐からカードを取り出す愛衣にネギ達は愕然とする。
「仮契約カード!?」
「愛衣ちゃんもしてるんや……」
「人数には人数を。私並の人を呼び出せばいいだけです。という訳で……先生、お願いします?」
「いや、疑問系ちゃうって」
呼び出されるのは巨大な存在。人間ですらなく、動物でもない。それは幻想種と呼ばれる中でも最強クラスの存在。
「ど、ドラゴンーーー!?」
「はい、ドラゴンちゃんですよ。かわいいペットです」
「でも、機械系も含まれてんねんな」
「魔改造されてます。では、ご紹介します。黙示録の赤い竜ことレーちゃんです」
可愛い名前をしているくせにその凶悪さはやばいに尽きる。世界は違うが某ブーストなドラゴンさん並だ。しかも、所々機械類が埋め込まれて強化されている。
「さあ、行きますよレーちゃん!」
呼ばれたレーちゃんは大きな口を開いて愛衣を――がっぷりと喰った。
「えっ、ええええええええええっ!?」
「あ、まずい」
ルーテシアの言葉は事実をついていた。なぜなら、レーちゃんが光って小さくなると同時に魔法少女のような某エロゲーのジルニトラのような格好をした愛衣が現れたからだ。頭には角が生え、背中には尻尾が。手にははく部分が機械化されて円形となり、中心部に真紅の宝玉がある姿へと変わった元箒。相変わらず眼帯が外れていないのが唯一の救いかも知れないが、危険度はましている。いや、その眼帯すらも――
「ふう、目が見えないのは問題ですね」
額に現れた第3の竜眼によってほぼ無効化された。
「愛衣ちゃん、もう完全に魔物やん。しかも、えっちいな」
「ですよねー。でも、強いですけど恥ずかしいんです」
「って、何にこやかに話してるんですか!!」
「……危険」
「さて、行きますよー」
瞬時に掻き消えた愛衣がネギ達の背後に現れ、杖を振るう。ルーテシアは反応して防ぐがそのまま吹き飛ばされる。そして尻尾で追撃する。ネギ達が当たればひき肉になるのは間違いない。
「はい、そこまでなのですよっと」
「ふぎゃっ!?」
いきなり現れた少女に頭部を思いっきり蹴り飛ばされて吹き飛んでいく愛衣。
「た、助かったんや……?」
「ゆ、夕映さ……ん……?」
「はーい、みんな大好き魔王探偵の夕映さんですよー(じゅるるる」
何時もの変なジュースを飲みながら夕映が現れた。流石にこれはまずいと判断したようだ。
「ね、姉様っ! な、何をするんですか! いきなり女の子の顔に蹴りを入れるなんて!」
「いえいえ、愛衣さんや……誰が、殺せと言ったですか? お仕置きされたいならそう言ってくださいです。マゾな愛衣にピッタリなお仕置きをしてやるですよ」
「ひっ!? ごめんなさいごめんなさい」
頭を抱えて蹲ってガクガクブルブルと震える愛衣。その言葉を聞いて唖然としてるネギ。
「あ、やっぱり夕映が仕込んでたんや」
「YES。その通りなのですよ。まあ、正確には木乃香のお爺ちゃんかの依頼でもあるのですがね。でも、愛衣の演技じゃバレバレなのです」
「まあ、うちもだから安全やと思ったんやけどね。途中までやけど」
「ど、どういう事なんですか!!」
「どうもこうも、ぶっちゃけて言えば弱いくせに天狗になってるネギ先生に身の程を教えて再教育しろって言われただけですよ」
「んなっ!?」
「そんな訳で、仕込ませて貰いました。ちなみに襲われた生徒も全部こっちの手の者なので被害は……ご老体達の仕事が増えたくらいですね」
「沢山の生徒が襲われたって」
「ネギ先生。ちゃんと誰が襲われたか確認しましたか?」
「それはもちろん……あっ」
「そうです。先生が確認したのはあくまでも噂の一部の生徒。それもこちらの身内で噂からしてはほんの一部です。他学年までちゃんと確認しないとだめですよ」
といっても、既に話はイベントとして通してあるのでまともな結果など得られないのだが。そもそも噂事態が操作されているので変だと思う事ができたくらいだろう。
「それじゃあ、僕は……」
「これが実戦なら死んでたのです。こうなる前に自分で解決するのではなく誰かに協力を依頼すべきでしたね。ちなみに愛衣にネギ先生達が勝てるとは最初から思ってませんでした。愛衣はこう見えて……演技はダメダメですが、戦闘能力は貴方のお父様、ナギ・スプリングフィールドクラスは持っています」
「この状態なら多分勝てますよ~」
「だそうです」
「父さんに……」
「ネギ先生、自分の実力がわかったところで、私達の弟子になりませんか? 私達なら直ぐにお父様と同じくらいの力を得られますよ。今ならそれ以上の力を差し上げられます。ルーテシアはその一環ですから」
夕映は天秤のような物を懐から取り出す。弱った少年の心に付け込む様子はまさに魔王だった。
「男の子ならお父様を超えたいとは思いませんか? あの英雄であるお父様を越えるのです。今まで彼の息子として見られて来たネギ先生が真の男として独り立ちするにはお父様を超えるしかありませんよ」
「夕映ちゃ――むぐっ!?」
「おっと、近衛のお嬢ちゃん。今は大事な話中だ」
「そうアルよ」
いつの間にか現れた超とエヴァンジェリンが木乃香を封じる。
「大丈夫です。講師もいっぱいいます。楓さんも私達の仲間ですし、彼女に教えを乞うてもいいでしょう」
「わ、わかりました。父さんを超えられるなら、なんでもします!」
「では、契約するです」
「はい!」
キラキラと輝く瞳で未来を見るネギと対照的に淀んだ暗い瞳の夕映は師弟契約と色々な契約を交わしていく。その事には修行などに関して服従すると見せかけて一切の邪魔を封じる事なども含まれていた。
(ふっ、これくらいのネギ先生はちょろいのです。メガロメセンブリアの老害や学園長には悪いですが、ネギ先生は私の目的の為に貰うですよ。もちろん、木乃香もセットなのです)
(あーあ、ネギ君騙されてもうたなー。まあ、夕映ならあんま悪いようにはせんやろうけど)
そして、契約に使われたこの魔道具は最上級品であり、覆す事は不可能だった。
「あのー私はどうすれば……」
「お前は私と修行だな。何、宇宙空間での修行だ」
「死にます! 死にますから!」
「問題ない。気力で頑張れ」
「鬼ー悪魔ー!」
「どっちもいるな」
「うぅ……」
吸血“鬼”であるエヴァンジェリンと“悪魔”の王である夕映。どちらも正しくただの事実だった。