夕映が麻帆良学園初等部へと入学して数日。相変わらず夕映は図書館島と呼ばれる巨大図書館に篭っている。そんな夕映の一日を紹介しよう。
麻帆良学園初等部は家から通うのも寮に入るのも自由だ。夕映の場合は寮生活となっている。理由は簡単で帰るのがめんどくさいからだ。そんな微妙な所で怠惰な夕映の一日は朝の4時、夜明け前から始まる。朝の4時になると自然と意識が覚醒しだして瞼が開けられる。
(起床を確認するです)
むくりとベッドから起き上がった夕映は軽く身体を動かした後、二段ベッドから出る。下のベッドには誰も居ないので気にせず起き出す。そう、この部屋は2人部屋であるが初等部から寮に入る子はあまり居ない事もあって望めば一人部屋が選べるのだ。といってもこれは入学試験のトップにのみ与えられた特典でもある。
(今日も一日頑張るです)
起きだした夕映はYシャツを脱いで下着だけの姿になり、大量に買ってある運動着(ブルマ)を取りだして着替えていく。着替えが終わると同時に両手両足にブレスレットとアンクレットを装着する。そして、夕映は金色の懐中時計を取り出した。これは首にかけるタイプの物で魔道具だ。
(さて、今日は加重を18倍に設定するです)
蓋を開けた懐中時計にある隠されたメモリを操作して18になるまで操作すると夕映の身体が急激に重くなっていく。これはブレスレットとアンクレットを通じて放たれる重力魔法だ。この重力魔法により均等に身体が鍛えられる。
(ふむ。流石に重いのです。しかし、死にかけから蘇る程戦士は強くなるです。仙豆はないですが、魔法と怠惰による強制回復で肉体疲労は問題無いレベルなので似たような事はできるですし)
そう、夕映は漫画を元にした修行を行っている。これには理由がある。流石にエヴァンジェリンが施した様な雪山サバイバルは歳の関係上不可能なのだ。なので夕映は寝る時以外身体に負担をかけて擬似的な極限状態を作り出す事にしたのだ。もっとも、18倍の重力は気を使わないとまともに動けないレベルだが。
準備の出来た夕映は自室から出て洗面所へと移動する。そこで顔を洗って身だしなみを整えた後、珍妙ジュースシリーズのマンゴーと餡子という物を自販機で購入してちゅーと飲んでいく。
(美味なのです)
明らかに不味そうなジュースを飲んだ後はラジオ体操を行って、走り出す。何時も麻帆良学園を1週する事が夕映の日課だ。しかも、その速度は時速に換算すると20キロの為、子供の癖にかなり早い。大人の短距離走並だ。それでも麻帆良学園は巨大であり、内部に森や島すら内包する為3時間はかかってしまう。普通は走りきる事など不可能だ。ましてや常に一定の速度で走るのだから。もちろん、途中で珍妙ジュースを買って飲みながら走っている。
(今日の朝練は終了なのです)
だが、夕映は走りきる。そして、走った後は急激にお腹が減っている為に直ぐ学生食堂へと向かっていく。学生食堂は朝6時から開いており、麻帆良学園の寮生の朝食を有料で用意している。中等部になると食材を買っておいて、自室で用意する者も居る。だが、小学生にそんな事は許されず強制的に食堂で食事を取る事になる。それも決められたメニューを先ず食べさせられる。
「おはよう夕映ちゃん」
「うむ、おはようなのです」
食堂のおばちゃんの声に夕映は挨拶を返す。今は挨拶を返さない程侵食はされていない事と世話になっている為に多少偉ぶっている子供といった感じだ。
「はい、何時ものね」
「です」
夕映に渡されるのは手押しのワゴンだ。そこには大量の食事が入っている。それを近くの席で受け取って、自分で出しながらひたすら食べていく。それらは大盛りどころか特盛りであり、小さな小学生が食べる量では無い。ましてやそれがワゴンに沢山入っているのだ。
「戴くです」
食事をマナー通りに綺麗に食べていくが、その速度は驚異的なスピードでみるみる減っていく。夕映の暴食は止まらない。
「おかわりなのです」
「はいよ。しかし、よく食べるねー」
「美味しいのでいくらでも入るです」
「それは嬉しいねー」
そして、1時間かけて大量の食事をした夕映は食堂から自室に戻って着替えを持ち、寮にあるシャワーを浴びる。その後、図書館島へと向かう。それからはひたすら読書の時間だ。もちろん、加重は止めていないし、更に増やしている。
数時間が経つとそんな夕映の周りには大量の本が積み上げられていく。そして、そんな夕映を監視している存在が居る。
「先生、そこに居るならこれを持って行って片付けてくれです」
「気づいていたのかい?」
「当たり前なのです。そんな熱い視線を向けられていたら嫌でも気づくのです」
「ちょっ!?」
「しかし、小学生の幼女をストーキングとは教師として、聖職者として問題行動だと思うのです」
「違うから!」
棚の影から出て来た青年の様な教師……タカミチは慌てて声をあげる。夕映の声は周りに利用者達にも聞こえていて、何か汚らわしい者でも見るような視線をタカミチに向けている。
「そこ、違うから通報しようとしない! ただボイコットしている生徒を指導しに来ただけだから!」
通報しようとしていた利用者は携帯を閉じて怪しそうに見ている。
(くっくく、慌てふためいているタカミチは面白いのです)
タカミチで遊びながら机の上に置かれたノートパソコン2台を操作する。片方は株の操作が行われていて、片方はチャットが複数開けられている。そう、夕映は本を読みながら株でお金を稼ぎつつチャットで多数の企業などに得てきた膨大な知識を元に経営コンサルティングを行っている。夕映の記憶力は一切の知識を逃がさないという強い意思の元、強欲を利用して完全記憶能力を再現しているのでこの仕事の評価はかなり高く、支払われる金額も高い。
「それで、何の用なのです?」
「いや、だから授業に出ようね?」
「ふ、あんな低脳な授業に私が出る必要は無いのです。私は高校くらいまでの授業は完全に終了しているです。大学くらいならまだしも、初等部の授業は必要無いのです」
株を操作していた手で机の上に開けられた二つの本のページをめくる。片手で本とパソコンを操作しているのだ。もちろん速読で読んでいるし、片目ずつで別々の本を読んでいる。
「いや、理解しているけどここは夕映君は飛び級する気がないんだろう?」
「無いのです。ここの本を読み切るまではですが」
「なら、授業に出てくれ。それに学校は勉強だけでは無いんだ。友達だって作った方が良いよ」
「必要……」
必要無いと言いかけた夕映はそこで止まった。
(果たして本当に必要無いと言い切れるのです? 確かに造物主が乗っ取ったエヴァンジェリンさん相手では生半可な存在は足でまといになるのです。でも、それは逆に言えば生半可な存在じゃなければいいだけの事なのです。エヴァンジェリンさんには茶々丸さんを始め、数多くの人形達が居ます。それは造物主も変わり有りません。ですが、私には居ません。それを考えると魔法使いとパートナーというのは約に立つです)
元来、魔法使いは呪文詠唱中は全くの無防備であり、攻撃されれば呪文は完成しない。よってその間を守護するパートナーが
「そうですね。確かに友達は必要だと思うのですが、やはり学校に行く必要は無いのです。別に図書館に出入りしている同じ趣味の子と仲良くなれば良いだけなのです」
(そう、どうせ狙うならのどかなのです。のどかこそが私のパートナーの第一候補なのです。それが
夕映の視界には
「いや、だが……」
「くどいのです。私の考えは変わらないのです。それとも、私に合わせて初等部の子達に大学の勉強をさせるですか?」
「そんなのは無理だ!」
「なら、諦めるです。別にテストさえ出れば問題無いと思うのです」
「いやそれは……」
「そんな事よりさっさと本を持っていくのです」
「わ、わかった。だけど、諦めないからね」
(全く、面倒なのです。こっちは中学生までに世界を圧倒する力を手に入れ無いといけないというのに……しかし、そう考えるとのどかの魔改造計画は考案する価値があるのです)
この狂っている夕映にとってのどかは親友であって親友でない存在だ。あくまでもあちらの世界ののどかが親友なのだから。そんな事を考えながら閉館まで夕映は読書を続ける。その後、食事を取って運動を行い、仮想敵である造物主が乗っ取ったエヴァンジェリン相手にイメージトレーニングを重ねていく。それらが終了し、お風呂に入って魔法の開発に取り組んで眠るのが1時だ。そう、夕映は朝4時に起きて翌日の1時に眠りつく。
(しかし、訓練場所にダイオラマ魔法球は早く欲しいのです。その為にはエヴァンジェリンさんと接触するしか有りませんが……現状では危険すぎるのです。少なくともネギ先生の古里が襲撃された後なのです。その時なら、エヴァンジェリンさんやタカミチ相手にもまともに戦えるはずです。まあ、封印状態のエヴァンジェリンさんなら楽勝かも知れませんが、誰にも気づかれずに戦うとなると難易度は跳ね上がるですし。あれ? そういえばなんで隠しているですか? いっそばらしてしまっても……いえ、そうなると師匠の存在が必要ですね。家は一般家庭ですし……いえ、それなら手があるです。そう、私には信じさせられる証拠を出せるのです。ならば、問題は有りませんね。彼が戻った時には既に私は世界最強になっているのですから……)
この夕映の選択はとある魔法使いにロリコン疑惑を浮上させる事になり、後に妻の女性に非道い目に合わされる事が確定した。だが、そんな事は夕映にとっては関係無い事であり、彼女は自由に行動していく。
感想ありがとうございます。ロリコン疑惑を採用させて貰いました。