魔王探偵夕映   作:ヴィヴィオ

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3話

 

 

 

 

 

 夕映が図書館島に篭って数ヶ月の月日が流れた。相変わらず監視されているが、それは夕映も理解しているので魔法を使う時は認識阻害を強化して撒いている。今日も土曜日だというのに何時もの通り、図書館の本を読む為に図書館へと夕映はやって来た。

 

「んー!」

 

そんな夕映の目の前に高い位置に置かれた本を取る為に梯子を登って一生懸命に手を伸ばしている小さな少女の姿見えた。

 

(おや、あれは危険なのです。まあ、私には関係ないのです)

 

夕映は放置して通り過ぎた。そして、少しすると少女の声が聞こえて来た。

 

「きゃあああああああああぁぁぁっっ!!」

 

振り返ると梯子から転落していく少女の姿が見えた。でも、それでも夕映は動くつもりは無かった。無関係の他人などどうなってもいいとすら思い出しているからだ。だが、それなのに身体は勝手に動いてしまった。

 

(何故ですか!? どうでもいいはずなのに!)

 

しかし、距離があって間に合わない。このままでは確実に転落死してしまうと思った夕映は素早く懐から懐中時計を取り出して叫ぶ。

 

制限解除(リミットリリース)!!」

 

コマンドを受けた懐中時計は発動していた重力魔法を解除する。これによって本来手に入れている爆発的な身体能力と気を使って瞬動で接近する。だが、それすら間に合わない。

 

七人の断罪者(アルカンシエル)!」

 

なので夕映は七人の断罪者(アルカンシエル)を呼び出して少女の脇を結晶のような浮遊魔導砲台で押さえて落下速度を落とす。そして直ぐに下に潜り込んでお姫様抱っこでキャッチした。

 

「ギリギリセーフなのです」

「い、今のは……」

「さ、さあ?」

 

少女の目には未だ浮遊している7つの結晶が映っている。そして矢継ぎ早に色々と質問してくる。

 

「はぁ……後で話すとしてさっさと消すです」

 

夕映が指をパチンと鳴らすと七人の断罪者(アルカンシエル)は虚空に消滅した。

 

「す、凄い! 今の何なの?」

「取りあえず、落ち着くです」

「はっ、はいっ!」

 

(よく見ればこの子は見覚えがあるです。はて、どこだったか……しかし、面倒な事になったです)

 

落ち着きだした少女は夕映をしっかりと見る。

 

「では、先ずは自己紹介なのですよ。私は綾瀬夕映です」

「私は宮崎のどかです」

「っ!?」

 

(のどかですと!?)

 

夕映にとっては遥か昔の事であり、幼い容姿ののどかを忘れていた。だが、親友には変わりなく身体が勝手に助けたようだ。本来なら既に2人は出会っていて、今回の様な事故も起こらなかったはずだった。

 

「そ、それでさっきのは魔法なの……?」

 

キラキラした目で見てくるのどか。初等部の少女にとって魔法は憧れであり、テレビや物語の中の話であり夢だ。

 

「ふっ、バレてしまっては仕方無いのです。そう、私は魔法使いです」

「やっぱり!」

 

偉そうに堂々と宣言する夕映。心の中では結構非道い事を考えている。のどかはのどかで尊敬の眼差しだ。

 

(これはチャンスなのです!)

 

「本件は他の人々には伏せることになるです」

 

(事実の隠蔽)

 

「なんで……? 魔法が使えるって凄い事だよね?」

「魔法が世間に知れるとどのような被害が出るかわからず、無用な混乱を引き起こす可能性があるです。特に今回はのどかも巻き込まれるです。それはせっかく助けたのに本末転倒なのです」

 

(印象操作)

 

「で、でも……」

「いいですね。ご家族にも内緒です。それは情報漏洩にあたり、重く罰せられる可能性がある……かもしれませんのでくれぐれもご注意するです!」

「はっ、はいっ!」

 

(脅迫的誘導)

 

「具体的に言うと喋った人には消滅させられたり殺されたりする場合がある……かもしれませんです」

 

(具体例による誘導。これで完璧なのです)

 

実際は記憶操作されて、使用者の夕映はオコジョ行きなのだが、あえて非道い事を言っておいてかもしれないという事をつけて事実ではなくしている。

 

「お、お母さん、お父さん……」

「さて、そんな事を起こさない素晴らしい方法があるですが聞くですか?」

「は、はい!」

「それは長く厳しい道のりなのですが、それでもさっきの件は大丈夫になるです」

「そ、それは……」

「のどかも魔法使いになるのです!」

「な、なれるの!」

「ええ、なれるです。私の言う事を聞いて辛くて厳しい修練に明け暮れた先にですが、確実にのどかを魔法使いにしてみせるです!」

「わ、わかりました! お父さん達に迷惑かけない為にも頑張ります!」

「それじゃあ、改めてよろしくなのです」

「は、はい!」

 

(ふふ、ちょろすぎなのですよのどか)

 

のどかがちょろいのは仕方無い事だ。魔法という超常の力を見せられ、その魔法使いに自分や両親が殺されるかも知れないと誘導され、自分が魔法使いになるしかないと思い込んでしまったのだから。

 

「あっ、でも魔法使いより魔法少女の方が可愛いよ?」

「む、それもそうです。私達の今の年齢ならそっちなのです」

「そうだよね!」

「まあ、この話は置いておいて先ずは読書するです」

「うん」

「のどかが欲しいのはアレですか?」

「そうだよ。シリーズ物なんだけど……」

「わかったです」

 

夕映は梯子を登って本を大量に取って飛び降りる。

 

「っ!?」

 

それに驚いたのどかだが、直ぐになんでもないかのように立っている夕映の姿に逆に憧れを抱く。

 

「では、行くですよ」

「はい!」

 

それから、2人で一緒に読書しながら会話していく。

 

「ねえ、夕映は凄く読むの早いけどどうしているの?」

「速読と言う技術なのです。そうですね、のどかにも覚えて貰いましょう」

「う、うん」

 

のどかに技術を教えていく夕映。それを必死に勉強するのどか。

 

「そういえばのどかは寮生ですか?」

「んー違うよ。家から通ってる」

「なら、寮生になるです。その方が毎日修行できるです」

「でも、お母さん達が許してくれるかな?」

「まあ、これが資料なので渡して聞いてみるです。丁度私の部屋が一人分空いているので訓練には丁度いいのです」

 

夕映はネットから印刷したプリントを近くにあるプリンターから取り出してのどかに渡す。

 

「それと明日は空いてるですか?」

「大丈夫だよ」

「じゃあ、準備するので明日は私の部屋に来るです。そうですね、そのプリントにある寮に来てくれれば大丈夫です」

「うん。わかった」

 

それから夕映は仕事と読書をして、のどかと別れた。のどかが帰った後、夕映はあるファイルを開く。それにはのどか魔改造計画と書かれていた。

 

(計画が前倒しになったですが、これは都合がいいのです。さて、私と同じ懐中時計とブレスレット、アンクレットは予備を使えば問題無いとして……回復薬の準備も必要なのです。今日は徹夜で取りに行くとするですか)

 

夕映は自室に戻った後、(ゲート)を開いて魔法世界へと飛んでいく。付いた場所は秘境中の秘境。竜種が住まう森の奥深くだ。そこは天然の宝物庫であり、同時に生半可な実力では死に絶える場所だ。

 

「座標は問題無し。では、採取をはじめるです」

 

夕映がそういうと同時に早速巨大な走竜……いや、ティラノサウルスが現れた。それをぞっとするような冷たい眼差しで見詰める夕映。

 

「トカゲ風情が私の前に立ち塞がり、ましてや私を食べようなど言語道断なのです。身の程を知り地べたに這い蹲れです」

 

夕映が片手を向けるだけで重力魔法が発動してティラノサウルスの巨体が潰れていく。そして、開いた掌を閉じて握る動作をすると悲鳴と共にティラノサウルスの身体がバキバキと折れる音が響いて圧縮されて小さな塊となった。

 

(ああ、しまったです。こんな奴でも竜種に変わりはないのです……そもそも私が手を出すのも面倒なのですから、七人の断罪者(アルカンシエル)の自動迎撃モードで対応してしまうです)

 

七人の断罪者(アルカンシエル)を出した夕映は森の中を移動しながら霊草など魔法薬の材料を採取していく。それは素材となる魔物も例外ではなない。

 

 

 

 

学園長室にあるスクリーンに図書館の映像が映し出されていた。そこには夕映が瞬動とアーティファクトを召喚する所が映し出されていた。夕映は魔法などには警戒していたが、監視カメラの存在を忘れていた。

 

「魔法を使いおったな」

「そうですね。あののどかという少女に記憶操作を行いますか?」

「魔法を教える気のようじゃの」

「様子見で構わんだろう」

 

タカミチと学園長以外の可愛らしい声が部屋に響く。

 

「それは何故じゃ?」

「決まっている。その方が面白そうだ」

「エヴァ……」

 

エヴァと呼ばれた10歳くらいの金髪少女、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルはソファーでくつろぎながら饅頭を食べている。

 

「まあ、あいつの技術は一流並みだ。だが、魔力は桁が違うぞ。ナギを超えている」

「なんじゃと!?」

「馬鹿な!」

「一瞬だが私の魔眼が捕らえた」

 

真祖に備わっている魔眼の力でエヴァは夕映の潜在魔力量を一瞬で計測していた。

 

「下手に手を出すとヤブヘビかの……」

「しかし、あんな小さな子がその様な技術を……?」

「少なくとも重力魔法に関しては常日頃から使っているようだ。それと、アイツの魔力は私に近い物がある」

「魔物という事か?」

「馬鹿な、彼女は人間だぞ!」

「落ち着け。アイツはまだ正真正銘の人間だ。ただ悪魔の、それも魔王クラスの力が混ざっているだけだ」

「ちょっと待つんじゃ……それなら対策を取らねば……」

「それとあいつの……待てよ……いや、そうか。おい、糞ジジイ」

「なんじゃ」

「あいつの事は全て私が受け持つ。お前達は手を出すな。闇には闇のやり方がある。あいつは間違いなく私と同じ闇側だ」

 

エヴァは魔力波長からナギの魔力波長に非常によく似ている事に気付き、自身の目的の為に夕映に近づこうとする。

 

「ふむ……エヴァが見てくれるなら構わんか。しかし、警戒はせねばならぬ。他の先生にも伝えねばならんな」

 

この選択が間違いである事を学園長はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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