魔王探偵夕映   作:ヴィヴィオ

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4話

 

 

次の日、夕映は朝練を終えてから街へと買い物に出た。それもショッピングモールにあるアウトドア専門店だ。

 

(資金は充分。お金は100万くらい降ろしたですし)

 

「いらっしゃいませ。何のご用かな?」

 

店員の男性が小学生だけの来店に驚いた表情で聞いてくる。彼は迷子だと思っているのだろう。

 

「丁度言いのです。ちょっと付き合う……いえ、これを用意するです」

「え?」

「返事はどうしたです?」

「は、はい!」

 

夕映は品物が書かれたメモを店員に押し付けた。そして、驚いている店員にそれが当然であると命令する。夕映の身体から自然に出ている王者の気配……いや、そんな物よりももっとえげつない魔王の気配というようなプレッシャーに店員は瞬時に返事をした。

 

「はやくするです」

「サー!」

 

数人の店員が次々に品物を用意していく中、夕映は自販機へと向かう。そこで購入したババネロメロンという物をカウンターにある椅子に座って足を組んで偉そうに肘置きに手をつきながら飲んでいく。

 

(未来では発売停止された珍妙ジュースシリーズを買いだめて……いえ、金はあるです。なら、いっそ会社ごと買ってしまって生産させると……それはそれで探す楽しみがなくなって面白みがなくなるです)

 

どうでもいい事を必死に考えている夕映。実際問題、夕映の財力は既に桁違いになっている。売上を順調に上昇している大手企業や中小企業の筆頭株主に多数なっている時点でご理解頂けるだろう。

 

(そうなのです。どうせなら麻帆良の技術力を底上げして低コストで常に私に届けるようにさせれば……それがいいのです。麻帆良の研究室とか買収してやるのです。いっそ、超さんがやったみたいな事を先んじてやってしまうのです。そう、麻帆良の科学をこの夕映が牛耳ってしまうのです! 幸い私は数十年先のISSDA(国際太陽系開発機構)の技術は全て把握しているのです。そこには超さんが持ち込んだ技術も含まれているですよ。うん、不可能で無いのです。早速やっちゃうのですよ)

 

夕映は早速麻帆良にある研究室の買収に取り掛かった。この麻帆良では基本的に研究室も成果によって資金を得る仕組みであり、それは学生達も例外ではない。こちらも筆頭になれば出資者の意向が重視される。よって、夕映は多額の資金を投入して研究室の株を買いあさっていく。それもそこに出資して株を持っている親会社なども含めてだ。

 

「お、お客様……」

「なんです?」

「ご用意ができました。ご確認いただきますようお願い申し上げます」

「うむ」

 

夕映が立ち上がって大きなカートに入っている品物を確認していく。それはコンロだったり深い大きな大人数用の鍋だったり、レインコートだったりする。鍋やコンロは多数あり、それらは決して安い物ではない。

 

「お会計でございますが……」

「配送込みでこの時間に部屋まで持ってくるようにするです。支払いはこれから適当に取るのです」

「は、はい!」

 

夕映は札束から10万ほど取り出して住所の書いてある紙を渡し、自身はさっさと次の店に行く。

 

「お、お釣りは!」

「チップでも寄付でも好きにするといいです」

 

そして、去る夕映は次々と他の店でも購入して大量の金をばら撒いていく。

 

 

 

 約束の時間となった寮の前は少し前まで人が多数出入りしていた。夕映の買った品物を届けに来ていたのだ。

 

「夕映~」

「のどか、よく来たです」

 

寮に夕映を訪ねて来たのどかは直ぐに案内されて夕映の部屋へと入った。夕映の部屋は本来の部屋とは違い、かなり様変わりしている。まず、レンジ台が壁際に多数有り、その周りの壁をシートが完全に覆っている。レンジ台の上には無数のコンロが置かれて、今も鍋に入っている水を温めている。ドアは開けっ放しにされ、追加された後付けの換気扇が多数回っている。

 

「これは?」

「魔法薬を作っているのです」

「そ、そうなんだ……」

「まあ、そんな事は置いておいて、のどかはこれを早速付けるです」

「う、うん」

 

のどかは渡されたアンクレットとブレスレットを自分の手足に取り付ける。そして、夕映はもう一つ取りだした。それはチョーカー……ぶっちゃけ首輪だ。もちろん危険な代物である。

 

「ゆ、夕映?」

「これは外そうとしたら爆発するです」

「っ!?」

「のどか、超一流の魔法使いになるか、死ぬかしか選択肢は無いと思うです」

「う、うん……」

 

ガタガタと恐怖に震えるのどかに対して救いでもあり、死刑宣告である言葉を夕映は告げる。

 

「大丈夫です。私はのどかを見捨てません。のどかが付いてこられるまで徹底的に教育してあげるです。弟子は基本的に生かさず殺さずがとってもいいのです」

「ひぃぃ~!」

「ふふ、それじゃあ先ずは2倍からはじめるです」

 

夕映は新しい懐中時計を取り出して操作する。するとのどかは急に身体が重くなって辛そうにして、次第に四つん這いの体勢になっていく。

 

「のどか、今は重力を2倍にしているです。その状態で一週間過ごして貰うです」

「い、一週間もっ!?」

「はいです。寝る時以外は常時発動するので頑張るですよ。それと、私が出すお薬は必ず飲むことです。そうじゃないと死ぬです」

「う、うん……」

「まあ、しばらくはそこで寝ているといいのです」

「わ、わかったよ」

 

のどかに声をかけた夕映はレンジ台の前にある台に乗って鍋に何かを入れてかき混ぜる。

 

「そ、それは……?」

「ドラゴンの肝なのです」

「え?」

「こっちはマンドラゴラの根っこなのです。次にドラゴンの牙をすり潰した粉を入れて、世界樹の露を投入するです。こちらは回復薬なのですが、のどかに与える目玉はこの賢者の石なのですよ!」

「賢者の石!?」

「ええ、そうなのです。私のような膨大な魔力を持つ者の血と高位の幻獣の大量の血……この場合はドラゴンの血なのです。それとユニコーンの角の粉末を混ぜて大量の魔力を与えて完成するのがこの賢者の石なのです」

 

(制作するのに大量の魔力や希少素材が必要なので滅多に作れないのですよのどか。ドラゴン15体分は居るですし。本当は古龍とかの素材を使いたかったですが、そこまで私はまだ強くないのです。ですが、数年後には揃える予定なのですよ)

 

賢者の石の作成方法は多数存在するが、この作り方を行った場合は生贄になった幻獣の力を得る事が出来る。その特性上、制作した者の血を入れる事でマスター登録を行い、遠隔制御する事で力の制御ができる。つまり、安全性を高めているのだ。

 

「さて、のどかを数年で超一流の使い手にする為には外法も使わねばならないのです」

「わ、私は超一流とかにならなくても……」

「駄目なのです。のどかには私のパートナーになって貰うです」

「パートナー?」

「そうなのです。魔法使いには従者制度があるのです。それこそのどかに魔法を教える条件でもあるのですが……」

 

夕映はパートナーの事を詳しく説明していく。一部誇張してだが。

 

「まあ、私も聞きかじりなのですが……」

「そうなんだ……」

「私の師匠は悪の秘密結社(完全なる世界)と戦っていたです。そして、残念ながら師匠は夢半ばで敗れたのです。師匠を看取った私は師匠の意思を継いで悪の秘密結社と戦う事を誓ったのです。その師匠のお父様の御蔭で今、私はこうしているです。ですがいずれ悪の秘密結社も動き出すです。その時、今度こそ私は悪の秘密結社と戦い勝利しなければならないのです。だから、外法や禁術だろうと使うのです。そんな私のパートナーにのどかはなってもらいます」

「悪の秘密結社……」

「生死が関わりますが、全てはより良い世界の為です。遣り甲斐はあるです。そう、私達は真の意味で魔法少女になるのです」

「そ、そうだね。世界の為に戦わないと!」

「はい。それとのどか、敵はとても狡猾です。悪の秘密結社はその特性から国の内部に潜りこんでいたりするです。かくいう師匠とその仲間達も裏切りにあって殺されたのです」

「っ!?」

「だから、基本的に信じるのはお互いと特別な仲間だけなのです」

(このまま育ててもメガロメセンブリアの老害共に入れ知恵されるととても困るので今からちゃんと教育するのです)

 

それから夕映はメガロメセンブリアや完全なる世界(コズモエンテレケイア)の行った事をしっかりと教え込んでいく。しかも自身の味わった記憶をキャスト変更してのどかの脳内に直接投影して見せたのだ。その強烈な映像などの情報に幼いのどかの心は壊されていく。だが、隣で震える身体を抱きしめて手を握ってくれる夕映の存在にどうにか耐えるのどか。ましてや夕映は圧倒的な程の魅力を常時周りに全力で振りまいてのどかを安心させようとしている為、夕映さえいれば安心だとのどかは本気で思っていく。これによって耐え抜いたのどかの心は夕映に対する依存度が大幅に上昇され、心は変質していく。

 

「のどかは私が導くです……今度こそ必ず」

「夕映、ありがとう。私、頑張るよ」

 

前半はのどかに聞こえたが、後半はぼそっと夕映がつぶやいただけなのでのどかには聞こえていない。

 

「はいです。のどか、どうか私と一緒に世界を救いましょう。救う手立ても師匠が用意してくれています。その為の手段さえ間違え無ければのどかは幸せになれるです」

(そう、あの時……私はネギ先生に注意して止めるべきでした。メガロメセンブリアを始めとした腐敗して腐ってしまった物を残すなど間違っていたのです。奴らは表面だけこちらに従順になりながら私達を殺す機会をずっと探っていたのです。フェイトを生かしていた事もそうですが、ネギ先生は逆らう国にまで気を回していました。奴らはそれでつけあがり、余計に先生の仕事を増やして足を引っ張るだけ引っ張って裏切ったのです。つまり、先生や私達は甘かったのです。だから、今度は容赦しないです。腐った物は根こそぎ取り除いてやるです。そう、私が全てを支配してコントロールしてや……っ!? これは飛躍しすぎなのです……落ち着くのです私。まだそうと決まった訳では無いのです……取りあえず今はのどかを引き込んで、激しい戦いでも生き残れるように鍛え上げるのです。それが巻き込んでしまう私の責任なのです。のどかだけは必ず幸せにするです。その為にこんな事をしているのです。もしもの時はのどかが私に操られているのだと思わせる細工まで施しているのですから……)

「うん、一緒に頑張ろう」

「ええ、多数の人の幸福の為に頑張りましょう」

「そうだね!」

「はい。ただ、のどかに覚えていて欲しいのは大いなる力を持つ者には、それ相応の大いなる責任が伴うという事なのです」

「スパイダーマンの……?」

「はいです。アレはいい名言です。今ののどかは彼でいう所の蜘蛛に刺される前の所です」

「そうだね」

「では、のどか……大いなる力を得て大勢の人々を救い、また少数の人々を斬り捨てる正義でありながら正義ではない道を進む覚悟が出来たならこの賢者の石を飲み込むのです」

 

夕映がのどかに渡した賢者の石は赤黒い色をしてドラゴンと龍の姿が刻印されている。この賢者の石は闇の魔法(マギア・エレベア)を参考にして開発された夕映のオリジナルレシピによって作成されている。そう、これは一時的に攻撃魔法を取り込むのではなく細胞レベルに至るまで完全に取り込んで融合する永続版だ。よって徐々に人間から人外へと進む事になる。この賢者の石の場合は人の形をした竜と龍になる。

 

「全部を助ける事は出来ないんだよね……?」

「はい。それを行おうとした結果がさっき見せた物です。師匠も皆死にました。あの時の死者は数千万を超えるです。ですが、事前に排除しておけば数十万かそれ以下で済んでいた事実があるです。私はもはや間違えませんし躊躇もしないです。例え恨まれて憎まれてでもです。殺されそうになっても私は逆に相手を殺します。それが例え子供だろうと老人だろうと一切の躊躇はしません。そうしなければ次はその数十倍数百倍の規模で人が、生命が死ぬ事になります。それは同時に世界の滅亡を早める事になるです」

「夕映の言う事は難しくてよくわからないけど……でも、夕映の気持ちはさっきの映像で痛いほど伝わって来たから……私は夕映と一緒に行くよ。私は夕映に助けて貰わないと死んでいたと思う。なら、この命は夕映にあげる。普通のヒーローじゃないけど、こういうのも私は好きだよ」

「のどか……まさかアンチヒーローやダークヒーローが好きだったのですね」

「両方だよ。普通のも好きだけど……どうしても疑問に思う時があるんだよ。同じパターンばっかりで、どうして都合よく新しい力を発揮できるの? どうして都合よく自分より強い人を倒せるの? 勇気や根性でどうにかできるなんてそんな事ないよ……そうじゃなきゃあんな事にはならなかった……何度も止めてって言ったのに……」

(そういえば、のどかは昔仲が良かった友達が虐めを受けて死んだって聞いた事があるです。出会った当時は凄く暗かったのでした。のどかが明るくなったのは私達と出会った後だったのです。私は御祖父様が亡くなった時でした。その後、お互いに傷を舐め合って修復したのでした。御祖父様に関しては私が作ったアムリタを飲んでいるので元気ですが……のどかは違うですね)

「わかったです。では、これから一緒に生きていくです。死がふたりを分かつまで」

「うん。私は夕映や家族と世界の為に力を手に入れる。んっ!」

 

のどかが賢者の石を一気に飲み込んだ。液体のように柔らかくもある賢者の石はすんなりと飲み込まれて、のどかの体内で増殖し、融合を開始する。

 

「あっ、あっ、あぁああああああああああああああぁぁぁぁっっ!!」

 

それは身体を作り変えられる為に激痛を伴う。そして、身体中の血管が破れて血が出て来る。

 

「のどか、これを飲むです!」

「んぐっ!?」

 

夕映はのどかに出来立てのアムリタやエリクサーと呼ばれる回復薬を大量に飲ませていく。破れた血管は瞬時に再生され、直ぐに痛みが和らいでいく。それからはひたすら夕映がのどかにアムリタを飲ませていく。その数時間にも及ぶ戦いはのどかの勝利で終わり、のどかは眠っている。

 

「のどかの身体を綺麗にした後はご両親に連絡を入れておかないと駄目なのです……」

 

夕映はのどかの子供携帯から家の電話番号を探して連絡を入れた。

 

「私は綾瀬夕映というのどかの友達なのです。のどかが眠っちゃったのでこのままこちらの寮で泊まってもらおうと思っているのです。明日の学校はこちらから行ってもらおうと……はい、寮母さんの許可はちゃんとあるです」

 

夕映はのどかの両親を寮母も巻き込んで説得してしまう。寮母も夕映の言う事は逆らわない。それほどに夕映はこの寮を支配している。主にお金の力とカリスマで。

 

(こういう時の為に日頃から便宜を図ってあげてるのです)

 

借金の返済を肩代わりしたり、寮の食事や施設をグレードアップさせたりと色々としている夕映に頭があがらないのは当然の事だ。寮といっても学園からの補助金が出ているだけでそこからどう運営し、施設を良くしていくなどは寮母の経営力が問われるのだ。給料も寮生の親から貰える全体のお金から計算されているので寮母にとって夕映がスポンサーをして経営コンサルトまでしてくれるという事はそれだけで大量のお金が入って来るのだ。よって、この寮に夕映を止める存在は居ない。

 

 

 

 

 

 

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