魔王探偵夕映   作:ヴィヴィオ

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5話

 

 

 

 

 のどかが夕映によって人外の力を付与されてから一ヶ月と少しの月日が過ぎた。だが、今だにエヴァンジェリンからの動きは無い。それは学園長がエヴァンジェリンの要望に対する準備が有ったからだ。そんな事を知らない夕映はこの一ヶ月でのどかの両親が勤めている会社を買収し、のどかを寮生にするよう細工した。具体的にいうといろんな所に飛んで貰うのだ。10日単位であり、母親も一緒についていくように仕向けた。その間、のどかは1人になるが寮生ならば問題無いし、彼らは観光ができる。そんな風に調整し、のどか本人の希望もあって寮へと入った。

 

「夕映ー朝だよー起きてー」

「んんっ、後10分……」

「駄目だよ」

 

怠惰のせいでだるい夕映はなかなか出てこない。まあ、本来の4時より早い時間だからというのもあるが。

 

「朝ごはん抜きだよ?」

「それは困るです」

 

ベッドから起き上がった夕映にのどかは珍妙ジュースを渡す。するとそれを美味しそうに飲む夕映。その後、起き上がった夕映とのどかは購入しておいた食料で一緒に調理する。

 

「のどか、そこはこう包み込むように……」

「うん」

 

夕映がのどかに料理を教えているのだ。夕映の実力はそれなりに高い。基本的に1人暮らしだったのもあるがサバイバルをしながら美味しい料理を食べらる為に習ったのだ。まあ、夕映の味覚はおかしいので珍妙ジュースをたまに混ぜたりするがそれはのどかによってブロックされている。

 

「ここで各自味のたこ焼き風ラムネを……」

「入れないからね」

「くっ、何故ですかのどか!?」

「私の味覚にはあわないから。夕映が飲みながら食べたらいいよ」

「残念なのです」

 

のどかと一緒に居る時は年相応な事も結構ある。スイッチが入ると例外だが。とにかく朝食を取った2人は4時に走り出す。

 

「のどか、気の放出が足りないです」

「はぁはぁ……つ、辛いよこれ……」

「訓練に辛いのは当たり前なのです! たったの重力9倍なのです!」

「それはたったじゃない……よ?」

 

のどかが扱うのは気であって気ではない。そう、竜闘気と呼ばれるドラゴニックオーラだ。これは攻撃力と防御力を兼ね備えた物で金色の光を放つ。しかも全属性耐性も付属し、尚且全属性の竜魔法の使用に加え身体能力も大幅に上昇している。全属性の理由は簡単で、生贄にされたドラゴンの属性が適応されている。そして、内部にあるドラゴンが持つドラゴニックオーラと龍が持つ外部にある大自然の力、龍脈の力を使える。つまり、のどかの基礎スペックは竜と龍の中では最強クラスなのだ。

本来なら9倍くらい平気だが、使いこなせて居ない為に持続できていない。

 

「24時間365日張りっぱなしで平気なようになるまで続けないと駄目なのです。妥協は無し」

「うぅ……」

「これが終わったら組手なのです」

「わ、わかった」

 

夕映との組手はのどかにとって命がけだ。何故ならドラゴニックオーラの防御なんて簡単に抜いてくるのだ。それはまるで魔王の前では無意味!という感じでだ。そして、夕映が取る構えは一つ。それは天地魔闘の構え。天とは攻撃、地とは防御、魔は魔力の使用を意味し、それらの3動作を一瞬にして行える。

 

「格闘戦は苦手なのですが……かかってくるです」

「くっ、行きます!」

 

ドラゴニックオーラを纏ったのどかが夕映に殴りかかるが簡単に掴まれて吹き飛ばされる。そして、そこに夕映が容赦無く追撃をかけてのどかに連撃を叩き込む。虚空瞬動も使って空中から降ろさない。降ろされた時にはボロボロだ。そこに夕映がアムリタを叩き込んで強制回復させる。

 

「痛くないようにしたいなら頑張ってドラゴニックオーラを操るです。楽に死ねると思うな」

「ヒィィィィィ」

 

何度も何度も繰り返される実戦訓練。ドラゴニックオーラを纏った上から半死半生にされてから戻されるのだ。本当に生かさず殺さずが実行されている。魔法こそ使っていないが、気……いや、魔闘気による強化を受けた夕映は効率的に対象を破壊する事を目的に実験し、経験を積んでいる。のどかの訓練と同時に自身も強化しているのだ。生死の境を常に彷徨うのどかは生き残る為に必死に力をコントロールしていく。更に力も増大していくので言う事無しだ。だが、これはあくまで身体の使い方を教えているだけだ。夕映はのどかに格闘の技術を教えてないのはとある計画があるからだ。流石にこれを一ヶ月繰り返していれば嫌でも慣れる。この一ヶ月でのどかが死にかけたのは千回を超えている。

 

(一応、のどかは戦闘能力からして既にAAクラス……500くらいですか。まだまだですね……少なくとも基礎能力だけで8000以上にしないといけないのです。相手は655000くらいですし)

 

朝の修行を終えたら朝食を食べてのどかは教室へ行き、夕映は図書館島で読書をする。放課後には再度合流して訓練する。こちらは座学をしながら重力の桁を変えて行うのだ。そして、深夜。のどかが眠った。

しばらくしてから突如として夕映は目を開いて起きだし、着替えて外へと出る。その姿は里村紅葉の私服の格好だ。帽子もちゃんと被っている。そんな夕映が桜の並木道を歩きながら珍妙ジュースを自販機で購入して背を預けながら空を見上げる。そこには綺麗な光を発する満月が輝いている。

 

「月見の珍妙ジュースとはいいものなのです。それで、何用ですか吸血鬼」

 

暗がりに夕映が声をかけるとそこから身長の高い金髪の女性が現れた

「はっ、決まっているだろう? 貴様の血を貰いに来たのだ人間……いや、魔王」

(バレてるですか……ここはスイッチを入れるべきなのです)

「魔王か……確かに魔王の力は持っている。それがどうした封じられた真祖の吸血鬼エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」

「ほう……」

 

現れたのは大人版のエヴァンジェリンだ。それもドレス姿で。この時点で色々とおかしい。いくら満月とはいえ変身などできるはずないのだから。

 

「何故封印が解除されている……まあいい。今ならこの夕映でも倒せる」

「言ってくれるではないか小娘。調子に乗るなよ」

「はっ、こっちは事実しか口にしていないぞ吸血鬼」

 

2人の間に火花が散る。どちらも闇に属する王と王である。二人に共通しているのは傲岸不遜であり自身の勝利を一切疑っていない。

 

「なら賭けるか?」

「いいだろう。ならばこちらが求めるのはダイオラマ魔法球と真祖の肉体の解析だ」

「ほう……ならこちらは貴様の血とナギの消息だな」

(予想通りなのです。覚醒状態ならまだしも、今なら勝てるです)

「ふふふ、交渉成立だ」

「ああ、やろう」

 

お互いに距離を開けて空になった珍妙ジュースを投げ捨てる夕映。エヴァンジェリンも本気のようで空に浮かび上がる。そして、2人は同時に手を前にして同じ魔法を別々に使う。

 

「固定、掌握、術式兵装・デアボリックエミッション」

「固定、掌握、術式兵装・千年氷華」

 

エヴァは一瞬驚いたがそれを無視する。むしろ、目の前の存在が自身と同じ化け物であると改めて認識する。

 

「はっ、これは全力で楽しめそうだ」

「リミッター解除、大罪完全発動。七つの大罪(グリモワール)。最初から全力でないと終わるぞエヴァンジェリン」

 

七つの大罪の力を完全開放した夕映は圧倒的な程の魔力を放出する。それは真祖たるエヴァンジェリンと引けを取らない量だ。といっても、造物主モードのエヴァンジェリン以下だが。

 

「そのようだな」

「くっくく、どうせなら楽しませてくれよ!」

 

先に動いたのは夕映だ。瞬時に重力魔法を発動して自身以外の周囲の重力を50倍に変更した。それだけで周囲は押しつぶされてクレーターができる。それに対してエヴァも無詠唱で無数の氷塊や氷矢を叩き込んでいく。だが、夕映の前に展開された重力の球体が迎撃して排除していく。

 

 

 

 

 

 

 

学園長は必死に判子を押しながら耐えている。そう、エヴァンジェリンの解放は学園長がこれを学園運営の必要事項として精霊を誤魔化しているからだ。

 

「なんじゃこれはっっ!!!」

「が、学園長っ!!」

 

麻帆良学園を襲った膨大な魔力同士の衝突は衝撃波となって周りの建物を破壊する。ましてや桜の並木道など完全に潰れて跡形もない。こちらは夕映の魔法だが。

 

「なんという魔力だ……」

「どうなさるのですか学園長!!」

 

多数の魔法先生達がここ、学園長室に現れている。この学園内で行われるのは共に強大な力を持つ存在の戦いだ。その映像がこちらにも映し出されていた。

 

『契約に従い我に答えよ。闇と氷雪と永遠の女王。 咲きわたる氷の白薔薇。眠れる永劫庭園。 来たれ永久の闇。永遠の氷河 凍れる雷もて魂なき人形を囚えよ。妙なる静謐。 白薔薇咲き乱れる永遠の牢獄。終わりなく白き九天』

 

巨大な雷をまとった氷の竜巻は、周囲に氷のイバラを伸ばして 触れたものを一瞬で氷漬けにしてしまう。たとえ多重結界があっても その結界ごと凍らせてしまうので意味がない。人形限定という話もあるが、それは相手を殺さない為だ。だが、そんなのは夕映相手に関係ない。何故なら夕映も桁が違うからだ。

 

『来れ 闇よりもなお深き暗黒の深淵よ。王の名の元に命ず。現世に顕現し、闇と影と憎悪と破壊を飲み込み、復讐の大焔を撒き散らせ! 我が敵を焼き、世界を燃やし尽くせ。其はただ王命に置いて世界を焼き尽くす終焉の炎(レーヴァテイン)!!』

 

エヴァンジェリンに対して夕映がとった方法は真逆で焼き尽くす事だ。そして発動されたのは夕映のオリジナルスペルで、7つの大罪の暗黒の力と炎の力、それに生きとし生きる者の憎悪を集めて合わせたそれは世界を汚染し、燃やし尽くして崩壊へと導く生ける暗黒の炎という物だ。そう、夕映は全力で殺しに行っている。麻帆良が消滅しても構わないとすら思っている。たかが学園都市一つで造物主の切り札を破壊できるなら別に構わないと思っているのだ。戦う前ならば夕映はエヴァンジェリンも助けようとしたが、いざ戦いが始まってしまえば関係無い。敵は殺す。容赦無く冷徹で残酷な程その意思によって統一されている。あの交渉すら実際はどっちでもいいのだ。殺して奪えばいいのだから。略奪とは王の義務であるとさえいえるのだから。

 

「け、結界が持ちません!」

「どこのハルマゲドンじゃあああああああああっっ!!」

「おのれ悪の魔法使いどもめっ!!」

「はは、これが魔王クラスか……」

「このままじゃ本当に終わりじゃっ!!」

 

夕映の魔法は夕映以外の周りあるものを全て焼き尽くしていく。それはつまりどんどん周りへと広がって威力を上げていく事だ。結界の外に出れば人々を大量に焼き尽くし、その憎悪や絶望など負の感情を糧に更に成長していく。正に魔王が使うに相応しい暗黒の魔法なのだ。理論上、世界を焼き尽くせるのだから。

 

 

場所は戻って旧並木道。そこでは激しい打ち合いが続いている。七つの大罪(グリモワール)から発射される無数のレーザーを必死に避けながら夕映に無詠唱で無数の攻撃魔法を放つ。だが、夕映も同じく無詠唱で無数の攻撃魔法を放つ。お互いに闇と氷の違いこそあれ相手を殺す事に集中している。エヴァンジェリンは空へと退避しながら無数の闇の炎が龍となって追いかけてくる中、避けながら戦う。もちろん、体力も魔力も消費しながらだ。それに対して夕映は闇の炎が燃え盛る中を心地よいかのように縦横無尽に優雅に威厳たっぷりに行動している。この闇の炎は夕映を傷つけない。むしろ力を与えているし、盾にも攻撃にも使われている。

 

「ちっ!?」

 

エヴァンジェリンは死角から放たれた七つの大罪(グリモワール)のレーザーを回避しこねて視覚を失った。これは仕方無い。レーヴァテインは夕映が操作せずとも勝手に増殖して相手を攻撃し、術者を守る魔法でもある。なので七つの大罪(グリモワール)の操作に集中できる夕映はレーヴァテインの動きを利用して確実にエヴァンジェリンを誘導して確実に命中させて殺すつもりだ。

 

「これで視覚を失ったな。触覚と味覚も合わせて3つか。どうだ最強の魔法使い! 自身の6分の1も生きていない小娘に蹂躙される気分は最高だろう! 私は最高だぞ!」

 

夕映は笑いながらエヴァンジェリンを追い込んでいく。本来ならそこまで実力差は無い。というか、エヴァンジェリンの方が有利だろう。だが、エヴァンジェリンにとって……いや、生物にとって夕映の持つ七つの大罪(グリモワール)は天敵なのだ。そして、エヴァンジェリンは真祖の吸血鬼。ぶっちゃけると七つの大罪(グリモワール)のレーザーなど当たり所が悪くない限りかすっても瞬時に再生されるので無視しても構わないレベルなのだ。だが、その追加効果が尋常ではなかったのだ。

 

「クソッ、やってくれるじゃないか小娘っ!!!」

「これで私の、夕映の勝ちだ。チェックメイトだよ吸血鬼。塵は塵に消えろ。お前の非道い人生もここで終点だ。だが安心しろ。その肉の最後の細胞まで一片も残さず綺麗に絶滅させてやるぞ。アハハハハハハハ!!」

「言わせておけばっ!! 舐めるな小娘っ!!」

「舐めてなどいない! 全力で殺しにいっているだけだ! ほら、完成したぞ。これも喰らえ吸血鬼。こいつもお前を殺すために作った魔法第2弾だ!」

「っ!? なんだこの気配はっ!!」

 

夕映が空を指差して地面へと振り下ろす。すると地上と天空に描かれた巨大な魔法二つの魔法陣が出現する。上空にある魔法陣からは巨大な真っ赤に燃える巨星が出現し、ゆっくりと魔法陣から出ようと落ちてくる。

 

「死ね。星の隕石(メテオリティス・アステリ)

(これで造物主の切り札は終わりなのです。いくらエヴァンジェリンでも見えない物には対処できないはずなのです)

 

これで決着がつく。そのはずだったが、乱入者によってそれはできなくなった。何故なら全ての魔法が掻き消えたのだ。巨星を召喚していた魔法陣もだ。かろうじて七つの大罪(グリモワール)が動く程度ではあるが。

 

「お前は、お前はなんでここに居るですか!!」

 

夕映はつい魔王モードを解除して邪魔をしてくれた乱入者に叫んだ。その乱入者は幼い少女でオレンジの髪の毛をツインテールにして鈴の髪飾りで止めている。

 

「明日菜!!」

 

現れたのは魔法無効化能力を持つ明日菜。

 

「ナギ、やりすぎ。ううん、少し違う。でも、駄目。させない」

(これは明日菜じゃないのです! いえ、明日菜で間違いないのですが、コイツは黄昏の姫巫女!!)

「くっくく、これで形勢逆転だな。命乞いでもするか?」

 

レーヴァテインすら消された夕映に残された手段は少ない。

 

「舐めるな吸血鬼。まだ終わらないぞ! 私は退かぬ! ましてや媚びなどありえぬ! まだ生身の身体がある! 人だけの力で倒してくれるぞ吸血鬼!」

「はっ、面白……むぐぅっ!?」

 

夕映が一瞬で掻き消えた。その次の瞬間にはエヴァンジェリンの口の中に手を突っ込んで現れた。

 

「受け取れ化け物。特別製のパイナップルだ」

 

そして、また瞬時に消えて元の場所に戻っている。夕映が改めて現れると同時にエヴァンジェリンの体内が爆発した。バラバラの肉片となって辺りに飛び散るエヴァンジェリン。夕映は自身の顔に付着したエヴァンジェリンの肉片と血を回収する。

 

「ふん。言っただろうチェックメイトだと。私の力が魔法だけだと思った時点で私の勝ちなのだよエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」

(切り札とは最後まで取っておいて、分からないように使って勝つのがベストなのです。そう、このカシオペアみたいに)

 

夕映の本当の切り札は超科学の力、カシオペアⅣだ。

 

「ちっ、やってくれたな小娘」

(やはり吹き飛ばした程度では殺しきれませんか)

 

だが、血や肉片が集まってエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルを形成しなおす。その姿は正に真祖の吸血鬼。科学では倒せない正真正銘の化け物だ。

 

「仕方ない。ここはこいつを殺してから再度……」

「……」

「ほう、まだやるつもりか。いいだろう、人間。身の程を教えてやる」

「どっちが」

 

夕映は諦めない。例え自身が死んでも必ず造物主を殺すという信念で動き、それを不可能だと思っていない。傲慢に強欲にただそう思っている。魔法はイメージや意思が重要だ。なら、殺しきれる。正規の方法だろうとなかろうと関係無い。殺すといったら殺すのだ。

 

「やめんかぁあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

 

その場に学園長の雄叫びが響いた。血相を変えている。それはそのはずで周りの被害が尋常じゃない。校舎の窓ガラスは全て壊れ、殆どの校舎が一部壊れている。近くにあった中等部など全壊……いや、全焼だ。周りには無数のクレーターが月面のように存在している。

 

「「黙れ」」

 

だが、そんな学園長の絶叫も王たる2人は無視して戦おうとする。

 

「はっ、もうさせないもんね」

「ぬっ!? 力が抜けるだと……」

「チャンスっ!」

 

夕映はお手製爆弾を複数取り出して結界によって弱ったエヴァンジェリンを狩りにかかる。

 

「させぬっ!!」

 

その瞬間、エヴァとの間に学園長が割り込んで、夕映の後にタカミチが現れて肩を押さえる。

 

「おいたはここまでだ」

「ちっ、殺しきれなかったか」

 

アスナの力のせいで夕映は大罪の力が殆ど使えない。そんな状態でタカミチならなんとかなっても消耗した状態で学園長を相手にする事は出来ない。カシオペアの乱用は容易に対策を取られる事にもなりかねないため基本的に使わない夕映は現状、大人しくタカミチの手を払いのける。

 

「気安く私に触れるな」

 

戦闘モードのままなので口調は戻さずに手元の爆弾をタカミチと学園長に投げつける夕映。それを受け取った2人は慌てて投げようとするが、ボンという音と共に真っ白な粉が舞い散る。

 

「辛っ!?」

「ぺっぺっ、なんじゃこれっ!!」

「塩じゃないか……」

「清めの塩だ。嫌がらせと冗談の為に作った。もとよりもう倒す気はない。吸血鬼に効く武器がない上に無駄な戦いはごめんだ。それと、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。今回の勝負は私の勝ちだ。約束は果たして貰うぞ」

「おい、私は負けて……」

「負けていた。そこの小娘が乱入しなければ私の勝ちは揺るがなかった。そうだろう?」

「ぐっ……そうだな。いいだろう。契約には答えてやる。後で訪ねて来い」

「いいだろう」

 

さっさと踵を返して帰ろうとする夕映。

 

「待てっ、逃がさんぞ!」

 

そこにガンドルフィ-ニ達魔法先生が杖を構えて立ち塞がる。

 

「退け」

「退かない。危険魔法使用及び器物破損の現行犯だぞ!」

「正当防衛だ。責任ならそこの学園長が取るだろう。私の知った事ではない」

「ふざけるな!!」

「ふざけてなどいない。いいからさっさと退け。私は眠いんだ。真夜中に仕掛けられたんだからな……」

(本当に邪魔なのです。さっさと力強くで排除するですか?)

「だいたい吸血鬼に襲われて倒した所で正義の魔法使いとして問題なかろう」

「貴様も悪の魔法使いだろうが!! 武装解除!」

 

武装解除の魔法を使われた瞬間、夕映は容赦無くガンドルフィーニの腹を貫いて破壊しようとする。

 

「夕映になにするのですかっ!!」

「ぐはっ!?」

 

だが、横から飛来して来たのどかの飛び蹴りによって吹き飛ばされた。

 

「夕映、大丈夫! この人達が悪い人なんだね! 私も頑張って倒すよ!」

 

ドラゴニックオーラを全開にして睨みつけるのどか。素人といっても竜種の力を持つ少女に普通の魔法使いが叶うかと言われれば、無理と答えるのが当然だ。ましてや完全融合しているので魔法無効化がドラゴニックオーラなどには効かない。つまり、どうとでもなる。というか、エヴァンジェリンには効かない七つの大罪(グリモワール)でもこいつらを殺すのに充分の殺傷能力はある。不死を殺せないだけなのだから。

 

「おい、そこの幼女襲撃の主犯である変態ロリコン糞爺」

「わ、わしの事かっ!? 違うぞ!? ロリコンじゃないわい! むしろ……」

「襲撃の主犯とは認めたな」

(言質はとったですよ)

「私達の邪魔をするな。もし、邪魔をするなら今度は貴様から殺すぞ」

「ほう……一体何をする気なんじゃ? それを教えてもらわんとなんとも言えんわ」

「簡単な事だ。大いなる力を持つもこの夕映が目指すのはたった一つ。世界に住まう大多数の平和。つまり完全平和だ」

「「「「っ!?」」」」

「邪魔をするなら完全なる世界(コズモエンテレケイア)の尖兵として貴様らも排除する。覚えておけ」

「待てっ!! 何故その名を知っている! だいたいお主は誰に魔法を習ったのじゃ!」

「我が師はスプリングフィールド! 完全なる世界(コズモエンテレケイア)と戦って散った英雄だ!」

 

嘘は言っていない。ネギもスプリングフィールドだし、ナギも師匠の父で魔法を習った事もある夕映だ。そして、あちらの世界で完全なる世界(コズモエンテレケイア)に殺されている。

 

「ば、馬鹿なっ!」

「死んだはずだぞ!」

「行方不明なだけだろう」

「夕映君、証拠はあるのかい?」

「これが証拠だ。来たれ」

 

夕映は体内から仮契約カードを召喚する。そして、それを堂々と見せつけてやる。そこにはしっかりとナギ・スプリングフィールドの従者と書かれている。本来なら黒くなっているのだが、夕映と融合しているのでそれは問題無い。ネギのもそうだ。主が払う魔力まで夕映自身が体内で供給しているし、夕映の魔力もナギの御蔭でスプリングフィールド家とほぼ同じと言っていい。細かい所こそ少し違うが、親子……いや、双子と言っていいレベルの違いしか存在しない。愕然としている皆を他所に夕映はのどかを伴って堂々と帰っていった。ナギ・スプリングフィールドの名前はそれほどに大きいのだ。

 

(あれは確かにナギの従者だ。だが、何故ナギは……いや、アイツは私を殺そう躍起になっていた? これは何かあるな。やはり、一度こっちから接触するべきだな。ダイオラマ魔法球をくれてやるという約束もある。丁度言い……全てを吐いてもらおう。それにしても……ナギの奴……あんな小さな小娘と契約するのなら私とだって構わないじゃないか!! あの野郎、覚えていろよ……)

 

 

 

 

 

 

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