魔法科転生NOCTURNE SS置き場 作:人ちゅら
第一高校襲撃事件――通称、ブランシュ事件から数日後。
日本魔法師協会の各支部が緊張に包まれていた。
十師族会議のため、各支部に十師族の当主たちが来訪しているためだ。
オンラインの会議は、重苦しい空気の中で進行していた。
「……以上が、魔法大学側からの要請です」
提言者の
「各魔法科高校への民間魔法師警備員――“巡回警護官”の派遣。及び、一部人員の実技教官転用による学生魔法師育成体制の強化。協会としては、本件を共同事業として提案します」
淡々とした声音。
だが、その場にいる誰もが理解していた。
これは単なる警備強化案ではない。
魔法師社会そのものへ影響を与える制度改革だ。
「ふむ……」
「一高襲撃の件を考えれば、防衛強化そのものには異論はない。二科生の育成強化も、悪い話ではあるまい」
「同感です」
「現状の二科生制度は、どうしても実技面が弱くなりますもの。地方校でも慢性的な教官不足は問題になっていますし」
両者の賛同を受け、会議室の空気がわずかに動く。
弘一は表情を変えない。
「現在、警護官候補として挙がっている民間魔法師のうち、およそ半数は教育任務へ転用可能です。特に一高、二高、三高では即効性が期待できるでしょう」
合理的な提案だった。
襲撃事件を受けた世論。
学生魔法師への不安。
慢性的な教官不足。
そして、民間魔法師の職域拡大。
複数の問題を一度に処理できる案に見える。
「……随分と“善政”だな」
ぼそり、と。
弘一は肩を竦める。
「必要だからですよ、三矢殿」
「必要、か」
三矢は鼻を鳴らしただけだった。
会議室の一角。
賛成も反対もない。
ただ、沈黙していた。
「
十文字
「関東圏の警備強化は急務だ。特に第一高校は、今後も狙われる可能性が高い」
「でしょうねぇ」
二木舞衣が頷く。
「テロリストに“成功体験”を与えてしまいましたもの」
空気が、少しずつ賛成へ傾いていく。
その流れを見ながら、
張り詰めた空気が、モニタ越しに微かに広がる。
「四葉殿は、どうかな?」
弘一が視線を向ける。
真夜は、少しだけ考えるように目を伏せた。
「……そうね」
柔らかな声。
「襲撃事件が起きてしまった以上、仕方がないのではないかしら」
それだけだった。
だが。
その瞬間、会議の流れは決まった。
「六塚家も異論はありません」
「……八代も賛成としよう」
と続ける。
棄権したのは
反対意見は、結局最後まで出なかった。
* * *
「――七草にしては、随分と
会議終了後。
四葉本家へ戻った真夜は、執務室のソファへ身を預けながら呟いた。
傍らには、執事長・葉山。
「警備強化、二科生育成、民間魔法師の職域拡大……表向きは、どれも理に適っています」
「ええ。だからこそ、気になるのよ」
真夜は薄く笑った。
「あの人、善意だけで動くタイプではないでしょう?」
葉山は数秒沈黙した後、
「調べさせましょうか」
と静かに問う。
「お願い」
真夜は即答した。
そして窓の外、夜景を眺める。
「……何を見つけたのかしらね、七草弘一」
* * *
数日後。深夜。
司波達也の端末へ、四葉真夜からの着信が入った。
『ご機嫌よう、達也さん』
「……何か御用でしょうか」
画面越しの真夜は、相変わらず妖艶な微笑を浮かべている。
『少し気になったものだから』
真夜は足を組み替えながら続けた。
『廃棄バイオ工場の件。何か変わったことはなかった?』
「特には」
『そう』
真夜は、じっと達也を見る。
値踏みするような視線だった。
『学校生活には慣れたかしら?』
「問題ありません」
『お友達作りも、学生の本分よ?』
達也は無言だった。
真夜は小さく笑う。
『最近、あなたが関わっている……
達也の目が、わずかに細まる。
『
「……なぜ、その名前を?」
『私が答えるとでも?』
くすり、と真夜は笑った。
『彼とは程々に付き合いなさい』
「理由を伺っても?」
『さて。女の勘、とでも言っておきましょうか』
それだけ言うと、真夜は一方的に通信を切った。
静寂。
執務机の傍らで控えていた葉山が、静かに口を開く。
「……よろしいのですか?」
その問いには、“間薙”という名そのものへの警戒が滲んでいた。
真夜は窓の外の夜を見つめる。
まるで、遠い昔の夢でも思い出すように。
「さて、どうなるかしらね」
夜空に浮かぶ十三夜の月が、妖しく微笑んでいる。
感想、評価、お気に入り、ここすき、いつもありがとうございます。
真夜サマ。人修羅さんの登場で、原作とちょっとだけスタンスを変えて参戦します。
設定上はちょっとどころでなく変わっていますが、それを書けるのはどれだけ先になるのか……