力はチートだが精神は一般人。そんな男の物語 (旧 面倒事は嫌なんで逃げました。) 作:クリアグラタン
深川を大量のラフムが襲った。
死体。死体。死体。深川の周りには大量のラフムの死体が転がっていた。
今や彼はただラフムを殺す幽鬼と化し、襲いかかる敵を次々と捌いていた。ボロボロの身体に鞭を打ちつつラフムを駆逐していく。
聖杯を奪われたら終わる。ティアマトは復活したが覚醒はしていない。
だからこそここまでラフム自分を狙うのだろう。全てはティアマトに聖杯を渡すために。
原作のようにティアマトのパワーアップをさせるつもりはない。
そう考えることすら億劫になるほど彼は疲弊しきっていた。
彼が今なっているエボルブラックホールフォーム擬きのアーマーには至る所に傷があり、所々破損している箇所もある。
ブラックホールで大量のラフムを葬り、衝撃波を発生させて迫り来るラフムを殲滅し、それで討ち漏らした敵は
虚空にて指先で円を描いた後バスケットボールサイズのブラックホールを生み出し、それをラフムが密集してる箇所にぶつける。
だが、いくらエボルブラックホールフォーム(擬き)がチートでも本人の体力まではどうこうすることは出来ない。おまけに数が無駄に多い。
そのため捌ききれず、ラフムから少なくない攻撃を受けていた。
彼は最早体力の限界をとうに越えており、気力だけでどうにかしている状態だった。
彼が1人で大量のラフムの相手を引き受けたのには理由がある。
1つはラフムがそこまで強くはないこと。彼は自分の力ならばどうにか出来ると思っていた。
2つは彼は自分以外信用をしていない。
彼はカルデアはおろか自分のサーヴァントを信用していない。
……キアラならそれは妥当というツッコミはこの際置いておく。
話を戻すが、彼はこの世界がいかに残酷か知っている。自分が元いた世界よりも裏切りや残虐、おぞましいことが普通に蔓延る世界。
そんな世界で心休まることなどほとんどない。
転生した当初はfateの世界に産まれたことに対して絶望しかなかった。
彼はそのことに気づいてから生き残るのに精一杯だった。
両親の愛情だとか青春だとかそんなものを謳歌している暇はない。この世界では人の命は驚く程軽い。
凄惨なことが起きるのが当たり前の世界。
何かしらのきっかけで聖杯戦争に巻き込まれる可能性も0ではない。
そんな世界で普通に生きてる者らを見て彼は思った。
ー自分だけでも生き残る。最後に笑うのは俺だ。せいぜい今の内に束の間の幸せを味わっているがいいー
そして生き残るにあたって彼は思考の末1つの結論にたどり着いた。
ー取り敢えず人は信用しない。裏切りとか面倒だし。
全員敵だと想定する。それぐらい想定しなければ普通に死ぬ。自分は力を持ってるが死ぬ可能性はある。なら死なないために準備しなければー
以上のことから彼は人を信用しない。
信用するのは金や力、利害関係といったもの。
そんな彼からすれば誰かに背中を預けるなんてとても出来ることではなかった。だからヘラクレスらの増援も断った。
見誤っていたのはその数。ラフムが自分の想定していたよりも襲来したことにより彼は苦戦を余儀なくされた。
そして、自分に襲いかかる最後のラフムを葬り去った後、エボルブラックホールフォーム擬きが解除され、彼はその場に倒れ伏せた。
《…………深川君の周辺にいた約5万のラフムの反応の消失を確認。聖杯も死守することが出来た。本当によくやってくれた。お疲れ様。》
「……ハーッ……ハーッ……ハー」
彼が返事をすることが出来ないレベルまで体力を消耗してるのを見たロマンは深川に今は少しでも休むように伝える。
「藤……ま……る…の状……きょ………う…は……?」
《彼女は先ほどイシュタルの説得に成功した。次はケツァルコアトルの説得に向かう所だ。》
「……そ……うか……」
《今は何故かラフムの攻撃が途絶えている。恐らく君が大量のラフムを殲滅したことに警戒しているんだろう。ティアマトは復活したけど今のところ大きな動きはない。》
《ジーニアス》
そして暫くして呼吸をある程度整えた深川はビルドジーニアス擬きになりドクターにあることを告げる。
「ロマン、聖杯だけそっちへ転送出来ないか?」
《……それは厳しいね。むしろ出来るならこちらから薦めてるよ。》
「今回は何とか守ることが出来たけどティアマトに聖杯が渡ったらほぼ詰む。
そうなった場合勝てる確率は天文学的なもんになる。
今このメソポタミアに存在する女神らの力を以てしても勝てない。そんなレベルの奴なんだよ。」
《……それは君が言っていた前回この異変を経験したことがあるというものから得た知識かい?》
「そうだ、勝てたのは奇跡に等しい。あれと無策で真っ向から殺りあうなんて馬鹿のやることだ。前回は何とかなったから今回も大丈夫なんてことはないからな。」
《君の時間停止を使えば倒せるんじゃないのか?》
「…………」
……多分倒せるだろうけどそれは駄目だろ。俺に何でもおんぶに抱っこという状況は流石に勘弁してくれ。
もちろん自分の身が危なくなったら使うけど。
この世界のことはこの世界の住人が解決してくれよ。
《……もしティアマトに聖杯が渡った場合他にどんなことが起きる?》
「今の海、あれはティアマト神の権能そのもの。触れたら最後取り込まれる。ラフム化すると言ったらわかるか?で、その海が津波となりメソポタミアを襲う。
ノアの洪水なんて可愛く見えるレベルの惨劇を引き起こす。で、ティアマトが完全覚醒したらウルク目掛けて真っ直ぐ進む。1日もあればウルクに着くだろうな。」
《因みに前回はその覚醒したティアマトをどうやって倒したんだ?》
……これ言って大丈夫な奴か?まぁ情報の共有は早い方がいいか
「……ティアマトを冥界に落として3女神ら協力のもと、フルボッコにした。」
《……聞くと頭が痛くなること間違いなしな上に君の言うとおりそれが実現したら確かに詰む。このことは立香ちゃんらは知ってるのかい?》
「知らない筈だ。言ってないからな。今のアイツが知る必要はない。女神共の説得に専念してもらわないと。
もしこのことがアイツらの耳に入ってみろ。要らん負担になって十分な力を発揮出来ない。……なんだよ?」
言うわけないだろ。今話してることを知ってメンタルブレイクでもされたらたまったもんじゃない。アイツにはまだ壊れてもらったら困る。少なくともこの異変が終わるまでは正気でいてくれ。俺がこの星からトンズラする頃にはいくらでも壊れてくれていいんで。
《……意外にも優しい所もあるんだな君は。君が自己保身を何よりも優先するタイプの人間であることは知ってたけど君にも人を思いやる心があるんだね。》
「……それディスってるよね?褒めてるんじゃなくて貶めてるよね?俺は優しいに決まってんだろ。どこにでもいる善良な一般市民だ。」
《…………善良な一般市民?それはちょっと無理があるんじゃないかな……》
「おい、アンタの所にブラックホールかますぞ。」
《ハイハイ、茶番はそこまでだ。ロマンも深川君もそのやり取りはカルデアに帰ったらいくらでもしてくれ。
取り敢えず深川君はウルクへ向かってくれるかな?
あれだけ大量のラフムを倒したとは言え今の君は体力的にも衰弱している。そこを襲われたらいくら君の能力があれども危険だ。取り敢えずそこから移動してほしい。》
あれから俺はビルドジーニアス擬きのフェニックスとホークの成分を使ってウルクまで飛翔した。途中キアラを回収したけど。
で、今ギルガメッシュ(術)に報告している所だ。
「ご苦労だったな深川よ。単身エルキドゥだけでなくゴルゴーンを撃破し、五万のラフムを殲滅したその手腕は褒めてやろう。貴様の健闘のおかけでラフムの襲来は局所的なものこそあれどなりを潜めつつある。ティアマトも今は大きな動きがない。よって今はゆっくり休むが良い。」
「ありがとうございます。」
あー、これでやっと寝れる。布団が俺を待っている。
いざ、アヴァロンへ!
「それと貴様に1つ忠告してやろう。何、貴様の働きぶりに少し驚いてるのでな。」
「……何でしょう?」
……忠告?何だろう。正直心当たりがない。
「貴様、今のままだと破滅するぞ。」
「…………」
…………はい?
「貴様のその在り方だ。自己保身に走ることは別によい。そのような人間は往々にしているからな。問題はそこではない。」
「…………」
え?何か急に語り出したんだけど。これ説教コース?
褒美が説教とか誰得だよ。俺Mじゃないんだけど……
「貴様は基本この世界の英霊は自身の駒としか見ていない。恐らく貴様のその力が原因だろう。自覚があるかは知らんがその力もあってか貴様は一部を除いて英霊を見下している。貴様のエルキドゥに対しての泥人形発言がその証左だ。
貴様がまともに向き合うのは英霊の中でも特に強大な力を誇る者らだけだ。我や違う我、花の魔術師、女神共等。断言する。
英霊に対しての認識等を改めない限り貴様には誰も応えてくれず、自分が危機に陥った時破滅するぞ。仮に応えてくれる者がいてもその者は真っ当な者ではない。それは貴様自身心当たりがあろう?」
「…………」
「忠告は以上だ。貴様自身のその在り方について今一度見直してみるがいい。」
…………俺が破滅する?この力を持ってるのにか?
……あり得ないと言いたい所だが、この世に絶対などない。
考えられるとすれば俺がティアマトかゲーティア、若しくはキアラとの戦いか。この三人なら確かにあり得なくもない。はたまた抑止かカルデアによるものか。
なら、そうならないように準備をすればいい話だ。
英霊等の認識を改めろとかいってるが、改めて何になる。
改めたら上の奴らを打倒出来るのか?無理だろうが。
せめてグランドになってからじゃないと話にならんわ。
アイツらは確かに人生経験はあるかもしれんが、力は俺からすればゴミみたいなもんだ。中には脅威な者もいるが、大半はカスだ。
俺に文句あるなら俺以上の力を示してから言えっての。
投影?呪術?縮地?魔眼?エクスカリバー?鬼の力?ゴミだろそんなもん。
せめてブラックホール起こせるようになってから出直してどうぞ。
この世界は力が物を言う。力がなければ何も成せないし、ましてや生き残ることも出来ない。
力が重要な要素である以上それ以外はさほど重要ではない。
人柄がどんなに良くても力がなければ敵と遭遇すればあっさり死ぬ。staynightの衛宮みたいに。
だが、力があればその確率は減る。だから生き残るためにこの力を以て準備する。
だから英霊の認識を改める必要などない。俺にははキアラという性格はクソだしヤバい奴だし信用とかしてないけど性能面での当たりがいるからまだいいが、これが佐々木小次郎とか清姫とか来てみろ。☆3や☆1風情に何が出来るんだよ。
☆3以下の産廃英霊は帰ってどうぞ。まぁ俺からすれば☆4や☆5のほとんどはクソみたいなもんだけど。
まぁ取り敢えず今は早くベッドで寝よう。
そして、俺が目を覚ます頃にはとんでもないことが起きていた。
《……聞いてくれ。立香ちゃんが重篤状態になった。》
…………………は?