セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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104話 開かれた心

ヴィマーナ

 

 響達はヴィマーナに乗り込む事に成功した。

 

響「これがヴィマーナの中……。ぼうっとしてる場合じゃない。シャロンちゃんを探さないと!」

 

 進んでいると、何かを発見した。

 

響「この部屋は…S.O.N.Gの格納庫みたいな……」

 

未来「ねえ、あれってオートマシンじゃないの?」

 

響「それもこんなにたくさん…眠ってるみたいに…。まるで最初からここに置いてあったような…」

 

未来「まさか!」

 

パルティータ「そうでしょうね」

 

響「こちら響!聞こえますか!?」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 すぐに響は通信を入れた。

 

八紘「なんだと、それは本当か!?……わかった、また何かわかったら連絡をくれ」

 

 その直後、翼とクリスが来た。

 

翼「ただいま戻りました」

 

クリス「今の通信、まさか?」

 

八紘「ああ。立花君達からだ」

 

クリス「何があったんだ?」

 

八紘「ヴィマーナの中に、稼働前のオートマシンが大量に格納されていたそうだ」

 

翼「やはり…」

 

クリス「それってまさか……。オートマシンはヴィマーナから送り込まれてたって事か?」

 

翼「再確認ですが、ヴィマーナはオズワルド氏とNEXTが起動させたのですね?」

 

八紘「ああ…恐らくは、そのはずだ」

 

翼「だとすれば、答えは明白です」

 

八紘「すべて、オズワルドの自作自演だと…?」

 

翼「はい」

 

クリス「自作自演?なんだってそんな事をする必要が?」

 

八紘「途中廃棄されたヴィマーナ計画の存続のため、だろうな」

 

翼「人類の脅威を自ら演出する事で、ヴィマーナの存在を正当化させるため、といったところでしょうか」

 

クリス「マッチポンプかよ!そのために何人死んだんだ!?」

 

八紘「しかし、あの少女がこちらの庇護下にある時にもオートマシンは来襲した。それはなぜだ?」

 

翼「確かに現状ではすべての疑問が解消できたわけではなく、断定とまではいかないかも知れません。…古いご友人を信じたいという気持ちはわかります。ですが…現状を省みれば、彼の関与は明白です。ここしばらくの近隣でのオートマシンの襲撃多発も、彼の意図があったものだと思われます」

 

八紘「意図だと?」

 

翼「はい。ヴィマーナ起動に足るまでヤントラ・サルヴァスパを励起させるべく、シャロンに力を使わせようとしていた。そう考えれば、今までのオートマシンの出現の偏重も、不可解な行動も、つじつまが合います」

 

八紘「あの少女は、装者である立花君に懐いていた…。無理矢理ではなく、自ら力を使わせるように仕向けたと。しかし、オズワルドが自らの娘を…」

 

クリス「あたしらまで利用されてたって事かよ?そういえば、オートマシンがカルマノイズを護ったのは何でだ?」

 

八紘「あの黒いノイズは、我々の世界における最大の脅威だった。それを倒せる力となれば、政界の者なら彼に賛同するだろう」

 

クリス「つまりそれも自演のためってわけか…、カルマノイズをぶっ倒して力を示すための」

 

八紘「ああ、そういう筋書きだろう(オズワルド…、私は、そうは考えたくなかった…)」

 

クリス「オッサンの話じゃ、あのオズワルドってオッサンは昔は違ってたみたいだな」

 

八紘「ああ。今のようになる危うさはあったが…」

 

クリス「そいつが今のようになったのは、シャロンのノートに書かれてた事を読んだら、杳馬って男の仕業らしいぞ」

 

八紘「杳馬だと!?あの男が…!」

 

翼「今まさに1人の少女が、杳馬という愉快犯と偽りの大義名分のために犠牲になろうとしているのです。それを黙って見ているなど、防人の、風鳴の血を引く者としてあり得ません!」

 

八紘「翼…(弦…お前がここにいれば、同じ事を言うのだろうな……)…そうだな。それこそが風鳴の者、防人たる者の矜持であったな」

 

翼「はい…」

 

八紘「2人共、至急ヴィマーナへ向かってくれ!足はこちらで手配する」

 

翼「それでは!?」

 

八紘「うむ。特異災害対策機動部二課司令としてS.O.N.Gの装者諸君に、正式にシャロンの救出作戦の遂行を要請する!」

 

翼「謹んで受諾いたします!」

 

クリス「ったく。これだから石頭親子は、いちいち手間がかかる。そんなもん、頼まれなくたってやってやる!待ってろよ、今すぐ飛んでいくからな!」

 

 

 

ヴィマーナ

 

 響達は進んでいた。

 

響「この部屋もオートマシンでいっぱいだ……」

 

 すると、何かの音がした。

 

未来「この音って…?」

 

 そして、部屋にあったオートマシンが起動したのであった。

 

響「わわわわわっ!?オートマシンが起動した!?」

 

 起動したオートマシンは響達に攻撃したが、当たらなかった。しかし、行く手を塞いでいた。

 

パルティータ「ここから通さないつもりのようね」

 

響「だけど、こんなところでグズグズしてられないよ」

 

未来「響、シャロンちゃんの元まで辿り着こう!」

 

響「そうだね、未来。だってこのギアが…シャロンちゃんからのSOSなんだから!」

 

 3人はオートマシンを蹴散らしていった。

 

響「(力が漲ってくる。まるでシャロンちゃんが私を護ってるみたい)」

 

未来「(だけどこの力は、使わせちゃいけない力…)」

 

響「(早くシャロンちゃんの所に行かないと)」

 

未来「残りはあと2機だよ!」

 

 そう言ってると、1体は斬られ、もう1体は撃ち抜かれて破壊された。

 

響「えっ?」

 

未来「もしかして…」

 

 翼とクリスも来たのであった。

 

翼「待たせた」

 

クリス「3人でずいぶん派手にやってたみたいだな」

 

響「2人とも!」

 

翼「全く、立花の無鉄砲さにはいつもヒヤヒヤさせられるぞ。それに付き合う小日向も凄いがな」

 

未来「響だけだと危なっかしいからです」

 

響「ごめんなさい。シャロンちゃんの事を思ったら、つい身体が…」

 

クリス「だからって先走るなっての。一緒に助けるって言っただろ」

 

翼「その想いは私達とて同じだ。いや、今や二課もな」

 

響「それって…?」

 

パルティータ「正式な要請をもらったようね」

 

翼「はい。シャロンを救出し、オズワルドを拘束。多少強引な方法でもよい、と要請をもらいました」

 

響「杳馬についてはどうなんですか?」

 

翼「奴はオズワルドよりも遥かに危険すぎるから、抹殺もやむなしとの事だ」

 

響「それ、本当…ですか?」

 

クリス「バカ面すんな。こんな事嘘ついてどうするよ」

 

パルティータ「さあ、行くわよ、みんな!杳馬を倒して、シャロンちゃんを助け出すのよ!」

 

響「はい!」

 

 5人は次々とオートマシンを破壊しながら先へ進んだ。一方、管制室では…。

 

オズワルド「なぜだ?なぜ…装者共がこのヴィマーナに…?ヴィマーナのシールドが作動してるはず。それに、あのシンフォギアの形状…あれはヤントラ・サルヴァスパの干渉による変異?そうか…。貴様があいつらに手を貸しているのか、シャロン!」

 

 オズワルドはシャロンを睨んだ。

 

オズワルド「道具は道具らしく、我が意に従っていればいいものを……。杳馬、お前も動け!」

 

 しかし、杳馬は知らんぷりをした。

 

オズワルド「どうした、杳馬!お前までもシャロンと同じように動こうとしないのか!?」

 

杳馬「や~なこった!お前のようなバカにはもう愛想が尽きたもんね~」

 

オズワルド「私を…バカ呼ばわりだと!?」

 

杳馬「俺は退屈してたからお前の計画に付き合っただけさ。でも……シャロンちゃんやシンフォギア装者の方が可愛くて愛想があってね、お前の織りなす物語なんかよりもずっと面白い物語に仕上がりそうなんだ。そして…お前はもう用済みなんだよ~♪」

 

 そう言って杳馬はオズワルドを殴った。

 

オズワルド「ぐはっ!」

 

杳馬「この船とシャロンちゃんは俺がもらっておくから、お前は俺の罪も被って牢獄へ行ってね~!」

 

 オズワルドを殴って壁に叩きつけた後、杳馬はシャロンを見つめた。

 

杳馬「さぁて、シャロンちゃん。君は面白い逸材だから、完全な道具になってもらうよ」

 

 そして、響達は管制室に到着した。

 

未来「ここが最深部みたい」

 

翼「ああ、恐らく管制室といったところか」

 

響「シャロンちゃん!シャロンちゃん、どこ!?」

 

???「シャロンちゃんのためにここまで来るなんて、ホント凄いよ、響ちゃん!」

 

 突然、憎らしい声が聞こえた。

 

パルティータ「この声…!」

 

クリス「そしてムカつく喋り方……!」

 

未来「あなたは…!」

 

響「杳馬!」

 

 声の主は杳馬であった。

 

杳馬「よく来たね、君達。俺の思った通りだよ」

 

翼「杳馬、オズワルドはどこにいる?」

 

杳馬「あそこさ」

 

 杳馬が指差した方向には、叩きつけられてまともに動けないオズワルドがいた。

 

クリス「てめえ、あのオッサンも裏切ったのか!?」

 

杳馬「ああ、そうだよ!俺は賛同者じゃなくて、ただ暇つぶしのために協力してただけさ。けど…君達があまりにも可愛くて、面白くって、あのバカに愛想が尽きたから切り捨てたんだよ~」

 

未来「暇つぶしのため…?」

 

翼「お前がオズワルドを悪の道に引きずり込んでおきながら、愛想が尽きたから切り捨てただと!?」

 

クリス「このクソ野郎…、どこまで性根が腐ってやがるんだよ!」

 

響「杳馬、シャロンちゃんを返して!」

 

杳馬「や~なこった、せっかくシャロンちゃんは面白い道具になったから、渡さないもんね~!」

 

響「お前は…お前はどこまで人を弄べば気が済むの、杳馬!!」

 

 シャロンへの仕打ちなどで一番杳馬に怒っていた響は殴りかかろうとしたが、パルティータに止められた。

 

パルティータ「気持ちはわかるけど、今は怒りを堪えなさい。杳馬は私に任せて、あなたはシャロンちゃんを助けるのよ!」

 

 響達の声はシャロンに聞こえていた。

 

シャロン「(…だ……れ?誰だろう、この声…。凄く心、落ち着いて、いつまでも聞いていたいような……。思い出せない…そんな、昔の事じゃ、ないはずなのに……。どうして私は、ここにいるんだっけ?確か、私は…)」

 

 シャロンはこれまでの事を思い出していた。

 

シャロン「(ああ……そうだった…。あの日、お父さんの研究所が、黒いノイズに襲われたんだ。私は、お姉ちゃんや妹達と一緒に、その混乱に紛れて研究所を逃げ出した。だけど、研究所の大人達やあの人は私達を捕まえようと。それに、思い出した。私はあの人の顔を知らなかったんじゃない、必死で忘れようとしてただけだと…)」

 

 

 

回想

 

 その当日、シャロン達は逃げ出していたが、杳馬は追いかけていた。わざと手を抜いて。

 

杳馬「シャ~ロンちゃ~~ん、ど~こ~かな~?お姉さん達と一緒に来てね~、お父さんが待ってるよ~!」

 

 猫なで声を出していた杳馬であったが、その顔と声から感じられる邪悪さはシャロン達には恐怖そのものでしかなかった。

 

シャロンの姉「こっちよ、早く!」

 

シャロン「はあ、はあ、はあ……」

 

シャロンの姉「他の姉妹達とも離れ離れになっちゃった…」

 

シャロン「みんな、掴まっちゃうの…?」

 

シャロンの姉「……いい、この者蔭に隠れて、絶対に出てこないで」

 

シャロン「……!」

 

シャロンの姉「私はみんなを探してくるから」

 

シャロン「!?」

 

シャロンの姉「もし、しばらくしても戻らなかったら、ここから向こうの方角へ走って。港があるって研究員達が言っていた。運がよければ船に乗れるかも知れない」

 

シャロン「みんなも一緒がいい」

 

シャロンの姉「……大丈夫、みんな一緒よ」

 

 しかし、みんなで行く事は叶わなかった。

 

 

 

シャロン「(そうして、お姉ちゃんは1人、研究所の方へ向かい……結局、戻ってくる事はなかった。私もみんなを助けに行きたかったけど、あの人がとても怖くて体が動かなかった。もし捕まったらまた痛い事をされるから、多分、いっぱい罰も受ける。痛いのはもう嫌、苦しいのはもう嫌。体の震えも、涙も止まらない…。ただ静かにして、時々聞こえる悲鳴が、みんなのでない事を祈る事しかできなかった。周りが静かになって、私は言われた通り、港へ向かった。そこで、偶然泊まっていた船に飛び乗った。何日かして港について、陸に上がって、人目を避けて森の中を歩いていたら、ノイズが現れて…誰かに助けてほしくて、叫ぼうとしたら、声が出なくなっていた。必死で逃げたけど、囲まれて…。ああ…これでもう終わりなんだって、そう思った)」

 

 初めて響に会った時の事をシャロンは思い出した。名前は杳馬のせいで思い出せなかったが。

 

シャロン「(そうだ、○○が助けてくれたんだ…。太陽のように温かい人。きっとこの人は神様なんだ、って。そう思った…。基地で身体を調べられた後、部屋に連れていかれた。少しの間、○○達も一緒だったけど、いなくなってしまった。また1人になって、心細くて…研究所に戻されるんじゃないかって、すごく怖くて……そう思って、あの時のように、じっとうずくまっていた。みんなと離れ離れになったあの日の事を思い出して、息が苦しくなった。心が、ぎゅっと締め付けられるように痛んだ。)」

 

 しかし、ちゃんと響達は帰ってきてくれた事はシャロンにとってとても嬉しい事だった。

 

シャロン「(帰ってきてくれて嬉しかった。それからもたまにいなくなる事もあったけど…みんな、私の事を大切にしてくれた。)」

 

 響と未来がシャロンに文字を教えてくれた時の事も思い出していた。

 

シャロン「(○○は幼馴染の○○と一緒に渡しに文字も教えてくれた。『シャロン』って呼んでくれる。頑張ると褒めてくれた。○○の傍は暖かくて、ずっとそこにいたいと思った…)」

 

 次は響と未来の2人と一緒に買い物をしている時を思い出した。

 

シャロン「(こんなに自由にお外を歩くのは、生まれて初めてで、とても気持ちがいいけど…何よりも、○○と手を繋いで歩く事が嬉しかった。でも、あの怖い機械が追いかけてきて…)」

 

 そして、今度は初めてヤントラ・サルヴァスパの力を使った事を思い出した。

 

シャロン「(○○は○○と一緒に私を護ろうと戦ってくれた…。けれど、2人があの機械に攻撃されて、苦しそうだった。2人を助けたかった。私に何かできる事はないかって思った。そう、必死で2人を助けないと願うと、不思議な事が起きた)」

 

 ヤントラ・サルヴァスパの力により、響と未来のギアが変化したのであった。

 

シャロン「(2人に私の中にある何かの力が流れ込んで姿が変わり、あの機械を倒してくれた。私は、2人の役に立てた事が嬉しかった。私は、ここにいていいのかなって。少しだけ、そう思えるようになった。だけど…)」

 

 オズワルドが来た事を思い出した。

 

シャロン「(お父さんが私を連れ戻しに来た。きっと、あの人も来てるに違いない。また研究所に戻るのが怖かった。○○の傍から引き離されるのが怖くて、お父さんの気配を感じて、逃げ出した)」

 

 シャロンの様子を察した響達は響と未来と一緒にシャロンを先に帰す事にした。

 

シャロン「(でも、みんなは私をお父さんに引き渡さないでくれた。…このまま私、ここにいていいのかな?)」

 

 次は響と未来が不在の時にオートマシンが襲ってきた時を思い出した。

 

シャロン「(またあの機械がやってきてた…。○○の大事な、お友達が苦しんでいた。だから、また助けたいと願った)」

 

 響と未来の時と同様に翼とクリスのギアも変化し、オートマシンを撃破できた。

 

シャロン「(手伝う事ができて、私なんかがみんなの助けになれて、本当に嬉しかった。…力を使った後は、時々、胸が痛くて苦しくなったけど、気にならなかった。だって、研究所でいやいや力を使わされてた時とは、ぜんぜん違ったから…。でも…)」

 

 しかし、力を使う度に侵食が悪化していった。

 

シャロン「(力を使ったらダメだと言われた。私は○○達を助けないのに、力になりたいのに、ダメだって……。体の事なんてどうでもいい。苦しくなったって構わない。役立たずにはなりたくない。その気持ちを、ノートに書いて伝えた。そしたら…)」

 

 シャロンは役立たずではないと、響は言ってくれた。

 

シャロン「(○○は私がいるだけで、温かい気持ちを受け取ってると言ってくれた。でも、そんなの。私の方がもっとたくさんたくさん、数えきれないほどもらってるのに……。でも、遂に恐れていた事が起こった。あの人が私を攫いに来た)」

 

 杳馬の襲撃はシャロンが一番恐れていた事であった。

 

シャロン「(あの人は○○達にひどい事をしないし、お姉ちゃんや妹達を助けると言ったけど、絶対に嘘をついていると思った…)」

 

 

 

回想

 

 杳馬に攫われた後、シャロンはヴィマーナに連れていかれた。

 

杳馬「シャロンちゃん、ノートに書かなくても顔でわかるよ。あのお姉ちゃん達や君のお姉ちゃんに妹にひどい事をするなって。君のお父さんは嘘つきだけど、おじさんは絶対に約束を守るからね~。だから…」

 

 

 

シャロン「(私の思った通りだった。あの人は私に嘘をついたばかりか、お父さんすら裏切った)」

 

 響達と杳馬は対峙していた。

 

響「シャロンちゃんを返せ、杳馬!」

 

杳馬「だからや~なこった。せっかく面白い事になったのに」

 

 杳馬の視線の先を見ると、その先にシャロンがいた。

 

未来「まさか…その中に…!?」

 

クリス「戦艦に食わせたとでもいうのか!?」

 

翼「人を人とも思わぬ外道が…!」

 

杳馬「面白いと思わないのかい?人と聖遺物の融合体って。この子がいれば、どんな機械だって操作できるんだよ。このヴィマーナだって、スーパーコンピュータだって、意のままさ!オズワルドはこの子を戦艦の中枢にする計画を練ってたけど、俺はそのほかにも色々と使う予定なんだなぁ」

 

翼「オズワルドも腐った男だが、貴様はそれすら凌ぐ人の皮を被った悪魔だ!」

 

響「シャロンちゃんは道具じゃない!」

 

杳馬「ああ、俺は人間なんかじゃないよ。それに、こんな面白い子を使わない手はないよ」

 

響「シャロンちゃん、聞こえる!?すぐにそんなところから出してあげるから!」

 

杳馬「呼びかけたって無駄よぉ、もうこの子の俺の声しか聞こえないように記憶を弄って洗脳してあるから、無駄なんだなぁ!」

 

クリス「何だとぉ!?」

 

未来「あなたは…どこまで!」

 

杳馬「さあて、戯れはここまでだ。君達はどこまで足掻けるかなぁ?」

 

 オートマシンだけでなく、杳馬も戦闘態勢に入ったのであった。

 

クリス「ちっ、囲まれた上、杳馬まで戦うつもりだぞ!」

 

翼「あれだけ破壊したのに、あんなに残っていたとは…」

 

杳馬「どれだけぶっ壊しても無駄だよぉ。オートマシンはガーディアン、このヴィマーナを守護するためにヴィマーナが生み出す子機なんだ」

 

パルティータ「なるほど、だからいくら壊してもキリがなかったのね」

 

未来「でも、オートマシンはシャロンちゃんがヴィマーナを再起動する前から出ていたはずだよ」

 

杳馬「それも教えてあげる。他の被検体をガーディアンの起動に使ったんだ」

 

響「まさか…シャロンちゃんの姉妹を使って?」

 

杳馬「失敗作でもこういった価値もあるんだよ。別にいいじゃん」

 

響「人を物みたいに…許せない!」

 

未来「オズワルドさえも悪の道に進ませたあなただけは絶対に許せない!」

 

杳馬「勘違いしてもらっては困るよ。オズワルドの奴はある事件がきっかけで精神的に参っててね、俺はその後押しをしただけなのさ」

 

クリス「精神的に参った?」

 

杳馬「何でも、大切な人を喪っちゃってて、それで精神的に病んでたんだ。その後押しを俺がした結果、オズワルドはヴィマーナ起動計画を練ったんだよ」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 通信で八紘はその内容を聞いていた。

 

八紘「あの男は後押しをしただけだと…?やはり、あの事がオズワルドを変えてしまったというのか…?」

 

 

 

ヴィマーナ

 

 杳馬の言葉は信じがたいものであった。

 

クリス「どうせてめえの作り話なんだろ!?」

 

響「シャロンちゃんをお前の道具になんかさせない…絶対に」

 

杳馬「そうはいかないんだなぁ。じゃあ、まずは響ちゃんを!」

 

 響を攻撃しようとした杳馬だったが、パルティータに阻まれた。

 

パルティータ「あなたの相手は私よ!」

 

杳馬「そうだったね!並行世界のパルティータちゃんの力、見せてもらうよ!」

 

 杳馬とパルティータ、この世界では夫婦同士だった男女の夫婦対決が始まったのであった。

 

杳馬「いやぁ、並行世界のパルティータちゃんはとっても強くて綺麗だよ!」

 

パルティータ「あなたに褒められても、嬉しくなんかないわ!」

 

 2人の拳と拳がぶつかり合った。一方、響達はシャロンを救出しようとしていたが、オートマシンに阻まれていた。

 

響「数が多い!」

 

翼「露払いは私達に任せろ」

 

クリス「ああ。お前はチビのところへ行け」

 

未来「杳馬がパルティータさんと戦ってて、邪魔できない今がチャンスだよ!」

 

響「翼さん…クリスちゃん…、未来…」

 

翼「無尽蔵に湧くというオートマシンを全員で倒し続けても埒はあかない」

 

未来「それに、シャロンちゃんを救い出せば、ヴィマーナの機能も止まるはずだよ」

 

クリス「オートマシンの製造機能もな」

 

響「あ、そうか……」

 

未来「わかったら早く行って!」

 

クリス「あの泣き虫のチビをしっかり連れ戻してこいよ」

 

響「うん!必ず、助けてくるよ!」

 

 響は先へ向かった。

 

翼「さあ、雪音、小日向。一暴れするとしようか」

 

クリス「こちとらストレス溜まってたところだ。撃って撃って撃ちまくってやる!」

 

未来「響の邪魔をさせないためにも、私達が破壊し続けよう!」

 

翼「では、共に参るぞ!」

 

 3人はオートマシンに向かっていった。一方、響はシャロンのところに来た。

 

響「シャロンちゃん!」

 

 助けようとした響だったが、そこへ杳馬とパルティータが戦闘を続けながらやってきた。

 

杳馬「そう簡単にはいかないよ~!」

 

 杳馬の言葉通り、壁の機械が変形したのであった。

 

響「壁の機械が変形して!?」

 

 変形した壁の機械は姿形の違うオートマシンへと変わった。

 

杳馬「コアのシャロンちゃんを守護するための非常装置だよ。さぁ、どう出るかなぁ?」

 

響「シャロンちゃんが、あの中に…(この中にシャロンちゃんがいるなら、下手なところは攻撃できない…)」

 

 躊躇している間に襲い掛かってきた。

 

杳馬「ぬふふふふっ!さあ、躊躇してるとマスターガーディアンの猛攻で君が死んじゃうんだよ~!」

 

パルティータ「よそ見している場合かしら?」

 

 煽ってくる杳馬に対し、パルティータはビームを発射した。

 

杳馬「これは錬金術か。なるほど、君は聖闘士であり、錬金術師でもあるのか。これまた面白いねえ。ところで君、完全な肉体を完成させたのかい?」

 

パルティータ「ええ。といっても、最初に完成させた錬金術師は私で、ただ単に『不老の肉体』と名付けたんだけど、いつの間にか完全な肉体に名称が変わってしまったのよ」

 

杳馬「ってなれば、君は何千年も生きてるって事になるよね!」

 

パルティータ「女だから年齢を自慢にしたくないけど、そうなるわ!」

 

 パルティータが聖闘士であり、錬金術師でもある事を杳馬は見抜き、パルティータもそれを肯定した。一方、響はマスターガーディアンに押されていた。

 

響「くうっ!シャロン、ちゃん……。ごめんね、シャロンちゃんが苦しんでるとき、助けてあげられなくて。あの時、杳馬に攫われるのを止める事ができなくて。でも……こんどこそ、助ける……から、ね…。……だから、一緒に帰ろう!」

 

 響の声はシャロンに聞こえていた。

 

シャロン「(……帰る、あの人のところへ。…お日様のように温かい、あの場所へ。帰りたい、帰りたいよ……)」

 

 マスターガーディアンの猛攻は続いていた。

 

響「(どうすればシャロンちゃんを傷つけずに倒せるの?)」

 

杳馬「もうギブアップかなぁ?」

 

オズワルド「うぐぐっ…シンフォギアなどやはりその程度……、そうだ。だからこそ…あれは犠牲になったのだ……。そんな不確かなものにゆだねるわけにはいかぬのだ。この私とヴィマーナこそが、人類を導く救世主と」

 

 意識が戻ったオズワルドは話したが、その最中に杳馬にまた殴られた。

 

杳馬「黙りな、お前は救世主でも何でもねえ。ただのバカだ」

 

パルティータ「だから、よそ見する暇はあるの!?」

 

 再び杳馬はパルティータによそ見をする暇があるのかと言われた。

 

響「シャロンちゃん、聞こえる?」

 

杳馬「無駄無駄、もうシャロンちゃんには声なんて届かないよ~!」

 

響「そんな事ない。シャロンちゃんは私を忘れてなんかいない……。だって、シャロンちゃんの意志を私は知ってるから」

 

杳馬「その証拠でもあるの?」

 

響「私達の力になってくれるこのギアがシャロンちゃんの意志、私達に助けを求めてる声なんだ!!私は、もう一度シャロンちゃんと話したい。あの部屋で一緒に過ごしたい!だから…そんな機械なんかに、シャロンちゃんはおろか、人を人とも思わない人でなしに絶対渡したりしない!」

 

杳馬「ああ、人でなしは誉め言葉だよ。でも、そろそろ幕引きだよ」

 

 響の言った通り、ヤントラ・サルヴァスパによる変化はシャロンの意志によるものであった。

 

シャロン「(私と一緒に……。私も、私も一緒にいたい…。だから!!)」

 

響「だから聞かせて…どうすればシャロンちゃんは笑顔になれるのか!」

 

シャロン「(助けて、響お姉ちゃん!)」

 

 遂にシャロンは杳馬に蓋をされた記憶を取り戻し、響に助けを求めた。

 

響「シャロンちゃん、聞こえたよ!待ってて、すぐにそんなところから出してあげる!」

 

杳馬「あれっ?俺の洗脳、破っちゃったの!?」

 

パルティータ「響ちゃんとシャロンちゃんの絆が杳馬、あなたがシャロンちゃんに仕掛けた洗脳を破ったのよ!」

 

杳馬「これは予想外だ!でも、どうするのかなぁ…?下手をすると、シャロンちゃんを殺しちゃうんだよ~!」

 

 再び響を煽る杳馬であったが…。

 

翼「恐れるな!手を差し伸べる事を!」

 

クリス「お前ならやれる。今まで数多くの奇跡を起こしてきた、お前のそのギアならな!」

 

未来「響のギアが、大切なものを傷つける筈はないよ!行って、自分の力を信じて!」

 

響「翼さん、クリスちゃん、未来」

 

パルティータ「そして、杳馬の言葉に耳を傾けちゃダメ!自分を信じて!」

 

 翼とクリスと未来、そしてパルティータは響を後押しした。

 

響「シャロンちゃん、今助けてあげるからね。はあああーーっ!」

 

杳馬「ななななっ、シャロンちゃんに構わずに向かっている!?」

 

パルティータ「あの子は助けようとしているのよ!どうなっていいと思ってないわ!」

 

 驚いた隙を突かれ、杳馬はパルティータの拳で吹っ飛ばされた。

 

響「私は、この手で助けるんだ!」

 

 響の歌はシャロンに聞こえていた。

 

シャロン「聴こえる、響お姉ちゃんの歌が」

 

 響がシャロンを救おうとする中、杳馬とパルティータの戦いは続いていた。

 

杳馬「これならどうだ!」

 

 杳馬はビームを放った。パルティータは防御壁を展開する暇がなかったためにそれを受け止めたが、壁間際まで衝撃で後退してしまった。

 

パルティータ「なかなかの威力ね。これは小宇宙錬金術…!」

 

杳馬「小宇宙による錬金術がパルティータちゃんの専売特許だと思ったら大間違いだよ。でも、流石に生まれて死んでを繰り返してる俺はあまり錬金術を極められなかったし、賢者の石も作れなかった。パルティータちゃんは持ってるかなぁ?賢者の石を」

 

パルティータ「(生まれて死んで…?)どうかしら?そんなに持ってるのかを知りたいなら…力づくで聞き出しなさい!」

 

 今度は拳と拳の格闘戦になった。一方、響はマスターガーディアンを撃破し、シャロンを救出できた。

 

杳馬「なななっ、シャロンちゃんを救出しちゃった!?」

 

パルティータ「これで終わりよ、杳馬!」

 

 杳馬がシャロンの方へ視線が行った隙にパルティータは特大のビームで杳馬を吹っ飛ばした。

 

杳馬「ぐあああああっ!!」

 

 そのままビームはヴィマーナを貫き、杳馬はビームに押されてヴィマーナから吹っ飛ばされたのであった。

 

響「シャロンちゃん!大丈夫、けがはない?待たせちゃってごめんね」

 

シャロン「響お姉ちゃん!」

 

響「そんな可愛い声してたんだね、シャロンちゃん」

 

シャロン「あ…ありがとう」

 

響「よかった……。やっと見れたよ、シャロンちゃんの笑顔」

 

 ようやく、シャロンが笑顔になったのであった。

 

シャロン「みんな響お姉ちゃんのお陰だよ」

 

響「パルティータさんも杳馬を倒せたし、これで終わったね」

 

クリス「だけど、そろそろ脱出するぞ」

 

シャロン「あ……」

 

響「3人とも、無事だったんだ。よかった……」

 

翼「ああ。マスターガーディアンが倒れ、シャロンが解放されたせいか、オートマシンも一斉に停止してな」

 

響「あっ!シャロンちゃん、お話しできるようになったんですよ」

 

未来「本当!?」

 

シャロン「あ、あの……クリスお姉ちゃん、翼お姉ちゃん、未来お姉ちゃん…ありがとう」

 

翼「ああ…シャロンこそ、無事で何よりだ」

 

クリス「その馬鹿がどうしてもっていうから少しばかり手伝っただけだ。礼を言われる事じゃないっての」

 

未来「クリス、照れてるよ」

 

 クリスは赤面したのであった。

 

シャロン「ふふ……」

 

パルティータ「さてと、ゆっくり喜びたいところだけど、さっさと脱出しましょう」

 

響「え?」

 

パルティータ「シャロンちゃんを救出してヴィマーナは機能を停止したけど、そのせいで落下し始めているみたいよ」

 

響「ええええっ!?」

 

クリス「驚くな。当然だろう」

 

オズワルド「うぐっ…ヴィマーナが沈むだと…?私の偉業が…人類の新たな未来が、お前達と奴によって失われるというのか……!?バカな…こんなはずでは…これでは、彼女の」

 

 呟くオズワルドのところへパルティータが来て、オズワルドの髪を掴んだ。

 

パルティータ「あの愉快犯と組んだ時点であなたは終わりだったのよ。そして…これは偉業でも新たな未来でもない…ただの悪行よ。さ、色々と取り調べを受けてもらうわ、バカオヤジ」

 

オズワルド「あり得ない…何かの間違いだ…」

 

 パルティータに掴まれるオズワルドを響とシャロンは見ていた。

 

シャロン「お父さん…」

 

響「いつか…ちゃんと話し合えるといいね」

 

シャロン「うん…」

 

未来「それじゃあ、私達も脱出するよ、響、シャロンちゃん!」

 

シャロン「うん、響お姉ちゃん、未来お姉ちゃん」

 

 シャロンは響と未来が抱えて一同はヴィマーナから脱出した。




これで今回の話は終わりです。
今回はヴィマーナ内での響達と杳馬の戦いとその決着を描きました。
ぶつかり合った杳馬とパルティータは互いに鎧を纏っていない状態です。そして、ヴィマーナから吹っ飛ばされ手生死がはっきりとしていない杳馬ですが、次でどうなのかが明らかになります。
次は響達が元の世界へ帰る事となりますが、何やら不穏な動きも出てきます。

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