セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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105話 花咲く笑顔

特異災害対策機動部二課

 

 パルティータの攻撃で杳馬はヴィマーナから吹っ飛ばされて生死不明となり、事件の首謀者であったオズワルドは二課へ連行された。その後、直ちにパルティータによるシャロンの手術が行われ、侵食も初期段階に戻された。一方、オズワルドは米国へ身柄を移送される事となり、その前に八紘は話をしようとした。

 

黒服「司令、何か?」

 

八紘「彼と少し話をさせてくれ」

 

黒服「ですが、この男は一刻も早く本国に移送するように命令が」

 

八紘「時間はとらせん、頼む」

 

黒服「はっ……」

 

八紘「オズワルド…」

 

オズワルド「賛同者に裏切られた敗残者を笑いに来たのか?良い趣味だな」

 

八紘「冗談はいい。どうしてこんな事を?」

 

オズワルド「私に理由を問うのか?お前ならば知っているはずだろう」

 

八紘「ああ…そうだな。だが、他にやりようはなかったのか?」

 

オズワルド「お前は私の判断が間違いだったというのか?杳馬とお前達のお陰でヴィマーナを失い、全て潰えたと思ったが、それは誤りだと気付いたよ。結果はどうあれ、これで世界の変革は始まる。私はやり遂げたのだ。例え一時でも聖遺物の可能性を示せたのだから、私は満足しているよ」

 

八紘「オズワルド…」

 

オズワルド「これ以上話す事はないが、これだけは言っておく。杳馬はまだ生きている」

 

八紘「何?」

 

オズワルド「私の直感では、奴は人間ではない。正体はわからないが、人の皮を被った悪魔である事は間違いないだろう。あれくらいでくたばるとは思えないからな…」

 

八紘「人の皮を被った悪魔…」

 

黒服「よろしいでしょうか」

 

八紘「…ああ。すまなかった」

 

オズワルド「またな、八紘。かつてのわが友よ」

 

八紘「ああ…オズワルド…」

 

 そのままオズワルドは移送されたのであった。

 

八紘「オズワルド…確かにお前は昔から頭脳明晰だがそれ以上に野心家で…。私はそこに惹かれつつも、内心で危惧を抱いていた。シンフォギア装者と杳馬……彼女の死と杳馬との接触がなければ、お前がこんな道を選ぶ事は…なかったはずだ」

 

 それから…。

 

翼「その後、オズワルド氏はどうなったのですか?」

 

八紘「彼の身柄が米政府に引き渡されたのは知っているな」

 

翼「はい、そこまでは」

 

八紘「その後、私は国連に呼びかけてNEXTとその上部組織F.I.S、そして米政府に対する査察を要求し、実施しているところだ」

 

未来「米政府…ですか」

 

響「どうしてそんなところまで?」

 

八紘「今回の件、いくら特殊研究機関NEXTの所長とはいえ、オズワルドや協力者の杳馬だけで為し得る事ではない。異端技術で建造された船体を維持、研究するだけでも莫大な予算と人手と資材が必要だ」

 

クリス「つまりF.I.Sや米国政府が全く知らないわけがないって事か」

 

八紘「その通りだ」

 

響「それで、査察の結果はどうなったんですか?」

 

八紘「結局のところ、米国側は全ての責任をオズワルドだけに被せ、知らぬ存ぜぬで通す腹のようだ」

 

パルティータ「蜥蜴の尻尾切りのようね」

 

八紘「米国もF.I.Sもヴィマーナの強大過ぎる力を知るや否や、関係資料の隠滅や関係者の口封じに動いていたようだ」

 

翼「老獪もすぎると醜悪ですね……」

 

響「それじゃあ、シャロンちゃんのお父さんは…」

 

八紘「国家に無断で私的研究に膨大な国家予算を投じ、かつ非人道的研究を行った咎で、米国から提訴されるだろう」

 

パルティータ「全く、だから政治家や貴族は昔っから嫌いなのよね」

 

八紘「(貴族…?)」

 

 パルティータがぼやいた貴族という発言に八紘は引っかかった。

 

未来「杳馬についてはどうなんですか?」

 

八紘「奴はどうやら米国の人間ではないらしい。問い合わせてみたところ、杳馬なる人間はNEXTにもF.I.Sにも米国の機関にも所属していないそうだ」

 

クリス「本当だろうな?」

 

八紘「オズワルドの件と違い、杳馬の事については本音のようだ。それに、オズワルドがああなったのと杳馬が出没したのが一致したそうだ」

 

響「やっぱり、この事件の黒幕は杳馬だったんだ!」

 

八紘「オズワルドを狂わせる決定打を打ち込んだのは奴で間違いない。それに、奴はまだ生きているだろうとオズワルドが言っていた」

 

パルティータ「(確かに。それに、奴は冥衣を纏わなかった。奴が纏えば私も聖衣を引き寄せて纏うつもりだったけど、この一連の事件では終始手を抜いていたようね)」

 

クリス「はぁ!?それじゃあ、黒幕共はみんな雲隠れしたようなもんじゃねえか!」

 

八紘「そのようだ。我々もできるだけの手は尽くすつもりだ。確かに彼は償うべき罪は大きい。だが、全ての咎を負わせて闇に葬る事だけは許してはならん。…ほかならぬ、シャロンのためにもな」

 

響「…お願いします」

 

未来「ところで、ヴィマーナはその後どうなったんですか?」

 

八紘「あのまま海へと墜落、そのまま沈んだため、サルベージはまず無理だろう」

 

クリス「それでよかったのかもな。そもそも、あんなもんに頼ったのが間違いだったんだ」

 

八紘「ああ…そうだな」

 

翼「ですが、それでは今後のノイズ対策は…」

 

八紘「シンフォギア・システムの研究を進めるつもりだ。オズワルドは欠陥品などと言っていたが、君達を見て、シンフォギアには無限の可能性があるとわかった。無論、F.I.Sのような非人道的な方法ではなく、我々は我々のやり方でな」

 

クリス「そうか」

 

八紘「だとしても、当分先の事になるだろうがね。今後、時間をかけて探っていく事になるだろう」

 

翼「一日も早くそうなる事を祈っています」

 

響「シャロンちゃんの姉妹達はどうなりましたか?」

 

八紘「オズワルドの娘達…。研究のために養子にされた子らも、もれなくヤントラ・サルヴァスパを移植されていたそうだ」

 

クリス「わかってはいたけど…」

 

翼「改めてそう聞かされると、身につまされるものがあるな……」

 

響「それじゃ、融合症例を…」

 

八紘「ああ。今後は我々の関連医療機関で引き取り、発作を抑える薬を処方しつつ、地道な治療を進めていく事になる」

 

未来「神獣鏡では…」

 

パルティータ「各自の意向を尊重しましょう。意向を無視した治療は患者のためにならないわ」

 

 融合症例なら神獣鏡で聖遺物を消して助けたかった未来であったが、医者であるパルティータの患者の意向を尊重すべきとの意見で断念せざるを得なかった。

 

翼「ですが、よく米国が許しましたね?」

 

八紘「被害者達を米政府の管理下にはおけぬと国連人権委員会から勧告させ、承諾させた。今回の件、全てオズワルドの暴走という体を取っても、彼等の監督責任までは免れないからな。無論、彼女達の治療と生活にかかる費用は全て米国に出させるがね」

 

クリス「なかなかやるじゃねえか」

 

八紘「今度こそ彼女達を大人達の道具にはさせないと、君達にかけて誓おう。それが、今まで何もしてこなかった我々のせめてもの償いだ」

 

翼「ありがとうございます」

 

 そこへ、シャロンが来た。

 

シャロン「お姉ちゃん達、遅いよ!」

 

響「あ、シャロンちゃん。ごめんごめん」

 

シャロン「もう、早く行こうよ!」

 

響「うん。ちょっと待っててね」

 

八紘「もうそんな時間だったか。では、難しい話はこれまでにしておこう。用意ならばできている。大いに楽しんでくれ」

 

シャロン「やった!」

 

響「よおし、それじゃ行こうか」

 

未来「楽しみだね!」

 

シャロン「うん!翼お姉ちゃんもクリスお姉ちゃんも早くね!」

 

翼「ああ。すぐ行く」

 

クリス「わかったって」

 

 シャロンの二課歓迎パーティーのため、響達は向かったのであった。

 

 

 

 

 その頃、オズワルドが言った通りにパルティータとの戦いに負けてヴィマーナから放り出された杳馬はまだ生きており、しかもピンピンしていた。

 

杳馬「ああー、やられたやられた。まさか、パルティータちゃんがこれほどまでにやるなんてなぁ。あっちも手を抜いてたみたいだし…。それにしても…並行世界ってのは無限の可能性を秘めてやがるなぁ。この世界に来た向こうのパルティータちゃんは錬金術師だったし、そもそも向こうはどうなってるんだろうね~?」

 

 杳馬は並行世界の可能性を考えていたのであった。

 

杳馬「もしかすると、あの胸糞悪い連中がまだ生きてるんだろうな。あの聖戦でお兄ちゃんにやられ、何十年も経ってようやく戻ってきたかと思えば、冥界はおろか、天界の連中もみんな死んじまってたからな……。お陰でやり場のない感情ができちまってもう250年近くも生きて死んでを繰り返して退屈してたぞ…。でも…並行世界を渡り歩く事ができれば、も~っと凄い神話の大編集ができるのだろうねえ!今度は並行世界を舞台にした神話の始まりだ!あの黒いノイズの正体も調べたかったしなぁ!」

 

 並行世界を知った杳馬は250年以上もくすぶっていた野望を燃え上がらせていた。

 

杳馬「けど…並行世界を渡る方法がないな…。あのゲートも俺が入れる保証はねえし…ん~~~~っ、どうすりゃ並行世界を渡り歩けるのやら…?」

 

 すると、何やらどこからともなく人が現れるのを目撃した。しかも、その人間はカギを持っていた。

 

杳馬「もしかすると…並行世界へ行ける方法を持ってるかも知れねえ!」

 

 杳馬はその男の目の前に来た。

 

杳馬「ちょっとそこの君、どうやってこの世界に来たんだい?」

 

男「お前、何者だ!?さては、ウロボロスの一員か!?」

 

杳馬「ウロボロス?そんなの知らねえな。それより、そのカギをよこしてもらおうか」

 

男「カオスビーストから抽出されるデュプリケイターを渡せるものか!そもそも、デュプリケイター自体が貴重なものだ!絶対にこれは渡せない!」

 

杳馬「そうかい。だったら、力づくで奪うまでだ!!」

 

 杳馬は男を殴り、デュプリケイターを強奪したのであった。

 

男「デュ、デュプリケイターが…!」

 

杳馬「さあて、もうお前の死の始まりだ!」

 

 杳馬が指を突き出すと、男の体に時計が現れた。

 

男「な、何が起こっている!?」

 

杳馬「死体の証拠隠滅もしとかなきゃな。それに、てめえの体の時間の積み重ねを戻しちまったらどうなる?」

 

男「時間?積み重ね?一体、何を」

 

杳馬「わかんねえのなら教えてやる。リワインドバイオ!」

 

男「う、うわああああっ!!」

 

 男は跡形もなく消滅した。

 

杳馬「答えは…消えちまうんだよ!ってか、もう消滅しちまったか」

 

 その後、杳馬はデュプリケイターを見つめた。

 

杳馬「さあて、デュプリケイターが手に入った事だし、これで並行世界を渡る事ができるぞ!まず、行く場所はパルティータちゃん達のいる世界!そして、新たな神話が始まるんだ、ぬはははははっ!」

 

 杳馬はデュプリケイターを使い、並行世界を渡ったのであった。

 

 

 

???

 

 その後、男の仲間はこの事をミーナに知らせていた。

 

ミーナ「スクルドのメンバーの1人が殺された上、デュプリケイターまでも奪われたって本当なの!?ユリウス!」

 

ユリウス「間違いない。遺体は見つかっていないが、恐らく証拠隠滅のために消されてしまったのだろう」

 

ミーナ「(一体、誰が殺したというの…?ベアトリーチェやウロボロスのメンバーにしては不自然なところも多いし…。それに、デュプリケイターを奪われたら厄介な事になるわ…)」

 

 まだこの時点では杳馬の仕業だと気付かず、焦るミーナであった。

 

 

 

宿泊所

 

 そして翌日、響達は帰る事となった。

 

響「本当に今日、帰らないとダメ?」

 

クリス「しつこいな。何度目だ?」

 

響「だって!もう少しこっちにいても…」

 

翼「並行世界の住人の私達が用もないのにいつまでもこちらの世界にはいるわけにはいかないからな」

 

未来「そうだよ。きちんと帰らなきゃ」

 

響「で、でも……」

 

シャロン「響お姉ちゃん、帰らないとダメだよ」

 

響「シャロンちゃん……」

 

シャロン「お姉ちゃんには、お姉ちゃんの世界を護る大切な役目があるんでしょ?」

 

響「それはわかってるけど…。でも…シャロンちゃん、大丈夫なの?」

 

シャロン「…うん。私なら、もう大丈夫だよ。だって、響お姉ちゃん達が私の居場所を作ってくれたから」

 

 そこへ、パルティータが扉を開けて出てきた。

 

パルティータ「そして、私がシャロンちゃんの手術を行ったからね」

 

未来「パルティータさん」

 

シャロン「(パルティータさん、何となく写真でしか見た事がない死んだお母さんに似てる…)」

 

 自分の手術をしてくれたパルティータにシャロンは死んだ母親の面影を見たのであった。

 

シャロン「八紘のおじさん達もお姉ちゃんと妹達を助け出してくれたから。だから、もう大丈夫だよ。心配しないで」

 

響「そっか…。うん、ならよかった」

 

 

 

公園

 

 そして、お別れの時が来た。

 

響「本当によかったよー…」

 

未来「泣かなくていいんだよ、響」

 

響「な、泣いてなんかないよ!」

 

シャロン「ふふ…」

 

響「それじゃ…私達、行くね、シャロンちゃん」

 

翼「短い間だったが、楽しかった」

 

シャロン「うん……私も」

 

クリス「元気でな、チビ」

 

シャロン「次に会う時は、きっとチビじゃないよ」

 

クリス「だな…ちゃんと大きくなれよ」

 

シャロン「あのね、響お姉ちゃん」

 

響「なあに?」

 

シャロン「私、頑張って響お姉ちゃんみたいになるから!」

 

響「シャロンちゃん…。うん。きっとシャロンちゃんならなれるよ。私なんかよりも、もっともっと強い人に」

 

シャロン「ただ強いだけじゃなくて、お姉ちゃんみたいに優しくて温かい人に、ね。だから、それまで少しの間、お別れ……」

 

響「うん。またね、シャロンちゃん。いつかまた絶対に会いに来るから」

 

シャロン「うん!またね、響お姉ちゃん!」

 

 響達は元の世界へ帰ったのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 翼達は報告を行っていた。

 

沙織「お疲れ様です」

 

弦十郎「そうか。これで向こうの世界の異変は収束したのか」

 

翼「はい」

 

星矢「結局、聖闘士のような小宇宙を使う敵と会わなかったのか?」

 

クリス「いや、それが…杳馬っていう黄金クラスの実力を持つ冥闘士でムカつく愉快犯がいてな、あたしらの邪魔をしてきやがったんだ!」

 

瞬「愉快犯?」

 

紫龍「その杳馬とかいう男はまともではないな」

 

氷河「それで、倒せたのか?」

 

翼「パルティータが倒したと思われていたのですが、どうやらまだ生きているようだ」

 

星矢「まだ生きてるだって!?母さんが倒したのにか!?」

 

クリス「しかも、奴は人間じゃないとかって並行世界の事件の首謀者が言ってやがったんだ」

 

氷河「人間じゃないだと?」

 

星矢「じゃあ、何者なんだよ」

 

クリス「それもわかんねえ。けど、このまま終わりそうにねえのは確かだ」

 

美衣「今まで並行世界を行き来できるのはシンフォギア装者や聖闘士、神だけです。しかし、今回の敵の杳馬が並行世界を行き来できるようになれば…」

 

紫龍「可能性は低いが、そうなったら大変な事になるぞ!」

 

沙織「(私も嫌な予感がします…。ひょっとすると、その杳馬という男はこの世界にやってくるのかも知れません…!)」

 

 杳馬が現れるのではないかと思う沙織であった。

 

 

 

病院

 

 元の世界へ戻った後、急いでパルティータは響と未来を連れてこの世界のシャロンが入院している病院に来た。

 

パルティータ「並行世界での問題解決が終わり、ただいま戻りました」

 

院長「これはパルティータ先生、こちらではあのシャロンという少女が先日、回復したのです!」

 

 シャロンという言葉を聞いた響と未来は反応した。

 

響「ねえ、未来。あの入院した子の名前はシャロンちゃんだったよね?」

 

未来「聞き間違えてなんかいないよ。本当にシャロンちゃんだよ!」

 

 平行世界へ行く前、入院した少女の名前がシャロンだとわかり、響と未来は驚いたのであった。

 

パルティータ「回復したのですか?」

 

院長「はい。一時は衰弱が激しくて手の施しようがなかったのですが、急に回復したのです。今日中には退院できます」

 

パルティータ「わかりました」

 

 この世界のシャロンが回復した事に響と未来はほっとした。

 

未来「あの子、元気になったみたい」

 

響「よかったぁ…」

 

 そして、母親のティナが来て、シャロンは退院した。

 

響「私、向こうのシャロンちゃんとこっちのシャロンちゃんを同時に救えたんだ…!」

 

未来「そうだよ。うふふっ!」

 

 互いに笑いあった響と未来であった。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回はシャロンとのお別れを描くと共に、杳馬がスクルドのメンバーを殺してデュプリケイターを手に入れ、並行世界へ渡ってしまう様子を描きました。
当初から杳馬は何度も登場して星矢達と戦う敵として出したので、今後も色々な邪魔をしてきます。
これで機械仕掛けの奇跡編は終わり、次は本編のAXZ編に突入します。
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