セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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107話 ラストリゾート

プラント

 

 装者達はステファンが運転している車で工場長の後を追っていた。

 

翼「化学兵器プラントは緒川さんにお任せして、こちらは逃亡した管理者を追跡中」

 

 それから翼は星矢達が任務を終えてバルベルデに向かっている事と、マリア達が最後のLiNKERを使った事を聞いた。

 

翼「マリア達が?」

 

弦十郎『藤尭、友里の救助に際し、錬金術師とエンゲージ。緊急の事態に際し、最後の麻森博士製のを使っている』

 

翼「LiNKER…。でも、いくら負担等が少ないとはいえ、本人に合わせて調整されていない以上、長くは持たないはず!」

 

響「急いで戻らないと!」

 

クリス「バカ、こっちも任務のど真ん中。仲間を信じるんだ!」

 

翼「それについてだが、任務が終わった星矢達がバルベルデに急行している」

 

未来「星矢さん達が!?」

 

翼「だから、今は任務に集中するんだ!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 本部では、エルフナインが悩んでいたのであった。

 

エルフナイン「ウェル博士のチップに記録されていた、LiNKER解析のレシピ、その解析は僕の役目なのに、いつまでもグズグズしてたから…」

 

 そんなエルフナインの頭に弦十郎は手を置いた。

 

エルフナイン「な、何を!?」

 

弦十郎「仲間を信じるのは俺達も同じだ」

 

エルフナイン「仲間を信じる……」

 

 そこへ、パルティータが報告のために来た。

 

パルティータ「アテナ様、あの怪物は神の力による怪物だと思われます」

 

沙織「神の力?」

 

弦十郎「沙織お嬢様の力と同質のものなのか?」

 

パルティータ「いいえ、違います。神の力には二種類あって、一つがアテナ様を始めとした人間とは異なる性質を持つ強大な小宇宙による力、もう一つが錬金術によって生み出されたものです。もっとも、後者は理論上のものであり、完成したのはごく最近のようですが。私の見た神の力は後者で間違いありません」

 

弦十郎「そうなのか」

 

パルティータ「それと、少し嫌な予感がするのでまた現地へ向かいます」

 

 そう言ってパルティータは再び出撃の準備をした。

 

 

 

バルベルデ

 

 マリア達は怪物と対峙していた。

 

マリア「2人共、大丈夫?」

 

あおい「ええ…」

 

調「後は私達に」

 

切歌「任せるデス!」

 

サンジェルマン「出てきたな、シンフォギア」

 

マリア「ようやく会えたわね、パヴァリア光明結社。今度は何を企んでいるの?」

 

サンジェルマン「革命よ。紡ぐべき人の歴史の奪還こそが、積年の本懐!」

 

 怪物が襲い掛かり、先にマリアが向かって斬ろうとしたが、怪物に効いてなかった。

 

切歌「攻撃が効いてないデス!」

 

 切歌と調は朔也とあおいを抱え、怪物の攻撃をかわした。

 

カリオストロ「や~だ~、ちょこまかと!」

 

プレラーティ「だったら、これで動きを封じるワケダ」

 

 プレラーティはアルカノイズを召喚したのであった。

 

調「アルカノイズ…!」

 

カリオストロ「さあ、どうす」

 

???「盛り上がってるねえ。僕も混ぜてくれないかい?」

 

 男の声がしたためにその場の全員がその方向を向くと、そこにはミラーがいた。しかも、ミラーは鎧を纏っていなかった。

 

サンジェルマン「何者だ、貴様!」

 

ミラー「僕の名前はミラー。退屈な日々が続いていたから何か面白そうな事がないかうろついてたけど、色々ドンパチやってて面白そうだね。僕も一緒に遊ばせてくれないかい?」

 

マリア「遊ぶですって!?」

 

サンジェルマン「我々もシンフォギア装者も命がけの戦いをしているというのに、遊び半分で戦いに来たというのか!?」

 

ミラー「そうだよ。君達だと本気で戦うのに値しないからねえ」

 

カリオストロ「な、何ですってぇ!?」

 

プレラーティ「遊び気分で戦うお前に錬金術師の恐ろしさを叩き込んでやるワケダ!」

 

 ミラーの態度にサンジェルマン達は装者そっちのけでミラーを襲った。

 

調「私達を無視してる…」

 

切歌「せっかく最後のLiNKERを使ったのに…」

 

マリア「いえ、今がチャンスよ!急いでこの場から離脱を!」

 

 サンジェルマン達がミラーに気を取られている隙にマリア達はその場を離れた。一方、ミラーの圧倒的な強さにサンジェルマン達はどうにもならなかった。

 

サンジェルマン「アルカノイズが一瞬で…」

 

ミラー「締めは…このアルケミーグローブで壊してあげよう。エレメントリジェクション!」

 

 ミラーは怪物に触り、エレメントリジェクションでバラバラにした。

 

ミラー「アルカノイズもあの蛇みたいな怪物もこんなものかい?これじゃあ、遊び足りないよ」

 

カリオストロ「あ、あのミラーって男、強すぎない…?」

 

プレラーティ「大丈夫。神の力はあんなもので破れはしないワケダ」

 

 ミラーがバラバラにした怪物は何事もなかったかのように復活した。

 

ミラー「へえ~、これは不思議だねえ…」

 

カリオストロ「なかった事になるダメージ」

 

プレラーティ「実験は成功したワケダ」

 

サンジェルマン「遂に錬金術は人智の到達点、神の力を完成させたわ」

 

ミラー「それが神の力なのかい?とても弱くて、無限復活したって僕の主である本物の神様には遠く及ばないよ」

 

サンジェルマン「何だと!?本物の神に遠く及ばないだと!?」

 

ミラー「そうだよ。でも、君達と遊ぶのも飽きたから、次はシンフォギア装者と遊ぶ事にするよ。また会えたら遊んであげるよ!」

 

 そう言ってミラーはマリア達を追いかけるために猛スピードで走り去った。

 

カリオストロ「ま、待ちなさいよ!」

 

サンジェルマン「放っておきなさい。神の力の完成は確認できたから、ヨナルデパズトーリを回収するわよ。それよりも、ティキの回収を急ぎましょう」

 

 ヨナルデパズトーリを回収し、ミラーの事は放っておくことにした。一方、マリア達の元へミラーが追いついてきた。

 

ミラー「はーい、君達…!」

 

マリア「もう追いつかれたなんて…」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 マリア達がミラーに追いつかれたのを一同はモニターで見ていた。

 

エルフナイン「この体はキャロルがくれたもの。いつだって僕は無力で」

 

沙織「それ以上言ってはいけません。あなたは無力どころか、シンフォギア装者みんなの支えになっているのですよ?」

 

美衣「もっと自信を持ってください。自信過剰はいけませんが、かといって自信が全くないというのもダメですよ」

 

エルフナイン「沙織さん…、美衣さん……」

 

 

 

バルベルデ

 

 マリア達はミラーに追いつかれ、構えた。

 

ミラー「次の僕の遊び相手は君達だよ。シンフォギアを壊させてくれるのなら、命は助けてあげるけど」

 

切歌「シ、シンフォギアを壊すデスと!?」

 

ミラー「そうだよ。このアルケミーグローブでね」

 

マリア「い……嫌よ!!」

 

 シンフォギアを壊すと聞いて、マリアは自分達が丸裸にされるのではと思ったのであった。

 

調「この…変態!!」

 

ミラー「ちょっとちょっと、僕は君達の裸が見たいからシンフォギアを壊すんじゃないよ。そこは勘違いしないでほしいなぁ」

 

調「信用できるわけないわよ!」

 

ミラー「強情な女の子達だなぁ。だったら…すぐに壊してあげるよ!」

 

 マリア達が反応する間もなく、ミラーはシンフォギアを壊そうとしたが…。

 

ミラー「何ッ!?」

 

 突如としてパルティータが現れ、ミラーの腕を掴んだのであった。

 

マリア「パルティータ…」

 

パルティータ「この場は私に任せて、急いでここから離脱して!」 

 

 急いでマリア達はその場を離脱した。

 

ミラー「君、なかなかやるね。遊びに緊張感を持たせるために刻衣を装着してなかったけど、君が相手なら装着しても面白そうだよ」

 

パルティータ「なら、装着すれば?私も装着するから」

 

 ミラーは刻衣を装着し、パルティータの方も聖衣を錬金術で引き寄せ、装着した。

 

 

 その頃、響達は村へ向かった。

 

ステファン「この先が俺の村です!軍人たちが逃げ込むとしたら、きっと…!」

 

 ステファンが駆け付けた先には、軍人たちがアルカノイズを出して村人を人質にとっていた姿だった。

 

未来「アルカノイズ…!」

 

男「へっ、わかってるだろうな?おかしな真似をしたらこいつら全員、アルカノイズで分解してやる!」

 

クリス「あんにゃろう…!」

 

 どう動くべきか響達が悩んでいる間にステファンはどこかへ行った。

 

男「要求は簡単だ。俺を見逃せ!さもないと、出なくていい犠牲者が出るぞ!」

 

翼「卑劣な…!」

 

男「お前らも、余計な手出しをしたら」

 

 そんな時、男の頭にサッカーボールがぶつかった。そのボールを蹴ったのはステファンであった。すぐにステファンは人質にされた少女を助け出した。

 

ソーニャ「ステファン!」

 

 人質にされた村人の中にソーニャがいたのをクリスは目撃した。

 

翼「続くぞ、立花!小日向!」

 

響「はい!」

 

未来「わかりました!」

 

 4人はギアを纏い、アルカノイズと応戦した。

 

男「くそ…、あのガキ…!」

 

 男はステファンの周囲にアルカノイズを出した。

 

ステファン「君は逃げて!」

 

 その矢先、ステファンの足にアルカノイズの分解器官が絡みついた。

 

ソーニャ「ステファン!」

 

クリス「……くそったれが!!」

 

 苦渋の決断でクリスはステファンの足を撃ち抜いたのであった。

 

男「ざまあみ」

 

???「ペガサス流星拳!」

 

 男とアルカノイズに流星のような光が降り注ぎ、アルカノイズは1発で消滅し、男はボコボコにされた。その攻撃をしたのは星矢達であった。

 

響「星矢さん、みんな!」

 

星矢「遅くなってすまん!」

 

 男はそのまま拘束された。

 

翼「プラントの管理者を確保。そして、星矢達が到着しました。ですが…民間人に負傷者を出してしまいました…」

 

沙織『負傷の内容を伝えてください』

 

翼「アルカノイズの分解器官に絡みつかれてしまい、それによる分解を阻止するために雪音が足を切断しました…」

 

沙織『分解を防ぐとはいえ、足を…。わかりました。負傷者は任務が終わり次第、パルティータに診てもらいましょう』

 

翼「パルティータに?わかりました」

 

 通信で翼は沙織の指示を聞いた。

 

ソーニャ「ステファン、ステファン…。どうして、こんな事を…」

 

クリス「ソーニャ…」

 

ソーニャ「クリス…あなたが弟を…あなたがステファンの足を!」

 

クリス「ああ…。撃ったのは、このあたしだ…」

 

ソーニャ「あなたとアリシアが私を許せないように、私もあなたが許せない!」

 

星矢「何を話してるんだ?」

 

紫龍「俺達は来たばかりで事情を知らない。何があったのか教えてほしい」

 

 翼はこれまでの事を星矢達に話した。

 

氷河「なるほどな」

 

瞬「アルカノイズに分解されるのを防ぐためだったとはいえ、クリスがステファンの足を…」

 

紫龍「ソーニャ、その状況においてはクリスの行動は最善だったと言わざるを得ない」

 

ソーニャ「最善!?ステファンの足を失う結果のどこが最善なのよ!」

 

星矢「いい加減にしろ!もしも、クリスの対応が遅れていたら、ステファンは死んでたんだぞ!それこそ一番嫌だろ!?」

 

 星矢の言葉にソーニャは何も言い返せなかった。

 

響「これから、どうしたらいいんだろう…」

 

未来「義足を付けるんだろうけど、せめて足を再生させる事ができたら…」

 

ソーニャ「それこそ、できるわけないでしょ!?生身の足を再生させるなんて…」

 

星矢「再生…?」

 

 その言葉に星矢はピンときた。

 

星矢「そうだ、その手があった!」

 

氷河「星矢?」

 

星矢「足を再生させればいいんだよ!未来もソーニャもいい打開策を言ってくれたじゃねえか!」

 

未来「私が…?」

 

ソーニャ「打開策って、そんな事があるわけ…」

 

紫龍「いや、欠損した腕が再生したという事例はある。その事例こそが…響なんだ」

 

 実際、融合症例の時に響はネフィリムに腕を喰いちぎられた際に暴走し、腕が再生したのであった。腕が再生した事がある響にソーニャは視線を向けた。

 

ソーニャ「腕が再生した事例があったなんて…」

 

響「そ、その…」

 

翼「そうか!あの時の現象を錬金術か何かで再現すれば、ステファンの失った足を再生させる事ができるかも知れない!」

 

紫龍「パルティータは最強の錬金術師だ。再生可能かどうか、頼んでみる価値はある」

 

星矢「俺の母さんに頼む事で決まりだな。行くぞ!」

 

 パルティータに再生可能かどうか頼みに行く事でその場の意見は一致した。

 

未来「よかったですね、ソーニャさん」

 

響「腕が再生した事は私にとっていい思い出じゃないんですけど、希望の光が見えてきた感じがしますよ」

 

 腕が再生した事例がある上、失ったステファンの足を再生できるかどうか頼みに行くという、夢みたいな事にソーニャは半信半疑であった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 マリア達は本部に帰還した。

 

あおい「観測任務より帰還しました」

 

弦十郎「ご苦労だった」

 

朔也「ああ、やっぱり本部が一番だ…。安心できる…」

 

沙織「ですが、まだ今夜は眠れませんよ」

 

朔也「で、死ぬ思いして手に入れたデータサンプルもありますしね。そのつもりです」

 

沙織「あの神の力による無敵の怪物の事ですね?」

 

弦十郎「パヴァリア光明結社を表舞台に引きずり出せたのは、一筋縄ではいかないようだな」

 

調「心配ない」

 

切歌「そうデス。次があれば必ず」

 

 マリアに見つめられ、言葉が途切れた切歌であった。

 

エルフナイン「ごめ」

 

美衣「それ以上はもう聞き飽きました。エルフナイン、謝るばかりではダメです。もっと自分を信じないと、レシピの解析なんてできませんよ」

 

 そう言って、美衣はエルフナインの頬をつついたのであった。

 

エルフナイン「な、何をするんですか、美衣さん!」

 

沙織「美衣さんは励ますためにさっきの事をしたのですよ、エルフナイン」

 

弦十郎「ところで、パルティータ君はどうした?」

 

マリア「それが…」

 

 

 

バルベルデ

 

 パルティータはマリア達を逃がした後、ミラーと戦っていた。

 

ミラー「いいねえ、聖衣とかいう鎧は。何だか無性に壊したい、壊したいよ!」

 

 ミラーは猛スピードでパルティータの背後をとったが、すぐにパルティータはアルケミーグローブをつけているミラーの腕を掴んだ。

 

パルティータ「遅すぎて後ろからでもバレバレよ!」

 

 そして、パルティータはミラーの腹に拳を叩き込んだ。

 

ミラー「うぐっ!凄いね。僕のスピードを見切る目といい、波一つ立たない水面のように動じない冷静さといい、賞賛に値するよ。でもね、もう片方武器があるんだよ!」

 

 ミラーはもう片方の腕にもアルケミーグローブを装備した。

 

ミラー「そして、まだ全力を出しちゃいないんだ!このスピードについてこれるかい!?」

 

 今までよりもミラーは速度を上げた。

 

パルティータ「まだスピードを上げられたのね」

 

ミラー「そうだよ!そして、このダブルエレメントリジェクションを受け切れるかな!?」

 

パルティータ「だったら、私の得意技を使うわよ!」

 

 ミラーはエレメントリジェクションを発動させるためにパルティータを掴もうとしたが、結果的にパルティータと取っ組み合いになった。

 

ミラー「エレメントリジェクション!」

 

 エレメントリジェクションを発動させたミラーであったが、パルティータの聖衣が砕けるどころか、逆にミラーのアルケミーグローブが腕ごと分解されてしまった。

 

ミラー「ぐ、ぐああああっ!僕の腕がぁあああああっ!!」

 

パルティータ「私は錬金術を極めて色々な攻撃ができるけど、最も得意としているのが分解なの。あなたと違って跡形もなく分解できるわ」

 

ミラー「オウル…、僕を本気で怒らせたね!神じゃないのに何千年も生きている君の人生をここで終わらせて」

 

???「はい、ストップ!ムキになりすぎですよ、ミラーさん」

 

 突如としてエウロパが現れた。

 

ミラー「エウロパ、この女は」

 

エウロパ「遊びに来ただけなのに、こうもムキになる必要はないですよ。それに、あなたの分解された腕もあの方の力でどうにかなるじゃないですか。もう帰りましょう」

 

ミラー「……それもそうだね。オウル、また会えたらこの戦いの続きをしよう!」

 

 そう言ってミラーはエウロパと共に去って行った。

 

パルティータ「思ったよりも強かったわね…。そろそろ本部へ戻りましょうか」

 

 パルティータは本部へ戻ろうとしたが、そこへ通信が入ってきた。

 

沙織『パルティータ、どうしてもあなたに診てもらいたい負傷者がいます。直ちに向かってくれませんか?』

 

パルティータ「わかりました」

 

 

 

オペラハウス

 

 サンジェルマン達はティキの回収作業をしていた。

 

サンジェルマン「(遥か昔、フィーネが遺した異端技術を収斂させ、独自に錬金術を編み出してきた私達、パヴァリア光明結社。だからこそ異端技術を独占し、優位を保とうとするフィーネとの激突は避けられず、統制局長アダムが神の力を形とする計画を進めてきたのだけど、要たるティキを失った光明結社は歴史の裏側からも追い立てられてしまう)400年の時を経て、フィーネは消滅した。そして米国政府を失墜させ、世界最悪のテロリスト、アリシア・バーンスタインも死んだ事で私達は遂に廻転の機会を繰り寄せた」

 

カリオストロ「でも、フィーネとは別に何千年にもわたってパヴァリア光明結社を追い続けている女がいるそうね」

 

 カリオストロが言った事にサンジェルマンは顔をしかめた。

 

プレラーティ「後はこのお人形をお持ち帰りすれば、目的達成ってワケダ」

 

カリオストロ「それはそれで面白くないわ」

 

サンジェルマン「天体運行観測機であるティキの奪還は結社の計画遂行に不可欠。何よりも……」

 

プレラーティ「この星に正しく人の歴史を紡ぐために必要なワケダ。そうだよね、サンジェルマン」

 

サンジェルマン「人は誰も支配されるべきではないわ」

 

カリオストロ「じゃ、ティキの回収はサンジェルマンにお願いして…。あーしはミラーのせいで逃がしてしまったあいつらへのお礼参りにでも洒落込もうかしら」

 

サンジェルマン「ラピスの完成を前にしてシンフォギア装者との決着を求めるつもり?」

 

プレラーティ「勝手な行動をするワケダ」

 

カリオストロ「ヨナルデパズトーリがあれば造作もない事でしょ?今までさんざんばら嘘をついてきたからね。せめてこれからは自分の心に嘘をつきたくないの」

 

 ミラーの介入もあって逃げられたマリア達を始末するためにカリオストロはオペラハウスを出ようとしたが…。

 

サンジェルマン「待ちなさい。保険を持たせておくわ」

 

カリオストロ「保険?」

 

サンジェルマン「念のためよ」

 

 とりあえず、カリオストロは保険をもらっておくことにした。

 

 

 

バルベルデ

 

 翼が車を運転して響達と共に負傷したステファンを都市部の病院へ送迎していた。

 

クリス「ソーニャは1年前にアリシアに会ったのか?」

 

ソーニャ「会ったわよ…。以前と違って氷のように冷たくなった殺人鬼そのものになって…。『クリスを不幸にしたお前を許せるものか』って。あの目に睨まれてから、当分の間は生きた心地がしなかった…。それから、アリシアはどうしたの?」

 

クリス「…死んだ…(くそっ、あたしの選択はどうしていつもこうなんだよ…!ステファンの足を吹っ飛ばしたのといい、アリシアを救えずに死なせてしまったのといい、どうして…!)」

 

 そんな中、パルティータが車に乗った。

 

星矢「母さん!」

 

パルティータ「アテナ様に言われて負傷者を診に来たわよ」

 

ソーニャ「この人は…?」

 

響「この人がステファン君の足を元通りにできるかも知れないお医者さんのパルティータさんなんです!」

 

未来「ステファンの足を再生させる事は可能なんですか?」

 

 パルティータはステファンの失った足を診てみた。

 

ソーニャ「やっぱり、夢みたいな事は…」

 

パルティータ「可能よ。私の錬金術による再生治療でステファンって子の足を再生させる事は」

 

ソーニャ「ほ、本当ですか!?」

 

パルティータ「本当よ。だって、私はこれまで何度も腕や足、臓器を再生させて患者を救った事があるのだから」

 

氷河「よかったな、クリス」

 

 ステファンの足が元通りになる事にクリスは少しほっとしたのであった。そんなクリスを気遣うかのようにステファンがクリスの足に触れたため、クリスをそっと添えてあげた。そんな中、翼に通信が入った。

 

翼「翼です」

 

弦十郎『エスカロン空港にて、アルカノイズの反応を検知した。現場にはマリア君達を向かわせている』

 

エルフナイン『マリアさん達はLiNKERの効果時間内で決着させるつもりです』

 

翼「了解です。都市部の病院に」

 

パルティータ「いえ、ステファンとそのソーニャとは今後の事で私やアテナ様と話をするわ。だから、早く救援に向かいなさい」

 

星矢「頼むぞ、母さん」

 

 パルティータはステファンを背負った後、緊急時にいつでも沙織の元へ戻れるように作り上げたテレポートジェムでソーニャと抱えているステファン共々移動した。

 

 

 

エスカロン空港

 

 空港では、カリオストロがアルカノイズを暴れさせていた。

 

プレラーティ「派手に暴れて装者達を引きずり出すワケダ」

 

カリオストロ「あら?手伝ってくれるの?」

 

プレラーティ「私は楽しい事優先。ティキの回収はサンジェルマンに押し付けたワケダ」

 

 ちょうどヘリが来て、そのヘリにマリア達がいた。

 

カリオストロ「待ち人来たり」

 

 そしてマリア達はギアを纏ってヘリから降りてきた。降りる際、調はα式百輪廻を放って次々とアルカノイズを切り裂いた。

 

プレラーティ「のっけからおっぴろげなワケダ。ならば、さっそく!」

 

 何かしようとしたプレラーティであったが、切歌に拘束された。

 

切歌「さっそく捕まえたデス!」

 

カリオストロ「もう、何やってるのよ!」

 

 愚痴をこぼしているカリオストロはマリアと交戦しており、カリオストロは光弾を放って応戦した。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 戦闘の様子は本部の方でも見ていた。

 

朔也「アガートラーム、シュルシャガナ、イガリマ、敵と交戦中」

 

あおい「適合係数、安定しています」

 

エルフナイン「皆さん…」

 

 

 

エスカロン空港

 

 マリアはカリオストロ相手に接近戦を繰り広げていた。

 

カリオストロ「今度はこっちでヨナルデパズトーリを」

 

マリア「はああああっ!」

 

 ヨナルデパズトーリを出そうとしたカリオストロだったが、マリアはその隙を与えずにカリオストロの顔面を殴ったのであった。

 

マリア「攻撃の無効化、鉄壁の防御。だけどあなたは無敵じゃない!」

 

カリオストロ「ああん!」

 

 そのままカリオストロは殴り飛ばされた。一方のプレラーティは錬金術で拘束を吹き飛ばし、切歌と調の2人と交戦した。

 

マリア「(繰り出す手数であの怪物の召喚さえ抑えてしまえば…!)」

 

 手数によるものか、マリアはカリオストロの防御壁を砕いた。しかし、その直後にギアからのバックファイアがマリア達3人を襲ったのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その様子は本部でもモニターに適合係数低下が表示されていた。

 

あおい「適合係数急激に低下!間もなくLiNKERの有効時間を超過します!」

 

弦十郎「ぬぅ!」

 

沙織「(皆さん、すぐに駆け付けてください…!)」

 

朔也「司令!シュルシャガナとイガリマの交戦地帯に滑走中の…!」

 

弦十郎「航空機だと!?」

 

 

 

エスカロン空港

 

 切歌と調がプレラーティと戦っている現場を航空機が通ろうとしていた。

 

副機長「人が!?割と可愛い子達が!?」

 

機長「構うな!止まったらこっちが死ぬんだぞ!」

 

 航空機はアルカノイズに追われており、止まれない状況だった。

 

切歌「調!」

 

調「切ちゃんの思う所はお見通し!」

 

マリア「行きなさい!後は私に任せて!」

 

切歌「了解デス!」

 

 プレラーティを弾き飛ばした後、切歌と調は航空機の方へ向かった。対するプレラーティは落としてしまったカエルのぬいぐるみを拾った。

 

プレラーティ「あの2人でどうにかなると思っているワケダ」

 

カリオストロ「でも、この2人をどうにかできるかしら?」

 

 それでもマリアは戦いを挑んだ。切歌と調はアルカノイズを倒しまくったものの、アルカノイズの数体の攻撃で航空機の車輪が分解されてしまった。

 

機長「うわあああっ!」

 

 すぐに調と切歌は飛行機を支えて走行を続けさせた。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その様子に発令所にいる一同は注視していた。

 

エルフナイン「諦めない心…」

 

 戦っている最中にマリアの体が青く光ったのであった。

 

エルフナイン「あれは…」

 

 何かに気付いたエルフナインは通信を入れた。

 

エルフナイン「皆さん、もう一瞬だけ踏みとどまってください!その一瞬は僕がきっと永遠にしてみせます!僕もまだLiNKERのレシピ解析を諦めていません!だから…諦めないで!」

 

 

 

エスカロン空港

 

 エルフナインからの通信を聞いた切歌と調は航空機を支えながら互いにギアを巨大化させ、共同作業で何とか航空機を建物にぶつけさせる事なく飛び立たさせた。一方、マリアはプレラーティとカリオストロ目掛けてHORIZON†CANNONを放った。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その様子は本部でもモニターに映し出されていた。

 

エルフナイン「流石です、皆さん…」

 

 

 

エスカロン空港

 

 大きな爆発があった後、マリア達のギアの装着が解除されたのであった。

 

マリア「はあ……」

 

 しかし、爆炎が上がり、現れたプレラーティとカリオストロは無傷であった。

 

切歌「まだ戦えるのデスか…!」

 

調「だけど、こっちはもう…」

 

カリオストロ「おいでませ。無敵のヨナルデパズトーリ」

 

 サンジェルマンが渡した保険とは、2体目のヨナルデパズトーリの事であった。マリア達の前に2体のヨナルデパズトーリが現れた。

 

調「不死身の怪物がもう1体…!」

 

プレラーティ「これはおまけというワケダ」

 

 泣きっ面に蜂のように、プレラーティはアルカノイズを大量に出した。

 

切歌「まだアルカノイズを…!」

 

マリア「時限式ではここまでなの!?」

 

 しかし、鎖が伸びてきた他、無数の龍や吹雪が降り注いでアルカノイズは一瞬で全滅した。

 

カリオストロ「アルカノイズが…!」

 

プレラーティ「何が起こったというワケダ!?」

 

マリア「この攻撃は…!」

 

 攻撃の主は紫龍、氷河、瞬の3人であった。

 

調「紫龍さん、氷河さん、瞬さん!」

 

切歌「おいしい所で登場デス!」

 

カリオストロ「ちょ、ここで黄金聖闘士登場!?」

 

プレラーティ「ただでさえ局長よりも強い黄金聖闘士が来たのは非常にまずいワケダ!だが、いくら黄金聖闘士やそれくらい強い聖闘士でも、ヨナルデパズトーリは」

 

星矢「ペガサス彗星拳!」

 

響「たあああっ!」

 

 今度は星矢と響がそれぞれヨナルデパズトーリに向かって拳を叩き込んだ。

 

プレラーティ「ふっ、効か」

 

 たとえ黄金聖闘士であってもヨナルデパズトーリを倒す事はできないと思っていたカリオストロとプレラーティであったが、星矢の拳の前にヨナルデパズトーリはあっけなくバラバラになり、蘇る事はなかった。

 

カリオストロ「い、一撃で…!?」

 

プレラーティ「こっちもおかしくなってるワケダ!」

 

 響の拳を受けたヨナルデパズトーリにも異変が起きていた。

 

調「無理を貫けば!」

 

切歌「道理なんてぶち抜けるデス!」

 

響「はあああああっ!」

 

 そのまま響はヨナルデパズトーリを貫き、ヨナルデパズトーリは消滅した。

 

プレラーティ「どういうワケダ?」

 

カリオストロ「もう!無敵はどこに行ったのよぅ!?」

 

響「だけど、私はここにいる!」

 

 遅れて翼とクリス、未来も来たのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はAXZ2話のラストリゾートとなっております。
AXZ本編と違って失ったステファンの足をパルティータの錬金術による再生治療で再生させる流れにしたのは、世界に響く平和の歌編でアリシアを救えなかった事がクリスにとってとても精神的にきついものだったので、その緩和措置のようなものです。シンフォギア本編でも2期目で響の腕が再生した事例があったので、それについても言及するシーンを入れました。
2体目のヨナルデパズトーリの登場はぶっちゃけ星矢にも神殺しの力がある事を示すためのかませです。星矢にも響のガングニールと同じ神殺しの力がある事にしたのは、神話の時代のペガサスの聖闘士がハーデスに傷をつけた事で神殺しとして言い伝えられているのであれば、哲学兵装として神殺しの力がそのペガサスの聖闘士の生まれ変わりに宿ってもおかしくないと思ったからです。
次はAXZ3話の内容となりますが、ここで機械仕掛けの奇跡編で登場し、並行世界を渡れるようになった杳馬が再登場します。

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