セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

109 / 198
109話 賢者の石

回想

 

 サンジェルマンは昔の事を思い出していた。

 

サンジェルマン「お母さんを助けてください!ずっと熱が下がらなくて、苦しそうで…お願いだから、助けて!お父さん!」

 

サンジェルマンの父「奴隷が私にすり寄るな!粉吹く虫の分際で!慰みを与えて女の落とし子だ。つけあがらせるな。奴隷根性を躾けておけ」

 

 結局、父親からの助けは得られず、サンジェルマンは母親の元に戻った。

 

サンジェルマン「ごめん、お母さん。今日も食べ物を手に入れられなくて……。でも、昨日のパンがまだ残っているから…」

 

 しかし、サンジェルマンの母親は息絶えていた。

 

サンジェルマン「お母さん? お母さん!?」

 

 それからもサンジェルマンはずっと奴隷としての苦しみを味わう事となった。そんなある日……。

 

貴族「うわああああっ!!」

 

 サンジェルマンを虐げていた貴族が従者共々何者かに殺され、サンジェルマンが閉じ込められている牢を開けたのであった。

 

???「あなたはもう自由よ」

 

サンジェルマン「……お母…さん……?」

 

 その女性はローブと黒髪が特徴で、サンジェルマンの母親とは全く似ていなかったのだが、サンジェルマンにはその女性が母親とそっくりに見えたのであった。

 

 

 

ホテル

 

 サンジェルマンは目が覚め、3つのハート型の宝石を見ていた。

 

サンジェルマン「ラピス…錬金の技術は支配に満ちた世の理を正す為に(遂にラピスは最終調整の段階に入った。私は、あの人にどこまで追いつけたのだろうか……)」

 

 他のホテルの部屋では…。

 

ティキ「はぁ…。退屈ったら退屈ー!いい加減アダムが来てくれないと…あたし、退屈に縊り殺されちゃうかもー!? かもかもー!」

 

プレラーティ「ふん」

 

カリオストロ「ねえ、サンジェルマンは?」

 

プレラーティ「私達のファウストローブの最終調整中なワケダ。踊るキャロルのお陰でずいぶんとはかどらせてもらったワケダ。あとは」

 

カリオストロ「けど、かな~~り昔にラピスを完成させたという錬金術師が1人だけいたという噂があるわよね。それって、本当かしら?」

 

プレラーティ「あり得ないワケダ。私達だって長い年月をかけてようやくラピスが完成しようとしているワケダ。なのに、私達より先にチフォージュ・シャトー抜きでラピスを完成させた錬金術師がいるなんて信じられないワケダ!」

 

カリオストロ「やっぱり、そーよねぇ~。もし、そんな錬金術師がいたら天才って次元のレベルじゃないわよ」

 

 自分達より先にラピスを完成させた錬金術師がいるという噂があったが、その噂は2人には信じられない事であった。そして、カリオストロはどこかへ行こうとしていた。

 

プレラーティ「どこに行こうとしているワケダ?」

 

ティキ「もしかしてもしかしたら、まさかの抜け駆け?」

 

プレラーティ「ファウストローブ完成まで待機できないワケダ」

 

カリオストロ「道具ごしっていうのがもどかしいのよねぇ~。あの子たちは直接触れて組み敷きたいの」

 

プレラーティ「はぁ…」

 

ティキ「直接触れたいって、まるで恋のような執心じゃなーい。あーん! あたしもアダムに触れたい! むしろ散々っぱら触れ倒されたいー!」

 

 

 

松代

 

 一方、松代では住民の退去が行われており、そんな中を響達が乗った装甲車が走っていた。

 

弦十郎「先の大戦末期、旧陸軍が大本営移設の為に選んだここ松代には……特異災害対策機動部の前身となる非公開組織…風鳴機関の本部が置かれていたのだ」

 

響「風鳴機関?」

 

未来「どんな組織なのですか?」

 

弦十郎「資源や物資に乏しい日本の戦局を覆すべく、早くから聖遺物の研究は行われてきたと聞いている」

 

翼「それが天羽々斬と同盟国ドイツからもたらされたネフシュタンの鎧やイチイバル…そしてガングニール」

 

 その言葉に響は反応した。

 

慎次「バルベルデで入手した資料は…かつてドイツ軍が採用した方式で暗号化されていました。そこで、ここに備わっている解読機にかける必要が出てきたのです」

 

翼「暗号解読機の使用にあたり、最高レベルの警備体制を周辺に敷くのは理解できます。ですが…退去命令でこの地に暮らす人々に無理を強いるというのは…!」

 

弦十郎「守るべきは人ではなく、国…」

 

翼「!?」

 

響「人ではなく…」

 

弦十郎「少なくとも、鎌倉の意志はそういう事らしい」

 

???「それに、この前はその事でアテナ様や私達と大いにもめてしまって、向こうから斬りかかってきたからブン殴ってボコボコにしたのよ」

 

 声と共にパルティータが来た。

 

未来「パルティータさん!」

 

弦十郎「やっぱり、こういった事態になったか…!」

 

パルティータ「当然でしょ?国とは人がいなきゃ成り立たない。それを忘れて護国だなんて、相当なボケ爺さんでしかないわ。とっととくたばるか、隠居して大人しくしてほしいものだわ」

 

弦十郎「(親父の権威に屈しないばかりか、ボケ爺さん呼ばわりした挙句、逆に殴ってボコボコにしてしまうとは…)」

 

響「やっぱり、人を護る事はいつの時代でも変わらない正義ですよね?」

 

パルティータ「そうよ。あのボケ爺さんが変な事をしたら、すぐにタコ殴りにしてあげるからね」

 

弦十郎「(やっぱり前世とはいえ、星矢の母親とだけあって、とんでもない人だ…。こういった権威に屈しない聖闘士が協力者になってくれてよかったとは思うが…)」

 

 自分のできない事を平然とやってくれる星矢達聖闘士や沙織には感謝してるものの、訃堂との衝突でとんでもない事態になる事を危惧する弦十郎であった。

 

 

 

風鳴機関

 

 コピーの資料は解析にかけられた。

 

パルティータ「アテナ様の提案で資料をコピーし、原紙をグラード財団に、コピーを風鳴機関に置く事にしました。今、解析している資料はコピーの方で、グラード財団の方でも並行して解析が進められています。星矢達が松代に来ていないのはその防衛のためでもあります」

 

響「だから、星矢さん達は来てないんだ」

 

弦十郎「なるほど、敵の目を欺くのにはちょうどいい策だな。万一、松代が跡形もなく破壊されても大丈夫だ」

 

パルティータ「風鳴機関にある資料についても、グラード財団で一時保管する事にしてて、その移送作業が行われています。ボケ爺さんともめたのもこれも一因になってて…」

 

慎次「沙織お嬢様の策は万一でも被害を最小限に留められますが、光政翁の孫娘である沙織お嬢様をあの人が気にいる筈がありませんから…」

 

弦十郎「翼」

 

翼「ブリーフィング後、雪音、立花を伴って周辺地区に待機。警戒任務にあたります」

 

弦十郎「うむ」

 

調「あの…私達は何をすれば?」

 

 

 

松代

 

 マリア達は周辺のパトロールにあたり、未来はその護衛をする事となった。

 

調「9時方向異常なし」

 

切歌「3時時方向も異常なし…」

 

マリア「LiNKERがないから、LiNKERを必要としない装者になったあなたに護衛をしてもらって済まないわ」

 

未来「いいんです。私もマリアさん達に何かあった時のために護衛をする事にしましたから」

 

切歌「あーーっ!?」

 

 切歌は何かを見つけた。

 

切歌「あそこにいるデス!252!レッツラゴーデス!」

 

 切歌は見つけた何かの方へ走った。

 

未来「待って、切歌ちゃん!あれは…」

 

切歌「早くここから離れて…って、こわっ!人じゃないデスよ!!」

 

 見つけたのはカカシであった。

 

調「はあ…最近のカカシはよくできてるから…」

 

マリア「LiNKERの補助がない私達にできる仕事はこのくらい……」

 

切歌「今は住民が残っているかを全力で見回るのデス」

 

マリア「でも力みすぎて空回りしてるわよ」

 

切歌「正直、何かやってないと焦ってわちゃわちゃするデスよ」

 

調「うん…」

 

未来「私もそういった気持ちには何度もなったから、今は落ち着いて自分のできる事をしないと」

 

切歌「よし!任務再開デス!」

 

 見回りを再開した切歌だったが、その直後におばあさんとぶつかった。

 

マリア「あっ」

 

調「切ちゃん、後ろ」

 

切歌「ひゃーい!?」

 

 2人が忠告した際にはもう手遅れだった。

 

未来「大丈夫ですか?」

 

切歌「ごめんなさいデス!」

 

おばあさん「いやいや、こっちこそすまないね」

 

マリア「政府からの退去命令が出ています。急いでここを離れてください」

 

おばあさん「はいはい、そうじゃねえ。けどトマトが最後の収穫の時期を迎えていてねえ」

 

調「わぁ!」

 

切歌「おいしそうデス!」

 

おばあさん「おいしいよ、食べてごらん」

 

未来「それなら、お言葉に甘えて」

 

 切歌と未来はトマトを食べてみた。

 

未来「とても甘くておいしい!」

 

切歌「調も食べるデスよ!」

 

調「いただきます」

 

 調もトマトを食べた。

 

調「ほんとだ!近所のスーパーのとは違う!」

 

おばあさん「そうじゃろう。丹精込めて育てたトマトじゃからな」

 

マリア「あ、あのね、お母さん…」

 

???「きゃは~ん、みぃ~つけたっ」

 

未来「あなたは…バルベルデに現れた錬金術師!」

 

 ぶりっ子のような声の主はカリオストロであった。おばあさんを庇うかのように4人は前に出た。

 

カリオストロ「あらま、じゃない方色々残念な三色団子ちゃん達と信号機のおまけか」

 

調「三」

 

マリア「色」

 

切歌「にぃ~っ!団子とはどういう事デスか!?」

 

カリオストロ「見た感じよ。怒った? でも、イグナイトがない信号機のおまけはともかく、がっかり団子三姉妹を相手にしてもね~。それとも、ギアを纏えるのかしら?」

 

調「そんなに言うのなら!」

 

切歌「目にもの見せてやるデスよ!」

 

 2人はギアを纏おうとしたが…。

 

未来「挑発に乗っちゃダメ!ここは私に任せて、おばあさんを!」

 

マリア「わかったわ。切歌、調、今日は私達にできる事を全力でやるんでしょ!」

 

 未来が前に出て、マリアは切歌と調を制止させた。

 

カリオストロ「やっぱりお薬を使い切って戦えないのね。それならそれで、信号機が点滅する前に、片付けてあげちゃう!」

 

 カリオストロはアルカノイズを出した。それに対応すべく、未来はギアを纏ったのであった。

 

 

 

装甲車

 

 アルカノイズの出現は検知された。

 

朔也「アルカノイズの反応を検知!未来ちゃんはアルカノイズと交戦を開始しました!」

 

弦十郎「ぬう!錬金術師は破格の脅威だ!急いで翼達に知らせるんだ!」

 

 

 

松代

 

 アルカノイズ出現はただちに他の装者にも伝えられた。

 

朔也『出現ポイントS16!数、およそ50!現在、マリアさん達の護衛をしている未来ちゃんは交戦中!』

 

響「了解です、すぐに向かいます」

 

クリス『あたしに任せな!こっちの方が近くて、すぐに救援に行けるからな!』

 

 そう言ってクリスはギアを纏い、ミサイルに乗って未来の救援に向かった。その頃、カリオストロはアルカノイズをマリア達にけしかけ、自身は未来と交戦していた。

 

カリオストロ「イグナイトのないあなたなんて、チョチョイのチョイで倒せるわよ!」

 

 カリオストロは光弾を投げつけまくったが、未来はギアの飛行機能で低空飛行しながら回避していた。

 

カリオストロ「すばしっこさだけは一人前のようね!」

 

未来「素早いだけが私の取り柄じゃない!」

 

 そう言って未来は扇を展開し、閃光を放った。

 

カリオストロ「そんな攻撃、簡単に防げ」

 

 防御壁で閃光を防ごうとしたカリオストロであったが、閃光は防御壁を分解してカリオストロに直撃したのであった。

 

カリオストロ「いや~ん!」

 

未来「錬金術を…分解した…?」

 

 自分の攻撃が聖遺物やシンフォギアだけでなく、錬金術にも効果的である事に未来自身も驚いたのであった。

 

カリオストロ「何よ、あなたの攻撃!とっちめて」

 

 今度は矢の雨が降り、クリスが来た。

 

未来「クリス!」

 

クリス「アルカノイズは全部倒してきたぞ。よく持ち堪えられたな」

 

未来「一気に決めよう、クリス!」

 

 未来とクリスは大技を決めようとしたが…。

 

カリオストロ「一気に勝負を決めるために焦って大技。その隙が……命取りなのよね」

 

 カリオストロは接近し、攻撃を叩き込もうとした。

 

クリス「ああ。誘い水に乗って隙だらけだ」

 

 なんと、カリオストロの背後に響がいた。

 

響「せぃやぁっ!!」

 

カリオストロ「うわっ!」

 

 響は足を力強く踏み込み、カリオストロに強烈な腹パンを決めて吹っ飛ばした。

 

響「内なる三合。外三合より勁を発する。これなる拳は六合大槍!映画は何でも教えてくれる!」

 

カリオストロ「くっ…」

 

 立ち上がったカリオストロの近くに何かがあった。

 

カリオストロ「!?壁?」

 

???「壁呼ばわりとは不躾な。剣だ!」

 

 何かは巨大な剣であり、翼も来たのであった。

 

カリオストロ「信号機とそのおまけがまたチカチカと!」

 

サンジェルマン『私の指示を無視して遊ぶのはここまでよ』

 

カリオストロ「ちょうど気になる事もあったから、帰らないとね。次の舞踏会は新調したおべべで参加するわ。楽しみにしてなさい。バァ~イ♪」

 

 ちょうど未来のギアの件をサンジェルマンに伝えたかったカリオストロはテレポートジェムで撤退したのであった。その様子を透明化していたパルティータが見ていたのであった。

 

 

 

避難所

 

 マリア達と出会ったおばあさんは無事に避難所に到着した。

 

おばあさん「ありがとね」

 

マリア「いえ」

 

切歌「お水もらってくるデスよ」

 

調「待って、切ちゃん。私も一緒に!」

 

 切歌と調は水をもらいに行った。

 

おばあさん「ふふ…元気じゃのう」

 

マリア「お母さん、お怪我はありませんか?」

 

おばあさん「大丈夫じゃよ。むしろあんたらの方が疲れたじゃろうに。わしがグズグズしていたせいで迷惑をかけてしまったねえ」

 

マリア「いえ…私達に護る力があれば、岡さんをこんな目には…」

 

おばあさん「そうじゃ!せっかくだから、このトマトあんたも食べておくれ」

 

 おばあさんはマリアにトマトを食べるように言った。

 

マリア「私、トマトはあんまり…」

 

おばあさん「ふふふ…」

 

マリア「では、ちょっとだけいただきます」

 

 マリアはトマトを食べてみた。

 

マリア「甘い…フルーツみたい!」

 

おばあさん「トマトをおいしくするコツは厳しい環境に置いてあげる事。ギリギリまで水を与えないでおくと自然と天海を蓄えてくるもんじゃよ」

 

マリア「厳しさに、枯れたりしないのですか?」

 

おばあさん「むしろ甘やかしすぎるとダメになってしまう。大いなる実りは厳しさを耐えたこそじゃよ」

 

マリア「厳しさを耐えた先にこそ」

 

おばあさん「ふふふ…トマトも人間も、きっと同じじゃ」

 

 

 

松代

 

 それより数時間前、午後3時ぐらいの時に響達はパルティータに呼ばれて空き地に来た。

 

響「何かあったんですか?」

 

パルティータ「あなた達にあの錬金術師達と戦う際に伝えておきたい事があるの。次からあの錬金術師達と戦う時は、絶対にイグナイトを使わないように」

 

翼「イグナイトを…使うな…?」

 

クリス「カルマノイズで慣れっこだけど、どういう事なんだよ!」

 

パルティータ「口で説明するより、実際に経験した方が手っ取り早いわ。ギアを纏ってイグナイトを使ってみて」

 

響「わかりました!」

 

 言われた通りに響達はギアを纏い、イグナイトを使った。

 

パルティータ「行くわよ!」

 

 パルティータは響達が反応できない速度でパンチを打ち込んだ。すると、今までにない苦痛が響達を襲った。

 

響達「うわああああっ!!」

 

未来「何が…起こったの…?」

 

 パルティータに殴られただけで響達のイグナイトは解除されてしまった。

 

クリス「な、何なんだよ…」

 

翼「まるで…イグナイトの力を引きはがされたような…」

 

パルティータ「こうなったのは、賢者の石、ラピス・フィロソフィカスによるものよ」

 

 いつもかけているペンダントについた黄金に輝くハート型の宝石をパルティータは響達に見せた。

 

響「これが…賢者の石…」

 

未来「黄金に輝いてて綺麗…」

 

パルティータ「完全を追い求める錬金思想の到達点にして、その結晶体。これには病を始めとした不浄を焼き尽くす作用があるの。だから、私が殴っただけでイグナイトが強制解除されたってわけ」

 

翼「なるほど…」

 

パルティータ「次に錬金術師達が来るときはラピスの力を使ったファウストローブを使うわ。だから、イグナイトは使わないように」

 

クリス「上等だ!カルマノイズが3体いるようなもんと考えれば、話が早い!」

 

パルティータ「治療して万全の状態にして備えましょう」

 

響「あの…ラピスは金色なんですか?」

 

パルティータ「違うわ。ラピスの本来の色は赤なの。でも、この私の持つラピスは完成してから色々と改良を重ねた結果、出力も桁違いな上、金色になって『黄金のラピス』と名付けたの」

 

未来「黄金のラピス……」

 

パルティータ「さ、戻りましょう」

 

 

 

装甲車

 

 そして、しばらく時間が過ぎてエルフナインは調べ物をしていたのであった。

 

マリア「調べ物、順調かしら?」

 

 エルフナインが調べていたのはレセプターチルドレンのデータであり、それを見たマリアは衝撃を受けた。

 

マリア「これ、もしかして……」

 

エルフナイン「はい。少しでもLiNKERの完成を求められている今、必要だと思って」

 

マリア「私達の忌まわしい想い出ね。フィーネの器と認定されなかったばかりに適合係数の上昇実験に充てがわれた孤児達の記録……」

 

 

 

回想

 

 それは、マリア達がまだ適合訓練をしていた頃の事であった。

 

マリア「ああああああっ!」

 

 ギアからのバックファイアに耐えられず、マリアは倒れてしまった。

 

マリア「無理よ、マム…。やっぱり私はセレナみたいになれやしない……」

 

ナスターシャ「マリア、ここで諦める事は許されません。悪を背負い、悪を貫くと決めたあなたは苦しくとも耐えなければならないのです」

 

 

 

マリア「マム……」

 

 そんな中、警報が鳴った。

 

あおい「多数のアルカノイズ反応。場所は……松代第三小学校付近から風鳴機関本部へ侵攻中」

 

切歌「トマトおばちゃんを連れていったところデス!」

 

調「マリア!」

 

マリア「ええ!」

 

 マリア達はどこかへ行こうとした。

 

エルフナイン「いけません!皆さんにはLiNKERがありません!」

 

弦十郎「ん?どこへ行く?」

 

マリア「敵は翼達に任せるわ。私達は民間人の避難誘導を」

 

弦十郎「わかった。無茶はするなよ」

 

マリア「ええ」

 

 

 

松代

 

 響達はアルカノイズと応戦していた。パルティータの言った通りにイグナイトがギアに搭載されていない未来以外はイグナイトを使わずに。

 

カリオストロ「ちょっと、あいつら全然イグナイトを使わないわよ!」

 

プレラーティ「どういうワケダ?」

 

カリオストロ「けど、使っても使わなくてもあーし達の勝利は確定してるんだから!」

 

サンジェルマン「確かにそうね。それと、あの紫のシンフォギアの攻撃に気を付けるべきなのは本当なの?」

 

カリオストロ「本当よ!とにかく、行きましょうか!」

 

 3人はスペルキャスターを作動させ、ファウストローブを纏って降りてきた。

 

クリス「遂に来やがったか…」

 

カリオストロ「あなた達、まさかイグナイトを使わずにあーし達に勝つつもり?」

 

クリス「ああ、そうさ!お前らなんざにイグナイトなんかいらねえよ!」

 

翼「そのファウストローブは賢者の石、ラピス・フィロソフィカスによるものであろう。それは事前に把握した!」

 

カリオストロ「ええっ!?もう知ってたの!?」

 

プレラーティ「ラピスの情報は漏れていないはず…。それはあり得ないワケダ!」

 

サンジェルマン「(私はもちろんだけど、プレラーティもカリオストロもラピスの情報を漏らしたとは思えない…。だとすると、考えられる可能性は一つだけ…ラピスを作り上げた錬金術師がS.O.N.Gに協力している…。私達以外でラピスを作り上げた錬金術師は…あの人しか考えられない…!)」

 

カリオストロ「ラピスを知っていたのは予想外だったけど、あなた達じゃ新しいおべべを着たあーし達には勝てないわよ!」

 

 そう言って3人は襲い掛かってきた。カリオストロはクリスと、プレラーティは翼と、サンジェルマンは響と未来の2人と交戦した。

 

クリス「やっぱ、知性のあるカルマノイズが3体いるようなもんだぞ!」

 

カリオストロ「カルマノイズ?何を言ってるのかは知らないけど、あーし達には勝てっこないわよ!」

 

 カルマノイズの時と同様にイグナイトなしで戦わざるを得ないため、クリスも翼も押されていた。

 

翼「ラピス・フィロソフィカスのファウストローブの力がこれほどのものとは…!」

 

プレラーティ「長い年月をかけ、そしてチフォージュ・シャトーにて解析した世界構造のデータを利用…もとい、応用させて錬成したワケダ。これは私達の自信作なワケダ!」

 

 翼の方はプレラーティのけん玉のような武器に押されまくっていた。クリスの方もカリオストロの光弾乱射で劣勢になっていた。

 

カリオストロ「そろそろ勝負を決めさせてもらうわ!」

 

 そう言ってカリオストロはクリスに接近した。

 

クリス「何っ!?」

 

カリオストロ「漫画を読んで編み出したあーしのブローを受けてみなさい!ジェットォ、アッパー!!」

 

 カリオストロは強烈なアッパーをクリスに決めた。

 

クリス「うわああああっ!!」

 

 そのままクリスは強く吹っ飛ばされ、車田落ちしたのであった。

 

翼「雪音!」

 

プレラーティ「お前も終わりなワケダ!」

 

 プレラーティも勝負を決めるべく、けん玉の玉を翼にぶつけた。

 

翼「ぐはっ!」

 

 攻撃を受けた翼は吹っ飛ばされ、追い討ちの2発目を受けてダウンしたのであった。一方、サンジェルマンの方は2人とは違い、響と未来の2人に思わぬ苦戦をしていた。

 

サンジェルマン「錬金術が分解されている!?」

 

 ファウストローブを完成させた事で完全に勝利が確定したと思い込んだサンジェルマンであったが、神獣鏡の凶祓いによって錬金術が分解されて攻撃が防がれ、防御も無力化されていたのであった。

 

未来「やっぱり、私の攻撃は錬金術を無力化できる!」

 

響「未来が傍にいてくれたら、私は誰が相手でも負けない!」

 

 錬金術による防御を未来の攻撃で分解し、そこをすかさず響が攻撃を入れる事でサンジェルマンと一進一退の攻防を繰り広げたのであった。

 

サンジェルマン「(私達は通常時のシンフォギアの戦闘力を過小評価してしまったかも知れない…。まさか、こんな結果になってしまうとは…)」

 

響「未来、これなら!」

 

未来「きっと、勝てるかも知れない!」

 

 サンジェルマンが思わぬ苦戦をしているのを翼とクリスをダウンさせたカリオストロとプレラーティが目撃した。

 

カリオストロ「サンジェルマンが苦戦してる?」

 

プレラーティ「助けが必要なワケダ!」

 

 響と未来はサンジェルマンに大技を決めようとした。

 

響「これで」

 

カリオストロ「サンジェルマン!」

 

プレラーティ「やらせはしないワケダ!」

 

 カリオストロとプレラーティが加勢し、プレラーティは未来にけん玉の玉をぶつけ、カリオストロは必殺ブローのジェットアッパーを響に決めたのであった。

 

響「うわああああっ!!」

 

未来「きゃああああっ!!」

 

 2人の攻撃をまともに受けた響と未来は倒されてしまった。

 

カリオストロ「大丈夫?」

 

サンジェルマン「すまない。カリオストロの忠告に半信半疑だったためにこのような苦戦をしてしまって…」

 

カリオストロ「いいのよ。あーし自身も紫のシンフォギアの錬金術の無力化は半信半疑だったし」

 

プレラーティ「予定は狂ったが、結局は勝利できたワケダ」

 

 ちょうどサンジェルマンは響と視線が合った。

 

響「あなたたちがその力で誰かを苦しめると言うのなら私は……」

 

サンジェルマン「誰かを苦しめる?慮外な。積年の大願は人類の解放。支配のくびきから解き放つことに他ならない」

 

響「人類の解放…。だったらちゃんと理由を聞かせてよ。それが誰かのためならば、私達きっと手を取り合える」

 

サンジェルマン「手を取り合う?」

 

カリオストロ「サンジェルマン、さっさと」

 

???「その子達はやらせないわよ」

 

プレラーティ「何者なワケダ?」

 

 声がした方を向くと、月の光に照らされていたパルティータの姿があった。そして、パルティータは建物から降りてきた。

 

サンジェルマン「あなたは……!」

 

パルティータ「久しぶりね、サンジェルマン。こうやって対面したのは数百年ぶりかしら?」

 

カリオストロ「数百年ぶり!?サンジェルマン、あの女を知ってるの?」

 

サンジェルマン「……あの人は…、私の先生だ……!」

 

カリオストロ「って事は……サンジェルマンの師匠!?」

 

パルティータ「そう、私こそがサンジェルマンの師のパルティータよ」

 

響「あの人が…パルティータさんの弟子…」

 

 初めてパルティータに会った際に言っていた喧嘩別れした弟子がサンジェルマンであった事に響は驚いた。

 

サンジェルマン「先生…やはり、あなたは私の邪魔をするというのか…!」

 

パルティータ「そうよ。あなたがやろうとしている事は大きな災いを目覚めさせてしまう事なの。今からでも遅くはないから、考え直しなさい」

 

サンジェルマン「あの時と同じ事を…!たとえ先生が相手でも、人類の解放の邪魔はさせない!」

 

 怒った様子でサンジェルマンは銃弾を放ち、その銃弾は鋭い氷となってパルティータを襲ったが、パルティータは全弾受け止めた。

 

パルティータ「私の元を離れてからも錬金術を磨いたようね。でも、まだまだよ!」

 

 瞬時にパルティータはサンジェルマンに接近し、拳を打ち込んだ。

 

サンジェルマン「がはっ!」

 

 拳1発でサンジェルマンは吹っ飛ばされた。

 

プレラーティ「サンジェルマン!」

 

カリオストロ「いくらサンジェルマンの師匠でも、これ以上はやらせないわよ!」

 

 2人はパルティータに向かっていったが…。

 

サンジェルマン「2人共迂闊に近づくな!」

 

 プレラーティはけん玉で攻撃したものの、パルティータは指先だけで受け止めた。

 

プレラーティ「指先だけで微動だにしないだと!?ぐあっ!」

 

 そのままパルティータが押すと、玉は物凄い勢いでプレラーティの方へ飛んでいき、プレラーティは吹っ飛ばされた。

 

カリオストロ「プレラーティ!だったら、あーしのとっておきのブローをお見舞いしてあげるわ!ブ~~メラン!!」

 

 カリオストロは錬金術で風の力も込めたブーメランフックを放ったが、パルティータはカリオストロの目からはすり抜けたように攻撃を回避した。

 

カリオストロ「すり抜けた!?もう一度、ブー」

 

 ブーメランフックを再び放とうとしたカリオストロだったが、その前にパルティータの電撃の力も込めたパンチがその場にいる誰もが気付かないほどの速さで5発も打ち込まれていた。

 

カリオストロ「な、何なのよ…!」

 

パルティータ「スペシャルローリングサンダー。電撃もおまけでね」

 

カリオストロ「やってくれるじゃない。これならどう?」

 

 カリオストロはハート型のエネルギー弾を飛ばす攻撃したが、パルティータは防御壁も使わずに防ぎ、すぐに反撃でカリオストロの攻撃をコピーしたかのように同じ攻撃をしてカリオストロを吹っ飛ばした。

 

カリオストロ「いやん!あーしの技をコピーしてくるなんて!」

 

サンジェルマン「先生は例えまだ習得していない錬金術でも、先生にとって術式がとても難しいものでなければ、一度見ただけで習得できてしまう…!」

 

プレラーティ「なっ!?それでは、術式さえわかればどんな錬金術でも使える局長の完全上位互換なワケダ!」

 

サンジェルマン「そう。先生は錬金術師であり、黄金聖闘士クラスの実力の聖闘士でもある。一度見ただけで未習得の錬金術を習得できるのも、『聖闘士に一度見た技は二度通じない』を応用したものだ…!」

 

プレラーティ「だからサンジェルマンは小宇宙の事を知っていた上、あの女は錬金術なしでも圧倒的に強いワケダ…!」

 

 サンジェルマンが語る師のパルティータの圧倒的な実力と錬金術のセンスにカリオストロとプレラーティは叩きのめされながらも納得したのであった。そして、ペンダントとして付けている黄金のラピスに気付いた。

 

カリオストロ「(色は違うけど、あれはラピス…?)」

 

 しかし、ある光に気付いた。

 

カリオストロ「あの光…!」

 

 

 

ホテル

 

 ホテルで本を読んでいたティキは何かに反応した。

 

ティキ「ドキドキがやってくる!」

 

 

 

松代

 

 サンジェルマン達がパルティータに叩きのめされた後に1人の男が右手から光を放ちながら空中に浮かんでいた。

 

サンジェルマン「統制局長アダム・ヴァイスハウプト!どうしてここに!?」

 

アダム「ふっ」

 

 帽子をとり、右手の光が強くなるのと同時にアダムは服が燃えて全裸になった。

 

プレラーティ「何を見せてくれるワケダ…!?」

 

アダム「金を錬成するんだ。決まってるだろう。錬金術師だからね、僕達は!パルティータ、君はこの攻撃に大丈夫でも、他はどうかな!?」

 

 アダムが右手を上げると錬成陣が発生し、右手の炎が超巨大化した。それにパルティータは驚いたのであった。

 

パルティータ「こんな場所で黄金錬成を!?」

 

 対するパルティータは錬成陣を発生させ、ビームを発射しようとしていた。

 

 

 

装甲車

 

 アダムとパルティータの攻撃が放たれようとしているとんでもない事態に弦十郎達は驚いていた。

 

エルフナイン「まさか、錬金術を用いて常温下での核融合を!?」

 

弦十郎「それだけじゃない、パルティータ君もそれに対抗してとんでもない攻撃をしようとしている!」

 

朔也「新たな敵生体に加え、交戦地点にてアガートラーム、シュルシャガナ、そしてイガリマの反応を確認!」

 

慎次「マリアさん達が!?」

 

あおい「LiNKERを介さずの運用です!このままでは負荷に体が引き裂かれます!」

 

 

 

松代

 

 マリア達は響達の救助のためにギアを纏い、交戦場所へ向かっていた。

 

パルティータ「サンジェルマン、2人と一緒に早く逃げて!」

 

 逃げるように言うパルティータにサンジェルマンは戸惑いを見せつつも、2人と共にテレポートジェムで撤退したのであった。一方のマリア達は何とか倒れている響達を抱え、その場を離脱しようとしていた。

 

 

 

装甲車

 

 アダムとパルティータの攻撃の推定破壊力に朔也は驚いていた。

 

朔也「二つの膨張し続けるエネルギーの推定破壊力、10メガトン超!」

 

弦十郎「ツングースカ級だとぉ!?」

 

エルフナイン「ツングースカ級のエネルギー同士がぶつかったら、大変な事になります!!」

 

 

 

松代

 

 そして、アダムの黄金錬成とパルティータのビームが放たれ、ぶつかったのであった。

 

切歌「ど、どえらい攻撃同士がぶつかり合ってるデスよ!!」

 

調「急いで逃げなきゃ!」

 

マリア「例えこの身が…砕けてもおおおおおっ!!」

 

 またマリアの体が青い光を放った。そして、黄金錬成とビームのぶつかり合いはとんでもない大爆発を発生させる事となり、辺り一面を吹っ飛ばすほどの衝撃が発生したのであった。そして爆発が収まってから、アダムは辺り一面を見て、右手の金を見たのであった。

 

アダム「ふふふ…はははははっ!ビタイチか。安いものだな、命の価値は。フフフハハハ! ハーッハッハッハッハ!」

 

 その一部始終を杳馬が見ていた。

 

杳馬「これまたどえらいもんを見ちまったぞ!これからどーなっちゃうんだろうね~」

 

 これからどうなるのか楽しみな杳馬であった。




これで今回の話は終わりです。
今回はサンジェルマン達のファウストローブが初登場したのとパルティータがサンジェルマンの師匠である事が判明した事、アダムが現れて黄金錬成を放ち、パルティータのビームとのぶつかり合いで風鳴機関が吹っ飛んだのを描きました。
翼とクリスがあっさりやられたのに対し、響と未来はサンジェルマン相手にかなり戦えてましたが、これはサンジェルマンが弱いのではなく、神獣鏡がXVで錬金術にも有効だと判明したため、神獣鏡の装者である未来の存在が大きいです。
カリオストロの本気の戦闘スタイルはボクシングみたいであるため、早速リングにかけろの必殺ブローを出してみました。
パルティータの一度見た錬金術をコピーして使えるというのは、術式さえわかればあらゆる錬金術が使えるアダムの完全上位互換の習得技量を示すのと、作中でもある通り、『聖闘士に一度見た技は二度通じない』の応用のようなものです。
次の話はパルティータとサンジェルマンの出会いが明らかになるのと、天災博士のあの男が精神世界で再登場する内容になっています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。