セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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110話 虚構戦域に命を賭して

城戸邸

 

 アダムの黄金錬成とパルティータのビームのぶつかり合いによって発生した大爆発により、風鳴機関が吹っ飛んだ事は沙織の耳にも入ったのであった。

 

沙織「何ですって!?風鳴機関が!?」

 

パルティータ『申し訳ありません、アテナ様。死者は出さなかったのですが、攻撃のぶつかり合いによって風鳴機関が吹き飛んでしまい…』

 

沙織「いいのです。失われた人命は戻りませんが、建物は時間とお金をかければ再建できます。それに、このような事態も想定して風鳴機関の機密資料やバルベルデで入手した資料を全てグラード財団の施設に移したのですから」

 

星矢「母さんはできる事を最大限にまでやったのさ。頭がおかしくて器量も小さい訃堂のクソジジイと違って沙織さんは人命を尊重する上に大らかだしな」

 

紫龍「俺も訃堂については正気の沙汰とは思えない考えを持った愚かな男としか言いようがない」

 

星矢「あんなクソジジイなんてウェルのクソ野郎と同レベルの悪党だしな。いらん事をしたら体がバラバラになるまでブン殴ってやる!」

 

 星矢から見れば、訃堂はウェルと同レベルの悪党にしか見えないのであった。

 

氷河「俺達が堂々と訃堂に反論してボコボコにしたと聞いたら、弦十郎は驚くだろうな」

 

瞬「司令は立場上、色々と大変だからね…」

 

美衣「これからの暗号解読はグラード財団でやらなければなりませんね…」

 

氷河「沙織さんの策で最悪の事態を回避できたが、再びアダムが襲撃した際に吹っ飛ばされないためにも、俺達の中の2人ぐらいは施設を護らないといけないな…」

 

 今度はグラード財団の施設で暗号解読をやる事となり、星矢達の中の2人が防衛をする事となった。

 

 

 

ホテル

 

 翌日、サンジェルマン達はホテルにいた。

 

カリオストロ「昨日はひどくやられたわね…!」

 

プレラーティ「私とカリオストロが加勢しなければサンジェルマンがあの2人にやられていたし、おまけにサンジェルマンの師匠には手も足も出なかったワケダ」

 

カリオストロ「それより、あのパルティータとかいうサンジェルマンの師匠は金色に輝くラピスみたいなものを持ってたけど、いつからなの?」

 

サンジェルマン「私と初めて会った時にはもう持っていた」

 

カリオストロ「そんなに前から!?」

 

プレラーティ「やはり、私達のラピスの情報が既に知られていたのはパルティータの仕業というワケダ」

 

サンジェルマン「局長、あの紫のシンフォギアは錬金術を無力化する特性故、ヨナルデパズトーリを粉砕したシンフォギアと同等の脅威である事に間違いありません。メカニズムの解析を」

 

アダム「そっちも不要だよ。単純に壊せば済む話だ」

 

 予想していたとはいえ、ヨナルデパズトーリを粉砕したガングニールだけでなく、神獣鏡の錬金術を無力化するメカニズムの解析さえも不要だというアダムには多少の苛立ちを見せたサンジェルマンであった。

 

ティキ「みんな!せっかくアダムが来てくれたんだよ。ギスギスするより、キラキラしようよ!みんなー!!」

 

アダム「どうどう、ティキ。あの時、僕が加勢したのは君達がパルティータにやられそうになったのを助けに来たんだよ」

 

カリオストロ「何が助けに来た?下手こいちゃうと、あーしたちコンガリ、サクッ、ジュワーだったわよぉ!」

 

アダム「それとサンジェルマン、君は本当にパルティータとの縁を断ち切ったのかい?」

 

サンジェルマン「……無論です。例えあの人が相手でも、戦います」

 

 そう答えたサンジェルマンだが、その表情には明らかに動揺が見えていたのをカリオストロとプレラーティは察した。

 

アダム「君たちに任せるとしよう。シンフォギアどもの相手は」

 

 アダムはどこかへ行こうとした。

 

サンジェルマン「統制局長、どちらへ?」

 

アダム「教えてくれたのさ。星の巡りを読んだティキが。ねえ?」

 

ティキ「うん」

 

アダム「成功したんだろう?実験は。なら次は本格的に行こうじゃないか、神の力の具現化を」

 

 部屋を出ると、そこには杳馬が待っていた。

 

アダム「杳馬か。君は用事があって不在がちにしているね」

 

杳馬「ま、色々あってな。それよりアダムのダンナ、俺には何だかよ、サンジェルマンちゃんが何とな~くアダムのダンナに似てるような気がしてならねえんだ」

 

アダム「僕に?」

 

杳馬「松代での様子を見てて思ったんだが、サンジェルマンちゃんはパルティータちゃんとなんかあったらしくてな、そのサンジェルマンちゃんの姿がダンナそっくりに見えちまったんだ。アダムのダンナも親とも言える」

 

アダム「その話はやめてくれないか?僕もしたくないんだ」

 

 不機嫌になり、アダムは去って行った。

 

杳馬「ダンナ、隠してたって俺にはわかるぜ。あんたも親と確執があるのをな……」

 

 

 

装甲車

 

 マリアはグラード財団の医療機関に運ばれ、弦十郎と翼は訃堂から呼び出しがかかった。しかし、行く先はパルティータにボコボコにされた訃堂が入院している病院であった。響達はパルティータから話を聞いていた。

 

響「あの人がパルティータさんの言ってた喧嘩別れした錬金術師としてのお弟子さんなんですね?」

 

パルティータ「そうよ。サンジェルマンは私の弟子。あの子に完全な肉体などの錬金術を叩き込んだのはこの私なの」

 

未来「あの人も見た目以上に長生きしているんだ」

 

クリス「けど、あいつは恨んでいる様子だったぞ」

 

パルティータ「それも当然よ。あの子に恨まれても仕方のない事をしてしまったから…」

 

切歌「その恨まれる事って何デスか?」

 

調「教えてください」

 

パルティータ「……サンジェルマンと出会った時から話すべきね…」

 

 

 

回想

 

 パルティータは初めてサンジェルマンに出会う事となった時の事から話し始めた。

 

パルティータ『あれは、人々を苦しめている悪徳貴族を殺した際に出会ったわ』

 

 その当時、パルティータは人々を苦しめていた悪徳貴族やその護衛を殺し、その際に幼いサンジェルマンと出会ったのであった。

 

パルティータ「あなたはもう自由よ」

 

サンジェルマン「お母…さん……?」

 

 パルティータを見た幼いサンジェルマンは似てないのにも関わらず、母親と面影を重ねた。そして、不思議な力を持つパルティータが自分を助けてくれた事に恩と憧れを抱いた。

 

パルティータ「自由の身になったから、あなたは」

 

サンジェルマン「お願いがあります。私を…私を弟子にしてください!」

 

パルティータ「弟子に?」

 

サンジェルマン「私、身寄りがない上にこんな理不尽な世界を変えたいんです。だから…あなたの弟子になりたいんです!ダメ……ですか…?」

 

 弟子にしてほしいと頼むサンジェルマンの目から純粋な想いを感じたパルティータは決断した。

 

パルティータ「いいわよ。私もちょうど連れが欲しかったところだし、あなたに錬金術を教えてあげる」

 

サンジェルマン「ありがとうございます!あなたの名前は?」

 

パルティータ「私はパルティータ。あなたは?」

 

サンジェルマン「サンジェルマン」

 

 これが、2人の出会いであった。

 

パルティータ『それから、私はサンジェルマンを弟子にした。といっても、サンジェルマンは弟子というよりは娘のような存在で、サンジェルマンも私の事を師というより母親と思っていたようで、今までにないほどの充実した日々が始まったわ』

 

 それから、パルティータはサンジェルマンに錬金術を教えながらあちこちを渡り歩き、表向きは流浪の名医として活動をしていた。

 

サンジェルマン「お母…じゃなかった。先生、今日はどこの村へ行くの?」

 

パルティータ「(やっぱり、私の事を母親と思っているのね)ひ・み・つ」

 

サンジェルマン「教えてくれてもいいのに、意地悪」

 

パルティータ「どこへ行くのかは決まってないの。ただ、救いを求める人々のために錬金術を使うの」

 

サンジェルマン「それでこそ、私の誇れる先生なんだから!」

 

 サンジェルマンは錬金術を学んでいき、成長してからはパルティータの医者としての活動の際の助手も務めるようになり、師と共に病や大怪我に苦しむ人々を助け、弱者を苦しめる貴族などの支配者を倒していった。しかし、その充実した生活は永遠に続かなかった。それは、サンジェルマンが完全な肉体に作り変えてから100年ほど過ぎた後の事だった。

 

パルティータ『でも、充実した生活は永遠ではなかった』

 

サンジェルマン「先生、なぜバラルの呪詛を解いてはならないのですか!?」

 

パルティータ「あなたが言いたい事はわかるわ。でも、バラルの呪詛は解いてはならないの。解けば、どんなに強くても倒せない大きな災いが目覚めてしまうのよ」

 

サンジェルマン「それでも納得できません!このような世の中を変えるには、バラルの呪詛を解く他ないんです!」

 

パルティータ「仮にバラルの呪詛を解いたって、世の中はすぐには変わらないの。地道な活動を続けて少しずつ変えていくしかないわ」

 

サンジェルマン「先生…、あなたが私の理想を否定するのなら…私はあなたとも戦います!誰も支配されない世界を作るために!」

 

 そう言って涙を流しながらサンジェルマンはパルティータの元を離れた。対するパルティータも悲しい表情で自分の元を離れるサンジェルマンを見つめていた。

 

 

 

パルティータ「結局、私はあの子の理想を否定してしまった。あの子に恨まれて当然なのよ…」

 

調「そんな過去があったなんて…」

 

 響達は衝撃を受けていた。そして、エルフナインは考え事をしていた。

 

エルフナイン「(LiNKERを介さないギアの運用。ましてやイグナイトによる体への負荷。ましてやイグナイトによる体への負荷。絶唱級のバックファイアを受けてもおかしくなかったはず。なのに……?)」

 

 マリアの体が青く光ったのをエルフナインは思い出していた。

 

 

 

病院

 

 機密資料の話の際に星矢達とトラブルになり、パルティータにボコボコにされた訃堂は入院していて弦十郎と八紘、翼は訃堂の病室に来ていた。

 

訃堂「して、夷狄による蹂躙を許したと?」

 

八紘「結果、松代の風鳴機関本部は壊滅。しかし、それを事前に予測していた沙織お嬢様の策で大戦時より所蔵してきた機密はグラード財団の施設に保管されており、無事です」

 

訃堂「光政の忘れ形見め…、気に食わんが機密を護った事だけは誉めてやろう」

 

弦十郎「外患の誘致、及びうち退ける事叶わなかったのは、こちらの落ち度に他ならず…全くもって申し訳…」

 

訃堂「聞くに耐えん。八紘、わかっておろうな?」

 

八紘「国土防衛に関する例の法案の採決を急がせます」

 

訃堂「有事に手ぬるい!即時施行せよ!そして、翼、まるで不肖の防人よ。風鳴の血が流れておきながら嘆かわしい」

 

翼「我らは防人たらしめるは地に非ず。その心意気だと信じております」

 

訃堂「ふん。歌などに」

 

???「ボケジジイ、少しぐらいは気遣ってやってもいいんじゃねのか?」

 

 病室に入ってきたのは星矢と紫龍であった。

 

訃堂「小娘と同じ、城戸の忘れ形見め…!」

 

星矢「俺の方こそ、人々を護らねえボケジジイが嘆かわしいと言いたくなるぜ」

 

紫龍「それに、思考が時代遅れだ。血の濃さに拘るのも大概にしたらどうだ?」

 

 星矢達の言葉は訃堂の価値観を完全否定するものであり、訃堂にとってはすぐに殴りたい衝動に駆られてもおかしくなかった。

 

星矢「さ、こんな時代錯誤のボケジジイといつまでも関わってたら気が持たねえしな。帰るぞ」

 

八紘「(時代錯誤のボケジジイ!?面と向かって堂々とこんな事を言えるとは…)」

 

 堂々と訃堂に文句を言える星矢達に八紘も感心していた。星矢達が帰った後、訃堂は八つ当たりで病室の壁を殴りつけた。

 

訃堂「あの夷狄であり、城戸の忘れ形見でもある女神に与する小僧共め…、必ずや排除してくれるっ!」

 

 パルティータにプライドを傷つけられ、ボコボコにされた事で訃堂は護国よりも星矢達への私怨を燃やしていたのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 S.O.N.Gの本部に帰ってきた後、シミュレータルームで切歌と調はLiNKERなしでギアを纏い、訓練をしていた。それをマリアは聞いて駆け付けようとしていた。

 

マリア「あの子達、無茶を重ねて!」

 

 ちょうど響達や様子を見に来た星矢と紫龍とも合流した。

 

エルフナイン「マリアさん!」

 

未来「もう大丈夫なんですか?」

 

マリア「とりあえずね」

 

星矢「あんまり無理はすんなよ」

 

 訓練の途中、切歌は技を決めようとした際にバックファイアに耐えられなくなって地面に落ちた。

 

調「切ちゃん、大丈夫!?」

 

 ホログラムが消え、調が切歌に駆け寄ると2人のギアの装着が解除された。ちょうどそこへ響達が来たのであった。

 

響「調ちゃん、切歌ちゃん!」

 

マリア「LiNKERもないのにどうして?」

 

調「私達がLiNKERに頼らなくても戦えていれば、あんな……」

 

クリス「だからって!」

 

調「平気!それより訓練の続行を」

 

切歌「LiNKERに頼らなくてもいいように適合係数を上昇させなきゃデス」

 

未来「その無茶はとても危険よ。一歩間違えば死んじゃうかも知れないよ!」

 

調「経緯もよくわからないままに十分な適合係数をものにした響さんと未来さんにはわからない!」

 

切歌「いつまでもミソッカス扱いは死ななくったって、死ぬほど辛くて、死にそうデス!」

 

 事実、響はLiNKERとは無縁のまま装者となっており、未来の方も使い捨て前提の調整を受けていたとはいえマリア達より短期間で装者になれた上、LiNKERが必要な紛い物の装者からLiNKERが不要な本物の装者になるという前代未聞の出来事を起こしており、切歌と調の悔しさを完全に理解できていなかった。

 

マリア「やらせてあげて」

 

響「マリアさん!?」

 

マリア「2人がやり過ぎないように私も一緒に訓練に付き合うから」

 

クリス「適合係数じゃなく、この場のバカ率を上げてどうする!?」

 

マリア「いつかきっとLiNKERは完成する。だけど、そのいつかを待ち続けられるほど私達の盤面に余裕はないの」

 

未来「だったら、すぐに治療ができるようにパルティータさんを呼ばないと…」

 

星矢「それが、母さんは今日はステファンの再生治療の予定がはいってるから、病院へ行っちまった」

 

未来「ステファンの手術…」

 

紫龍「LiNKERの開発を早める事ができれば…」

 

エルフナイン「方法はあります」

 

 その言葉に一同はエルフナインの方へ視線を向けた。

 

調「最後のピース?」

 

切歌「本当デスか!?」

 

エルフナイン「ウェル博士に手渡されたLiNKERのレシピで唯一解析できていない部分。それはLiNKERがシンフォギアを、装者の脳のどこの領域に接続し負荷を抑制しているか、です。フィーネやF.I.Sの支援があったとはいえ、一からLiNKERを作り上げたウェル博士は…色々はともかく本当に素晴らしい生化学者だったと言えます」

 

 しかし、星矢達の反応はそうとは思えないものであった。

 

マリア「素晴らしい?ぞっとしない話ね」

 

星矢「あのボケジジイと同レベルのクソ野郎が素晴らしいとか、俺は認めねえからな!」

 

紫龍「(ウェルの事となれば、星矢の反応はあれでおかしくないな…)」

 

 星矢にとってはウェルは訃堂と同レベルの悪党としか見ていなかった。

 

響「あ、あの…難しい話は早送りにして最後のピースのところまで飛ばしてよ」

 

エルフナイン「カギはマリアさんの纏うアガートラームです」

 

マリア「白銀の……私のギアに?」

 

エルフナイン「アガートラームの特性の一つにエネルギーベクトルの制御があります。土壇場に度々見られた発光現象…あれは脳とシンフォギアを行き来する電気信号がアガートラームの特性によって可視化。そればかりかギアからの負荷をも緩和したのではないかと僕は推論します」

 

紫龍「なるほど。エネルギーベクトルの制御か」

 

星矢「セレナが絶唱でネフィリムの暴走を止められたのもそれだし、S2CAの負荷を軽減できるのもそれだろうな」

 

エルフナイン「これまでずっと任務の合間に繰り返してきた訓練によって、マリアさん達の適合係数は少しずつ上昇してきました。恐らくは、その結果だと思われます」

 

調「マリアの適合係数は私達の中でも一番高い数値。それが……」

 

切歌「今までの頑張り、無駄ではなかったわけデスか!」

 

エルフナイン「ええ。マリアさんの脳内に残された電気信号の痕跡を辿って行けば…!」

 

マリア「LiNKERの作用している場所が解明する。だけど、そんなのどうやって……?」

 

星矢「ウェルのクソ野郎をボコボコにして吐かせればいいのだけどな…」

 

クリス「(ってか、星矢はウェルの野郎の事になるといつもこの調子だな……)」

 

エルフナイン「ついてきてください」

 

 響達はエルフナインについてきた。その先には、何やら機械があった。

 

マリア「これは?」

 

エルフナイン「ウェル博士の置き土産、ダイレクトフィードバックシステムを錬金術で応用し、再現してみました」

 

星矢「未来を操るのに使ったあのクソシステムだと!?」

 

 またしても星矢が過剰に反応したため、紫龍が制止した。

 

紫龍「星矢が怒りたくなるのも無理はないが、エルフナインはそんな事のために作ったんじゃないんだ」

 

星矢「…ああ、済まねえ。クソ野郎の事になるとつい過剰に反応しちまう」

 

未来「(私や響の事を大切に思ってるからこそ、星矢さんはさっき過剰に反応したんだ…)エルフナインちゃん、続けて」

 

エルフナイン「はい。対象の脳内に電気信号化した他者の意識を割り込ませる事で観測を行います」

 

クリス「つまり、そいつで頭ん中を覗けるって事か?」

 

エルフナイン「理論上は。ですが、人の脳内は意識が複雑に入り組んだ迷宮……。最悪の場合、観測者ごと被験者の意識は溶け合い廃人となる恐れも……」

 

 少し沈黙したが…。

 

マリア「やるわ。ようやくLiNKER完成の目処が立ちそうなのに見逃す理由はないでしょ?」

 

調「でも…」

 

紫龍「マリア、お前の覚悟はわかった。やってみろ」

 

マリア「紫龍…」

 

星矢「紫龍も俺や仲間達のためなら、命を投げ出す事も構わないからな。マリアの覚悟を察したんだろ」

 

マリア「2人とも…」

 

紫龍「だが、これだけは約束するんだ。必ずそれを成功させろ。いいな?」

 

マリア「わかったわ。それと観測者、つまりあなたにもその危険は及ぶのね?」

 

エルフナイン「それが僕にできる戦いです。僕と一緒に戦ってください、マリアさん」

 

マリア「うん」

 

 一旦響達は戻る事となり、マリアとエルフナインはダイレクトフィードバックシステムの使用準備を整えていた。

 

エルフナイン「始めましょうか」

 

マリア「ええ。あなたが私のここに入ってくるわけね」

 

 マリアは自分の頭を指差した。

 

エルフナイン「正しくは仮想空間に複写したマリアさんの脳構造に接続。僕とマリアさんの意識を共有します」

 

マリア「了解」

 

 

 

市街地

 

 響達の方は祭りに来ていた。響はサンジェルマンとパルティータの確執の事が気になっていた。

 

未来「響、パルティータさんの事で悩んでるの?」

 

響「うん…。喧嘩別れしてしまったパルティータさんとサンジェルマンさん、もう一度昔のように戻れないのかなって……」

 

未来「仲直り、か……」

 

???「こういった困難こそ、アニメで度々ある乗り越えるべき壁なのよ!」

 

 そう主張したのは、弓美であった。しかも、創世と詩織まで来ていた。

 

響「3人とも!」

 

創世「ちょうど見かけたから、声をかけたよ!」

 

詩織「何かお悩みのようですね」

 

未来「私達の知り合いの女性が娘さんと喧嘩で別居状態になってて……どうすれば仲直りできるかなって思って……」

 

弓美「それこそ、諦めたらそこで試合終了よ!」

 

響「諦めたら試合終了…」

 

弓美「あるスポーツアニメの監督の言葉よ。その人と娘さんの仲直りを諦めてたら、いつまで経ってもその状態のままよ。だから、仲直りするように手を尽くしなさい!」

 

未来「諦めたらそこで試合終了…。うん、確かにそうかも知れない!」

 

創世「弓美ったら、アニメの話でビッキーとヒナを元気づけるなんて」

 

詩織「でも、さっきの名言はその通りだと思いますよ」

 

 互いに笑いあっていると、あるニュースを見つけた。

 

ニュースキャスター『次のニュースです。内戦の続く祖国で片足を瓦礫に潰されても尚、どうしても大好きなサッカーをもう一度したいと来日し、グラード財団の病院に入院しているステファン君。その足の手術が今日、行われる事となりました』

 

 錬金術による再生治療を隠すためにステファンは片足を失っていないようにグラード財団によって偽装されていた。

 

響「今日があの子の手術日だったね」

 

未来「あの時、失った足が元通りになってまたサッカーができるようになるんだね」

 

クリス「だといいんだがな」

 

響「え…?」

 

クリス「悩んで下した決断がいつも正しいわけじゃない。それどころか始めから正解がないなんてもザラにある」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 あおいが機械を作動させる事となった。

 

あおい「いいわね、行くわよ」

 

 機械が作動し、2人の意識が一つとなってエルフナインの意識がマリアの脳内へ向かったのであった。

 

 

 

???

 

 エルフナインが来たのは、花畑であった。

 

エルフナイン「(これがマリアさんの脳内? 記憶が描く心象風景?)」

 

 そこには幼いマリア姉妹の姿があった。

 

エルフナイン「マリアさん」

 

 ところが、ナスターシャが入ってきた後、マリアは鞭で叩かれた。しかも、それはエルフナインにもその傷ができていた。

 

エルフナイン「痛い!どうして…?」

 

ナスターシャ「今日からあなた達には戦闘訓練を行ってもらいます。フィーネの器となれなかったレセプターチルドレンは涙より血を流すことで組織に貢献するのです!」

 

エルフナイン「(意識を共有しているからには記憶と体験は僕にも及ぶ……)」

 

 それから、エルフナインはマリアのF.I.Sの研究所で経験した出来事を見る事となった。そして、急に景色が変わって荒廃した街にエルフナインは立っており、しかもノイズまで現れた。

 

エルフナイン「これは……?ノイズの記憶?」

 

 しかも、ノイズ達はエルフナイン目掛けて迫ってきたため、エルフナインは必死で逃げた。

 

エルフナイン「はぁ、はぁ、はぁ(もし僕がここで死んだら、恐らく現実の僕も目を覚まさずに…!)」

 

 必死で逃げるエルフナインであったが、転んでしまい、ノイズが目前に迫っていた。

 

エルフナイン「くぅっ…!」

 

 そんな危機的状況の最中、聖詠が聞こえてからノイズに光の刃が降り注ぎ、マリアが降りてきた。

 

エルフナイン「マリアさん!」

 

マリア「いくら相手がエルフナインでも想い出を見られるのはちょって照れ臭いわね」

 

エルフナイン「あの…いつの記憶の、どのマリアさんですか?」

 

マリア「一緒に戦うって約束したばかりでしょ?この場に意識を共有するのなら、いるのはあなただけじゃない。私の中で私が暴れて何が悪い!?」

 

 そのままマリアは戦闘を始めた。

 

エルフナイン「記憶じゃない。マリアさんの意識が……」

 

マリア「突破する!」

 

エルフナイン「はい!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 モニターにマリアの体のダメージが表示された。

 

あおい「!?何?」

 

 

 

???

 

 マリアとエルフナインは先へ進んでいた。すると、何もないところに来た。

 

マリア「ここはどこ?」

 

エルフナイン「マリアさん自身も忘れかけている深層意識のイメージでしょうか?」

 

マリア「深層…」

 

 考えていると、空に穴が開き、自分達の足元にも穴が開いた。

 

 

 

研究所

 

 並行世界でセレナがいる研究所では、いつもの訓練中にセレナが本能で何かに気付いたような感じがした。

 

ナスターシャ「どうしましたか?セレナ」

 

セレナ「気のせいだけど、マリア姉さんに大変な事が起こってるような気がして…」

 

ナスターシャ「きっと大丈夫です。何といっても、セレナの大好きなこの世でたった一人のお姉さんですから」

 

セレナ「そうだね、マム(マリア姉さんは私よりも多くの困難を乗り越えてきた。きっと大丈夫だよね?姉さん)」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その影響はモニターにも異常が表示されていた。

 

翼「2人の様子は?」

 

あおい『バイタル、安定地から大幅に数値を下げています。このままの状態が続けば……』

 

弦十郎「やむをえまい。場合によっては観測の一時中断を…」

 

 ところが、そんな時に警報が鳴った。

 

弦十郎「どうした!?」

 

朔也「東京湾にアルカノイズ反応!」

 

 そのアルカノイズがモニターに表示された。

 

慎次「空間を切り取るタイプに続き、またしても新たな形状。しかもかなり巨大なタイプのようです」

 

翼「まかり通らせるわけには…。行きます!」

 

 そこへ、沙織が美衣と共に来た。

 

沙織「翼さん、星矢と紫龍を連れて行ってください。杳馬が来るかも知れません」

 

弦十郎「杳馬だと!?確か、奴は並行世界の住人だったはずだ。それが、なぜこの世界に…?」

 

美衣「現時点ではわかりません」

 

沙織「ですが、並行世界にいた時の悪行は響さん達から聞いています。奴を放っておくと、大変な事をしでかすに違いありません」

 

弦十郎「ならば、星矢達も出撃だ!」

 

 

 

東京湾

 

 巨大アルカノイズの後ろには、ステルスで姿を隠している空中戦艦があった。

 

カリオストロ「オペラハウスの地下にはティキ以外にも面白い物がゴロゴロ眠っていたのよねぇ」

 

プレラーティ「もったいぶってなんていられないワケダ」

 

サンジェルマン「そう…。我らパヴァリア光明結社は神の力を以て世界の理をあるべき形へと修正する」

 

 ふと、サンジェルマンは響の言葉やパルティータと再会した際に言われた事を思い出していた。

 

サンジェルマン「(お母…いや、先生…)大義は…いや、正義は我らにこそあるのだ。行く道を振り返るものか。例え1人で駆けたとしても…」

 

プレラーティ「1人じゃない。1人になんてさせないワケダ」

 

カリオストロ「サンジェルマンのお陰で、あーし達はここにいる。どこだって3人だよ」

 

サンジェルマン「ふっ…」

 

カリオストロ「それとサンジェルマン、師匠の事であまりヤケにならないでね?」

 

サンジェルマン「わかっている…」

 

 

 

市街地

 

 アルカノイズ出現の知らせは響達にも届いていた。

 

響「わかりました!ヘリの降下地点に向かいます!」

 

クリス「モタモタは後回しだ! 行くぞ!」

 

調「私達は本部に」

 

 急いで切歌は持っているアイスを食べた。

 

切歌「マリア達の様子が気になるデス!」

 

未来「行こう、響、クリス!」

 

クリス「ああ!」

 

響「誰だって譲れない想いを抱えている。だからって勝てない理由になんてならない」

 

未来「勝たなくてもいいんだよ。だけど絶対に……負けたくないよね?」

 

響「……うん!私の胸には歌がある!」

 

未来「行こう!」

 

 切歌と調は本部に、響達3人は現場へ向かった。

 

 

 

???

 

 マリアとエルフナインは深層意識の中にいた。

 

???「マリア…しっかり……」

 

マリア「?」

 

エルフナイン「あ、あなたは!」

 

 目の前にいたのはウェルであった。

 

ウェル「そうとも。僕は行きずりの英雄」

 

マリア「ドクター・ウェル!?死んだはずでは!?」

 

ウェル「それでもこうして君の胸に生き続けている。死んだ人間ってのは……大体…そうみたいだねぇー!」




これで今回の話は終わりです。
今回はサンジェルマンとパルティータの出会いと喧嘩別れの原因が明らかになるのと、LiNKER完成の最後のピースを探しにエルフナインがマリアの脳内を観測する話になっています。
3期目のシンフォギアGXでは立花親子や風鳴親子、キャロル親子といった父親と子の関係に焦点が当たってたので、今小説のAXZ編では母親と子の関係に焦点を当てていこうと思います。
杳馬はサンジェルマンとアダムは似た者同士と言っていますが、同時にそれぞれの母親との関係でも正反対ともいえるように描いていきます。
次の話でようやくLiNKERが完成します。
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