セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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114話 碧いうさぎ

S.O.N.G潜水艦

 

 戦闘後、パルティータが予想していた通りになった。

 

エルフナイン「ごめ」

 

パルティータ「はい、ストップ!その事は私が予想して伝えておいたから、謝る事はない!」

 

マリア「ほんと、こんな事まで予想していたなんて。パルティータは予知能力でもあるのかしら?」

 

クリス「さあな。だけど、お陰で抱え込まなくてもいいわがだまりもスッキリできたしな」

 

エルフナイン「反動汚染の除去を急ぎます」

 

マリア「賢者の石はあるんでしょ?何かヒントはないのかしら?」

 

エルフナイン「それが…パルティータさんの賢者の石は幾多の改良のせいで僕の技術力では解析ができないほど複雑なものになっているんです」

 

クリス「解析不能な代物なんて、どえらいもんだな」

 

 一方、翼と調は訓練をしていた。アルカノイズの砲撃を2人はかわした。

 

翼「呼吸を合わせろ、月読!」

 

 自分目掛けてスピンカッターを仕掛けてきたアルカノイズを翼は蹴り飛ばした。

 

調「!?速い!きゃあっ!」

 

 その様子は発令所でも確認されていた。

 

弦十郎「調君は翼のリードでも合わせられず、か…」

 

沙織「未来さんも響さん以外では戦闘スタイルの関係もあってクリスさんぐらいしかユニゾンができてませんが、未来さんの場合はギアにダインスレイフがないのが原因です」

 

星矢「それでもギアの特性に関係なく響やクリスとユニゾンできるから、そこは凄いな」

 

 訓練は続いていたが、調はユニゾンができずに焦っていた。

 

調「こんな課題、続けていても…」

 

 そこへ、慎次が現れた。

 

調「緒川…さん?」

 

慎次「微力ながら、お手伝いいたしますよ」

 

翼「その業前は飛騨忍軍の流れを組んでいる。力を合わせねば影さえ捉えられないぞ」

 

切歌「調!無限軌道で市中引き回しデスよ!」

 

調「うん!」

 

 調は慎次の方へ視線を向けた。

 

慎次「できれば、お手柔らかに」

 

 すぐに調は慎次に攻撃を仕掛けたものの、慎次は華麗にジャンプしてかわした。2回かわされた後、足のギアを巨大な鋸に変えて攻撃して来た。

 

調「隙だらけ!」

 

 しかし、慎次は姿を消して空振りに終わった。

 

調「嘘!?」

 

慎次「僕はここに」

 

調「なっ!?」

 

 背後の電灯に立っていた慎次に調はすぐに振り向いてヨーヨーを投げたが、かわされた。

 

慎次「追いかけてばかりでは追いつけませんよ」

 

 慎次を追いかける調だが、翼も傍に来た。

 

翼「はやるな、月読!」

 

調「(切ちゃんはやれてる。イグナイトがない未来さん以外なら誰と組んでも…。でも私は切ちゃんでなきゃ…1人でも戦えなきゃ…!)」

 

 走りながらでも慎次は調の攻撃を回避した。

 

翼「連携だ、月読!動きを封じるために!」

 

調「だったら面で制圧!逃がさない!」

 

 面で制圧するため、調はα式 百輪廻を放った。

 

切歌「ダメデス、調!むしろ逃さないと!」

 

 切歌が言った通り、小型鋸で慎次が真っ二つになってしまった。

 

切歌「どえらい事故デス…!」

 

 しかし、星矢達は動じていなかった。真っ二つになった慎次は丸太に変化してしまった。

 

慎次「思わず空蝉を使ってしまいました」

 

調「あ……」

 

 調の背後に慎次がいた。

 

慎次「力はあります。後はその使い方です」

 

 疲れが出たのか、調は座り込んだ。

 

響「調ちゃん!」

 

未来「大丈夫?」

 

翼「(あれは、いつかの私だ…)」

 

 調の姿に翼は響や星矢達に出会う前の自分を思い出していた。発令所では…

 

あおい「これで各装者のユニゾンパターンを全て試した事になりますが…」

 

美衣「調さんだけが連携によるフォニックゲインの引き上げに失敗しています」

 

エルフナイン「未来さんも響さんとクリスさん以外とのユニゾンができないのですが、未来さんの場合は神獣鏡のギアにダインスレイフがないのが原因です」

 

弦十郎「未来君はギアの関係で仕方ないが、調君の場合は思わぬ落とし穴だったな…」

 

 そこへ、通信が入った。

 

朔也「司令、内閣府より入電です」

 

弦十郎「繋いでくれ」

 

 出たのは八紘であった。

 

弦十郎「八紘兄貴、何かあったのか?」

 

八紘『ああ。神社本庁を通じて情報の提供だ』

 

あおい「神社本庁といえば…」

 

朔也「ああ。各地のレイラインの件かも知れない」

 

八紘『曰く、神出づる門の伝承』

 

沙織「神。パヴァリア光明結社の求める力」

 

八紘『詳細については直接聞いてほしい。必要な資料は送付しておく』

 

弦十郎「ふむ…」

 

美衣「どうなされますか?司令」

 

弦十郎「気分転換も必要かも知れんな」

 

 

 

車内

 

 響達はバイクで移動する翼以外は大型車で移動した。念のため同行する紫龍も乗せて。

 

響「埼玉県の調(つき)神社? そこに何かあるの?」

 

エルフナイン『多くの神社はレイライン上にあり、その神社も例外ではありません。さらに神出づる門の伝承があるとすれば…』

 

マリア「つまり、指し手の筋を探る事で逆転の一手を打とうとしているわけね」

 

 訓練直後でも切歌はお菓子を食べていた。

 

クリス「っつーか特訓直後だっていうのに元気だな」

 

切歌「嫌デスよ、褒め殺すデスか?」

 

クリス「どういう理屈でそうなる」

 

 響は未来とはしゃぎ、紫龍は静かにしている中、調は昔の事を思い出しながら外を眺めていた。

 

 

 

回想

 

 それは、切歌と初めて会った時の事だった。調は私物を片付けていると、切歌が近づいてきた。

 

切歌「これ、何と読むのデスか?」

 

調「?つくよみ、しらべだって……」

 

切歌「しらべ……。やじろべーみたいでいかすデス!」

 

調「本当の名前は思い出せなくて…ここの人達が持ってた物から付けてくれた」

 

切歌「あたしの誕生日もここに来た日にされたデス。似た者同士仲良くするデス」

 

 

 

切歌「調!」

 

調「!?」

 

切歌「どうしたデスか?調。鋸じゃないから車酔いデスか?」

 

調「ううん、何でもない」

 

 

 

調神社

 

 そして、目的地の調神社に到着した。

 

切歌「およー!ここ、狛犬じゃなくてウサギがいるのデス!」

 

 しかし、調は暗い様子だった。調神社にはウサギがあちこちに祀られていた。

 

マリア「ウサギさんがあちこちに…可愛い!」

 

 そこへ、調神社の宮司が来た。

 

宮司「話には伺ってましたが…。いやあ、皆さんお若くていらっしゃる」

 

響「もしかして、ここの宮司さん?」

 

宮司「はい。皆さんを見ていると、事故で亡くした娘夫婦の孫を思い出しますよ。生きていれば、ちょうど皆さんくらいの年頃でしてなあ……」

 

クリス「ん?おいおい、あたしら上から下まで割とバラけた年齢差だぞ。いい加減な事抜かしやがって」

 

宮司「冗談ですとも。単なる小粋な神社ジョーク。円滑な人付き合いに不可欠な作法です」

 

未来「そ、そうですか…?」

 

 一同はそれを疑問に思っていた。

 

宮司「初対面ではありますが、これですっかり打ち解けたんではないかと」

 

クリス「むしろ不信感が万里の長城を築くってのはどういうこった?」

 

宮司「ではさっそく本題に入りましょうか。ところで皆さんは氷川神社郡というのをご存知ですからな?」

 

 室内に入った後、宮司は地図を広げた。

 

マリア「これは……オリオン座?」

 

宮司「正しくは、ここ調神社を含む周辺7つの氷川神社に描かれた…鏡写しのオリオン座とでも言いましょうか。受け継がれる伝承において、鼓星の神門。この門より神の力が出づるとされています」

 

翼「憶測と推論に過ぎないが、それでもパヴァリア光明結社の狙いと合致する部分が多く、無視はできない」

 

響「神出づる門…」

 

 すると、何かの音がした。

 

未来「お腹が空いたんだね?」

 

響「うん…。私の中に獣がいて……」

 

宮司「では晩御飯の支度をしましょうか。私の焼いたキッシュは絶品ですぞ」

 

クリス「そこは和食だろ!神社らしく…」

 

翼「ご厚意はありがたいのですが…」

 

宮司「ここにある古文書、全て読み通すにはお腹いっぱいにして元気でないと」

 

 

 

ホテル

 

 そして夜、傷が癒えたプレラーティは片方のワイングラスにワインを、もう片方に牛乳を入れて外を眺めていた。

 

プレラーティ「あのおたんちん…元詐欺師が1人でかっこつけるからこうなったワケダ」

 

 そして、乾杯した。

 

 

 

回想

 

 それは、まだプレラーティが負傷していた時であった。

 

カリオストロ「大祭壇の設置に足りない生命エネルギーは、あーしたちから錬成する。犠牲を強いるアダムのやり方が受け入れられない。きっとあいつは他にも何か隠している…。ま、女の勘だけどね。場合によっては、敵味方の立場になりふり構ってられないかも…」

 

 

 

プレラーティ「女の勘ねえ…。ふっ、生物学的に完全な肉体を得るために後から女となったくせに、いっちょ前な事を吠えるワケダ」

 

 そして、牛乳を飲み干した。

 

プレラーティ「だけど、確かめる価値はあるワケダ」

 

 

 

調神社

 

 そして同じ頃、翼と調以外は寝ていた。響は普段と同じように未来と一緒の布団で寝ていたが。

 

弦十郎『門より出づる神の力か…』

 

翼「みんなの強力もあって、神社所蔵の古文書より…いくつかの情報が得られました」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 通信を沙織と美衣も聞いていた。

 

翼『敵がレイラインを利用した計画を進めているとすれば対抗手段となるのはやはり要石かと』

 

慎次「要石。キャロルとの戦いでいくつか失われてしまいましたが…」

 

美衣「それでもレイラインの安全弁として機能するはずです」

 

弦十郎「ぬう…。神の力をパヴァリア光明結社に渡すわけにはいかない。何としても阻止するぞ」

 

翼『無論、そのつもりです』

 

 

 

調神社

 

 通信が終わると、池のほとりに調がいた上、翼の近くに静かに座している紫龍がいた。

 

翼「(紫龍はこんな風によく座しているな…)」

 

 池のほとりにいる調のところへ宮司が来た。

 

宮司「おやおや。こんな夜更けに散歩とは…。何か悩み事ですかな?」

 

 その指摘に調は目を背けた。

 

調「1人で何とかできます」

 

宮司「それでも口に出すと楽になりますぞ。誰も1人では生きられませんからな」

 

調「そんなのわかってる!でも、私は……!」

 

宮司「何を隠そう、ここは神社。困った時のなんとやらには事欠かないとは思いませんか?」

 

 2人は向拝所へ来て、宮司は2回頭を下げ、2回手を叩き、1回頭を下げた。

 

宮司「若い方にはなじみのない作法ですかな」

 

調「うん…。なんか、めんどくさい…」

 

宮司「これはこれは…」

 

調「しきたりや決まり事。誰かや何かに合わせなきゃいけないって、よくわからない」

 

 宮司と同じ参拝のやり方を調もやってみた。

 

調「合わせたくっても上手くいかない。狭い世界での関係性しか私にはわからない。引け目が築いた心の壁が大切な人たちを遠ざけている。いつかきっと、親友までも……」

 

宮司「あなたはいい人だ」

 

調「良い人? だったらどうして私の中に壁があるの?」

 

宮司「壁を崩して打ち解けることは大切なことかもしれません。ですが壁とは拒絶の為だけにあるのではない。私はそう思いますよ」

 

調「……」

 

 

 

ホテル

 

 一方、アダム達の方は…。

 

ティキ「ねえ、あたし人間になりたい!」

 

アダム「藪から棒だね。いつもに増して」

 

ティキ「神の力が手に入ったらアダムと同じ人間になりたいって言ってるの。人形のままだとアダムのお嫁さんになれないでしょ?子供を産んで、ポコポコ産んで野球チームを作りたいのよ。だから!さっさと3級錬金術師を生命エネルギーに変えちゃってさー!」

 

 そこへ、プレラーティが入ってきた。

 

プレラーティ「その話、詳しく聞きたいワケダ」

 

アダム「繰り返してきたはずだよ、君たちだって。今更、いや知らないなんて…。計画遂行の勘定に入っていたのさ。君の命も。サンジェルマンの命も」

 

プレラーティ「そんなの聞いてないワケダ!」

 

 プレラーティは氷の攻撃を仕掛けたが、アダムが指を鳴らすと攻撃が切り裂かれ、飛んできた衝撃波をプレラーティはかわした。

 

プレラーティ「他に何を隠している!? 何を目的としているワケダ!?」

 

アダム「人形の見た夢にこそ神の力は…」

 

プレラーティ「人形……」

 

 ふと、プレラーティは視線をティキに向けた。それからすぐにアダムが衝撃波を放ったためにプレラーティはかわしたが、カエルのぬいぐるみが真っ二つにされた。

 

プレラーティ「くっ!」

 

 急いでプレラーティはラピスつきのけん玉を取り出し、ファウストローブを纏ってけん玉を巨大化させ、サンジェルマンの所へ急いだ。

 

ティキ「逃げた!きっとサンジェルマンにチクるつもりだよ!どうしよう!?」

 

アダム「駆り立てるのは任せるとしよう。シンフォギアに」

 

 そう言うアダムであった。そして、プレラーティは逃げる際に杳馬の人影も見たのであった。

 

 

 

高速道路

 

 プレラーティは高速道路を爆走していた。

 

プレラーティ『サンジェルマン、サンジェルマン!』

 

 しかし、通じなかった。

 

プレラーティ「(くっ…妨害されているワケダ!)」

 

 そのままプレラーティは急いだ。

 

 

 

調神社

 

 プレラーティが高速道路を爆走しているのは直ちに装者達にも連絡が届いた。

 

紫龍「錬金術師が!?」

 

朔也『新川越バイパスを猛スピードで北上中!』

 

あおい『付近への被害重大!このまま住宅地に差し掛かることがあれば……』

 

響「了解です。対応します」

 

 響達装者は現場へ向かおうとした。

 

宮司「皆さん、どちらへ?」

 

 宮司に反応した際、調は先に行った。

 

切歌「あ、調?」

 

未来「弦十郎さん!今、調ちゃんが!」

 

弦十郎『ぬっ!?そちらにヘリを向かわせている!先走らずヘリの到着を待て!』

 

 

 

高速道路

 

 調はギアを纏い、高速道路へ向かっていた。

 

調「(シュルシャガナでなら追いつける…!)」

 

 そのまま調は高速道路に入ったが、後ろからバイクに乗って翼が追いついてきた上、紫龍も走って追いついていた。

 

翼「高機動を誇るのはお前一人ではないぞ!」

 

紫龍「そして、俺は戦いを見守らせてもらおう」

 

 プレラーティが高速道路を爆走していると、バイパスから翼と調が現れ、そのやや後ろを紫龍が見守る形で走り、並んだ。

 

翼「何を企み、どこへ向かう!?」

 

プレラーティ「お呼びでないワケダ!」

 

 プレラーティは炎を放ったが、二人はかわした。

 

プレラーティ「ちっ!」

 

 調はプレラーティの進路を阻もうとしたが、プレラーティはそのまま壁にぶつかって破壊し、反対車線へ逃げた。

 

翼「お構いなしと来たか」

 

 それでも二人はプレラーティを追った。

 

翼「ユニゾンだ、月読!イグナイトでのダブルブーストマニューバでまくり上げるぞ!」

 

調「……!ユニゾンは…できません」

 

翼「月読……」

 

調「切ちゃんはやれてる。イグナイトのない未来さん以外なら、誰と組んでも…。でも私は切ちゃんとでなきゃ……!人との接し方を知らない私は一人で強くなるしかないんです。一人で!」

 

翼「心に壁を持っているのだな、月読は」

 

調「壁…」

 

 宮司からの言葉を思い出していると、プレラーティが壁を破壊して翼と調が爆走している車線に来た。

 

翼「私もかつて亡き友を想い、これ以上失うものかと誓った心が壁となり目を塞いだこともある」

 

調「!この世界の奏さんとの…」

 

 そして、トンネルに突入した。

 

翼「月読の壁も、ただ相手を隔てる壁ではない。相手を想ってこその距離感だ」

 

調「想ってこその距離感…」

 

翼「それはきっと月読の優しさなのだろうな」

 

調「優しさ…」

 

 調は今までの事を思い出したのであった。いつまでも追いかけられる事に苛立ったプレラーティは氷の塊を落としたが、調は回避した。

 

調「優しいのは私じゃなく周りのみんなです。だからこうして気遣ってくれて…私はみんなの優しさに応えたい」

 

プレラーティ「ゴチャつくな!いい加減つけまわすのをやめるワケダ!」

 

 プレラーティは炎を放ち、その炎はトンネルのファンに命中して翼と調は爆発に巻き込まれた。

 

プレラーティ「ぐうの音も…」

 

『ダインスレイフ』

 

 その音声が聞こえたのと同時にイグナイトを発動させた翼と調が出てきて、猛スピードで迫っていた。

 

プレラーティ「ワ、ケダ!?」

 

翼「このままいくと…住宅地に!」

 

 標識を見た翼はさらにバイクのスピードを上げ、プレラーティに接近した。

 

翼「いざ、尋常に!」

 

 プレラーティの横に来た後、足のブレードでプレラーティのけん玉に攻撃した。

 

プレラーティ「邪魔立てを!」

 

 氷の錬金術で攻撃しようとしたプレラーティであったが、今度は調が攻撃して来た。

 

プレラーティ「くっ!?動きに合わせてきたワケダ!」

 

 そして、二人は挟むようにプレラーティのけん玉にぶつかった。

 

調「神の力、そんな物は作らせない!」

 

プレラーティ「それはこちらも同じなワケダ!」

 

紫龍「(どういう事だ…?)」

 

 その言葉に翼と後ろを走っていた紫龍は反応した。それから、プレラーティは勢いをつけて逆向きにけん玉の上に立って水の錬金術を放った。

 

プレラーティ「歌女どもには激流がお似合いなワケダ!」

 

翼「往く道を閉ざすか!」

 

調「そんなのは切り開けばいい!」

 

 調は小型回転鋸を放ったため、プレラーティは防いだが、狙いは別にあった。本当の狙いは高速道路の壁を破壊し、うまく破片を飛ばして簡易ジャンプ台を作る事であった。二人はそのジャンプ台を使い、激流を飛び越え、プレラーティに迫った。

 

プレラーティ「なんとおおおおおっ!」

 

 即座にプレラーティはけん玉の柄を外して2人を弾き飛ばした。二人は着地し、ブレーキをかけた。

 

翼「駆け抜けるぞ!」

 

 翼と調のギアが変形合体し、ユニゾン技、風月ノ疾双を発動させて突撃した。

 

プレラーティ「サンジェルマンに告げなくてはいけないワケダ!こんなところでぇぇぇぇっ!!」

 

 プレラーティもけん玉を変形させ、突撃形態へ変化させて突撃した。

 

プレラーティ「アダムと杳馬は危険だとサンジェルマンに伝えなければならないワケダ!」

 

 互いに全力で、想いをぶつけ合った。

 

プレラーティ「サンジェルマン!サンジェルマァァァァァァン!!」

 

 この勝負は翼と調の2人の勝利に終わり、大爆発した。

 

調「勝てたの…?」

 

翼「ああ、二人で掴んだ勝利だ」

 

 そこへ、見守っていた紫龍が来た。

 

紫龍「ユニゾンができたな、調。これなら、切歌以外とも連携ができるようになるぞ」

 

調「紫龍さん…」

 

 ふと、紫龍は視線を変えた。

 

紫龍「(ずっと見守っていたが、誰かに見られているような気がしていた…)」

 

 その紫龍の予感は的中しており、戦いは全て杳馬に見られていた。

 

 

 

神社

 

 その頃、サンジェルマンは儀式を行っていたが、杳馬がやってきた。

 

サンジェルマン「杳馬、何の用でここに来た!?」

 

杳馬「それがねえ…、プレラーティが死んじゃったんだよ…。交通事故でねえ…」

 

 杳馬の言葉にサンジェルマンは衝撃を受けた。

 

サンジェルマン「1人で、飛び出したの……?」

 

杳馬「ま、奴等に気付かれる前に帰投しちゃった方がいいよ。俺はこの辺で」

 

 そう言って杳馬はその場を離れた。

 

サンジェルマン「カリオストロに続き、プレラーティまでもが…」

 

 サンジェルマンの様子を杳馬は見ていた。

 

杳馬「俺がこう言っただけで騙されちゃうサンジェルマンちゃんって、とってもピュアだねえ。本当は2人とも生きてるけど」

 

 アダムやティキと違い、杳馬はカリオストロとプレラーティがまだ生きている事を知った上でサンジェルマンに嘘を言っていた。そして、アダムにもその事を伝えていなかった。

 

 

 

調神社

 

 そして翌日…。

 

響「お世話になりました!」

 

宮司「いやいや、お役に立ちましたかな?」

 

未来「とてもお役に立ちましたよ、宮司さん!」

 

クリス「そういや、バカ2人はすぐに寝ちまったがな」

 

切歌「クリス先輩はひどいデース!」

 

 会話する中、翼は報告していた。

 

翼「では、あの錬金術師が向かう先には…」

 

弦十郎『鏡写しのオリオン座を形成する神社、レイポイントの一角が存在している』

 

紫龍「ますます絵空事とは言えないな」

 

弦十郎『対策の打ち所かも知れないな』

 

宮司「よかったら、調神社にまたいらっしゃい。この老いぼれが生きている間に」

 

調「神社ジョーク…。笑えない…」

 

 宮司は調にウサギのお守りを渡した。

 

響達「ありがとうございました!」

 

 響達は車に乗ろうとしたが、切歌は足を止めた。

 

切歌「うーん…やっぱり不思議デス。こんなの”つき”なんて絶対読めないデス」

 

調「切ちゃん!置いてっちゃうよ!」

 

切歌「わ、わかってるデスよ!」

 

 切歌も車に乗った。また、この後しばらくしてからまた調神社にお世話になるのだが、まだこの時点では誰もこの事を知らなかった。




これで今回の話は終わりです。
今回は翼と調のコンビとプレラーティの戦いを描きました。
次はサンジェルマンとの激突になります。

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