セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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115話 アン・ティキ・ティラ

市街地

 

 夜中、サンジェルマンはビルの屋上に佇んでいた。

 

サンジェルマン「73800。73801」

 

 花を手向け、手向けた花は風に吹かれて散っていった。

 

サンジェルマン「母を亡くしたあの日から置いていかれるのは慣れている…。それでもすぐにまた会える。私の命はそのためにあるのだから…」

 

 そこへ、アダムとティキが現れ、ティキは拍手をしていた。

 

ティキ「ありゃまあ、死ぬのが怖くないのかなー?」

 

サンジェルマン「理想に殉じる覚悟など済ませてある。それに、誰かを犠牲にするよりずっと…」

 

ティキ「きゃはは!何?それが本心?」

 

アダム「だから君は数えてきたのか。自分が背負うべき罪の数を…。おためごかしだな」

 

サンジェルマン「人でなしにはわかるまい」

 

 

 

???

 

 その頃、杳馬は遂にオートスコアラーを完成させた。

 

杳馬「んはははははっ!遂に完成したぞ、あの人形を超える力を持つ神の力の器が!しかも、壊して終わりという代物じゃないからねぇ…」

 

 そのオートスコアラーはティキそっくりであったが、ところどころが違っていた上、核物質が入っている事を示すシールも貼られていた。

 

 

 

城戸邸

 

 そして同じ頃、星矢の前世の母親のパルティータがグラード財団の病院に勤務するようになってから、沙織の勧めで城戸邸で星矢はパルティータと共に暮らし、時々星の子学園で住み込みで働いている姉の星華に会いに行っていた。その日の病院での勤務が終わり、パルティータが帰ってきた。

 

パルティータ「ただいま、星矢」

 

星矢「お帰り、母さん」

 

美衣「夕食はできあがっていますので、親子で夕食はいかがでしょうか?」

 

星矢「みんなではダメなのか?」

 

紫龍「星矢、親子水入らずという言葉があるだろう?」

 

氷河「前世の母とはいえ、きちんと親との時間を過ごしてこいよ、星矢!」

 

星矢「親子水入らずか…」

 

沙織「さ、パルティータも星矢も親子でお食事をどうぞ」

 

パルティータ「ありがとうございます、アテナ様」

 

星矢「俺と姉さんは親との思い出はないけど、母さんと過ごすってのもありだな」

 

 もう母親と会えないからこそ、氷河は星矢に親と一緒の時間を過ごすように勧めたのであった。そこへ、インターホンが鳴った。

 

沙織「どちら様でしょうか?」

 

 扉を開けた人物はあまりにも意外な人物であった。

 

 

 

リディアン

 

 そして翌日…。

 

響「終わった~!終わるとは思ってなかった~……」

 

未来「お疲れ様。ありがとう、響」

 

響「え? ありがとうは課題を手伝ってもらったこっちだよ。なんで?」

 

未来「課題も任務も頑張るっていう約束、守ってくれた」

 

響「私はきっと楽ちんな方に流されてるだけ。賢くどちらかを選択するなんて出来ないから。結局ワガママなんだよね」

 

未来「響らしいかも」

 

響「らしい?」

 

 すると、何かを叩く音がした。叩いたのは切歌であり、調やクリスもいた上に黒板には9月13日と書かれてあった。

 

響と未来「ん?」

 

切歌「そうなんデス!どうやら近いらしいのデス!」

 

調「そう、あと2日!」

 

切歌「あと二日で響さんの誕生日な」

 

 そこへ、クリスが黒板消しを切歌に投げつけた。それから、みんな集まった。

 

未来「ど、どうしたの?みんな」

 

切歌「クリス先輩から聞いたのデス!」

 

未来「響の誕生日を?」

 

響「クリスちゃんが私の誕生日を?」

 

クリス「……」

 

響「覚えててくれたんだ!」

 

クリス「たまたまだ!たまたま!」

 

調「それにそてもそわそわしてた」

 

切歌「そうそう。わかりやすさが爆発したたデス」

 

クリス「……はしゃぐな2人とも!もうすぐ本部に行かないといけない時間だぞ!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 響達は本部に来た。

 

未来「あれ?パルティータさんは?」

 

星矢「母さんはお客さんが来て、その用事で来れないってさ」

 

響「用事かぁ…」

 

弦十郎「では、全員集合したところで放課後ブリーフィングを始める。映像頼む」

 

あおい「はい」

 

 鏡写しのオリオン座の映像を出した。

 

弦十郎「調神社所蔵の古文書と伝承。錬金術師との交戦から敵の次なる作戦は、大地に描かれた鏡写しのオリオン座」

 

沙織「神出づる門より神の力を創造する事と推測して間違いないでしょう」

 

慎次「現在、神社本庁と連携し拠点警備を強化するとともに、周辺地域の疎開を急がせています」

 

弦十郎「うむ」

 

マリア「レイラインを使ったさらに大規模な儀式…。一体どんな怪物を作るつもりなの?」

 

翼「門から出づる、怪物を超えた神」

 

未来「どうにかなる相手なのかな?」

 

響「でも、どうにかしないと」

 

弦十郎「どうにかできるとすれば、それは神殺しの力だな」

 

星矢「神殺し?」

 

紫龍「そう言えば、星矢は黄金に昇格する前は神殺しと呼ばれるペガサスの聖闘士だ」

 

調「星矢さんの神殺しが何か関係あるんですか?」

 

弦十郎「神と謳われた存在の死にまつわる伝承は世界の各地に残されている」

 

切歌「ペガサスの聖闘士の神殺しの伝説もそれに含まれているのデスか?」

 

沙織「そうです。ペガサスの聖闘士が神殺しと呼ばれるようになったのは、神話の時代に神聖衣を纏ったペガサスの聖闘士が冥王ハーデスの肉体に傷をつけた事が由来となっています」

 

美衣「実際にペガサスの聖闘士が神を倒したのは2年前の聖戦の時になります。その時、星矢さんは神聖衣を現代に復活させてタナトスを倒し、沙織様や仲間達と力を合わせてハーデスさえ倒しました」

 

未来「2年前の聖戦まで実際に神様を倒してないのに神殺しと呼ばれるようになったなんて…」

 

あおい「それと、前大戦期のドイツでは優生学の最果てに神の死にまつわる力を収集した、と記録にあります」

 

調「だったら…!」

 

あおい「残念ながら、それは…手掛かりになるかも知れないバルベルデドキュメントのコピーと旧風鳴機関本部は統制局長アダム・ヴァイスハウプトにより消失し、グラード財団の施設で解読中の原紙のバルベルデドキュメントと戦時中の資料は解読の完了はまだとの報告を受けています」

 

弦十郎「だが、あまりに周到な一連の動きは考えようによっては誰にも悟られぬよう、神殺しの力を隠蔽してきたとも言い換えられないだろうか?」

 

氷河「つまり、奴等の行動自体が切り札の実在を証明しているのだろうな」

 

紫龍「そして、その神殺しの男はここにいる上、他にも神殺しが実在する」

 

 黄金に昇格する前はペガサスの聖闘士だった星矢に視線が向いた。

 

弦十郎「うむ」

 

響「星矢さん以外にも神殺しが…」

 

クリス「実在する…?」

 

弦十郎「緒川!」

 

慎次「了解です。グラード財団の暗号解析の情報を随時取り寄せる他、調査部のみならず各国機関とも連携し、情報収集に努めます」

 

弦十郎「頼んだぞ」

 

 ブリーフィングの後、夕方になって沙織はある予感が当たった事を感じた。

 

星矢「どうしたんだ?沙織さん」

 

沙織「星矢、前々から思っていた予感が当たった感じがするのです」

 

星矢「予感?」

 

沙織「星矢と響さんは同じ宿命を背負っているのではないかと思っていたのですが、それが何なのかわかりました」

 

星矢「それって…」

 

沙織「予感が正しければ、それは……!」

 

 その頃、響達は食事をしていた。

 

マリア「神の力に対抗する神殺しの力…。ペガサスの聖闘士にはきちんとした神殺しの伝承があったけど、まさか…ガングニールにも…?」

 

翼「その可能性は私も考えた。が、ドイツ由来とはいえガングニールに神殺しの逸話は聞いた事はない」

 

クリス「今んとこ、あたしらにできるのは待つ事だけ。ギアの反動汚染が除去されるまでは…」

 

マリア「世界最強にして最高の錬金術師であるパルティータも用事でエルフナインの手伝いができない」

 

切歌「デェェェス!」

 

 重い雰囲気の中、切歌が顔を出した。

 

切歌「皆さんに提案デース!2日後の13日、響さんのお誕生日会を開きませんか?」

 

響「えーっ!?今言う?今言うの?」

 

調「もしかして迷惑だった?」

 

響「いやいや、嬉しいよ。だけど今はこんな状況で、戦えるのも私と切歌ちゃんだけだからさ」

 

未来「私も忘れてるよ、響」

 

 自分の事を忘れている事に未来は響の服の袖を引っ張って指摘した。神獣鏡のギアにはイグナイトがない反面、愚者の石による対消滅バリアも搭載されていないため、未来は反動汚染を気にせずに戦える唯一の装者であった。

 

響「ああっ、忘れてた!」

 

未来「もう、響ったら!」

 

切歌「せっかくのお誕生日デスよ」

 

響「そうだけど…」

 

切歌「ちゃんとした誕生日だからお祝いしないとデスね!」

 

響「え?」

 

クリス「困らせるな。お気楽が過ぎるぞ」

 

切歌「お気楽…」

 

 切歌は愚者の石捜索での戦闘の際、カリオストロに言われた事を思い出していた。

 

切歌「あたしのお気楽で困らせちゃったデスか?」

 

響「え?いやあ、そんなことないよ!ありがとう」

 

 

 

神社

 

 調査部は神社の警備中であったが、次々と追いかける弾丸に撃ち抜かれていった。

 

調査部員「ブルーワン?ブルーワン?どうした?ブルーツー、応答せよ!」

 

 そして、他の調査部員も始末された。始末したのはサンジェルマンであった。

 

サンジェルマン「73811」

 

ティキ「有象無象が芋洗ってことはこっちの計画がモロバレってことじゃない?どうするのよ、サンジェルマン!」

 

サンジェルマン「どうもこうもない」

 

 サンジェルマンは服を脱いだ。

 

サンジェルマン「今日までに収集した生命エネルギーで中枢制御の大祭壇を設置する」

 

ティキ「ふぅ」

 

サンジェルマン「礎に翠緑瞬いて死にゆくえいるをひたえる」

 

 難しい言葉を言うと、サンジェルマンの体から光の柱が立ち上った。

 

サンジェルマン「闇の颶風がさかなり、りょがの天を突き破る…。」

 

 背中のオリオン座の形の傷跡が錬成陣によって光り、光の柱は上空で分かれていった。

 

 

 

城戸邸

 

 その様子は城戸邸でも確認できた。

 

パルティータ「サンジェルマン…ついに神の力を創造するというの…」

 

 光の柱を見つつ、パルティータは新たなラピスを錬成していた。そして、その背後には2人の人影があった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 S.O.N.G本部でもその光景は確認できた。

 

朔也「司令!これは!?」

 

弦十郎「各員に通達急げ!」

 

 

 

神社

 

 分かれた光は各地の神社に降り注いだ。

 

サンジェルマン「それでも門の開闢に足りないエネルギーは第7光の達人たる私の命を燃やして……ううっ!」

 

 錬成陣が完成し、サンジェルマンの目が紫色に輝いた。

 

 

 

リディアン 寮

 

 連絡は響にも届いた。

 

響「はい。はい。はい……わかりました」

 

 自分も装者であるためか、未来も既に起きていた。

 

未来「響、ついに敵が動き出したのね?」

 

響「うん。…帰るべき場所の未来も最近は私と一緒に戦いに行くようになったね」

 

未来「それは誰かに強制されたんじゃなくて、私自身が望んだ事。だから行こう、響」

 

響「うん!」

 

 2人が出撃すると、辺り一面に雷雲が立ち込めていた。

 

 

 

神社

 

 儀式が進み、苦しむサンジェルマンをティキは楽しそうに見ていた。そこへ、電話が出現して鳴ったため、ティキが出た。

 

ティキ「アダム?」

 

アダム『順調のようだね。全てが』

 

ティキ「ほんと、サンジェルマンのお陰だよね。うふふ…」

 

 ティキは空を眺めた。

 

ティキ「天地のオリオン座が儀式で定められたアスペクトで向かい合う時、ホロスコープが、門が描かれる。その時と位置を割り出すのが、あたしの役目。そして」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 エネルギーの流れはモニターで確認された。

 

マリア「これは…!」

 

紫龍「いよいよ、神の力を創造するのだろう」

 

 そこへ、八紘が通信を入れた。

 

翼「お父様!?」

 

八紘『こちらの準備はできている。いつでもいけるぞ』

 

 エルフナインもその様子をモニターで見ていた。

 

エルフナイン「急がないと…。パヴァリア光明結社の作戦に僕の手が追いついていない!そして、パルティータの助けもない!」

 

 用事でパルティータは手伝えず、焦るエルフナインであった。

 

 

 

神社

 

 儀式が進む中、サンジェルマンは大切な人の事を思い出していた。

 

サンジェルマン「(カリオストロ…プレラーティ…。2人の犠牲はムダにしない。そして、二人のお母さん…全ての支配を革命するために私は……)私は!」

 

 レイラインを伝い、エネルギーが集まってきた。

 

ティキ「開いた!神出づる門!」

 

サンジェルマン「レイラインより抽出された星の命に、従順にして盲目な恋乙女の概念を付与させる」

 

 ティキは空へ上っていった。

 

ティキ「入ってくる……ああああああっ!!」

 

 一方、響と未来と切歌の3人はヘリで現場に急行していた。

 

未来「何なの!?あれ!」

 

切歌「すごい事になってるデス!」

 

響「あれが!?」

 

未来「鏡写しのオリオン座よ!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 本部でもその様子はモニターで映された。

 

朔也「レイラインを通じて観測地点にエネルギーが収束中!」

 

あおい「このままでは門を超えて神の力が顕現します!」

 

八紘『合わせろ、弦!』

 

弦十郎「応とも、兄貴!」

 

八紘『決議!』

 

弦十郎と八紘「執行!」

 

 2人が同時にカギを差し込み、要石起動が執行された。

 

 

 

神社

 

 そして、各地の神社でしめ縄が切られ、要石が発動された。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その様子は本部でも確認された。

 

朔也「各地のレイライン上に配置された要石の一斉起動を確認!」

 

あおい「レイライン遮断作戦、成功です!」

 

八紘『手の内を見せすぎたな錬金術師。お役所仕事もバカにできまい』

 

 

 

神社

 

 レイラインが遮断された事でエネルギー供給が断たれ、神の力は顕現しなかった。

 

ティキ「あ…あ……ない…ない……」

 

 そのままティキは地面に叩きつけられた。

 

サンジェルマン「ティキ!」

 

 S.O.N.Gのヘリが到着し、響と未来と切歌が駆け付けた。

 

響「Balwisyall nescell gungnir tron」

 

切歌「Zeios igalima raizen tron」

 

未来「Rei shen shou jing rei zizzl」

 

 3人はギアを纏った。

 

切歌「そこまでデス!」

 

サンジェルマン「シンフォギア…どこまでも!」

 

 スペルキャスターを取り出し、サンジェルマンはファウストローブを纏って戦闘を開始した。響も即座にイグナイトを発動させ、ぶつかり合った。

 

響「やっぱり戦うしかないんですか!?パルティータさんが心配しているんですよ!」

 

サンジェルマン「私とお前、互いが信じた正義を握りしめている以上、他に道などありはしないッ!!そして、あの人とは既に決別したと言ったはずだ!はあああああっ!」

 

 サンジェルマンの攻撃を響は受け止めていると、今度は肘に仕込まれた銃で攻撃してきた。その攻撃は未来が扇で防ぎ、その間に切歌が攻撃した。

 

サンジェルマン「はあっ!」

 

 肘の仕込み銃の銃弾を切歌は鎌でガードした。そして、響と未来が呼吸を合わせて同時攻撃をした。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その様子は本部でもモニターで見ていた。

 

朔也「ガングニールとイガリマ、神獣鏡、交戦!」

 

あおい「ガングニールとイガリマのユニゾン数値、安定しています!」

 

 

 

神社

 

 響と切歌と未来の3人による連携でサンジェルマンと渡り合い、3人で挟み撃ちにしようとしたが、サンジェルマンはジャンプしてかわし、その場に大きな結晶を出現させた。

 

サンジェルマン「はあっ!」

 

 今度は足に仕込まれた銃で攻撃した。響と切歌は防ぎながらジャンプし、未来は扇からビームを発射して防いだ。ジャンプした響と切歌は攻撃をしたが、サンジェルマンには防がれた。

 

サンジェルマン「ふっ!」

 

 肩から銃を撃ちながら銃弾を装填し、錬金術弾を発射した。

 

未来「錬金術となれば、私の出番!」

 

 そう言って未来は飛行して前に出て、閃光を放って銃弾を分解し、双方とも着地した。

 

サンジェルマン「信念の重さ無き者に!神の力をもってして月遺跡の管理権限を掌握する!これによりバラルの呪詛より人類を解放し、支配の歴史を終止符を打つ!」

 

 サンジェルマンは猛攻を仕掛け、狼弾を放ち、切歌を吹っ飛ばしたが、錬金術の無力化が可能な未来の前には防がれてしまった。

 

未来「響!」

 

 掛け声だけで響は前に出て、2発目の狼弾とぶつかり合った。

 

響「だとしても、誰かを犠牲にするやり方は!」

 

サンジェルマン「そうだ!32831の生贄と40977の犠牲!背負った罪とその重さ! 心変わりなどもはや……許されないわ!」

 

 サンジェルマンは銃弾を放ったため、響は防ごうとして未来はビームを発射しようとしたが、目の前に転移用の錬成陣が出現して銃弾が消えてしまった。

 

未来「消えた…?」

 

 ところが、二人の背後に錬成陣が出現して後ろから銃弾をまともに受けてしまった。

 

響「ああっ!」

 

未来「ううっ!」

 

 銃弾をまともに受けて2人は吹っ飛ばされ、サンジェルマンは銃剣で響に止めを刺そうとした。

 

サンジェルマン「はあああああっ!」

 

未来「響!」

 

切歌「響さん!」

 

 しかし、響は銃剣をギリギリで脇に挟んでいたのであった。

 

未来「嘘…!」

 

サンジェルマン「くぅぅ……」

 

 銃剣を挟んだまま、響は背中のバーニアを吹かせ、サンジェルマンの体を押し、拳をぶつけてバーニア全開にした。そして、切歌も背中のバーニアを吹かせて足を前に出して飛んできて、響と切歌の足が合わさり、必愛デュオシャウトを発動させて突っ込んていった。

 

サンジェルマン「ああっ!」

 

 サンジェルマンはまともに攻撃を受けた。

 

未来「やったの…?」

 

 しかし、サンジェルマンはまだ死んでいなかった。響と切歌のイグナイトは解除された。

 

サンジェルマン「くぅっ…この星の明日のために…誰の胸にも、もう二度と……あのような辱めを刻まないために…私は支配を革命する!」

 

 サンジェルマンは立ち上がった。

 

未来「まだ戦えるなんて…」

 

サンジェルマン「勝負はまだ…」

 

???「そこまでよ、サンジェルマン」

 

 そこへ、パルティータが来た。

 

響「パルティータさん!」

 

サンジェルマン「何の真似だ?私を始末しに来たのか!?」

 

パルティータ「違うわ。あなたと寄りを戻しに来たのよ」

 

サンジェルマン「寄りを…戻す……?何をデタラメを!私は既に」

 

???「意地っ張りねえ。もっと自分の本心に素直になりましょ?」

 

サンジェルマン「こ、この声は…!」

 

 声の主はカリオストロであり、プレラーティもいた。

 

サンジェルマン「カリオストロ、プレラーティ…生きていてくれたのか…?」

 

カリオストロ「もっちろん!ほんとはもう自分に嘘をつきたくなかったけどね」

 

プレラーティ「でも、サンジェルマンの様子が気になったから、死を偽装してサンジェルマンの師匠のところに来たというワケダ」

 

サンジェルマン「まさか、二人はあの人にほだされてしまったのか!?」

 

パルティータ「違うわ、サンジェルマン。あの2人はアダム打倒のために、そしてあなたと私のために接触したの」

 

 

 

回想

 

 インターホンを鳴らしたのは、カリオストロとプレラーティであった。

 

氷河「翼達が倒した錬金術師だと!?」

 

星矢「元男の2人が何の用だ?」

 

カリオストロ「ちょっとちょっと、あーし達は戦いに来たんじゃないわ!あんた達黄金聖闘士と戦ったら、命がいくつあっても足りないもの!」

 

プレラーティ「私達はサンジェルマンの師匠に用があって来たワケダ」

 

パルティータ「私に?」

 

 カリオストロとプレラーティを城戸邸に入れ、話を聞く事にした。

 

星矢「サンジェルマンが寝言でお母さんと言っていたから、死を偽装してでも接触したかったのか…」

 

紫龍「お前達の目を見れば、ウソは言っていないのだろう。俺はその話を信じるぞ」

 

カリオストロ「まあ!天秤座の黄金聖闘士は男前で義理人情に厚いわね!」

 

プレラーティ「話を戻すが、サンジェルマンがバラルの呪詛を解こうとしている理由がわかったワケダ」

 

沙織「人類を支配から解き放つと報告で聞きましたが…」

 

カリオストロ「生真面目なサンジェルマンだから、人類を支配から解き放つのは決して嘘じゃないけど、もう一つの本音があるのが元詐欺師のあーしにはわかっちゃうのよ」

 

パルティータ「もう一つの本音?」

 

プレラーティ「あくまでも推測に過ぎないワケダが…、それはサンジェルマンはバラルの呪詛を解いて、自分の師匠と寄りを戻そうというのがもう一つの本音だと推測しているワケダ」

 

 その言葉にパルティータは衝撃を受けた。

 

パルティータ「あの子が…私と寄りを戻そうとしている…?」

 

星矢「母さん?」

 

パルティータ「……私はとんだ勘違いをしていたわ。サンジェルマンは理想を私に否定されたから、私を恨んでいるのかと思っていた。でも、あの子の方が寄りを戻そうとしているなんて…。私は罪悪感でずっとサンジェルマンから逃げていたのかも知れない…」

 

沙織「パルティータ…」

 

パルティータ「…ありがとう、二人とも。お陰で決心がついたわ。もう私はあの子から逃げない!」

 

カリオストロ「どうやら、師匠の方は決心がついたみたいね」

 

プレラーティ「サンジェルマンと師匠を和解させる手伝いをした見返りとして、アダムに一泡吹かせるためにラピスを錬成してほしいワケダ」

 

カリオストロ「チフォージュ・シャトー抜きで何千年も前にラピスを錬成できたなら、数時間程度で可能かしら?」

 

パルティータ「数時間程度で錬成可能だから、いいわよ」

 

 

 

サンジェルマン「私のために…」

 

カリオストロ「あーし達はサンジェルマンに色々とお世話になったのよ」

 

プレラーティ「だから、今度はこういった形でサンジェルマンにお返しをするワケダ」

 

カリオストロ「だから、本心を隠さずに思いっきりお母さんに甘えなさい」

 

 2人に勧められ、サンジェルマンはパルティータに視線を向けた。

 

サンジェルマン「お母さん…お母さ~~~ん!!」

 

 理想実現のために押し殺していた本心を剥き出しにし、サンジェルマンは涙を流してパルティータに抱き付いた。

 

パルティータ「サンジェルマン…、ごめんなさい…。私はあなたへの罪悪感のあまり、数百年も向き合わずに逃げ続けてしまって…」

 

サンジェルマン「逃げ続けていたのは私の方…。お母さんと相対した時は本音を言う事ができなくて…」

 

 親子の和解に響達も涙を流していた。

 

切歌「親子の和解は涙が出てしまうデス…」

 

未来「よかった…」

 

 そんな和解した親子の方へ、響は向かった。

 

サンジェルマン「シンフォギア…」

 

響「私もずっと正義を信じて握り締めてきた。だけど…拳ばかりでは変えられない事がある事も知っている。だから…握った拳を開くのを恐れない」

 

 突然の響の行動にサンジェルマンは戸惑った。

 

響「神様が仕掛けた呪いを解くのに、神様みたいな力を使うのは間違ってます。人は人のまま変わっていかなきゃいけないんです。呪いが解けてなくてもお母さんと分かり合えたじゃないですか」

 

サンジェルマン「だとしても…。いつだって何かを変えていく力は…。だとしても、という不撓不屈の想いなのかもしれない…。それがあったからこそ、私はお母さんと寄りを戻せた…」

 

 響が差し出した手を取ろうとしたサンジェルマンであったが…。

 

???「おっと、ところがぎっちょん!ってな」

 

カリオストロ「この下品な声…!」

 

 声の主は杳馬であり、アダムもいた。

 

アダム「予想外だったよ、まさか2人が生きていたとは」

 

 空に浮かぶオリオン座が錬成陣に覆われた。

 

プレラーティ「とんでもない事が起ころうとしているワケダ!」

 

未来「パルティータさんにはわかりますか?」

 

パルティータ「あれは天を巡るレイラインよ。あいつはこの星のレイラインではなく、宇宙のレイラインから神の力を顕現させようとしているの!私もそういう手段をとるのは想定外だったわ!」

 

ティキ「アダム…アダムが来てくれた…」

 

 再びティキは浮かび上がった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その様子は本部でも映されていた。

 

八紘『星の海にて開かれる…』

 

弦十郎「もう一つの神出づる門……!」

 

朔也「超高レベルのエネルギー来ます!」

 

 

 

神社

 

 宇宙のオリオン座からティキに向かってエネルギーが送り込まれた。

 

アダム「遮断できまいよ、彼方にあっては…」

 

響「止めてみせる!」

 

 アダムは帽子を投げたが、パルティータは弾き飛ばした。

 

カリオストロ「サンジェルマン、薄々女の勘で気付いてたけど、アダムは最初から神の力を独占するつもりだったのよ!」

 

プレラーティ「そのために私達を利用していたワケダ!」

 

サンジェルマン「おのれ…!革命の礎となった全ての命によって生み出す神の力を独占しようとは!」

 

アダム「用済みだな、君達も」

 

杳馬「さ、神の力の一部を早速見せてみなよ!」

 

 杳馬に言われ、ティキは口を開いてビームを発射した。

 

アダム「この威力…!」

 

 しかし、パルティータの防御壁でガードされた。

 

アダム「何ッ!?神の力の攻撃を防いだ!?」

 

パルティータ「その程度じゃ、私の防御壁を破れはしないわよ」

 

杳馬「けど、こういった攻撃はどうかなぁ?」

 

 杳馬が地面に手を置くと、今度は響達の足元を爆発させて吹っ飛ばそうとした。だが…。

 

切歌「♪~♪~~♪」

 

 切歌は絶唱を唄い、爆発を防ごうとしていた。

 

カリオストロ「お気楽系女子が何を!?」

 

切歌「確かにあたしはお気楽デス! だけど、誰か一人くらい何も背負ってないお気楽者が居ないと……もしもの時に重荷を肩代わりできないじゃないデスか!!」

 

未来「絶唱…!」

 

調『ダメェェェェッ!!』

 

 しかし、杳馬の爆発には勝てず、切歌は吹っ飛ばされた。

 

未来「切歌ちゃん!」

 

カリオストロ「しっかりしなさいよ、お気楽系女子!」

 

響「絶唱で受け止めるなんて無茶を…!」

 

切歌「響さんはもうすぐお誕生日デス…。お誕生日は重ねていく事が大事なのデス…」

 

響「こんな時にそんな事は!」

 

切歌「あたしは本当の誕生日を知らないから…」

 

 その言葉に響と未来は気付いた。

 

未来「そう言えば、レセプターチルドレンの誕生日は…!」

 

切歌「誰かの誕生日だけは、大切にしたいのデス…」

 

 何かが落ちた音がしたため、その方を向くと、落ちたのはLiNKERを入れた容器であった。

 

響「LiNKER!?」

 

カリオストロ「あのお薬を大量に…?」

 

プレラーティ「だが、容態が悪そうに見えるワケダ…!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 エルフナインもモニターで見ていた。

 

エルフナイン「過剰投与で絶唱の負荷を最小限に!?だけど、身体への薬害が…!」

 

弦十郎「ただちに切歌くんを回収するんだ! 救護班の手配を急げ! 体内洗浄の準備もだ!」

 

慎次「はい!」

 

 

 

神社

 

 サンジェルマンはアダムと相対した。

 

サンジェルマン「3人には手を出させない!」

 

アダム「ほう。それが答えかな?君が選択した…」

 

カリオストロ「あーし達も忘れてもらっては困るわよ、人でなしが!」

 

プレラーティ「私達も一緒に戦うワケダ、サンジェルマン」

 

サンジェルマン「2人共…。神の力。その占有を求めるのであれば、貴様こそが私の前に立ちはだかる支配者だ」

 

アダム「実に頑なだね、君達は。忌々しいのはだからこそ…。しかし間もなく完成する。神の力は。そうなると叶わないよ、君達に止めることなど…」

 

パルティータ「それはどうかしら?神の力よりもオリンポス十二神とかの方がよっぽど上だもの」

 

アダム「不愉快だよ、君は」

 

杳馬「(パルティータちゃんの言ってる事も間違いじゃないけどね)」

 

サンジェルマン「私とシンフォギア装者は互いに正義を握り合い、終生分かり合えぬ敵同士だ」

 

響「だけど今は同じ方向を見て、同じ相手を見ています」

 

サンジェルマン「敵は強大、圧倒的な奴が2人。ならばどうする?立花響。そして、お母さん」

 

響「いつだって、貫き抗う言葉は一つ!」

 

響とサンジェルマン「だとしても!」

 

カリオストロ「う~っ、決まったわねえ!」

 

未来「あなた達も…」

 

プレラーティ「アダムを倒す以上、手段を選んでられないワケダ」

 

カリオストロ「頼むわよ、錬金術殺しの紫っ子ちゃん!」

 

未来「はい!」

 

 響達はアダムと杳馬の2人と対峙した。




これで今回の話は終わりです。
今回はサンジェルマンとの戦いとパルティータとサンジェルマンの和解を描きました。
当初からパルティータとサンジェルマンの和解は描く予定で、AXZ本編よりもカリオストロとプレラーティの再登場を早め、パルティータとサンジェルマンの和解させる仲介人としました。
そして、杳馬がティキに似たオートスコアラーを完成させましたが、相当ヤバイ奴である事は間違いありません。
次はアダムとティキ、杳馬と戦う事になります。

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