セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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118話 ヒトガタの最期

 

 サンジェルマン達が自ら命を燃やし、その力を星矢に託した事で星矢達はディバインウェポン2を大爆発させる事なく撃破し、響の方も神の力を砕く事に成功した。しかし、代償は大きかった。

 

響「(サンジェルマンさんの歌は胸に届いていた…。だけど何もできなかった)私はまた…ぶん殴る事しかできなかった!!うわああああっ!!」

 

 手を取り合えた星矢親子と違い、響はサンジェルマンと手を取り合う事ができなかったために地面を叩いた。一方、パルティータも愛弟子であり、娘でもあったサンジェルマンの死を悲しんでいて、星矢達も悲しい表情で見ていた。

 

氷河「巨大な反応兵器も同然のディバインウェポン2を倒せたのはサンジェルマン達が命を燃やしてその力をラピスごと星矢に託してくれたお陰だ…」

 

紫龍「ああ、あの3人は理想に殉じ、この国を護った錬金術師…」

 

瞬「3人とも、安らかに眠って……」

 

パルティータ「サンジェルマン…やっと寄りを戻せたからもっと…もっと親子の時間を過ごしたかったのに…!」

 

杳馬「やっとわかり合えた親子に待っていたのは非情なる永遠の別れ…。いやあ、何たる悲劇!」

 

星矢「そうし向けたのはてめえだろうが、杳馬!」

 

杳馬「俺とここでケリを着けるつもりか。言っておくが、俺は今までの奴等より強いぜ!」

 

 そのまま星矢達は杳馬に向かっていった。

 

響「ありがとう…サンジェルマンさん。だけど、望んだのはこんな結末じゃない…。もっと話したかった。分かり合いたかった!」

 

アダム「分かり合いたかった?」

 

ティキ「あたしを抱き…むしろ抱き合いたいのよ、アダムルプル、大好き……」

 

 いつまでもティキがしがみついている事に業を煮やしたアダムは踏みつけた。

 

ティキ「あーっ!!」

 

 そして、ティキは機能停止した。

 

アダム「分かり合えるものか!バラルの呪詛がある限り。呪詛を施したカストディアン……アヌンナキを超えられぬ限り!」

 

響「だとしても…」

 

アダム「だが一つになれば話は別だ。統率者を」

 

響「だとしても!分かり合うために手を伸ばし続けた事は無意味ではなかった!」

 

アダム「僕の話を遮るとは…癪に」

 

???「その者の言う通りだ」

 

 またしても未来は本人の性格に合わない話し方をした。

 

未来?「この者達は欠陥品のお前よりも出来がいいぞ」

 

アダム「ま、また貴様か!!」

 

未来?「ふふふ…お前が壊したあの人形を見ていると、我に縋っていた頃のお前の姿を思い出す。所詮、お前は完全すぎて発展性がなく、繋がる事もできない欠陥品。忌まわしい呪詛があっても繋がろうとするために足掻くかの者達の方が見込みがあるぞ」

 

アダム「僕を……僕を愚弄するな!!貴様らと対等になるためにどれだけ足掻いたと思っている!?」

 

未来?「どうせ全部人任せにしたのであろう。自分だけでは全く新しい事ができぬくせに、偉そうな事を言う。どれだけ時間が経過しても新しい事ができぬとは。お前のような欠陥品を作り出した我自身も遺憾である」

 

アダム「何だとォ!?」

 

 未来がらしくない話し方をしてアダムを否定している姿に一同は困惑した。

 

響「未来、何でまた変な話し方をしているの?」

 

クリス「そういや、あいつは2日前もそんな話し方をした事があったな」

 

マリア「急にどうしたの?」

 

未来「えっ?また私は覚えのない変な事を言ったの?」

 

マリア「(どうなっているの?)」

 

切歌「まあ、なんちゃらの一つ覚えで何度でも立ち上がってきたのデス!」

 

調「諦めずに、何度でも!そう繰り返すことで一歩ずつ踏み出してきたのだから!」

 

翼「たかが完全を気取る程度で私達不完全を上から支配できるなどと思うてくれるな!」

 

アダム「どうしてそこまで言える?大きな顔で!そして紫のシンフォギア…貴様だけは念入りに叩き潰してやる!!」

 

 アダムは次々とアルカノイズを出してきた。

 

未来「自分を慕う人形さえ道具にしたあなたには!」

 

響「人でなしにはわからない!!」

 

 次々と装者達はアルカノイズを撃破していった。

 

切歌「どうしてこんなに争いが続くのデスか?」

 

調「いつだって争いは信念と信念のぶつかり合い」

 

クリス「正義の選択が争いの原因とでもいうのかよ!」

 

翼「安易な答えに歩みを止めたくはない!だが…」

 

 

 

装甲車

 

 弦十郎達は戦闘の様子を注視していた。

 

あおい「装者7人によるユニゾンでフォニックゲイン上昇!」

 

朔也「だけど、エクスドライブを起動させるにはまだほど遠く!」

 

弦十郎「ぬぅ…」

 

 すると、あおいはある事に気付いた。

 

あおい「未来ちゃんの神獣鏡のギアの出力が普段以上の高い数値を示しています!」

 

朔也「何でなんだ?」

 

あおい「わからない…」

 

 

 

 

 戦闘は続いていた。

 

マリア「それもこれも相互理解を阻むバラルの呪詛!」

 

響「だとしてもです!」

 

未来「呪詛があっても確執があったパルティータさんとサンジェルマンさんは分かり合えた!人は分かり合える!」

 

 響と未来はアダムへ向かっていった。

 

アダム「使わないのかい?エクスドライブを。いや、使えない。ここにはないからね。奇跡を纏えるだけのフォニックゲインが!」

 

 アダムは攻撃を仕掛けていったが、錬金術を無力化する神獣鏡の装者である未来に攻撃を無力化され、次々と響と未来の2人に押されていった。

 

未来「(いつもより私のギアの出力が上がっている?)」

 

アダム「乗るなよ、調子に!」

 

 響と未来を吹っ飛ばし、追撃をかけたアダムだが、2人はかわして向かっていった。

 

翼「力を失っている今ならば!」

 

 翼は斬撃を放ったが、アダムは防御壁で防いだ。しかし、その直後に未来のビームが飛んできて、錬金術の防御が無力化された。

 

未来「響!」

 

 そのまま響はダブルパンチをアダムに叩き込み、爆発が起こった。

 

 

 

装甲車

 

 様子を見ていた弦十郎達は…。

 

あおい「届いた!でも…」

 

弦十郎「ああ。敵は統制局長。アダム・ヴァイスハウプトだ」

 

 

 

 

 アダムは千切ったはずなのに再びできあがった異形の左腕で響のパンチを受け止めていた。

 

響「左腕!?うわあああっ!」

 

 そのまま響は吹っ飛ばされた。

 

アダム「そうさ。力を失っているのさ、僕は。だから、保っていられないのさ、僕は……僕の完成された美形をぉぉぉぉぉ!!」

 

 アダムに異変が起き、異形の姿に変化して巨大化を始めた。

 

朔也『質量、内部より増大!』

 

あおい『この姿…まるで!』

 

アダム「知られたくなかった、人形だと。見せたくなかった、こんな姿を。だけどもう……頭に角を頂くしかないじゃないか!!僕も同じさ!負けられないのは!!」

 

 そのままアダムはエネルギーを放った。

 

未来「あれが、アダムの本当の姿……!」

 

響「人の姿を捨て去ってまで…」

 

切歌「何をしでかすつもりデスか?」

 

アダム「務まるものか、端末と作られた猿風情が。わからせてやる。より完全な僕こそが支配者だと。そのために必要だったのさ、彼等と並び立てる神の力が」

 

 アダムは襲い掛かってきた。一方、星矢達と杳馬の戦いはディバインウェポン2との戦いで消耗している事もあり、パルティータ以外は杳馬の圧倒的な力に押されていた。

 

氷河「な、なんて強さだ…!」

 

瞬「アダムと同じような事をやったはずなのに、まるで消耗していなかったようだよ!」

 

紫龍「それだけ、今までの戦いでは手を抜いていたんだろうな…!」

 

杳馬「はい、正解!アダムのダンナは神の力を顕現させるのにかなり力を消耗したが、俺の小宇宙はダンナを遥かに超えてるから、ちょびっとした消耗してねえんだぜ」

 

パルティータ「なんて奴なの!」

 

星矢「強敵との連戦だろうと…俺達はお前のような奴に負けるわけにはいかない…!」

 

杳馬「星矢、お前は消耗してるのに他の3人以上に俺と戦えてるじゃねえか。だが、仲間もまとめて吹っ飛ばしてやる!リアルマーベラス!」

 

 複数の黒い渦に星矢達は巻き込まれた。

 

星矢達「うわああああっ!!」

 

 星矢達4人はそのまま車田落ちしたが、パルティータは変形させた防御壁で防いだ。

 

杳馬「流石はパルティータちゃん、遂に黄金のラピスを使ったか」

 

パルティータ「ラピスは病気の治療に使う事が多かったから、戦闘で使ったのはかなり久しぶりよ!」

 

 パルティータは今まで使っていなかった黄金のラピスを使い、聖衣に黄金の装飾がところどころに追加された姿になっていた。紫龍達はまともに立てず、星矢だけがまともに立てた。

 

杳馬「流石は星矢、やるじゃねえか。だが、仲間共々ここで」

 

 そんな時、杳馬の手に羽根が刺さった。

 

杳馬「何!?」

 

???「ふっ、貴様のような悪魔と呼ぶにふさわしい悪魔がいたとはな」

 

杳馬「このベヌウと似た攻撃的な小宇宙は……?」

 

 攻撃的な小宇宙を放ちながら、一輝が姿を現した。

 

一輝「不死鳥、フェニックス一輝!」

 

瞬「兄さん、やっぱり来てくれたんだね!?」

 

一輝「ああ、勿論だ」

 

 瞬が一輝に向けた『兄さん』という言葉に杳馬は反応した。

 

杳馬「ほう、てめえは今まで現れた事がなかったフェニックスの聖闘士か。それに、ハーデスの器の兄ちゃんと来たもんだ」

 

一輝「貴様は兄弟と縁でもあるのか?」

 

杳馬「前の聖戦である兄弟の兄貴にコテンパンにやられちまってな…。それに、以前から兄ちゃんや姉ちゃんには好感が持てねえんだ。てめえはもちろん…マリアちゃんもな!」

 

一輝「御託はここまでにして、行くぞ!」

 

星矢「一輝…俺はまだ戦えるぞ…!」

 

一輝「(どれだけ叩きのめされても立ち上がるとは…。流石は星矢だ…)」

 

パルティータ「行くわよ、杳馬!」

 

 紫龍達の代わりに一輝が加わって杳馬との戦闘が再開された。一方、響達は本来の姿のアダムに苦戦していた。

 

響「力負けしている…」

 

サンジェルマン『まだだ、立花響!』

 

 声がした先にはサンジェルマンのスペルキャスターがあった。それを見た響は立ち上がって拾おうとしたが、アダムに拾われた。

 

アダム「何をするつもりだったのかな?サンジェルマンのスペルキャスターめ!」

 

 スペルキャスターを握り潰した後、そのエネルギーを響にぶつけた。

 

 

 

装甲車

 

 発令所の方では…。

 

あおい「ファウストローブを形成するエネルギーを使って!?」

 

朔也「やはりエクスドライブでないと…!」

 

 その時、歌が聞こえた。

 

エルフナイン「この歌は!」

 

 

 

 

 響はアダムの攻撃を両手で受け止め、絶唱を唄っていた。そして、マリアに翼、クリスが響の傍に来た。

 

翼「S2CAヘキサコンバージョンを!」

 

クリス「応用するってんなら!」

 

未来「響、私も」

 

???『未来の名を持つ者よ、友を護るため、欠陥品を倒すために力が欲しいのか?』

 

 響のところへ行こうとした未来であったが、聞こえてきた声に足を止めた。そして、調と切歌も響の傍に来た。

 

調「その賭けに!」

 

切歌「乗ってみる価値はあるのデス!」

 

 

 

装甲車

 

 響がやろうとしている事に発令所にいる一同は驚いていた。

 

朔也「無茶だ!フォニックゲイン由来のエネルギーじゃないんだぞ!」

 

あおい「このままではギアが耐えられず爆発しかねません!」

 

エルフナイン「その負荷はバイパスを繋いでダインスレイフで肩代わり!触媒として焼却させます!」

 

朔也「でも、可能なのか!?」

 

あおい「可能にする!それがそれが駐後の守りよ!」

 

美衣「四の五の言う余裕もありませんよ!」

 

 急いでエルフナインはバイパスを繋いだ。

 

エルフナイン「本部バックアップによるコンバートシステムを確立!皆さん!」

 

 もう一つの異変がすぐに起きた。

 

弦十郎「今度は何だ!?」

 

あおい「司令、神獣鏡のギアの出力がどんどん上がっています!」

 

朔也「原因不明!一体、何が起きているんだ…!?」

 

 

 

 

 エルフナインのお陰で準備が整った。

 

響「バリアコーティング、リリース!!」

 

 掛け声の後、6人は体が黒くなった。

 

 

 

???

 

 そして、未来にも異変が起こっていて、未来の精神世界にある人物が現れていた。

 

未来「あなたは誰!?」

 

???「そんな事を問い質している場合ではなかろう。あの欠陥品を倒さねばならないのではないのか?」

 

未来「それは、そうだけど……」

 

???「奴の手で不完全な復活をした今の我の力などたかが知れている。今ある我の力を使わせよう」

 

 そう言って何者かは未来の胸を触った。

 

未来「ひゃっ!」

 

???「同性同士で胸を触られて恥ずかしがる事もなかろう。遠慮はするな、我の力を受け取れ!」

 

 

 

 響達が何かをしているのをアダムは見ていた。

 

アダム「何をしようと!」

 

響「抜剣!!」

 

響達「ラスト・イグニッション!!」

 

アダム「程がある、悪あがきに!受け入れ」

 

 黄金錬成をしようとした途端、高出力のビームが飛んできて火の玉にぶつかり、無力化された。

 

アダム「な、何ッ!?」

 

 ビームを放ったのは未来であったが、ギアの出力が異常なまでに上がっていた。

 

未来「いくら錬金術を真似しても、あなたの錬金術は世界最高の錬金術師のパルティータさんには遠く及ばない!」

 

???『所詮は人間が編み出した技の猿真似に過ぎん』

 

アダム「何だとォ!?貴様はどこまでも僕を否定するつもりか!!」

 

 聞こえてきた自分を否定する声にアダムが声を荒げて激昂していると、響達から光が放たれ、その中からギアの形状が変化した響達が次々と向かっていった。先陣を切ったのは、剣を構えるマリアと翼であった。

 

アダム「生意気に、人類ごときがぁぁぁ!!」

 

 両腕を伸ばしたアダムであったが、マリアと翼は切り落とした。

 

マリア「ギアが軋む…悲鳴をあげている!」

 

翼「この無理筋は長くは保たない!」

 

 斬られたアダムの両腕は再生した。

 

アダム「引き上げたのか?出力を」

 

 今度は巨大ヨーヨーで拘束された。

 

調「つまるところは!」

 

アダム「シンフォギアのリビルドをこの土壇場で!」

 

切歌「一気に決めれば問題ないデス!」

 

 次は切歌の鎌を変形させた鎖付き手裏剣をアダムは受けた。そして、次はクリスが巨大ミサイルを用意した。

 

クリス「エクスドライブじゃなくても!」

 

 今度は巨大ミサイルが直撃した。

 

アダム「うおおおおおおっ!?」

 

 巨大ミサイルが直撃したアダムはドームまで吹っ飛ばされ、そのままミサイルは爆発した。爆発の後、アダムは起き上がったが、響が目の前に迫っていた。

 

響「うおおおおおおっ!」

 

 ところが、響のペンダントが紫に変色し、腕が元に戻って急降下した。

 

 

 

装甲車

 

 その異常が何なのかはすぐにわかった。

 

あおい「まさか…反動汚染!?」

 

朔也「このタイミングで!?」

 

エルフナイン「そうだ!響さんのギアだけ汚染の除去がまだ!」

 

 

 

 

 その頃、星矢達と杳馬の激突は続いていた。

 

一輝「杳馬め!神には及ばないが、その力は今まで戦ったどの冥闘士よりも圧倒的に上だ!」

 

杳馬「やるじゃねえか、星矢もパルティータちゃんもフェニックスのお兄ちゃんもな!俺を相手にここまで戦えるとはな!」

 

星矢「俺達はまだ終わっちゃいねえぞ!」

 

パルティータ「未来を、理想を託してくれたサンジェルマン達のためにも、絶対に負けられない!」

 

杳馬「けど、ここで終わりなんだぜ!!」

 

 アダムの魔力の容量を超える膨大な小宇宙と練度による絶対零度の錬金術を杳馬は放った。咄嗟に星矢とパルティータはかわしたが、一輝がかわし損ねて凍り付いてしまった。

 

瞬「兄さん!」

 

杳馬「んはははははっ!不死鳥とて、凍り付いてしまえば」

 

 ところが、凍り付いた一輝から蒸気が出て、氷が溶けてしまった。

 

杳馬「じ、自力で絶対零度から解凍しただと!?」

 

一輝「俺は今までいろんな地獄を味わい、潜り抜けてきた。極寒地獄も例外ではない!」

 

杳馬「て、てめえは本当に不死身なのか!?」

 

一輝「さしずめ、そうだろうな」

 

星矢「杳馬、ここでお前とのケリをつけてやる!極限まで燃えろ、俺の小宇宙よ!!」

 

 3人ともかなり小宇宙を燃やしたのであった。

 

杳馬「星矢、お前って奴はとんでもねえな!追い詰められても、消耗してもここまで小宇宙を燃やせるとは!流石は神殺しのペガサスの聖闘士の生まれ変わりとだけあるぜ!」

 

星矢「言いたい事はそれだけか?杳馬!」

 

一輝「貴様のような演出家を気取った愉快犯は!」

 

パルティータ「地獄へ墜ちなさい!!」

 

一輝「喰らえ、鳳翼天翔!!」

 

星矢「ペガサス彗星拳!!」

 

 星矢のペガサス彗星拳と一輝の鳳翼天翔、パルティータの凄まじい威力のビームは合わさり、杳馬の方へ向かっていった。

 

杳馬「んはははははっ!そうだ、星矢!これからもっと、もっと力をつけろ!そうして、お前は天界を…!」

 

 凄まじい小宇宙を込めた攻撃を杳馬はかわそうともせず、そのまま受けて消えたのであった。

 

星矢「やった…のか…?」

 

一輝「だが、勝った実感が薄いな…!」

 

パルティータ「(結局、何を企んでいたの…?杳馬……)」

 

 戦いには勝ったが、星矢達には勝った実感が薄かった。一方、響達の方は反動汚染で響が危機に陥っていた。

 

アダム「動けないようだな、神殺し。ここまでだよ、いい気になるのも」

 

響「くぅっ…」

 

 響に攻撃しようとするアダムへ、ビームの雨が降ってきてそれなりのダメージを与えた。

 

アダム「うわあああっ!」

 

未来「響を傷つけさせない!」

 

響「未来!」

 

 攻撃したのは、複数の小型端末も使ってビームの雨を降らせた未来であった。

 

アダム「貴様も神殺しと同等の脅威だ!奴が完全に目覚めていないうちに死ねぇ!!」

 

 『奴』がまだ完全に目覚めていないうちに勝負を着けようとするアダムは口からビームを放とうとした。そんな響を救うため、翼達は集まった。

 

翼「手を伸ばせ!」

 

翼達「はああああああっ!!」

 

 キャロルとの戦いの時のように翼達は自分達の力を響に託した。

 

アダム「くたばれぇっ!!」

 

 アダムは口からビームを発射し、着弾地点が大爆発を起こした。

 

アダム「ふふふ…ふはははは!」

 

 勝ち誇っていると、扇を展開してブーメランのように投げて攻撃する技、追憶が飛んできてアダムを切り刻んだ。

 

アダム「な、何ッ!?」

 

 扇が戻ってくると、そこには三角形のバリアで身を護る響と扇をキャッチした未来の姿があった。

 

マリア「まさか、私の!」

 

響「この地から…みんなの!」

 

アダム「いいってもんじゃないぞ、ハチャメチャすれば!てええええええいっ!」

 

 今度は響の左足に鎌が生えた。

 

響「だったらぁぁぁっ!!」

 

未来「やあああっ!」

 

 響は足から生えた鎌を飛ばし、未来は再び扇を展開して投げ、伸ばしてきたアダムの手を切り刻んだ。

 

切歌「あたしの呪リeッTぉデス!」

 

響「借ります!」

 

 今度は翼の蒼ノ一閃を放ち、再生したアダムの腕を斬った。

 

翼「蒼ノ一閃!」

 

アダム「否定させない…この僕を誰にも!」

 

 手を再生させたアダムが地面に手を当てて錬成陣を形成すると、千切れたアダムの手が次々と小型のアダムに変貌した。

 

未来「どれだけいても!」

 

響「みんなのアームドギアを!」

 

 未来は小型端末からビームを発射する技、煉獄で蹴散らし、響は禁月輪で蹴散らしていった。

 

調「禁月輪! 私たちの技を……。ううん、あれもまた繋ぐ力!響さんのアームドギア!」

 

アダム「してる場合じゃないんだ、こんなことを。こんなところで!」

 

 アダムは響と未来を捕まえ、握り潰そうとした。

 

響「くぅっ!」

 

未来「ううっ!」

 

アダム「完全な降臨は間もなくだ、カストディアンの。降臨がまだ不完全なうちに手にしなければならない。アヌンナキに対抗し、超えるだけの力を!なのにお前達はぁぁぁぁっ!!」

 

クリス「ぶっ飛ばせ、アーマーパージだ!」

 

響「うあああああああっ!!」

 

 アーマーパージでアダムの手を吹っ飛ばし、腕をつたって走った。

 

響「無理をさせてごめん、ガングニール。一撃でいい。みんなの想いを束ねてあいつに!!」

 

プレラーティ『借りを返せるワケダ!』

 

カリオストロ『利子つけてノシつけて!』

 

サンジェルマン『支配に反逆する革命の咆哮をここに!!』

 

 残留思念となったサンジェルマン達も響に力を貸した。

 

 

 

???

 

 そして、同じタイミングで未来の精神世界である事が起こっていた。

 

???「どうやら、今の我に残った力全てをお前に渡さねばならんようだな」

 

未来「待って!あなたが残っている力を全て私に渡したら…!」

 

???「案ずるな。今、力を全て渡してもお前との別れは一時的なものに過ぎん。カギが揃いし時、お前と再び会える」

 

未来「だけど…!」

 

 心配する未来の言う事を気にもとめず、何者かは再び未来の胸を触った。

 

???「今は欠陥品を倒すのが先であろう。また会おう、未来の名を持つ者よ」

 

 そう言って何者かは残された力を全て未来に渡し、消えていった。

 

 

 

 響はアダムの腕の肘あたりまできたが、対するアダムは手を再生させ、響が肩に迫ったところで握りつぶそうとした。

 

響「バァリシャ ネスケェェェル ガングニールトロォォォォォォォン!!」

 

 響が聖詠を唱え終わったのと同時にアダムは響を握り潰したかのように見えたが、その直後に手が吹っ飛んで黄金のシンフォギアを纏う響が出てきた。それと同じくしてもう片方の手で握りつぶそうとしていた未来の方にも異変が起きてアダムの手が吹っ飛ばされ、未来はヘッドギアの装飾がウェディングドレスのベールのようになった白銀のシンフォギアを纏っていた。

 

アダム「黄金錬成だと!?錬金術師でもない者か!!そして、その白銀のシンフォギアは何だ!?」

 

未来「この力は素性はわからないけど、ある人から託されたもの!そして、響の力もみんなから託され、束ね上げた力!誰かが作り上げた力を横取りする事しか考えていないあなたには決して掴む事はできない!!」

 

 アダムは攻撃してきたが、未来は小型端末のビームで攻撃した。小型端末のビームでも1発1発がアダムの体を貫通するほどの威力に跳ね上がっていた。

 

アダム「ぐあっ!」

 

響「うおおおおおおおっ!!」

 

 未来の攻撃でアダムがダメージを受け、怯んだ隙に響がパンチを入れた。

 

響「オラオラオラオラオラオラオラオラ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

未来「やああああああっ!!」

 

 響の連続パンチと未来の小型端末のビーム乱射をまともに受け、アダムはどんどん浮いて行き、遂にはドームの天井をぶち抜いて行った。

 

未来「響ぃぃいいいっ!!」

 

響「未来ぅぅぅっ!!」

 

 そして、止めに響と未来はそれぞれ左腕と右腕を近づけると、双方の腕のアーマーが変形して一つの機械の拳となり、アダムへ突っ込んでいった。

 

響と未来「行っけぇえええええっ!!」

 

 響と未来の合体技、TESTAMENTでアダムの体に大きな風穴を開けた。

 

アダム「砕かれたのさ、希望は今日に。奴の力を借りて僕を倒した事を絶望しろ、明日に……未来に!ふふふ…はははは…はーっははははっ!!」

 

 自分の野望を打ち砕いただけでなく、『奴』の力を借りて倒した事をアダムは嘲笑い、爆散したのであった。その爆発に吹っ飛ばされた響と未来を翼とマリアが受け止めると、二人の変身が解除された。

 

 

 

装甲車

 

 アダムの最後は発令所も確認した。

 

朔也「これでアダムは…杳馬は…パヴァリア光明結社の思惑は!」

 

弦十郎「ああ、杳馬はまだ生きている可能性も高いが、今日は俺達の勝利だ!」

 

 戦いが終わった事に発令所のメンバーもほっとした。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 それから3日後…響のメディカルチェックも終わり、データの整理をエルフナインは行っていた。そこへ、朔也がコーヒーを出した。

 

朔也「はい」

 

エルフナイン「あ」

 

朔也「事件収束からもう3日。相変わらず頑張り過ぎじゃないかな?」

 

あおい「響ちゃんのギアの反動汚染も除去できたんだし、少しは休まないと」

 

エルフナイン「ありがとうございます。ですが一連の経緯をおさらいしないと。気になっているので……」

 

 エルフナインは響に神の力が宿ったのを疑問に思っていて、アダムとサンジェルマンの言葉を思い出していた。

 

エルフナイン「(だとしたら響さんは?そもそも原罪とは一体?)」

 

 そんな中、通信が入った。

 

あおい「司令、ロンドンの緒川さんからです」

 

弦十郎「繋いでくれ」

 

 通信を入れた。

 

弦十郎「そっちはどうなっている?」

 

慎次『各国の情報機関と連携しパヴァリア光明結社の末端、その残党の掃討は順調に行われています』

 

弦十郎「だが結社という枷が無くなった分、地下に潜伏し、これまで以上に実態が掴めなくなる恐れがある」

 

慎次『引き続き捜査を続けます』

 

弦十郎「加えてカストディアン、アヌンナキの脅威か…。それに、あの途方もなく危険な愉快犯の杳馬はまだ生きているかも知れない…」

 

 

 

鎌倉

 

 一方、風鳴本家では…。

 

訃堂「米国は安全保障の観点からミサイル発射の正当性を主張してきたか……」

 

八紘「国連決議をないがしろにする独断に対し、各国は非難を表明しつつ…それでも強く対応出来ないのは……」

 

訃堂「ふーむ…。神を冠するあまりにも強大過ぎる力を目の当たりにしてしまったが故…。八紘。あの力が我らにあれば夷狄による国土蹂躙も特異災害による被害も防げるとは思わぬか?」

 

 その言葉に八紘は驚いた。

 

八紘「では、色々な交渉があるのでこれで」

 

 仕事が色々あるため、八紘はその場を後にした。

 

訃堂「あの女神の下僕共め!このワシに二度も恥をかかせおって!こうなれば、神の力を手にして」

 

???「おっと!そいつはいけねえな、クソジジイ!」

 

 訃堂を否定したのは杳馬であった。

 

訃堂「貴様、夷狄たる女神とその下僕のようにワシを愚弄する気か!」

 

杳馬「ああ、そうさ。てめえのようなじーさんがのさばるのは気に食わねえし、神の力を我が物にするのも俺のプライドが許さねえからな。てめえには神の力を手にできる器も資格もねえんだよ、バーカ!」

 

訃堂「貴様ァァァァッ!!!貴様までもワシの護国を否定するのか!?」

 

杳馬「護国?てめえの護国はただ、土地を護りたいだけだろ?それじゃあ、護国とは呼べねーよ。国ってのはな、人の集まりで成り立ってるのさ。それを忘れての護国なんてジジイ、頭がイカれてるんじゃなくて?ま、俺には関係ねーけど」

 

訃堂「笑止!!!最早、貴様はあの女神と下僕共の前にワシが成敗してくれるっ!!」

 

杳馬「あーらら、老害が癇癪を起こしちゃった。ま、てめえは人間未満のケダモノだけどな」

 

訃堂「どこまでもワシを愚弄した貴様は八つ裂きにしてくれるっ!!」

 

 自分を徹底的に否定する杳馬に大激怒した訃堂は殴りかかったが、杳馬にあっさり受け止められた。

 

訃堂「ぐぬぬぬっ…!!」

 

杳馬「ケダモノ風情が俺に勝てるわけねーだろ?あ、ケダモノにはそんな事がわからねえんだった」

 

 訃堂を人間扱いせず、杳馬は容易く訃堂の左腕をへし折った。

 

訃堂「ぬああああああああっ!!」

 

 そして、杳馬に殴り飛ばされた。

 

訃堂「おのれぇ!3度もワシは屈辱を受けるのか!!」

 

杳馬「老害じーさん、てめえはここで死んだほうが幸せなんだぜ。てめえは近いうちに心をへし折られ、死ぬより辛い生き恥を晒す事になるんだからなぁ。そうなるぐらいだったら、ここで俺に消されて完全に退場した方がいいんじゃなくて?」

 

訃堂「黙れ黙れ黙れ黙れ!貴様の言葉など信ずるに値するものか!ワシこそが…ワシこそが防人なのだぁああああっ!!」

 

 愛刀、群蜘蛛で杳馬を斬ろうとした訃堂だったが、杳馬はいつの間にか後ろにいた。少ししてから刀が折れ、訃堂は無数に斬られた。

 

訃堂「ぬわああああああっ!!」

 

 反応する間もなく斬られまくった訃堂は倒れた。

 

杳馬「おっと、死ぬのは早いぜ。まだ一仕事あるからな。俺という作家による神話の大再編集で退場するのはそっからだぜ」

 

 訃堂の髪を掴んで杳馬はどこかへ消えた。

 

 

 

月の神殿

 

 戦いが終わって響達は響の誕生日パーティーではしゃぐ中、沙織はパルティータと星矢を連れてアルテミスと面会していた。

 

アルテミス「アテナよ、地上の戦いは私も見ておったぞ」

 

沙織「アルテミスお姉さま、聞きたい事があります。響さんに神の力が宿った件についてですが…」

 

アルテミス「皆まで言う必要はない。神の力が宿ったのは、その立花響なる者の魂に施された原罪、バラルの呪詛が解かれてしまったのが原因だ」

 

パルティータ「やはり…!」

 

星矢「じゃあ、何で響に施されたバラルの呪詛が解き放たれたんだよ!」

 

アルテミス「それは、魔を祓う鏡によるもの」

 

沙織「魔を祓う鏡、もしや……!」

 

星矢「神獣鏡!」

 

沙織「それに、その光には未来さんも巻き込まれています!」

 

アルテミス「その通り。2人はバラルの呪詛が解き放たれた事で神の力を宿せるようになり、さらにはシンフォギアとやらにも適合するようになった」

 

沙織「では、響さんと未来さんが異様な適合係数を叩きだせたのも…」

 

 沙織の問いにアルテミスは頷いた。

 

星矢「なーんだ。バラルの呪詛が解き放たれたらシンフォギアの適合率が上がるなんて、大きなメリットじゃねえか」

 

パルティータ「違うわ、星矢。むしろ、途方もないリスクを伴ってしまうの」

 

星矢「リスク?」

 

アルテミス「オウルの言う通り。バラルの呪詛は人間を素体に復活するある災いを封じ込めるためのもの。今回の戦いでもその災いが杳馬なる男の手で不完全ながらも小日向未来を依代として復活したのだ」

 

星矢「人間を…素体に?」

 

沙織「あの未来さんの異変がそれだったとは…!」

 

アルテミス「幸い、不完全な復活であったが故に行動を起こそうともせず、アダムを倒すために残った力を全て未来に託し、断片の状態に戻った。だが、カギが揃ってしまうと今度は完全復活するであろう」

 

星矢「やっぱり、母さんの言う通り途方もねえリスクのようだ…!」

 

アルテミス「アテナよ、今後も2人や杳馬なる男の動向を注視するのだ。杳馬はまだ生きている」

 

星矢「勝った気がしないと思ったたら、やっぱりか…!」

 

沙織「わかりました、お姉さま。では、これで…」

 

 アルテミスとの話を終えた沙織達は帰ったのであった。本部の方でも、響と未来の秘密をエルフナインが突き止めたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はアダムとの決着を描きました。
響の黄金のシンフォギアは原作通りですが、未来の白銀のシンフォギアは響が黄金なら、未来もそれに近いものがいいだろうと思って白銀に輝くシンフォギアに変化するのを描きました。ちなみに、未来が纏った白銀のシンフォギアのデザインはXVで出た神獣鏡のファウストローブを白銀にしたようなデザインだと脳内補正してください。
今小説のAXZ編は母親と子をテーマにしていますが、パルティータとサンジェルマンは確かな愛で繋がっていたためにこじれても分かり合えた一方で、『奴』とアダムは愛で繋がっておらず、分かり合えないまま親である『奴』に消されるという展開にしました。
未来に力を貸した『奴』はXV本編でも未来の耳を舐めたりしていたため、今小説でもエロを自重しない方針でいきます。
そして、杳馬に叩きのめされた風鳴のクソジジイこと訃堂がこれからどうなるのかは想像はつくはずです。
これでAXZ編は終わって次は奇跡紡ぐ黒い医者編になり、ステファンの話でちょろっと出てきた黒いコートの男が本格的に登場します。

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