セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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12話 目覚める海皇

神殿

 

 洞窟の崩落で二手に分かれてしまった紫龍達はそれぞれ洞窟を抜けると、神殿に来た。

 

調「ここは…?」

 

切歌「遺跡みたいデス…!」

 

クリシュナ「ここはこの島の神殿だ。俺も鱗衣を手に入れた時や祭りの時にご神体を運ぶ時は洞窟を通って訪れたんだ」

 

調「こんな遺跡が…。古そうだけど、すごく頑丈な感じ」

 

切歌「ここなら派手にやっても崩れる心配はなさそうデス。漁師さんとは、あたし達が来る前に会ったデスか?」

 

クリス「ああ。聞いた話では、もともと聖遺物はここに納められていたらしい…」

 

調「もしかしたら、この近くにカルマノイズも…」

 

クリシュナ「そうだろうな」

 

切歌「でも、その前にまたお出迎えみたいデス!」

 

 ノイズが現れたのであった。

 

クリス「ノイズ!いい所まで来たんだ、水差してんじゃねえ!」

 

クリシュナ「邪魔をするなら、片付けるだけだ!」

 

 クリス達はノイズを片付けた。

 

クリス「さっさと奥に行くぞ。親玉はもう目と鼻の先だろ」

 

調「いつ頃作られたんだろう…?」

 

クリシュナ「わからん。だが、進む際は注意しておけ。罠があちこちにあるぞ」

 

切歌「確かにありそうデス。例えば、この辺の足元なんかに…」

 

 切歌が罠がありそうと言った床を踏んだ途端、床が沈んだ。

 

切歌「あれ、なんか足元が沈んだデスよ?」

 

クリシュナ「いかん!その場から離れろ!」

 

 クリシュナの警告も虚しく、切歌は落とし穴に落ちようとしていた。

 

切歌「デエエエエス!?落とし穴あぁぁっ!?」

 

クリス「危ない!」

 

 すぐにクリスは切歌を突き飛ばし、代わりに落とし穴に落ちた…はずだった。

 

調「クリス先輩!?そんな…、切ちゃんの代わりに落ち…!」

 

 しかし、クリスは装者一同の中でも一際胸が大きかったため、皮肉にも胸が引っかかって落ちなかったのであった。

 

クリス「…落ちなかったな。助かったは助かったんだが…」

 

調「そんな…胸が引っかかって助かるだなんて…!」

 

クリシュナ「ふむ、こういった光景を見たのは初めてだ」

 

切歌「さ、さすがクリス先輩デス…!」

 

クリス「なにが流石なんだよ!?いいからさっさと引き上げろ!」

 

 一同はクリスを引き上げた。

 

切歌「大丈夫デスか?庇ってくれてありがとうデス!凄いデス!」

 

調「切ちゃんを助けてくれて、ありがとうございます。凄かった…」

 

 礼を言う2人だが、その視線はクリスの胸に向いていた。

 

クリス「顔じゃなくてあたしの胸を見ながら礼言ってんじゃねーっ!」

 

クリシュナ「ここから先は俺の後についてくるんだ。この道は俺も神殿へ行く際によく使ってるからな」

 

 クリス達がヘマをして罠にかかったりしないようにクリシュナが先頭になって先へ進む事となり、矢が飛んだり、天井が落ちたりする罠はクリシュナが潰してくれたため、クリス達は安心して進む事ができた。

 

切歌「そしてようやく広い場所に出たデスね…」

 

 そこにはノイズがいた。

 

調「ノイズ!」

 

クリス「わざわざ集まってお出迎えかよ!上等じゃねーか!」

 

切歌「あたし達の敵じゃないのデス!」

 

クリシュナ「奥にカルマノイズっぽい影があるぞ!」

 

クリス「はっ、都合がいいっての!ここでまとめてぶっ倒してやらぁ!」

 

調「切ちゃん、私達も」

 

切歌「やってやるデス!」

 

 クリス達はノイズの群れと交戦した。

 

クリス「邪魔する奴は吹っ飛べ!」

 

 クリスは水鉄砲でノイズを一掃した。

 

クリシュナ「とああああっ!!」

 

 クリシュナは途方もなく速い槍捌きでノイズを蹴散らし、切歌と調もノイズを蹴散らしながら進み、カルマノイズと対峙した。

 

切歌「やっぱり、他にもいたのデス!」

 

調「目の前のカルマノイズはイカ型だね」

 

クリシュナ「それはどうでもいい。奴等が異変の元凶であれば、倒すのみ!」

 

クリス「さっさとぶっ倒すぞ、お前ら!」

 

 クリス達は総攻撃を仕掛けた。クリスが遠距離射撃、切歌と調が連携でカルマノイズにダメージを与え、締めはクリシュナが決める事となった。

 

クリシュナ「カルマノイズよ、島の住人を脅かす邪悪はこのクリシュナがゴールデンランスで貫く!!」

 

 クリシュナのゴールデンランスの連続突きにはカルマノイズも全く対応できず、そのままダメージが猛スピードで蓄積して消滅したのであった。

 

クリス「クリシュナがいてくれたから助かったぞ…」

 

切歌「前ほどではないデスけど…、相変わらず恐ろしい強さデスね…」

 

調「クリシュナがいなかったら、もっと苦戦してた…」

 

クリシュナ「どうやら、このノイズは聖遺物の欠片を持っていたようだな」

 

 カルマノイズを倒した後、クリシュナは聖遺物の欠片を拾った。

 

クリス「聖遺物の欠片、回収だな!」

 

切歌「一応はアタリだったんデスね」

 

調「うん。これで後2つ」

 

クリス「それなら少し休んで」

 

???『誰だ!?私の眠りを妨げる者は!』

 

 突如、声が聞こえた。それと同時に地響きが起こったのであった。

 

クリス「ど、どうなってんだよ!!うわあああっ!」

 

 床が抜けて一同は落っこちたのであった。

 

 

 

 一方、紫龍達の方は…。

 

響「すっごい広い…。はぇ~、こんなの見た事ない…!」

 

紫龍「(妙だな…、この神殿はどこか海底神殿に似ている…。一体、なぜだ…?)」

 

マリア「遺跡…それもかなり古い時代のもののようね」

 

氷河「恐らく、この遺跡がクリシュナの言っていた神殿なのだろう」

 

翼「しかし、こんな場所にこれだけの規模の遺跡があるとは」

 

氷河「これだけ広ければ、カルマノイズと戦うのにも都合がいい」

 

マリア「ところで、あなた達は驚いた様子じゃないようだけど…」

 

紫龍「…この神殿は元の世界でのポセイドンとの戦いで俺達が乗り込んだ海底神殿に似てるんだ」

 

マリア「ポセイドン…?」

 

翼「ギリシャ神話に登場するオリンポス十二神、海皇ポセイドンか…」

 

響「ポセイドンって、すっごい神様なんですか?」

 

翼「ああ。ポセイドンはギリシャ神話のオリンポス十二神の1人でもある神だ」

 

響「そんなに凄い神様なんですか…!」

 

マリア「何でも、大津波や地震を自在に起こせる神様らしいのよ。実在してるかは」

 

紫龍「いや、ポセイドンは実在している。アテナの化身である沙織さんがいるんだ。だから、同じオリンポス十二神のポセイドンがいてもおかしくない」

 

氷河「2年前の世界規模の洪水もポセイドンが引き起こしたものだ」

 

響「ええっ!?世界規模の洪水の原因!?」

 

翼「この神殿にポセイドンはいるのか?」

 

紫龍「わからん。だが、クリシュナの話では鱗衣があった以上、いてもおかしくはない」

 

マリア「できればいない方がいいわね…」

 

 紫龍達は進んでいった。

 

翼「億を調べるぞ。この遺跡でカタをつける」

 

響「遺跡の奥でクリスちゃん達とも合流できますかね」

 

マリア「別のルートを進んでいるんじゃないかしら。だって静かだもの」

 

響「なるほど。確かにクリスちゃん達なら、もっとどっかんどっかんやってますよね!」

 

翼「ノイズが遺跡の手入れをするとは思えない…。にしてはよく保たれた遺跡だ。例えば、このレリーフなど…」

 

 翼がレリーフを触ると、レリーフは沈み込んだ。

 

翼「ん、何かレリーフが沈み込んだような…」

 

紫龍「翼、罠が作動したからよけろ!」

 

 壁からトゲが飛び出し、響達の方へは矢が飛んできた。翼は装者の中では胸が小さいほうであったためにかすりそうなぐらいで済み、響とマリアに飛んできた矢は当たる寸前で紫龍と氷河がキャッチしたのであった。

 

翼「危なった。間一髪という所だな…!」

 

マリア「私達も紫龍と氷河が受け止めてくれなかったら、胸に直撃してたわ…」

 

紫龍「どうやら、対侵入者用の罠が仕掛けられている。慎重に進むぞ」

 

 紫龍達は進んでいったが、今度は響が宝箱の罠にかかり、鎖で逆さ吊りになった。

 

翼「またか!今度は鎖で逆さ吊りに…」

 

紫龍「今、鎖を絶つぞ」

 

 手刀で紫龍は鎖を絶ち、響を助け出した。

 

響「あたたた…」

 

マリア「全く…あれほど注意しなさいと言ってたのに」

 

響「だって、宝箱ですよ!?開けないわけにはいかないじゃないですか!」

 

氷河「だからって、これで5個目だろ!ゲームじゃないんだから、少しは学習しろ!」

 

響「それは…次こそは!って思うじゃないですか…」

 

マリア「はぁ…」

 

翼「注意力散漫だぞ。常に戦場にあるように神経を尖らせていれば」

 

 今度は翼が罠にかかり、壁が回転して向こう側に行ってしまった。

 

響「壁が回転して翼さんが向こう側に!?」

 

紫龍「注意した奴があっさり引っかかってどうするんだ!」

 

 呆れながらも紫龍は拳で壁を破壊した。

 

マリア「大丈夫?」

 

翼「す、すまない。私とした事が不覚を…」

 

響「翼さんだって罠にかかってるじゃないですか~。不注意に壁に触るから。って、あれ…?」

 

 また響は罠にかかってしまい、今度は大岩が転がってきた。あまりにも罠にかかりすぎたため、装者一同はギアを纏って罠を粉砕したのであった。

 

響「つ、疲れた…。でもだんだんあの歌に近づいてますね」

 

翼「最初からこうして、ギアの力を活用すべきだったな…」

 

マリア「これだけ見事に罠に引っかかると、罠を作った古代の職人も喜んでそうね…」

 

氷河「だが、目的地が近い事に変わりはない」

 

 そしてセイレーンの歌が聞こえ、ノイズ達が出てきた。

 

紫龍「奴等が多いとなると、本拠地だろうな」

 

氷河「紫龍が倒したカルマノイズと同じ奴もいるぞ!」

 

マリア「だったら、ここで倒すまでよ!」

 

 紫龍達はノイズの群れに向かっていった。今回は紫龍と氷河は雑魚ノイズを一掃し、装者達とカルマノイズの戦いに加わらなかった。

 

氷河「今度は俺達はカルマノイズと戦わないのか?」

 

紫龍「俺達がカルマノイズを倒し続けると装者が成長しなくなる。その成長を促すためにも、手出ししない方がいい時もある」

 

 そして、カルマノイズを倒したのであった。

 

翼「流石はカルマノイズといった所か…。かなり危うかったな」

 

響「2人共すごいですよ!いいなー、やっぱり私もその水着ギア着てみたいなー」

 

マリア「こんな時に緊張感がない…。でも、確かに今回ばかりはこのギアの性能に助けられたわね」

 

 紫龍は聖遺物の欠片に気付いた。

 

紫龍「翼、お前の足元の欠片は」

 

翼「聖遺物の欠片…!これの回収も必要だったな、残りは二つか」

 

響「その聖遺物の欠片、クリスちゃん達も回収してるかも!一度、出口の方に戻って合流できるルートを探しましょう」

 

翼「それがいいだろうな。まだ罠が残っているかも知れない。注意して」

 

???『誰だ!?私の眠りを妨げる者は!』

 

 突然声が聞こえ、それと同時に揺れ始めた。

 

響「遺跡全体が揺れてるみたいですよ!」

 

氷河「(何だ?この覚えのある小宇宙は…!?)」

 

紫龍「(まさか…!!)」

 

 床が落ち、響達は落下した。装者達は慌てたが、紫龍と氷河はこの強大で覚えのある小宇宙の持ち主が何者であるかわかったのであった。

 

 

 

 落下した先にはクリスと調、切歌、クリシュナもいた。

 

クリシュナ「お前達も落ちてきたか」

 

紫龍「ああ、落ちてきた」

 

マリア「みんな大きな怪我がないのが不幸中の幸いね。みんな、立てる?」

 

響「な、なん、とか…!」

 

翼「私は大丈夫だ…!雪音達もここに…」

 

クリス「お前らも上から落っこちてきたのは?おい、起きろ!」

 

 起きた後、それぞれの状況を話した。

 

クリシュナ「なるほど、そちらも欠片を回収したのか」

 

マリア「しかし、驚いたわ。クリス達の方でも『誰だ!?私の眠りを妨げる者は!』が聞こえてたなんて…」

 

調「もしかして、眠っている神様がセイレーンの歌のせいで眠れなくなってしまったんじゃ…」

 

切歌「そそそ、そうだとしたら怒っているに違いないデス!」

 

 深刻そうな表情の紫龍と氷河に翼は嫌な予感を抱いていた。

 

翼「(紫龍と氷河が深刻な表情をしている。何か恐ろしい事でも起ころうとしているのか…?)」

 

クリス「このままここにいても埒があかねえ!さっさとノイズをぶっ飛ばして進むぞ!」

 

 紫龍達は現れるノイズを倒しながら進んでいった。途中、大量のノイズが出てくる場所があったが、そこは紫龍と氷河とクリシュナが引き受けて装者達はさらに進むとカルマノイズを見かけた。

 

マリア「あれは…何なの!?クジラ型よりさらに大きい…」

 

翼「奴が最後の欠片の持ち主で間違いないようだな」

 

クリス「とんでもねえデカブツだな。面白れぇ」

 

調「人間に近い形…」

 

切歌「名前をつけるなら…おじさん型デス!」

 

マリア「せめて海神…そうね、ポセイドン型とでもしましょうか」

 

切歌「おおお、いいネーミングデス!」

 

マリア「さぁ、行くわよ!」

 

 響達はカルマノイズに挑んだが、そのパワーは強大で苦戦を強いられた。

 

響「強い…!」

 

マリア「あいにくと…もうあなた達の歌は聴き飽きてるのよ!」

 

翼「マリア、これ以上長引かせるわけにはいかない。一気にカタをつけるぞ!」

 

マリア「そうね。それじゃ…行きましょうか!」

 

翼「その前に…景気付けを頼めるか、マリア」

 

マリア「景気付け…?」

 

クリス「そうだな、ここいらでドカン!と盛り上げてくれれば、あたし達の戦意も高揚するってもんだ」

 

切歌「マリアの歌、聴きたいのデス!」

 

調「私も」

 

響「バーンと派手なのお願いします!」

 

マリア「…いいわ、任せなさい!」

 

 みんなからのリクエストもあり、マリアは唄う事にした。

 

マリア「(ふふ、なんだかんだ言っても結構楽しめたわね。この島での生活を終わらせるのはちょっと寂しいけど…)夏の大冒険は一旦、ここでおしまいにしましょう!私の歌でフィナーレを飾ってあげる!」

 

 マリアは新曲を唄った。その歌はノイズの群れの相手をしている紫龍達にも聞こえていた。

 

クリシュナ「歌か。俺はアイドルはほとんど知らんが、いいものだな」

 

氷河「俺達の戦意も高揚する!」

 

紫龍「行くぞ!」

 

 マリアの歌に元気づけられ、紫龍達の勢いもさらに増したのであった。響達は一気に押していた。

 

切歌「デエエエエス!」

 

調「はああっ!」

 

 切歌と調の連携でカルマノイズの体勢を崩した。

 

響「はあああっ!」

 

クリス「吹き飛べ!」

 

翼「喰らえ!」

 

 次は響とクリスと翼の強烈な連続攻撃でカルマノイズは再生が追いつかなくなっていた。

 

翼「締めはマリアだ!」

 

マリア「任せなさい!」

 

 マリアはNOBLETEARを放ち、カルマノイズを倒したのであった。

 

調「終わったね」

 

切歌「欠片も全部集まって一件落着デスよ!」

 

 そう言ってると、紫龍達も来た。

 

氷河「もう終わっていたのか」

 

クリシュナ「最期は俺達の出番はなかったな」

 

紫龍「これでカルマノイズは全滅し、アラートは治まっただろう」

 

翼「これでこの世界の異変は全て解決だろう。戻って」

 

???『誰だ!?私の眠りを妨げる者は!』

 

 再び聞こえた声に一同は驚いた。

 

響「またあの声ですよ!」

 

紫龍「この小宇宙は…間違いなくポセイドン!!」

 

響「ポセイドン!?あの神様のポセイドンなんですか!?」

 

翼「紫龍、間違いないのか!?」

 

紫龍「間違えるものか!この強大な小宇宙は間違いなくポセイドンのものだ!」

 

氷河「眠りを妨げられて怒っているみたいだぞ!」

 

調「やっとカルマノイズを全部倒したのに…!」

 

切歌「か、神様が相手なのデスか!?」

 

マリア「一難去ってまた一難とはいうけど、カルマノイズの次の相手は本物の神様だなんて、嫌なものよ…!」

 

 一同はカルマノイズと戦った場所の更に奥、鱗衣が並んでいる場所に来て、臨戦態勢に入っていた。

 

クリス「なぁ、ポセイドンってそんなにやばい奴なのか?」

 

氷河「やばいも何も、相手は神なのだぞ!俺達の世界ではアテナや星矢達と共に何とか封印できただけだ!」

 

紫龍「まさか、ここがポセイドンの眠る場所だったとは…!」

 

ポセイドン『私の眠りを妨げた者はお前達か?』

 

響「はい、私達がやりました!」

 

 響があっさり認めた事に一同はずっこけた。

 

響「ポセイドンさん、カルマノイズが発したセイレーンの歌で眠れなかった上、私達がカルマノイズをやっつける騒動で起こしてしまって申し訳ありませんでした!」

 

 今度は謝った事にずっこけたのであった。

 

ポセイドン『(この小娘…、妙だな…)』

 

翼「何を言っているんだ!?立花!」

 

クリス「このバカ、やばい神相手にいきなり謝ってんじゃねえよ!さらに怒りでもしたら」

 

ポセイドン『……私の眠りを妨げていたのはノイズか。そこの小娘、眠りを妨げる奴を倒してくれたのと、すぐに謝ったそのバカ正直さに免じて許すとしよう』

 

 ポセイドンがあっさり許した事に一同は衝撃を受けた。

 

クリシュナ「あっさり許した…?」

 

マリア「まさか、こんな事が起こるなんて…!」

 

調「助かったね、切ちゃん」

 

切歌「…一時は心臓が止まりそうになったのデス…!」

 

ポセイドン『お前のようなバカ正直な人間を見たのは久しぶりだな。小娘よ、名はなんという?』

 

響「響、立花響です!」

 

ポセイドン『立花響か…。その名、覚えておこう。聖遺物を纏いし小娘達よ、私の眠りを妨げるノイズを倒してくれて感謝する。そのお礼として、私がお前達を地上に送るとしよう』

 

マリア「地上へ送るって」

 

 ポセイドンは強大な小宇宙で響達を地上に転送したのであった。

 

ポセイドン『これでお前達とゆっくり話ができるな。まさか、私が目覚める前に海闘士となる男が来ていたとはな』

 

クリシュナ「ポセイドン様、あなたが所有していたものとは知らず、鱗衣を持ち出して」

 

ポセイドン『そこから先は言わずともよい。私利私欲のために使ってなければ私は何も言わん。クリュサオルよ、その鱗衣はこれからもお前の高潔な正義のために使うがいい』

 

クリシュナ「はっ!」

 

ポセイドン『しかし…、まさか神話の時代に全滅したはずの聖闘士が私の前に現れるとはな』

 

紫龍「この世界の聖闘士は神話の時代に全滅した!?」

 

氷河「どういう事だ!?」

 

ポセイドン『その口ぶり、お前達はこの世界の人間ではないな?』

 

氷河「俺達は並行世界から来たアテナの聖闘士だ」

 

紫龍「完全聖遺物、ギャラルホルンによってこの世界と繋がり、俺達はこの世界の異変を治めるためにやってきた」

 

ポセイドン『この世界の異変を治めるために来たのか。どうりで全滅したはずの聖闘士が現れたわけだ』

 

クリシュナ「ポセイドン様、この世界は神話の時代に聖闘士が全滅したのは本当なのでしょうか?」

 

ポセイドン『本当だ。私はアテナと地上を巡って幾度となく争い、遂にはアテナを倒し、アテナの聖闘士をも全滅させた。だが、アテナを倒しても今度はハーデスやアレス、エリスを始めとする神々が我こそはと地上を支配しようと攻め込んで来た。だが、私はそんな神々を打ち倒していき、遂には地上を我が物にする事に成功した』

 

紫龍「(驚いた…。まさか、アテナが敗北して聖闘士が全滅し、ポセイドンが地上を支配した世界があったとは…!)」

 

 この世界が聖闘士が全滅した世界であった事に紫龍は驚いていたのであった。

 

ポセイドン『だが、神々を打ち倒して私が疲弊した時に世界を喰らい尽くす怪物が現れたのだ。疲弊した私はその怪物を倒すために残った力を使い果たしてしまい、この島で長きに渡る眠りについた。それ以来、他の神々が地上を支配しようと攻めてきた時以外はずっと眠っていたのだ』

 

氷河「そうだったのか…」

 

紫龍「ポセイドンは今でも聖闘士への敵対心はあるのか?」

 

ポセイドン『もうこの世界ではアテナは私によって倒され、聖闘士も全滅した際にそんな気は失せた。今更聖闘士が並行世界から来た所で、憎いなどと思わん。邪魔などをしなければ何もせん』

 

紫龍「変な事を聞いて済まない」

 

クリシュナ「それではポセイドン様、我々は地上へ帰り」

 

ポセイドン『待て。お前達に重要な事を話したい』

 

氷河「重要な事?」

 

ポセイドン『これはお前達にとっても重大な話だ。心して聞け!』

 

 ポセイドンの話に紫龍達は真剣な表情になった。

 

ポセイドン『あの立花響という小娘を見た時から疑問に思っていたのだが、あの小娘の魂は穢れがないのだ』

 

紫龍「穢れがない!?」

 

クリシュナ「どういう事なのですか?」

 

ポセイドン『普通、人間はカストディアンによるバラルの呪詛でどんなに心が清らかでも魂は多少は穢れがある。だが、あの小娘の魂には穢れが全くない。心が清らかな人間なら何人も見てきたが、カストディアンが人間に呪詛をかけて以来、穢れなき魂を持った人間を見たのは初めてだ』

 

紫龍「それがなぜ重大な話になる?」

 

ポセイドン『立花響は神にとって最高の器となるからだ。元の世界に帰った後はくれぐれも他の神にあの小娘の秘密を知られてはならんぞ。そうなったら、大変な事になるのだからな。そして、世界を喰らい尽くす怪物にも注意が必要だ。それでは私は眠りにつく。くれぐれも世界を喰らい尽くす怪物に気を付けるのだぞ』

 

紫龍「ポセイドン、なぜ響は最高の神の器になる!?それに世界を喰らい尽くす怪物とはなんだ!?答えてくれ!」

 

 そのままポセイドンは眠りについたのであった。

 

氷河「響が…最高の神の器…」

 

クリシュナ「紫龍、恐ろしい事をポセイドン様から聞いたな…」

 

紫龍「ああ。俺達もそろそろ地上へ出よう」

 

クリシュナ「紫龍、氷河、お前達とのこの島の探索は面白かったぞ。また来たくなったらいつでも来い。俺や漁師たちは大歓迎だ」

 

紫龍「来たくなったらな」

 

 ポセイドンから重要な話を聞いた紫龍達は地上へ行き、紫龍と氷河は響達と一緒に元の世界へ帰ったのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 聖遺物の欠片の解析や異変収拾の報告が終わった後、紫龍はポセイドンから聞いた事を沙織や星矢達に話した。

 

沙織「何ですって!?響さんが最高の神の器というのは本当ですか!?」

 

紫龍「間違いない。向こうのポセイドンはそんな事を言っていた」

 

星矢「でも、バラルの呪詛による魂の穢れがない事が最高の神の器の条件になるっていうのが理解できんな…」

 

瞬「僕もそこは疑問に思うよ。フィーネとの戦いが終わった後に僕も兄さんと一緒にシャカから響と未来は最も神に近い女になるばかりか、神そのものになるかも知れないって教えられたんだ」

 

星矢「おいおい、ますますとんでもない方向へ行ってないか?」

 

氷河「話を区切るが、ポセイドンは世界を喰らい尽くす怪物に気を付けろって警告した。その化け物にも注意が必要だろう」

 

美衣「並行世界を巡った事で私達は恐ろしい事実を知ってしまいましたね…」

 

沙織「響さんが最高の神の器という事、そして世界を喰らい尽くす怪物…。苦難が私達を待ち受けているのかも知れません」

 

星矢「でも、その苦難は俺達が打ち砕くまでだ!小宇宙を燃やして!」

 

 恐ろしい苦難がいずれやってくる事が明らかになっても星矢達の闘志は衰えなかった。




これで今回の話は終わりです。
今回は神殿探索とそれに伴うカルマノイズとの戦い、そしてポセイドンの登場を描きました。
並行世界で様々な可能性があるのなら、ポセイドンがアテナに勝利して地上の支配者となった世界もあっていいだろうと思っていました。…もっとも、眠りっぱなしで支配者らしくないですが…。
ポセイドンは原作でもカノンの言葉に耳を傾けたりするなど、神としては割と話が通じる方だと判断したので、響が謝った事で戦闘が回避されるという流れにしました。
これでヴァルキリーズ・サマー編は終わりで、次は翳り裂く閃光編となります。

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