セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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122話 白いライオン

???

 

 花畑の中で白いライオンの子が顔を出して眺めていた。

 

子ライオン「くぅん…!」

 

 くしゃみをした後、母ライオンに顔を舐めてもらい、一緒にサバンナを走った。幸せな日々が続くはずであった…。ところが…それは銃声1発で崩されてしまった。

 

 

 

動物園

 

 それは、子ライオンが見た夢であった。元気なく夜空を眺める子ライオンに飼育員はお湯を持ってきたが、子ライオンは飲まなかった。

 

飼育員「ルナルナ……」

 

 元気がない白い子ライオン、ルナルナを飼育員は心配していた。

 

 

 

 そして翌日、マリア達F.I.S組の装者は動物園に来ていた。

 

セレナ「ここが動物園なんだ。来るのは初めて……!」

 

切歌「セレナは初めてデスね」

 

調「動物園には色んな動物たちがいるんだよ」

 

マリア「ゾウにシマウマ、キリンにライオンといった、子供達に人気のある動物ばかりよ」

 

セレナ「今までは映像でしか見た事がないから、こんなに間近で見るの、初めて!」

 

切歌「この動物園の目玉は白いライオンの子供、ルナルナなのデス!」

 

セレナ「白いライオン!?見てみたい!」

 

切歌「レッツゴーなのデス!」

 

 セレナと調と共に切歌はルナルナのいる場所へ向かった。

 

マリア「ちょっと、急ぎ過ぎて逸れちゃダメよ!」

 

 慌ててマリアも追いかけた。ちょうどブラックジャックとピノコとも合流した切歌達は看板を見て、愕然とした。

 

切歌「ルナルナの体調が悪いから、お休みしてるのデスか…」

 

調「この前もそうだった…」

 

セレナ「どういったライオンさんなのか楽しみでしたけど、体調が悪いのなら仕方ないですね…」

 

 ルナルナがお休みであるためにがっかりして他のお客さんが帰った際に飼育員の姿が飛び込んだ。

 

ピノコ「ねえ、ルナルナ病気なの?」

 

飼育員「ごめんね、お嬢ちゃん」

 

ピノコ「だったら、うちのちぇんちぇになおちてもらえばいいのよしゃ!」

 

飼育員「先生?君のお父さんは獣医さんなのかい?」

 

ピノコ「お父さんじゃないのよしゃ!ブラックジャックちぇんちぇを知らないのよしゃ!?」

 

飼育員「ブラック…ブラック…?」

 

ブラックジャック「ピノコ、行くぞ」

 

 ちょうど飼育員は名前が思いつき、ブラックジャックの前に来た。

 

飼育員「あなたが、あのブラックジャック先生!」

 

ブラックジャック「そうですが、あなたは?」

 

飼育員「失礼しました。私はここでルナルナの飼育をしている者です。あの子を診てやってくれませんか?」

 

調「ブラックジャック!」

 

ブラックジャック「私の専門は人間でね、ライオンは専門外だ」

 

ピノコ「ちょんな!猫だって犬だって助けたのじゃないの!」

 

飼育員「ま、待ってください!先生の事は存じ上げております。あの子を助けるため、全国の医者という医者を調べ上げました!当然、先生の事も」

 

ブラックジャック「だったら知ってるでしょう。法外な治療費を請求する事を。あなたが、動物園が支払えますか?」

 

 それに飼育員は答えられなかった。

 

ブラックジャック「では、失礼します」

 

ピノコ「あ、ちぇんちぇ、待ってよ!」

 

 慌ててピノコはブラックジャックの後を追った。

 

切歌「ブラックジャックは相変わらず請求額が高すぎるのデス!」

 

セレナ「飼育員さん、ブラックジャックさんにルナルナの手術をさせるために私達もお手伝いします」

 

飼育員「お嬢ちゃん達…」

 

調「そのためにも、ブラックジャックの弱みをもっと握らないと…!」

 

マリア「それは私に任せて」

 

 そう言ってると、通信が入った。

 

マリア「風鳴司令から招集がかかったわ」

 

セレナ「それじゃあ飼育員さん、私達は用事ができたので帰りますけど、一緒にルナルナの手術をしてもらうように頼みましょう!」

 

 マリア達は招集で本部へ向かった。そして夕方…。

 

園長「高い金を出したというのに、とんだ欠陥品を買わされたもんだ!」

 

飼育員「園長、あの子は日本に来てから病気になったんです」

 

園長「どうだかな。全く、このままじゃ…」

 

飼育員「その事で…。あの、ブラックジャック先生に治療をお願いしようかと…」

 

園長「ブ、ブラックジャック!?あのとんでもない治療費をふっかける、モグリの医者か!?」

 

飼育員「天才外科医ともいわれるあの方の」

 

園長「バカをいえ!これ以上の出費はできん!諦めるんだな」

 

 それでも、飼育員は諦める事はできなかった。

 

 

 

ブラックジャックの家

 

 翌日、洗濯物を取り込むピノコに構ってほしい飼い犬、ラルゴは不満げにしていた。なお、このラルゴはある騒動の後で飼い犬として飼われる事となったのであった。

 

ラルゴ「アンアン!」

 

ピノコ「何よ、ちょっと何!?うわああっ!」

 

 誰かが来た事を知らせるラルゴはピノコの不手際で共にシーツに包まってしまい、転げ落ちていった。その先に飼育員とセレナ達がいた。

 

ピノコ「あ、ルナルナの人にセレナ達…」

 

 ちょうど雨が降ったため、飼育員は傘をさした。それから、ピノコは家にあがった。

 

ピノコ「ちぇんちぇ、ルナルナの人が来たのよしゃ!」

 

ブラックジャック「ルナルナの人?」

 

 ブラックジャックは玄関に来た。

 

ブラックジャック「帰って下さい。この前、断ったはずだ」

 

飼育員「やっとこちらを。お願いです、このままだとルナルナは…」

 

ブラックジャック「あなたのところの動物がどうなったとしても、それは私の知った事じゃない」

 

 めまいがした飼育員は倒れてしまった。

 

切歌「冷たすぎるのデス、ブラックジャック!飼育員さんは本気でルナルナを治してほしいと思っているのデス!」

 

ブラックジャック「あのな、私は」

 

調「その診療所を建ててからのブラックジャックの最初の患者は人間じゃなくて、シャチだって事を突き止めた!」

 

ブラックジャック「なぜ、その事を!?」

 

 流石のブラックジャックもその事実を突き付けられてはポーカーフェイスを貫けなかった。

 

切歌「S.O.N.Gを舐めてもらっては困るのデス!その覆らない事実がある以上、人間専門という言い逃れはできないデスよ!」

 

セレナ「飼育員さんの願いを聞いてください!」

 

 まずい事を突き付けられたブラックジャックは頭を抱えたのであった。そして、飼育員が目を覚ますと、そこはブラックジャックの家の中であった。

 

セレナ「よかった…!」

 

飼育員「先生…」

 

調「まだ無理しちゃダメ」

 

ブラックジャック「過労による、一過性の脳貧血です」

 

飼育員「私の事はいいんです。それよりも、ルナルナを…あの子を助けてください!」

 

ブラックジャック「……三千万。治療費は、三千万円いただきます」

 

飼育員「さ、三千万円…?」

 

切歌「またその金額を!もっと安く」

 

飼育員「待ってください!」

 

 部屋を出るブラックジャックに頼もうとした飼育員だが、ベッドから転げ落ちた。

 

飼育員「待ってください!園長に掛け合って、いえ、ダメな場合は私が何としてでもお支払いいたします!」

 

調「飼育員さんが払うといってるのに、それでもルナルナを診てくれないの!?」

 

ブラックジャック「…今夜はもうお休みください。仕方ない、明日は動物園にご同行させていただきます」

 

ピノコ「やった~!」

 

切歌「最初からそう言えばよかったのデス!お陰で司令の説教は免れたデスね」

 

 色々弱みを握られたブラックジャックであった。

 

 

 

動物園

 

 そして翌日、ブラックジャック達は動物園に来た。

 

飼育員「ルナルナは本当に可哀想な奴なんです。親も仲間もなく、白い珍しいライオンとしてあちこちで売り買いされていました。ここへ来た時、とても怯えてましたが…なぜか私にだけは懐いてくれた。それから、だんだんとあいつの事が自分の子供のように思えてきた。しかし、ここの生活が長くなると食欲もなく、睡眠もあまりとらず、日増しに弱って行くばかりで…」

 

 あっという間にルナルナのいる場所へ来た。

 

飼育員「こちらに」

 

ピノコ「わあっ、ルナルナなのだ!」

 

ブラックジャック「静かに」

 

 ところが、爆発がして壁が吹っ飛ばされた。

 

ブラックジャック「何だ!?」

 

 ちょうどその時、動物園に来ていたセレナ達にも見えていた。

 

切歌「何なのデスか!?」

 

セレナ「急ぎましょう!」

 

 煙が晴れると、一目で密猟者とわかる男がルナルナを捕まえていた。

 

飼育員「ルナルナ!」

 

ピノコ「いきなり壁を吹っ飛ばしてなんなのよしゃ!」

 

???「決まってるだろう?ルナルナを売り飛ばしに来たのさ!」

 

ブラックジャック「お前はまさか…ハムエッグ!!」

 

 顔を見た途端、ブラックジャックはすぐにハムエッグとわかったのであった。

 

ハムエッグ「お前はブラックジャックじゃねえか。裏の世界で生きているから、俺の素性がわかったようだな」

 

 ルナルナはハムエッグを見た途端、かなり怯えた。

 

飼育員「あのルナルナの怯え様…。まさか、ルナルナの親を殺したのは…!」

 

ハムエッグ「ああ、俺がやったのさ!そして、こいつは再び高い金でどっかへ売り飛ばしてやるぜ、あばよ!」

 

飼育員「待て、待つんだ!!」

 

 ハムエッグは逃げる際、足止めといわんばかりにアルカノイズを出した。

 

ブラックジャック「アルカノイズだと!?」

 

ピノコ「怖いのよしゃ…!」

 

 アルカノイズが迫ってきたが、突如として丸鋸や鎌、剣が飛んできて命中し、アルカノイズが消滅した。

 

飼育員「ノイズが…消えた?」

 

 ちょうどセレナ達が来たのであった。

 

セレナ「ハムエッグが来たんですか!?」

 

ブラックジャック「お前達もハムエッグを知っているだと?」

 

 セレナ達はハムエッグを知っている経緯を教えた。

 

 

 

回想

 

 それは2日前、招集をかけられていた時の事だった。

 

マリア「今回は何があったの?司令」

 

弦十郎「今回はアフリカで活動している密猟者を取り締まる野生動物保護機関から、ハムエッグという密猟者をひっ捕らえてほしいという依頼が来た」

 

響「密猟者を?」

 

翼「それであれば、S.O.N.Gの出番ではないはず…」

 

沙織「それが、ハムエッグは普通の密猟者と違い、アルカノイズを使役しているために取り締まろうとした職員が次々と殺されたため、S.O.N.Gに依頼が来ました。その危険性もイリオモテヤマネを捕まえた罪で投獄された密猟者とは比べ物にならないほどです」

 

未来「アルカノイズを使役する密猟者…!」

 

クリス「かなり厄介な相手だな…!」

 

弦十郎「しかも、奴は白い子ライオン、ルナルナの親を殺し、売り飛ばした張本人でもある。再びルナルナを高値で売り飛ばすために日本に来ているとの情報が入った」

 

切歌「ルナルナの親を殺して売り飛ばしたなんて、ハムエッグは人でなしなのデス!」

 

調「許せない…!」

 

セレナ「絶対にその密猟者を取り押さえてみせます!」

 

弦十郎「よぉし、その意気だ!」

 

マリア「ところで司令、緒川さんにブラックジャック先生がこれまで診てきた患者の履歴を探ってほしいのですが」

 

弦十郎「患者の履歴?構わんが…」

 

 

 

ブラックジャック「なるほど、ハムエッグが日本に来ているから、そいつをひっ捕らえにきたのか」

 

セレナ「はい」

 

調「私が先行して追うわ!」

 

 調は先行してハムエッグを追った。

 

ブラックジャック「切歌とセレナは私の車に乗れ!」

 

セレナ「はい!」

 

切歌「ガッテン承知デス!」

 

飼育員「私も」

 

ブラックジャック「ここから先はとても危険です。あなたはピノコと一緒に動物園に残ってください」

 

セレナ「ルナルナは必ず私達が助けます!」

 

飼育員「わかりました。必ずルナルナを助け出してください!」

 

 切歌とセレナもブラックジャックの車に乗り、ブラックジャックは車を走らせてハムエッグを追った。

 

 

 

高速道路

 

 ハムエッグの車は高速道路に入った。

 

ハムエッグ「よし、高速道路に入った!後は振り切るだけだぜ、クッター!」

 

クッター「この車は改造車だからな。スピードさえ飛ばせば例えシンフォギアでも」

 

 しかし、ローラーによる高速移動で後を追ってくる調の姿を見つけた。

 

クッター「ハムエッグ、女の子が物凄いスピードで追ってくるぞ!」

 

ハムエッグ「何ッ!?」

 

クッター「負けてたまるか!!」

 

 さらに車のスピードを上げたクッターだが、猛スピードでのチェイスの末に調に追いつかれ、調はツインテールの鋸で改造車のタイヤを切り刻んだ。

 

クッター「た、タイヤが!?」

 

ハムエッグ「ぬわああああっ!!」

 

 そのままハンドルがきかなくなり、改造車は壁に激突した。改造車が激突した際に衝撃でルナルナは放り出されたが、ちょうどブラックジャックの車が到着し、出てきたセレナがルナルナをキャッチした。

 

セレナ「この子がルナルナ…。ルナルナ、怪我はない?」

 

ルナルナ「アン…」

 

ハムエッグ「この野郎…!俺達を怒らせて生きて帰れると思うなよ!」

 

 そう言ってハムエッグはアルカノイズを出してきた。アルカノイズとハムエッグにルナルナは怯えたが…。

 

セレナ「安心して、ルナルナ。あのような人達には絶対に渡さないから!」

 

 セレナの優しく、力強い瞳にルナルナは安心感を覚えた。

 

調「ルナルナには指一本触れさせない!」

 

切歌「お前達の悪事もここまでなのデス!」

 

 数々の激戦を潜り抜けた装者達にアルカノイズはもはや相手にならなかった。切歌と調、そしてセレナの連携であっという間にアルカノイズは全滅した。

 

クッター「ア、アルカノイズが…!」

 

切歌「さあ、観念するデスよ!」

 

ハムエッグ「そうはいくか!あの動物園にはまだアルカノイズを待機させている。このスイッチ一つで動物たちが分解されちまうぜ…!」

 

調「動物園の動物を人質にするなんて…!」

 

 ハムエッグの卑劣な行為にセレナ達は憤っていた。

 

ハムエッグ「さあ、ルナルナを渡せ。さもないと動物たちの命は」

 

 ところが、何かが飛んできてスイッチが弾かれた。

 

ハムエッグ「な、何だ!?」

 

 飛んできたのはメスであり、ブラックジャックがメスを投げたのであった。

 

ブラックジャック「このような結果になったのは、俺を忘れてたお前さん達の誤算ですぜ」

 

ハムエッグ「野郎…!」

 

セレナ「さあ、今度こそ観念してもらいますよ!」

 

 

 

動物園

 

 あらかじめハムエッグが待機させたアルカノイズは響達が撃破したのであった。

 

響「私達の方は片付きました、マリアさん!」

 

マリア「こっちも片付いたわよ」

 

未来「でも、あのハムエッグという密猟者が動物園にアルカノイズを待機させたなんて…」

 

クリス「一歩でも対応が間違えば、大惨事になってたな…」

 

マリア「これも、司令の予測のお陰よ」

 

 そこへ、通信が入った。

 

翼「どうやら、セレナ達はルナルナを救出してハムエッグを取り押さえたらしい」

 

響「これにて一件落着ですね!」

 

翼「いや、ここからが本番だろう。ルナルナは病気だそうだからな」

 

未来「そうだった!」

 

 ハムエッグはクッターと共に逮捕され、セレナ達が護衛になってブラックジャックはルナルナの診察を始めた。

 

ブラックジャック「今までのカルテを見せてください」

 

獣医「これでは、いつまで体が持つか…」

 

 ブラックジャックは今までのルナルナのカルテを見た。

 

飼育員「先生、何とか助ける方法を」

 

ブラックジャック「肝硬変とすい臓炎、おまけに心臓も弱っている。外科的処置も考えられるが…。ただ、なぜその病状を発症したのかを調べなければ、再発を繰り返すだけだ」

 

飼育員「先生…」

 

ブラックジャック「うちで預かって診断しましょう」

 

ピノコ「やった~!」

 

セレナ「私達も護衛としてお供します」

 

獣医「待ってください!園長は今、外出していまして…」

 

飼育員「わかりました!」

 

獣医「そんな!せめて、園長に連絡をつけて…」

 

飼育員「大丈夫だ!私が、全責任を持ちます!」

 

ピノコ「やった~!ルナルナといっちょだぁ~!」

 

 そしてその晩…。

 

園長「一体、どういうつもりだ!?客に見せる事のできないライオンに、これ以上金を使う事はできん!」

 

飼育員「そんな…」

 

園長「とにかく、これは君の責任だ!私は一切関係ないからな!」

 

 

 

ブラックジャックの家

 

 再びアルカノイズを使役する密猟者が現れる危険性もあるため、セレナ達が住み込みでルナルナの護衛をする事となった。

 

ピノコ「ちぇんちぇ、ルナルナは何を食べたいと思う?」

 

ブラックジャック「さあな。ライオンだから、肉を食べるんだろうが…」

 

ピノコ「だったら、カレーなんかも」

 

 すると、調達が来た。

 

セレナ「ピノコさん、ネットで調べたんですけど、調味料の大半や玉ねぎとかは動物の体に悪いからダメですよ」

 

調「だから、ルナルナにあげる肉は調味料がかかってないものにしないと」

 

ピノコ「勝手にルナルナのランチを決めないでほちいのよしゃ!」

 

ブラックジャック「診察の邪魔だから、出て行ってくれ」

 

セレナ「邪魔をしてすみません」

 

 そして、昼食の時間になった。

 

ピノコ「どうちてルナルナにカレーとかを食べしゃせないのよしゃ!」

 

セレナ「朝も言いましたけど、調味料や玉ねぎなどは動物の体に悪いんですよ」

 

切歌「だから、調の焼いた肉を食べさせるのデス」

 

ピノコ「むむむっ…!」

 

 ただでさえルナルナは自分よりセレナ達に懐いている上、自分の作った料理より調達が焼いた肉の方を食べる姿にピノコは対抗心を燃やしていた。

 

ラルゴ「ウゥン…」

 

調「ルナルナはあまり食べる事ができないと思うから、ラルゴも一緒に食べていいよ」

 

 ピノコはルナルナにかかりっきりで構ってくれない事に腹を立てていたラルゴではあったが、ルナルナと一緒に調達が焼いた肉を食べていた。そこへ、写楽が来た。

 

写楽「ピノコちゃん、遊ぼう!」

 

 写楽はルナルナを見て、大喜びした。

 

写楽「ルナルナだぁ!すっごい!可愛い!」

 

ピノコ「ランチちゅうなの!邪魔ちないで!」

 

写楽「それだったら、僕の給食の残りがあるよ」

 

セレナ「どっちも調味料があるから、ダメだと思うよ…」

 

 ピノコと写楽のルナルナの取り合いで騒がしくなり、遂にブラックジャックの雷が落ちた。

 

ブラックジャック「いい加減にしろ~~っ!!」

 

 ルナルナはピノコよりもセレナ達に懐いていて、ピノコは不満だった。

 

ピノコ「ちぇんちぇ、何でルナルナはピノコよりセレナ達になちゅいているのよ!」

 

ブラックジャック「何って、セレナ達は命がけでルナルナをハムエッグから助けたのだからな。それで、懐いたんだろう」

 

 その後、ピノコはルナルナに服を着せようとしたが、構ってくれない事にラルゴは怒っていた。

 

ピノコ「今はルナルナの番。我慢ちなちゃい!」

 

ラルゴ「ウゥ…!」

 

ピノコ「文句あるの?上等だ、コラ!一本背負い!」

 

 ピノコとラルゴは喧嘩になった。

 

切歌「ピノコとラルゴは喧嘩したデス…」

 

調「ルナルナは誰と一緒に寝たいの?」

 

 ルナルナはセレナの足元に来た。

 

セレナ「私と寝たいんだね?ルナルナ、一緒に寝るよ」

 

ルナルナ「アン……」

 

調「まるでセレナはルナルナのお母さんみたい」

 

セレナ「ちょっと照れちゃいますね。でも、お母さんより私はお姉さんになりたいな」

 

切歌「きっとなれるデス。それじゃ、おやすみなさいデス」

 

 セレナ達も寝る事となった。ルナルナが眠れておらず、月夜を見ている事にセレナは気付いた。

 

セレナ「ルナルナ、親がいないのは私達も一緒だよ。私達もルナルナと似たような生い立ちだから…」

 

ルナルナ「アン……」

 

セレナ「あなたの病気が治るまで、私達は一緒よ。だからおやすみ、ルナルナ」

 

 セレナの耳元でルナルナは丸まって寝たのであった。

 

 そして翌日…。

 

ピノコ「いない!!」

 

ブラックジャック「どうした?」

 

ピノコ「いない、いないのよ!!」

 

 ルナルナがいないと言ってピノコはラルゴと共に飛び出した。

 

切歌「行っちゃったデス…」

 

調「ルナルナは私達と一緒にいるのに…」

 

 セレナに抱っこされているルナルナの姿を見ながら二人は呟いた。

 

切歌「でも、ルナルナってどうして白いのデスか?」

 

調「白いなら、アルビノじゃないのかな?」

 

セレナ「でも、マムに見せてもらったアルビノライオンとルナルナは特徴が一致しないよ」

 

 セレナはスマホでアルビノライオンの画像を出し、ルナルナと比較した。

 

調「ほんとだ、特徴が一致しない」

 

切歌「何なのデスかね…」

 

セレナ「とりあえず、ブラックジャックさんに任せて、私達はルナルナの護衛と遊び相手になってあげないと」

 

 優しいセレナ達にルナルナは安心していた。そして夕方…、色々と散々な目に遭ってピノコ達は帰ってきた。

 

ピノコ「あっ、ルナルナ!」

 

写楽「よかった!」

 

 ピノコと写楽とラルゴもルナルナの遊び相手になった。

 

ピノコ「でも、ルナルナなかなか良くならないの?」

 

ブラックジャック「内臓の疾患はオペをすれば完治する。問題はその後だ」

 

写楽「でも、ルナルナって本当に真っ白だね」

 

ピノコ「うん、ちろくてとっても可愛い!」

 

 白いルナルナを見て、ピノコと写楽はある事を思いついた。それは、小麦粉でラルゴを白くする事であった。

 

ピノコと写楽「待て~~っ!!」

 

ラルゴ「アン~~ッ!!」

 

 それを見たブラックジャックとセレナ達は外に出た。

 

ブラックジャック「ピノコ、いい加減にしないか」

 

切歌「ラルゴが可哀想デスよ」

 

ピノコ「ラルゴもちろくしたの」

 

写楽「小麦粉を使って試したんだ。白くなったら可愛くなるかなって」

 

ブラックジャック「お前達。ルナルナはな、生まれた時から白かった…」

 

 ところが、ブラックジャックはある事に気付いた。

 

ブラックジャック「(白かった?いや、とんでもない思い違いを…!)」

 

 

 

病院

 

 そして、護衛のセレナ達と一緒にブラックジャックはルナルナを病院へ連れて行く事にした。

 

ブラックジャック「セレナ達もルナルナの白さが気になっていたのか」

 

セレナ「はい。アルビノライオンと特徴が一致しなかったので…」

 

ブラックジャック「(アルビノでないとすると…何なんだ?)」

 

 セレナ達と共にMRIのある部屋へ来て、ルナルナをMRIにかけた。

 

医師A「君には随分と助けられたから、特別だぞ。全く、ライオンの体をMRIで見るなんて…」

 

医師B「画像が出ます」

 

 コンピュータにルナルナの脳が出た。

 

ブラックジャック「右下の画像を拡大してくれ」

 

医師B「はい」

 

 すると、何かが見えた。

 

調「これって…?」

 

ブラックジャック「やはり…」

 

医師A「これは、腫瘍のようなものが…」

 

ブラックジャック「そうだったのか…!」

 

 納得したブラックジャックであった。

 

 

 

動物園

 

 そして、ブラックジャックは動物園へ行った。

 

ブラックジャック「関係ない?」

 

園長「ああ」

 

切歌「とても無責任デス!」

 

調「大人なら、きちんと責任をとらないと!」

 

園長「子供の分際で生意気な口を叩くな!」

 

セレナ「そういう無責任なあなたは子供の私達よりもずっとず~っと子供です!」

 

 子供のセレナ達に『自分達よりも子供』と非難されて園長は大人気なくムキになった。

 

ブラックジャック「あのライオンはどうなってもいいと?」

 

園長「ああ。死にぞこないのライオンに三千万円なんて出せるか!」

 

飼育員「園長!」

 

園長「ふん!とっくに諦めたライオンだ。お前にくれてやる!」

 

ブラックジャック「わかりました。ちゃんと聞きましたぜ、園長」

 

 

 

ブラックジャックの家

 

 そしてブラックジャックは家に戻り、ルナルナの手術の準備をした。

 

ピノコ「ちぇんちぇ、ルナルナは治る?」

 

切歌「メラニン色素を注入するのデスか?」

 

ブラックジャック「白いからって、メラニン色素を注入する必要はない。だが、完全に治るには手術するだけじゃダメなんだ。ルナルナは生まれつきの白いライオンじゃない。脳下垂体にある腫瘍がメラニン細胞の活動を弱めた事が原因で体が白くなっていたんだ」

 

セレナ「やっぱり、アルビノじゃなかったんだ…」

 

ピノコ「じゃあ、病気で体が白いの?」

 

ブラックジャック「そうだ。だが、内臓の疾患はそれとは別だ。白い珍しいライオンとして、見世物としての生活。そのストレスが病気の原因だ。だから腫瘍を除去して、体の色を元に戻すんだ」

 

ピノコ「どうなるの?」

 

調「ルナルナは普通のライオンになるよ」

 

ブラックジャック「そして、生まれ故郷のアフリカに逃がしてやる。永久に人間から離してやる」

 

ピノコ「えっ!?いやだ!!」

 

 ピノコはルナルナを抱えて部屋に閉じこもった。

 

セレナ「ピノコさん!」

 

ピノコ「いくらちぇんちぇとセレナ達でも、ルナルナはわたちゃない!故郷へ帰すのはいやだ!」

 

切歌「ピノコ、あたし達も本当はルナルナと離れ離れになるのは嫌なのデス…」

 

ピノコ「あたちと同じ想いなのに、どうちて!?」

 

調「私達、生い立ちがルナルナに似てるの…」

 

セレナ「生みの親の顔も知らず、実験動物のような日々を過ごしていた…」

 

切歌「あたし達が動物園でルナルナを見た時、ルナルナが施設にいた頃のあたし達の姿と重なったのデス…」

 

調「だから、ルナルナを生まれ故郷に帰して、自由にしてあげたい…」

 

ブラックジャック「(そうか!セレナ達は大人のエゴに振り回された生い立ちがルナルナと似ている。だから、ルナルナもピノコよりセレナ達に懐いたのか…)」

 

 セレナ達の言葉に納得したピノコは出てきて、ルナルナを手術させる事にした。

 

ブラックジャック「これより、ルナルナの脳下垂体の腫瘍除去手術を行う」

 

ピノコ「ルナルナのためなのよさ…」

 

 セレナ達は外で待っていた。

 

セレナ「(神様、どうかルナルナを助けて…!)」

 

 

 

 そしてルナルナの脳下垂体の腫瘍は除去され、内臓の疾患も治療されたのであった。それからしばらくして…。

 

園長「この前はあんな事になってしまって、完全に治ったのであれば、それ相応の報酬をお支払いしましょう」

 

飼育員「どうですか?先生。ルナルナの容態は?」

 

ピノコ「待て~~っ、ルナルナ~!」

 

セレナ「待ってください!」

 

切歌「元気いっぱいなのデス!」

 

 ピノコ達はルナルナと追いかけっこをしていた。

 

園長「お~っ、ははははっ。ル、ルナルナ!?何だって!?」

 

 腫瘍が除去された事で、ルナルナは普通のライオンの子の色になっていた。

 

ルナルナ「アン~!」

 

園長「これはどういう事だ!?」

 

飼育員「ルナルナ…」

 

ブラックジャック「治療したら、体がこんな色になってしまいましてね」

 

園長「そ、そんなバカな!これではどこにでもいる普通のライオンではないか、ブラックジャック!」

 

ブラックジャック「あなたは勝手にしろとおっしゃったじゃないですか」

 

調「それに、ルナルナは病気で体が白くなってただけなの」

 

 調はブラックジャックが作成したルナルナのカルテを園長に突き付けた。

 

園長「お前は今日限りでクビだ!」

 

飼育員「えっ?」

 

園長「約束通りそのライオンは退職金代わりにくれてやる!こんな奴に任せたのが」

 

調「無責任!」

 

切歌「大人気ないデス!」

 

 切歌と調の言葉は園長の心にかなり突き刺さり、怒った園長は帰った。

 

飼育員「ルナルナ、おいで」

 

ルナルナ「アン!」

 

 ルナルナはとびついて園長の顔を舐めた。

 

飼育員「元気になって本当によかったな、ルナルナ」

 

セレナ「ブラックジャックさんの手術以外にも、私達がルナルナを護り、お姉さんのように接し続けていたためです、飼育員さん」

 

 近寄ってきたセレナの顔もルナルナは舐めた。

 

飼育員「ありがとうございました、先生。あの…治療費の事ですが、すみません。とりあえず、これだけ…」

 

 飼育員は治療費としてお金を渡そうとしたが…。

 

ブラックジャック「いや、完全に治すためには誰かがルナルナを故郷のアフリカに連れ戻してやらないと。それに、自然に慣らす必要もある。そうだ、あなたが面倒をみてやってくれませんか?」

 

ピノコ「えっ?」

 

ブラックジャック「いえ、ただとは言わない。経費込みで三千万円、いかがでしょう?」

 

飼育員「ブラックジャック先生…」

 

 ブラックジャックの優しさに飼育員は感謝の気持ちでいっぱいだった。

 

ブラックジャック「決まりですな。じゃあ、頼みましたぜ」

 

飼育員「はい…」

 

 セレナ達がルナルナを見つめていると、ルナルナはセレナ達に飛びついてきた。

 

ピノコ「元気でね、ルナルナ」

 

セレナ「きっと、会いに行くからね」

 

 

 

研究所

 

 そして、セレナは元の世界へ帰った。セレナのスマホをナスターシャが見てると、ルナルナと一緒に写っている写真を見つけた。

 

ナスターシャ「セレナ、この白いライオンは何ですか?」

 

セレナ「ルナルナといって、病気で白くなっていたライオンなんです。ブラックジャック先生という凄腕のお医者さんの手で元の色に戻って故郷のアフリカへ帰っちゃいました」

 

ナスターシャ「白いライオン、ですか…」

 

マリア「あの子達の話では、ルナルナは脳下垂体に腫瘍ができていて、その腫瘍がメラニン細胞の働きを弱めて体が白くなったそうよ」

 

ナスターシャ「アルビノではなく、脳下垂体の腫瘍によって体が白くなる…。生命とは、まだ科学では解明できていない神秘が多くあるのかも知れません」

 

切歌「ルナルナ、元気にやってるデスかね…」

 

調「親代わりの飼育員さんがいるから、大丈夫だよ」

 

セレナ「そうですね。私達が今のようになれたのも、マムの愛情のお陰だから」

 

ナスターシャ「ふふふっ。ルナルナと過ごした日々はセレナ達の思い出になったようですね」

 

 ルナルナと一緒に写っているセレナ達の写真を見て、微笑むナスターシャであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は白いライオンの話で、装者はセレナ達年少組がメインでやりました。
そのままルナルナとのふれあいだけでは刺激がないと判断し、ルナルナの親を殺した密猟者、ハムエッグとの戦闘も入れました。
密猟者をハムエッグにしたのは、ジャングル大帝の主人公の白いライオン、レオの因縁のある相手はハムエッグだったので、今小説でもルナルナの親を殺した犯人をハムエッグにし、シンフォギアの世界観に合わせてアルカノイズを使役する原作よりも危険な密猟者に仕上げました。マヌケぶりも目立ってセレナ達に成敗される役回りでしたが。
ルナルナは今小説ではアニメ版のもともとは普通のライオンだったという設定を採用していますが、アルビノではないかと疑ったり、メラニン色素を注入するのではないかとセレナ達が言ったりするのは原作ネタです。
次の話は奇跡の腕、原作の題名は二つの愛で、装者の方は奏達年長組がメインとなります。

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