S.O.N.G潜水艦
装者達に召集がかかった。
翼「司令、今日はどのような事で招集を?」
弦十郎「うむ。今回はある地域に伝わる火の鳥伝説について調べてほしい」
クリス「火の鳥伝説だって?」
沙織「詳しい情報はわかりませんが、不老不死に関するものだと調査部より報告がありました」
マリア「不老不死……」
切歌「火の鳥伝説が不老不死とどうして関わってるのか気になるデス…」
調「どうしてS.O.N.Gに調査を?」
慎次「あのあたりには錬金術師がうろついているそうです。それで、装者の出番というわけです」
弦十郎「調査には響君と未来君、クリス君に行ってもらおう」
響「任せてください、師匠!」
未来「どのような伝説か、気になるなぁ…」
そこへ、童虎とムウ、パルティータも来た。
童虎「わしらも混ぜてくれんか?」
翼「老師、来ておられたのですか?」
童虎「まあな。不老不死に限りなく近い状態も含め、260年以上を過ごしてきたのじゃから、その火の鳥伝説にも興味が湧いてな」
ムウ「私の師は260年以上生きているので、伝説が本当かどうか確かめたくなりました」
パルティータ「私は、会いたい人がいてね」
弦十郎「いいだろう。この6人に火の鳥伝説の調査を行ってもらう!日時は追って伝える」
ブラックジャックの家
その頃、ブラックジャックの家に国際郵便が届いていた。
ピノコ「ちぇんちぇ、こくちゃい郵便だって」
ブラックジャック「ん?誰だ?」
確かめたが、差出人の名前がなかった。
ブラックジャック「差出人の名前がないな…」
その郵便物に入っていたのはCDであった。
ピノコ「何?」
ブラックジャック「CD-ROMだ」
パソコンに挿入した。
ブラックジャック「音声データか。ウイルスはないようだな」
音声データを再生してみた。
???『ブラックジャック先生、私の身内がひどい病気に苦しんでいます。治してもらえれば、一千万ドル以上にも及ぶお礼を差し上げます』
ピノコ「いっちぇんまんドルって、いくらなのよしゃ?」
???『ブラックジャック先生しか、お願いできる人がおりません。患者は、200歳の老人です。どうか、私達を助けてください』
その言葉はブラックジャックには到底信じられない事であった。
ブラックジャック「バカな!」
ピノコ「どうちたの?ちぇんちぇ」
ブラックジャック「こいつはタチの悪いイタズラだな。200年も生きた人間がいるわけがない」
ピノコ「ちょうなの?」
ブラックジャック「人はどんなに長生きしても、120歳だ」
ピノコ「じゃあ、この患者さんは治しに行かないの?」
ブラックジャック「200歳という患者は存在しない。それに、私には他の患者がいる」
そう言ってブラックジャックは出かけようとした。
手塚医院
ブラックジャックは友人の手塚がいる病院で患者を診ていた。
手塚「老齢による脳軟化症が手術で治った事例はないはずだよ」
ブラックジャック「投薬も効果がないか…」
手塚「浅野先生は僕らの恩師だが、もうご高齢だ。本間先生と同じ世代だし、これはもう…」
その言葉を聞いたブラックジャックは睨み付けた。
手塚「すまない…」
ブラックジャック「いいんだ。あの時、本間先生を治せなかったのは事実だ。どうしても治ってほしかったが、手術はムダだった…。今の技術では無理か…」
『本間先生と同じ世代』という言葉を聞いたブラックジャックある事を思い出した。
ブラックジャック「(そう言えば、パルティータ先生は今の若さのままで大学卒業時の本間先生と一緒に写っていた写真があった。ただのコラージュ写真か?だが、あの写真にはコラージュの痕跡はなかった。もし、本当だとすれば……今の若さを維持している彼女は何者なんだ?)」
パルティータが若い頃の本間と写っていた写真にブラックジャックは前々から思っていたパルティータの素性を知るいい機会になるのではと思った。
ブラックジャックの家
音声データを確認したブラックジャックはその言葉について考えていた。そこへ、パルティータが来た。
パルティータ「行ってあげたらどうかしら?百聞は一見に如かず、と言うからね」
ブラックジャック「何の前触れもなく現れた…」
パルティータ「それに、私達はある調査であなた達と一緒に向かう事になったの。それを伝えに来たわ」
ブラックジャック「聞きたい事がある。お前さんは本間先生の事を」
部屋を出たパルティータを追ってブラックジャックが部屋に入ると、いつの間にか姿を消していた。
ブラックジャック「いきなり現れていきなり消える…。神出鬼没だな…」
飛行機
火の鳥伝説の調査に向かう響達はブラックジャックとピノコと一緒に飛行機に乗った。
響「なるほど、ブラックジャックさんは200歳の人を治しに行くんですね?」
ブラックジャック「初めはイタズラだと思っていたが、パルティータ先生に『百聞は一見に如かず』と言われてな」
童虎「200歳か……」
ムウ「気になりますね。小宇宙によるものなのか、それとも別のものなのか」
ブラックジャック「お前さん達、そんなに興味があるのか?」
童虎「ああ。ある処置を施されてわしは263年も生きておるからな」
ブラックジャック「263年だと!?」
ムウ「私の師も263年生きています」
ブラックジャック「な、何かの冗談じゃないのか…?」
200歳の老人というのに続き、童虎やムウの師、シオンの年齢に驚きを隠せないブラックジャックであった。
未来「ブラックジャックさんからすれば信じられないと思いますけど、パルティータさんに至っては数千年は生きているんです」
ブラックジャック「す、数千年だと!?」
ピノコ「アッチョンブリケ!!」
パルティータが数千年生きている事にブラックジャックは衝撃を受けた。
クリス「ま、あたしらもそれを知った時は驚いたからな」
ブラックジャック「200歳の老人に263年生きた人間が2人…、数千年も生きた人間まで…。とんだ長寿のオンパレードだ…。だが、今の姿のままで若い頃の本間先生と一緒に写った謎がわかりましたよ」
パルティータ「その写真、拾って見たのね。写真から察する通り、私は丈太郎君の事もよく知っているわ」
空港
色々話している間に飛行機を乗り換え、指定の空港に到着した。
響「ここが指定された空港なんですね?」
ブラックジャック「そうだ」
ピノコ「とてつもなく遠い所へ来たのよしゃ…」
未来「車の方は…」
そう言ってると、車が来て、女が降りてきた。
ミリアム「あなたがブラックジャック先生ね。ミリアムです。来てくれて、感謝します」
ピノコ「あたちは、ちぇんちぇの奥たんのピノコ!」
ミリアム「奥さん…?ところで、あなた達は?呼んだ覚えはないのだけど」
クリス「用事でな」
ムウ「私達3人は自分の足で走って行きますので、他の方たちを車に乗せてください」
荒野
響達は車に乗せてもらい、ムウと童虎とパルティータは走って目的地へ向かった。
ミリアム「(嘘…車と並走できる人間がいるなんて……)」
そんな中、ブラックジャックは銃を見つけた。
ブラックジャック「それは?」
ミリアム「ああ、これ?麻酔銃よ」
ブラックジャック「そんなものを何に使うんだ?」
ミリアム「後でわかるわ」
ピノコ「ピクニックに来たみたいだわしゃ」
響「そうだね!」
未来「そうかなぁ…?」
しばらく進むと、揺れが激しくなった。
ピノコ「あわわわわっ!なんか、しゅごいとこなのしゃ!」
クリス「こんなとこがあったなんて……」
ミリアム「昔はもっと遊牧の民がいたんです」
未来「その人達はどうしましたか?」
ミリアム「みんな、街へ」
ブラックジャック「お前さん、私への謝礼は1千万ドルと言ったが、どうやって払うんだ?」
ミリアム「1千万ドルにもあたる謝礼です」
ブラックジャック「宝石でも見つけたか?」
ミリアム「もっと、価値のあるもの」
ブラックジャック「病人が200歳というのは、何かの間違いだろう?」
童虎「ブラックジャック、百聞は一見に如かずと言って居るだろう」
ミリアム「あなた達は理解が早いわね」
並走しながら童虎は話していると、何かが見えた。
ピノコ「あれ、何?」
ミリアム「あれはオボ。遊牧民があっちこっちに作って目印にした道標です」
進んでいると、ゴーストタウンに来て、ミリアムはある建物で車を止めた。
ムウ「人気がありませんね…」
パルティータ「まずは、200歳の老人とご対面よ」
響「200歳の人かぁ……」
中に入ると、変わり果てた姿の老人がベッドで寝ていた。
クリス「おい、爺さんがいるぞ!」
未来「この人が…200歳の老人…」
童虎「とんでもない姿になっておるのう…」
ムウ「まさか、普通の人間で200歳も生きた人がいたとは…」
その老人の姿は263年も生きた童虎や童虎と同い年のシオンを師に持つムウでさえも驚きを隠せなかった。
ミリアム「病人はその年寄りです。私のひいひいひいひいお爺さん。私が子供の頃からこんな姿だったわ。今年で200歳になるの」
ブラックジャック「出生記録はないんだろう?何かの間違いだ」
パルティータ「いえ、本当に今年で200歳になるわ」
クリス「本当なのか?」
パルティータ「ええ。前にも来た事があってね」
前に来た事があると言い、老人の年齢が200歳だと断言したパルティータの姿をミリアムは不思議に思った。
ブラックジャック「コーカサスから西アジアにかけて長寿の人間が多いとは聞いているが、200歳とは初めてだ」
ミリアム「この辺りには」
響「火の鳥伝説があるんですね?」
その言葉にミリアムは驚いた。
ミリアム「なぜ、それを?」
未来「詳しい事はわからないんですが、私達は火の鳥伝説の調査に来ました」
ピノコ「火の鳥って何なの?」
ミリアム「火の鳥は永遠に死なない鳥。その血を飲んだ人間も永遠の命を授かるの」
ブラックジャック「そんなものは迷信だ」
ミリアム「お爺さんが死ぬに死ねないのは、昔火の鳥の生き血を飲んだからなの」
ブラックジャック「バカな!」
ミリアム「じゃあ、何でお爺さんは200年も生きてこられたの?」
ブラックジャック「何か、科学的な理由があるはずだ。火の鳥なんて信じられん」
聖闘士勢と響達は半信半疑であった。
ミリアム「では、証拠を見せるわ」
一同は外に出た。一同の中で体力がない方であるピノコとクリスはきつい坂で息切れしていた。
ピノコ「ま、待って…!」
クリス「あたしらは体力なんてねえぞ…!」
ピノコ「おっぱいオバケの隣を歩くなんて嫌なのしゃ!」
クリス「んだとぉ!?チビが!」
喧嘩するクリスとピノコにミリアムは呆れていた。
ムウ「他の村人たちは?」
ミリアム「ここは不便だと言って、みんな街に移っていったわ」
ブラックジャック「なぜ、お前さんは出て行かないんだ?」
ミリアム「代々譲り受けた土地を離れて?そんなの、できるわけないわ。火の鳥は、この土地を護る人間のものなのよ。お爺さんは若い頃、偶然火の鳥を見つけてナイフで斬りつけたんですって。火の鳥には逃げられたけど、ナイフについた血を舐めて、永遠の命を得たの」
ブラックジャック「だが、病気にはなった」
ミリアム「ええ。年はとるし、病気にもなるわ。でも、苦しむだけで死ぬ事はないの」
未来「(あの人、本当に永遠の命を得たとは思えないのだけど…)」
ミリアムの説明を響達は疑問に思っていて、パルティータは何も驚かず、冷静なままであった。しばらく進むと、ミリアムは足を止めた。
ミリアム「見て、あれよ。あの洞窟が火の鳥の巣よ」
洞窟から綺麗な光を放つ鳥が出てきた。
クリス「あれは…!」
童虎「光る鳥じゃ!」
ブラックジャック「こいつは驚いたな…。あんな光は見た事がない」
ミリアム「ね?先生や他のみんなもそう思うでしょ?」
ムウ「光自体はそう思いますが、実際にあの鳥の血が永遠の命をもたらすのかどうかは別です」
あくまでも慎重なムウであった。
ミリアム「下を見て、洞窟の中は複雑な迷路になっているの。お爺さんしか道は知らないわ。家族のだれかに道を教えるって言っていたのに、病気になって…。お願い、お爺さんの病気を治して。口を利けるようにしてほしいの。近頃は錬金術師とか名乗る連中も来ているそうだから、急がないと」
ブラックジャック「そして、老人から道を聞き出し、麻酔銃で火の鳥を生け捕りにする」
ミリアム「1千万ドル以上にもあたる報酬よ。お爺さんは少し舐めただけで200歳まで生きたわ。ならスプーン1杯飲んだら、コップ1杯飲んだら、永遠の若さすら手に入るんじゃなくて?」
ブラックジャック「さあな」
不老不死に執着しているミリアムにパルティータは不満げだった。
ミリアム「先生はこれまで、大金をとって世界中のお金持ちを治してきたんでしょ?」
響「治してきたのはお金持ちだけではありません!」
未来「普通の人だって多く治したんです!」
ミリアム「そうなの。束の間を生きるために先生に大金を払う人達は、永遠の命にどれだけ払ってくれるのかしら?」
ブラックジャック「火の鳥の血で、商売を始めるのか」
ミリアム「ええ。巨万の富が稼げるわ」
同じ頃、錬金術師達が野宿していた。
錬金術師A「確か、あの洞窟に火の鳥がいるんだったな」
錬金術師B「だけど、シンフォギア装者に加えて黄金聖闘士もいるんだぞ。どうすりゃ…」
錬金術師C「だったら、奴等と戦わずに火の鳥の血を舐めてトンズラしちまった方がいいじゃねえか」
錬金術師A「あ、そうだった!」
錬金術師B「男である事を捨てれば不老不死になれるけど、カリオストロとプレラーティのように男らしさを捨ててまで不老不死になんかなりたくねえ!」
錬金術師C「そうだ!男のままで不老不死になれるはずだ!」
錬金術師達は気配を消して、盗み聞きをする事にした。一方、装者達は先に寝ており、ブラックジャックとパルティータは老人の手術をしていた。
ブラックジャック「これは末期的だ。肉腫があちこちに転移した上、でっかくなってる。よくこんなになっても生きているな。信じられん」
ミリアム「だから言ったでしょ?この老人は死ぬ事もできないの」
ブラックジャック「これだけ転移してりゃ、手術してもすぐ別のができる。ムダだぜ」
ミリアム「いいからお願い、全部とってあげて」
ミリアムに聞こえないよう、ブラックジャックとパルティータは話した。
ブラックジャック「パルティータ先生、民間協力者になってからお前さんの事をグラード財団の医師達から聞いたが、お得意の錬金術医療はどうするんだい?あんたなら末期ガンすら再発させずに完治できるんだろう?」
パルティータ「錬金術を使うのかはその人の意向次第」
錬金術医療の使用はあくまでも患者の意向次第と語るパルティータであった。そして、手術は終わった。それと同時に装者達も起きた。
ブラックジャック「どうにか摘出したが、再発の可能性は高い。このままでは持たんぞ」
ミリアム「大丈夫よ。おじいさんは生き続けるわ。それこそ、火の鳥の血を飲ませればいいのよ」
ブラックジャック「私はこの老人に聞いてみたいね。200年生きる事が、どういう事なのかを」
響「そのお爺さんより長く生きているパルティータさんが言ってましたけど、感覚がおかしくなるほどだそうです」
ブラックジャック「おかしくなる程、か…。さ、もっと水を汲んできてくれないか?」
ミリアムは水を汲みに行った。その後、寝ぼけたピノコは外へ行った。
老人「おぉ、お前さんは?」
ブラックジャック「爺さん、ものが言えるようになったのか?」
老人「お、お陰様でな…」
パルティータ「170年ぶりかしら?」
未来「ひゃ、170年ぶり!?」
途方もない年月を経た再会に響達も衝撃を受けた。
童虎「ほう、これほど昔にこの地に来た事があったのか」
パルティータ「流行り病があったから、遊牧の民を救いにね」
老人「そこのお前さんはわしと違ってあの時から全く変わっておらんな…。その永遠の美しさ、五体満足な体…嫉妬を覚えるほどじゃわい…」
ブラックジャック「街へ行って再検査した方がいい。私としても、あなたを詳しく調べたい」
老人「恩人だから話すが、わしは血を飲んでねえ。あの鳥の血を飲んだというのは嘘じゃ…」
ブラックジャック「何だって?」
ムウ「やはり…」
老人「若い頃に火の鳥を捕まえに行ったのは本当じゃ。今でもあの時の事はよーく覚えておる…。わしは、仲間と苦労して道を調べたんじゃ…。オボの下には途中までの地図を残してある。途中、道が5つに分かれているが、双子岩が目印になる。双子岩の間を通って奥へ進めば、火の鳥の住む洞窟じゃ」
それを聞いたミリアムは麻酔銃を持って洞窟へ向かったが、錬金術師に先を越され、焦って向かっていった。その光景をピノコは見てしまった。錬金術師が盗み聞きしているのをパルティータ達は知っていたが、あえて放置していた。
老人「そこまで行ったが、火の鳥は捕まえられなかった。わしは悔しくて悔しくて、飲んだと嘘をついたのじゃ…。やがて歳をとればとるほど、皆が大事にしてくれるようになった」
ブラックジャック「火の鳥の血の力だと思ったんだろうな…」
老人「だが、嘘がバレたらと思うと怖かった…。この地を追放されないよう、何とか嘘を本当にしたかった…。わしはいつか、火の鳥の血を飲んで死なんようになりたいとそればかり思い詰めて、とにかく生きてきたのじゃ…」
ブラックジャック「それで200歳か」
童虎「わしらも驚きじゃわい」
老人「よぅ生きたもんじゃ…。気力じゃよ。じゃが、子が死に、孫が死に、曾孫や玄孫達はこの地を去っていった。あの子に言っとくれ、もう血はいらんと」
ブラックジャック「ミリアムは火の鳥の血を欲しがっているようだが」
老人「火の鳥に近づいてはならんのだ」
ブラックジャック「私も知りたいところだがね、長寿をもたらす血が、本当にあるのかどうか」
老人「な、ならんのだ…!」
未来「どうしてなんですか?」
クリス「教えてくれ、爺さん!」
そこへ、ピノコが来た。
ピノコ「ちぇんちぇ、あのお姉ちゃん、鉄砲を持って山の方へ行ったわよ」
老人「いかん!あの穴じゃ!毒蛇がおるんじゃ!!」
響「毒蛇!?」
昔の事を思い出し、驚いて話した老人の言葉に響達は衝撃を受けた。
パルティータ「あのバカ娘!欲に目が眩んで先走って!」
ムウ「錬金術師の方も大事な事を聞いていなかったようですね」
未来「ムウさん、錬金術師が盗み聞きをしていたのですか?」
ムウ「ええ。しかし、先を越された事を気にする事はありません。彼等は死にに行ったようなものですから」
童虎「じゃが、ミリアムはあの老人の傍にいるべき身内。最悪の場合は彼女だけでも助けなければならん!」
ブラックジャック「ピノコと響達は爺さんを頼む!毒蛇がいる場所へは子供は来るな!」
響「わかりました!」
洞窟
老人の事をピノコと響達に頼み、ブラックジャック達大人組は洞窟へ向かった。
ブラックジャック「パルティータ先生は最初から知っていたのか?」
パルティータ「ええ。偶然、洞窟を出ようとした若い頃のあの人が洞窟にいる毒蛇とは別の毒蛇に噛まれた際、助けてから色々と聞いたの」
童虎「パルティータがこの事をミリアムに教えなかったのも、毒蛇がおったからか」
ムウ「ただでさえ不老不死に目が眩んでいるのですから、ずっと知らなかった方がよかったのかも知れません」
錬金術師達に先を越された事もあり、ミリアムは焦って火の鳥の済む洞窟へ向かった。
ミリアム「急がなきゃ!余所者に火の鳥を横取りさせない!」
???「うわあああっ!!」
突然、悲鳴が聞こえてきた。
童虎「悲鳴だ!」
パルティータ「きっと、毒蛇にやられたのよ!」
ブラックジャック「バカな奴等め…!」
不老不死に目が眩み、先走って毒蛇の餌食になった錬金術師達をブラックジャックは愚かな奴と蔑んだのであった。一方、ミリアムは火の鳥を発見した。
ミリアム「(1発で仕留めなければ、永久に逃げていってしまう!)」
ミリアムは麻酔銃1発で火の鳥に麻酔をかけた。
ミリアム「やった、やったわ!」
銃声はブラックジャック達にも聞こえた。
ムウ「もうすぐ火の鳥が住む場所です!」
???「きゃあああっ!!」
火の鳥へ向かおうとしたミリアムであったが、毒蛇にやられて死体と化した錬金術師達と毒蛇を目の当たりにした。そこへ、ブラックジャック達が来た。
ミリアム「先生、助けて!」
ところが、毒蛇のうちの1匹がミリアムの足に噛みついた。
ミリアム「あああああっ!!」
そのままミリアムは落ちていった。
ブラックジャック「おい、しっかりしろ!」
ブラックジャック達は蛇の光に気付いた。
ブラックジャック「蛇も光っている?あの鳥の光と同じだ」
パルティータ「蛇は私達に任せて、ブラックジャック君はあのバカ娘を!」
毒蛇はパルティータが風の錬金術で遠くへ吹き飛ばし、ムウと童虎も小宇宙で同じような事をし、近づいてきた蛇の1匹はムウに握り潰されて絶命した。
ムウ「この光は発光バクテリアのようですね」
ブラックジャック「何だと!?」
ミリアムは飢えた獣のように火の鳥に近づいていた。
ミリアム「血…血…火の鳥の血さえ飲めば…」
パルティータ「よしなさい!蛇もその鳥も発光バクテリアが体についているだけなのよ!その血を飲んでも助からないわ!」
ミリアム「そんなはず…ないわ…!」
パルティータ「不老不死なんて、求めないで!」
ミリアムは鳥を触った時点で意識が朦朧とした。そして、ブラックジャック達が傍に来た。
ブラックジャック「おい!しっかりしろ、ミリアム」
ミリアムは火の鳥に触った手が光っている事に驚いた。
ミリアム「ど、どうして…?」
そして、ミリアムは意識を失った。
ブラックジャック「おい、ミリアム!」
意識を失ったミリアムにパルティータは注射を打った。
パルティータ「ここにいる毒蛇の毒に効く解毒薬を打っておいたわ」
童虎「パルティータはやる事が早いのう!」
ムウ「急いで病院に搬送しましょう!」
パルティータ「私はちょっと用事でS.O.N.Gの本部へ届けるものがあるから、それが済んだらすぐに戻るわ」
荒野
パルティータはS.O.N.G本部にあるものを届けてからすぐに戻り、響達は車に乗ってミリアムの看病を行い、ムウと童虎は車と並走した。
響「ミリアムさん、しっかりしてください!」
ブラックジャック「パルティータ先生が応急処置をしてくれた。街まで行けば、血清がある!」
そのままブラックジャックは車を街へ走らせた。
病院
そして翌日、パルティータが用意した解毒薬と病院にある血清で一命をとりとめたミリアムはある書類を受け取った。その場にはエルフナインもいたのであった。
ミリアム「これは?」
ブラックジャック「あの鳥の血液の成分表だよ。お前さんの手についていたんだ。約束通り、報酬として受け取っていったよ」
エルフナイン「僕も解析しましたが、これといって特別な成分はありませんでした。普通の鳥の血と変わりません」
ミリアム「嘘、嘘よ!きっと検査ではわからない特別な力があるんだわ!」
エルフナイン「S.O.N.Gは聖遺物を扱っているので、それについての線も考えて解析しましたが、やはり特別な力はありませんでした」
ミリアム「そんな……!」
成分表と異端技術の技術者からの発言というダブルパンチにミリアムは言葉を失った。
パルティータ「あれは火の鳥じゃなくて、発光バクテリアで光っているただの鳥よ」
ミリアム「あなた、何者なの!?お爺さんと話している時に170年ぶりと言ってたけど、本当に170年ぶりなの!?」
パルティータ「私はね…不老不死になり、何千年も人間なのよ」
その言葉にミリアムは衝撃を受け、ブラックジャックも写真の謎が解けたのであった。
ブラックジャック「(不老不死の人間!?だから、今の若い姿のままで本間先生と一緒に写っている写真があったのか…!)」
ミリアム「真の不老不死……ですって…!?」
パルティータ「女性限定だけど、錬金術を極め、完全な肉体へ作り変える事ができれば不老不死になれるわ。だけど、あくまでも老化が止まって歳で死なないだけ。心臓や頭を潰されれば死ぬの」
ミリアム「あなたは不老不死なのに、何で不老不死を否定するのよ!」
ムウ「あなたは何もわかっていないようですね」
童虎「安易な気持ちで不老不死になったって、後で死にたいと後悔するだけじゃぞ。実際、特殊な処置を施されて263年も生きたわしも愛弟子に会うまでは生きた心地がしなかったからな」
パルティータ「不老不死は時間との戦いを放棄した者が味わう生き地獄も同然なのよ」
長生きした童虎やパルティータに不老不死を否定された衝撃は大きかった。
ミリアム「じゃあ、なんで火の鳥伝説があるのよ!きっと、本物の火の鳥がどこかにいるのよ!」
ブラックジャック「伝説を信じるのは勝手だが、それで大切な命を失ったら、あの変わり果てた姿となった錬金術師達のように愚かとは思わないか?それに、彼等の言う永遠の命も地獄だぞ」
不老不死は地獄だとブラックジャックにも突き付けられ、ミリアムは泣いたのであった。
飛行機
その後、一同は帰路に就いた。
クリス「これで任務は終わりか」
響「結局、火の鳥はいなかったね…」
未来「でも、いなくてよかったと思うよ。いたら、不老不死になりたい人達同士で争いにもなりかねないし…」
ムウ「その通りになってもおかしくはないですね」
童虎「やっぱり、命は限りがあるからこそ、必死で生きようとするのじゃろうな」
パルティータ「そうね」
人間本来の寿命を超越して長く生きた2人は人間が必死で生きようとする意志は限りある命が源ではないかと思ったのであった。
ピノコ「ねえ、ちぇんちぇは火の鳥の血、ほちくないの?」
ブラックジャック「私の仕事は人間を死ななくする事じゃない、人間を治す事だ」
荒野
同じ頃、一輝は荒野を進んでいた。そこへ、光る鳥が来た。
一輝「お前はフェニックスの聖衣に似てるな。本物の不死鳥、フェニックスか?」
火の鳥『私は火の鳥。フェニックスというのも間違いではありませんが。あなたの聖衣は恐らく、私がモデルなのかも知れません』
一輝「そうか。聖闘士の修業をしていた時から火の鳥の伝説を聞いている。強力な自己修復機能があるフェニックスの聖衣にもお前の血が使われているのではないのか?」
火の鳥『さあ、どうでしょうね?』
一輝「だが、本物の不死鳥に会えたのはラッキーだったのかも知れん。じゃあな」
火の鳥『一輝、私を模した聖衣を纏いし聖闘士…。これからもお気を付けて』
一輝はそのまま去り、火の鳥もどこかへ飛び立った。
これで今回の話は終わりです。
今回は火の鳥伝説の話をしました。
今回は装者の出番は少なく、ブラックジャック達大人がメインとなっています。
原作やアニメでは永遠の命はないとブラックジャックは否定していますが、今小説ではシンフォギアや聖闘士星矢と同居したために錬金術を極めた事で不老不死となり、数千年も生きたパルティータと特殊な秘術で263年も生きた童虎の存在で本当の不老不死の人間や特殊な秘術で200歳の老人よりもさらに長生きした人間をブラックジャックは目の当たりにしたのを描きました。
TVアニメ版では患者は助かるケースが多かったのですが、今小説ではアニメ版の展開にしつつ、命の儚さを伝える事も両立させるためにミリアムはアニメ版同様に助かる一方で、原作のミリアムの代役として錬金術師達が毒蛇にやられて死んでしまいましたが、錬金術師達が毒蛇にやられたのは不老不死に目が眩み、すっかり油断していたためだと思ってください。
次の話はシャチのトリトンの話の続編的な話になります。