セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

128 / 198
128話 人魚と2人の黒い医者 後編

病院

 

 翼達が半魚人に遭遇していた頃、月子は三ヶ月市の病院にて精密検査が行われる事となり、響達とグラード財団からパルティータが来たのであった。

 

響「月子ちゃん、大丈夫かな…?」

 

未来「もし、三ヶ月病だったら…」

 

パルティータ「あの子、水の中でも息ができる特異体質らしいから、エルフナインに細胞がどうなっているのかを見てもらうわ」

 

 既に採取した月子の細胞を持ってパルティータはテレポートでS.O.N.G本部へ向かった。検査室の前でブラックジャックとキリコは待っていた。

 

ブラックジャック「キリコ、あのコウモリ女は何者なんだ?」

 

キリコ「奴は恐らく、パヴァリア光明結社によって作り出された改造人間だろう」

 

ブラックジャック「改造人間!?」

 

キリコ「お前はまだ何も知らないだろうが、パヴァリア光明結社では神話や伝説上の怪物の再現を目指して改造人間が作られたんだ。あのコウモリ女もその実験体だろう。だが、改造人間は錬金術思想に合わないという理由で扱いはよくなかったと聞いている」

 

ブラックジャック「神話や伝説上の怪物の再現だと!?」

 

キリコ「もっとも、俺も軍医の頃に所属していた米軍から資料などの情報を得ただけで、本物の改造人間を見たのは今回が初めてだ」

 

ブラックジャック「キリコも見たのは初めてか…。お前が助けた際にお前の調合した毒はパナケイア流体を破壊すると言ったな。そのパナケイア流体は改造人間と何の関係がある?」

 

キリコ「パナケイア流体はパヴァリア光明結社の改造人間の血中にある物質で、拒絶反応を抑え、人と人以外の部分を繋ぐ効果がある上、あの超人的な力を発揮できる。だが、力を使い過ぎればそれが淀んで体を蝕んでしまうという弱点もある。そうなった場合は、140万人に1人の稀血『Rhソイル式』を使い、淀んだ血を入れ替えなければならない」

 

ブラックジャック「なるほど。あのコウモリ女に撃ち込んだ毒は血中のパナケイア流体を破壊し、拒絶反応を起こさせて超人的な力を奪うためのものだったのか」

 

キリコ「そうだ」

 

ブラックジャック「なぜ、あのコウモリ女は月子を狙った?自分の事を失敗作と言っていたが…」

 

キリコ「失敗作…。コウモリ女が月子を妬んでいる様子は遠くでもわかっている。恐らく、月子は」

 

 そこへ、フォックスが慌てて入ってきた。

 

フォックス「ブラックジャック先生!精密検査が終わりましたので、直ちに来てください!」

 

 その頃、響達は待っていたが、市役所の人が来た。

 

未来「市役所の人だ!」

 

種田「私は種田です。月子さんが三ヶ月病らしい病気が進行して歩けなくなったと聞いてきました!」

 

クリス「まだ三ヶ月病だと判明したわけじゃねーけどな」

 

響「種田さんは月子さんについて知ってるんですか?」

 

種田「ええ。この辺りで月子さんを知らない人はいませんから。いつの間にか海岸辺りに住み着いて、水の中でも息ができる上に魚を獲るのがうまくて、人魚の生まれ変わりだという人もいて…。その月子さんがどうも足をやられているらしいと漁師の人から聞いたものですから…」

 

クリス「それで、三ヶ月病だと何で断定できねえんだ?」

 

種田「それが…地元の医師の診断では三ヶ月病にしては奇妙な症状があるそうで、精密検査が必要だと言われました。それに、上司からも『戸籍も住民票もない上、素性がわからないのでは、認定カードは発行できない。我々も身元を探るから、君も行方不明者のリストから探ってみたまえ』と言われて…」

 

クリス「くそっ…役所の頭は固いのかよ…」

 

未来「でも、種田さんの上司の人も身元を探っているよ」

 

 そこへ、パルティータが来た。

 

響「パルティータさん!」

 

パルティータ「月子って子の細胞を調べた結果、どんでもない事が判明したの!私は医者だから、急いで通して!」

 

 一方、フォックスに呼ばれたブラックジャックはキリコと共に検査結果を見た。

 

ブラックジャック「そんなバカな…!」

 

フォックス「私も見た時は目を疑いました…。月子さんの肺に魚類のエラのようなものができあがっていたのです…」

 

キリコ「エラだと…?」

 

 検査の結果、月子の肺にエラができていた事に医師達は目を疑っていた。

 

ブラックジャック「(まさか、そのエラが月子の特異体質だったのか…!)」

 

医師「それに、月子さんには重金属の反応は一切ありませんでした。彼女は三ヶ月病にかかっていません」

 

ブラックジャック「そうだとしたら、なぜ三ヶ月病と同じような症状が出た?」

 

フォックス「それは…」

 

 そこへ、パルティータが来た。

 

パルティータ「ブラックジャック君、さっき月子ちゃんに大変な事実が判明したの!」

 

 そのデータを入れたUSBメモリを端末に差し込み、そのデータを表示した。

 

ブラックジャック「これは…!?」

 

パルティータ「あの子の細胞のDNAよ。人間のDNAだけでなく、別の生物のDNAも入っているの」

 

キリコ「バカな!そんな事があり得るのか!?」

 

フォックス「それこそ、バイオテクノロジーでなければ実現し得ない事です。それに、この生物のDNAは地球上のどの生物にもないDNAです。普通、そんな事は……」

 

パルティータ「もしそれが、神話や伝説上の怪物のものだとしたら?その怪物がミイラ化しているなり、生きているなりして存在していたら?」

 

 パルティータの推測に誰も言い返せる人はいなかった。

 

医師「…それは可能性としては否定できませんね…」

 

フォックス「バイオテクノロジーの方では、それが可能な人物に心当たりがあります」

 

ブラックジャック「それはもしや…」

 

フォックス「そう、その方は…」

 

 そう言ってると、看護師が慌てて来た。

 

看護師「大変です!精密検査を終えて病室に移している最中に何者かが月子さんを拉致し、窓から逃げ出しました!」

 

ブラックジャック「何だと!?」

 

フォックス「なぜ、誰も気付かなかったんだ!?」

 

看護師「それが、突然現れたような感じだったので、目の前に来るまでわからなかったんです!」

 

パルティータ「してやられたわね!」

 

 パルティータはブラックジャックとキリコを連れて響達のところに来た。

 

響「どうしたんですか?」

 

ブラックジャック「怪しい男に月子が拉致された!」

 

未来「そんな!」

 

クリス「そんな奴、見かけなかったぞ!」

 

パルティータ「気配を消す手段を用いて誰にも存在を気付かれないようにしていたのよ!そうなると、その怪しい奴は錬金術師…!」

 

 そんな時、種田のスマホに電話が入った。

 

種田「種田です」

 

種田の上司『種田君、大変な事がわかった!行方不明者のリストに月子と思わしき少女が発見された!』

 

種田「何ですって!?」

 

種田の上司『名前は白神ヨーコ。三ヶ月市出身の天才生物工学者、白神剛三郎とその妻、白神エリカの娘だ。今から15年前に一家共々蒸発したとされている。君が見せた月子の写真がなければ、見落としていた!』

 

種田「もしも、月子さんが白神ヨーコさんと同一人物であったとしたら…」

 

種田の上司『恐らく、両親も生きている可能性がある』

 

種田「わかりました」

 

 種田は電話を切った。

 

ブラックジャック「月子、今助けるからな!」

 

キリコ「落ち着け!月子を拉致した奴がどこにいるのかわからん以上、闇雲に動いても見つからんぞ!」

 

響「でも…」

 

 そこへ、翼達が来た。

 

マリア「病院の方でも何かあったようね」

 

 

 

三ヶ月湾

 

 一同は情報交換を行った。

 

ブラックジャック「月子の身元が判明した!?」

 

種田「はい。月子さんの本当の名前は白神ヨーコで、父親はかつては世界有数の生物工学者といわれた白神剛三郎、母親は剛三郎氏の助手も兼ねていた白神エリカです」

 

ブラックジャック「15年前に一家そろって蒸発とは…」

 

キリコ「これも、色々と裏がありそうだな。だが、月子が自分の本当の名前を知らないとは…」

 

種田「彼女には知的障害、もしくは精神障害があるのではないでしょうか?」

 

ブラックジャック「考えられるな。三ヶ月病ではないと診断されたから、危険な薬品の副作用によるものか、はたまた強烈なトラウマによるものなのか…」

 

キリコ「どちらにせよ、鍵を握っているのは白神剛三郎と白神エリカで間違いないようだ」

 

 装者達の方は…。

 

響「翼さん達は何かあったんですか?」

 

翼「三ヶ月湾から見える孤島の調査をしていたが、そこでおぞましい半魚人と遭遇してな、しかも奴等は理性はない代わりに再生するから立花達と合流して今後の作戦を練り直す事にした」

 

切歌「目がギョロギョロしてて、おまけにたくさんいて、とっても怖かったのデス…」

 

未来「私達の見た魚人とは違うみたい…」

 

マリア「あなた達も魚人を見たの?」

 

クリス「ああ。言葉は発しなかったが、戦い方とか、行動は結構知的な感じがした」

 

調「私達が遭遇した魚人とはずいぶん様子が違う…」

 

 そこへ、パルティータが来た。

 

パルティータ「その半魚人は私に任せてくれないかしら?」

 

マリア「確かに、あんな気色悪い半魚人はあなたに任せた方がいいわね」

 

 魚人という言葉を聞いたブラックジャックとキリコは反応した。

 

ブラックジャック「お前さん達、確か三ヶ月湾から見える孤島には半魚人がいたそうだな」

 

マリア「そうだけど…」

 

キリコ「もしかすると、月子が連れ去られた場所はその孤島かも知れんぞ」

 

響「だったら、その孤島へ行きましょう!」

 

クリス「早くしねえと、あのバカが何されるかわかんねえからな!」

 

 一同は再び孤島へ向かう事にした。

 

キリコ「ブラックジャック、念のためこれを持っていけ」

 

ブラックジャック「それは…」

 

 キリコは何かをブラックジャックに渡した。

 

 

 

孤島

 

 漁師が船を出してくれたため、一同は孤島へ向かう事ができた。

 

翼「この町の漁師はとてもいい人達だな」

 

響「だって、月子ちゃんを娘のようにかわいがっているので、月子ちゃんを助けるために力を貸してくれてるんですよ!」

 

ブラックジャック「(待ってろ、月子…!)」

 

 一方、孤島にある洞窟では月子は怪しい装置に繋がれていた。

 

月子「ナギは考えやした。ジロどんが冷たいのは、この尾びれのせいやと。そこで竜宮の王に頼もうとした。だが、その矢先、海の魔人と魔女に囚われやした」

 

 そして、魚人は装置を操作していた。

 

魚人A「あなた、ようやくヨーコが心を奪われるほどの男が見つかったわね」

 

魚人B「ああ。何らかの原因で記憶さえ失くしたヨーコを何年も放置し、待っていた甲斐があったというものだ」

 

魚人A「ブラックジャックはもう用済み。奴を始末し、ダイレクトフィードバックシステムを使ってヨーコに夢を見させ続ければ、私達の夢は叶う!」

 

魚人B「そうだ。幾多の失敗作の上に誕生した成功作たるヨーコこそが、私達の夢なのだから!」

 

月子「先生…、月子をお嫁さんにしてくれて嬉しい!ずっと、ずっと月子と一緒だなんて…!」

 

 ダイレクトフィードバックシステムにより、月子はブラックジャックと結ばれている夢を見続けさせられていたのであった。一方、響達の前に半魚人の群れが現れた。

 

クリス「こいつらが先輩の言ってた半魚人か…!気色悪い奴だ…!」

 

パルティータ「この半魚人は私に任せて、みんなは月子ちゃんを!」

 

 響達を先に行かせた。

 

パルティータ「こいつらは恐らく、パヴァリア光明結社の改造人間の失敗作のようね。それも、注入された幻獣の細胞に適合できずに怪物と化した人間。この怪物の正体を知ってしまったら、あの子達は絶対に攻撃できない…。もうこうなってしまっては、殺す事だけが彼等の救い」

 

 実はパルティータは半魚人の正体を知ったら響達は攻撃できなくなると考え、代わりに引き受けたのであった。そして、冷徹に半魚人の首を斬り飛ばして歪められた命を絶っていったのであった。

 

 一同は怪しい場所は洞窟ぐらいしかなかったため、洞窟に入った。

 

キリコ「怪しい場所はここしかないな」

 

ブラックジャック「月子、どこだ!?月子!」

 

 奥へ進むと、怪しい装置に繋がれた月子と魚人2体がいた。

 

未来「あの魚人…!」

 

翼「まさか、2体いたとは…!」

 

魚人A「ふふふ、予想よりも早く来たわね」

 

ブラックジャック「月子を返してもらおうか!」

 

魚人B「そうはいかん!ヨーコは今にも完全な人魚に生まれ変わろうとしているのだぞ。もうすぐ私達の夢が叶うところなのに、用済みの貴様に邪魔などさせん!」

 

響「月子ちゃんが…完全な人魚に…?」

 

切歌「驚きデス!」

 

キリコ「そうか、月子はパヴァリア光明結社の改造人間の成功作だったのか。そして貴様ら2人は、白神剛三郎と白神エリカだな」

 

エリカ「ご名答よ、ドクターキリコ」

 

剛三郎「裏世界の住人とだけあって、パヴァリア光明結社の事も知っているようだな」

 

キリコ「月子は体にエラができていた上、コウモリ女に妬まれていたのでな、改造人間ではないかと思っていたところだ」

 

剛三郎「もう気付いていたとは。冥途の土産に教えてやろう。私は人魚を現代に蘇らせるのが夢だった。そのためにバイオテクノロジーを学び、世界有数の技術を身に付けたものの、いくら人間と魚の細胞を組み合わせても人魚にはならなかった。悩む中、私は錬金術の存在を知って錬金術を学び、パヴァリア光明結社に入った」

 

クリス「どうせ金や名誉のためだろ!」

 

エリカ「とんでもないわ。私達を金や権力の亡者どもと一緒にしないで。そんなのには興味なんてないの」

 

剛三郎「パヴァリア光明結社に入った後、私は主に神話や伝説の怪物の再現を行うための改造を担当していた。しかし、ここでも稀血を度々入れ替えなければならないとんだ欠陥だらけの失敗作しか出来上がらず、人魚を作り上げる事ができなかった。だが、ふとした偶然からある代物を手に入れたのだ!」

 

響「それって…?」

 

エリカ「それこそ、人魚のミイラなのよ!」

 

剛三郎「人魚のミイラを手に入れた事で、私は錬金術とバイオテクノロジーを組み合わせれば人魚を作れるのではないかと思い、主に発展途上国の戦災孤児を大量に拉致し、人魚の細胞を注入、錬金術で適合を試みた。やはり、ここでも大量の失敗作が出来上がったのだがな」

 

マリア「失敗作ですって!?」

 

調「まさか、あの半魚人は…」

 

エリカ「そう、人魚の細胞を注入された孤児達は死ぬか、あのような化け物になったの。のちに私達も細胞を注入し、今までの失敗作共よりも完成度の高い改造人間になったのだけどね」

 

切歌「あの半魚人が元人間で、あたし達と似た境遇の孤児デスと……!?」

 

未来「あなた達はそれでも人間なの!?」

 

剛三郎「私達は人魚を作り上げるためなら、人の心だって捨ててきたのだ!今更どうなろうが知った事か」

 

 人魚を現代に蘇らせるためだけに平気で人体改造や子供の拉致を行ってきた白神夫妻に一同は大激怒した。

 

ブラックジャック「お前さん達、自分達の目的のためだけに多くの命を犠牲にしたというのか!?そして、自分の娘の月子にさえも非人道的な事をしたというのか!!」

 

キリコ「命の価値がわかっていないのか!?」

 

エリカ「あら、死神の化身までもがこんな態度をとるなんて意外よ」

 

キリコ「俺のやる安楽死はどうにもならない患者を苦痛から解放するためだ。貴様らと一緒にするな!」

 

剛三郎「さて、話は終わりだ。貴様らを始末してやる!」

 

響「人の心を持たない化け物は私達が叩き潰す!」

 

 最早、人間の心を捨て去った白神夫妻に響達の怒りが爆発し、響と未来とクリスは剛三郎に、残りはエリカに向かっていった。一方、ブラックジャックとキリコは月子の方へ向かった。

 

ブラックジャック「月子、助けに来たぞ!」

 

月子「先生。月子、たくさん魚を獲ってきたよ」

 

 ダイレクトフィードバックシステムによってブラックジャックと結ばれている夢を見させられている月子にブラックジャックの声は届かなかった。

 

ブラックジャック「聞こえていないのか?」

 

剛三郎「無駄だ。もうヨーコには貴様の声は聞こえん。人魚の細胞を活性化させるための貴様と結ばれる夢を見続けた後、ヨーコは完全な人魚へと生まれ変わるのだからな」

 

ブラックジャック「完全な人魚だと!?」

 

 完全な人魚へ生まれ変わるという言葉を聞いたブラックジャックは月子の三ヶ月病と似た症状は人魚に変わろうとしているものだとわかった。

 

キリコ「月子を解放するには、あの装置から引きはがす必要があるな」

 

ブラックジャック「こいつは月子の神経に接続されている。キリコは機械の方を頼む!」

 

 白神夫妻が装者達と戦っている間にブラックジャックは月子の神経に接続されている端末の切断手術を行い、キリコは機械を破壊していた。その頃、装者達は魚人と化した白神夫妻のパワーと再生力に苦戦していた。

 

未来「うっ!」

 

クリス「三ヶ月湾の時は手を抜いてたな?」

 

剛三郎「そうだ。あの時はあくまでもヨーコが心を奪われる男が現れるのを待っていたのだからな」

 

エリカ「だけど、もう用済み。手を抜く必要もなくなったのよ!」

 

 2人とも三又の槍を振るい、装者達を押していた。

 

調「途方もなく強い…!」

 

切歌「イグナイトがあればって思いたくなるぐらいデス…!」

 

マリア「ないものねだりをしても何も始まりはしないわ!」

 

エリカ「例えイグナイトがあったとしても、私達に勝てはしないわ!」

 

 白神夫妻の猛攻は続いていた。一方、白神夫妻が装者達に気を取られている隙にブラックジャックは月子の神経に接続されている端末を全て切除し、装置から解放する事に成功した。

 

キリコ「こっちは終わりだ。そっちはどうだ?」

 

ブラックジャック「こっちも終わった。月子、私だ!わかるか!?」

 

月子「……先生?先生!」

 

 夢から覚めた月子はブラックジャックに抱き付いた。

 

ブラックジャック「よし、今から脱出するぞ!」

 

 ブラックジャックが月子の神経に接続されていた端末を全て切除した事に白神夫婦は驚いた。

 

エリカ「神経と接続していた端末を全て切除してヨーコを切り離した!?」

 

剛三郎「おのれ、もっと早く始末しておけば!くたばれ、ブラックジャック!!」

 

 剛三郎はブラックジャックを槍で貫いて殺そうとしたが…。

 

月子「先生!」

 

 咄嗟に月子が庇い、槍に貫かれてしまった。

 

ブラックジャック「月子!!」

 

剛三郎「そ、そんなバカな…!?」

 

 たった一人だけの成功例の月子を貫いてしまった事に剛三郎とエリカは動揺したのであった。

 

ブラックジャック「月子、しっかりしろ!月子!」

 

エリカ「おのれ…、私達の成功作がこうなったのも、全てブラックジャックのせいだ!」

 

ブラックジャック「何だと!?自分の子供さえ実験体にした親失格のお前さん達に責任を擦り付ける資格はない!」

 

剛三郎「今度こそ死ねぇ!!」

 

 再びブラックジャックを貫こうとしたが、エリカはキリコが銃撃し、剛三郎の腕目掛けてブラックジャックが投げたメスが刺さった。

 

エリカ「そんな注射が役に立つの?私達は毒への耐性もあるのよ」

 

キリコ「今にわかるさ」

 

剛三郎「ふははははっ、貴様らに勝ち目など」

 

 ところが、白神夫婦は装者達の反撃を受けた。

 

翼「私達の闘志はまだ折れていないぞ!」

 

未来「月子ちゃんや多くの孤児を実験体にしてきたあなた達は……!」

 

響「人の心を持たない化け物は絶対に許さない!!」

 

 宿で一晩過ごした響と未来とクリスは手を繋ぎ、絶唱を唄った。

 

剛三郎「今更、何をする?」

 

エリカ「さっさと叩き潰し」

 

 すぐに始末しようとした白神夫妻であったが、突如として動けなくなった。

 

剛三郎「な、何ッ!?」

 

 その原因は、白神夫妻が装者達から反撃を受けた際、翼の影縫いで動けなくなっていたためであった。

 

エリカ「な、何をしたのよ!」

 

マリア「あなた達に教えないわ」

 

調「今よ!あの人の心さえも失った化け物をやっつけて!」

 

剛三郎「そうはいくか!こんなものなんて、うぐっ!!」

 

 怪力で影縫いを振りほどこうとしたものの、白神夫妻は苦しみだした。

 

エリカ「ぐっ、ぐああああっ!!」

 

ブラックジャック「キリコ特製のパナケイア流体を破壊する毒が効いてきたようだ。安楽死のプロは苦しませる方法についても熟知しているようだな」

 

キリコ「当たり前だ。安らかに死なせる方法を知っていれば、その逆だって熟知できる」

 

 血液中のパナケイア流体を破壊され、凄まじい拒絶反応に苦しむ白神夫妻が動けない中、響達は絶唱を唄い終わり、S2CAを発動させた。

 

響「セット、ハーモニクス!S2CA・トライバースト!」

 

 トライバーストを放ち、白神夫妻は吹っ飛ばされた。

 

剛三郎「ぐあああああっ!!」

 

エリカ「あああああっ!!」

 

 吹っ飛ばされた白神夫妻は内臓が見えるほどの傷を負い、拒絶反応と組み合わさってまともに動けなくなった。その際中、ブラックジャックは心臓を貫かれた月子が死んだかどうか脈を確認したところ、驚いたのであった。

 

ブラックジャック「(バカな…!心臓を貫かれてもまだ脈があるだと…?)」

 

切歌「後は止めを」

 

 ところが、響達が怒りに任せてトライバーストを放ったせいで洞窟が崩落し始めた。

 

マリア「洞窟が崩落するわよ!」

 

翼「しまった!他に方法がなかったとはいえ、S2CAを使ったせいで!」

 

キリコ「このままだと全員下敷きになるぞ!」

 

ブラックジャック「急いで脱出だ!」

 

 響達は急いで脱出しようとしたが、そこへパルティータが現れた。

 

パルティータ「さ、私に掴まって!テレポートでここを脱出するわ!」

 

 一同は月子も連れてパルティータのテレポートで脱出した。

 

エリカ「わ、私達の夢が……!」

 

剛三郎「せ、せめて一目だけでも…!」

 

 動けないまま白神夫妻は洞窟の崩落に巻き込まれ、拒絶反応と岩に押し潰された事で死んだのであった。

 

 

 

病院

 

 その後、すぐに月子は病院に搬送されたが、とんでもない事が明らかになった。

 

キリコ「それは本当なのか!?」

 

フォックス「間違いありません。貫かれた月子さんの心臓が再生しているのです。ですが、かなり危険な状態である事に変わりはありません…」

 

ブラックジャック「だが、なぜ月子の心臓が?」

 

パルティータ「恐らく、人魚の細胞に完全適合した事で命を繋ぎ止めていたのよ。でも、このままだと死んでしまうし、人魚化を止める方法はないわ。どうするの?」

 

 人魚化を止める方法がないと言われたブラックジャックは決断した。

 

ブラックジャック「……パルティータ先生、月子の人魚化を促して完全な人魚にしてほしい」

 

パルティータ「決心したのね…」

 

 それが苦渋の決断であるとパルティータは感じ取った。そして、人魚化などの言葉を聞いたフォックスは驚いた。

 

フォックス「人魚化!?」

 

キリコ「月子は人体実験によって人魚の細胞と適合していて、人魚に変わろうとしているのがエラができたり、三ヶ月病に似た症状が出た原因です」

 

フォックス「そうだったのですか…」

 

キリコ「ブラックジャック、俺もお前の助手をする」

 

ブラックジャック「お前さんにしては珍しいな」

 

キリコ「言ったはずだ。治せる患者は治すと」

 

 その信念通りではあるが、同時に無垢な月子の姿がキリコの脳裏に焼き付いていたためでもあった。早速、パルティータが錬金術で月子の人魚化を促進させる形で手術が行われた。

 

ブラックジャック「(すまん、月子。お前はこれから陸に上がれない辛い想いをするだろう。恵の女性としての機能を失わせてしまったように、お前を人間から人魚に変えてしまった事を許してくれ…)」

 

 かつて、相思相愛の恋人であった如月恵の子宮ガンを治した結果、恵の女性としての機能を失う原因を作った時を思い出したブラックジャックは心の中で命を繋ぎ止めるため月子を人間から人魚へと変えてしまわなければならない事を謝罪し、手術した。そして、手術が終わって手術室から月子が運び出されたが、その完全な人魚と化した姿に響達や医師に看護師達は衝撃を受けた。

 

響「つ、月子ちゃんが人魚に!?」

 

未来「助かったんですか?」

 

ブラックジャック「ああ。だが、これから辛い日々が待っているだろう…」

 

 そんな中、キリコは人知れず帰っていった。

 

キリコ「もう俺の出る幕はないようだな…」

 

 帰ろうとしたキリコだが、ブラックジャックはそれに気付いた。

 

ブラックジャック「もう行くのか?」

 

キリコ「ああ。それと、あのコウモリ女には気を付けろ。他にも仲間がいるかも知れん」

 

 そう言ってキリコは病院を後にした。

 

 

 

 翌日、旅館の主人はタクシーの運転手をはじめとした月子を支えてくれる人達が月子の病室に来た。

 

主人「先生、月子はどうなんですか…?」

 

ブラックジャック「入ってみればわかりますよ」

 

 入ってみると、月子が響達と楽しく会話していた。その月子は足が尾びれに変わっていたのであった。

 

船長「つ、月子が人魚に!?」

 

運転手「人魚の生まれ変わりだと言ってたら、ほんとに人魚になっちまった!」

 

ブラックジャック「実は…」

 

 ブラックジャックは月子は人体実験の結果、人魚の細胞と適合して人魚化してしまった事を伝えた。

 

主人「まさか、月子は人体実験であの特異体質になっていたとは…」

 

種田「ですが、人魚になっても月子さんは月子さんである事に変わりありません。身元も判明したので、住民票や戸籍も作成が可能です」

 

ブラックジャック「記憶に関してですが、やはり手術が終わっても戻りませんでした」

 

種田「それでも構いません。あの子にとって、過去より今が大事なのですから」

 

船長「これからも、月子には看板娘として働いてもらわなきゃならねえしな!」

 

ブラックジャック「ありがとうございます」

 

月子「月子、海へ行きたい!青真珠を取ってくる!」

 

クリス「ブラックジャック、もう大丈夫か?」

 

ブラックジャック「そうだな。人魚の回復力はすさまじいから、今日で退院していいだろう」

 

月子「やったぁ!」

 

 

 

三ヶ月湾

 

 完全な人魚と化した月子の脅威的な回復力を見たブラックジャックはその日で月子を退院させた。そして、海に帰ってきた月子は青真珠を取りに行った。

 

ピノコ「ピノコも人魚になってあおちんじゅとりたい!」

 

ブラックジャック「やめておけ。ピノコは泳げないだろう」

 

ピノコ「このままちゅきこにちぇんちぇをとられたくにゃいのよしゃ!」

 

響「ブラックジャックさん、ピノコちゃんを泳がせないのはどうしてですか?」

 

ブラックジャック「それはだな」

 

 そう言ってる間に月子は青く輝く真珠のようなものを海から拾ってきた。

 

ブラックジャック「これは…!?」

 

月子「青真珠、取ってきた!これで月子、先生のお嫁さんになれる!」

 

ピノコ「アッチョンブリケ!!」

 

 月子から青く輝く真珠みたいなものを受け取ったブラックジャックだが…。

 

ブラックジャック「…残念だったな、月子。これはサファイアだ。青真珠ではない」

 

月子「青真珠…じゃない…?」

 

ブラックジャック「だが、感謝の証としてもらっておく。月子、たまには会いに来るから、これからも元気でな!」

 

月子「うん。月子、必ず青真珠をとって先生のお嫁さんになる!」

 

 青真珠だと思って拾ったのがサファイアであり、青真珠ではないと知っても月子はいつか青真珠をとってブラックジャックと結婚する気満々であった。

 

ピノコ「ふう、あおちんじゅじゃにゃくてよかったのよしゃ…」

 

未来「月子ちゃんの治療費は…」

 

ブラックジャック「いらない。このもらったサファイアが月子の感謝の証であり、治療費代わりだ」

 

クリス「あいつ、きっとこれからも強く生きていけるだろうな」

 

響「月子ちゃん、また会おうね~!」

 

 帰るブラックジャック達を月子や月子を支えてくれる人達は見送った。

 

月子『ナギが気になったジロどんは海の魔人と魔女と戦いやしたが、その際に魔人に殺されそうになった時、ナギが庇いやした。魔人と魔女を倒したジロどんは自分を庇って死んだナギが自分を想ってくれた事を知って悲しみ、竜宮の王に頼んでナギを生き返らせてもらいました。そして、ジロどんへ想いが通じたナギは喜び、ジロどんと結ばれて幸せに暮らしたとさ』




これで今回の話は終わりです。
今回は月子の素性が明らかになるとともに、人の心を捨て去って完全な怪物と化した月子の両親の登場と決着を描きました。
白神夫妻の元ネタはゴジラvsビオランテの白神博士とその娘、エリカからきています。そして、白神剛三郎は白神博士だけでなく、遊戯王の海馬剛三郎も元ネタで、白神博士のマッドサイエンティストと思われても仕方ない部分と海馬剛三郎の親失格の一面も加えた人の心のない化け物で、ミラアルクをはじめとした改造人間を作り出した張本人と設定しました。
白神夫妻を直接響達が殺さない形式にしたのは、殺されるよりも洞窟の崩落で死んだ方がこれまでの行いの罰が当たる展開としては面白いと思ったからです。
人魚の細胞の設定は高橋留美子先生の描いた人魚シリーズも参考にしていて、月子以外の人体実験を受けた孤児達の変わり果てた姿として、なりそこないという人魚シリーズに出てくる人魚の肉を食べた人間が辿る大概の末路の姿の化け物も出しました。
今回の話の元となったしずむ女は悲しい終わり方でしたが、今小説ではなりそこないと化した人体実験を受けた孤児達は助からなかったものの、月子は助かるという完全ではないハッピーエンドにしました。
次の話は女ブラックジャックと称される優秀な女の外科医が出てくる話となります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。