セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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翳り裂く閃光編
13話 響と瞬の不思議な悪夢


城戸邸

 

 夜になり、みんな寝ていたが、少し前から瞬は悪夢にうなされていた。

 

瞬「うぅっ…!」

 

 

 

 

 その悪夢は、地獄のようなものであった。火山島で瞬は仮面の男にボコボコにされていた。

 

仮面の男「憎め、憎め瞬よ!全てのものを憎むのだ!」

 

 拷問のような連打に瞬はボロボロになっていた。

 

瞬「うわああっ!」

 

仮面の男「瞬、お前はデスクイーン島に来て何年になる!?」

 

瞬「よ、4年だよ…」

 

仮面の男「4年も経ってまだわからんのか!?貴様が強くなるために何が足りないのか!それは憎しみだ!敵を倒す憎悪の心だ!貴様のその優しすぎる甘ったれた心が貴様の成長に歯止めをかけているのだ!わしを師と思うな!戦いに礼や情は捨て去れ!ただ、目の前の敵を殺す事だけ考えればよいのだ!」

 

瞬「そんなの、僕にはできないよ!」

 

仮面の男「だから、貴様は強くなれんのだ!」

 

 弱音を吐いた瞬に仮面の男はさらにボコボコにした。

 

 

 

瞬「うわああっ!」

 

 瞬は悪夢から覚めた。

 

瞬「ゆ、夢…?(僕はアンドロメダ島で修業したのに、何でデスクイーン島で修業した夢を見てるんだ…?)」 

 

 度重なる悪夢で瞬は眠れなくなっていた。そして翌日…。

 

星矢「いっただっきまーす!」

 

 星矢達は元気に食事をとっていた。しかし、瞬はどこかやつれている様子だった。

 

美衣「瞬さん、顔色があまりよろしくないようですが…」

 

瞬「…ここ最近、悪い夢ばかり見てて眠れない…」

 

氷河「悪い夢?」

 

紫龍「具体的にどういった夢なのか教えてほしい」

 

瞬「…僕はアンドロメダ島で修業したのに、夢ではデスクイーン島で兄さんの師匠にボコボコにされてたんだ…」

 

星矢「おかしな夢だな。アンドロメダ島で修業した瞬がデスクイーン島で修業していた夢を見るなんて」

 

沙織「何か原因があるのでしょう。この状態での戦闘はよくありません。安眠できるようになるまでは戦闘には出ずにゆっくり休んでください」

 

 

 

市街地

 

 一方、市街地では…。

 

切歌「あ、先輩方、おはようございます!」

 

調「おはようございます」

 

クリス「よう。今日は遅刻しないで済みそうだな」

 

響「あ、ああ。みんな、おはよ…」

 

 登校する響達だが、響の様子がおかしかった。

 

未来「おはよう。朝から3人一緒なんて珍しいね」

 

切歌「実は夕べクリス先輩の家で勉強を教わって、そのままお泊りしたんデスよ」

 

未来「へえ…そうだったんだ。にぎやかで楽しそうね」

 

クリス「べ、別に楽しくねーって。こいつらがどうしても勉強を教えてくれっていうから、仕方なくな」

 

未来「その割には嬉しそうだけど」

 

クリス「し、仕方なくだ!先輩だからな!」

 

未来「ふふ。いいじゃない、照れなくったって」

 

切歌「そうデスよ!あたしと調が一緒にいて、楽しくないはずないデス!」

 

クリス「お前も調子に乗んな!」

 

響「ふぅ…」

 

切歌「なんかあんまり元気ないデスね?」

 

クリス「確かに、妙に辛気くせー顔してんな。元気だけが唯一の取り柄のくせに」

 

響「はは…。元気だけが唯一の取り柄って、ひどいなぁ…」

 

調「でも、本当に具合悪そう。目も真っ赤です」

 

切歌「朝ご飯でも抜いてきたデスか?」

 

響「あ、うん。そうじゃなくて最近、ちょっと寝不足で…」

 

未来「夕べもうなされてたものね…」

 

響「あっ、ごめん。もしかして未来、起こしちゃってた?」

 

未来「私は大丈夫だけど…、響が心配だよ」

 

切歌「何か変な夢でも見るデスか?」

 

響「あはははは…まあ、そんな感じかな」

 

クリス「何だ、その思わせぶりな言い回しはよ?悩みでもあんなら言ってみろよ。楽になるぞ?」

 

響「そんな大げさな。ただの夢の話だから。ははは…」

 

 しかし、響の様子から普通じゃない事は想像できた。

 

未来「夢…」

 

響「でも、どうせ夢を見るならご飯の海で溺れたいよねぇ」

 

切歌「おお、それは素敵デスね!」

 

調「いくらでもご飯食べられるなんて、夢みたい。…夢の話だけど」

 

響「でしょ?夢の中くらい好きな物、思う存分食べたいよねぇ」

 

クリス「はあ…バカを心配したあたしがバカだった」

 

響「あははは…」

 

未来「ごめんね、でもありがとう」

 

クリス「別に、お前から礼言われる筋合いねーって」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 それから学校が終わり、訓練に向かった。

 

響「遅くなりました」

 

未来「失礼します」

 

翼「ん?どうした、小日向まで」

 

未来「響が具合悪そうだったので、ついて来ちゃいました」

 

響「もう~。ぜんぜん大丈夫って何度も言ってるのに」

 

未来「大丈夫そうに見えないから言ってるの」

 

翼「小日向は本当に立花が心配なんだな」

 

響「うーん…本当に大丈夫なんですけどね~」

 

未来「でも…響、今日も授業中ほとんど寝ちゃってて。凄く疲れてるみたいだから…」

 

クリス「こいつが授業中寝てるのなんていつもの事だろ?」

 

響「な、何で知ってるの!?」

 

???「お前はそういった事をいつもやらかしそうだからな」

 

 声と共に星矢達も来た。

 

響「紫龍さん!」

 

未来「あれ?瞬さんはどうしたんですか?」

 

星矢「瞬は少し前から安眠できなくなってやつれてたから、沙織さんの家で休ませてる」

 

未来「(瞬さんが響と同じように安眠できてないなんて…!)」

 

 響と同じように瞬が眠れていない事に未来は衝撃を受けていた。

 

星矢「どうした?未来」

 

未来「星矢さん、瞬さんと同じように響も少し前から眠れていないんです。普段より2杯もご飯を食べてないので、瞬さんも同じように食欲がないのですか?」

 

氷河「いつもより2杯少ないって。いつもはどれだけ食べてるんだ…?」

 

星矢「瞬もいつもより食欲がなかったんだ。響と瞬が同じような不調だなんて、ちょっとおかしくないか?」

 

紫龍「いつもと違ってよく考えてるな」

 

星矢「そりゃ、響と瞬が同じような不調を抱えてるのなら、関連があると考えてもおかしくないぞ」

 

氷河「それもそうだな」

 

翼「だが、ここ最近はそこまでハードな任務もなかったし、双方ともさほど疲労が溜まる状況ではないと思うのだが…」

 

沙織「そこはグラード財団の医療班に命じて原因を探っています。響さんの不調の原因も一緒に探りましょう」

 

未来「お願いします」

 

沙織「未来さん、心配のしすぎもよくありませんよ。響さん、あなたは調子がよろしくないようなので、訓練の方は」

 

響「いえ、本当にもう大丈夫ですから」

 

クリス「ま、訓練すれば眠気なんて一発で覚めるだろ」

 

紫龍「(そうとは思えないがな…)」

 

 すでに謎の悪夢でやつれている瞬を見てる星矢達は訓練で眠気が覚めるとは思っていなかった。そして、訓練が始まった。

 

氷河「あいつ、調子が悪い割には結構避けてるな」

 

紫龍「だが、油断は禁物だ。不調を抱えたままでかわしきれるわけがない。下手をすると…」

 

 紫龍の言う通り、響の動きに不調が現れて攻撃をまともにうけてしまい、吹っ飛ばされた。

 

響「うわああああっ!?」

 

クリス「ばっ、バカ!受け身ぐらい取れ!」

 

未来「響ー!!」

 

星矢「大丈夫か、響!」

 

クリス「…お、おい…バカ…何やって」

 

紫龍「戦闘によって不調が一気に悪化したのだろう。それで、回避はおろか、受け身さえ取れなくなったんだ!」

 

未来「響!」

 

翼「待て、小日向!頭を打っているかも知れない…。素人がむやみに動かすのは危険だ」

 

未来「…そ、そんな…」

 

翼「いや、あくまで可能性だ。模擬戦闘とはいえギアを纏っていた以上、深刻な怪我にはならないはず…」

 

沙織「クリスさんは至急、救護班に連絡をお願いします!」

 

クリス「あ、ああ!わかった!」

 

 その後、響は搬送されたのであった。

 

エルフナイン「お待たせしました。メディカルチェックの結果ですが…、響さんの脳に異常は見受けられませんでした」

 

未来「本当!?」

 

エルフナイン「はい。ですから、安心してください」

 

星矢「よかったな、未来!」

 

未来「はい」

 

エルフナイン「実際の所、脳震盪は後遺症が軽視できないものですが…そこはギアのシステムが大半の衝撃を吸収してくれますし、今回のような常識的な加速度下での落下による衝撃ならば、脳へのダメージはほぼ皆無と見てよいでしょう。計測した脳波はレム睡眠とノンレム睡眠を定期的に繰り返していましたし…失神というより、睡眠に近い状態のようです」

 

翼「どういう事だ?」

 

紫龍「響と同じような不調を抱えている瞬も寝不足と疲労が蓄積していたんだ。きっと、響もそれが大きく影響して昏倒したのだろう」

 

クリス「つまり…疲れて寝ちまったってのか?ったく、心配かけやがって…」

 

エルフナイン「ただ、随分うなされているようだったのが少々気になりましたが…」

 

未来「…それは…最近、ずっとそうで…」

 

エルフナイン「そちらについては、今度、改めてストレスチェックも受診していただいた方がいいかも知れません」

 

弦十郎「まあとにかく、大事には至らなくてよかった」

 

翼「申し訳ありません。今回の事態を招いたのは睡眠不足を訴えていた小日向の忠告を無視して訓練を促した、私に監督責任があります」

 

クリス「それを言うなら」

 

弦十郎「いや、お前達には普段から任務で不規則な生活を強いている。責任というのなら、俺達が一番に負うべきものだ。今回の件はたまたま響君が抱えていた、見えないストレスが表面化した結果だろう…。本当にすまなかった。今後はメンタル面もより手厚くケアできるよう、できるだけ早急に検討すると約束しよう」

 

未来「よろしくお願いします…」

 

沙織「未来さん、響さんの様子を見に行きましょうか」

 

 星矢と沙織は未来と一緒に響の所へ行き、ちょうどその時に響は目が覚めた。

 

未来「よかった、目が覚めて…。気分はどう?」

 

響「なんか、久々によく寝た気分」

 

沙織「響さん、近頃体調が悪いのに無茶するからですよ」

 

響「心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」

 

 

 

リディアン 寮

 

 しかし、その夜はまた響はうなされていたのであった。

 

未来「響…またうなされてるの?」

 

響「いや、だよ…。そんなの、やだ…」

 

未来「(いつもよりひどいみたい…。一回、起こした方がいいかな…)」

 

 未来は響を起こす事にした。

 

響「…誰も…助けて、くれない…。私は…独り、だ…。ここは、暗いよ…」

 

未来「そんな事はないよ…。響には私がいるよ。あの地獄の日々から救ってくれた星矢さんや沙織さん、みんながついてるよ。だから…そんなに苦しまないで…」

 

響「うううっ…ああああ!!」

 

未来「(どうしてこんなに苦しんでるの?心配だよ…)」

 

 

 

城戸邸

 

 同じ頃、瞬もうなされていた。

 

瞬「…誰も…助けて、くれない…。僕は…独り、だ…」

 

星矢「まただ…!」

 

沙織「瞬、あなたは」

 

???「瞬!!」

 

 突然、一輝が入ってきた。

 

星矢「一輝!」

 

沙織「どうしてここに?」

 

一輝「瞬の小宇宙が揺らいでて、何かあると思って駆け付けた」

 

瞬「いや…、だよ…そんなの」

 

一輝「瞬、何を言っているんだ!俺や星矢達がいるのだぞ!」

 

 そして翌日…。

 

紫龍「まさか、一輝が帰ってきたとは…」

 

氷河「いつもの単独行動はとらずに瞬に付き添っている。群れない事よりも、瞬の容態の方が大事なのだろう」

 

 一輝は瞬が心配でいつもの単独行動をとらず、やつれている瞬に付き添っていた。

 

一輝「瞬はデスクイーン島で生き地獄を味わった夢を見たのか?」

 

瞬「うん…。兄さんは生き地獄と言ってたけど、その夢を見て、本当だと思ったよ…」

 

一輝「俺でさえああなったんだ。夢でとはいえ、俺より繊細なお前はあの生き地獄に耐えられるわけがない。それに、俺も悪い夢という訳ではないが、アンドロメダ島で伸び伸びと修業している夢を見たんだ」

 

瞬「おかしいね…、僕がデスクイーン島で修業してる夢を見て、兄さんがアンドロメダ島で修業してる夢を見たなんて…。それに…、他の夢では星矢達はおろか、兄さんまで助けてくれなくて、僕はずっと1人ぼっちなんだ…」

 

一輝「何を言っている!?星矢達はいつも一緒だし、俺も一大事には必ず来る!お前は1人じゃないんだ!」

 

瞬「ありがとう…、兄さん…」

 

一輝「瞬が元気になるまで俺はここにいる。早く体調を治そう」

 

 

 

リディアン 寮

 

 同じ頃…。

 

響「おはよう、未来」

 

 起きた響は未来の様子に気付いた。

 

響「どうしたの。すごいクマだよ…」

 

未来「それは私のセリフだよ。響のうなされ方、前よりずっとひどくなってる」

 

響「えっ?本当に?どうしたんだろう…」

 

未来「何か心配事でもあるの?」

 

響「え…!?そんなの全然ないけど…」

 

未来「なら、いいんだけど…。私、もう見てられなくて…」

 

響「そ、そんな。大袈裟だなぁ…」

 

未来「だって響、毎晩うなされながら、ずっと言ってるんだよ。『私は独りっきりだ』って…」

 

響「えっ…本当に?」

 

未来「なにか心当たりないの?」

 

響「ないない!そんなの、あるわけないよ!だって私、みんなと一緒だし、なにより…私には未来が傍にいるもの。だから、本当に大丈夫だから…」

 

未来「こんな状態で大丈夫なわけないよ!!」

 

 響のうなされ方を見ていられなかった未来は遂に感情を爆発させた。

 

未来「辛い時は辛いって、そう言ってよ…。そんなに私、響の支えになれないのかな?こんな時くらいは素直に甘えてよ…」

 

響「未来…。ありがとう、未来。本当言うとね、夢を見るたび苦しくて、辛くなるんだ。夢から覚めても、不安がずっと残って、…その不安に押しつぶされそうになる。私には未来や星矢さんに沙織さんを始めとするみんながいるはずなのに…。夢の中の私は独りぼっち…。自分でも、なんであんな夢見るのか、全然わからなくて…」

 

未来「何が原因かは私にもわからないけど…。このままじゃ響の身体が持たないよ。昨日、エルフナインちゃんがストレスチェックを受けるべきだって言ってたし…ちゃんと看てもらおうよ」

 

響「うん、そうだね…」

 

未来「善は急げ。私も付き添うから。早速、今日にもお願いに行こう」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 装者達は訓練をしていたが、その様子を星矢達は見ていた。

 

星矢「あいつら、動きが悪いな…」

 

紫龍「それも仕方ないだろう、俺達だって瞬の不調で多少は動揺してるように、響の不調による不安があいつらにも広がっているんだ」

 

氷河「お前達、不安で動きが鈍いのなら、訓練はそこまでにした方がいいんじゃないか!?」

 

 結局、訓練はそこで終わりにする事にした。ちょうどその時に呼びだしがかかり、一同は発令所に集まった。

 

弦十郎「全員集まったな」

 

切歌「あれ?響さんは待たなくていいんデスか?」

 

沙織「響さんはメディカルルームでチェック中な上、戦える状態ではありません」

 

翼「それで、どんな事態が起きたというのですか?」

 

弦十郎「ああ、それなんだが…結論から言おう。先刻、ギャラルホルンがアラートを発した」

 

マリア「また別の並行世界と繋がった、という事ね…」

 

翼「何も、立花や瞬がこんな状況の時に…」

 

沙織「仕方ありません。事態というものはこちらの事情まで考慮してくれません」

 

氷河「俺達を呼んだのは、並行世界の調査だな?」

 

弦十郎「話しが早い」

 

エルフナイン「発動したギャラルホルンからは前回同様、強い次元干渉波が計測されています」

 

切歌「それって何か悪い事が起こるんデスか?」

 

エルフナイン「いえ、内容まではわかりません…」

 

星矢「とにかく、並行世界へ行って異変を解決するんだろ?」

 

翼「だが、向こうの世界の事について確認するための潜入偵察任務を行わなければならない」

 

クリス「そういう事なら、あたし1人で十分だ」

 

紫龍「いや、お前1人では無理だ。もしも、お前が1人でいる時にカルマノイズが現れたらどうする?」

 

 紫龍の態度にクリスは文句は言えなかった。

 

星矢「だったら、クリスのほかに俺とあと一人装者を連れていけばいいだろ?」

 

氷河「星矢…」

 

星矢「瞬は戦えないし、一輝は付きっ切りで戦いに参加できない。なら、俺が行くしかない」

 

紫龍「星矢、並行世界へ行くのなら、装者の中で最年長のマリアを連れていけ。お前とクリスだけではどうしても同調して突っ走ってしまうからな…」

 

氷河「俺と紫龍は残ってこの世界にノイズが現れた時に備える」

 

星矢「頼むぞ」

 

沙織「どうやら、決まったようです」

 

弦十郎「星矢、クリス君、マリア君、君達3人に今回の任務を任せよう」

 

星矢「ああ。よろしく頼むぜ、マリア、クリス」

 

マリア「やけに気合が入ってるわね。何か」

 

 そんな時、警報が鳴った。

 

翼「ノイズか…!」

 

紫龍「星矢、マリア、クリス、お前達は並行世界へ行ってくれ。この場は俺達で十分だ」

 

星矢「紫龍、氷河、無茶すんじゃねえぞ」

 

氷河「それはお前に言われたくないものだな」

 

 ちょうど未来が来た。

 

星矢「未来、響はどうなんだ?」

 

未来「まだ検査中です」

 

星矢「そうか…。早く元気になるといいな」

 

未来「星矢さん、クリス、マリアさん、気を付けて行ってきてください」

 

 星矢達は並行世界へ向かい、紫龍達はノイズ迎撃に向かった。

 

 

 

城戸邸

 

 瞬は外を見ていた。

 

瞬「兄さん、僕はまだ並行世界に行った事がないけど、並行世界には色んな可能性があるよね?」

 

一輝「ああ。話は聞いたが、紫龍や氷河の兄弟子が聖闘士になってたり、ポセイドンがアテナを倒して地上を支配したとかの例が既にあるからな」

 

瞬「もしかすると、兄さんがアンドロメダの聖闘士になって、僕がフェニックスの聖闘士になった世界もあるんじゃないかな?」

 

一輝「俺がアンドロメダで瞬がフェニックスだって?」

 

 守護星座が逆というのは一輝には想像もつかなかった。

 

一輝「おいおい、そんな事ってあるわけ…」

 

 守護星座が逆という想像はつかなかったものの、修行地が逆になっている可能性については否定できなかった。

 

一輝「案外、瞬がデスクイーン島より先にアンドロメダ島のくじを引いて俺がそこを引き受け、お前がデスクイーン島に行った世界はあり得るかもな…」

 

 瞬がデスクイーン島で、一輝がアンドロメダ島で修業したという夢は当初は2人ともただの夢と思っていたが、並行世界の可能性としては夢で見た光景はあり得るかも知れないと知ったのであった。

 

 

 

リディアン 寮

 

 その後、未来は響と共に寮に戻った。

 

響「そっか、ギャラルホルンが…。それで、星矢さんとクリスちゃんとマリアさんが向こうに」

 

未来「うん、調査に向かったって」

 

響「迷惑かけちゃったなぁ…」

 

未来「星矢さんはむしろ、喜んで引き受けてくれたわ。響は何よりまず元気になる事。…あんまり心配さえないで?」

 

響「うん、ごめんね未来。でも、ちょっと夢見が悪いだけだし、大丈夫だよ」

 

未来「…どんな夢なのか、聞いてもいいかな?」

 

響「最近ずっと、おんなじ夢ばかり見るんだ…。とてもとても怖い夢…。日の当たらない暗い所に閉じこもって、周りには誰もいなくて…。苦しいのに、誰も助けてくれなくて…。誰も笑いかけてくれない…。誰も手を握ってくれない…。ずっとずっと、心の奥が痛いのに…。それが、いつの間にか当たり前になっちゃって…。私、怖いよ…」

 

未来「どうして?ただの夢だよ?」

 

響「だって、夢から覚めた時、それが本当の事になっちゃってるんじゃないかって…。そう思うと、眠るのが怖いんだ…」

 

未来「大丈夫だよ。だって…響には私がいるんだよ」

 

響「うん…そう…、だよね。ありがとう、未来…。安心したら…少しだけ、眠くなってきちゃったかな…」

 

未来「今晩はきっと大丈夫だから。おやすみなさい、響…」

 

響「うん、お休み、未来…。あのさ…未来…。手……握っててくれる?眠るまででいいから、さ…」

 

未来「ずっと握ってるよ。だから、安心して」

 

響「ああ、未来の手…あったかい…」

 

 安心した響は寝たのであった。

 

 

 

公園(並行世界)

 

 星矢達は並行世界に到着した。

 

マリア「無事転移が終わったみたいね」

 

クリス「ああ…みたいだな」

 

星矢「ぱっと見じゃ、俺達の世界とは変わらないようだが、この世界でもルナアタックはなかったようだ」

 

マリア「ええ、そのようね(ルナアタックがない…という事は、この世界の装者もまた、翼や奏だけになっているのかしら…?断定はできないけど)」

 

 そう思っていると、聞き覚えのある声がした。

 

マリア「この声は…」

 

星矢「翼の声だ!」

 

マリア「行ってみましょう!」

 

 

 

市街地(並行世界)

 

 現場へ向かった星矢達が見たのは、訪れた並行世界の翼であった。

 

マリア「あれは、この並行世界の翼、ね…」

 

クリス「1人でノイズの群れと戦っているみたいだな」

 

星矢「加勢してさっさと終わらせるぞ!ペガサス流星拳!」

 

 ペガサス流星拳でノイズの群れは1秒も経たずに全滅した。

 

翼「な、何だと!?1秒も経たずにノイズの群れが消滅した…!」

 

 翼は星矢達と対面した。

 

翼「誰だっ!?その姿…まあか、シンフォギア装者だと…?」

 

マリア「ええ、そうよ(やはり、この世界では私達と面識がないみたいね…)」

 

翼「驚いた…、まさか男のシンフォギア装者が現れたとは…」

 

クリス「バカ、男のシンフォギア装者がいるわけねえだろ!」

 

星矢「俺はアテナを護る黄金聖闘士、サジタリアス星矢だ」

 

翼「聖闘士、だと…!?」

 

星矢「(こっちじゃ、二課と聖闘士の協力関係が築かれてないのか…?)」

 

翼「ま、まぁ助太刀感謝する。正直、猫の手も借りたい所だった」

 

マリア「詳しい状況を教えてもらえるかしら?私達、さっきここに来たばかりなの」

 

???「お前は星矢じゃないか!」

 

 声と共に男女2人が来た。

 

翼「避難指示が出たはずなのに、戦場で何をうろついている!」

 

星矢「一輝!あと、瞬に似た女の子は…」

 

エスメラルダ「エスメラルダです」

 

一輝「星矢、お前はエリスとの戦いでアテナと共に行方不明になったんじゃないのか?」

 

星矢「行方不明?どうなってんだ?」

 

 一輝とエスメラルダが来た事で混乱する一同だが、一輝が背負っている聖衣箱を見て、驚いたのであった。

 

星矢「その箱に入ってるのは…アンドロメダの聖衣なのか!?」

 

一輝「それがどうした?」

 

 しかし、またノイズが出現した上、今度は介護施設の近くに現れたとの通信が入った。

 

星矢「また現れたのか…。一輝、力を貸してくれるか?」

 

一輝「ふっ、ノイズを見過ごすわけにはいかんからな」

 

 そう言って一輝はアンドロメダの聖衣を纏ったのであった。

 

翼「オブジェがバラバラになって鎧になった…?シンフォギアとは根本から違うな…。私達の知らない完全聖遺物か?」

 

マリア「まぁ、聖衣は小宇宙を燃やせないとまともに使えないから、起動させれば誰でも使える完全聖遺物とは違うけど、分類上はそうなるわ」

 

クリス「(一輝がアンドロメダって…、なんかあんまり似合う感じがしねえなぁ…)」

 

エスメラルダ「一輝、私は介護施設のお年寄りの人達の避難誘導をするわ!」

 

一輝「気を付けろ!」

 

 エスメラルダは老人の避難誘導の手伝いを行う事にし、星矢達がノイズを蹴散らした。

 

エスメラルダ「お婆さん、こっちへ!」

 

老人「わ、私の事はいいからお逃げなさい」

 

エスメラルダ「そういう訳にはいきません!」

 

 そう言ってると、ノイズがやってきた。

 

老人「ひぃっ!」

 

 エスメラルダは最後まで諦めずに老人と一緒に逃げようとしたが、ノイズに追いつかれそうになった。しかし、乱入者によって難を逃れた。

 

クリス「あいつは…!?」

 

星矢「間違いない、響だ!」

 

 そう、現れたのはこの世界の響であった。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は響と瞬が悪夢にうなされているのと、星矢達が並行世界へ行き、並行世界の響と会うまでを描いています。
今回の翳り裂く閃光編は未来が装者に復帰する話であるので描きたいと思っていた他、『瞬と一輝の守護星座が逆だったら』も描いてみたかったので、並行世界の一輝はアンドロメダ島で修業し、アンドロメダの聖闘士になっています。対する並行世界の瞬は今回の話でも伏線は描かれていますが、どうなっているのかは次の話で明らかになります。
次の話では並行世界の瞬が登場します。

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