セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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130話 科学vs錬金術

空港

 

 セレナ達は空飛ぶ病院、スカイホスピタルの披露に興味津々で空港に来た。

 

セレナ「マリア姉さん、空を飛ぶ病院って本当にあるの!?」

 

マリア「ええ。東西大学附属病院の医師、白拍子泰彦が設計したスカイホスピタルがお披露目されるの」

 

切歌「スカイホスピタルは想像しただけで便利なのデス!」

 

調「うん。病院がないところでも医療を受けられる」

 

セレナ「早く行こうよ、姉さん!」

 

???「あなた達もスカイホスピタルに興味津々なの?」

 

 そこへ、美女が来た。

 

マリア「あなたは?」

 

史子「私は西川史子。さ、私が案内するから近くで見たいなら行きましょう」

 

 史子に案内されてスカイホスピタルの近くへ行ってみると、沙織達もいたのであった。

 

沙織「あら、あなた達も来ていたのですか?」

 

切歌「沙織さん達もいるのデス!」

 

マリア「どうしてここに?」

 

沙織「スカイホスピタル開発の資金を出資した関係で、私達も会見に呼ばれたのです」

 

パルティータ「アテナ様もめんどくさい奴に呼ばれたりして、大変です」

 

調「めんどくさい奴…?」

 

 他にも、ブラックジャックとピノコも来ていた。そして、常にニコニコしている割と若い男もいた。

 

男「西川君、白拍子君の自信作、スカイホスピタルは機能面では申し分ないみたいですね」

 

史子「影斗理事長もそういう考えですか?」

 

影斗「ええ。私の教え子の白拍子君は頭は固いのですが、発想は見事なものでして、私も感心しましたよ」

 

調「あの…」

 

史子「どうしたの?」

 

調「あのニコニコしている男の人が医師連盟の理事長なのですか?」

 

史子「その通りよ。この方はある事件で辞任した前の理事長の後任、影斗理事長」

 

影斗「初めまして、皆さん」

 

 影斗の得体の知れない雰囲気に切歌と調はゾッとしていた。

 

切歌「あいつ、ドクターと似た感じがするのデス…」

 

調「私もそう思う…」

 

影斗「ブラックジャック君はどう思うのですか?」

 

ブラックジャック「自分の患者をほったらかして、こんな物を見せる奴もどうかしてると思うがね」

 

影斗「手厳しいですね。でも、これは上司からの指示であり、白拍子君は患者に何かあればすぐに駆け付けるほど責任感も強いのですから」

 

???「ブラックジャック!今、スカイホスピタルをこんな物だと言ったな!」

 

 ちょうどそこへ泰彦が来た。

 

泰彦「お前、スカイホスピタルの意義がわからないのか!?」

 

ブラックジャック「医者不足を補うための機器が積まれてるんだろ?」

 

泰彦「技術のすばらしさすら理解できんか!」

 

 そこへ、影斗が仲裁に入った。

 

影斗「まあまあ、この場は落ち着いてください」

 

泰彦「理事長、あなたまで来ていたのですか!?」

 

影斗「教え子の自信作を見たくて来たんですよ。それと白拍子君、機械任せは大概にしておきなさい。高度な錬金術医療を使える身でありながら、それに溺れずに大概の治療は自らの手術の腕前で治療しているパルティータ君を見習うのです」

 

 プライドの高い泰彦も恩師の影斗には頭が上がらなかった。

 

ピノコ「あたらちい理事長にはちらびょうちもタジタジなのよしゃ!」

 

マリア「史子さん、パルティータやブラックジャック先生は白拍子って人と何かあったんですか?」

 

史子「ええ。それに、今では影斗理事長に白拍子先生は頭が上がらない様子だけど、昔はとてもあの人を毛嫌いしていたの。何しろ、影斗理事長は前の理事長が見栄を張ってブラックジャック先生にポッケリーニ君を手術させなかった挙句、死なせてしまってポッケリーニ君の親族からの報復で息子さんが重傷を負い、ブラックジャック先生に泣きつく羽目になってしまったの。それを当時の理事であったあの人は前の理事長を徹底的に紛糾して追い落とし、新たに理事長の座に就いたのよ」

 

切歌「明らかに前の理事長の方が悪い人なのデス!」

 

セレナ「どうしてあの理事長を昔の白拍子さんは嫌っていたのですか?」

 

史子「影斗理事長はとても考えや手腕が柔軟な人なのだけど、見栄を張っていた前の理事長とは逆で患者を救うためなら手段を選ばず、それしか方法がない場合は法律さえも平気で破る人でもあったのよ。そして、見栄を張る医師には非常に厳しく、巧みで人を怒らせる話術で対立していた有力者を怒らせ、自身に暴力を振るわせて悪者に仕立て上げ、追い落とした狡猾な一面もあるの」

 

マリア「やっぱり、とんでもない人ね…」

 

史子「影斗理事長の患者を救うためなら手段を選ばない一面と白拍子先生の潔癖症がかみ合わなくて、白拍子先生はブラックジャック先生並に影斗理事長を嫌っていたのよ。それが改善されたのは、あの時だったわ」

 

 

 

回想

 

東西大学附属病院

 

 それは、ある程度前の事であった。

 

史子「白拍子先生はグラード財団の医療機関が誇る世界的名医のパルティータ女医についてご存知ですか?」

 

泰彦「知ってるよ。彼女は世界一の女医で、ホワイトクイーンや魔女という異名を持ち、その腕前はブラックジャックにも匹敵するって。きちんとした医師免許を持っているから、彼女の事は嫌いではない」

 

史子「移植、整復などの様々な高度な医療技術を有している上、世界一のガン治療のスペシャリストとしても知られているそうです。彼女のガン治療を受けた人は初期も末期も問わず、数年で再発した人は誰もいないデータにあります」

 

泰彦「誰もいないだって!?グラード財団にはこれから正式採用を控えているカンサーハンターみたいな機械をもう開発したとでもいうのか!?」

 

医師「白拍子先生、理事長がお見えになりました」

 

 その言葉に泰彦は驚いた。

 

泰彦「何ッ!?あのトカゲ男がやってきただと!?」

 

史子「白拍子先生、あの人は私達の恩師なのですよ。トカゲ呼ばわりは…」

 

泰彦「何を言うか!あの男は正義感が欠片もなく、私達が新人の頃は違法な手術も平気で行う血の通っていない奴だ!それに、あの男は卑劣な謀略で対立していた有力者を次々と蹴落とし、遂には理事長さえも蹴落として新しい理事長になったと聞く!」

 

史子「ですが、影斗理事長の方が…」

 

泰彦「前の理事長もいい人とは言えないが、あの男の方がよっぽどの悪人だ!ブラックジャックという無免許医を重宝している上、法律さえも」

 

???「私自身、嫌われ者という自覚はありますけど、随分言ってくれますね」

 

 泰彦が悪口を言っていると、影斗が来た。

 

史子「理事長!」

 

影斗「私は患者を助けるために合法非合法問わず手を尽くしているのです。ブラックジャック君というジョーカーを利用しているのもその一環です。あの無能はブラックジャック君を有効活用せずに見栄ばかり張っていたので、罰が当たって私に追い落とされるきっかけを自分で作ったのですよ」

 

泰彦「お前はなぜ切らずにガンを治す事ができるカンサーハンターの正式採用にかなり慎重なんだ!?これがあればあの悪徳医など」

 

影斗「だから言ってるではないですか、十分な実験と本当に人体に悪影響がないのかという事が必要だと。実験体を引き受けた患者に何の異常もない事が立証されるまではカンサーハンターの正式採用と公の場での披露は認めません。それとも…取り返しのつかない事態を招きたいのですか?」

 

泰彦「お前はいつもそうだ!嫌味ばっかり言って、私を認めようとしない!」

 

影斗「白拍子君、前にも言いましたが、見栄も名誉も肩書も医療の現場では何の役にも立ちません。役に立つのは己の腕と助手とのチームワークと扱う医療機器である事をお忘れなく。そして、くれぐれもあの無能みたいにだけはならないように。では、失礼します」

 

 そう言って影斗は帰ろうとしたが…。

 

影斗「そうそう、忘れそうになりました。白拍子君、あなたは錬金術の存在を信じますか?」

 

泰彦「錬金術?そんなものは科学に淘汰されてもうこの世には存在しない。錬金術はもはや、アニメや漫画の中の存在にすぎないんだ」

 

影斗「そう思っているのですか。ですが、世の中は白拍子君の理解を超えたものがたくさんありますよ。では」

 

 影斗は帰った。

 

泰彦「トカゲ男め…!」

 

 

 

泰彦の家

 

 泰彦は自宅に帰ってきた。

 

執事「お帰りなさいませ、若様」

 

泰彦「ただいま、お母様」

 

泰彦の母「お帰り、泰彦。あら?何かあったのかしら?顔に出てるわよ」

 

泰彦「……トカゲ男が病院を訪れたんだ…」

 

泰彦の母「トカゲ男…。新しい理事長の事ね。さっき、家に上がって話をして帰ったわよ」

 

泰彦「どうせあの男の事だ!僕の悪口でも言ったに違いない!無法な医者のブラックジャックと同レベルの奴だ!」

 

泰彦の母「そうかしら?あの人は泰彦の事を手間はかかるけど、可愛い教え子だとか自慢話をしたのだけど…」

 

 その言葉に泰彦は衝撃を受けた。

 

泰彦「そんなバカな!?トカゲ男が僕の自慢話を!?何かの間違いだ!ブラックジャックと同じように正義感の欠けたトカゲ男がそんな話をするはずがない!!」

 

 そんな中、東西大学附属病院から連絡が入った。

 

執事「若様、同期の史子様からです」

 

泰彦「わかった」

 

 泰彦は電話をとった。

 

泰彦「史子君、何があったんだ?」

 

史子『白拍子先生、カンサーハンターを開発したアメリカの南プレメンス大学より緊急連絡が入りました!カンサーハンターに欠陥があったために使用をやめてほしいそうです!』

 

泰彦「何だって!?」

 

泰彦の母「何があったの?」

 

泰彦「呼び出しがかかったので、病院に戻ります」

 

 

 

東西大学附属病院

 

 急いで泰彦は病院に戻った。

 

泰彦「史子君、本当にカンサーハンターに欠陥があったのか!?」

 

史子「はい!『カンサーハンターのレーザーはガン細胞には有効だが、同時に正常な自律神経に影響を与えて少しずつ感覚を侵していく。ことに目と耳の神経を侵す』というメールが来ました!」

 

泰彦「なんて事だ…!これから正式採用しようと思ったのに…」

 

史子「理事長はこういった事態も想定し、実験や人体に悪影響がないかを確かめてほしいと言ったのではないでしょうか?」

 

泰彦「くそっ…!悔しいがトカゲ男が言った通り、実験しないで正式採用していたら取り返しがつかなくなる恐れがあった…!患者の雇い主等にカンサーハンターの欠陥による障害がないかの精密検査を行うと伝える」

 

史子「わかりました。それと、実験体の患者は治療は不可能なほどの末期ガンです。パルティータ先生は仕事中で頼めないそうなので、ブラックジャック先生を…」

 

泰彦「それは断じてお断りだ!カンサーハンターが使えない以上、こうなったら、私が…」

 

 その時、影斗の言葉が嫌というほど脳裏に過ったのであった。

 

泰彦「……あの男の言葉が頭から離れられない…。腸が煮えくり返るほどだが、ブラックジャックに頼みに行ってくる」

 

 

 

泰彦の家

 

 ブラックジャックに頼みに行くため、まずは手術代を確保するために自宅に戻った。

 

泰彦「母さん…またお小遣いをいただけませんか…?」

 

泰彦の母「いいわよ。毎度の事ですもの。今度は何に使うの?」

 

泰彦「五千万円出してもらえませんか…?」

 

泰彦の母「大金ね。出してあげない事もないけど、わけをおっしゃい」

 

泰彦「あのカンサーハンターが不完全で、実験体を引き受けた患者は僕の力じゃ治りません…」

 

泰彦の母「それじゃあ、ブラックジャック先生に頼むのね?」

 

泰彦「実はそうです。しかし…、ほんとは腸が煮えくり返るようです。トカゲ男が言ったような事態になった上、あんなモグリの医者に東西大学の外科医長が頼む羽目になるなんて!」

 

泰彦の母「あなたって、そんなに新しい理事長とブラックジャック先生が憎いの?お母様には薄々わかるわ。あなたは理事長とあの先生の腕に嫉妬してるんでしょ」

 

 母親に叱責された泰彦であった。

 

泰彦「嫉妬…。確かにそうだ!あいつに頭を下げるなんて!!」

 

 

 

ブラックジャックの家

 

 泰彦はブラックジャックに頼む事にした。

 

泰彦「ブラックジャック。ど、どうか…手術を…お願いしたい……。お代は」

 

ブラックジャック「さっき、理事長から連絡が入って、手術を頼まれた。理事長は『医療活動は認めるが、代わりに私からの手術の依頼には絶対に引き受ける事』という条件を引き受けているから、今回はお代はいらない」

 

泰彦「だったら、すぐに来てほしい」

 

 

 

東西大学附属病院

 

 病院に来てみたものの、患者は姿を消していた。

 

泰彦「か、患者はどこへ行ったんだ!?」

 

史子「白拍子先生、それが…」

 

???「白拍子君、よくぞ見栄を張らずにブラックジャック君に頼む事ができましたね」

 

 そこへ、影斗が来た。

 

泰彦「トカゲ男!?」

 

ブラックジャック「お前さん、新しい理事長と何かあったのか?」

 

史子「新しい理事長は私達の恩師なのです」

 

泰彦「恩師?あんな奴が恩師なものか!違法な事を平気でやる奴が理事長の座に就く事自体がおかしい!」

 

影斗「それは非常事態ではの話です。普段はきちんとルールを守りますよ。それに、ある漫画の名言に『ルールや掟を守れない奴はクズ呼ばわりされる。だけどな、仲間を大事にしない奴はそれ以上のクズだ』というのがあります。私は患者を救うために法律やルールを破る医者よりも、見栄で患者を救うためのあらゆる手を尽くさない医者の方がもっとクズだと思うのですよ。あの無能のように」

 

泰彦「患者の治療のために法律を破る医者よりも…見栄であらゆる手を尽くさない医者の方がクズ…?」

 

 それは、泰彦の価値観では考えられない事であった。

 

影斗「ですが、君はどうにもならない事態ではしっかり折れてブラックジャック君に頼む事ができました。これからも、そのどうにもならない時は折れて誰かに頼む勇気を忘れないように」

 

泰彦「…はい…」

 

???「影斗理事長、白拍子先生はわかってくれたようですね」

 

 そこへ、沙織と美衣、パルティータが来た。

 

ブラックジャック「沙織お嬢様達じゃないですか!」

 

沙織「白拍子先生、影斗理事長がカンサーハンターの正式採用を待てと言ったのは何かあった際に病院の評判などのダメージを最小限に留めるためでもあったのです」

 

泰彦「病院の事まで考えて…」

 

沙織「それに、白拍子先生の自慢話もしていましたよ。色々と手間はかかるけど、可愛い教え子だと」

 

泰彦「お母さんと同じ事を…」

 

 本当に影斗が自慢話をしていた事を泰彦はようやく本当だったと信じたのであった。

 

泰彦「…理事長、私の完敗です……」

 

影斗「私も白拍子君と同じぐらいの頃は意地っ張りで、見栄を張ってミスや都合の悪い事を隠そうとしたりしたのですよ。これも若さというもの。しっかり経験を積んで、学んでいけばいいのです。あなたはあなたらしいやり方をしつつ、折れるべき時は折れたり、素直にミスを公表したりする勇気を持ち続けてください」

 

泰彦「それより、患者はどこに?」

 

パルティータ「私が実験体を引き受けた患者をやってたの」

 

 それに、泰彦は驚いた。

 

泰彦「な、何だとォ!?」

 

美衣「影斗理事長はパルティータに患者役をやってもらうように頼んでいたのです」

 

ブラックジャック「へえー」

 

泰彦「世界的名医に患者役を!?」

 

影斗「それはですね」

 

 影斗の言葉を遮るように緊急連絡のために看護師が来た。

 

看護師「白拍子先生、急患です!」

 

泰彦「急患だと!?」

 

看護師「しかも、患者は末期ガンです!」

 

泰彦「何だって!?」

 

 一同は患者の診察結果を見た。

 

史子「こ、これは……!」

 

泰彦「ガン細胞による腫瘍があちこちに転移してて手が付けられない!!くそっ、カンサーハンターの欠陥が見つかってすぐにこれ程の末期ガンの患者が来るなんて!!」

 

沙織「どうなされますか?」

 

泰彦「何としても治療する!それが、患者の命を預かる医師としての責任だ!」

 

影斗「それでこそ、私の教え子ですよ」

 

泰彦「だが、オペではダメだ…!こういった時に、カンサーハンターが使えたら…」

 

ブラックジャック「ないものねだりをしたって何も始まらんぞ」

 

影斗「白拍子君、ここはパルティータ君にそのガン患者の治療をやらせてもらえないでしょうか?」

 

泰彦「パルティータ先生に?そ、そうか!彼女は世界一のガン治療のスペシャリストだ!きっと、カンサーハンターのような機械を」

 

パルティータ「はい、残念。私はカンサーハンターみたいな機械は一切使わないの」

 

史子「カンサーハンターみたいな機械を使わない?」

 

泰彦「じゃあ、どうやってガン患者を治すんだ!?手術ではどうにもならないほどなんだぞ!」

 

パルティータ「それを特別に見せるけど、その代わりに今からやる事は絶対に秘密よ。いいわね?」

 

泰彦「……わかった」

 

 医師達は白衣に着替え、治療に立ち会う沙織と美衣も白衣に着替えてそれを見る事となった。

 

史子「メスなどの用意は」

 

パルティータ「いらないわ。切る必要はないし、短い時間で済む」

 

泰彦「切らずに短い時間で済む!?そんな事が」

 

ブラックジャック「黙って見ていろ。パルティータ先生の本気の治療は簡単に見れるものじゃないぞ」

 

泰彦「本気の…治療……?」

 

 パルティータはペンダントとしてかけている黄金のラピスを握り、握っている手を患者の体に置いた。

 

パルティータ「ふんっ!」

 

 そして、パルティータは黄金のラピスの力で患者のガン細胞を一つ残らず死滅させたのであった。

 

パルティータ「もう終わりよ。患者のガン細胞はきれいさっぱり死滅させたわ」

 

泰彦「もう終わりだと!?な、何をやったんだ!?」

 

沙織「パルティータは錬金術の秘奥、賢者の石の力でガン細胞を死滅させたのです」

 

泰彦「錬金術!?まさか、パルティータ先生が世界一のガン治療のスペシャリストというのは…」

 

沙織「そうです。賢者の石でガン細胞を綺麗さっぱり死滅させ、数年で再発しないようにしているからなのです」

 

 なぜ、パルティータが治療したガン患者が数年で再発した人がいなかった理由に泰彦は驚いた。

 

泰彦「ま、まさか錬金術が実在していたとは…!」

 

影斗「白拍子君、世界というのは広く、そして裏の世界という未知の世界もあるのですよ。まあ、異端技術の錬金術は表に出る事はなかったので、表の世界の人間である君は存在を信じていなくても無理はありませんが…。それに、パルティータ君の錬金術医療はただ病巣を完全に消すだけでなく、手足や臓器の移植や再生さえもできるのです。患者役を引き受けた際も錬金術で意図的にガンの状態にし、その後に錬金術でガン細胞を死滅させ、自律神経の修復を行ったのです」

 

泰彦「な、何だとォ!?最新科学による医療を超えた医療があったなんて……」

 

 科学こそ絶対だと思っていた泰彦にとって、本物の錬金術と遭遇した事により、錬金術を淘汰したと思っていた科学がまだまだ錬金術に劣っていた事を痛感した瞬間であった。

 

ブラックジャック「世の中、上には上がいるもんだ。お前さんも嫌って程わかっただろ?」

 

泰彦「こんなものを見せつけられたら、嫌という程わかる…。錬金術への認識が甘かった…」

 

史子「でも、これ程の凄まじい錬金術による医療の技術を持ちながら、それに溺れないで錬金術を使わない自前の手術の腕で大概の事ができるパルティータ先生は素晴らしい人だと思います」

 

パルティータ「うふふっ、余程の事がない限り錬金術を使わないのは、正体を隠すためでもあるのよ」

 

泰彦「だが、科学は進歩している。いつか、錬金術を超える日が来るはずだ!」

 

影斗「そうかも知れませんね。今日は色々な事があって、素晴らしい勉強になったはずですよ、白拍子君」

 

泰彦「り、理事長…。理解を超えた事が続いて、とても疲れた……」

 

 カンサーハンターの欠陥が見つかってそのために嫌っているブラックジャックに頼みに行き、果てには自分の常識を超えた錬金術を目の当たりにしたりとハプニングと常識を超えた出来事の連続で泰彦の頭はパンク寸前になり、力なく座り込んだのであった。

 

 

 

史子「それ以来、白拍子先生は理事長の事を見直したり、錬金術の存在を認めるようになったの」

 

切歌「凄い事のオンパレードなのデス!」

 

セレナ「何でも治療できちゃう錬金術医療って凄い!」

 

マリア「私達もスカイホスピタルに乗せてもらっていいかしら?」

 

史子「いいわよ」

 

 記者の中に怪しい人間がいる事を察した影斗は沙織に耳打ちした。

 

影斗「では、頼みましたよ」

 

 それに沙織と美衣、パルティータは頷いた。

 

泰彦「さあ、間もなくお見せしよう。代表の記者は」

 

パルティータ「すみません、ちょっと代表の記者さんの用があるのですが…」

 

記者?「俺達に…?」

 

 笑みを浮かべてパルティータは怪しい記者に近づき、容赦なく殴り飛ばした。

 

記者?「ぐあっ!」

 

泰彦「パルティータ先生、記者の代表に何を」

 

パルティータ「白拍子君、こいつらはテロリストなの」

 

泰彦「テロリストだって!?」

 

パルティータ「あんた達、中東系のテロリストのようね。化けの皮を被っても、私達を誤魔化せると思ったら大間違いよ!」

 

テロリスト「てめえら、正体がバレたからには全員生かしては」

 

 正体を見破られた事でテロリスト達はヤケになって銃を乱射しようとしたが、その瞬間にパルティータによってテロリスト全員が腕や足をへし折られ、建物目掛けて放り投げられるなどの大怪我を負わされて無力化された。

 

パルティータ「大人しくしなさい。でないと…お前達のような平和を乱すゴミは殺す!」

 

 パルティータに大怪我を負わされ、殺気で心を折られたテロリスト達は観念し、駆け付けた警察に逮捕された。

 

 

 

スカイホスピタル

 

 テロリスト達は逮捕され、改めて一同はスカイホスピタルに乗り込んで中を見る事となった。

 

セレナ「うわあっ、まさに空飛ぶ病院だよ!」

 

調「こんな飛行機に乗るのは初めて…」

 

泰彦「史子君が招いた一般人の君達も乗り心地がいいというのか。よし、君達も一緒に案内しよう」

 

 泰彦は一同を案内する事にした。

 

史子「このスカイホスピタルは総合病院の機能を丸ごと積んでいるのです。内科や外科、歯の治療や目の治療だってできます」

 

ブラックジャック「なるほど。このスカイホスピタルは理事長が評価したのは間違いではないようだな」

 

泰彦「ようやくわかったか。それより、さっきテロリスト達を無力化した時のパルティータ先生の殺気は一体?とても医療に関わる人のものとは思えなかった…」

 

沙織「パルティータは錬金術師ですが、同時に聖闘士でもあるのです」

 

泰彦「聖闘士?この世に邪悪が蔓延る時、必ず現れる希望の闘士の聖闘士!?とすると、彼女は聖闘士であり、錬金術師でもあり、医者でもあるというのですか!?沙織お嬢様!」

 

沙織「その通りです」

 

 パルティータが錬金術師であり、聖闘士でもある事にまたしても泰彦は驚いた。

 

ブラックジャック「今回のMVPはお前さんだな、パルティータ先生」

 

パルティータ「いえ、私はハイジャックされないようにしただけよ」

 

影斗「スカイホスピタルは評価すべきところはたくさんありますが、セキュリティや非常用電源などの課題がまだまだありますよ」

 

泰彦「それは上司にも指摘されました…」

 

影斗「まあ、初めてにしては上出来でしょう。後はそれらを改善すれば、より素晴らしいものになるはずですよ。君の頑張りを君のお母さんや患者の皆さんに伝えるので、しっかり頑張ってくださいね、白拍子君」

 

泰彦「はい!」

 

 カンサーハンターの欠陥が見つかった日以来、頭は上がらないものの、恩師でもある影斗が自分に期待しているのを理解した泰彦であった。




これで今回の話は終わりです。
今回はお坊ちゃん医師の白拍子や前の話で出てきた新しい医師連盟の理事長、影斗の登場を描きました。
今回の話はブラックジャック原作の腫瘍狩りがベースで、それにアニメのスカイホスピタルが出て来たりするのを描いています。
影斗は声や姿はプリキュア5のカワリーノそっくりにイメージして描いて、患者を治すためなら手段を選ばない人物として描いています。度々出てきた前の理事長は原作に出てきた日本医師連盟の理事長であり、今小説では原作では報復、アニメ版では医師免許が返る日の後に影斗に無能ぶりを紛糾され、蹴落とされたという事にしています。
白拍子はアニメ版のように科学を絶対視しているが故に錬金術の存在を信じておらず、現代科学を超えた錬金術の医療を見て驚きまくる役回りになっています。
次の話はピノコ誕生で、装者達がピノコの秘密を知る事となります。

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