セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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134話 それはとっても嬉しいなって

ショッピングモール

 

 響と未来と共にまどかとさやかは逃げていた。

 

さやか「何よあいつ!今度はコスプレで通り魔かよ!?つーか、何それ?ぬいぐるみじゃないよね。生き物?」

 

まどか「わかんない。わかんないけど、この子、助けなきゃ!」

 

響「うん、急いで病院に」

 

 逃げているまどか達のところでも異空間に変わっていった。

 

さやか「あれっ、非常口は?どこよ、ここ!?」

 

まどか「変だよ、ここ。どんどん道が変わっていく」

 

さやか「ああ、もう!どうなってるのさ!」

 

まどか「あっ、何か、何かいる!」

 

 まどかの言葉通り、毛玉のような化け物たちが現れてまどかとさやかを取り囲み始めた。

 

さやか「じょ、冗談だよね…。私、悪い夢でも見てるんだよね!?ねえ、まどか!」

 

 うろたえるまどかとさやかであったが、響と未来が前に出た。

 

響「怯えなくていいよ。私と未来が戦うから、へいき、へっちゃらだから!」

 

さやか「へいき、へっちゃらって…」

 

未来「私達には戦う力がある。だから、大丈夫だよ」

 

 2人はシンフォギアクリスタルを構えた。

 

響「Balwisyall nescell gungnir tron」

 

未来「Rei shen shou jing rei zizzl」

 

 歌を唄い、2人はシンフォギアを纏ったのであった。

 

さやか「な、何?セーラームーンとかプリキュアみたいなアレ…?」

 

まどか「急に歌ってる…」

 

響「まどかちゃんとさやかちゃんには」

 

 怪物達と戦おうとしたそんな中、まどか達の足元に不思議な光が出現した。

 

さやか「あ、あれ?」

 

未来「これは…?」

 

響「どうなってるの!?」

 

???「危なかったわね。でも、もう大丈夫」

 

 声と共に見滝原中の制服の少女が現れた。

 

少女「あら、キュゥべえを助けてくれたのね。ありがとう。その子は私の大切な友達なの」

 

まどか「私、呼ばれたんです。私の頭の中に直接この子の声が」

 

少女「ふーん、なるほどね。その制服、あなた達も見滝原中の生徒みたいね。2年生?」

 

さやか「あなたは…?」

 

少女「そうそう、自己紹介しないとね。でも、その前に……、ちょっと一仕事片付けちゃっていいかしら?」

 

 少女はステップを踏みながら持っていた宝石を前に掲げると、宝石が輝き、少女は黄色の光と共にブラウスとコルセットを組み合わせたような服装へと姿を変えた。

 

響「あれって、シンフォギア?それとも、ファウストローブ?」

 

未来「わからないよ」

 

 少女はそのまま戦おうとしたが…。

 

響「私達も戦います!」

 

少女「あなた達、使い魔と戦えるの?」

 

未来「あの化け物は使い魔というのですか。だったら、戦った経験があります」

 

響「それに、誰かを助けずにはいられないので!」

 

少女「もう、しょうがないわね。一緒に戦いましょう」

 

 響は格闘技で次々と使い魔を蹴散らし、未来はビームで蹴散らし、少女は高いジャンプをしてしばらくすると、いつの間にか無数のマスケット銃が現れ、その銃口をまどかとさやかの周りにいる使い魔に向け、一斉に発射し、蹴散らした。

 

まどか「凄い…!」

 

 その時、異空間が歪んでいって元の空間に戻った。

 

さやか「も、戻った」

 

少女「あなたは魔法少女ではないみたいね。その鎧みたいなものは何かしら?」

 

響「えっと…」

 

 そこへ、翼達が駆け付けた。

 

翼「立花、小日向、お前達は大丈夫か?」

 

未来「はい。まどかちゃん達も無事です」

 

少女「あなた達はあの2人の仲間かしら?」

 

マリア「ええ、そうよ」

 

 だが、ほむらの登場で場の雰囲気が変わった。

 

少女「魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いかけなさい。今回はあなたに譲ってあげる」

 

ほむら「私が用があるのは…」

 

少女「呑み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの。お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」

 

 しばらくの沈黙の後、辛そうな表情でほむらは去っていった。

 

クリス「行っちまったな」

 

少女「あなた達は何者なの?」

 

マリア「自己紹介が必要ね」

 

 響達は自己紹介した。

 

マミ「立花さんに小日向さん、風鳴さんに雪音さん、マリアさんに月読さんに暁さんね。私は巴マミ、見滝原中の3年生よ」

 

切歌「はえっ!?マリアよりちょっと年下ぐらいだと思ってたのデス!」

 

マミ「制服を着てない時はよく年齢を間違えられますよ」

 

 そして、マミは淡い光で白い生物の傷を治した。

 

???「ありがとう、マミ。助かったよ」

 

マミ「お礼はこの子達に。私は通りかかっただけだから」

 

キュゥべえ「どうもありがとう!僕の名前はキュゥべえ」

 

まどか「あなたが…、私を呼んだの?」

 

キュゥべえ「そうだよ。鹿目まどか。それと、美樹さやか」

 

さやか「え、何であたし達の名前を?」

 

キュゥべえ「君達7人の名前もさっき聞いてたから紹介しなくていいよ」

 

マミ「あなた達もキュゥべえが見えるのね?」

 

響「はい」

 

調「キュゥべえ、とっても可愛い…!」

 

切歌「モフモフしたくなるデス!セレナに見せたら大喜びしそうなほど可愛いのデス!」

 

 早速、切歌はキュゥべえをモフモフしたのであった。

 

キュゥべえ「ちょっと、苦しいよ!」

 

切歌「あ、ごめんなさいデス!」

 

マリア「どうして私達にもあなたが見えるの?」

 

キュゥべえ「それは後で教えてあげるよ。僕は2人にお願いがあって来たんだ」

 

まどか「お願い?」

 

キュゥべえ「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」

 

 『魔法少女』という言葉にまどかとさやかはポカンとなり、響達も驚いていた。

 

響「魔法少女って、アニメとかのアレだよね?」

 

未来「うん。でも、どういうものなのかな?」

 

翼「だが、異変に関しての収穫は多少はあった。櫻井女史の家に行き、情報交換を行おう」

 

クリス「それと、マミって言ったな。お前も魔法少女なのか?」

 

マミ「はい」

 

 

 

了子の家

 

 大人数であるため、一行は郊外にある了子の家で色々聞く事にした。そんな響達にマミはキッチンを使わせてもらってケーキを振る舞った。

 

マミ「すみません、キッチンを使わせてもらって」

 

了子「いいのよ。2人暮らしにしては広すぎて持て余していたところだから」

 

さやか「それより、弦十郎先生の奥さんがこんなに美人でナイスバディなんて!」

 

了子「そうでしょ?マミちゃんも大人になったら、私にも負けないぐらいのナイスバディになれるわ!」

 

 そう言って了子はマミの胸をつんつんした。

 

マミ「ひゃん!了子さん、私の胸を触らないでください!」

 

了子「女同士だし、いいでしょ?」

 

 響達はケーキを食べていた。

 

響「とってもおいしい!」

 

調「私が作るケーキよりおいしいかも…」

 

 そこへ、弦十郎が来た。

 

まどか「弦十郎先生!おじゃましてます!」

 

弦十郎「まどか君にさやか君、マミ君ではないか。どうしてここに?」

 

了子「2人と響ちゃん達が遭遇した異変についてマミちゃんから聞く事になってるから、家に来たの」

 

弦十郎「そうだったのか。ではマミ君、頼むぞ」

 

マミ「キュゥべえに選ばれた以上、あなた達にとっても他人事じゃないものね。ある程度の説明は必要かと思って」

 

さやか「うんうん、何でも聞いてくれたまえ」

 

未来「さやかちゃん、それ逆……」

 

 微笑みながらマミは変身の際にも使っていた宝石を出した。

 

まどか「わぁ、綺麗!」

 

マミ「これがソウルジェム。キュゥべえに選ばれた女の子が契約によって生み出す宝石よ。魔力の源であり、魔法少女である事の証でもあるの」

 

さやか「契約って?」

 

キュゥべえ「僕は君達の願い事を何でも一つ叶えてあげる」

 

クリス「マジかよ!?」

 

調「本当に何でも叶えられるの?」

 

キュゥべえ「何だって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

 

弦十郎「俺がその立場だったら、迷ってしまうな…」

 

了子「そうよね~…」

 

さやか「う~む……、金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席」

 

マリア「さやか、ちょっと最後のはおかしいと思うけど…」

 

さやか「っていうか、了子さんと弦十郎先生までキュゥべえが見えるの?どうして?」

 

キュゥべえ「そもそも、僕が見えるのはこの世界では基本的に僕が選んだ人間か、魔法少女の素質を持った女の子だけなんだ。大人の女性や男は」

 

弦十郎「そんなものは俺と了子君が大人だからだ!」

 

 その暴論にさやかは『はぁ?』とでも言いたさそうな顔をしていた。

 

キュゥべえ「大人だからという理由で片づけるなんて、訳がわからないよ」

 

翼「それで、願い事を叶えた後に何をするのが契約なんだ?」

 

キュゥべえ「僕は君達の願い事っを何でも一つ叶えてあげる事ができる。そして、それと引き換えにできあがるのがソウルジェム。この石を手にした者は魔女と戦う使命を課されるんだ」

 

まどか「魔女?」

 

さやか「魔女って何なの?魔法少女とは違うの?」

 

キュゥべえ「願いから生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから生まれた存在。魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を撒き散らす。しかも、その姿は普通の人間には見えないからタチが悪い。不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういった禍の種を世界に齎しているんだ」

 

マミ「理由のはっきりしない自殺や殺人事件はかなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。形のない悪意となって、人間を内部から蝕んでいくの」

 

 異変の原因が魔女だとわかり、どうして今まで手掛かりを掴めなかったのかも判明して弦十郎と了子は納得した。そして、了子はキュゥべえを凝視していた。

 

了子「(あのキュゥべえってウサギ、何だか私の本能がそう訴えているのか、好きになれないし、ちょー怪しいと思うのよね~…)」

 

弦十郎「なるほど。だから、今まで俺達は遭遇できなかったわけだ」

 

さやか「そんなやばい奴等がいるのに、どうして誰も気づかないの?」

 

キュゥべえ「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んでいて決して人前には姿を現さないからね。さっき、君達が迷い込んだ迷路のような場所がそうだよ」

 

 まどかとさやかは魔女の結界の異様さを思い出して震えていたが、数々の戦いを潜り抜けてきた響達は不思議に思っているだけだった。

 

マミ「結構、危ないところだったのよ。あれに?み込まれた人間は普通は生きて帰れないから」

 

まどか「マミさんはそんな怖いものと戦っているんですか?」

 

マミ「そう、命がけよ。だから、あなた達も慎重に選んだ方がいい。キュゥべえに選ばれたあなた達には、どんな願いでも叶えられるチャンスがある。でも、それは死と隣り合わせなの」

 

さやか「うーむ、悩むなぁ…」

 

マミ「そこで提案なんだけど…、9人とも、しばらく私の魔女退治に付き合ってみない?」

 

まどか&さやか「ええ!?」

 

マミ「魔女との戦いがどういうものか、その目で見て確かめてみればいいわ。その上で、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの」

 

 しかし、弦十郎らは納得していなかった。

 

弦十郎「俺は反対だ。俺達教師は生徒の安全を守らなければならない以上、マミ君達だけで魔女の結界に行かせるわけにはいかない。どうしても行きたいのなら、俺も同伴させるのが条件だ」

 

マミ「弦十郎先生…。ですけど、先生では」

 

響「師匠はとっても強いんだよ!」

 

切歌「シンフォギアを纏った状態のあたし達でさえ全く勝てないほどとんでもなく強いのデス!」

 

響「震脚でアスファルトを粉々にしたり、発勁で衝撃を掻き消したりできるんだよ」

 

 その言葉にいくら学校を占拠しようとしたテロリスト達をボコボコにした経歴があるとはいえ、まどかとさやかとマミは衝撃を受けた。

 

さやか「先生、それはマジでできるの!?」

 

弦十郎「ああ、できるぞ。まどか君達に襲い掛かる使い魔も魔女も叩き潰してやる!」

 

さやか「あ、それとあの転校生も魔法少女なの?マミさんと同じ」

 

マミ「そうね、間違いないわ。かなり強い力を持ってるみたい」

 

未来「どうしてほむらちゃんはまどかちゃんを襲ったのかな?」

 

キュゥべえ「彼女が狙ってたのは僕だよ。新しい魔法少女が生まれる事を阻止しようとしてたんだろうね」

 

響「何で?同じ敵と戦うのなら、一緒に戦う人は多い方がいいのに…」

 

マミ「それが、そうでもないの。むしろ、競争になる事の方が多いのよね」

 

まどか「そんな、どうして?」

 

マミ「魔女を倒せばそれなりの見返りもあるの。だから、時と場合によっては手柄の取り合いになってぶつかる事もあるのよね」

 

さやか「つまり、あいつはキュゥべえがまどかに声をかけるって最初から目星をつけてて、それで朝からあんなに絡んできたってわけ?」

 

マミ「多分、そういう事でしょうね」

 

響「だとしても、100%分かり合えないわけではないですよね!?」

 

 響の言葉にマミも困惑した。

 

マミ「ま、まあ立花さんの言う通り、100%ぶつかるわけではないのだけどね…」

 

翼「(立花らしい考えだ)」

 

マリア「(私達も敵同士の関係だったのが、あの子のお陰でこうやって一緒に戦う事ができるようになったのだからね)」

 

マミ「気になったのだけど、立花さん達のあの鎧みたいなものは何なのかしら?魔法少女じゃないのに使い魔と戦えていたから、気になったわ」

 

了子「それは私が説明するわね」

 

 初めて響が聞いた了子のシンフォギアの解説と同じ事をこの世界の了子は話した。しかし、まどか達はよくわからなかった。

 

まどか「やっぱり、よくわからないや…」

 

さやか「でも、ノイズとかいう魔女にも劣らないぐらいのヤバイ奴がいたのも驚いた!」

 

了子「まあ、ノイズは1世紀ぐらいに一度しか出てこないから、響ちゃん達が纏っているシンフォギアは試作品ってとこよ」

 

 並行世界の事を言わずに了子は自分が作った試作品と誤魔化したのであった。弦十郎がまどか達を送迎し、響達が寝た後に了子は1人、考え事をしていた。

 

了子「(魔法少女と魔女…。願いと呪い、希望と絶望、キュゥべえの言った事はどうも引っかかるわね。願いを祈りに置き換えてみれば、祈りと呪いは裏表、希望と絶望もどちらかを切っても切り離せない代物。とすると、魔女の正体は……)」

 

 早い段階で魔女の正体が何なのかを突き止めようとする了子であったが、重要なあるピースが欠けている事に気付いた。

 

了子「(だけど、欠けているピースがあるわね。それがはまれば……)」

 

 

 

マンション マミの部屋

 

 その後、まどか達は弦十郎が自宅の前まで送迎したのであった。そして、キュゥべえはマミの部屋のテーブルで考え事をしていた。

 

キュゥべえ「(魔法少女にならなくても使い魔や魔女とも戦えるシンフォギア…。いつの間にあんな未知の装備が出たんだろう…?)」

 

 シンフォギアはキュゥべえにとっても未知の代物であった。

 

キュゥべえ「(シンフォギア装者に暁美ほむら、そして規格外の大人達。やれやれ、こんなにもイレギュラーがいっぱいいると大変な事になりそうだ)」

 

 キュゥべえの視線の先には空に浮かんでいる杳馬がいた。

 

 

 

了子の家

 

 翌日、響達は朝食をとっていた。

 

響「未来は何でも願い事が叶うなら、何がいい?」

 

未来「私は何もないよ。響と共に過ごすこの日々が一番なんだから」

 

響「私も。強いて言えば、ご飯をたくさん食べたいぐらいだけど、沙織さんがよく連れて行ってくれるから、わざわざ叶える必要もないしね」

 

クリス「バカは食う事しか考えてねえのかよ!」

 

翼「私もないな。並行世界で奏と再び会う事もできたし、どうしてもという願い事はない」

 

マリア「私達もそんなものはないわ。並行世界でセレナやマムとまた会う事ができたのだから」

 

切歌「それに、あたし達にはシンフォギアという力があるから、魔法少女になるメリットはゼロなのデス!」

 

調「そうだね、切ちゃん」

 

 ほとんどの装者にはどうしてもという願い事はないのだが、クリスだけは違った。

 

クリス「(願い事、か…。パパとママにまた会えたらな…。って、あたしは何を考えてるんだ?)」

 

マリア「それに、こういった事は後で何か罰が当たるかも知れないから、しない方がいいのかも知れないわ」

 

翼「それに、キュゥべえはどうも怪しい。生きているような感じがしないし、安易に信じるのはよくないだろう」

 

調「マリア、魔法少女や魔女といった事がわかったから、切ちゃんと本部に報告しに行ってくるね」

 

マリア「ええ。魔女の結界はそう簡単には出られる代物じゃないそうだから、報告できる時に報告した方がいいわ」

 

 そして、支度を終えた弦十郎が来た。

 

弦十郎「お前達は魔女による事件事故が起きないように市内を見回ってくれ」

 

 一同は報告のために元の世界に戻る切歌と調以外は出発した。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 切歌と調は報告した。

 

弦十郎「なるほど。魔法少女と魔女、それに使い魔か」

 

切歌「あの世界に行く前に戦った怪物が使い魔みたいなのデス」

 

沙織「では、あの巨大な怪物は魔女という事になるのですね?」

 

調「今の段階ではわかりません。ですが、そうかも知れないと思います」

 

弦十郎「あの魔女がどこにいるのかはまだ不明という事になるな。当面の間は魔女を倒しつつ、あの巨大な魔女の居場所を突き止めてほしい」

 

調「了解!」

 

 

 

ショッピングモール

 

 そしてまどか達は学校が終わり、弦十郎が保護者として同行してショッピングモールに来て、響達もそこに来た。

 

マミ「さて、それじゃあ魔法少女体験コース第一弾、張り切って行ってみましょうか。準備はいい?」

 

さやか「準備になってるかわからないけど、持ってきました!」

 

 言葉の後、布に包まれた何かをテーブルに勢いよく置いて布をとると、何かは金属バットだった。

 

さやか「何もないよりはましかと思って」

 

マミ「まぁ、そういう覚悟でいてくれるのは助かるわ」

 

さやか「まどかは何か持って来た?」

 

まどか「えっと…、私は…」

 

 まどかが用意してテーブルに置いたのは魔法少女になった時を考えた自分の衣装と魔法少女の服装のマミとほむらの絵が描かれたノートだった。それに響は反応したのであった。

 

響「(この世界に来る際に見かけた女の子と同じ服装だ!)」

 

まどか「と、とりあえず衣装だけでも考えておこうと思って…」

 

切歌「この衣装、とっても可愛いのデス!」

 

調「うん。セレナが見たら喜びそうだし、もっと似合うかも?」

 

まどか「その…セレナって人は誰なんですか?」

 

マリア「私の妹よ」

 

まどか「(マリアさんの妹さんかぁ…。どういう人か、会ってみたいなぁ…)」

 

マミ「うん、とりあえず意気込みとしては十分ね」

 

さやか「こりゃあ参った。あんたにゃ負けるわ」

 

弦十郎「よし、魔女退治に出発だ!」

 

 

 

 一同が向かったのは昨日、魔女の結界に入り込んだショッピングモールの改装エリアだった。

 

まどか「何をしてるのですか?」

 

マミ「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡。基本的に魔女探しは足頼みよ。こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配を辿っていくわけ」

 

さやか「意外と地味ですね…」

 

マリア「地味でも地道になっていかないとダメな事だって多いのよ」

 

 

 

市街地

 

 一同はショッピングモールを出て魔女を探し始めた。しかし、光は強くならなかった。

 

さやか「光、全然変わらないですね」

 

マミ「取り逃がしてから一晩経ってるからね。足跡も薄くなってるわ」

 

まどか「あの時、すぐ追いかけていたら…」

 

未来「敵を倒す事よりもまどかちゃん達の安全の方が大事だよ」

 

弦十郎「未来君の言う通りだ。命は失われたら戻ってこない。それだったら、敵の排除よりも君達を助けるのを優先したマミ君の判断は正しい」

 

まどか「弦十郎先生…」

 

マミ「弦十郎先生の言う通り、魔女を倒す事はあなた達を放っておいてまで優先する事じゃなかったわ」

 

さやか「うん、やっぱりマミさんは正義の味方だ!それに引き換え、あの転校生、ほんとにムカつくなあ!」

 

切歌「あたしもそうデス!響さんの声がまどかに似てるというだけでいちゃもんをつけるなんて、性根が腐っているのデス!」

 

弦十郎「切歌君達がそう思うのも無理はないが、親しい人と似た声で自分の嫌がる事を言われたら、余計に腹が立っても仕方ないだろう」

 

 ほむらの態度に怒るさやかや切歌達と違い、弦十郎は大人らしくほむらの視点での考えも察したのであった。その頃、OLの女性が廃ビルに向かっていた。

 

さやか「ねえ、マミさん。魔女のいそうな場所、せめて目星ぐらい付けられないの?」

 

マミ「魔女の呪いの影響で割と多いのは、交通事故や傷害事件よね。だから、大きな道路や喧嘩の起きそうな歓楽街は優先的にチェックしないと。後は、自殺に向いてそうな人気のない場所。それから、病院とかに取りつかれると最悪よ。ただでさえ弱っている人達から生命力を吸い上げられるから目も当てられない事になる」

 

 説明が終わった際、マミのソウルジェムの光の点滅が強くなっていた。

 

マミ「かなり強い魔力の波導だわ。近いかも」

 

クリス「いよいよ魔女とのご対面の時が近づきつつあるのか…」

 

 マミの言葉に響達も気を引き締めて歩き続け、そして、OLの女性が向かった廃ビルに来た。

 

マミ「間違いない。ここよ…」

 

さやか「マミさん、あれ!」

 

 さやかの言う通り上を見上げると、OLの女性が屋上から飛び降り自殺しようとしていた。

 

弦十郎「くっ!」

 

 急いで弦十郎は向かおうとしたが、先にマミが動いて魔法少女の姿に変身し、リボンを数本生やし、網のようにして女性を受け止めた。それから、一同は女性に駆け寄った。

 

弦十郎「これは…!俺が自殺や事故を止めた際、その止めた本人についていた模様だ!」

 

響「マミちゃん、これって…?」

 

マミ「魔女の口づけ…やっぱりね」

 

弦十郎「それがある人間は自殺などをするようになるんだな?」

 

マミ「理解が早くて助かります」

 

未来「この人は大丈夫ですか?」

 

マミ「ええ。行くわよ」

 

 一同が廃ビルの中に入るとマミのソウルジェムが反応し、大きさは違うものの、女性に浮かびあがっていた魔女の口づけと同じ紋章が階段の上に浮かんでいた。

 

マミ「今日こそ逃がさないわよ…」

 

 マミがさやかのバットを握ると、光とともにバットのデザインが変わった。

 

マミ「気休めだけど、これで身を護る程度の役には立つわ。絶対に私のそばを離れないで」

 

さやか「は、はい!」

 

 その光景を見た響はある事を思いついた。

 

響「マミちゃん、私達のギアも魔法で変化させる事は可能なの?」

 

マミ「シンフォギアを?できるかどうかわからないけど、やってみるわ」

 

 響の思いつきにマミは響達がギアを纏ってからとりあえず響に試してみると、響のギアが中国のカンフー娘の要素が前面に出た魔法少女っぽいギアに変わっていた。

 

響「うわぁ、ほんとにできちゃった!」

 

さやか「魔法少女っぽくなってる!」

 

マミ「シンフォギアって、どうなってるの?」

 

翼「シンフォギアは装者の心象や外部要因によって変化する心象変化という機能がある。水着とかクリスマス衣装などといった、色々な変化を私達は経験してきた」

 

さやか「シンフォギアってコスプレまでできちゃうの!?了子さんって、とんでもない代物を開発した超天才だよ!」

 

まどか「とすると、そのギアは魔法少女ギアって事になるんですか?」

 

響「そう命名しちゃおう!」

 

 すると、響の指に指輪としてついているソウルジェム型センサーが魔女の結界に反応した。

 

マミ「魔女まで探知できちゃうのね」

 

未来「私達も変化させてもらおうか」

 

 残りの面々のギアも変化させてもらった結果、未来は中国の術師、翼は日本の侍、クリスは胸の谷間が強調されているセクシー系の魔法少女っぽい服、マリアはスタイルを強調した姫騎士、切歌は死神、調は巫女の要素が出た魔法少女っぽい服装のギアに変化した。

 

切歌「あたし達も魔法少女になった気分デス!」

 

調「クリス先輩の服、とっても色っぽい魔法少女の服…」

 

クリス「あ、あたしがそんな恰好を心から望んでいたとでもいうのか!?」

 

弦十郎「話はここまでだ。今回はマミ君達以外では俺と響君と翼君、未来君にマリア君が結界に突入する」

 

クリス「あたしらは何かあった時に備えて待機、だな」

 

弦十郎「そうだ。では、行くぞ!」

 

 結界に突入するメンバーは魔女の結界に突入した。突入した後、紋章は消えてしまった。その光景をほむらはじっと見ていた。

 

 

 

魔女の結界

 

 突入した先は昨日と同じ見た事もない色と模様をした蝶が舞い、使い魔達が徘徊する異様な世界で、一同はその中を突き進んでいた。

 

翼「ふんっ!」

 

マリア「やあっ!」

 

 襲い掛かる使い魔をマミはマスケット銃で撃ち抜き、響と弦十郎は殴り、未来は扇からのビームで、翼とマリアは剣で次々と使い魔を蹴散らしていた。

 

まどか「す、凄い……!」

 

マミ「昨日もだったけど、魔法少女じゃないのに使い魔を倒すなんてとっても強いわね」

 

さやか「わわっ、く、来んな!」

 

 響達に負けずにさやかは使い魔が近づかないようにバットを振り回した。その後、一同は先へ進んだ。

 

マミ「どう?怖い?みんな」

 

翼「今更どうという事はない」

 

さやか「な、何って事ねえって!」

 

未来「まどかちゃんは怖いの?」

 

まどか「わ、私は…」

 

 マミの戦う姿に見とれていたまどかは答えなかった。しかし、マミ自身も少し恐怖を感じていたのを弦十郎は察したのであった。

 

まどか「(怖いけど…、でも…)」

 

キュゥべえ「頑張って!もうすぐ結界の最深部だ!」

 

 進んでいると使い魔が立ちはだかったが、マミは銃を召喚して撃破した。使い魔の後ろにあった扉がどんどん開いて行き、その先には巨大な空間があり、赤いバラが咲き、蝶の羽が生えた醜い怪物が待ち構えていた。

 

マミ「見て、あれが魔女よ」

 

さやか「うわ…、グロい…」

 

弦十郎「魔女っていうよりは…化け物だな」

 

 薔薇園の魔女、ゲルトルート。性質は不信。なによりも薔薇が大事。その力の全ては美しい薔薇のために。結界に迷い込んだ人間の生命力を奪い薔薇に分け与えているが、人間に結界内を踏み荒らされることは大嫌い。ゲルトルートの異様な姿にさやかとまどかは怖気づいていたが、響達は動じなかった。

 

まどか「あんなのと戦うんですか…?」

 

マミ「大丈夫。負けるもんですか」

 

 安心させるように語り、さやかのバットを持って地面に突き立てると、マミと非戦闘員のまどかとさやかの間に光のリボンの壁が形成された。

 

マミ「下がってて」

 

響「マミちゃん、私達も」

 

マミ「大丈夫よ。万一の事があったらちゃんと呼ぶからね」

 

弦十郎「今回はマミ君の実力がどれほどのものか見せてもらう」

 

 そして、弦十郎は妻の了子からキュゥべえが怪しい事を教えてもらったのか、キュゥべえを横目で見ていた。壁を形成した後、マミはその場から飛び降りて使い魔を踏みつぶした。すると、それに気づいたのか、ゲルトルートが顔をマミの方へ向けた。マミの方もスカートの裾を少し上げると、マスケット銃が二丁出てきた。

 

 ゲルトルートは先手を打って椅子をマミへ向けて飛ばすが、マミは椅子をよけながら銃の狙いを椅子に定めて破壊した。その後、帽子をとってから無数のマスケット銃が召喚された。蝶の羽で辺り一面を動き回るゲルトルート狙いを定め、次々とマミはマスケット銃を手にして撃っては次の銃を手にして撃つ事を繰り返した。ところが、攻撃を続けている際、使い魔達がマミの足元に集まり、黒い蔓のようなものに合体変化してマミに巻き付いた。拘束を解こうとマミは銃を撃つが、蔓には当たらずに地面に当たった。蔓はマミを壁に叩き付けた後、逆さに吊り上げた。

 

まどか「マミさん!」

 

翼「大丈夫だ、鹿目。マミは余裕の様子だぞ」

 

マリア「本当に危なくなったら、私達も加勢するからね」

 

 響達はいつでも加勢できるように準備を整えていたが、マミの表情は変わらなかった。

 

マミ「大丈夫。未来の後輩にあんまり格好悪いところ見せられないものね」

 

 安心させる言葉と共に銃弾がめり込んだ穴からリボンが現れて辺り一面の薔薇を散らした。薔薇園を荒らされる光景を見たゲルトルートと使い魔達はうろたえはじめた。その隙に無数のリボンがゲルトルートを拘束した。

 

マミ「惜しかったわね」

 

 胸元のリボンをとったあと、そのリボンでマミは蔓を切り、地面に落ちる際に体勢を立て直してリボンを大砲みたいな巨大な銃に変化させて狙いをゲルトルートに定めた。

 

マミ「ティロ・フィナーレ!」

 

 巨大な銃から光弾が放たれてゲルトルートに直撃し、ゲルトルートは消滅した。その場所に黒い宝石みたいなものが落ちて、それと同時にマミも華麗に着地して紅茶を飲んだ後、一同に微笑んだ

 

未来「凄い…!」

 

マリア「敵の拘束して動きを封じ、締めに強烈な一撃。やるじゃない、マミ」

 

 

 

市街地

 

 魔女が消滅してしばらくした後、結界も消えて元の廃ビルの風景になった。

 

クリス「どうやら、魔女は倒せたようだな」

 

 それから、マミは黒い宝石を手にした。

 

マミ「これがグリーフシード、魔女の卵よ」

 

さやか「た、卵…?」

 

マミ「運がよければ、時々魔女が持ち歩いている事があるの」

 

調「だったら、壊さないと」

 

キュゥべえ「大丈夫。その状態では安全だよ。むしろ、役に立つ貴重な物だ」

 

マミ「私のソウルジェム、夕べよりちょっと色が濁っているでしょ?でも、グリーフシードを使えば、ほら」

 

 先程手に入れたグリーフシードをマミのソウルジェムに近づけると、ソウルジェムから黒い霧みたいなものが出て、グリーフシードに吸い込まれた。

 

切歌「綺麗になったのデス!」

 

マミ「ね。消耗した私の魔力も元通り。前に話した魔女退治の見返りっていうのが、これ」

 

響「だから、魔法少女同士で衝突するんだね…」

 

 説明を終えた後、マミはグリーフシードを目の前の通路に放り投げた。放り投げたグリーフシードは誰かが受け止めるような音がして、通路からほむらが出てきた。

 

マミ「あと一度ぐらいは使えるはずよ。あなたにあげるわ、暁美ほむらさん。それとも、人と分け合うんじゃ不服かしら?」

 

ほむら「あなたの獲物よ。あなただけのものにすればいい」

 

 受け止めたグリーフシードをほむらは投げてマミに返した。

 

マミ「そう……それがあなたの答えね」

 

 ピリピリした雰囲気になってしばらくしてからほむらは変身する事なく去って行った。

 

さやか「く~!やっぱり感じ悪い奴!」

 

まどか「仲良くできればいいのに…」

 

響「だとしても、手を伸ばし続ければきっとできるはずだよ」

 

まどか「響さん…」

 

未来「そうだね。響が言った通り、手を伸ばし続けないと手を取り合える人達とも分かり合えないよ」

 

 まどかの言った事を響と未来は肯定したのであった。そして、OLを一同は励ましたのであった。

 

 

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回はみんな大好きマミさんの登場と作中最初に登場した魔女、ゲルトルート戦を描きました。
今回登場した魔法少女ギアに関しては、シンフォギアが魔法少女っぽい衣装に変化しているのが特徴で、ソウルジェム型魔力センサーもあります。
ぶっちゃけ、魔法少女ギアはまどかマギカの世界観に合わせて考えた特殊ギアで、響と未来は中華、翼と調は和、残りはイメージ優先にしました。
次の話はいよいよまどかマギカ第一のみんなのトラウマ、『もう何も怖くない』ですが、マミさんの死亡回避展開はもう考えています。

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