セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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141話 本当の気持ちと向き合えますか?

了子の家

 

 杏子をマミのところに降ろした後、了子達は自宅に帰った。

 

弦十郎「そうか、杏子君は俺達に協力してくれるんだな?」

 

クリス「ああ。魔女に遭遇したけど、大食いと力を合わせて倒す事ができた」

 

弦十郎「それはよかった」

 

響「杏子ちゃんはどこにいるの?」

 

翼「櫻井女史が巴の住んでいるマンションの前に降ろし、当面の間は巴の部屋に泊まるそうだ。巴は佐倉が来たのを知って喜んでいたぞ」

 

了子「それは当然よ。疎遠になっていた後輩が戻ってきたのだからねぇ」

 

マリア「これで、私達と協力関係にある魔法少女は3人になったわね」

 

切歌「あたし達は魔女や他の街の魔法少女をやっつけるのデス!」

 

調「うん。また他の街の魔法少女がマリアに魔法熟女って言ったら、叩き潰す…!」

 

 静かに怒気を燃やすマリア達であった。

 

弦十郎「響君達は報告を終えたそうだが、何か重要な事でも聞いてきたのか?」

 

未来「はい。仁美ちゃんを事故に巻き込ませ、さやかちゃんを契約に走らせた黒幕は杳馬だとわかりました」

 

了子「杳馬?」

 

響「元々は別の並行世界にいた人でなしだよ!」

 

未来「事態の悪化させたりするのを楽しむ上に途方もなく強い愉快犯で、私達に何度も立ちはだかったんです」

 

弦十郎「それ程までに恐ろしい男が事態を悪化させていたとは…!」

 

クリス「よりにもよって、あの愉快犯が来たのかよ!」

 

了子「とりあえず今日は遅いから寝なさい。また次の日辺りにでもどうすべきかを考えましょ」

 

 響達は寝る事となった。

 

弦十郎「まさか、とんでもなく危険な男がキュゥべえと手を組んでいたとはな…」

 

了子「けど、杳馬は事態の悪化などを楽しむ愉快犯。感情がなくてとことん契約とかの事しか頭にないキュゥべえ。そいつらが手を組んでも、互いを理解し合おうともせずに利用し合う上辺だけの協力関係にしかならないわ」

 

弦十郎「そうだな。利害だけで繋がっている関係である以上、簡単に破綻しやすくもある」

 

了子「(杏子ちゃんの願い事の件を聞いて思ったけど、やっぱりキュゥべえに叶えてもらった願い事は裏目に出る傾向にあるわね。マミちゃんが危うく食われそうになり、杏子ちゃんがそうなったとすれば、さやかちゃんの願い事も近いうちに……)」

 

 杏子の話を聞き、了子はさやかの願い事も裏目に出る日が近い事を察したのであった。

 

 

 

ブラックジャックの家

 

 恭介のリハビリの経過終了と仁美の精密検査が終わったブラックジャックは元の世界にある自宅に帰ってきていた。

 

ピノコ「ちぇんちぇはへいこうちぇかいでしじゅつはどうだったのしゃ?」

 

ブラックジャック「恭介の手術は成功さ。ただ、仁美の手術は助かる可能性は3%程度だったが、どんな願いも一つだけ叶える代わりに魔女という怪物と戦う事になるキュゥべえとの契約をさやかが行った事で手術せずに助かった」

 

ピノコ「しじゅつせずに!?アッチョンブリケ!!」 

 

 並行世界での出来事は並行世界へ行けないピノコにとってすさまじく衝撃的な事であった。

 

ピノコ「ピノコもそのちぇかいに行きたかった!!そして、願い事を叶えたかった……」

 

ブラックジャック「ピノコの並行世界へ行って願い事を叶えたいという気持ちはわかるが、俺としてはその契約を行うキュゥべえはどうも怪しいんだ」

 

ピノコ「どうちて?」

 

ブラックジャック「正直、どんな願いも叶うっていうのは都合が良すぎる。こういったのは基本的に真面目に叶えようとしてくれなかったり、そもそも嘘だったりというケースが多い」

 

ピノコ「でも、ちぇんちぇがしじゅつするはずだった子って、助かったってちぇんちぇは言ったのよしゃ」

 

ブラックジャック「確かに、どんな願いも叶うというのは事実のようだ。だが、仮に願い事を叶える代償は魔法少女として戦う以外にもあると思っている」

 

ピノコ「だいちょう?」

 

ブラックジャック「ああ(それに、妙な胸騒ぎがする…。明日、並行世界へ行ってみるとするか……)」

 

 

 

ショッピングモール

 

 見回りに行った響達であったが魔女は見つからず、ちょうど夕方が近づきつつあったため、魔女が出没する可能性があるショッピングモールにやってきた。響達の様子をほむらは気付かれないようにこっそり見ていた。

 

ほむら「(この時間軸、今までの時間軸以上にイレギュラーな事が多すぎる!銃弾が通じず、単純な戦闘能力は魔法少女をも凌駕する鎧を纏う立花響達、風鳴弦十郎を初めとした魔法少女の事件に関わるようになった大人達、そして上条恭介の手を治したブラックジャック、もしかすると、この時間軸でならまどかを…)」

 

 この時間軸でならまどかを救えるかも知れない、そんな希望が湧いていたほむらはふと、響達と共に戦えばという考えが過ぎった。

 

ほむら「(な、何を考えていたの!?あの能天気な女と一緒に戦いたくない!私は今までどうやっても運命を変えられなかったのに、立花響達と大人達はどんどん運命を変えていっている!もう誰にも頼らないと決めた私がバカを見てるようじゃない!)」

 

 誰にも頼らないと決めたほむらにとって、響達は自分の今までの行動すべてを完全に否定する存在であった。そんな事を響達は一切知らず、休息していた。

 

調「今日も魔女は見当たらなかったね」

 

切歌「それだけ、あたし達が魔女を狩り尽くした証なのデス!」

 

未来「だけど、魔女ってどこから湧いてくるのかな?」

 

 ふと、未来が思っていた疑問を口に出すと、一同は今まで魔女がなぜ湧いてくるのか想像した事さえなかった事に気付いた。

 

翼「小日向の言った通り、どのように魔女が湧いてくるのか考えた事さえなかったな…」

 

マリア「キュゥべえは呪いから生まれると言ってたけど、具体的にどのように生まれてくるのか一度も説明しなかったわ」

 

切歌「どうせキュゥべえになぜ話さなかったのかって言っても、自分は悪くない感じの澄ました顔で返してくるに決まっているのデス!」

 

調「腹が立つから、キュゥべえを見かけたら八つ裂きにしたい…!」

 

 自分達の価値観が異なる上、違う価値観を理解しようともしないキュゥべえには装者全員が殺意を抱いていたのであった。

 

響「見かけたら話なんて聞かずにぶっ潰そう!」

 

 ふと、近くにさやかと仁美がいる事に一同は気付いた。

 

響「さやかちゃん、何をしてるんだろう…?」

 

 響達は話を聞いてみる事にした。

 

さやか「それで、話って何?」

 

仁美「恋の相談ですわ」

 

 その言葉に響達も驚いていた。

 

仁美「私ね、前からさやかさんやまどかさんに秘密にしてきた事があるんです」

 

さやか「え……?」

 

仁美「ずっと前から……私、上条恭介君の事、お慕いしてましたの」

 

 仁美が放った言葉にさやかは衝撃を受けていた。

 

さやか「……そ、そうなんだ。あははは……まさか、仁美がねぇ……。なーんだ、恭介の奴も隅に置けないなぁ(嘘……ではないみたい…。看護師さん達の話でも、仁美の苗字が出てたみたいだし……)」

 

仁美「さやかさんは、上条君と幼馴染でしたわね?」

 

さやか「うん、まぁその……腐れ縁というか、何と言うか……」

 

仁美「本当にそれだけ?」

 

 ただでさえ魔法少女の身体の件で動揺がまだ残っていたさやかはいかにも動揺が見え見えな様子になった。

 

仁美「私ね、決めたんですの。もう自分に嘘はつかないって。あなたはどうですか?さやかさん、あなた自身の本当の気持ちと向き合えますか?」

 

さやか「な、何の話をしてるのさ……?」

 

仁美「あなたは私の大切なお友達ですわ。だから、抜け駆けも横取りするような事もしたくないんですの。上条君を見つめていた時間は、私よりさやかさんの方が上ですわ。だから、あなたには私の先を超す権利があるべきです」

 

さやか「仁美……」

 

仁美「私、明日の放課後に上条君に告白します。丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは、後悔なさらないよう決めてください。上条君に、気持ちを伝えるべきかどうか」

 

さやか「……あ、あたしは……」

 

 気が動転したさやかは思わず席を外し、帰ったのであった。そのさやかの様子を仁美はまずい事をしてしまった様子で見ていた。

 

響「仁美ちゃん…、さっきの聞いてたけど、やっぱり……」

 

仁美「……私は何かまずい事をしてしまったみたいですね。弦十郎先生に相談してきます」

 

マリア「それだったら、私達も用があって行くところなの。一緒にどう?」

 

仁美「そうさせていただきます」

 

 マリアと翼とクリスは仁美と共に弦十郎のところへ向かい、残った響達は隠れていた慎次と共にさやかの方へ向かった。

 

 

 

市街地

 

 マリア達は見回りも兼ねて弦十郎の元へ向かっていた。

 

仁美「いつも見回りご苦労様です」

 

翼「これも、私達のやるべき事だからな」

 

 マリアが車を運転し、市内を通っている最中、マリアに魔法熟女と言った魔法少女がいるのを発見した。

 

マリア「どうしたのかしら?」

 

 気になって一同は降り、様子を見に来た。

 

クリス「お前、こんなとこで蹲ってどうしたんだ?」

 

魔法少女「……もう、私には希望なんてないの…」

 

 その魔法少女が持っているソウルジェムは真っ黒に濁っていた。

 

翼「ソウルジェムが、こんなにも!?」

 

マリア「急いでグリーフシードで」

 

魔法少女「もう遅いのよ。やっぱり、大人をバカにした私達が愚かだった。願ったのに、裏切られてもう何もない…。私って、ほんとバカ……」

 

 絶望と共にソウルジェムが砕け、凄まじいエネルギーの奔流が発生した。

 

仁美「な、何なのですか!?」

 

クリス「あたしらに聞かれてもわかんねえよ!」

 

 そして、4人は結界に引きずり込まれた。

 

 

 

魔女の結界

 

 引きずり込まれた結界はライブ会場で、マイクの姿をした使い魔とアイドルの衣装をした魔女がいたのであった。

 

マリア「ここは魔女の結界!?」

 

翼「さっき、ソウルジェムから何かが出てきたような…」

 

仁美「しっかりしてください!」

 

 巻き込まれた仁美は変身が解け、倒れた魔法少女を起こそうとしたが、起きなかった。念のため、脈があるかどうかも見てみたが、脈がなかった。

 

仁美「……この人、死んでいます!」

 

クリス「死んでるだと!?」

 

翼「ソウルジェムが失われたとなれば、完全に死んだとしか言いようがない…」

 

マリア「とにかく、今はあの魔女を倒すのが先よ!あなたはどこかに隠れて!」

 

仁美「わかりました!」

 

 仁美は戦いの邪魔にならないよう、物陰に隠れた。

 

クリス「先輩もマリアもさっさと決めるぞ!」

 

翼「雪音、お前のミサイルで私達を一気に敵の懐に送ってほしい!」

 

 その頼みにクリスは頷き、翼とマリアをミサイルに乗せて魔女の懐へ送り込んだ。

 

マリア「これで決めるわよ!!」

 

 マリアと翼の攻撃を連続で受け、魔女はあっさり倒され、グリーフシードを回収した。

 

 

 

市街地

 

 そして結界は崩れ、元の場所に戻ってきたが、死体となった魔法少女は結界が崩れた際に共に消滅した。

 

マリア「……これはグリーフシード。あの時、ソウルジェムの中から出たのは…」

 

???「まさか、君達がこの光景を目の当たりにしてしまうとはね。撹乱のために他の街の魔法少女を呼んだのが裏目に出たようだ」

 

 声の主はキュゥべえであった。

 

仁美「白い…ウサギさんのような生き物が…?」

 

クリス「どういう事だ!?ソウルジェムからグリーフシードが出てくるなんて聞いてねえぞ!」

 

キュゥべえ「ソウルジェムが絶望を溜めて完全に穢れきった時、ソウルジェムはグリースシードに変わり、魔法少女は魔女になる。それがソウルジェムの最後の秘密さ。まさか、君達がそれを目撃してしまうとは。僕の計画をとことん狂わせる君達は本当にとんでもないイレギュラーだよ」

 

翼「魔女の正体は魔法少女のなれの果てだとでもいうのか!?」

 

マリア「そのためにあなたは多くの少女を騙して魔法少女に変え、最後は魔女に変貌させた!詐欺どころのレベルではないわよ、この超害獣!!」

 

キュゥべえ「何でもかんでも僕のせいにするなん」

 

 マリア達はキュゥべえの話を最後まで聞かず、キュゥべえを肉片に変えるまで攻撃した。

 

クリス「あたしら…とんでもない事を知っちまったな……」

 

仁美「皆さん。もしかしたら、さやかさんも危ないのかも知れません…!」

 

マリア「あなた、キュゥべえが見えたの?」

 

仁美「はい、確かに見えました。それよりも、弦十郎先生のところに!」

 

 もしかするとさやかが危ないのではないかと仁美は思い、急いでマリア達と共に弦十郎のところへ向かった。

 

 

 

マンション さやかの部屋

 

 一方、まどかは相棒のべべを肩に乗せたマミと共にマンションのさやかの部屋の前に来ていて、静かに立っていると、さやかの方から出てきた。しかも、足元にはキュゥべえもいた。

 

さやか「まどか…マミさん…」

 

まどか「ついて行っていいかな……?さやかちゃんに独りぼっちに欲しくないの。だから……」

 

さやか「……なんでそんなに優しいかな……。あたしにはそんな価値なんてないのに……」

 

まどか「そんな……」

 

マミ「何も理由なんかいらないわ」

 

さやか「あたしね、今日後悔しそうになっちゃった。あの時、仁美を救うために魔法少女になったのは間違いだったって、ほんの一瞬思っちゃった。正義の味方失格だよ、マミさんに顔向けできない……」

 

 涙を流すさやかをマミは母親のように優しく抱き締めたが、さやかの身体は以前と変わらない温かさであった。

 

さやか「仁美に恭介を取られちゃうよぉ……!でもあたし何もできない……!だってあたし、ゾンビだもん……!こんな体で抱きしめてなんて言えない……キスしてなんて言えないよ……!うう……うああ……!」

 

マミ「(キュゥべえ、美樹さんをこんなにも悲しませ、苦しませるあなたは最低の生き物よ!)」 

 

キュゥべえ「(全ての事を僕のせいにす)」

 

 マミがキュゥべえとテレパシーで会話をしている最中、話が終わる前にべべがキュゥべえを捕食したのであった。

 

べべ「マジョマジョ、カマンベール!」

 

マミ「ありがとう、べべ」

 

 ちょうどそこへ響達も来た。それと同時に泣いていたさやかも泣き止んだ。

 

さやか「ありがと……」

 

まどか「さやかちゃん……」

 

切歌「大丈夫…デスか…?」

 

さやか「もう大丈夫。すっきりしたから……」

 

 しかし、これは嘘だと未来と調は見抜いていた。

 

さやか「さあ、行こ!今日も魔女をやっつけなきゃ!」

 

 響達は魔女退治へ向かった。

 

 

 

魔女の結界

 

 慎次同伴で響達は全身が黒く、祈りをささげている魔女のいる場所へと続く黒い一本道を進んでいたが、使い魔が立ちはだかっていた。

 

 『影』の魔女、エルザマリア。その性質は『独善』。祈りの姿勢を崩さぬまま、影の中へとあらゆる命を平等に引きずり込む。この魔女を倒すと言うならば、その者は全身に苦痛を刻まなければならない。

 

切歌「魔女は背を向けていて無防備なのに、進もうとすると使い魔が邪魔をして進めないのデス!」

 

調「おまけに数は多いし、キリがない…!」

 

 エルザマリアは近づくのが難しい魔女であり、素手で戦う響はまともに戦えず、遠距離戦主体のマミ達が主に戦っていた。

 

マミ「ティロ・フィナーレでも使い魔達が邪魔をして100%の威力で通りそうにないわね…」

 

未来「どうするの?」

 

マミ「ティロ・フィナーレである程度魔女にダメージを与えてから美樹さんに追撃させたいから、使い魔の掃討を頼むわ!」

 

未来「うん!」

 

響「一気にやろう!」

 

 響達はマミがティロ・フィナーレを放つ前に射線上の使い魔達を蹴散らした。

 

マミ「行くわよ、ティロ・フィナーレ!」

 

 ティロ・フィナーレ発射のための大砲を錬成し、マミはエルザマリア目掛けて発射した。ティロ・フィナーレの威力を脅威に感じた使い魔達は魔女の盾になってティロ・フィナーレの餌食になり、エルザマリアに直撃したものの、使い魔達が盾になったせいで威力が落ち、致命的なダメージは与えられなかった。

 

マミ「今よ、美樹さん!」

 

 マミ達が使い魔を蹴散らした後、さやかは勢いよく上空へ跳び、空中に魔法陣を出現させ、それを足場にして勢いよくエルザマリア目掛けて突進した。

 

さやか「はぁああああっ!」

 

 そのままエルザマリアを斬ろうとしたが、対するエルザマリアは背中から大樹らしきものを出してさやかの剣の攻撃を受けとめ、逆にさやかを呑み込んでしまった。

 

まどか「さやかちゃん!」

 

切歌「調、行くデスよ!」

 

調「私達が」

 

 さやかを助けるために大樹を両断しようとした切歌と調であったが、突然大樹が斬り裂かれ、さやかを抱えて杏子が降りてきた。

 

杏子「ったく、見てらんねぇっつーの」

 

響「杏子ちゃん!」

 

マミ「佐倉さんは立花さん達と一緒に使い魔を蹴散らして。私と小日向さんで魔女を一気に倒すわ」

 

杏子「オッケー。んじゃ、手本を見せてやるとするか!」

 

未来「マミちゃん、マリアさんが言っていた温泉旅館の時のように私とマミちゃんの」

 

さやか「……邪魔しないで、1人でやれるわ」

 

 近づくのが難しいため、遠距離戦でエルザマリアを仕留めようとした一同であったが、さやかのいつもより低い声を一同は聞いていた。そして、ロケットのような速さでエルザマリアに突っ込んでいき、使い魔達さえ突っ切ってエルザマリアの首をはねたが、その直後に使い魔達がさやかの身体に食らいついて地面に叩きつけた。

 

まどかと響「さやかちゃん!」

 

さやか「……ふふふふ、あはははははは………!」

 

 さやかの笑い声がしたが、その声は明るいものではなく、一同の背筋が凍るような笑い声であった。

 

マミ「美樹…さん……?」

 

杏子「あんた、まさか…!」

 

 エルザマリアの斬られた首から使い魔達がたくさん出てきてさやかに襲い掛かったが、さやかは上空に跳んでから次々と使い魔を斬り裂いていき、エルザマリアに馬乗りの状態で着地し、そのままさやかはエルザマリアを連続で斬り裂いた。魔女を斬るたびに血が飛び散っり、返り血がさやかの身体を赤く染めていき、その光景は響達には直視できないものであった。

 

さやか「あははははっ!本当だ、その気になれば痛みなんて…。あははははっ!!完全に消しちゃえるんだ!!」

 

 狂った笑いをあげつつ斬り続けるさやかに抵抗するかのように使い魔達が食らいついたが、痛みを遮断したさやかには効果がなかった。エルザマリアは止めを刺されて力尽きた。しかし、さやかはエルザマリアを斬り続けた。

 

 

 

工場

 

 エルザマリアが倒された事で決壊は崩壊したが、さやかがエルザマリアを斬るのをやめるのはある程度してからであった。

 

さやか「あはは…やり方さえわかっちゃえば簡単なものだね。これなら負ける気がしないわ……」

 

 傷だらけになったさやかの身体に魔法陣が出現した後、傷がすぐに癒えた。戦いが終わった後、さやかは目の前にあるグリーフシードを拾って振り向いたが、その顔には生気はなかった。自分が倒した魔女のグリーフシードを杏子に投げた。

 

さやか「あげるよ。そいつが目当てなんでしょ?」

 

杏子「おい…」

 

さやか「マミさんはともかく、あんたに借りは作らないから。これでチャラ、いいわね?」

 

マミ「待って美樹さん、そのグリーフシードを使ってあなたのソウルジェムを浄化しないと」

 

さやか「大丈夫ですよ、マミさん。あたしのソウルジェムはあれぐらいで穢れませんから」

 

 しかし、明らかにさやかのソウルジェムは穢れていた。

 

さやか「さ、帰ろう。まどか、みんな」

 

まどか「さやかちゃん…」

 

 さやかの身体が一瞬だけ宙に浮いて変身が解除された後、さやかがまどかに寄りかかった。

 

さやか「ああ…ごめん。ちょっと疲れちゃった……」

 

まどか「無理しないで、掴まって」

 

慎次「ではマミさん、僕達はこれで」

 

 慎次達は帰った。その姿を杏子はグリーフシードを握りしめながら見つめていた。

 

杏子「マミ…さやかの奴、やばくないか?」

 

マミ「ええ、まずいわ…。早く何とかしないと……」

 

 

 

市街地

 

 慎次が来るまでまどか達の送迎をしていると急に雨が降り出した。

 

まどか「あの…バス停で少し停めてくれませんか?」

 

 まどかに頼まれ、慎次はバス停に車を停めた。そして、一同は車から出てきて休息をとっていた。

 

まどか「さやかちゃん……あんな戦い方ないよ。痛くないなんて嘘だよ……。見てるだけで痛かったもん。何も感じないから傷ついても良いなんて、そんなの駄目だよ……!」

 

さやか「ああでもしなきゃ勝てないんだよ……。あたし才能ないからさ……」

 

まどか「あんなやり方で戦ってたら……、勝てたとしてもさやかちゃんのためにならないよ……」

 

さやか「……あたしのためにって何よ」

 

 そう言ってさやかは指輪状のソウルジェムを卵型の宝石状にして、まどかに見せた。

 

さやか「こんな姿にされた後で、何があたしのためになるって言うの?」

 

まどか「さやかちゃん……」

 

さやか「今のあたしはね、魔女を殺す、ただそれだけしか意味のない石ころなのよ。死んだ体を動かして生きてるふりをしてるだけ。そんなあたしのために、誰が何をしてくれるって言うの?考えるだけ無意味じゃないの」

 

まどか「でも私は……どうすればさやかちゃんが幸せになれるかって……」

 

さやか「……だったらあんたが戦ってよ」

 

まどか「え……?」

 

さやか「あたしのために何かしようって言うんなら、まずあたしと同じ立場になってみなさいよ。無理でしょ?当然だよね、ただの同情で人間やめられるわけないもんね!」

 

まどか「同情なんて、そんな……!」

 

さやか「何でもできるくせに何もしないあんたの代わりに、あたしがこんな目に遭ってるの。それを棚に上げて……知ったような事言わないで」

 

まどか「さやかちゃん…」

 

 とてもさやかとは思えないほど冷たく、冷酷な事を言ったさやかにまどかは泣き出しそうにしていた。

 

切歌「ちょっと待つデス!」

 

さやか「…何よ」

 

切歌「さやかはまどかを魔法少女にしたくないと言ってたのに、何でそんな事を言うのデスか!?」

 

調「自分でこの街を護ろうと意気込んでいたのにそんな事を言うの、筋が通ってない…!」

 

響「まどかちゃんは心からさやかちゃんを心配しているんだよ!」

 

さやか「…うるさいなぁ…。あんた達には関係ないでしょ?あんた達にはちゃんと体に魂があるでしょ?はっ、羨ましいよ。ちゃんとした体を持ってる奴はさ。あたしみたいに体がゾンビになってるわけじゃないし、歌を唄うだけであんな力を出せる鎧を持ってるなんて、本当に羨ましいよ。ゾンビにならずに楽してあたし達より強い力を得たからさ」

 

切歌「その言葉、取り消すのデス!」

 

調「私達だってこの力を手に入れ、使いこなすのに何年もかかった!さやかが思っているのとは大違い!」

 

響「辛いのは戦っている私達だって同じなんだよ、さやかちゃん!」

 

さやか「まどかと同じ綺麗事を言う上、ゾンビじゃない身体のあんたに私の何が」

 

 さやかが言い終わる前に誰かがビンタしたが、ビンタしたのは今まで黙っていた未来であった。

 

さやか「な……!?」

 

未来「さやかちゃん、響だって身体が人間でなくなりつつあった時期があったのよ!身体が人間でなくなって辛いさやかちゃんの気持ちがわかるから、辛いのは誰だって同じだと言ったの!即座に綺麗事と決めつけるのは大間違いよ!」

 

さやか「人間じゃ…なくなりつつあった……?」

 

調「さやかは自分が辛いから、他人に八つ当たりしてるだけ」

 

切歌「響さんの言う通り、誰もが辛い想いをしているのデス!自分だけ辛くてひどい目に遭っているなどと思うのは大間違いなのデス!」

 

 今の八つ当たりしているさやかの姿は響達と敵対していた時に嫉妬していた自分達と重なっている事もあり、調と切歌は怒っていた。響達の言葉にさやかは何も言い返せず、走って逃げだした。

 

まどか「さやかちゃん!」

 

 さやかは何も答えず、響達は暗い様子でさやかの背中を見る事しかできなかった。

 

さやか「馬鹿だよあたし……!何て事言ってんのよ……!もう救いようがないよ……!!」

 

 雨に濡れて頭が冷え、さやかはまどかと響達に八つ当たりしていた事を後悔していた。そして、さやかのソウルジェムが黒く濁っていった。そんなさやかを杳馬は建物の屋根から見つめていた。

 

杳馬「さあて、そろそろ運命の日が近づいてきたぜ…。絶望への底へ一直線に進みつつあるさやかちゃんの命運はいかに……」

 

 不気味な笑いをして、杳馬は小宇宙によるモニターで仁美やマミ達の様子を見ていた。

 

 

 

了子の家

 

 さやかがエルザマリアと戦いを繰り広げていた頃、仁美は弦十郎と了子に相談していた。

 

弦十郎「なるほど、仁美君はさやか君が隠している事情を知らずにに恋の相談をして、さやか君を傷つけてしまったと思い、俺に相談しようと思ったんだな?」

 

仁美「はい…。私が治った理由はブラックジャック先生が教えてくれましたので、さやかさんが魔法少女だという事は知っています」

 

了子「さやかちゃんが抱えている事情はね…」

 

 了子はさやかはゾンビのような体になった事をひどく気にしていた事などを話した。

 

仁美「そんな事情があったのですか…。私はそれを知らずにさやかさんに……」

 

弦十郎「仁美君、過ぎた事を後悔しても仕方ない。大切なのは、これからどうするかだ。もう仁美君が魔法少女の事を知っているのをまどか君達に伝えてもいい」

 

仁美「そうですね…。相談に応じてくれてありがとうございます、弦十郎先生」

 

 お礼を言って、仁美は帰る事にした。

 

マリア「遂に仁美に魔法少女の事を知っているのをまどか達に打ち明けていい許可を出したのね?」

 

弦十郎「ああ」

 

了子「問題はここからよ。さやかちゃんが魔女になってしまう前に間に合うかどうかがカギだわ」

 

翼「櫻井女史の言う通りだ…」

 

クリス「まさか、正体を話す前に魔女の正体が魔法少女だって突き止めていたとはな」

 

了子「魔女の正体やキュゥべえの言葉とかがどうも気になってね、色々と考えてみた結果、祈りと呪いは裏表で、少女はやがて大人の女性になるでしょ?だから、魔女の正体は魔法少女だって突き止めたの」

 

マリア「魔女が生まれる過程を見ていないのに、ここまで突き止めていたなんて…」

 

弦十郎「流石だな、了子」

 

了子「煽てないでよ、弦。私は魔女の正体は突き止められたけど、どのようにして魔法少女が魔女になるのかがわからなかったの。でも、これで最後のピースがはまったわ。ソウルジェムが黒く濁り切った時、ソウルジェムが砕けてグリーフシードに変化し、魔女が生まれる。ソウルジェムが黒く濁り切ったら死んだりするんじゃないかとは予想はしていたけど、それより恐ろしい事態になるとはね…」

 

マリア「報告のために一旦、戻るわね」

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回はマリア達が魔女の正体を知ったのとさやかが痛覚を遮断し、捨て身の戦法をとるようになるのを描きました。
ぶっちゃけ、他の街から来たモブの魔法少女はソウルジェム最後の秘密が何なのかをマリア達が目の当たりにしてしまうために出しました。
本編とは異なり、ブラックジャックのお陰で魔法少女の事を知り、さやかの秘密を知らずにまずい事をしてしまったと自覚して弦十郎に相談した仁美ですが、次の話でいよいよある事をします。
次の話は仁美が魔法少女やその真実を知った事で本編とは大きく異なる出来事が起こります。
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