セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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145話 人の未来は人が切り開かなければならないんだ

ほむらの家

 

 キュゥべえの登場に一同は警戒した。

 

了子「いつもどこからともなく現れるわね、白いケダモノ君」

 

キュゥべえ「やれやれ、酷い事を言うなぁ。まぁいいや、実は暁美ほむらの事について分かった事があったから来たんだ」

 

仁美「どういう事ですか?」

 

キュゥべえ「丁度良かった。小日向未来達も聞いといた方が良い。この事は恐らくこの場にいる全員が知りたい事だしね」

 

 一同が警戒する中、キュゥべえはほむらに視線を向けた。

 

キュゥべえ「時間遡行者、暁美ほむら。過去の可能性を切り替える事でいくたの平行世界を横断し、君が望む結末を求めてこの一か月間を繰り返してきたんだね」

 

ほむら「………それが、どうかしたの?」

 

キュゥべえ「君の存在が一つの疑問に答えを出してくれた。何故、まどかが魔法少女としてこれほどの破格の素質を備えていたのか。今なら納得いく仮説が立てられる」

 

マミ「……どういう事?」

 

キュゥべえ「魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる。一国の女王や救世主ならともかく、ごく平凡な人生だけを与えられてきたまどかに、どうしてあれほど膨大な因果の糸が集中してしまったのか不可解だった。……ねぇほむら、ひょっとしてまどかは君が同じ時間を繰り返すごとに強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい?」

 

 キュゥべえに指摘された事にほむらの表情は動き、その様子を了子は見逃さなかった。

 

キュゥべえ「やっぱりね。原因は君にあったんだ。正しくは君の魔法の副作用、というべきかな」

 

了子「(副作用…?まさか、ほむらちゃんの願い事のしっぺ返しは……!)」

 

ほむら「……どういう事よ」

 

キュゥべえ「君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ。まどかの安否だ。同じ理由と目的で何度も時間を遡るうちに、君は幾つもの並行世界を螺旋状に束ねてしまったんだろう。まどかの存在を中心軸にしてね。その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら……彼女の途方もない魔力係数にも納得がいく。君が繰り返してきた時間、その中で循環した因果の全てが巡り巡ってまどかに繋がってしまったんだ。あらゆる出来事の元凶として、ね」

 

 ほむらは動揺し、まどか達は困惑するばかりであった。

 

キュゥべえ「お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ。……君のせいで、まどかは最悪の魔女として生まれ変わるんだ。本当にありがとう。でも皮肉だね。僕の事をあんなに嫌っていた君が、まさか僕の役に立ってくれるなん……」

 

 キュゥべえが言い終わる前に剣が飛んできて、キュゥべえの首が落っこちた。

 

さやか「黙りなよ……」

 

 剣を投げたのはさやかであり、すぐに解除した。

 

未来「2人共、来ていたの?」

 

杏子「どういった事してんのか、ついてきたのさ。けど、さっきの話はわけわかんねえや」

 

了子「因果とかは難しいからゲームに例えるけど、まどかちゃんの魔法少女の才能が異様なのはラスボス戦時のステータスが次の周回のレベル1の時のステータスになっているようなものよ。その状態でレベルを上げ、ラスボスを倒して次の周回になったら、を繰り返したら……?」

 

 了子のゲームに例えた説明にはまどか達も理解できた。

 

さやか「そ、それって…とんでもないステータスになるじゃん!」

 

マミ「ゲームに例えたら、鹿目さんが異様な才能を持っているのがわかるわ…!」

 

 一方、ほむらは自分が今までやってきた事がまどかを逆に苦しめる羽目になった事にショックを受けていた。

 

ほむら「そんな…、今まで私のしてきた事って……」

 

了子「ほむらちゃん、時間というのは本来、巻き戻せないのよ。『人はみな時間と闘わなきゃならない』って言葉、知ってるかしら?」

 

 アニメなどに興味のないほむらは知るはずもなかった。

 

了子「知らないみたいだけど、ある漫画のお婆さんの言葉よ。私達は時間と向き合っていかないといけないの。例え、大切な人を失ったりしてでもね……」

 

 いつもと違う真面目な了子の口調に一同もいつも以上に説得力を感じた上、家族を失ったマミと杏子は特に心に響いた。

 

マミ「ええ、そうね…」

 

杏子「立ち止まっても何にもなりゃしねえからな…」

 

了子「けどほむらちゃん、あなたは最初の時間軸でのまどかちゃんの死に真正面から向き合わず、キュゥべえに願い事を叶えてもらって時間との闘いから逃げた。だからこそ、このようなしっぺ返しが来たのよ。あなたが今まで時間をさかのぼるのを繰り返したのも、その最中にやり直せるという甘えがあったからじゃないの?」

 

 厳しい了子の指摘にほむらは何も言い返せず、落ち込んだ。

 

まどか「了子さん、いくら何でもそれは」

 

ほむら「いいのよ、まどか…。櫻井了子、あなたの指摘通り、いつの間にか私の中にやり直せるという甘えが芽生えてしまったのかも知れない…」

 

了子「だったら、この時間軸で決着を着けなさい。さもないと、もっと泣きを見る羽目になるわ」

 

ほむら「……さっきの話を聞いた以上、そのつもりよ」

 

まどか「だったらほむらちゃん、響さん達と一緒に戦おう!一緒に戦えばきっと」

 

ほむら「嫌!それだけは絶対に嫌よ!」

 

杏子「てめえ、何をワガママ言ってやがる!」

 

さやか「まどかを死なせない方法はもう響達と協力する以外に手はないって!」

 

ほむら「何度言わせればわかるのよ!?私はあの女とは一緒に戦う事はできない!」

 

まどか「ほむらちゃん…」

 

 響達との共闘を頑なに拒むほむらにまどかは何も言えなかった。

 

未来「ほむらちゃん、私は無理に響と一緒に戦ってとは言わないよ。でも…挫けそうになった時は私達に助けを求めてね。あなたは1人じゃないんだから」

 

了子「それじゃあ、私達はここで帰るわね」

 

 一同はここで帰る事にした。1人残されたほむらは血が出るほど拳を握り締めていた。

 

ほむら「立花…響……!」

 

 響を見たり、対峙したりするたびに響と一緒に戦えば、という考えが少しずつ芽生えてしまい、誰にも頼らないと決めた自分がそんな考えを持ってしまった事にほむらは響への憎悪だけでなく、強い自己嫌悪も抱いてしまった。

 

 

 

車内

 

 マミ達を送迎した後、まどかはある事を話す事にした。

 

まどか「あの…、了子さん」

 

了子「なぁに?」

 

まどか「魔法少女になるのがダメなら、代わりにシンフォギアを作ってもらえないでしょうか…?」

 

了子「それは無理ね。あなたはどの聖遺物と適合できるのかわからない上、まだこの世界の技術ではシンフォギアを開発できないの」

 

まどか「そんな……」

 

 戦えないまどかは落ち込んでいて、未来もどう声をかければいいのか迷っていたが、ある事を思いついた。

 

 

 

了子の家

 

 魔法少女達を家に帰した後、了子は未来と共に自宅に帰ってきた。

 

弦十郎「お帰り、了子。何か聞けたか?」

 

了子「ええ」

 

 ほむらとの話を了子は未来と共に一同に話した。

 

響「ほむらちゃん、まどかちゃんの死の運命を変えるために何度も時間を巻き戻して……」

 

マリア「だけど、まどかとの出会いをやり直すという願いが今まで以上に恐ろしいしっぺ返しを生む羽目になるなんて、思っていなかったわ」

 

クリス「過去は変えられねえんだ。納得がいかねえのはわかるけど、死という別れを受け入れずにあのケダモノが叶える願い事で時間を巻き戻したから、途方もないしっぺ返しが来たっておかしくねえだろ?」

 

翼「確かにな…」

 

 クリスの言った事に元の世界では大切な人を失った翼とマリア、切歌と調も納得していた。

 

弦十郎「またほむら君が時間を巻き戻せば、まどか君はさらに恐ろしい魔女になる恐れが出てくるな…」

 

了子「そうよ。だから、私が釘を刺しておいたの。やり直せるという甘えはなくせってね」

 

弦十郎「時間を巻き戻せたら、失敗をなかった事にしたいという甘えがどうしても出てくるからな…」

 

響「未来、ほむらちゃんは結局、一緒には戦えないの…?」

 

未来「とても響の事を憎んでいるし、今更誰にも頼らない生き方を変えられないようから、できないみたい…」

 

 ほむらの協力が得られない事に一同は沈黙した。

 

調「だったら、今のメンバーでどうにかするしかない」

 

切歌「そうデス!ほむらが一緒に戦ってくれる可能性はないに等しいのデス!」

 

クリス「ま、今の段階ではそうするしかねえな」

 

マリア「あと、まどかが契約に走らないように様子を見ておく必要もあるわ」

 

 話がまとまった後、未来は了子とパルティータを呼んで話をしていた。

 

パルティータ「ファウストローブを開発してほしいの?」

 

未来「はい。まどかちゃんは魔法少女になってしまったら最悪の魔女になってしまうので、魔法少女の契約をしないで戦える手段が必要だと考えて……」

 

了子「それは名案だけど、マミちゃん達魔法少女やシンフォギア装者並の戦闘力をどうやって引き出すのかが課題よ」

 

パルティータ「戦闘力ね…、戦闘力……」

 

 ふと、パルティータはある事を閃いた。

 

パルティータ「魔法少女の事を聞いてて思ったけど、インキュベーターとかいう奴等の企みを潰し、且つまどかちゃんが戦えるようにする方法が閃いたわ!」

 

未来「それって、何ですか?」

 

 パルティータはその案を了子と未来に話した。

 

了子「なるほどね。それを異端技術の錬金術の等価交換で燃やしてしまえば、あの白いケダモノの企みは丸つぶれ間違いなしよ!」

 

パルティータ「今から取り掛かるから、必要な時は呼ぶわね」

 

了子「歴代のフィーネはかつて、インキュベーターの技術をある程度解析していたのよ。だから、フィーネの記憶が受け継がれた私なら、あれに関連する事はまっかせなさい!」

 

 早速、パルティータは作業に取り掛かった。

 

了子「それと未来ちゃん、ワルプルギスの夜が来ないうちに元の世界でギアのメンテナンスをしてもらった方がいいわよ。大きな戦いになるから、準備は万全にしないとね」

 

未来「はい!」

 

 未来は一同にギアのメンテナンスをした方がいいと伝え、その夜は寝たのであった。

 

 

 

市街地

 

 その夜、杳馬と人間サイズの大きなキュゥべえは夜の空を見上げていた。

 

キュゥべえ「どうやら、君が話していた奥さんと息子が来たみたいだよ。ワルプルギスの夜をあっさり倒してしまいそうだけど…」

 

杳馬「心配しなさんなって、あの2人は俺が手出しできないように妨害しといてやる」

 

キュゥべえ「ところで杳馬、君は何を考えているんだい?僕は鹿目まどかと契約し、魔女に変えて膨大なエネルギーを回収したいのに、君は志筑仁美を交通事故に遭わせて美樹さやかを確実に契約させるなどの行為をしてくれたけど、僕から見たら無駄な行動も多いよ。僕には君が何を考えているのかよくわからないんだけど、一体、君は何を目的にしているのかな?」

 

杳馬「ま、口で言ったところでダンナにはわかんねえ事さ。魔法少女4人にシンフォギア装者7人がいたらワルプルギスの夜だって負けるかも知れねえぜ。念のため、知り合いに強化策を練ってもらう」

 

キュゥべえ「念のためというのは僕も賛成だよ。魔法少女とシンフォギア装者が全滅すれば、鹿目まどかとの契約ができるから」

 

 杳馬はワルプルギスの夜の強化をすると言ったが、キュゥべえの追及が終わるとニヤけた。

 

杳馬「(ほんと、こいつは機械的なまでに宇宙の寿命を延ばす事しか考えてねえな。だったら、徹底的に利用させてもらうぜ、騙すのが得意なくせに人間の事を何にもわかっちゃいねえし、わかろうともしねえ単純な契約厨のダンナよぉ、俺がやる無駄な行動による楽しみがわからない時点で終わりだぜ……)」

 

 愉快犯染みた杳馬にとっての楽しみが理解できないキュゥべえを杳馬は内心、完全に見下していた。

 

 

 

ほむらの家

 

 ほむらは1人、ワルプルギスの夜との戦いに備えていた。

 

ほむら「(巴マミ達が立花響達と共に戦うのなら、私は1人で戦うしかない。そう、私はあの時から、誰にも頼らないと決めたんだから……!だけど…、立花響がこの世界に来てから、美樹さやかの契約内容が変わってしまったり、今まで魔法少女と縁のなかった志筑仁美が契約したりしている上、私の誰にも頼らないという決意までもが揺らいでいる…!何で私じゃ何度やっても誰に運命も変えられないの……!?)」

 

???「ぬふふふふっ……。ほ~むらちゃ~ん!随分と響ちゃんに嫉妬してるようだねぇ…」

 

 キュゥべえとは別ベクトルの聞きたくない声が聞こえてほむらが振り向くと、そこには杳馬がいた。

 

ほむら「あなたは……!?」

 

杳馬「俺の名は杳馬。ダンナと一緒にまどかちゃん達やほむらちゃんの行動も色々と見物させてもらったぜ。ここまで来て響ちゃんと一緒に戦うのを拒むなんて、信じられないほど意地っ張りだねえ…」

 

ほむら「ダンナ?一体、あなたは何者なの!?」

 

 杳馬の肩にキュゥべえが乗っていた事にほむらは確信した。

 

ほむら「まさか…、インキュベーターとは別の黒幕は……!」

 

杳馬「そうさ、俺だよ。ほむらちゃんの行動は俺の未来予知で筒抜けなんだぜ?そして、俺が未来を断言してやろう。ほむらちゃんは……ワルプルギスの夜には絶対に勝てねえよ」

 

ほむら「黙りなさい!」

 

 未来を断言された事に怒ったほむらは時間を停止させ、杳馬の頭を銃弾で撃ち抜こうとした。ところが……、杳馬はほむらに触れていないのにも関わらず、時間停止しなかった。

 

ほむら「あの男の時間が停止しない!?」

 

杳馬「これがほむらちゃん自慢の時間停止か。けど、所詮は子供の遊びだな」

 

ほむら「何で…、何であの男は時間停止が効かないの!?」

 

杳馬「当たり前だろう?俺なんか、時間停止以外にも色々できるのさ。たかが14歳の女の子の時間停止で俺を止められるわけないだろ?」 

 

 そう言った後、杳馬は一瞬でほむらに接近し、指をソウルジェムに間近まで近づけた。

 

ほむら「(いつの間に…!?)」

 

杳馬「そして、俺は気が向いたらいつでも殺せる。ま、ワルプルギスの夜に勝ちたきゃ、響ちゃん達と一緒に戦うんだな。そうすれば、未来が変わるぜ」

 

ほむら「何ですって!?」

 

杳馬「あ~らあら、怒っちゃった!けど、そのやせ我慢がいつまで続くかなぁ?」

 

 ほむらを徹底的に挑発し、杳馬は姿を消した。杳馬に未来を断言されてしまったほむらは言いたい放題言われた事に血が出る程拳を握り締めていた。

 

 

 

市街地

 

 そして翌日、翼達は河原でワルプルギスの夜との戦いに向けた特訓を開始していた。

 

翼「だらしないぞ、美樹!ワルプルギスの夜が現れるまであと数日だ!それまでにお前と志筑を厳しく鍛え上げてやる!」

 

さやか「ちょ、休ませて……!」

 

翼「たわけ!休息の時間にすらなっていない!立て、立ち上がれ!」

 

 仁美は習い事をしている事もあり、しっかりついていけてたが、さやかの方は特訓に音を上げていた。

 

仁美「さやかさん、そんな事で弱音を吐いていては、私が上条君の心を先に射止めてしまいますわよ?」

 

さやか「な、何だって!?恭介の心を射止めるのはあたしだ!!」

 

 恭介の事で張り合う2人ではあるが、仁美の狙いは過酷な特訓で音を上げるさやかを奮い立たせる事であった。

 

調「翼さん、気合が入ってる」

 

マリア「それだけ、ワルプルギスの夜との戦いへの備えを万全にしようとしているのよ」

 

切歌「それはそうと、あたし達もさやかと仁美の特訓に付き合うのデス!」

 

杏子「あたしもルーキーの頃はあんな風にしてたなぁ」

 

 杏子もまた、翼の厳しい指導を受けているさやかと仁美を見て、新人だった頃を思い出していた。

 

杏子「つーかマミ、大食い達はどうしたんだ?」

 

マミ「ちょっと、了子さんと一緒にね」

 

 

 

遺跡

 

 一方、響達は了子と共にある遺跡に来ていた。

 

響「了子さん、急にどうしたんですか?」

 

了子「歴代フィーネの記憶のせいか、この遺跡へ来てみたくなっちゃってね」

 

未来「何か、キュゥべえの手掛かりがあるんですか?」

 

了子「ええ。あるカストディアンの記録が残されているらしいから、それで何かないかと思ってね」

 

クリス「つーか、何でお前まで来てるんだ?」

 

 まどかも一緒に来ていたのであった。

 

まどか「ワルプルギスの夜とか、ほむらちゃんの事もあるから、何だか落ち着かなくて……」

 

了子「(まどかちゃんが落ち着かないのは、1人だけ戦う事ができないが故にもどかしさからみたいね…)」

 

 戦えないが故、もどかしく思うまどかに対し、響は手を置いた。

 

響「だったら、まどかちゃんはまどかちゃんがしたい事をやればいいんだよ」

 

まどか「響さん…」

 

響「私も願い事が叶うなら、どれを叶えたいかわかんないぐらいあるけど、魔法少女の実態を見てからはキュゥべえに頼らないで自分で叶えなくちゃいけないって思ったの」

 

まどか「自分で…、叶える……」

 

未来「そうだよ。今、まどかちゃんが魔法少女にならずに戦う手段を開発している最中だから、まどかちゃんに戦いたいという強い気持ちがあるのなら、それに正直になればいいんだよ」

 

まどか「響さん…、未来さん……」

 

響「それに、まどかちゃんは取り柄がないと思っているけど、その優しさが取り柄なんだよ」

 

まどか「えっ……?」

 

 取り柄がないと思っていたまどかにとって、響から言われた事に衝撃を受けていた。

 

未来「信じられないと思っているけど、取り柄というのは自覚できる事以外にも他の人から見ないとわからないものもあるんだよ。だから、自分にもっとワガママになっても、自信を持ってもいいんだよ」

 

まどか「自分に……」

 

了子「戦いについては強制はしないわ。戦うかどうかの選択はまどかちゃんが決めなくてはならないから」

 

まどか「戦い手段が…」

 

 今まで戦えないが故のもどかしさを感じていたまどかはしばらく考えたが、その答えが決まった。

 

まどか「私、みんなと一緒に戦います。だって…これは前から私が思っていた事なので」

 

了子「じゃ、決まりね。戦う手段が完成するのはまだかかるけど、ワルプルギスの夜との戦いまでには間に合うわ」

 

 そう言ってるうちに何やら広間に来た。

 

響「ここって……」

 

了子「ここはデュランダルを発掘した現場よ。他にも超先史文明の端末らしきものもあったんだけど、まだフィーネの記憶が引き継がれていなかった頃の私は価値なしと判断してほったらかしにしちゃってたのよ」

 

クリス「ま、そん時は仕方ねえな」

 

了子「さて、どんな情報が眠ってるのかなぁ?」

 

 引き継がれた歴代フィーネの記憶に従い、了子は端末を操作した。すると、ある音声が流れた。

 

???『まさか、数千年もの時を経て、フィーネの子孫がここに来てくれたようだ』

 

未来「この音声の人って……」

 

エンキ『俺はエンキの人格が記憶されたコンピュータ。カストディアンの1人、エンキが仲間と共にインキュベーターとの戦いに赴く前、インキュベーターの事を知りたい人間が現れた時のために作った代物だ』

 

まどか「キュゥべえの事を…知りたい人のために……」

 

???「久しぶりだね、エンキ。君達には色々とひどい目に遭わされたよ」

 

 呑気な声がした方を向くと、キュゥべえがいた。

 

クリス「またケダモノかよ!」

 

キュゥべえ「いい加減、僕をケダモノ扱いするのはやめてほしいなぁ。君達はワルプルギスの夜を倒そうとしているけど、倒せると思っているのかい?どうせ」

 

 話を遮るように了子はキュゥべえを踏みつけた。

 

了子「あなたは悪い意味での神様気取りかしら?エンキとは真反対よ」

 

キュゥべえ「はぁ……例えば君達は、家畜に対して引け目を感じたりするかい?彼等がどういうプロセスで」

 

 最後まで話を聞く気がない了子は靴のかかとをグリグリさせてキュゥべえを痛めつけた。

 

キュゥべえ「最後まで話を聞かないなんて失礼だよ。彼らは人間の糧になる事を前提に、生存競争から保護され、淘汰される事なく繁殖している。牛も豚も鶏も、ほかの野生動物を比べれば種としての繁殖ぶりは圧倒的だ。君達はみな理想的な共栄関係にあるじゃないか」

 

クリス「何だと!?」

 

キュゥべえ「むしろ僕らは、人類が家畜を扱うよりも、ずっと」

 

 了子は今度はキュゥべえを蹴り飛ばした。

 

了子「あなた、何もわかっていないようね。私達人間は家畜も愛情や責任を持って育てているのよ。あなたは愛情や責任を持たずに人間を家畜どころかモノ同然にしか扱っていないわ。その神様気取りのケダモノ君達が譲歩だなんて、図々しいにもほどがあるわよ」

 

キュゥべえ「僕達インキュベーターが人類の文明をここまで発展させたというのに」

 

エンキ『それは違うな、インキュベーター。人類がここまで文明を発展させたのはお前によるものではない、人類自身によるものだ!』

 

 キュゥべえとエンキ、文明が発達した理由の言い分が真反対な事に響達は困惑していた。

 

まどか「どっちの言い分が正しいのかな…?」

 

了子「決まってるじゃない、正しいのはエンキの方よ。だって私に引き継がれた代々のフィーネの記憶では、人類は様々な困難に遭いながらもまだ見ぬ未来へ手を伸ばし続け、パラダイムシフトを起こしてきたのよ。まあ、代々のフィーネもそれにかかわっていたのだけどね」

 

キュゥべえ「それは間違いだよ。僕達が来たからこそ」

 

響「お前の話は信じない!」

 

 響はキュゥべえを殴り、壁に叩きつけた。

 

キュゥべえ「ひどいよ…、僕達がいなかったら君達は洞穴で生活してたはずなのに…。君達が遮った僕の話は本当だよ。信じてほしいのに…」

 

了子「どっかの信用されない隊員さんのセリフを使っても、あなたでは説得力はゼロよ。そもそも、ケダモノ君とカストディアンはどんな因縁があったのかしら?」

 

エンキ『俺達カストディアンは種の停滞を打破するために人を創り出した。その後、ある程度文明が発展するまでは力を貸していたが、ある程度進んでからは直接何かする事はせず、見守るだけにした。だが…それは長く続かなかった。宇宙の寿命を延ばすために感情のある知的生命体を魔女という怪物に変えるべく、インキュベーターが来たんだ』

 

未来「やっぱり、キュゥべえは侵略者じゃない!」

 

キュゥべえ「僕達の文明では、感情という現象は極めてまれな精神疾患でしかなかった。だから君達人類を発見した時は驚いたよ。全ての個体が別個に感情を持ちながら共存している世界なんて想像だにしなかったからね。そんな人類を宇宙の寿命を延ばすために使おうとしたら、カストディアンが邪魔をしてきたんだ」

 

クリス「当たり前じゃねえか!」

 

エンキ『そして、俺達とインキュベーターの戦争が始まったが、結果は俺達の圧勝に終わった。しかし、インキュベーターの母星を叩かない限り、いつまでもインキュベーターが来る事を知った俺達は対立していたシェム・ハもインキュベーターの脅威に停戦に応じてくれたために地球を去り、インキュベーターの母星を攻め落とす事とした。その際、俺はフィーネに別れを告げた…』

 

了子「そして、フィーネが地球に潜むインキュベーターと戦う事を言い出したために、エンキはそれを頼んだのね?」

 

エンキ『当初はフィーネに長く辛い戦いをさせたくなかったが故に反対した。だが、フィーネはそれでもやめようとしなかった。それに折れた俺はフィーネに地球の事を託し、仲間と共にインキュベーターの母星を攻め落としに向かった…』

 

 カストディアンとインキュベーターの長きに渡る戦いの歴史に響達も驚いていた。

 

了子「ケダモノ君、結局君達の故郷は滅んだのかしら?」

 

キュゥべえ「その通りだよ。僕達の星はカストディアンに滅ぼされ、生き残った僕達は様々な星に散り散りになってしまったんだ。宇宙の寿命を延ばすために動いている僕達がどうして滅ぼされないといけないのか、わけがわからないよ」

 

了子「当然じゃない、ケダモノ君達は自分達の行いを省みず、ただ魔法少女を増やし、魔女に変えている。信じてきた子達を騙したが故に滅ぼされて当然よ」

 

キュゥべえ「彼女達を裏切ったのは、僕達ではなく、むしろ自分自身の祈りだよ。どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを生み出す事になる。やがてそこから災厄が生じるのは当然の摂理だ。そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも」

 

了子「それを知ってて、契約を持ちかけるあなたもどうかしてるわよ」

 

キュゥべえ「全部僕のせいにするなんて」

 

 言い終わる前に響はキュゥべえを殴り、息の根を止めた。

 

響「お前には絶対にわからない!」

 

まどか「毎回殺さなくても…」

 

了子「まどかちゃん、あいつらは人の事を何もわかろうとしない絶対悪よ。殺したって罰は当たらないわ」

 

エンキ『それに、人の未来は人が切り開かなければならないんだ。君達になら、それができる。』

 

まどか「人の未来は、人が…」

 

エンキ『フィーネの子孫よ、あの子達を頼んだぞ…』

 

 そう言って、エンキの音声は途切れた。

 

了子「エンキ…」

 

 フィーネの記憶がそうさせるのか、了子は涙を流していた。

 

響「了子さん?」

 

了子「ああ、ちょっとフィーネの記憶のせいか、エンキとの再会で涙を流しちゃってね。さ、色々と知る事ができたし、帰りましょうか」

 

 一同は帰る事にした。

 

 

了子の家

 

 帰ってきた後、了子はパルティータとある事を話していた。

 

了子「えっ?すぐにあれを起動させる事ができるの?」

 

パルティータ「ええ」

 

了子「念には念を入れないとね」

 

 了子の視線の先にはデュランダルがあった。

 

 

市役所

 

 そして一同がワルプルギスの夜との戦いに備えてからの数日後、遂に運命の日は訪れた。 

 

八紘「(スーパーセルの前兆、遂にこの時が訪れたか……)」

 

弦十郎『八紘兄貴、避難の方は現段階では9割完了している』

 

八紘「よし、この調子で残りの1割の市民の避難も完了させるんだ」

 

慎次『僕達は教師として、見滝原Gメンとしての仕事がありますからね…』

 

弦十郎『この一大事にワルプルギスの夜との戦いに行けないのが残念だが、俺達大人でないとできない事もあるからな…』

 

八紘「見滝原市民の命運はあの子達に託されたか……」

 

 

 

了子の家

 

 パルティータの作業も最終調整の段階に入っていた。そんな中、響は準備をしている最中、誰かの声が聞こえた。

 

???『ゲートに、ゲートに来て…』

 

響「誰なの?誰が私を呼んでるの?」

 

 響は並行世界を繋ぐゲートへ向かった。一方、星矢は張り切っていた。

 

星矢「よし、ワルプルギスの夜との戦いに」

 

 そこへ、杳馬が来た。

 

杳馬「おっと、星矢とパルティータちゃんはこの戦いに出ちゃいけねえぜ」

 

星矢「杳馬!お前の暗躍は聞いているぞ!」

 

杳馬「俺や星矢が戦いに出ちまったら、あっという間に勝負が着くだろう?だから、俺は直接戦わないから、お前も手を出すなよ。破ったら…リワインドワールドで見滝原全域を更地に巻き戻してやるぜ」

 

星矢「くそっ……!」

 

杳馬「そうされたくないなら、手を出したりするなよ。じゃあな!」

 

 杳馬は去って行った。そこへ、了子が来た。

 

了子「星矢君、だったわよね?杳馬に何か言われたの?」

 

星矢「ああ…。ワルプルギスの夜との戦いに手を出すなってな…。あいつも手を出さないそうだが、俺が約束を破ると見滝原一体を更地に巻き戻してしまうってさ…」

 

了子「あのケダモノの協力者の事だから、本気でしょうね。だったら、市民の避難を手伝ったら?」

 

星矢「動かないと落ち着かないから、そうさせてもらおうか」

 

 星矢は市民の避難の手伝いに向かった。

 

了子「さて、あれの完成が間に合うかしら……?」

 

 そう考えていると、何やら響がゲートに向かっていき、未来がそれを追っているのに気付いた。

 

了子「どうしたの?」

 

未来「了子さん、突然響が『誰かに呼ばれた』と言って、ゲートに向かっているんです」

 

了子「だったら、未来ちゃんも向かってあげて」

 

未来「わかりました!」

 

 響がゲートに入ったのと共に、未来もそれを追ってゲートに入った。




これで今回の話は終わりです。
今回はほむらの願い事のしっぺ返しが判明するのと、カストディアンとインキュベーターの因縁が明らかになるのを描きました。
まどかマギカでの人類の発展はインキュベーターの干渉によるもの、シンフォギアでの人類の発展は途中まではカストディアンの手助けによるもので、後は人間の手で行われたものと理由が違うため、今小説での人類の発展はシンフォギア寄りにしていて、インキュベーターは人類の事を何もわかろうとせずに道具同然にしか扱わない完全な悪役として描いています。
今小説のまどかは契約せずにある方法で戦いに参加しますが、その方法は示されています。
次の話はワルプルギスの夜との戦いになりますが、響と未来は元の世界とまどかマギカの世界を繋げた張本人と出会う事となります。
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