セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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146話 私が望んでいたけどできなかった事

市街地

 

 ワルプルギスの夜が迫る中、ほむらは1人、佇んでいた。

 

ほむら「(みんなの力は借りない…。だって、誰かを頼ってしまったら、今までの私の苦労は何だったというの…?)」

 

 自分の苦労が全て否定されるのを恐れているほむらはたった一人でワルプルギスの夜に挑もうとしていた。

 

 

 

了子の家

 

 装者と魔法少女達は了子の家に集合していた。

 

翼「立花が!?」

 

クリス「誰かに呼ばれたって言って、ゲートの行っちまった」

 

マリア「こんな時に、一体誰が呼んだの……?」

 

翼「わからんが、小日向が連れ戻しに向かった。小日向に叱られれば、立花もすぐに戻ってくるだろう」

 

調「いよいよ、ワルプルギスの夜との戦い……!」

 

 魔法少女達も気合が入っていた。

 

杏子「こうやってあたしら魔法少女がこんな人数で協力し合うのって、かなり珍しいだろうな」

 

マミ「そうね。1人だったら恐怖で押し潰されそうだけど、こんなにも後輩や一緒に戦ってくれる人達がいたら、もう何も怖くないわ」

 

べべ「ジュジュベ」

 

 マミの肩によく乗っているべべもそれに応じて返事した。

 

さやか「さぁ、ワルプルギスの夜をやっつけて見滝原に平和を取り戻そう!」

 

仁美「さやかさん、何が何でも生き残りましょうね。上条君はまだどっちにも振り向いてませんから」

 

さやか「あたしが恭介をとるんだから、負けはしないぞ!」

 

仁美「私だって、負けるつもりはありませんわ」

 

 恭介の事で張り合う2人だが、大切な人達を護るのとお互いに生き残りたいという気持ちは本当であった。

 

杏子「それにしても、あいつはまさか先走ってるんじゃねえだろうな…?」

 

マミ「可能性としてはあり得るわ。暁美さんは立花さんをかなり嫌っているが故にずっと共闘を拒んで来たのだから…」

 

切歌「響さんが嫌いというだけで一緒に戦うのを拒み続けるなんて、とんだ意地っ張りなのデス!」

 

さやか「ほむらの気持ちはわかるけど、もう手段なんて選んでられないのにね」

 

仁美「さやかさん、さっきほむらさんの事を名前で言いませんでしたか?」

 

さやか「まあね」

 

 そこへ、慎次が来た。

 

慎次「皆さん、遂にこの時が来ました。ワルプルギスの夜は今にも迫ってきています。ここにいる皆さんは、全員ワルプルギスの夜と戦うのですね?」

 

 その問いに全員無言でうなずいた。

 

慎次「わかりました。では、戦場へ行きましょうか!」

 

了子「私は響ちゃんと未来ちゃんを連れてちょっと行きたいところがあるから、みんなは先に行ってて」

 

 一同は車に乗り、ワルプルギスの夜との戦いへ向かった。

 

 

 

ゲート内

 

 響はゲートに入った。

 

響「誰なの?私を呼んだのなら、返事をして!」

 

???「響~~!」

 

 大声で呼んだのは未来であった。

 

響「未来、どうしたの?」

 

未来「ワルプルギスの夜との戦いが目前に迫っているのに、響が勝手にゲートに向かったから、慌てて来たんだよ!」

 

響「ごめん!誰かに呼ばれた気がして…」

 

未来「その誰かって……」

 

???「私だよ」

 

 声がしたために2人が後ろを向くと、そこにはまどかがいた。しかし、目の前のまどかは服装や髪型が異なり、神々しい雰囲気を放っていた。

 

響「ま、まどかちゃん!?」

 

未来「でも、その姿って……」

 

まどか「私はあなた達が向かった世界とは別の世界の鹿目まどか」

 

響「ええ~~っ!!並行世界のまどかちゃん!?」

 

未来「その世界では何があって、どうしてまどかちゃんはこんな姿に?」

 

まどか「……私がいた世界では、私は全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で生まれる前に消し去るという願いで魔法少女になり、みんなからは見えない存在になってしまったの」

 

未来「じゃあ、まどかちゃんがいた世界では……」

 

まどか「マミさんもさやかちゃんも杏子ちゃんも死んで、ほむらちゃんだけでワルプルギスの夜との戦いに臨んだのだけど、ほむらちゃんはどうにもならなかった…。私はインキュベーターの話を聞いて、さっきの願いを考え、契約したの。そして宇宙を再編し、魔女が生まれない世界に改編した」

 

 別の世界のまどかがやった事に響と未来は衝撃を受けていた。

 

響「宇宙を……再編……?」

 

未来「キュゥべえは神にだってなれるってまどかちゃんに言ったのをマミちゃんから聞いたけど、まさか別の世界では本当に神様みたいになったなんて……!」

 

響「どうして、私を呼んだの?」

 

まどか「響さん、あなたに告げたい事があるんです」

 

響「告げたい事?」

 

まどか「実は……ギャラルホルンに干渉してあなた達が向かった並行世界とあなた達の世界を繋げたのは私なんです」

 

 ギャラルホルンに干渉した張本人は女神まどかであった事に響と未来はまたしても衝撃を受けていた。

 

未来「並行世界のまどかちゃんが並行世界を繋げた張本人!?」

 

響「どうして、私達の世界を?」

 

まどか「私は魔法少女の真実を目の当たりにして、しっかり考えてこの願い事にしたんです。ですけど…、普通の空間では誰にも認識されず、話す事もできないので、寂しさを感じていました。その寂しさを抱えつつ、魔法少女を救済していた時に魔法少女がいるのに干渉できない世界を二つ見つけたんです」

 

響「それって……」

 

まどか「一つは神浜市を中心とした他の並行世界とは異なる出来事が起こっている世界。そしてもう一つが……私があなた達の世界と繋げた世界なんです」

 

響「ええ~~っ!?」

 

未来「どうして、その世界を私達の世界に繋げたの?」

 

まどか「それは、その世界に興味があった事とあなた達が並行世界を巡り、様々な異変を解決していた事、そして何より、最大の理由はその世界の私にほむらちゃんやマミさん達と一緒に過ごさせたいという、私が望んでいたけどできなかった事を並行世界の私にさせたいワガママによるものです」

 

 響達の世界と女神まどかが干渉できない世界を繋げた理由が女神まどかのワガママであった。

 

未来「まどかちゃんのワガママ……」

 

まどか「あなた達を私のワガママに巻き込んだ事はお詫びします。ですが、別の世界の私がマミさん達と普通に過ごせるようにするには響さん、あなたの人と人とを繋いできた手とそれを支える仲間達の力が必要だったからです」

 

響「だから、私を呼んだんだ」

 

まどか「どうか、ワルプルギスの夜を倒して、その世界の私にマミさん達と一緒に暮らせる日々を与えてあげてください」

 

響「うん、わかったよ!」

 

未来「それじゃあ、ワルプルギスの夜との戦いに行こうか!」

 

 響と未来はワルプルギスの夜との戦いに向かった。

 

 

 

了子の家

 

 響と未来が出てくると、了子がちょうど来た。

 

了子「2人共、残ってくれたのはちょうどよかったかも」

 

響「了子さん、あれが完成したんですか?」

 

了子「ええ。さっき、パルティータが完成させたわよ。これなら、あのケダモノの計画を丸つぶれにできるわ」

 

未来「後は、そのファウストローブをまどかちゃんに届ければ……!」

 

了子「さぁ、希望を持って出発よ!」

 

 響と未来は了子の車に乗せてもらい、まどかがいる避難所へ向かった。

 

 

 

市街地

 

 しばらくほむらが待っていると、白い霧のようなものが足元に流れ込んできた。ほむらが前に進むと、足元をちょこちょこと可愛らしい使い魔が歩いてきて、象の形をした使い魔が巨大な足で小さな使い魔を踏みつぶした。象の他にも妙な姿の一団が現れ、まるでパレードのようだった。

 

ほむら「来る……!」

 

 パレードを抜けると、響達が元の世界でも影ではあったが戦った事がある超巨大な魔女、ワルプルギスの夜の姿があった。現れた瞬間、ビルが空中に浮かんで炎に包まれた。

 

 『舞台装置』の魔女、ワルプルギスの夜。その性質は『無力』。回り続ける愚者の象徴であり、歴史の中で語り継がれる魔女。この世の全てを戯曲に変えてしまうまで無軌道に世界中を回り続ける。それを阻もうとする者は、彼女の怒りで跡形も残さず全てを破壊されるだろう。

 

 それから、ほむらは変身してこれまで集めた武器をたくさん出した。

 

ほむら「(今度こそ、決着を着けてやる!)」

 

 了子に言われた通り、ほむらはこの時間軸で決着を着けるために戦闘を開始した。一方、戦場へ向かっていた翼達は遠くからワルプルギスの夜や爆発を目撃した。

 

さやか「あれが…ワルプルギスの夜……!」

 

仁美「とても大きすぎますわ……!」

 

クリス「あの魔女、間違いなくあたし達がこの世界に来る前に出現した奴だ!」

 

杏子「ワルプルギスの夜があんたらの世界にも現れたのが、この世界へ来るきっかけだったんだな?」

 

翼「そうだ。長らく見つからなかったが、1か月も待つ羽目になるとはな」

 

マリア「誰かが戦っているようだけど、あの様子ではほむらしかいないわね」

 

 そう言ってると、遠くからほむらが吹っ飛ばされ、ワルプルギスの夜の進路の先に避難所があるのがわかった。

 

調「このまま進むと、避難所に直撃するよ!」

 

切歌「これは大変なのデス!」

 

マミ「緒川先生、ワルプルギスの夜の進路を先読みして私達を送ってください!」

 

 マミからの頼みに慎次は無言でそれに応じてくれた。一方、ほむらはワルプルギスの夜を追っていた。

 

ほむら「(これ以上進まれたら……!ここで食い止めないと!)」

 

 使い魔を次々と蹴散らしてワルプルギスの夜と応戦するほむらであったが、ワルプルギスの夜がビルを投げつけた際、時間停止を使おうとしたら、砂時計が全て下に落ちていた。

 

ほむら「そんな!」

 

 そのままほむらは他のビルに吹っ飛ばされ、その際に瓦礫に足を挟まれた。

 

ほむら「(どうして、どうしてなの…?何度やっても、あいつに勝てない…!)」

 

 時間を巻き戻そうとした際、了子の言葉が頭を過った。

 

ほむら「(繰り返せば、それだけまどかの因果が増える…。立花響達は容易く巴マミ達の運命を変える事ができたのに、私は何度やってもできなかった…。私がやってきた事は結局、全て無駄な事だったとでもいうの……!?)」

 

 杳馬が言った通りの結果となり、一番肯定したくなかった自分の苦労が全て無駄であった事を悟ったほむらは絶望に打ちひしがれ、ソウルジェムは黒く染まろうとしていた。

 

???「響達と一緒に戦うのを拒み続けて、1人でワルプルギスの夜に挑んだ挙句、1人ヘタれるなんて、何が何でもまどかを助けようとする根性はどこへ行ったの?ほむら」

 

 そんなほむらに声をかけてグリーフシードを投げたのはさやかであり、マミ達も駆け付けた。

 

ほむら「美樹、さやか……」

 

さやか「勝手に魔女になられたらこっちが迷惑するから、そのグリーフシード、使いなよ」

 

ほむら「…どういう、風の吹き回しなの…?」

 

翼「疑っている場合ではないぞ、暁美!お前も魔女から人々を護る防人であるのなら、立て!立ち上がるんだ!」

 

 しかし、既に心が折れていたほむらは立とうとしなかった。そんなほむらに苛立った杏子は胸ぐらを掴んだ。

 

杏子「この野郎、あたしらが戦わねえと見滝原は壊滅しちまうんだぞ!それでもいいのか!?」

 

 杏子の説教も心が折れたほむらには届かなかった。それに愛想を尽かした杏子はほむらを放り捨てた。

 

クリス「立たねえのかよ!」

 

杏子「ほっとけよ。完全に心が折れて戦う気がねえ奴は邪魔だ!二度とその面を見せるんじゃねえ!」

 

切歌「その通りデス!勝手に戦う気力をなくしたほむらは邪魔なだけデス!」

 

調「私達でどうにかしないいけない」

 

 ほむらの事より、今はワルプルギスの夜との戦いが優先である一同であった。

 

マリア「ここから一歩も通さないわ!」

 

仁美「大切な人達を護るためにも!」

 

マミ「ワルプルギスの夜、ここで決着を着けるわよ!」

 

 一同はワルプルギスの夜へ向かっていった。

 

ほむら「何でなの…?何で…、みんなワルプルギスの夜と戦うの……?」

 

 ワルプルギスの夜に立ち向かっていく一同に心が折れたほむらは理解できなかった。

 

切歌「あたしと調が一番手なのデス!」

 

調「先手必勝!」

 

マミ「私も一緒に行かせてもらうわ!」

 

 切歌と調とマミはワルプルギスの夜目掛けて攻撃を放ったが、すぐにワルプルギスの夜は触手で攻撃して来たが…。

 

べべ「マジョマジョ~!」

 

 マミの死角をカバーするようにべべは口から本体を出し、触手や魔法少女の姿をした使い魔達を捕食した。

 

切歌「ありがとうデス!」

 

マミ「大きなダメージを与えるには溜めてからの強烈な一撃でないとダメなようね」

 

 負けじと杏子とさやかも向かっていった。

 

さやか「あたし達も忘れないでよね!」

 

杏子「ロッソ・ファンタズマ!」

 

 分身を作り出し、杏子は一斉に攻撃したが、ワルプルギスの夜にはほとんど効いてなかった。

 

ワルプルギスの夜「アハハハハッ!」

 

杏子「思ってる以上に頑丈すぎるじゃねえか!」

 

 愚痴を言っている隙を突かれ、ワルプルギスの夜の触手の攻撃が迫っていたが、さやかと翼、マリアの攻撃で切り裂かれた。

 

翼「何を立ち止まっている!?動かなかったら的になるだけだ!」

 

杏子「わ、悪かった!」

 

翼「行くぞ、美樹!」

 

 翼とさやかは互いに剣を構えて跳び上がり、二つの剣を合わせて天ノ逆鱗を放った。勢いをつければ流石にワルプルギスの夜の身体の一部を貫くほどの威力は出せた。

 

調「次は切ちゃんとのユニゾン!」

 

切歌「あたし達の力、存分に味わうのデス!」

 

 切歌と調はユニゾンでワルプルギスの夜へ攻撃を仕掛け、締めとしてユニゾン技、禁合β式・Zあ破刃惨無uうNNを放った。

 

マリア「次は私の番よ!」

 

 今度はダメ押しと言わんばかりにマリアが攻撃を仕掛けた。一方、遠距離タイプであるマミとクリス、仁美はワルプルギスの夜が翼達に気を取られている間にチャージが終わっていた。

 

仁美「準備はできましたわ!」

 

クリス「どでかい一発をぶっ放してやろうぜ!」

 

マミ「ええ!ボンバルダメント!」

 

 仁美は狭い範囲で敵を切り裂く鎌鼬のような強烈な風を起こし、クリスはありったけのミサイルや銃弾を放つMEGA DETH QUARTETを放ち、マミはティロ・フィナーレ以上に巨大な大砲、ボンバルダメントを放ってワルプルギスの夜に結構ダメージを与えた。

 

ワルプルギスの夜『アハハハハ……』

 

クリス「よっしゃあ!結構効いてるぞ!」

 

マミ「もう一押したいったところね」

 

 接近戦を挑んでいる一同もラストスパートといったところであった。

 

マリア「後少しよ!」

 

翼「一気に勝負を」

 

???「悪いけど、そう簡単に終わらされるわけにはいかないなぁ」

 

 その呑気な声と共に、空中に浮いている杳馬とその近くのビルの残骸にぽつんと佇んでいる大きなキュゥべえが現れた。

 

マリア「杳馬、それにケダモノまで!」

 

クリス「ってか、あのケダモノは今までの奴よりデカくないか?」

 

杳馬「今まで君達が見たダンナは端末さ。このでかいのが本体ってわけ。って言っても、本体の方も地球に何体かいるんだがな」

 

キュゥべえ「こんなにも強かったのは正直言って誤算だよ。このままじゃ、ワルプルギスの夜が本気を出す前に倒されるかも知れない」

 

翼「あれで本気じゃないだと!?」

 

キュゥべえ「そうだよ」

 

杳馬「だったら、ダンナがワルプルギスの夜と一体化してやればいいじゃねえか。こいつらもサービスしとくぜ」

 

 杳馬が指を鳴らすと、カルマノイズが3体も出現した。

 

杏子「あれは何だ!?」

 

翼「カルマノイズだ!よりにもよって、こんな時に3体も!」

 

杳馬「おっと、カルマノイズはそのまま戦うんじゃねえぜ。ダンナ、準備はいいか?今から一体化に必要な代物を食わせるぜ」

 

キュゥべえ「できたよ。魔女の本能に任せると効率が悪いと判断したから、今度は僕自身の手で君達の希望を消すからね」

 

 カルマノイズはワルプルギスの夜へ向かっていき、ワルプルギスの夜に取り込まれた。カルマノイズを取り込んだワルプルギスの夜は逆さまだったからだをひっくり返して頭を上にし、崩れかけた体が再生し始めた上、それに乗じて大きなキュゥべえが杳馬から手渡された黒い玉を食べた後、ワルプルギスの夜に自ら取り込まれた。

 

マミ「キュゥべえが自ら取り込まれた…?」

 

仁美「何か、まずい事になるかも知れません…!」

 

 カルマノイズとキュゥべえを取り込んだワルプルギスの夜は体が変貌し、ドレス姿と歯車が特徴の魔女から、背中が歯車でいかにも屈強な二足歩行の怪獣へと姿が変わり、最後に顔がキュゥべえそのものになった。

 

切歌「ワルプルギスの夜が……怪獣みたいになったデス……!」

 

さやか「ってか、体と顔がメチャクチャアンバランスじゃん!いわゆる合体事故って奴!?」

 

調「そうみたい…」

 

キュゥべえ「人間って見た目だけで判断する癖があるから、人種差別とかといった、僕達の社会では全く考えられない差別とかばかりあるから、理解できないよ」

 

 顔だけがキュゥべえなため、思わず唖然とした一同であったが、カルマノイズも取り込んでいるため、すぐに気を取り直した。

 

マリア「見た目が凄かったから、思わず気が抜けてしまったわ!」

 

翼「ワルプルギスの夜がカルマノイズを取り込んだ以上、さっきより恐ろしい事態である事は間違いない!」

 

杏子「ふざけた面をしてるが、ただでさえ恐ろしい気配がさらに恐ろしくなってるしな……!」

 

 凄まじい魔力がカルマノイズを取り込んだ影響でさらに膨れ上がっていた。

 

キュゥべえ「僕と融合する前にワルプルギスの夜は魔女の本能で遊んでいたのだけど、ここからは僕自らの手で行かせてもらうよ」

 

 言い終わった途端、怪獣はたった1秒のチャージで恐ろしい威力のビームを口から発射した。誰も直撃しなかったものの、その余波だけで吹き飛ばされそうになった。

 

さやか「な、何て威力なの!?」

 

キュゥべえ「ふふふ……、ふははははっ!なんて威力なんだ!僕の予想を遥かに上回るすさまじい力だ!杳馬、君は僕に凄いプレゼントをくれたよ!」

 

杳馬「おうおう、気に入ってくれて何よりだ!」

 

 お礼を言うキュゥべえだが、その様子は今までと異なり、明らかに感情が伺えた。

 

クリス「あのケダモノ、感情があるように思えねえか?」

 

仁美「はい。今までは感情が伺えなかったのですが、さっきの様子は明らかに感情があるとしか思えません」

 

キュゥべえ「ここからが本当の地獄だよ」

 

 今度は体中からビームを発射した。しかも、連射したために一同は全て回避できずに命中してしまった。

 

一同「うわああああっ!!」

 

キュゥべえ「ふふふっ、は~っはははははっ!!」

 

杳馬「(ダンナの奴、すっかりカルマノイズの瘴気にやられたようだ。あんな愛想のねえ奴に効くかどうかわからなかったが、効くどころか感情や自我まで芽生えさせるとは、カルマノイズの瘴気は恐ろしいもんだな。ま、これでちったぁ愛想もよくなったしな。これからどうなるのかなぁ?)」

 

 感情がないはずのキュゥべえに感情が宿ったのは一緒にワルプルギスの夜と融合したカルマノイズの瘴気によるものであり、その様子を杳馬は少しは愛想がよくなったと思っていた。

 

 

 

避難所

 

 その頃、まどかは家族と共に避難所にいた。

 

タツヤ「きょうはおとまり? きゃんぷなの?」

 

知久「ああそうだよ。今日はみんなで一緒にキャンプだー!」

 

 タツヤを不安にさせないように振る舞う知久であった。そして、まどかは外を見ていた。

 

まどか「ほむらちゃん…、みんな……」

 

 自分も行かなければならないとまどかは判断し、避難所を出ようとしたが、詢子が声をかけた。

 

詢子「どこに行こうってんだ?おい」

 

まどか「お母さん…。私、友達のところに行かなきゃならないの。」

 

詢子「お前一人のための命じゃないんだぞ!!そう言う勝手やらかして……」

 

まどか「わかってる。私だってママの事、パパの事、大好きだから……どんなに大切にしてもらってるか知ってるから。自分を粗末にしちゃいけないの、分かるよ。だから違うの。皆大事で、絶対に守らなきゃいけないから……そのためにも、私今すぐ行かなきゃいけない所があるの!!」

 

 娘のゆるぎない覚悟に詢子は目を見開いた。

 

詢子「……理由は説明できないんだよな?なら、私も連れて行け」

 

まどか「……駄目。ママはパパとタツヤのそばにいてあげて。二人を安心させてあげて。ママはさ、私が良い子に育ったって、言ってくれたよね。嘘も吐かない、悪い事もしないって……。今でもそう信じてくれる?私を、正しいと信じてくれる?」

 

詢子「絶対に下手打ったりしないな?誰かの嘘に踊らされてねえな?」

 

まどか「うん……私はもう、答えを得ているから」

 

 娘の覚悟を見た詢子であった。そして、ちょうどその時に了子と弦十郎が来た。

 

了子「詢子、まどかちゃんの事だけど」

 

詢子「あの子が行きたい場所があるって言ってるから、私の代わりにあんた達が連れていきな。これは長い付き合いのあんた達夫婦にしか頼めないからさ…」

 

了子「モチのロンだわ!詢子、まどかちゃんの事は私達にまっかせなさい!」

 

まどか「……ママ、ありがとう」

 

弦十郎「俺も了子もまどか君と共に必ず生きて帰る」

 

 詢子は友人の了子にまどかの事を頼み、見送ったのであった。

 

 

 

車内

 

 まどかを連れ、了子は戦場へ車を走らせた。

 

響「ちょうど師匠も避難誘導が終わったんですね?」

 

弦十郎「ああ。これで、俺もワルプルギスの夜との戦いに参戦できる!」

 

了子「そして、これがまどかちゃんが戦う手段よ」

 

 そう言って了子はまどかにラピスを投げ渡した。

 

まどか「これって…?」

 

未来「これはファウストローブ。私達の世界にある、錬金術師が身に纏う鎧よ。シンフォギアと似てるけど、歌は必要ないの」

 

まどか「でも、私は錬金術師じゃ…」

 

了子「それはまどかちゃん専用の特別なファウストローブなの。まどかちゃんの『あるもの』を燃やして様々な事ができるようにする特注品よ」

 

まどか「その、『あるもの』って、何ですか?」

 

了子「それはね…」

 

 

 

市街地

 

 怪獣の圧倒的な力に翼達は蹂躙される一方であった。

 

切歌「さっきより格段に強いのデス…!」

 

クリス「くそったれ!ムカつく面でこうもやられると腹が立ってきやがる…!」

 

キュゥべえ「僕だって好きでこんな姿になったわけじゃないのに、失礼だなぁ。それにしても、死なせる予定だったマミ達と契約する予定のなかった仁美がここまで粘るとは思わなかったよ。お陰で君達を魔女にしてエネルギーを回収するというのもできそうだ」

 

マミ「ふざけないで!私達は生きるために、誰かを護るために戦っているのよ!」

 

仁美「それをあなたの都合だけで終わらせていいものではありません!」

 

キュゥべえ「諦めが悪いようだけど、例え君達がどんなに諦めが悪くったって、無意味なんだよ」

 

 そう言って怪獣はカルマノイズの瘴気を吐いた。

 

調「あれはカルマノイズの瘴気!」

 

さやか「な、何これ!?」

 

杏子「く、苦しい……!」

 

 まだ絶望していないのにも関わらず、カルマノイズの瘴気を浴びたマミ達のソウルジェムが黒く濁り始めていた。

 

翼「まさか、カルマノイズの瘴気でソウルジェムが!?」

 

マリア「まずいわ!このままだと」

 

マミと仁美「ううううっ…!」

 

さやかと杏子「ああああああっ!」

 

キュゥべえ「ははははははっ!どんなに抵抗したって無駄だよ!魔法少女は魔女になる宿命からは逃れられないんだ!殺されるより、こうやって僕の手で魔女に変えられる事は僕が譲歩しているんだよ?さぁ、魔女になってエネルギーを出しなよ、ふははははっ!!」

 

 カルマノイズの瘴気に侵されたキュゥべえは完全に悪意全開の顔になり、あからさまに他人を見下した態度をとってカルマノイズの瘴気を放出してマミ達を魔女に変えようとしたが…。

 

???「お前の思い通りになんかさせない!」

 

 突然、巨大な機械の拳が怪獣目掛けて飛んできて怪獣の顔面にぶつかり、怪獣は殴り飛ばされた。

 

キュゥべえ「うわあああっ!!」

 

ほむら「何…なの……?」

 

 心が折れ、腑抜けたほむらが視線を向けると、拳の正体は響と未来のユニゾン技、浄拳であり、殴り飛ばした後に着地した。

 

翼「2人とも、遅いぞ…!」

 

響「遅れてすみません!」

 

クリス「ったく、おいしい所で現れやがって…!」

 

 そして、まどかも到着した。まどかが来た事は契約しに来たとほむらは思い、もう完全に無意味だと思い始めた。

 

ほむら「(結局、私は何をやってもダメだった…。あの時から、私は無力で取り柄もなくて、何もできなかった……!)」

 

キュゥべえ「鹿目まどか、僕と契約する気になったかい?」

 

まどか「いいえ、私はあなたと契約なんかしない!」

 

 その言葉に翼達はもちろん、ほむらも驚いた。

 

キュゥべえ「君は、今まで魔法少女達が関わる世界の裏側を見て、自身の無力を感じていた筈だ。君が魔法少女になりさえすれば、この街を滅ぼそうとしている僕も確実に倒せる筈だ。なのに、君はそのチャンスを不意にすると言うのかい?」

 

まどか「確かに、前の私だったら契約したかもしれない……。私はずっと、自分が何の役にも立たない、誰のためにもならないまま、生きて行くだけの存在だと思っていたから。だから、魔法少女になれば人助けが出来るって聞いた時には、本当は嬉しかったんだ。自分が初めて誰かの役に立てる、そんな気がしたから。だけど、ほむらちゃん達や響さん達と会って、必死に戦う姿を見て、それがただの甘えだって気付いたんだ」

 

キュゥべえ「甘え?君は計り知れない自分の才能を無下にしようとしているんだよ。本当に頭がどうかしちゃったのかな?」

 

まどか「どうもしてないわ!インキュベーター、あなたはこの世界が魔法少女の契約の力だけで作られてきたと言っていたけど、それは違うよ。古代遺跡のエンキさんが言ったように『人の未来は人が切り開かなければならない』って。今までの歴史も全て、その時代に生きた人達が懸命に生きて、自分の手で切り開いてきた証なの!断じてあなたの契約だけで動かせたわけじゃない!」

 

キュゥべえ「まどか、君まで忌まわしいカストディアンに毒されたみたいだね。だけど、この世界にはシンフォギアは存在しない。魔法少女にならずに戦う方法なんて存在しないよ。頑なに契約しないというのなら……ここで死ね!」

 

 契約しようとしないまどかに業を煮やしたキュゥべえはそのまままどかを踏み殺そうとしたが、まどかの持っているハート型の宝石が光を放った。

 

キュゥべえ「うわあああっ、何だ!?見ただけで体を分解されるようなこの光は!?」

 

まどか「魔法少女にならなくても私には戦う手段がある!」

 

マリア「あの輝きは……ラピス!?」

 

響「そうですよ、マリアさん!あのラピスはパルティータさん特製のまどかちゃん専用のラピスなんです!」

 

 ラピスの輝きは魔女化しそうなマミ達のソウルジェムの濁りが進むのを阻止したのであった。

 

マミ「苦しく…ない…?」

 

仁美「この輝きは……?」

 

 まどかがラピスを掲げると、まどかの服はスケッチブックに描いた魔法少女の衣装そっくりの服装に変化した。

 

未来「あれが…まどかちゃんのファウストローブ……!」

 

キュゥべえ「な、何が起きたんだ!?あれは何だ?シンフォギアなのか!?君が手にしたその力は一体、何なんだ!?」

 

まどか「あなたにはわからない!」

 

 そう断言したまどかは光の弓矢を放ち、矢は怪獣に命中した。

 

キュゥべえ「うわああああっ!!」

 

 怪獣は矢に押され、そのまま吹っ飛んだ。まどかが契約を拒否した瞬間こそ、歴史が変わった瞬間でもあった。




これで今回の話は終わりです。
今回はギャラルホルンに干渉し、並行世界を繋げた張本人がアルティメットまどかの仕業であるのが判明したのと、キュゥべえが杳馬の手でワルプルギスの夜と一体化し、暴れ回るのを描きました。
カルマノイズと共にワルプルギスの夜と一体化したキュゥべえは感情が芽生えましたが、これは作中でもある通り、カルマノイズの瘴気の影響です。そして、ワルプルギスの夜が怪獣の姿になったのは、初期案ではゴジラみたいな怪獣になる予定だったため、面白そうだと思ってキュゥべえとの合体でそうなるように描きました。ちなみに、合体した後のキュゥべえの表情は漫画版での表情が変わるキュゥべえの要素を入れています。
そして、満を持してまどかが参戦しましたが、魔法少女の契約をするのではなく、特注品のファウストローブを纏って戦う事となりましたが、そのファウストローブが力の代償とする『あるもの』というのは、これまでの話を読めばわかります。
次の話はキュゥべえとの最後の戦いです。

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