セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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147話 時間が動き出したのかも知れない

市街地

 

 光の矢1発で怪獣を吹っ飛ばしたまどかの強さに一同は驚いていた。

 

マミ「嘘……!」

 

翼「あの怪獣を一撃で吹っ飛ばすだと……!」

 

マリア「ほんと、最終決戦でだけ出てくる物凄く頼もしい助っ人みたいよ」

 

響「これも、了子さんとパルティータさん合作の特性ファウストローブのお陰だよ!」

 

まどか「そうかな……?」

 

 自分でもこれほどの力を引き出せた事にまどかは実感が湧かなかった。そして、まどかは響と未来と共に腑抜けたほむらの方へ向かった。

 

ほむら「まどか……」

 

まどか「ほむらちゃん、みんなと一緒に戦ってインキュベーターからこの街を護ろう!」

 

ほむら「無理よ…。私は誰にも頼らないという決意をしたのに、立花響達と違ってやる事為す事裏目に出るばかりで何も成し遂げられなかった…。結局、私は自分が嫌で嫌でたまらなかったあの時から何も変わってなかったのよ……」

 

まどか「確かにほむらちゃんからしたら、やってきた事は裏目に出てばかりと思ってるけど、私が契約をしなくて済んだのは全部ほむらちゃんのお陰だよ」

 

ほむら「私の……?」

 

まどか「私は今まで、何の取り柄もない人間だと思っていたから、魔法少女になれば取り柄もできると思っていた。だけど、ほむらちゃんや響さん達との出会いやその必死で戦う姿を見て、私は魔法少女になろうとしているのはただの甘えだって気付いたの。それを指摘してくれて、今の答えを出すきっかけを作ったのはほむらちゃんなんだよ」

 

ほむら「私が……?」

 

 そんなほむらの手を響と未来が握った。

 

未来「ほむらちゃん、とてつもない力を持つ怪獣にみんなが立ち向かうのは、誰かを護りたいから、明日を、未来を掴むために困難と立ち向かっているの。本当だったら時間は巻き戻せないから、未来はどうなのかわからないからこそ、その時間を懸命になって抗い、生きようとするのよ」

 

響「前にも言ったよね?ほむらちゃんが挫けそうになった時は力になるって。人は1人だけだとできる事に限りがあるんだよ。マミちゃん達だって、みんなや師匠達大人がいなかったら、助けられなかったと思う。だからこそ、みんなと手を取り合う事が大事なんだよ。ほむらちゃん、まだ戦いは終わっていないよ。一緒に戦って、まどかちゃん達と一緒に過ごす未来を掴もう!」

 

ほむら「2人とも……!」

 

 ほむらは涙を拭き、手を取って立ち上がった。

 

キュゥべえ「さっきはよくもやってくれたね、まどか!急に戦えるようになって調子に乗り過ぎだよ!」

 

杏子「調子に乗ってるのはてめえだろ!」

 

さやか「あんたはあたし達を含む多くの少女を騙して、魔女に変えて、自分が人の文明を発展させたと粋がっている大馬鹿だよ!」

 

キュゥべえ「僕をバカだって?君達、僕が譲歩しておきながら、こんな言い方と態度をとるのは図々しいにも程があるよ!魔法少女の契約を拒むなら、もう君はいらない。殺してやる!」

 

まどか「インキュベーター、あなたが人の命を弄んで未来を閉ざすなら、私はあなたを倒し、未来を切り開く!」

 

 強い決意と共にまどかの服装が変化し、響と未来がゲート内で見た女神まどかと同じ服装と髪型になった。

 

響「あの服装、並行世界のまどかちゃんと同じだ!」

 

マリア「並行世界のまどかって、どういう事?」

 

未来「ギャラルホルンに干渉して私達の世界とこの世界を繋げたのは、並行世界のまどかちゃんなんです」

 

クリス「並行世界のあいつが!?」

 

 怪獣は触手と口からのビームで攻撃したが、まどかが放つ複数の矢で全て打ち破られ、吹っ飛ばされた。

 

キュゥべえ「うわああああっ!!こ、こんな事はあり得ない!何の代償もなしにこんな力を出せるはずがない!!」

 

???「あ~ら、まどかちゃんにはその力があるってあなたが言ったじゃない」

 

 皮肉たっぷりに了子が来た。

 

翼「櫻井女史!」

 

さやか「まどかのあの力、一体何なの?」

 

了子「まどかちゃん専用の特性ファウストローブは邪悪を焼き尽くす上、まどかちゃんが持つ膨大な因果を燃やし、絶大な魔力に変える代物なの」

 

ほむら「膨大な、因果を……?」

 

了子「このファウストローブは響ちゃん達の世界の技術者に来てもらって開発したんだけど、ファウストローブを数時間で製造可能な彼女でも数日はかかった程の代物なんだから」

 

 

 

回想

 

 まどかは特製ファウストローブが絶大な力を発揮する代償に驚いていた。

 

まどか「私の因果を燃やして絶大な力を出せるんですか?」

 

了子「そうよ。等価交換で膨大な因果をなくしてしまえば、あのケダモノの目論見を潰せるし、みんなを助ける力を得られる。まさに一石二鳥って奴じゃないかしら?」

 

まどか「インキュベーターの目論見を潰してみんなを助ける…」

 

了子「ほむらちゃんのしっぺ返しが思わぬ形で役に立っちゃったわね」

 

 

 

切歌「因果を燃やすなんて、驚きデス!」

 

仁美「これなら、魔女化のリスクなしにまどかさんは途方もない力を出せますわ」

 

 話している中、怪獣が起き上がった。

 

キュゥべえ「ふざけるな…!因果を燃やして力に変える…?そんな事をしたせいで僕の計画が丸つぶれじゃないか!!こうなったら、報復でこの街の人間を待ち諸共皆殺しにしてやる!!杳馬!」

 

杳馬「あいよ!」

 

 そう言って杳馬は孵化しそうなグリーフシードをたくさん怪獣に与え、怪獣は更に力を増して禍々しいオーラ全開になり、空を覆い尽くさんとする数の使い魔を出した。

 

マリア「な、なんて数なの!?」

 

調「何体いるのかわからない…!」

 

キュゥべえ「これだけの数の使い魔を倒せるかな?今度こそ君達を魔女に変えてやる!」

 

 再び怪獣はカルマノイズの瘴気を吐いたが……。

 

まどか「みんなのソウルジェムを瘴気で穢れさせて魔女にするつもりなら、みんなのソウルジェムを魔女にならないソウルジェムに作り替えればいい!」

 

 まどかは白い光の矢を5つ、マミ達のソウルジェム目掛けて放った。

 

調「まどか!」

 

切歌「血迷ったのデスか!?」

 

キュゥべえ「魔女にさせないために5人を殺すのは」

 

 しかし、光の矢はマミ達のソウルジェムを撃ち抜くどころか、逆に吸い込まれた後、マミ達のソウルジェムに異変が起こった。

 

マミ「な、何なの!?」

 

仁美「わかりません…!」

 

 本人達にも何が何なのかわからないまま、マミ達の服装の一部に天使の羽飾りが追加されるなどの変化が起こり、その直後にカルマノイズの瘴気に覆われてソウルジェムの穢れが限界に達したが、限界まで穢れたソウルジェムから穢れが噴き出され、それと同時にソウルジェムも浄化されていった。

 

キュゥべえ「魔女にならない!?」

 

ほむら「な、何がどうなっているのよ!」

 

まどか「言ったはずだよ、みんなのソウルジェムを魔女にならないソウルジェムに作り替えたって」

 

翼「とすると、あの変化はソウルジェムを作り替え終わった証なのか!」

 

まどか「みんなのソウルジェムの穢れを、呪いと相反する力に!そして、響さん達にも力を!」

 

 まどかはマミ達のソウルジェムから噴き出した穢れを聖なる力に変換し、マミ達のソウルジェムに注ぎ込んだ。すると、マミ達の服装が変化し、魔法少女の服装に天使の羽などの意匠が追加されたどこか神々しさも併せ持つ服装へと変わった。

 

さやか「ちょ、この服装って何!?」

 

杏子「あたしに聞くなよ!」

 

マリア「あれって…、魔法少女版エクスドライブモードともいうべき形態なの!?」

 

 マミ達が戸惑っている中、次にまどかは空に矢を放って魔法陣を出現させ、聖なる光によって響達のギアのエクスドライブを起動させた。

 

翼「エクスドライブだと!?」

 

クリス「歌なしにエクスドライブを起動させるなんて、とんでもねえな!」

 

キュゥべえ「魔女にならないソウルジェムに作り替えた挙句、そんな姿にまで変化させた!?こ、これは何かの間違いだ!僕以外にそんな奇跡を起こせるはずがない!」

 

まどか「それはあなたの傲慢だよ、インキュベーター!奇跡はあなた以外にだって起こる事ができる!」

 

未来「それをあなたは認めようとしないだけ!」

 

響「響き合う心と心は、みんなで紡ぐ一つの歌は!無限の力を引き出す事ができるんだぁぁーっ!!」

 

 響のパンチと未来のビームで怪獣は吹っ飛ばされ、まどかが放った光の矢は途中で無数の矢に分裂し、使い魔の大群を一掃した。

 

キュゥべえ「うわああああっ!!」

 

マミ「よくわからないけど、私達はいつも以上の力を手にしたみたいね」

 

マリア「さあ、あの子達に続くわよ!」

 

 まどかと響と未来に続き、マリア達も使い魔の大群に向かっていった。マミは何万というマスケット銃を出し、クリスの傍に来た。

 

マミ「雪音さん、そっちの準備はいい?」

 

クリス「ああ、一気にいくぜ!」

 

 そのまま2人とも一斉に発射し、使い魔を蹴散らした。杏子の方は何十もの自身の分身を出して使い魔を蹴散らした。

 

杏子「今日はこんなに出せるのかよ!」

 

 杏子自身もいつも以上に分身を出せた事に驚いた。さやかと仁美は翼と共に使い魔を凄いペースで蹴散らしていた。

 

仁美「やああああっ!!」

 

さやか「てりゃあああっ!!」

 

 広範囲の鎌鼬を起こしたり、扇をブーメランのように投げて使い魔を一掃する仁美と翼と共に使い魔を蹴散らすさやかはその場の使い魔がいなくなった後、背中を合わせた。そして、ほむらは再び可能になった時間停止で時間を止めている間に火器を発射し、一斉に放つようにして使い魔を一掃した。

 

マリア「時間停止はまた使えるようになったみたいね」

 

切歌「最初から素直に協力してくれればいいのに、ほむらはとんだ石頭なのデス!」

 

マリア「口より先に手を動かしなさい、2人とも!」

 

調「うん…!」

 

 響達の戦いは避難所にいる人達にも見えていた。

 

八紘「我々にも見えているとは…!」

 

慎次「凄い戦いです…!」

 

 怪獣は使い魔が一掃された事に驚いていた。

 

キュゥべえ「こんな数の使い魔が一掃されるなんて!?」

 

???「これが人間の力だ、ケダモノが!」

 

 突然のパンチに怪獣は倒れ込んだ。パンチを入れたのは弦十郎であった。

 

キュゥべえ「人間の力だと!?僕との契約なしに文明を発展させる事のできない下等生物にそんな力があるものか!!」

 

 人間の力を認めようとしない怪獣は触手やビームで応戦した。グリーフシードを更に取り込んだために力を増したが、押されている事に変わらなかった。そして、他の面々も来た。

 

クリス「あのケダモノ、恐ろしいぐらいしぶといな…!因果を燃やして力を引き出す特性ファウストローブでもまだ倒れないでいやがる…!」

 

了子「だったら、あれの出番ね。弦、切り札をあの子達に渡してあげて!」

 

弦十郎「わかった!響君、切り札を受け取れ!」

 

 了子はケースから起動済みのデュランダルを取り出し、弦十郎に渡してから弦十郎はデュランダルを響目掛けて投げた。

 

響「デュ、デュランダルを!?」

 

 いきなりデュランダルを投げ渡された事に響は戸惑ったが、2人の気持ちに応えて響はデュランダルを受け取った。

 

響「ううっ…!」

 

翼「いかん!このままだと立花が!」

 

 デュランダルを手にした事で響が暴走しそうになったが、直感で気付いたまどかがその場に来て、どこからともなく出した花を響の手に置き、その花の蔓が伸びて響の手とデュランダルに絡まると、響の暴走が止まった。

 

未来「響の暴走が止まった…?」

 

響「あれ…?何ともない…」

 

まどか「私が暴走を止めたの。何となく、響さんが暴走しそうだったから」

 

響「今度はまどかちゃんに助けられたよ」

 

キュゥべえ「その聖遺物が僕を倒す切り札なら、それをよこせぇ!!」

 

 デュランダルを奪い取ろうと怪獣は触手を伸ばしたが、さやか達が切り裂いた。

 

さやか「あの聖遺物はあんたには渡さないよ!」

 

キュゥべえ「何だとォ!?」

 

???「正念場だ、踏ん張りどころだよ!」

 

 突然、誰かの声がしたが、そこにはまどかの家族や避難所にいた人達もいた。

 

了子「あなた達!」

 

八紘「どうしても見たいという事で、彼等は来たんだ」

 

恭介「アニメの魔法少女みたいだけど、勝利はもうすぐそこのはずだよ!」

 

中沢「頑張れ、天使みたいな女の子たち!!」

 

和子「このような怪獣が相手の時に必ず勝つのが正義の味方であるはずですよ!」

 

 人々の声援に響達の闘志はさらに燃え上がった。

 

マミ「魔法少女の戦いは今まで普通の人には見る事ができないし、わからないものだったけど、今回は見えているようね」

 

さやか「だったら、尚更の事、正義の味方として必ず勝利しなきゃ!」

 

仁美「上条君やまどかさんの家族に先生達が見ていらしているのですから!」

 

キュゥべえ「目障りな声を上げるな、下等生物共が!」

 

 カルマノイズの瘴気の影響で負の感情などの一面だけが肥大化し、苛立った怪獣は人々に攻撃しようとしたが、ほむらの時間停止を使った事による切歌と調のユニゾン技やマミのボンバルダメントと仁美の鎌鼬、そしてクリスの火器一斉発射や未来の暁光をまともに受けて吹っ飛ばされた。

 

キュゥべえ「うわああああっ!!」

 

マリア「まだ終わりじゃないわよ!」

 

 続いて翼とマリア、さやかと杏子の攻撃を受け、怪獣はボロボロになって倒れてしまった。

 

キュゥべえ「ぼ、僕が……!」

 

杳馬「俺の予知通り、これまでのようだな、ダンナ」

 

キュゥべえ「予知通り!?」

 

杳馬「ダンナに見せた予知は響ちゃん達が介入しなかった場合のもんさ。響ちゃん達が介入した事による未来をダンナに知られたら、望み通りで面白いシナリオにならねえしな」

 

キュゥべえ「杳馬は最初から僕を利用していたのか…!?」

 

杳馬「それはダンナも同じじゃねえか。ま、今まで絶望して魔女になった魔法少女のように、ダンナも絶望してその命を宇宙の寿命を延ばすために役立てな!じゃあな!」

 

 杳馬はキュゥべえを見捨てて姿を消した。

 

キュゥべえ「そんな…!僕の未来は破滅だなんて……!」

 

響「まどかちゃん、一気に勝負を決めるよ!」

 

まどか「うん!」

 

 響のところに未来達が来て共にデュランダルを手に取り、まどかの所にはほむら達が来てくれた。

 

まどか「みんな、私はみんなと一緒に戦う事ができてうれしいよ!」

 

ほむら「私も、これでまどかの死の運命を変える事が出来て、本当にうれしい!」

 

仁美「感想を言う前に、全ての元凶を倒しましょう!」

 

 6人の力を合わせ、まどかは特大の光の矢を放とうとしていた。

 

響「もう一度デュランダルを使う事になるなんて」

 

マリア「ルナアタック事変ではこうやってフィーネを倒したのね?」

 

未来「そうだよ」

 

切歌「今度はあのケダモノを一刀両断デス!」

 

調「本当だったら、切り刻んでやりたいぐらい…!」

 

 デュランダルの力を全開にし、巨大なエネルギー刀身が出現した。

 

キュゥべえ「その力、一体何なんだ!?」

 

響「人間の事がわからないお前には絶対に理解できない!」

 

まどか「エンキさんが言った、まだ見ぬ未来を切り開く、人間の力なんだからぁあああっ!!」

 

 響は未来達と共にSynchrogazerを放ち、まどか達は6人の力を束ねた光の矢、コネクトを放ち、光の矢は怪獣の身体に大きな穴を開けて貫き、その後にデュランダルによって一刀両断された。

 

キュゥべえ「そ、そんな……僕の計画が全て潰されたなんて!僕は宇宙の寿命を延ばすためにこれまでやってきたのに、下等生物に出し抜かれて殺されるなんて…、下等生物があんな力を出せるなんて……、そんなの、わけがわからないよ~~!!!」

 

 自分の計画が完全に潰された事による絶望となぜ殺されなければならないのか、人間の力がなぜあれほどまで出せるのかが理解できないまま、キュゥべえは融合しているワルプルギスの夜と共に爆発し、四散したのであった。

 

響「勝った……!」

 

まどか「私達、ワルプルギスの夜とインキュベーターに勝ったんだよ!」

 

 喜ぶ一同だけでなく、戦いを目の当たりにした市民たちも一同を褒め称えたのであった。

 

ほむら「(これで長く続いた私の戦いも終わった…。結局、私に足りなかったのは誰かを信じる心だった…。私が立花響を嫌っていたのも、誰かを信じ、手を取ろうとしなかったせいなのかも知れない…)」

 

 今までほむらがうまく行かなかった事は、誰かを信じる勇気がなかった事であった事を悟ったのであった。

 

 

 

了子の家

 

 そして翌日、ワルプルギスの夜との戦いが終わった後に帰った星矢親子に続き、響達も帰る事となった。

 

弦十郎「もう帰るのか」

 

了子「もうちょっとゆっくりしてもいいのよ」

 

翼「異変を解決した以上、私達も帰らないといけません」

 

クリス「ま、あたしらの世界の事もあるしな」

 

弦十郎「それもそうだな」

 

切歌「さやか、一緒に過ごした日々は嬉しかったデス!」

 

さやか「色々あったけど、みんながいてくれたからあたし達も生き残る未来を掴めたしね!」

 

仁美「帰ったら、ブラックジャック先生にお礼を言ってください」

 

調「そう伝える」

 

マリア「マミ、あのケダモノの本体は倒しても、他の本体がいる上、まだ魔女は根絶できてないわ。後輩達と一緒に頼むわよ」

 

マミ「ええ。あの時と違って、もう私は1人じゃないわ」

 

杏子「あたしもこの街に留まるとするか」

 

翼「それでは帰るとするか」

 

 そんな時、まどかとほむらが響と未来を引き留めた。

 

まどか「待ってください、響さん」

 

響「どうしたの?」

 

まどか「その…お礼を言いたいんです。私、今まで自分に自信がなかったんですけど、自信を持つきっかけを作ってくれた響さんにお礼を言いたくて……」

 

未来「響に?」

 

響「私は大した事はしてないよ」

 

まどか「だとしても、私には自信を持つきっかけになったんです」

 

 まどかの真剣な目に響も感心したのであった。

 

ほむら「それと立花響、私からもお礼を言いたいわ。ありがとう…」

 

 今まで過剰な憎しみを向けたほむらが突然、お礼を言った事に一同は驚いた。

 

さやか「ほむらがお礼を言った!?」

 

切歌「熱でもあるのデスか!?」

 

ほむら「そんなものはないわよ。私はお礼を言いたいだけ。私が忘れていた、誰かを信じる勇気を思い出させてくれた事をね。私は人づきあいはいい方ではないから、誰かを頼らないのと合わさってあなたを敵視していたの」

 

響「ほむらちゃん…」

 

未来「人づきあいが得意とか不得意とかは人それぞれだよ。無理をする必要はないから、信じあえる人達がいれば大丈夫だよ」

 

ほむら「そうね…」

 

 今までにないほどの柔らかい表所になったほむらであった。

 

響「それじゃあみんな、さようなら!」

 

 響達は元の世界に帰った。

 

まどか「行っちゃったね……」

 

了子「まどかちゃん、特製ファウストローブをだいぶ酷使したから壊れる寸前だけど、あと1回ぐらいはまどかちゃんの因果を燃やして何かお願い事を叶えられるわよ。何にするの?」

 

まどか「願い事?」

 

ほむら「インキュベーターのものと違って、代価と引き換えの願い事だから、しっぺ返しは来ないわ。何にするの?」

 

まどか「私……みんなが持っている魔女にならないソウルジェムを持つ魔法少女になりたい!」

 

 まどかがそう願うと、ラピスは輝き、天使の羽のアクセサリーがついたソウルジェムへと変化した。

 

弦十郎「何か異常はあるか?」

 

まどか「身体から何かを抜かれたような感じ以外は何とも……」

 

さやか「これでまどかも魔法少女になって、見滝原を護る魔法少女は6人になったわね」

 

マミ「6人になったから、前から考えていたチーム名をアレンジして、『ピュエラ・マギ・ホーリーセクステット』と名付けるわ」

 

杏子「チーム名か……」

 

仁美「チーム名があれば、何かと便利だと思いますわ」

 

まどか「とりあえずみんな、これからもよろしく!」

 

 絶望と言う名の夜を抜け、希望という名の朝が来たのであった。

 

 

 

魔女の結界

 

 そして数日後…。

 

まどか「これで終わりだよ!」

 

 まどかが放った矢で魔女は消滅した。

 

 

 

市街地

 

 魔女が倒された事で結界は消滅した。

 

さやか「登校途中で魔女と遭遇するなんてなぁ」

 

まどか「でも、インキュベーターはもう見なくなったし、魔女が現れる数も少なくなったよ」

 

仁美「新しいソウルジェムは負の感情で穢れはたまりませんし、穢れが限界になると放出されて途方もない力を発揮できますから」

 

さやか「あたしも試しに限界まで穢れを溜めたら、人魚の姿の魔女みたいなのが出てきたし!」

 

 3人とも新しいソウルジェムを見つめていた。

 

仁美「無理にグリーフシードを手に入れる必要もなくなって、こうやって3人で登校する日常に戻れましたわ」

 

まどか「前と違って私達は魔法少女だから、より仲良くなれたよね?」

 

仁美「そうですね」

 

さやか「しっかし、まどかは特製ファウストローブで因果を燃やしたのに、まだあれ程の力を出せる魔法少女になったなんて」

 

 そこへ、マミが来た。

 

マミ「暁美さんが2回時間を遡った際の因果が残っていた可能性があるわ」

 

さやか「ずるいぞ、スーパールーキー!」

 

まどか「そうかな…?」

 

 マミの後ろには制服姿の杏子がいた。

 

仁美「そう言えば杏子さんは学校に通う事になりましたね」

 

まどか「制服、似合ってるよ!」

 

杏子「制服は窮屈だし、学校なんて面倒なのに…」

 

マミ「そう言わないの。弦十郎先生のお兄さんが生活の保障はするから、ちゃんと学校へ行きなさいって言ったでしょ?」

 

 マミの指摘に杏子は何も言えなかった。学校の前に来ると、ほむらが笑みを浮かべて待っていた。

 

まどか「ほむらちゃんが待ってくれてるよ!」

 

ほむら「(ようやく時間が動き出したのかも知れない…。日常という名の時間が……)」

 

 こうして、まどか達はたまに魔女を狩りつつ、日常に戻れたのであった。そんなまどか達をキュゥべえが見ていた。

 

キュゥべえ「まどか達は魔女になる運命を逸脱した魔法少女になったけど、あの不思議な現象は初めてだ。神浜市で発生している現象と似てるみたいだけど…。おまけに魔女化ほどでないにしろ、エネルギーも回収できるし、何度でも回収可能だから効率がいい。無理に刺激するより、放っておいた方が合理的だね」

 

 合理的思考により、キュゥべえはまどか達への干渉はしない方針にした。

 

 

 

了子の家

 

 その頃、大人達はある事で集まっていた。

 

弦十郎「八紘兄貴、あれから市民の方はどうだ?」

 

八紘「了子がデュランダルを使った発電機を開発してくれたおかげで、発電所の修復が終わるまでの電力の確保は問題ない。壊された場所も復興しつつある」

 

慎次「弦十郎先生、色々と資料を持ってきました」

 

 慎次は資料を見せた。

 

了子「これは魔法少女絡みの事かしら?」

 

慎次「そうです。この事件の後、世界各国の魔法少女の伝承を集めてみました」

 

八紘「やはり、インキュベーターは色々と関わっていたみたいだ…」

 

弦十郎「そういや、親父は死ぬ前に時女やら、巫やら、悪鬼やらって言ってたな」

 

八紘「時女か…」

 

弦十郎「親父が生きていた頃、風鳴と肩を並べていた日本政府の暗部を担っていた一族だな。俺が高校生の頃に親父が病で死んだ後、風鳴は発言力を急速に失っていった」

 

八紘「風鳴が落ちぶれて私達が自由になれたのも、皮肉なものだ……」

 

慎次「それと引き換えに発言力を強めたのが時女一族でしたね」

 

弦十郎「時女一族は元から親父と対立していたからな。目の上のたん瘤がなくなって奴等はやりたい放題だ」

 

八紘「しかし、時女一族の拠点はGPSにも映らない場所にあると聞いた。そんな一族が、なぜ日本政府の暗部を担えるのか…」

 

了子「もしかしたら、魔法少女絡みの事じゃないの?」

 

 そんな了子の鶴の一声に3人ははっとした。

 

弦十郎「魔法少女か!」

 

了子「インキュベーターの契約は因果次第で願い事は何でもできるから、魔法少女にする子にその願いを言わせ、それをインキュベーターに叶えさせる事であの発言力を得たんじゃないかしら?」

 

八紘「なぜ、それを?」

 

弦十郎「了子は先史文明の巫女、フィーネの子孫で、フィーネが転生するためのシステムの不具合で記憶だけを受け継いだんだ。だから、わかったんだろう」

 

八紘「それは頼もしいな」

 

了子「古来の日本ではインキュベーターは『久兵衛様』という神の使いとされてて、インキュベーターがいる地域では災害やそれによる飢饉が発生した際、まどかちゃんぐらいの歳の子に願い事を叶えさせる風習があったみたいよ。といっても、昔の世界各国ではインキュベーターを天使とか、神の使いと崇めていたみたいよ」

 

弦十郎「インキュベーターが!?」

 

慎次「当時は今と価値観が違うので、今以上にメリットが大きく、デメリットも当時の人達からすれば大したものではなかったのでしょう」

 

八紘「価値観が違う時代では、こうも変わるのか…」

 

慎次「武士の時代になってから、日本では基本的に男尊女卑の風潮になったようですが、インキュベーターがいた地域では逆に女尊男卑の風潮が強かったようで、それに関する記述がある資料もありました」

 

了子「それも当然よ。フィーネは武士の時代に何度か日本人に転生したみたいだけど、女の子の価値は下手な男の子よりも高くて、女の子を多く産むように神社に祈祷する女性も多かったわ」

 

弦十郎「とんだ事実だな…!」

 

了子「そして、魔法少女が軍事利用されていた時代もあって、フランスのジャンヌダルクも魔法少女として契約し、戦争に参加したみたいよ」

 

八紘「魔法少女の軍事利用……!」

 

弦十郎「大人達は何を考えているんだ!と言いたいが…、当時はそうも言ってられなかったのだろうな……!」

 

 弦十郎のモットーと相反する事実ではあったが、当時の事情も弦十郎は察していた。

 

了子「日本での魔法少女、当時は巫の軍事利用は結構遅かったみたいで、日本で初めて魔法少女を軍事利用したのはあの織田信長だったのよ」

 

弦十郎「あの織田信長だとぉ!?」

 

了子「その時のフィーネはお市の侍女みたいで、信長は偶然、魔法少女が魔女を倒しているのを目の当たりにして軍事利用を思いつき、数々の戦国大名を討ち取ってきたわ。長篠の戦で武田軍を破ったのも、鉄砲隊に加えて魔法少女を投入してきたからなの」

 

慎次「まさか、長篠の戦に魔法少女が関わっていたとは…!」

 

了子「武田軍もある程度は鉄砲隊を警戒してたみたいだけど、魔法少女は想定外で、大敗しちゃったってわけ。それに、信長は妹さん共々インキュベーターが見えてたみたいで、魔法少女の確保も簡単だったらしいわよ。でも、信長は魔法少女が魔女になる事実も知ってて、魔女になりそうな魔法少女を処刑してたの。魔法少女の処刑は魔女による自分達への被害を抑えるためだったけど、それを知らない光秀は誤解して、歴史書でもある色んな理由と重なって信長に謀反を起こしちゃったの」

 

八紘「事情を知らなければ、そういう解釈をしてもおかしくはない」

 

了子「信長亡き後はインキュベーターが見える戦国大名は徳川家康ぐらいで、秀吉には見えなかったし、奥さん達でさえも見えなかったの。それで、魔法少女の確保が難しくて時間がかかる秀吉が勝てなかった戦は割とあったし、秀吉亡き後に起こった関ヶ原の戦いでは多くの魔法少女を確保し、光成率いる西軍の小早川秀秋率いる魔法少女部隊を寝返らせて家康率いる東軍は勝利できたのよ」

 

弦十郎「魔法少女が日本の歴史を動かしていたとは……!」

 

慎次「インキュベーターの『人類の文明は全て自分達が発展させた』は誇張表現でしたけど、関わっていた事自体は事実みたいですね」

 

了子「時は過ぎて、明治辺りになったら多くの地域でインキュベーターの存在はすっかり忘れ去られてしまったけど、時女一族はその風習を守り続けてきたわ。太平洋戦争の時は軍部と対立してたから、日本軍はインキュベーターの恩恵を受けられずに敗戦し、戦後に軍部は解体されちゃったわけ。時女一族については軍部と縁を切った事で戦争に関わってないし、あのマッカーサーでさえ時女一族の存在を見つけられなかったから、お咎めなしで済んだの」

 

八紘「なるほど、多くの人がインキュベーターの存在を忘れてしまった事で時女一族は連合軍でさえ気付けない歴史の裏に潜む事ができたからこそ、風鳴にも並ぶ発言力を有していたのか」

 

慎次「歴史というのは、僕達の知らない事情も多いですね…」

 

了子「そうね。そして、そろそろ時女一族の闇が動き出してもおかしくないわね……」




これで今回の話は終わりです。
今回はまどか達とキュゥべえの戦いの決着と、魔法少女が歴史に関わっていたという事実を大人達が知る話になっています。
大人達の話に関しては、魔法少女が歴史に関わっているという、まどかマギカの世界観の設定から思いついたもので、主に日本の歴史をやりました。
日本で初めて魔法少女を軍事利用した人物が織田信長で、キュゥべえがいた地域では女尊男卑の風潮になっていたのは自分が考えたものです。
そして、ドッペルや時女一族といったマギアレコードのネタも入れていて、時女一族が風鳴とタメを張れる発言力を有した一族で、訃堂の死後に発言力を強めたのも思いつきました。
次の話は装者サイドの後日談となりますが、主にブラックジャックがメインとなります。そして、放送中のヒーリングっどプリキュアも絡んだ話になるかも知れません。

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