セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

15 / 198
15話 蘇る兄弟愛

公園(並行世界)

 

 星矢と瞬の戦いが始まった。

 

エスメラルダ「一輝、このままだと」

 

一輝「だが、助太刀はよほどの事態にならなければしない」

 

 弟の事が大切な一輝ではあるが、瞬を探すのを手伝ってくれた星矢の気持ちにも応えるために助太刀はよほどの事になるまでしない事にした。星矢と瞬のぶつかり合いは互角であった。

 

星矢「(あの泣き虫の瞬が一切躊躇しなかったらこれほどまでに強かったとは…!そう言えば、俺は瞬とはまともに戦った事さえなかったな…!)」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 星矢と瞬の戦いは二課でもエネルギー反応で把握していた。

 

朔也「公園のエリアから高エネルギー反応を二つも検知!」

 

弦十郎「何だと!?」

 

あおい「これはノイズの反応でも聖遺物の反応でもありません!それに、数日前のノイズよりも遥かに大きなエネルギー反応です!」

 

弦十郎「それが聖闘士の小宇宙だとでもいうのか…?」

 

 

 

 

 

公園(並行世界)

 

 星矢と瞬の光速のぶつかり合いは続いていた。

 

星矢「瞬、小さい頃のお前はいつも助けてくれた一輝を慕ってたじゃないか!なぜそんなお前が一輝に拳を向ける!?」

 

瞬「助けてほしい時に僕を助けてくれなかったからだ!僕はフェニックスの聖衣を手に入れてからずっと聖域からの刺客や冥闘士に追われていたんだぞ!どんなに助けを求めても星矢達はおろか、兄さんも来てくれなかった!僕は独りなんだ!」

 

星矢「(何!?俺達の世界の瞬が悪夢でうなされていた時と同じ事を…)」

 

 悪夢にうなされていた瞬と同じ事を並行世界の瞬が言ったため、そこを疑問に思って生じた隙を瞬は見逃さなかった。

 

瞬「隙を見せたな!鳳凰幻魔拳!」

 

 隙を突かれてしまい、星矢は幻魔拳を受けてしまった。

 

 

 

幻覚

 

 星矢は潮の満ち引きが激しい場所で磔にされている沙織を救うため、ポセイドンが乗り移っているジュリアンと対峙していた。

 

星矢「ポセイドン、潮が満ちるまでにアテナを救うためにもお前を倒す!」

 

ジュリアン「ふん、人間が神に敵うものか!」

 

星矢「そんなものはやってみなければわからん!ペガサス流星拳!」

 

 流星拳を放ったものの、全てジュリアンに跳ね返されて星矢に当たってしまった。

 

星矢「うわああああっ!!」

 

 跳ね返された流星拳を受けて星矢は吹っ飛ばされた。しかし、すぐに立ち上がった。

 

沙織「星矢!」

 

星矢「こんな所で終わりじゃないぞ!勝負はこれからだ!」

 

 そんな中、沙織に左胸に黄金の矢が刺さった。

 

沙織「ああっ!」

 

星矢「沙織さん!」

 

???「バカめ、隙を見せたな!ギャラクシアンエクスプロージョン!」

 

 突然の出来事に星矢が驚いた隙に何者かがギャラクシアンエクスプロージョンを放って星矢を吹っ飛ばした。

 

星矢「うわあああっ!!」

 

 沙織に黄金の矢を放ち、星矢を吹っ飛ばしたのは悪人格のサガであった。

 

星矢「サガ!」

 

悪サガ「ふふふふ…。星矢よ、アイオロスに比べると情けないな。早く私とポセイドンを倒さねばアテナは死ぬのだぞ」

 

星矢「それなら、ポセイドン共々サガも倒すまでだ…!」

 

沙織「ああっ!」

 

 反撃しようとした星矢であったが、今度は吸血蝙蝠が沙織の元へ来て、数匹は沙織の首筋に噛みついて血を舐め、もう何匹かは黄金の矢が刺さった左胸から出ている血を舐めていた。

 

星矢「吸血蝙蝠だと!?うわあああっ!!」

 

 今度はサガでもジュリアンでもない第三者から攻撃を受けた。その攻撃した主は冥王ハーデスであった。

 

ハーデス「無様だな、ペガサスよ。お前はアテナを救う事ができないまま死んでいくのだからな」

 

ジュリアン「さて、止めだ」

 

悪サガ「ギャラクシアンエクスプロージョン!」

 

ハーデス「余の肉体に傷をつけたペガサスよ、今度こそ生まれ変わる事なく滅せよ!」

 

 悪サガのギャラクシアンエクスプロージョンとジュリアン、ハーデスの攻撃が星矢に放たれた。

 

星矢「おわあああああっ!!」

 

沙織「星矢~~!!」

 

 黄金屈指の実力者と神2人の攻撃で星矢は跡形もなく消し飛んだのであった。

 

 

 

公園(並行世界)

 

 幻魔拳を受けた星矢は動かなくなっていた。

 

一輝「星矢、どうしたんだ!?」

 

瞬「無駄だよ、兄さん。星矢は僕の幻魔拳で精神をズタズタに破壊された。もう死んだも同然だよ」

 

一輝「何っ…?」

 

 瞬は星矢に止めを刺そうと拳を向けていたが、その手は震えていた。

 

瞬「星矢に止めを刺したら、次は兄さんの番だ!今まで僕を助けてくれなかった」

 

 言い終わる前に瞬は殴られ、吹っ飛ばされた。

 

瞬「うわあああっ!」

 

エスメラルダ「一輝、星矢が!」

 

 瞬を殴ったのは星矢だった。

 

一輝「星矢、お前は幻魔拳で精神を破壊されたのではないのか?」

 

星矢「俺は一度幻魔拳を見た上、数々の戦いで地獄のような苦しみを味わったんだ…。だから、幻魔拳をまともに受けてもズタズタになりきらずに済んだんだろうな…」

 

 吹っ飛ばされた瞬は立ち上がった。

 

瞬「星矢、まさか幻魔拳を受けて精神をズタズタにされていなかったのは予想外だったよ。でも、今度は全力で叩きのめす!」

 

星矢「瞬、人を殺める覚悟もない弱虫に俺は負けはしない!」

 

瞬「ぼ、僕が弱虫だって!?」

 

 

 

回想

 

 星矢の言った事はかつてシャカにも指摘された事であった。

 

瞬「お前も僕を殺しに来たのか!?」

 

シャカ「違うな、偶然通りかかっただけだ」

 

瞬「嘘だ!僕を殺しに来たんだ!そんな嘘には騙されないぞ!鳳翼天翔!」

 

 殺しに来たと早とちりした瞬はシャカに攻撃を仕掛けたが、容易く受け止められた。

 

瞬「そんな!微動だにもしないなんて!」

 

シャカ「ふっ、まるで涼風のようだ。それに…、君は人を殺すのが怖いのではないのかね?」

 

瞬「なっ…!?」

 

 瞬は怒りに任せてしまったとはいえ、ギルティを殺した事が未だにトラウマになっており、そこをシャカに見抜かれてしまった。

 

シャカ「図星のようだな。ありのままの自分らしさを無理にしまいこもうとしているだけで君の心はとても清らかだ。近寄りがたい雰囲気を装っていても情に流されて敵に止めをさせなかったり、人を助けたりしているのだろうな」

 

瞬「僕は人を助けたりなんかしてない、してないんだ!」

 

 怒った瞬は攻撃を仕掛けたが、シャカに一蹴されてしまった。

 

シャカ「力の差を弁えない上、他人を殺める覚悟もない君が私に勝てるとでも思っているのかね?もっとも、君にはその方がいいのかも知れないのだが…」

 

 シャカは瞬に止めを刺す事なく去ろうとした。

 

瞬「待て…、勝負は…」

 

シャカ「フェニックスよ、もっと自分に正直になりたまえ。今の君は人殺しが怖い自分を偽っているだけの弱虫に過ぎないのだからな。私が初めて会った君にこうもお節介を焼くのは何の縁やら…」

 

 瞬の話も聞かず、そのままシャカは去って行った。

 

 

 

星矢「地獄のような苦しい思いをしたのはお前だけじゃないんだぞ!!」

 

 星矢は瞬を殴り飛ばし、今度は星矢の反撃が始まった。

 

瞬「そんな…、幻魔拳で神経がボロボロになったんじゃないのか!?」

 

星矢「言ったろ、人を殺める覚悟もない弱虫なんかには負けないと!リディアンのあいつらから聞いたぞ、お前は不良に止めを刺そうとした際に手が震えて刺せなかったと!それはお前が人を殺すのが怖くて覚悟ができていない証拠だ!」

 

瞬「な、何っ…!?」

 

星矢「それで俺は確信した!お前は憎しみに染まってなんかいない!泣き虫で弱虫のまま力が強くなっただけだとな!」

 

瞬「ふざけるな!」

 

 怒った瞬は殴りかかったが、星矢の小宇宙は燃え上がっていてかわすなり、受け止めるなりしていた。

 

星矢「みんな同じように地獄の日々を潜り抜けて日本まで帰ってきたんだ!お前もデスクイーン島に行く前に一輝にくじけるなと言われたのにいじけやがって、この弱虫め!」

 

瞬「いじけて何が悪いんだ!?あんな生き地獄の苦しみが、誰も助けてくれなかった孤独が星矢達にわかってたまるか!」

 

星矢「瞬、確かにデスクイーン島での地獄の日々が俺達の想像も及ばないものだったかも知れない。だが、お前が言う『誰も助けてくれなかった』はお前が周りをよく見ようとせずに一輝から逃げていたからじゃないのか!?」

 

瞬「逃げてたんじゃない、兄さんは来てくれなかったんだ!」

 

星矢「このわからずや~!」

 

 星矢はペガサス流星拳で瞬を殴り飛ばした。殴り飛ばされた瞬は起き上がった。

 

瞬「もう僕も本気で怒ったぞ、星矢!最強の技で仕留めてやる!」

 

星矢「こっちも渾身の技で迎え撃って、お前のねじ曲がった性根を叩き直してやる!」

 

瞬「喰らえ、鳳翼天翔!!」

 

星矢「アトミックサンダーボルト!!」

 

 鳳翼天翔とアトミックサンダーボルトがぶつかり合ったが、アトミックサンダーボルトが押していた。

 

瞬「そんな、鳳翼天翔が!」

 

星矢「俺は1人で戦っているんじゃない!俺には紫龍や氷河、一輝を始めとした友や沙織さんを始めとした大切な人達がたくさんいる!1人ぼっちのお前に勝つ術はないんだ!」

 

 力強い星矢の言葉と共にアトミックサンダーボルトが押す勢いが増大し、鳳翼天翔を押し切って瞬を盛大に吹っ飛ばした。

 

瞬「うわああああっ!!」

 

 吹っ飛ばされた後、瞬は大の字で地面に激突した。星矢は瞬に近づこうとしたが、一輝が制止した。

 

一輝「星矢、後は俺に任せてくれ」

 

星矢「一輝…」

 

エスメラルダ「星矢さん、一輝の言う通りにしてあげて」

 

 星矢はエスメラルダの言う通り、一輝に任せる事にした。瞬は大ダメージを受けながらも立ち上がった。

 

瞬「兄さん…、僕に止めを」

 

一輝「瞬、お前は俺が許せないのだろう?ならば、気のすむまで俺を殴れ!」

 

エスメラルダ「一輝!?」

 

 その発言に星矢とエスメラルダは衝撃を受けた。

 

一輝「お前の言う通り、俺はお前が苦しんでいても助けに来なかったダメな兄だ。そんなに俺が憎いのなら、思いっきり気のすむまで俺を殴り続けろ!」

 

瞬「兄さん…!」

 

 瞬は一輝を殴ろうとしたが、殴ろうとすると寸前で止めてしまい、拳が震えていた。

 

瞬「できない…、兄さんが憎いと思っててもできない!!うわ、うわああああん!!!」

 

 殴りたくても殴れない瞬は涙を流した。

 

一輝「瞬、お前はその泣きっ面も、襲われている人を助けるお人好しな所も全く変わってないじゃないか…。お前は生き地獄を味わい、ただ捻くれただけで憎しみの化身になっていなくて本当によかった…」

 

瞬「兄さん…!」

 

 人が変わったように見えても瞬の本質が全く変わっていなかった事に安心した一輝は瞬の頭を撫でた。その表情は安心した表情である上、涙を流していたのであった。

 

星矢「最後は一輝にいい所をとられちまったな…」

 

エスメラルダ「でも、そっちの方が丸く収まると思いますよ」

 

 兄弟の和解に星矢とエスメラルダは微笑んだのであった。だが、そんな空気を変えるかのように通信が入った。

 

弦十郎『星矢、一輝、ノイズが出現した!直ちに現場に向かってくれ!』

 

星矢「カルマノイズだって!?」

 

エスメラルダ「どうしたのですか?」

 

星矢「ノイズが出たそうだ!急いで」

 

 急行しようとした星矢だったが、その場で苦しそうに膝をついてしまった。

 

一輝「どうした?星矢!」

 

星矢「どうやら、今になって幻魔拳によるダメージが現れてしまったようだ…!」

 

瞬「僕の幻魔拳は効いてないわけじゃなかったんだ…!」

 

 幻魔拳のダメージが現れた体で無理をしようとしたが、エスメラルダに止められた。

 

エスメラルダ「いけません、星矢さん!そんな体で戦いに行っては死ぬだけです!」

 

星矢「だが…」

 

一輝「ここは俺が行く。瞬とエスメラルダは星矢を頼む」

 

 星矢の事を瞬とエスメラルダに任せ、一輝が現場へ向かう事となった。

 

 

 

市街地(並行世界)

 

 マリア達はノイズ迎撃のために出撃していた。

 

翼「2人共、手を貸してくれるのか?」

 

マリア「ええ。星矢と一輝はどうなの?」

 

翼「司令からの話では、星矢は一輝の弟との戦いのダメージが大きくて戦闘に参加できず、一輝が来てくれるそうだ」

 

マリア「わかったわ。それで、状況は?」

 

翼「近隣住民の避難がまだ終わっていないのだ。ノイズにこれ以上街中を闊歩させるわけにはいかん。人手が欲しかった所だ。正直、助かる」

 

クリス「人手っていや…あいつも騒ぎを嗅ぎつけてきたんだな」

 

 視線の先には響がいたのであった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 そして、ノイズは装者達の手で全滅したのであった。

 

朔也「ノイズの反応沈黙」

 

あおい「装者達にも大きな損害はない模様です」

 

弦十郎「並行世界からの援軍か…正直、助かるな。ずっといてもらうわけにもいかんのが辛い所だがな」

 

朔也「しかし、聖闘士の星矢と一輝にすぐに来てもらうように要請しましたけど、無駄足だったようですね」

 

 そう言ってると、警報が鳴った。

 

朔也「し、司令!新たなノイズの反応を検知!」

 

あおい「なんなの、この反応の大きさは!?」

 

弦十郎「これは…!まさか、数日前の…」

 

 

 

市街地(並行世界)

 

 マリア達の手でノイズは全滅した。

 

クリス「これであらかた片付いたか?」

 

マリア「ええ。一輝の手助けは必要なかったようね。これでようやく彼女と話す時間が取れるわ」

 

 話をしようとした途端、弦十郎から通信が入った。

 

弦十郎『気を付けろ!すぐ近くに強力なノイズの反応を検知した!反応からして数日前の奴の公算が高い!』

 

マリア「どうやら、彼女から無理に話を聞く必要はなくなったようね」

 

クリス「ああ…この世界にもやっぱりこいつがいたんだな…」

 

 カルマノイズが姿を現したのであった。

 

翼「なんだ、あの異様な姿のノイズは…?」

 

マリア「あれがカルマノイズよ。一筋縄ではいかないから、油断しないようにね」

 

 カルマノイズを目の前にした響は怒っていた。

 

マリア「(この反応…。やっぱり、先日彼女が見たのもこいつだったみたいね…)」

 

クリス「奴が逃げ出さないうちに速攻で片づける!」

 

マリア「ええ、わかってるわ!」

 

 装者達はカルマノイズと応戦したが、カルマノイズの再生力と高い戦闘力に苦戦していた。

 

マリア「まだ再生するというの!?」

 

クリス「くそっ、しぶとすぎんだろ!」

 

響「おおおおおっ!!」

 

 響は突っ込んでいった。」

 

クリス「バカ、考えなしに突っ込むな!」

 

 クリスが言った通り、響はカルマノイズの反撃を受けた。

 

響「かはーっ!?」

 

マリア「まずいわ!」

 

 カルマノイズは響に追い討ちをかけようとした。しかし、それを鎖が阻んだ。

 

マリア「この鎖は…?」

 

クリス「こいつは瞬!じゃなかった、一輝だ!」

 

 ネビュラチェーンを見てクリスは一瞬だけ瞬と間違えたのであった。鎖が戻っていくと、そこには一輝がいた。

 

翼「一輝、今までどこに…?」

 

一輝「俺の弟の瞬が見つかったが、説得に時間がかかってな」

 

クリス「全く、いいタイミングで来てくれたじゃねえか!」

 

一輝「間一髪…という所か。それと、こいつがお前達の言ってたカルマノイズだな?」

 

マリア「そうよ」

 

一輝「後は俺がやる。お前達は巻き添えにならんように引っ込んでいろ!」

 

 マリア達に代わり、一輝がカルマノイズと応戦した。

 

クリス「大丈夫か!?」

 

響「…余計な事、しないで」

 

クリス「なんだと」

 

響「…どうせみんな独り、誰も辛い時に助けてなんてくれない」

 

クリス「お前、何言って」

 

 一輝はチェーン捌きや体術でカルマノイズを圧倒していた。

 

一輝「ふっ、惰弱な化け物よ」

 

 挑発で言った一輝の言葉に反応したのか、カルマノイズは突っ込んだものの、軽く一輝に一蹴された。

 

一輝「人間を炭に変えて殺す化け物よ、貴様らにはこの世に居場所などない!そして、聖闘士に一度見た技は二度と通用しないのだ!」

 

 カルマノイズの攻撃は全て見切られており、チェーンで防御する事なくかわされていた。

 

一輝「貴様の攻撃など防ぐ必要すらない!ここで終わりにしてやる!ネビュラストリーム!」

 

 一輝の小宇宙で起こした気流にカルマノイズは絡みつかれ、身動きがとれなかった。

 

一輝「止めだ!このアンドロメダ最大の奥義を受けるがいい、ネビュラストーム!!」

 

 ネビュラストリームをストームへと変化させ、カルマノイズを消滅させたのであった。

 

翼「な、なんという威力だ…。私達が苦戦したカルマノイズを一瞬で倒してしまった…!」

 

マリア「これが黄金クラスの聖闘士の実力よ…。でも、カルマノイズの変異種のゴールドカルマノイズは小宇宙への耐性が非常に高いから、聖闘士の攻撃はよほど小宇宙を高めるか、装者と協力しなければ決定打にならないの」

 

クリス「一輝が来てくれて助かったぞ、サンキュー!」

 

 クリスからのお礼に一輝は微笑んだ。そして、戦いの終わりと共に響は姿を消したのであった。カルマノイズを倒した直後、鎖の反応する方向に一輝が視線を向けると、半透明のカルマノイズがいた事に気付き、その半透明のカルマノイズが消えたのであった。

 

 

 

公園

 

 その頃、未来は響と一緒に公園に来ていた。

 

未来「今日はいい天気だね」

 

響「ほんと、お陰でアイスもおいしい日和だね」

 

未来「(少し顔色よくなったかな…?よかった…)」

 

響「…クリスちゃんとマリアさんと星矢さん、今頃どうしてるかな?」

 

未来「2人だったら心配ないよ。それよりも、響はもっと自分の事を心配してよね」

 

響「あはは…ごめんごめ」

 

未来「響?」

 

 突如として響は苦しみ、倒れたのであった。

 

響「うぐーーーっ!?あ…あああっ!?」

 

未来「響!?どうしたの、響!?」

 

???「どうしたんだい!?」

 

 声がして未来が振り向くと、そこには響と同じ不調を抱えていたはずの瞬がいた。

 

未来「瞬さん、もう体の方はいいのですか?」

 

瞬「うん。少し前に急に体調が良くなったんだ。それよりも、急いで響を運ぼう!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 倒れた響は急いでS.O.N.Gの本部へ運ばれた。

 

響「未来…」

 

未来「響…」

 

響「ごめんね…また心配かけちゃった…」

 

 再び響は発作に襲われた。

 

瞬「無理をしてはいけないよ、響!まだ立てるような体じゃない!」

 

未来「もう少しよくなったら、一緒に帰ろう?だからここでもう少しだけ休んで。ね?」

 

響「うん…」

 

未来「(どうして、こんなに衰弱してるの…?)」

 

 エルフナインが入ってきた。

 

エルフナイン「未来さん…少しお話しがあります。発令所まで来ていただけますか?」

 

未来「…うん、わかった。ごめん、響。ちょっとだけ、みんなとお話ししてくるね」

 

響「……」

 

瞬「話が終わり次第、未来はすぐ戻ってくるから待っててね」

 

 未来達は発令所に来た。

 

翼「立花の容態は」

 

切歌「どうなんデスか!?」

 

エルフナイン「先日からメディカルチェックを何度も繰り返していますが、残念ながら、以前、原因は不明のままです」

 

調「でも、同じような不調を抱えた瞬さんは元気になったよ」

 

エルフナイン「その原因も不明です」

 

弦十郎「だが、響君の衰弱は尋常ではない。瞬の不調といい、これはもはや通常の疾症が原因とは考えにくいだろう」

 

調「打つ手はないんですか?少しでも手掛かりとか…」

 

エルフナイン「原因はわかりませんが、神経パルスの乱れが日に日に増大する傾向にあるようです。肉体的な衰弱も、主に精神面から来ていると思われます」

 

未来「精神面…」

 

沙織「瞬の不調もそこから来ていたのですか?」

 

エルフナイン「ええ、そうです。この前、響さんと瞬さんは悪夢にうなされていると言っていましたが、内容はわかりませんか?」

 

未来「それは…」

 

 未来は響が見た悪夢の内容をみんなに教えた。

 

弦十郎「響君がそんな悪夢を…?」

 

瞬「僕の見た悪夢とだいたい同じだ…!」

 

翼「瞬の見た悪夢と内容が似てるだと?」

 

瞬「うん。僕の見た悪夢はデスクイーン島で生き地獄を味わったり、刺客に襲われてばかりで誰も助けてくれないものだったんだ」

 

切歌「そんな事、あり得ないのデス!」

 

調「うん…響さんには、みんなついているもの」

 

美衣「それに、瞬さんはアンドロメダ島で修業していましたし、私達もいます」

 

翼「なのに…これは一体どういう事だ?」

 

 そんな時に警報が鳴った。

 

弦十郎「こんな時に襲撃か!」

 

瞬「僕も体調不良でみんなに心配をかけたし、ノイズの事で響に更なる心労をかけさせないために頑張らないと!」

 

翼「行くぞ、二人とも!」

 

 切歌と調は頷いた。

 

瞬「未来は響の傍にいてあげて」

 

未来「瞬さんこそ、まだ病み上がりなので無理はしないでください。翼さんと調ちゃんと切歌ちゃんも気を付けて」

 

 出撃を見送った後、未来は沙織と共に響の元に来た。

 

未来「ただいま、響…」

 

響「み…、く…?」

 

沙織「起きていたのですか?」

 

響「うん…。さっき、警報が聞こえたけど…」

 

未来「大丈夫。体調がよくなった瞬さんと翼さんと調ちゃん、切歌ちゃんが行ってくれたから。安心して」

 

響「そっか…。はぁ…ダメだなぁ…私。誰かを助けるために戦いたいのに、こんな状態で…」

 

未来「もう。今はゆっくり休む時だよ。変な事は考えないの」

 

響「今は、か…。本当に、今だけ、なのかな…」

 

未来「響?」

 

響「私、どうなるのかな…?このまま」

 

未来「どうにもなったりしない。絶対、絶対に…そんなのあたしが許さないんだから」

 

沙織「絶対にあなたを死なせはしません!」

 

響「み…く…、沙織…さん…」

 

未来「だから…大丈夫だから。少し眠って?」

 

響「ごめん…ね…」

 

 響は眠ったのであった。

 

未来「(どうして…どうして響がそんな悪夢で苦しまなければいけないの?何が響にそんな孤独を感じさせているの?どうすれば、響の苦しみを取り除いてあげられるの?わからない…わからないよ、響…)」

 

沙織「(未来さん…)」

 

 一度は戦う力と決別した未来であったが、響が衰弱するという事態に再び無力感に苛まれていたのであった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 カルマノイズを倒した後、マリア達は帰還した。

 

マリア「星矢が派手にやられた所を見たのは初めてよ」

 

星矢「瞬との戦いで派手にダメージを受けちまってな…」

 

マリア「星矢は聖衣を纏わずにギアを纏った未来に一切の攻撃を加えず、右腕だけで赤子扱いした上、オートスコアラーも瞬殺。化け物の星矢がここまでやられるのを見た事なんてないわ」

 

クリス「あたしらと協力する前はそんくらいでは済まねえ程にボロボロになったのはよくあったようだぞ」

 

マリア「(本当に人間なの…?)」

 

クリス「それにしても、瞬が改心したのはよかったな」

 

星矢「ああ」

 

瞬「あの…、ノイズが出没しているそうなので、この一連の事件が解決するまでは協力します」

 

弦十郎「感謝するぞ、瞬」

 

瞬「兄さんも手伝ってくれるよね?」

 

一輝「偶然、巻き込まれたようなものだ。星矢にも恩があるし、もうこの際は騒動が解決するまで協力する事にしよう」

 

 一輝が承諾してくれた事に瞬は喜んだ。

 

クリス「並行世界でもあいつら兄弟のブラコンぶりは変わらねえな」

 

マリア「司令、私達は一度、向こうの世界に帰る事にするわ」

 

クリス「ノイズのカルマ化が起きている事がわかったし、一度報告に戻らないとな」

 

翼「そうか。短い間だが、3人には世話になった…。心から感謝している」

 

星矢「そんなしけた面をするなよ。報告が終わって準備が整ったらまた来るぞ」

 

クリス「カルマノイズを潰さない限り、この世界もあたしらの世界も、無事じゃ済まないからな…」

 

弦十郎「ようどよかった。向こうに戻るなら、これを持っていくといい」

 

 弦十郎はデータチップを渡した。

 

マリア「これは…?」

 

弦十郎「これまでに我々が収集したデータだ。そちらの世界と比べたら微々たる物かも知れないが…、比較する事で何か新しい発見があるかも知れん」

 

マリア「ありがとう」

 

 

 

公園(並行世界)

 

 元の世界に帰る前、星矢はマリア達からある事を聞いていた。

 

星矢「なあ、俺は一輝達と一緒に瞬を探していたから話を聞いてなかったけど、こっちの響はどうしてあんな感じになったんだ?」

 

マリア「それは…」

 

 マリアは元の世界でも起こったツヴァイウイングのライブ中に起こったノイズ襲撃事件などの事を星矢に話した。

 

星矢「そこは俺達の世界の響も経験した事だ」

 

クリス「確か、あたしらの世界のバカがこっちのバカみたいにならなかったのは、星矢と沙織が助けたというのもあったよな?」

 

星矢「ああ。あの時、バッシングに遭っていた響を助けるために俺はバッシングをした連中を叩きのめし、沙織さんは憎しみの矛先を響から自分に向けさせ、世間に訴える事で響の迫害の日々を終わらせて救う事ができたんだ」

 

マリア「でも、この世界では城戸沙織は行方不明なのよ」

 

星矢「そこは俺も聞いたぞ。この世界の俺と沙織さんは行方不明だって」

 

マリア「そして、小日向未来も響の傍にいないようなのよ」

 

 その言葉に星矢は衝撃を受けた。

 

星矢「未来が…、響の陽だまりの未来がいないだと!?」

 

クリス「あたしも最初は信じられなかったんだ…!」

 

星矢「俺と沙織さんに助けられず、未来もいないからこの世界の響はああなっちまったっていうのかよ!」

 

 自分や沙織、未来がいない事で他人との関わり合いを嫌うようになった響に星矢はまたしても衝撃を受けた。そんな場へ一輝と瞬が来た。

 

一輝「星矢、俺が瞬とこうして出会い、和解できたのは紛れもなくお前のお陰だ」

 

瞬「星矢達がいない間は僕達がノイズを倒しておくから、星矢達は元の世界でやるべき事をやってから戻って来てね」

 

星矢「ああ。準備とかをきっちりやってから必ず戻ってくるぞ」

 

マリア「では、戻るわよ」

 

 星矢達はゲートに飛び込み、元の世界に帰る光景を一輝と瞬は目の当たりにしたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は星矢と瞬の対決と一輝との和解、響の体調悪化を描きました。
星矢と瞬の対決はギャラクシアンウォーズでは実現せず、ドラマCDで実現したのにとどまりましたが、今小説ではアニメや原作の星矢と一輝の戦いを参考にし、それを黄金レベルでやる形をとって星矢と瞬の対決を描きました。
星矢が受けた幻魔拳の幻覚は沙織がこれまで経験した命の危機が一纏めになったような感じで囚われの沙織を助けようとする星矢を悪サガ、ポセイドン、ハーデスが妨害して3人が跡形もなく星矢を消滅させるという内容にしました。
また、伏線も描いていましたが、瞬は生き地獄と孤独で捻くれただけで本質は全く変わっていないという風に描きました。
次は星矢達が一旦帰ってきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。