セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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150話 三つ巴の戦い

ホテル

 

 一方、出直したサンジェルマン達はアダムスフィアの反応に気付いた。

 

サンジェルマン「これは…アダムスフィアの反応?」

 

カリオストロ「え?あらほんと。でも、どうして急に?」

 

プレラーティ「恐らく、逸れ達の隠蔽の術式が解除されたワケダ」

 

カリオストロ「何でわざわざ?あーしらに探してくれって言ってるようなもんじゃない?」

 

プレラーティ「理由までは知った事じゃないワケダ」

 

カリオストロ「いい加減ねえ。で、今どこにあるの?」

 

サンジェルマン「この座標は…確か」

 

プレラーティ「なるほどな。面倒な事になったというワケダね」

 

カリオストロ「何々?どういう事?」

 

サンジェルマン「どうやらアダムスフィアは特異災害対策機動部二課の手に落ちたようね」

 

カリオストロ「それって確か、さっきあーしらを邪魔した、シンフォギア装者のいる?」

 

プレラーティ「言わずもがなというワケダ」

 

サンジェルマン「放っておくことはできないわね……」

 

カリオストロ「どうする?すぐに襲撃をかける?」

 

プレラーティ「所詮1対3、戦力的に負ける要素はないワケダ」

 

カリオストロ「ブリーシンガメンは厄介だけど、あーしらにはあれがあるしね」

 

サンジェルマン「いえ。少し様子を見ましょう」

 

カリオストロ「どうして?」

 

サンジェルマン「相手は腐ってもアリシアとベルゲルミルを斥けた装者とそれをバックアップした組織……。おまけに、局長と縁のあるアテナの聖闘士も協力者についている。局長の話では協力者の聖闘士は今は任務で二課にいないが、正面から向かっては、負けないにせよ、こちらもそれなりの消耗を覚悟せねばならないわ」

 

カリオストロ「聖闘士…。あーしらとは敵対関係でないとはいえ、結構厄介な奴が味方になってるわね。サンジェルマンの言う通りかも知れないけど…」

 

プレラーティ「だが、いつまで待つつもりなワケダ?」

 

サンジェルマン「物が物だけに、連中はどこか聖遺物の保管施設へと運ぶ可能性が高いはず。ならば、その瞬間を狙った方がいいわ」

 

カリオストロ「もう、まどろっこしいわね」

 

プレラーティ「だがそれが1番効率的というワケダね」

 

サンジェルマン「だけど、先にはぐれどもが奪還に動く可能性があるわ。交代で監視しましょう」

 

カリオストロ「はいはい、わかったわ」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 奏が持ち帰ったアダムスフィアは解析が進められた。

 

了子「ふう…やれやれだわ」

 

奏「お疲れ、了子さん」

 

弦十郎「奏の拾ってきた球体の正体はわかったのか?」

 

了子「まあ、大体ね。ほんと、とんでもない物を拾ってきてくれたわね」

 

奏「とんでもないもの?」

 

弦十郎「一体何なんだ、それは?」

 

了子「この球体の中には強大な魔力が封じられているわ」

 

奏「魔力だって?」

 

了子「ええ。それも、とんでもない量のね」

 

奏「とんでもないって、どれくらいなんだよ?」

 

了子「そうね…破壊力に換算したら、軽く10メガトンぐらいかしら」

 

弦十郎「なっ!?ツングースカ級だと!?」

 

奏「ツングースカ?なんだそれ?」

 

了子「昔ロシアで起きた隕石の空中爆発よ。ま、ちょっとした反応兵器並みのエネルギー量ね」

 

奏「えっ!?こんな玉っころが!?まさか、ここまで持ってくる間に衝撃与えてたら爆発してたとか?」

 

了子「安心なさい。今のこれには指向性のない無秩序なエネルギーが詰まっているだけだから」

 

弦十郎「多少の衝撃を与えた程度では、即、破壊エネルギーに変換されるわけではないという事か」

 

了子「そうね。制御法次第では、どうにでもなりそうだけど」

 

奏「制御法?そんな力扱えるのか?」

 

了子「ええ。術式などで適切なベクトルを与えてやればね。目的を選べば、平和利用もできなくはないと思うけど……」

 

奏「だが、そんなものを錬金術師が持ってたって事は……」

 

弦十郎「破壊目的の可能性は、充分考えられるな。だが、一体どこからそんなエネルギーの塊が?」

 

了子「わからないわ。どこでこんな物が生成されたのか、内包するエネルギーはどこから来たのか…肝心な事は何一つね。流石の私でも、今は情報が足らなすぎるわ」

 

弦十郎「ふむ…。だが、何かはわからんが、それだけの力を秘めた代物を無暗に手元に置いておくわけにもいかんな…。早速、政府関係者と対応を協議しよう」

 

了子「ええ、その辺は任せるわ」

 

 

 

道路

 

 結局、アダムスフィアは深淵の竜宮に封印する事が決まった。

 

奏「で。結局深淵の竜宮に封印するって事になったってわけか」

 

弦十郎『輸送経路上で錬金術師達が奪還に来る可能性が高い。充分に警戒してくれ』

 

奏「わかってるって」

 

 

 

 

 港までは妨害される事なく、到着できた。

 

奏「(港までは無事についたが…まあ、このまま黙ってるタマじゃないだろうな)」

 

 そこへ、通信が入った。

 

了子『奏ちゃん、上空にアルカノイズの反応を検知!注意して!』

 

奏「ああ、もう見えてるよ」

 

 早速、アルカノイズが襲撃してきた。

 

奏「ちっ、すばしっこい!」

 

弦十郎『そいつらは囮かも知れん!くれぐれも輸送車から離れるな!』

 

奏「ああ、わかってる!」

 

 アルカノイズを操る錬金術師達が現れた。

 

錬金術師A「先日は世話になったな、シンフォギア装者」

 

奏「やっぱり来たか」

 

錬金術師B「大人しく、アダムスフィアを返してもらおう」

 

奏「お前らみたいなのにこんな危ない物、渡せるかよ!」

 

 奏はギアを纏った。

 

錬金術師A「シンフォギアを纏ったか」

 

錬金術師B「だが、所詮は1人。この数、相手にできるかな!?」

 

 錬金術師はアルカノイズを大量に出した。

 

奏「子の前よりもだいぶ多いな…。数で押そうってか?ならこっちも、本気を出させてもらおうか!!」

 

 出し惜しみなしで行くため、奏はブリーシンガメンを起動させた。

 

錬金術師A「何だ、この炎は!?」

 

錬金術師B「まさか、これが、ブリーシンガメン!?」

 

奏「さあ…いくらでもかかってこい!」

 

 本気の奏の前にアルカノイズはあっという間に蹴散らされた。

 

錬金術師A「くっ!?なんという力だ!?」

 

錬金術師B「だが、アダムスフィアを取り戻すまでは退くわけにもいかん!」

 

錬金術師A「ああ、わかってる」

 

錬金術師B「出し惜しみしている場合ではないか!」

 

錬金術師A「残り全てのアルカノイズを!」

 

 追い詰められた錬金術師は手持ちのアルカノイズを全て投入した。

 

奏「ちっ!次から次へと!」

 

錬金術師B「今のうちにアダムスフィアを奪還する!」

 

???「そうはさせないわ」

 

錬金術師A「その声は……サンジェルマン!?」

 

 声の主はサンジェルマン達であった。

 

奏「錬金術師の増援か!?」

 

錬金術師A「おのれ、幹部共!」

 

錬金術師B「装者よりもこいつらが先だ!」

 

奏「(何だ?)」

 

 サンジェルマン達とはぐれ錬金術師が敵対している事を知らない奏は錬金術師がサンジェルマン達の方へアルカノイズを差し向けた事に困惑した。

 

カリオストロ「またアルカノイズ?おバカさんの一つ覚えね」

 

プレラーティ「学習能力皆無というワケダ」

 

 そのままサンジェルマン達はアルカノイズを一掃した。

 

サンジェルマン「アダムスフィアを渡してもらおう、それは元々私達の物だ」

 

錬金術師A「あれは…我らの理想のためのものだ!」

 

サンジェルマン「違う、そのアダムスフィアは我々、錬金術師協会の秘宝。裏切り者が薄汚い手で触れていい物ではない!政府の犬も同様だ!」

 

奏「政府の犬とは言ってくれる…。けど、こいつは…仲間割れ、なのか?錬金術師にも派閥があるって事か?」

 

 疑問に思った奏は通信を入れた。

 

奏「どうする、ダンナ?」

 

弦十郎『各々の目的はわからんが、これだけのエネルギーを秘めた物を悪用されれば、重大な脅威を招く事は間違いあるまい。いずれの錬金術師にも渡すわけにはいかん』

 

奏「ああ、あたしも同感だ。それなら、一戦やらかすとするか!」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 二課の方でも戦いを注視していた。

 

あおい「奏さん、交戦状態に突入しました!」

 

朔也「先に接触した女性錬金術師達に加え、アルカノイズを使役する錬金術師達をも同時に相手どっています!」

 

弦十郎「何としてもあの球体を護るんだ!」

 

 

 

 

 奏は一気にアルカノイズを殲滅していた。

 

錬金術師A「おのれ、装者め!?」

 

 サンジェルマン達も敵と認識した奏はサンジェルマン達にも攻撃した。

 

プレラーティ「見境なしというワケダな!」

 

カリオストロ「ちょっと!脳筋すぎじゃない!?」

 

 そして、奏の槍の攻撃をサンジェルマンは防御壁と止めた。

 

奏「何ッ!?止めただと!?」

 

サンジェルマン「忠告したはずだ…。次に立ち塞がる時には容赦はしないと!」

 

奏「そのセリフ、利子付けて返してやる!」

 

 三つ巴の戦いであるため、アルカノイズが邪魔してきた。

 

サンジェルマン「くっ!」

 

奏「邪魔をするなあっ!!」

 

 どさくさにまぎれ、錬金術師はアダムスフィアに迫っていた。

 

錬金術師A「奴等で足止めしている隙にアダムスフィアを!」

 

プレラーティ「そうはさせないワケダ!」

 

錬金術師B「き、貴様ら!」

 

 アダムスフィアはカリオストロが回収した。

 

カリオストロ「やったぁ、アダムスフィアゲット!って」

 

 しかし、奏の攻撃を受けてしまった。

 

カリオストロ「きゃっ!?何すんのよ!」

 

奏「そいつをお前らに渡すもんかよ!」

 

 今度ははぐれ錬金術師が手に入れたりと大混乱になってしまった。そんな様子を杳馬は面白がっていた。

 

杳馬「んははははっ!これは面白い事になったぞ!アダムなんちゃらを巡って大混戦!だけど、もっとも~っと混乱させちゃおっと!」

 

 杳馬がフィンガースナップをすると、カルマノイズが出現した。

 

杳馬「さあ、どのタイミングで乱入させようかなぁ?」

 

 杳馬がどのタイミングでカルマノイズを乱入させようか悩んでいた頃、三つ巴の戦いは混迷を極めていた。

 

カリオストロ「あーもう、しっちゃかめっちゃかで訳がわかんない!」

 

サンジェルマン「ならばもろとも打ち倒してから確保するまで!!」

 

奏「そいつはこっちのセリフだぁあああっ!!」

 

 戦いはかなり拮抗していた。

 

奏「くそっ、やりやがる。こりゃ、力を温存してる場合じゃないか。まとめて蹴散らしてやる!!」

 

 力の温存はできないと判断した奏はすさまじい炎を放った。

 

カリオストロ「なんなの、この熱量!?」

 

プレラーティ「これがブリーシンガメンの真の力というワケダ!」

 

奏「はあああああっ!!」

 

 本気を出されてはファウストローブを装着していないサンジェルマンでも歯が立たなかった。

 

サンジェルマン「ちいーっ!!」

 

奏「これを止めるかよ?だが…このまま押し切る!!」

 

 ブリーシンガメンは炎の聖遺物であったため、ある事が起きていた。

 

カリオストロ「あーん、炎が周りに飛び火しちゃってるじゃないの!」

 

プレラーティ「下がれ、カリオストロ。至近距離で受けたら我々でも危険なワケダ!」

 

 はぐれ錬金術師にも炎が来た。

 

錬金術師A「ぐああああっ!!」

 

錬金術師B「ア、アダムスフィアに炎が!?」

 

 すると、アダムスフィアが光り出した。

 

杳馬「そろそろだな」

 

 カルマノイズを投入する時期だと判断した杳馬はフィンガースナップでカルマノイズを送り込んだ。

 

錬金術師B「ひ、ひぃいいいっ!」

 

サンジェルマン「何!?」

 

奏「なんだこの光は?」

 

プレラーティ「この魔力、アダムスフィアなワケダ!」

 

カリオストロ「え、でも、おいそれと解放なんてされないはずじゃ?」

 

サンジェルマン「待って。何か現れるわ」

 

奏「こいつは、まさか…」

 

 杳馬が投入したカルマノイズがその場に出現した。その上、カルマノイズはアダムスフィアを取り込んでしまった。

 

奏「カルマノイズ、だと!?」

 

プレラーティ「アダムスフィアがあの黒いノイズに……」

 

カリオストロ「取り込まれちゃった」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 二課の方でもカルマノイズがアダムスフィアを取り込んだ事に衝撃を受けていた。

 

了子「どういう事なの!?」

 

弦十郎「奏、いったん距離を置くんだ!」

 

 

 

 

 その指示はちゃんと聞こえていた。

 

奏「言われなくても!(ブリーシンガメン単騎で倒しきるか?こんな時、あいつらがいてくれたら…)」

 

サンジェルマン「手出しは無用だ、シンフォギア装者!」

 

奏「何だと?」

 

サンジェルマン「行くわよ。奴を倒してアダムスフィアを回収する」

 

プレラーティ「面倒だが、やるしかないワケダね」

 

カリオストロ「はいはい、やればいいんでしょ」

 

 3人はカルマノイズに向かっていった。

 

奏「あ、おい、無視するな!全く、何だってんだ…!」

 

 サンジェルマン達はカルマノイズと戦闘を開始したが…。

 

プレラーティ「黒いノイズ、噂には聞いていたワケダが……」

 

カリオストロ「噂は噂のままにしてほしかったわ!何なの、あのノイズの強さ!」

 

サンジェルマン「待って、様子がおかしいわ」

 

 その言葉通り、アダムスフィアを取り込んだカルマノイズは様子がおかしく、みるみる変貌し、姿を変えた。

 

サンジェルマン「なっ!これは…黒いノイズの姿が」

 

カリオストロ「何だか、ヤバイ感じに変身しちゃってるじゃない!一体何が起きてるっていうの!?」

 

プレラーティ「恐らく、アダムスフィアの魔力を吸収したというワケダ!」

 

サンジェルマン「肥大化した黒いノイズ…」

 

カリオストロ「それって、余計に手に負えなくなったんじゃないの!」

 

サンジェルマン「(お母さんが生きていたら、あの黒いノイズを容易く倒せたかも知れない…。いや、死んだ人がいたらと考えても仕方ない!)」

 

錬金術師A「く、くう…」

 

錬金術師B「あれは…アダムスフィアは私達のものだ!返せ!」

 

 しかし、カルマノイズは錬金術師に向かっていき、攻撃した。

 

錬金術師達「ぎゃあああああっ!!」

 

 そのまま錬金術師達は炭化してしまった。

 

カリオストロ「障壁ごと分解したですって!?」

 

プレラーティ「干渉破砕効果の出力は桁違いというワケダ!」

 

サンジェルマン「やむを得ん、あれを使うしかなさそうね」

 

カリオストロ「ちょっと待って、あれ!」

 

 カルマノイズは消えてしまった。

 

カリオストロ「消えた?」

 

サンジェルマン「アダムスフィアの反応ごと消えた…」

 

プレラーティ「アダムスフィアごと、次元の位相の隙間に潜り込んだというワケダね」

 

サンジェルマン「後を追うわよ、2人とも」

 

奏「ちょっと待て!」

 

サンジェルマン「何のつもりなの?アダムスフィアが黒いノイズに奪われた以上、最早ここでお前と戦う理由はないわ」

 

奏「それもこれも、お前達のせいだろうが!そもそも、あんなものを使って何を企んでるんだ!?」

 

サンジェルマン「お前に行っても詮なき事。理想も知らぬ、哀れな走狗にはね」

 

奏「何だと?だが説明できないって事は、またろくでもない事をやろうとしてるんだろう?この間みたいな大きな災いを起こすつもりなら、あたしは、お前らを逃すわけにはいかない!」

 

サンジェルマン「少しばかり力を得たからといって、それで何でもできるだなんて思わない事ね。まあいい、あれの試運転にはちょうどいいかも知れないわね」

 

プレラーティ「とうとうお披露目か。待ちくたびれたワケダ」

 

カリオストロ「新品のおべべで、おめかしターイムってね!」

 

奏「一体、何を!?」

 

サンジェルマン「見せてやろう、錬金術の精髄を!!」

 

 元の世界のサンジェルマン達と同じようにサンジェルマン達はスペルキャスターを作動させ、ファウストローブを装備した。

 

奏「なんだ、シンフォギア……?(聖衣にしては、おかしい所があるしな…)」

 

カリオストロ「そんなものと一緒にしないでほしいわね」

 

サンジェルマン「これぞ我ら錬金術の到達点、ラピス・フィロソスフィカスの顕現」

 

プレラーティ「ファウストローブというワケダ!」

 

奏「何だか知らないが、お前らの企みはここで止めてみせる!」

 

サンジェルマン「愚かな…この世には力及ばぬ存在があるという事を教えてやろう!」

 

 奏は応戦したが、3対1という事もあって押されていた。

 

奏「くっ!?なんだ、こいつらの力は!?」

 

カリオストロ「ファウストローブを纏ったあーし達3人を相手にしてまだ敵うと思ってるの?ほんと、おめでたいわね!」

 

プレラーティ「背中ががら空きなワケダ!」

 

 言葉通り、がら空きになった背中から攻撃を受けた。

 

奏「くっ!?やってくれたな…」

 

サンジェルマン「……所詮、シンフォギアなどこの程度か」

 

奏「何だと!?くそっ…力が……」

 

 間の悪い時に時間制限がきて、ブリーシンガメンが解除された。

 

奏「なっ?ブリーシンガメンが……」

 

サンジェルマン「勝負あったわね」

 

奏「まだだ…あたしはこんなところで負けるわけには」

 

カリオストロ「まだ足掻くつもりなの?やーねえ。まるでゴキブリみたい」

 

 まだ戦おうとする奏に対し、サンジェルマンはさらに攻撃を仕掛けた。

 

奏「ぐあっ!く…そ……」

 

 限界が来て、奏は倒れた。

 

サンジェルマン「しばらくそうして眠ってなさい」

 

プレラーティ「やれやれ。やっと片付いたワケダね」

 

カリオストロ「こんなに手古摺るなんて、あーし達のファウストローブは未完成なのかしら?」

 

サンジェルマン「いえ、装者の力が私達の予想を超えていた、という事よ」

 

プレラーティ「確かに、あのブリーシンガメンはなかなかの脅威なワケダが…。正直、1対1だったら結果はどうだったか」

 

カリオストロ「うー、あーしは認めたくないけど…」

 

プレラーティ「で、これからどうするワケダ?」

 

サンジェルマン「最早、カルマノイズの追跡は難しいわね…。いったん撤退しましょう。今後の対応は統制局長と協議するわ」

 

カリオストロ「はあ…もう。無駄足ばっかり……」

 

 今後はどうするかを決めるため、サンジェルマン達は撤退した。

 

杳馬「まさか、カルマノイズがあの玉っころを取り込んじゃうとはねえ。これまた誤算だ」

 

???「というより、お前はこういった事態を混乱させ、混沌とした状況になるが大好きではないのか?メフィスト」

 

杳馬「まあな。そういうアタバクのダンナも250年近く前の乙女座にやられたのが悔しいんじゃねえか?」

 

アタバク「確かに、私は前の聖戦が始まる前のあの時、アスミタをあと1歩のところまで追い詰めたが、アヒンサーという邪魔が入り、アスミタに敗北した。だが、私は輪廻の輪に呑まれる直前、最後の力を振り絞ってアスミタの目を欺いてその輪から抜けたものの、小宇宙を消耗し尽くして戦えない事を悟った私は傷を癒やし、次なる聖戦のために250年近い眠りについた…」

 

杳馬「そんでもって、今になってそこへ通りかかった俺がダンナを目覚めさせた。ダンナ、アスミタは」

 

アタバク「それ以上言う必要はない。アスミタは聖戦で死んだ、のだろう?」

 

杳馬「ご名答!けど、並行世界にいる今の乙女座も神に最も近い男で相当な奴だぜ。気を引き締めとけよ」

 

アタバク「アスミタにやられたのは悔しいが、今はそれ以上に今の乙女座がどれほどのものかを知りたい好奇心に溢れている…!今の地上で神に最も近い男と冥界で神に最も近い私、あの時みたいな激突とでも行こうか!」

 

 悔しさよりも好奇心に溢れているアタバクは今の乙女座の黄金聖闘士、シャカとの対面と戦いを楽しみにし、小宇宙を燃え上がらせていた。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 戦闘などの様子を見ている中、了子はある事に注目していた。

 

了子「あの発光現象、魔力を秘めた球体がブリーシンガメンの力を受けて励起した…とみるべきかしらね。確か錬金術師達は、あの球体の事をアダムスフィアと呼んでいたようだけど……。そして、それと機を同じくして現れた、カルマノイズ…。過去に観測されたカルマノイズは、全て倒されたはずなのに…。アダムスフィアから放出された力と因果関係があるとでも?どうしてあれが、あのタイミングで出現したのか。そもそもカルマノイズとは一体なんなのか…。そして、あの女錬金術師達の纏った、ギアに似た装束も……」

 

 アダムスフィアにカルマノイズ、ファウストローブと了子にとって気になる事だらけであった。

 

了子「彼女達の目的は何?奏ちゃんに止めを刺す千載一遇の機会がありながら、あえて刺さなかったのはなぜ?彼女達は敵なの?それとも……。いくら何でもピースが足りないわね…」

 

 

 

ホテル

 

 サンジェルマン達は今後の事についてアダムと話す事にした。

 

アダム『すまないね。手間をとらせて』

 

サンジェルマン「いえ、これも全て我らの悲願達成のため。この程度、苦労などとは……」

 

アダム『結構だね、心がけは。で、どうだった。首尾は?』

 

サンジェルマン「はっ…それが……逸れた血とシンフォギア装者との交戦中、突如出現した黒いノイズによってアダムスフィアを奪われました……」

 

アダム『なるほどね』

 

サンジェルマン「申し訳ありません」

 

アダム『黒いノイズか、確か向こうでは、カルマノイズと呼んでいたかな。ふむ…仕方ないね。つきものだよ、計画には。予想外のトラブルというものはね。ところでどうだった、あれは?届いたはずだが、そちらに』

 

サンジェルマン「はい。ファウストローブは無事起動…。充分実用レベルに達している事が確認できました」

 

アダム『僥倖だね、それは。甲斐があったというものだよ。長年苦労してきた、ね。とにかく、だ。こちらでも調べてみると。黒いノイズ…カルマノイズの動向についてはね』

 

サンジェルマン「お願いします。こちらでも引き続き調査と対策を検討します」

 

アダム『頼んだよ。ともあれ。君達は手に入れたわけだ、力を。さあ、それで成すがいい。目的を』

 

サンジェルマン「承知しました」

 

 

 

???

 

 電話が終わった後、アダムは考え事をしていた。

 

アダム「(黒いノイズ、カルマノイズか…。随分と大変になったものだよ、事態が…。こういった時、彼女が生きていれば、冷静な判断力で場をまとめ、楽にあのカルマノイズを倒せただろう…。僕にとっても、娘みたいな存在のサンジェルマンにとっても、君の死は大きかったよ…パルティータ……)」

 

 色々と考え事をする中、アダムは壊れた黄金のラピスを見つめていた。

 

アダム「(パルティータ…イザーク…君達は僕よりも立派で人々のために錬金術を使ってきた…。けど…、そういった僕の友人であり、立派な錬金術師であった君達に限って、僕よりも早く亡くなってしまうのは皮肉なものだ…、パルティータ、イザーク…)」

 

 亡くなった友人を思い出し、次に窓へ視線を向けた。

 

アダム「(君達の忘れ形見ともいえる娘達は僕が見守っているよ、遺言通りにね。けど、イザークの娘はどこへ行ったのやら…。でも、今は優先しなきゃいけない事があるからね、アダムスフィアとカルマノイズの件が。それが終わってから探るとしよう)」




これで今回の話は終わりです。
今回はアダムスフィアを巡って奏とサンジェルマン達、はぐれ錬金術師たちの三つ巴の戦い、そしてカルマノイズの乱入でアダムスフィアが取り込まれてしまうのを描きました。
本編世界と同様に並行世界のサンジェルマン達もファウストローブを披露したのを描きましたが、同時に杳馬の暗躍と行動を共にしている冥闘士がアタバクである事が判明したのも描いています。
聖闘士星矢本編の冥闘士は三巨頭でも1対1だと黄金に押されていましたが、今小説の杳馬のいた世界の冥闘士はロストキャンバスの冥闘士であり、ロストキャンバスの冥闘士の方が本編の冥闘士より強い傾向にあるので、近いうちに始まるギャラルホルン編で星矢達を阻む強敵として出す事にしました。
まずアタバクを出したのは、原作に出た黄金の中でもめっぽう強いシャカと真っ向から渡り合い、神に最も近い男である乙女座と因縁のある冥闘士は同じ神に最も近い男のアタバクぐらいしかいないだろうと思ったからです。
次の話では響達が来ますが、前の話の冒頭にも出ていた星矢とパルティータ、シャカも共に来る事になります。

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