セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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151話 メフィストとアタバクの襲来

???

 

 今は亡き友のパルティータとイザークの事を思い出していたアダムは机を整理した。

 

アダム「争う事になるとはね、二課と。しかし、渡せないよ。あれは。僕のものだからね、初めから」

 

 あれとは、アダムスフィアの事であった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 その後、響と切歌と調、そして星矢とシャカとパルティータが来た。

 

響「失礼します」

 

調「お久しぶりです」

 

切歌「こんにちはデス」

 

弦十郎「おお、君達か。よく来てくれた」

 

響「はい。ギャラルホルンのアラートが鳴ったので急行しました」

 

星矢「俺達もついでで来たけどな」

 

弦十郎「ついでじゃないさ。王虎とアイザックが任務で不在だったから、星矢達の方も助かる」

 

響「いえいえ。さっき奏さんが怪我をしたって聞きましたけど、大丈夫ですか?」

 

了子「幸い、外傷はそれほどでもないわ」

 

切歌「よかったデス」

 

調「でも、外傷以外に何か問題が?」

 

了子「ブリーシンガメンをかなり無理に使用したから、ちょっと消耗が激しくてね。でも容体も安定してるから、心配ないわ」

 

響「よかった…」

 

星矢「いざとなれば、凄腕の医者の母さんがいるしな」

 

弦十郎「母さん…?」

 

パルティータ「私が星矢の母のパルティータです。よろしくお願いいたします」

 

 星矢に母親がいた事に発令所の面々は衝撃を受けた。

 

弦十郎「星矢の……母親だとぉ!?」

 

了子「すっごい美人じゃない!おまけに聖闘士だなんて、まさに才色兼備って奴よ!」

 

パルティータ「聖闘士であると同時に、数千年も生きた錬金術師でもあるんですけど…」

 

 その言葉にまたしても衝撃が走った。

 

弦十郎「数千年だとぉ!?」

 

了子「これまたビックリだわ!おまけに聖闘士であり、錬金術師っていうのも凄いじゃない!」

 

パルティータ「驚くのも無理はないと思いますけど…」

 

弦十郎「それと、君は…」

 

シャカ「私は別の並行世界から来た乙女座の黄金聖闘士、シャカ。まあ、驚く事だらけだが、今回はよろしく頼む」

 

弦十郎「こちらこそな。(それにしても、今回、新たに来た聖闘士2人は途方もない力の持ち主である事が肌でわかる…)」

 

 弦十郎はシャカとパルティータが実力者である事を察していた。

 

調「奏さんが負傷したのは、カルマノイズとの交戦で?」

 

弦十郎「いや、直接的には錬金術師にだな」

 

切歌「錬金術師?また現れたんデスか?」

 

パルティータ「(まさか、あの子が…?)」

 

響「アリシアさんの、ですか?」

 

弦十郎「関係性は定かではない」

 

了子「奏ちゃんとの会話内容では、知っているようだったけどね」

 

調「ブリーシンガメンを使う奏さんがやられるなんて……」

 

弦十郎「途中までは奏が押していたのだが、錬金術師達がギアみたいなものを纏ってから、形勢逆転されてな……」

 

 その言葉に一同はピンときた。

 

パルティータ「それって、ファウストローブじゃないの?」

 

了子「ファウストローブ?」

 

パルティータ「ええ。女の錬金術師が賢者の石を使って纏う、錬金術師版シンフォギアみたいなものよ。それで、これが私が持つ賢者の石」

 

 パルティータはペンダントにしている黄金のラピスを見せた。

 

弦十郎「これが賢者の石か…。途方もない美しさだ…」

 

星矢「母さんのは改良を重ねた結果、こんな色になっただけで、本当は赤いんだぜ」

 

切歌「名前はなんデスっけ、ラピラピ……ピロピロ?」

 

調「ラピス・フィロソスフィカスだよ、切ちゃん」

 

切歌「そうそう、それなんデス。とにかくイグナイトの力も無効にされたり、厄介な相手なんデスよ」

 

了子「イグナイトを?」

 

調「はい。浄化の力でイグナイトの力を解除され、ギアにも反動汚染というものが残るんです」

 

弦十郎「イグナイトの天敵、というわけか…確かに侮れんな。だが、君達が錬金術師にも詳しい上、仲間に錬金術師がいるのであれば心強い。奏がしばらく出撃できない事もある。改めて協力を願いたい」

 

響「はい、もちろんです」

 

 協力する事が決まった後、パルティータは黄金のラピスを見つめていた。

 

シャカ「パルティータ、どうやらこの世界には君の娘ともいえる弟子がいるようだぞ」

 

パルティータ「ええ。賢者の石を錬成できる錬金術師なんて、あの子とお友達ぐらいしかいないから」

 

星矢「まさか、こうも早くサンジェルマンが生きている世界がわかったなんてな」

 

パルティータ「ええ、私も嬉しいわ」

 

 生まれた世界は違えど、娘同然のサンジェルマンが生きている世界があった事にパルティータは喜んでいた。

 

 

 

ホテル

 

 その頃、錬金術師達は……。

 

プレラーティ「で、これからどうするワケダ?」

 

サンジェルマン「当面の目的は変わらないわ。アダムスフィアを奪還する」

 

カリオストロ「とはいっても、今どこにあるのかしらね?」

 

サンジェルマン「今、局長に例のカルマノイズの行方を追ってもらっているわ」

 

カリオストロ「あのカルマノイズのでっかいの、ヤバかったわね」

 

プレラーティ「今尚アダムスフィアの力を吸収している可能性があるワケダ」

 

サンジェルマン「ええ…細心の注意が必要ね。とはいえ、こちらにもファウストローブがある」

 

プレラーティ「戦えない事はないワケダ」

 

カリオストロ「特異なんちゃら二課、だっけ。あの連中はどうするの?」

 

サンジェルマン「あの装者…天羽奏という装者を倒した事で、当分動きは抑えられると思うわ」

 

プレラーティ「ただ、先日の事件でも複数の装者、そして黄金聖闘士の存在が確認されているワケダが」

 

サンジェルマン「確かにね…。また新たな装者や黄金かそれぐらいの実力を持つ青銅聖闘士が現れる可能性も考慮に入れる必要はあるわ」

 

カリオストロ「ああもう、あれもこれも考えなきゃいけない事ばっか。誰のせいでこんな苦労してると思ってるのよ?」

 

 そう言ってると、電話が鳴った。

 

プレラーティ「噂をすれば影なワケダ」

 

カリオストロ「タイミング図ってやってるでしょ、絶対」

 

 サンジェルマンは電話に出た。

 

サンジェルマン「はい、私です」

 

アダム『検知したよ、アダムスフィアの反応を。微かな反応だよ、次元の断層から漏れ出ているね。送るとしよう、そちらにも情報を』

 

サンジェルマン「承知しました。直ちに向かいます」

 

アダム『頼んだよ、3人とも』

 

 場所を伝えた後、電話を切った。

 

サンジェルマン「アダムスフィアの反応を検知したそうよ」

 

プレラーティ「ああ、漏れ聞こえていたワケダ」

 

サンジェルマン「ならばいい。座標を確認し次第、すぐに出るわよ、2人とも」

 

カリオストロ「はいはい。ほんと、ゆっくり休む間もないんだから……」

 

 カリオストロは愚痴を言いながらも、2人と共に出撃した。

 

 

 

荒れ地

 

 サンジェルマン達は座標通りの場所に来た。

 

カリオストロ「いたいた!」

 

プレラーティ「カルマノイズ発見というワケダ」

 

サンジェルマン「今度は逃げる暇など与えない。一気に行くわ」

 

カリオストロ「わかってるわ」

 

 3人はファウストローブを纏った。

 

サンジェルマン「罪業を背負いし穢れた存在よ…。ラピス・フィロソフィカスの力で浄化してやろう!」

 

 サンジェルマン達は戦闘を開始したが、攻撃はカルマノイズにはあまり効いてなかった。

 

カリオストロ「や~ん。あまり効いてないみたい?」

 

プレラーティ「再生能力?なるほど、ノイズとは違うというワケダ」

 

サンジェルマン「だがまるで無傷というわけでもないようね。3人の攻撃を束ね、一斉に叩き込むわよ!」

 

カリオストロ「ちょっと待って、サンジェルマン!」

 

サンジェルマン「何?」

 

プレラーティ「乱入者登場というワケダね!」

 

サンジェルマン「出てきたわね、二課の装者達!」

 

 乱入者とは、響達であった。

 

響「えっ…あれって、サンジェルマン達!?」

 

星矢「母さんの予想通りだ……!」

 

調「この世界にもいたなんて……」

 

パルティータ「やっぱり……!」

 

 ファウストローブを聞いた時点で察してはいたものの、元の世界では死んだ娘との再会にパルティータはもちろん、死んだ母親が目の前に現れた事はサンジェルマンでさえ驚愕した。

 

サンジェルマン「(お母さん…!?あの時、死んだはずなのに……)どこで聞いたのかは知らないけど、まさか私達を知る者がいたとはね……。けれど、邪魔をするというなら、天羽奏のように排除するまで」

 

パルティータ「待って、サンジェルマン!今は」

 

???「ところがぎっちょん!」

 

 声と共に現れたのは、杳馬とアタバクであった。

 

響「杳馬!」

 

星矢「こんな時に邪魔しやがって!」

 

杳馬「こうも簡単に事が進んだら俺としても困るんだよねぇ。だから、邪魔させてもらうよ~!」

 

パルティータ「仕方ないわね…。杳馬とあの冥闘士は私達が引き受けるから、3人はカルマノイズを頼むわ!」

 

 杳馬とアタバクの相手は星矢達がする事となった。

 

星矢「せっかくの再会を邪魔しやがって!2人まとめて」

 

シャカ「あの冥闘士は私に任せてもらおう!」

 

星矢「何でだよ!?」

 

シャカ「あの杳馬という男と一緒にいる冥闘士、奴は私や君が今まで戦った冥闘士とは次元と雰囲気が違う!だからこそ、私に任せろと言っているのだよ」

 

星矢「……言われてみりゃ、確かにあのハゲは俺達が今まで戦ってきた冥闘士とは雰囲気も実力も違う。シャカ、やるからには負けんじゃねえぞ」

 

 シャカに言われて頭が少し冷えたのか、星矢はアタバクの相手をシャカに任せ、パルティータと共に杳馬と対峙した。

 

アタバク「(この男、アスミタの生まれ変わりとも思えるほど似ているな…)お前が今の乙女座の黄金聖闘士、シャカなのか」

 

シャカ「いかにも。君は何者なのかね?」

 

アタバク「私はアタバク。冥界で最も神に近い男だ」

 

シャカ「名乗りなどのきちんとした礼儀はできるようだな。まさか、冥界で神に最も近い男がいたとは…。私達が経験した聖戦では108の魔星の冥闘士のうち、いくつか目覚めずに聖戦に現れなかった魔星もあったが、そのうちの一つがお前だったとは…」

 

アタバク「それも当然だ。私とお前は生まれた世界が違う。そもそも、私はパンドラに属さぬ特別な冥闘士。前の聖戦が始まる前、当時の乙女座の黄金聖闘士との戦いに敗れ、傷をいやすために250年近い眠りについて再び目覚めたのだからな」

 

シャカ「お前は別の世界における、前の聖戦の生き残りの冥闘士といったわけか…」

 

アタバク「シャカよ、お前は私が戦った前の聖戦の乙女座の黄金聖闘士、アスミタに比べると普通に目は見える上、冷酷さと無慈悲さが際立っているようだな」

 

シャカ「アスミタ…。アタバクのいた世界における前の聖戦の乙女座の黄金聖闘士か…。だが、生憎私はアスミタとやらと違い、敵に対する慈悲の心はないのでな」

 

アタバク「随分と上から目線だな。だが、私はお前の事は嫌いではないぞ。むしろ敵味方ではなく、僧同士で巡り会って悟りを語り合いたかったがな」

 

シャカ「そもそもお前は何の目的で杳馬という、事態を混乱させるのを好む愉快犯と行動を共にしているのかね?」

 

アタバク「そこまで知りたいのか。ならば…、私から聞き出してみるがいい!」

 

 そう言ってアタバクはシャカに殴りかかったが、拳はシャカの掌底に止められ、同時にシャカが繰り出した拳もアタバクの掌底に止められた

 

アタバク「私の拳を受け止めるとはな」

 

シャカ「そういうお前も私が今まで戦った冥闘士よりも強いぞ!」

 

 シャカとアタバクの膠着状態は星矢とパルティータも驚いていた。

 

星矢「母さん、あれってまさか…!」

 

パルティータ「千日戦争!」

 

杳馬「やっぱ、今の乙女座と千日戦争になる冥闘士はアタバクのダンナしかいなかったみたいだな」

 

星矢「色々邪魔して来たり、事態を混乱させる愉快犯のお前は俺と母さんが叩きのめしてやる!」

 

 星矢とパルティータは杳馬に向かっていった。

 

サンジェルマン「死んだはずのお母さんや、死んだり再起不能になったはずの聖闘士、全滅した冥闘士まで出ただと!?」

 

カリオストロ「何がどうなっているのよ!」

 

響「混乱してるようですけど、私達は敵じゃありません!サンジェルマンさんのお母さんが」

 

カリオストロ「はぁ?戦場で随分お気楽言ってくれるわね!」

 

切歌「お気楽デスとぉ!?」

 

プレラーティ「敵でなければ味方だとでも?随分と甘い考えなワケダ!」

 

調「甘くなんか」

 

 カリオストロとプレラーティの攻撃に切歌と調は吹っ飛ばされた。

 

響「切歌ちゃん!?調ちゃん!?」

 

サンジェルマン「そこをどけ、シンフォギア装者!どかないなら排除する!」

 

響「くうーっ!?サンジェルマンさん!」

 

 いざこざの間にカルマノイズの様子がおかしくなった。

 

カリオストロ「ねえ、奴の様子、なんか変じゃない!?」

 

サンジェルマン「とてつもない魔力、アダムスフィアの力か!」

 

プレラーティ「奴が内包している力が増大、いや、一点に凝集しているワケダ!」

 

サンジェルマン「あれは?」

 

 何かに気付いたサンジェルマンは飛び出した。

 

カリオストロ「ちょ、ちょっとサンジェルマン!?どうしたの!?」

 

プレラーティ「退避するワケダ!」

 

 サンジェルマンはカルマノイズの照準を変えようとしていた。

 

サンジェルマン「こっちだ、カルマノイズ!!」

 

 カルマノイズはサンジェルマンの方へ狙いを変更し、ビームを放った。

 

サンジェルマン「くっ!?かわせないか!?」

 

プレラーティ「サンジェルマン!」

 

カリオストロ「危ない!!」

 

 咄嗟にプレラーティとカリオストロはサンジェルマンを庇い、ビームを受けてしまった。

 

サンジェルマン「2人共、何を?」

 

カリオストロ「いったー…。そ、それはこっちのセリフよ…」

 

プレラーティ「くぅ…一体、急にどうしたというワケダ?」

 

サンジェルマン「すまない…」

 

調「カルマノイズが!」

 

 カルマノイズは姿を消した。

 

切歌「消えていくデス…」

 

響「大丈夫ですか、サンジェルマンさん!?」

 

サンジェルマン「敵に心配される謂われはないわ」

 

響「そんな、敵だなんて……」

 

サンジェルマン「敵でないというのなら、手をひけ」

 

切歌「そ、それはできない相談デス」

 

調「うん」

 

サンジェルマン「ならば…我らはやはり敵同士という事だ。次はないと思え、シンフォギア装者達よ」

 

 サンジェルマン達は退こうとしたが…。

 

響「サンジェルマンさん、あなたのお母さんに」

 

サンジェルマン「お母さんはもう数百年も前に死んだ!私の前に現れたあの人がお母さんなものか!」

 

 そのままサンジェルマンは仲間と共にテレポートジェムで撤退した。

 

杳馬「ちょうど戦いも終わったみたいだ。俺達も退くとするか!」

 

アタバク「シャカよ、また戦いの続きをしよう!」

 

 星矢達を足止めした杳馬とアタバクも退いた。

 

シャカ「退いたか…(それにしても、あの杳馬というメフィストの冥闘士、他の冥闘士に比べてどこかが違うな…。どこかが……)」

 

パルティータ「サンジェルマン……」

 

 あくまでも並行世界の同一人物と割り切ってはいたものの、サンジェルマンが自分を母親と認めない事には流石にショックを隠せなかった。

 

 

 

ホテル

 

 サンジェルマン達の方は…。

 

プレラーティ「やれやれ、また無駄骨というワケダ…」

 

カリオストロ「事ある毎に装者が邪魔するんだものね。しかもほんとに新顔が出てくるとか、嫌になっちゃうったら。そもそも、何なのかしら、あの子達?」

 

プレラーティ「何の話なワケダ?」

 

カリオストロ「なんてゆーか、馴れ馴れしいのよ。サンジェルマンさん、サンジェルマンさんってさ。おまけに、あの女聖闘士をサンジェルマンは『お母さん』と言ってて、過剰に反応してたみたいなのよ。どうしてなのかしら?」

 

プレラーティ「確かにな…。知り合いでもあるまいし、気味が悪いワケダ」

 

カリオストロ「あの女、以前にサンジェルマンが言ってた」

 

サンジェルマン「…2人とも、ラピスを出しなさい」

 

カリオストロ「ど、どうしたの?怖い顔して」

 

プレラーティ「藪から棒なワケダ」

 

サンジェルマン「いいから出しなさい」

 

カリオストロ「はいはい…」

 

プレラーティ「お見通しというワケダね」

 

 2人はラピスを見せた。

 

サンジェルマン「やはり、さっきの攻撃でラピスに損傷を……」

 

プレラーティ「アダムスフィアの魔力を圧縮した一撃、流石に無傷とはいかなかったワケダ」

 

カリオストロ「これくらいなんともないわよ」

 

プレラーティ「ああ、誤差範囲というワケダ」

 

サンジェルマン「完全存在を生み出す触媒たるラピス・フィロソフィカス。損傷を負った状態で十全に機能するとでも?この状態ではファウストローブを纏うのは無理ね」

 

カリオストロ「そ、それは…そうだけどさ」

 

プレラーティ「では、どうしろというワケダ?」

 

サンジェルマン「ラピスの修復が完了するまで、協会に戻っていなさい」

 

カリオストロ「そんな?サンジェルマン1人でどうするつもりよ?」

 

プレラーティ「我々ならまだ戦えるワケダ!」

 

カリオストロ「そうよ、ファウストローブなんてなくても!」

 

サンジェルマン「今日の戦いでわかったでしょう。あの相手に半端な戦力はむしろ足手まといよ」

 

カリオストロ「サ、サンジェルマン……」

 

サンジェルマン「ラピスの使えないあなたたちでは、無駄死にするだけ。これは命令よ」

 

 サンジェルマンはどこかへ行こうとしたが…。

 

カリオストロ「ちょっと待って!あの聖闘士なのに錬金術が使える女、確かサンジェルマンはお母さんって言ってたけど、もしかして…」

 

サンジェルマン「前にも言ったはずだ、お母さんはお前達と出会う前に死んだと!あの人がお母さんなはずがない!」

 

 パルティータの事でも機嫌を悪くしたサンジェルマンは部屋を出た。

 

プレラーティ「サンジェルマン…急にどうしたというワケダ……?」

 

カリオストロ「いきなり足手まとい扱いとか、流石にひどいわよね……。そもそもラピスが損傷したのだって、サンジェルマンが…」

 

プレラーティ「言うな。かばったのは我々の判断なワケダ」

 

カリオストロ「それはそうだけど…。だからって、あの言い草、ちょっとつれなさすぎるんじゃない?」

 

プレラーティ「まあ、それは同感なワケダが……」

 

カリオストロ「どうする?言われた通り、協会に戻る?」

 

プレラーティ「それでは、状況次第で誰か他の者が代わりに派遣されかねないワケダ」

 

カリオストロ「確かにね…」

 

プレラーティ「私としては役立たず扱いされたまま、黙っているつもりはないワケダ」

 

カリオストロ「そうよね。っこでおめおめ協会になんか戻っていられないわ」

 

プレラーティ「とはいえ…ラピス損傷で戦力が低下したのは確かなワケダが」

 

カリオストロ「そうね……」

 

プレラーティ「まずは、どうにかしてラピスの修理を急ぐワケダ」

 

カリオストロ「うん…。それしかないわよね」

 

プレラーティ「浮かぬ顔だな」

 

カリオストロ「うん…サンジェルマン、戦闘中からなんか様子おかしかったけど、そうしたのかなって」

 

プレラーティ「確かに…。だが、我々には窺い知れないワケダ」

 

カリオストロ「信頼されてないのかしらね、あーし達」

 

プレラーティ「そうではない…。と思いたいワケダ…」

 

 ふと、ある事に気付いた。

 

カリオストロ「ねえ、様子がおかしい原因はあの女が現れたせいかも…?」

 

プレラーティ「あの女?」

 

カリオストロ「そうよ、あの錬金術が使える女聖闘士の事よ」

 

プレラーティ「あの女がサンジェルマンが度々誇らしげに語っていた師匠だとすれば…、一体何者なワケダ?」

 

カリオストロ「サンジェルマンがあーし達と出会う前に死んだって言ってたけど、急にその死んだ人間が現れた事も含めて、あーしも何者なのか知りたいわよ」

 

 

 

 

 

公園

 

 サンジェルマンは電話でアダムと話していた。

 

アダム『どうかな、首尾は?』

 

サンジェルマン「はっ…それが、新たな装者に加え、全滅したはずの冥闘士や死んだり再起不能になったはずの聖闘士の乱入もあり、再び取り逃しました」

 

アダム『ふむ。次々と起こるものだね、計算外の事が』

 

サンジェルマン「申し訳ありません」

 

アダム『君のせいではないさ、偶発的事象に関してはね』

 

サンジェルマン「はっ…」

 

アダム『だが、手強いみたいだね。随分と。勝てるかい?君達だけで。その、アダムスフィアを取り込んだカルマノイズに』

 

サンジェルマン「それは……」

 

アダム『対峙する事になるだろう。シンフォギア装者達とも。検討しようか、増援を。必要とするならばね、君が』

 

サンジェルマン「(確かに、プレラーティとカリオストロのラピスが破壊されたのは痛手だ…。だが、それも全ては私の責任…。自分の失敗は己の身で償うのみ)いえ…勝てます。アダムスフィアは必ずこの手で取り戻してみせます」

 

アダム『いいだろう。ならば見せてもらおう、君の仕事ぶりを』

 

サンジェルマン「はい…」

 

アダム『それと、死んだはずの聖闘士についてだが、もしかすると君の』

 

サンジェルマン「そこに現れた聖闘士は私のお母さんではありません!」

 

アダム『そうかい…』

 

 アダムは電話を終えた。

 

サンジェルマン「(お母さんはあの時に死んだんだ…!)」

 

 

 

回想

 

 それは、サンジェルマンがカリオストロとプレラーティと出会う前の事であった。ちょうど聖戦の時期であり、パルティータを始末するために三巨頭を初めとした黄金聖闘士に匹敵する冥闘士が10人近くもパルティータに襲い掛かり、パルティータは愛娘同然のサンジェルマンを護るためにボロボロになっていた。

 

パルティータ「冥王軍は私を始末するために最高戦力をありったけ投入してきたとはね……!」

 

サンジェルマン「お母さん、逃げて!このままだと殺されちゃう!!」

 

パルティータ「逃げるわけにはいかないわ。だって…子供を護るのが親の役目だから、娘も同然のサンジェルマンを見捨てるわけにはいかないもの」

 

サンジェルマン「だけど…!」

 

パルティータ「サンジェルマン、あなたと過ごした日々はとても充実していたわ。私が死んだら、錬金術師協会統制局長、アダム・ヴァイスハウプトの元へ行きなさい。彼は私に比べると頼りないけど、それでも私に万一の事があった際にあなたの事は頼んでいるの。そして、今までのように歴史の裏で人々を護るために戦うのよ。さようなら、サンジェルマン……!」

 

サンジェルマン「お母さ~~~ん!!」

 

 愛娘同然の弟子であるサンジェルマンを護るため、パルティータは自分の命を捨てて討伐しに来た冥闘士全てを道連れにするため、黄金のラピスを輝かせて自分の命を燃やし尽くし、自分を始末しに来た冥闘士全てを消滅させたのであった。戦いが終わった後、サンジェルマンの足元にパルティータが所有していた黄金のラピスが壊れた状態で飛んできた。

 

 

 

サンジェルマン「(お母さんは私を護るため、襲ってきた冥闘士全てを道連れに死んだ…。今日、現れたお母さんが本物であるものか……。絶対に誰かが成りすました偽者だ……!)必ず、この手で取り戻してみせる……アダムスフィアを。そして、私の理想を」




これで今回の話は終わりです。
今回は響達と並行世界のサンジェルマン達との遭遇、そしてアタバクが杳馬と共に本格的に響達の前に姿を現すのを描きました。
せっかくパルティータとサンジェルマンの再会となるはずだったのに邪魔して来た杳馬ですが、これからも最悪のタイミングで出てきては雰囲気をブチ壊したり、星矢達を足止めして装者達だけでどうにかしなければならない状況を作るなりしてとことん邪魔をしてきます。
ちなみに、杳馬を度々登場しては星矢達を邪魔する強敵として出したのは、護国という名目で胸糞悪い事ばかりする訃堂と比べれば杳馬は訃堂とは正反対の悪役らしい悪役である上、フットワークも軽い愉快犯である一方、訃堂とは逆に根っからの悪党なのに家族愛を捨てきれなかったために訃堂よりも遥かに好感が持てる上、どこにでも出しやすい悪役でもあったからです。
次はサンジェルマンの身に大変な事が起こる上、杳馬にフルボッコにされた訃堂がどうなったのかも判明します。

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