セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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152話 壊れたラピス

???

 

 とある場所で杳馬とアタバクは2人だけでいた。

 

杳馬「アタバクのダンナ、クソジジイの魂を磨り潰して取り込んだ感想は?」

 

アタバク「訃堂という男の魂、アヒンサーには及ばないが、なかなかの力を持った魂だったぞ」

 

杳馬「ダンナが気に入ったのなら、上等だ。何しろ、害悪なこいつは生まれ変われなくして、永遠の地獄に墜としたかったしなぁ」

 

 

 

回想

 

 それは、あるオートスコアラーを製造し、その間中は訃堂の傷の治療はせず、途方もない痛みという苦しみを与えていた杳馬はアタバクを目覚めさせた後、連れていた。

 

訃堂「ぐうううっ!!ぬあああああああっ!!!」

 

アタバク「メフィストよ、こやつが私に取り込んでほしいと言っていた男か?」

 

杳馬「ああ、このクソジジイは俺はとても気に食わなくてな、いくら苦しめて殺したって、死ねば楽になれると思うだろうしな」

 

アタバク「それで、私にこの男の魂を取り込めと言うのか?」

 

杳馬「ああ。それに、アヒンサーの失敗の反省も兼ねて奴の魂を磨り潰すなりしてみたらどうだ?」

 

アタバク「そうだな」

 

 杳馬とアタバクは訃堂の近くに来た。

 

訃堂「これが護国を果たせなかったワシの末路か……。死ねば、楽になれる…」 

 

杳馬「ところがぎっちょん!てめえには死んだって安らぎなんか与えねえよ」

 

訃堂「何!?」

 

杳馬「てめえみたいな大バカは死んだって生まれ変わる事なく、苦痛を味わい続けるのが当然のオチさ」

 

訃堂「何だと!?死しても地獄とは…!ならば、貴様らを排除するまで!!」

 

 死後も地獄だと突き付けられた訃堂は杳馬とアタバクに襲い掛かったが、アタバクの冥衣の腕に掴まれ、身動きがとれなくなった。

 

アタバク「うろたえるな、私に救いを求めればお前は永遠の命を得る上、苦しみから解放されて果たせなかった護国も果たせるというのだぞ」

 

訃堂「永遠の命と護国だと?それならば…、喜んで受け入れようぞ!」

 

アタバク「そうだ…それでいいのだ、訃堂よ。お前の望みは叶う。この私という生き神の中でな!」

 

 アタバクの甘い誘惑にかかり、訃堂は再び護国を果たしたい想いで救いを受け入れてしまったためにアタバクの本性を知り、驚愕した。

 

訃堂「ワシが…貴様の一部になれというのか!?」

 

杳馬「んははははっ!バカバカバーカ!!アタバクのダンナの甘い誘惑にすぐ引っかかって騙されてんの~!」

 

訃堂「貴様らァ!!どこまでもワシをコケにするのか!!」

 

 必死で抵抗する訃堂であったが、アタバクとの力の差が絶大であるがために無駄な事であった。

 

杳馬「無駄な事だぜ、じーさんよぉ。てめえは生きてたって地獄だし、死んだって地獄、人の皮を被ったケダモノなんざ護国の鬼にすらなれねえし、安らげる場所なんかねえのさ」

 

訃堂「生きても死してもワシは護国の鬼になれぬだと……!?」

 

杳馬「信じられねえなら、俺がその未来を見せてやるぜ」

 

 その言葉と共に景色が変わり、これから訃堂が起こそうとし、それが失敗して失意の中で牢獄に入れられる姿が出てきた。

 

訃堂「これが…ワシが辿る未来……?う、嘘じゃ!!これがワシの辿る未来であるはずがない!!全て貴様が作り出した幻じゃ!!」

 

杳馬「嘘じゃねえよ。だから言っただろ?てめえは近いうちに心をへし折られ、死ぬより辛い生き恥を晒す事になるってな。そうなるぐらいなら、とっとと死んでダンナに取り込まれ、生まれ変わる事なく永遠にダンナの一部になりな!」

 

 杳馬の介入なしで辿る未来は自分のすべてを否定された地獄であり、死んでも安らぎのない地獄で、生きても死んでも護国の鬼になれない事を知った訃堂は取り乱して心が完全に折れて絶望し、杳馬に頭と心臓を貫かれた。

 

訃堂「ぬあああああああっ!!」

 

 訃堂は絶望した表情で完全に息の根を止められ、その魂はアタバクによって自我を消され、磨り潰された上でアタバクの一部として完全に取り込まれた。

 

 

 

杳馬「あ~、あのケダモノジジイをぶっ殺し、完全に生まれ変われなくした事でスッキリしたぜ。ま、これからは本来は老害じーさんがやるはずだった事を俺がやって、事態をもっと面白くしちゃおっと!」

 

アタバク「なかなかの愉快犯だな」

 

 杳馬とアタバクは邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 そして次の日…。

 

響「またサンジェルマンさん達と戦わなきゃならないなんて……」

 

調「でも、攻撃して来たのは向こうが先です」

 

切歌「今のままだとやられてしまうのデス」

 

弦十郎「一体、どういった者達なんだ、そのサンジェルマンとやらは?」

 

パルティータ「話すと長くなるけど、あの子は私が表向きは流浪の名医として活動している最中、ある悪徳貴族を殺し、奴隷を解放した際にサンジェルマンがいて、弟子入りを志願したために弟子にしたんです」

 

了子「なるほど、あなたのお弟子さんなのね」

 

パルティータ「私達の世界のサンジェルマンは弟子にしてから100年程経過した時に方針の違いで喧嘩別れし、とある事件で再会した際、初めは敵だったけど、最終的に私と和解し、響ちゃん達と一緒に戦ってくれたの」

 

弦十郎「くれた、という事は…」

 

星矢「…最期は俺達や母さんを助けるために犠牲になった…」

 

調「確かにあの時、杳馬が開発したディバインウェポン2が爆発していたら、私達全員、今頃は……」

 

弦十郎「命の恩人…という事か……」

 

切歌「それは、そうなんデスけど……」

 

響「あの時、サンジェルマンさんの声、届いていたのに。私、手が届かなくて……。だから、あんな想いは……」

 

弦十郎「事情はだいたいわかった。が、君達の世界とは事情が異なる。この世界の彼女達が、君達の世界と同じように話が通じる相手という保証はない」

 

星矢「それは百も承知だ」

 

パルティータ「あの子は私の娘。こじれていても分かり合う事ができた。例え違う世界のサンジェルマンであっても、私の娘である事に変わりないのだから」

 

響「星矢さん、パルティータさん……」

 

調「こうまでパルティータさんが言ったら、何も言えない…」

 

切歌「親の愛情というものデスか……」

 

 こじれたものの、最終的に娘のサンジェルマンと分かり合えたパルティータの言葉に調と切歌は何も言えなかった。

 

弦十郎「君達の気持ちはよくわかった。だが現実として立ちふさがってきたら、手を出さずに黙って見ているわけにもいくまい。対策を講じなければ」

 

パルティータ「そこは承知しているわ」

 

星矢「それに、こういったのを邪魔するために杳馬とアタバクが出てくるかも知れねえしな」

 

了子「あの2人は相当厄介な奴で間違いないわね。当面の問題は、愉快犯の冥闘士2人とあのファウストローブへの対策かしらね…」

 

弦十郎「君達のギアであれに対抗する事は可能なのか?」

 

切歌「それがデスね…」

 

調「今は、以前あったイグナイトの力が使えなくなってしまったんです」

 

弦十郎「確か、ファウストローブがイグナイトの天敵…という話だったはずだが?」

 

響「はい。でもそれは、対消滅バリアコーティングで何とかなったんですけど……」

 

了子「けど?」

 

調「イグナイトのコアだった魔剣ダインスレイフが、最後の戦いで消滅してしまって」

 

切歌「完全に使えなくなっちゃったデス……」

 

弦十郎「そうだったのか…」

 

了子「なるほどね。どうりでギアの状態が前と変化してると思ったわ。でも、呪いを源泉とする力は反動も大きいわ。これはこれでよかったのかも知れないわね」

 

パルティータ「私としては、あのブリーシンガメンみたいな機能の方がリスクは少ないと思うわ」

 

切歌「そうかも知れないデスけど……」

 

調「正直、ファウストローブ相手にイグナイトなしは厳しい」

 

パルティータ「それに、ブリーシンガメンみたいな機能を積むとしても、そういった完全聖遺物を見つける時間もないしね…」

 

弦十郎「仕方あるまい。現状使える戦力で対策を練るとしよう」

 

星矢「そうだな…」

 

シャカ「私達が出ようにも、必ず奴等は邪魔してくるであろう。装者だけでとなると、難しい話だな……」

 

 

 

市街地

 

 サンジェルマンは1人、現場へ向かっていた。

 

サンジェルマン「私1人でも、必ずやり遂げる…。そうでなければ、理想は遠ざかってしまう。この手から全て、零れていってしまう……。お母さん……」

 

 指定の場所へ行くと、カルマノイズが出現した。

 

サンジェルマン「!この禍々しい気配は…カルマノイズか!?近くに出るとは運がいい。今度こそ取り戻してみせる、アダムスフィアを!」

 

 サンジェルマンは戦闘を開始しようとしたが……。

 

男性「た、助けてくれーっ!」

 

サンジェルマン「こんな人混みの中に現れるとは!(流石に避難はまだできていないようね……。いや…構うものか!)」

 

 サンジェルマンはファウストローブを纏った。

 

サンジェルマン「アダムスフィアを返してもらおうか!」

 

 カルマノイズと戦闘を開始したものの、高い再生能力に手を焼いていた。

 

サンジェルマン「(削れてはいる…が、やはり再生能力が高い!)」

 

 カルマノイズの攻撃を間一髪でサンジェルマンは回避した。

 

サンジェルマン「くっ!今の攻撃、直撃を受けたらファウストローブとて危ういな……」

 

女性「きゃあああっ!」

 

 そんな時、悲鳴が聞こえた。

 

サンジェルマン「まだ逃げてない者がいるのか!?」

 

 急いでサンジェルマンはカルマノイズを銃撃し、怯ませた。

 

女性「あ、ありがとうございます……」

 

サンジェルマン「邪魔だ!すぐに立ち去れ!」

 

女性「は、はい!」

 

 すぐに女性は逃げ出した。

 

サンジェルマン「間違えないでもらおうか。お前の相手はこの私だ!さあ、今日こそアダムスフィアを返してもらうぞ!」

 

 サンジェルマン1人だけでは決定打を与えられなかった。

 

サンジェルマン「(くっ…やはり私1人では決定打にならないか……)いや、そんな事は!仕留めてみせる!例えこの身、この魂、燃やし尽くす事になろうとも!」

 

 

 

ホテル

 

 同じ頃、カリオストロとプレラーティは起きてサンジェルマンが使っていた部屋に来た。

 

カリオストロ「サンジェルマン、いる~?」

 

プレラーティ「悪いが入らせてもらうワケダ」

 

 入ったが、サンジェルマンの姿はなかった。

 

カリオストロ「あれ、いない……?」

 

プレラーティ「いつからなワケダ?」

 

 疑問に思う中、ある気配を感じた。

 

カリオストロ「!?何、この気配!」

 

プレラーティ「アダムスフィアの反応というワケダ!」

 

カリオストロ「まさか、あのカルマノイズに1人で!?」

 

プレラーティ「おそらく、そのまさかというワケダ!」

 

カリオストロ「もう、あの意地っ張りさんったら…!」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 二課の方でもカルマノイズの出現を検知した。

 

あおい「司令、カルマノイズの反応を検知!」

 

弦十郎「何ッ?もしや先日の個体か!?」

 

朔也「はい、先日観測したものと波形が合致しました!」

 

切歌「ちゃちゃっと倒してくるデスよ!」

 

弦十郎「相手はアダムスフィアを内包した強力な個体だ、それに冥闘士も邪魔してくるだろう。気を付けろ!」

 

調「はい!」

 

あおい「あ、ちょっと待ってください!」

 

星矢「わととととっ、何だ!?」

 

あおい「誰かが、カルマノイズと交戦している…、反応からして、おそらくは錬金術師だと思われます」

 

パルティータ「錬金術師…、あの子に違いないわ!」

 

朔也「反応は1人みたいだが、誰かまでは」

 

パルティータ「あんな無茶をするのはあの子しかいない!行くわよ、みんな!」

 

響「は、はい!」

 

シャカ「立花響よ、戦場においては迷いは命取りだ。よって、戦場では迷いを破砕し、己のやるべき事をやりたまえ」

 

響「シャカさん……」

 

シャカ「さあ、私達も戦場へ行くぞ!」

 

 そう言った、シャカ達は出撃した。

 

 

 

市街地

 

 サンジェルマン1人ではカルマノイズに苦戦していた。

 

サンジェルマン「(直撃は避けられているとはいえ、こう重なると…遠からず、活動限界がやってくるか)」

 

???「サンジェルマン!」

 

 そこへ、パルティータ達が来た。

 

サンジェルマン「お前達は……」

 

パルティータ「ザババの2人は逃げ遅れた人達の避難誘導を頼むわ!」

 

調「はい!」

 

切歌「任せておくデス!」

 

 調と切歌は避難誘導にあたった。

 

サンジェルマン「ふ……」

 

響「あれ?(今、サンジェルマンさん……?私の気のせい……?)」

 

サンジェルマン「また私の邪魔をしに来たのか、シンフォギア装者」

 

響「立花響です、サンジェルマンさん」

 

サンジェルマン「立花…響……?いや、お前の名前などはどうでもいい。とにかく私の邪魔をするな」

 

パルティータ「邪魔はしないわ。だから、共にカルマノイズを倒しましょう!」

 

サンジェルマン「断る。お母さんの偽者や政府の犬と結ぶ手など持っていないわ。それに、これは私の戦いだ」

 

パルティータ「サンジェルマン……」

 

星矢「何言ってんだ!?目の前にいる母さんは本物だ!疑うのなら、手を握って温かさを確かめてみやがれ!」

 

サンジェルマン「聖闘士の最高位である黄金聖闘士までもが政府の犬に成り下がるとは……!」

 

 サンジェルマンからすらば、二課と協力関係にある星矢達は政府の犬に成り下がったとしか見えなかった。

 

切歌「響さん!」

 

調「錬金術師がもう2人!」

 

響「えっ!?」

 

 言葉通り、カリオストロとプレラーティも来た。

 

プレラーティ「見つけたワケダ!」

 

カリオストロ「1人で飼ってんい何してるのよ、もうっ!」

 

サンジェルマン「プレラーティ…カリオストロ」

 

カリオストロ「とにかく、援護するわ」

 

サンジェルマン「ダメよ。あなた達には帰れと言ったはず」

 

プレラーティ「何をバカな事言ってるワケダ?」

 

響「そうです。1人きりで戦える相手じゃないですよ!」

 

カリオストロ「あなたは黙ってて!これはあーし達の問題なんだから!」

 

響「で、でも!?」

 

???「おうおう、混沌としてるねえ!」

 

星矢「この嫌味ったらしい声は!」

 

 声の主は杳馬であり、アタバクもいた。

 

パルティータ「杳馬、アタバク!」

 

杳馬「悪いけど、俺達も邪魔させてもらうぜ!」

 

星矢「やっぱりこういった時に出てくるのかよ!」

 

シャカ「応戦するしかあるまい」

 

 結局、星矢達は杳馬の邪魔を受ける羽目になった。

 

カリオストロ「またあの冥闘士達!?」

 

プレラーティ「!?この気配は」

 

 気配の正体は、カルマノイズが強烈な一撃を放とうとしているものであった。

 

プレラーティ「この間の凝集光!?回避するワケダ!!」

 

サンジェルマン「くっ!」

 

 響達は慌てて攻撃を回避した。

 

カリオストロ「なんて出力よ!この前より強くなってない!?」

 

プレラーティ「アダムスフィアの力を吸収し続けているというワケダ!」

 

カリオストロ「冗談キツいったら!あんなの喰らったらひとたまりもないわよ!」

 

響「また来ます!」

 

カリオストロ「あんなの避けるが勝ちよ!」

 

プレラーティ「言わずもがななワケダ!」

 

 再びカルマノイズの攻撃を響達は回避しようとしたが…。

 

サンジェルマン「(だが、これを私が避けると、後方には……)」

 

 後方に何かあるためにかわせないサンジェルマンはカルマノイズの攻撃をまともに受けてしまった。

 

カリオストロ「サ、サンジェルマン!?」

 

プレラーティ「バカな、なぜよけなかったワケダ!」

 

サンジェルマン「ぐう……っ。やはり、受け切れぬか……」

 

 その光は星矢達も横目で見ており、切歌と調にも見えていた。

 

切歌「い、今の光はなんだったデスか!?」

 

調「カルマノイズの攻撃だよ、切ちゃん。一瞬、こっちに撃たれるかと思った……」

 

 サンジェルマンが攻撃をかわさなかった理由が響にはわかった。

 

響「もしかしてサンジェルマンさん…。避難してる人を庇って……?」

 

 カルマノイズの攻撃を受けた際にラピスが破損してファウストローブの装着が解除され、サンジェルマンは倒れてしまった。

 

プレラーティ「サンジェルマン!?」

 

カリオストロ「ちょっと、サンジェルマン!?しっかりしろってば!」

 

サンジェルマン「うぅ……」

 

 カルマノイズは前進してきた。

 

プレラーティ「くっ…ご丁寧に止めを刺そうというワケダね!」

 

カリオストロ「でも、あーし達が殺らせはしないわよ!(小示威、ファウストローブなしじゃ、勝負は見えてるけどね)」

 

プレラーティ「(だが…サンジェルマンを救うためならば本望というワケダ)」

 

響「2人共下がってください。サンジェルマンさんは、wあたしが護ります!」

 

カリオストロ「あ、あなた?」

 

プレラーティ「一体何の真似というワケダ!?」

 

サンジェルマン「くっ……」

 

 サンジェルマンは立ち上がった。

 

サンジェルマン「…どちらも無用だ。そこをどけ」

 

響「サンジェルマンさん…?」

 

切歌「無茶デスよ!」

 

調「もう、戦える状態じゃない」

 

カリオストロ「この子達の言う通りよ、サンジェルマン!」

 

プレラーティ「肝心のファウストローブも破損しているワケダ!」

 

サンジェルマン「それでも…私は取り戻さねば…。アダムスフィアを…私の理想を!支配に抗うための絶対的な力を!」

 

 そんな中、カルマノイズはより強力な瘴気を放った。

 

切歌「な、なんデス!?これは!」

 

調「イグナイトの破壊衝動を、もっと気持ち悪くしたみたいな」

 

響「とにかくよけて、みんな!」

 

切歌「は、はいデス!」

 

 装者達はよけた。

 

カリオストロ「サンジェルマン!」

 

プレラーティ「こっちに来るワケダ!」

 

サンジェルマン「ダメだ、私を抱えては、間に合わない!」

 

 自分がいては3人全員が瘴気に呑まれると判断したサンジェルマンはカリオストロとプレラーティを突き放した。

 

プレラーティ「サンジェルマン!?」

 

カリオストロ「な、何を!?」

 

サンジェルマン「あああああっ!!」

 

 突き放した直後、サンジェルマンは瘴気に呑まれた。

 

パルティータ「サンジェルマン!!」

 

杳馬「おっと、サンジェルマンちゃんのところへは行かせないぜ!」

 

星矢「この野郎……!」

 

 杳馬とアタバクが邪魔をして、星矢達は行く事ができなかった。

 

響「サンジェルマンさん!」

 

切歌「行っちゃダメデス、響さん!」

 

響「で、でも…!」

 

 そうしている間に瘴気に呑まれたサンジェルマンに異変が起こっていた。

 

サンジェルマン「うがあああああっ!おおおおおおっ!」

 

調「どうなってるの?」

 

切歌「黒い霧に飲み込まれて、まるで見えないデス……」

 

サンジェルマン「……ふ、ふふふ……」

 

カリオストロ「何……?笑い声…サンジェルマンの……?」

 

響「中で、一体何が…?」

 

 瘴気が晴れると、そこにはカルマノイズに取り込まれたサンジェルマンの姿があった。

 

パルティータ「サンジェルマン……?」

 

杳馬「おおっ、面白い事になったぜ!」

 

サンジェルマン「ふふふ…ははは…。はーっははははっ!」

 

プレラーティ「サンジェルマン……?」

 

カリオストロ「何、その姿…?」

 

プレラーティ「一体、どうしたというワケダ……」

 

響「まさか、その姿…前にもあった……」

 

切歌「カルマノイズとの融合デス!?」

 

カリオストロ「サンジェルマン…大丈夫…?」

 

サンジェルマン「ええ…むしろ晴れ晴れした気持ちよ。何しろ、千年にも渡る懊悩への答えを、遂に得たのだもの」

 

プレラーティ「何を言っているワケダ?」

 

サンジェルマン「ようやくわかったのよ。支配するもの、されるもの…等しく価値がないのだと」

 

カリオストロ「サン…ジェルマン…?」

 

サンジェルマン「やはり人間という種は、髪の失敗作だった。どうしようもないぐらいに、ね……。人類は世界の完全たる霊長たるに相応しい器ではなかったの。原罪は人を永遠に過ちへと走らせ、苦しみは人という種に未来永劫ついて回る…それが当然の運命なのよ!」

 

切歌「ど、どういう事デスか!?カルマノイズと融合したのに何だか元気に話せているデスよ!」

 

プレラーティ「元気にだと、バカを言うな!あんな考え、サンジェルマンの意志のはずないワケダ!」

 

調「多分、少しでもカルマノイズに抗えてた前とは違い、完全にカルマノイズの破壊衝動に、囚われてしまったから……」

 

カリオストロ「サンジェルマン!」

 

 カルマノイズと融合したサンジェルマンが放つ瘴気にその場にいた装者や錬金術師は呑まれてしまった。

 

切歌「くうっ!?こ、この力は!?」

 

調「カルマノイズと同じ…ううん、それ以上!」

 

響「サンジェルマンさん!カルマノイズの破壊衝動なんかに負けないでください!」

 

プレラーティ「正気に戻れ、サンジェルマン!」

 

カリオストロ「この世界を革命し、全ての人間を理不尽な支配の軛から解放するのがあなたの理想だったんじゃないの!?」

 

サンジェルマン「ああ、愚かなる人間達…忌むべき失敗作たちよ。あなた達を救済する術はただ一つ、絶対公正なる、死あるのみ!さあ、今こそ神の審判を下してあげるわ!!」

 

響「そんな…。私、サンジェルマンとは戦いたくない!」

 

シャカ『言ったはずだ、立花響よ!戦場においては迷いを破砕し、やるべき事をやれと!さもないと、君は死ぬ事になるのだぞ!』

 

響「シャカさん……!」

 

 アタバクと千日戦争状態にありながらも、シャカはテレパシーで響にやるべき事をするしかないと言い、響は切歌と調と共にサンジェルマンに向かっていったが、一蹴されてしまった。

 

サンジェルマン「フハハハハハ!他愛もないわ!」

 

調「つ、強い…」

 

切歌「カルマノイズよりも断然強いデス……」

 

響「サンジェルマンさん…目を覚まして!あなたのお母さんのパルティータがいるのだから!」

 

サンジェルマン「目なら覚めているわ。かつてないほどにね。全てが見通せる。この歪んだ忌まわしい世界が隅々まで…汚泥の中を這いずりまわる穢らわしい」虫けらどもの姿が全て!我が前から、そしてこの地表から。消え去れ、虫けらどもよーーっ!

 

 強烈な一撃でサンジェルマンは装者達を一蹴した。

 

カリオストロ「やめなさいってば、サンジェルマン!」

 

プレラーティ「それはお前の真の意志ではないワケダ!」

 

響「……?

 

 戦いの中、響は何かに気付いた。

 

サンジェルマン「小賢しい!」

 

 サンジェルマンの攻撃をカリオストロとプレラーティはかろうじて障壁で止めた。

 

カリオストロ「くうっ1」

 

プレラーティ「こ、これは……なかなか堪えるワケダ……」

 

サンジェルマン「貴様らに…詐欺師風情と三流錬金術師に、一体私の何がわかるというの!?」

 

カリオストロ「わかるわよ、あーし達には」

 

プレラーティ「お前が理想と現実の狭間で苦しんだ千年もの歳月…その内の数百年とはいえ、私達は共有してきたワケダ」

 

サンジェルマン「黙れ…黙れ黙れ黙れーーーっ!」

 

 再び飛んできたサンジェルマンの攻撃を2人は防御した。

 

プレラーティ「くっ……サ、サンジェルマン!」

 

カリオストロ「取り戻しなさい、あなたの意志を!理想を!」

 

サンジェルマン「カリ…オス、トロ……プレ……ラーティ……?」

 

カリオストロ「サ……サンジェルマン?」

 

プレラーティ「正気に戻ったワケダね!?」

 

サンジェルマン「私は……う…うう…ああああーっ!?」

 

 苦しんだサンジェルマンは逃走した。

 

カリオストロ「サンジェルマン!」

 

プレラーティ「追跡するワケダ!」

 

カリオストロ「わかってるわよ!」

 

 サンジェルマンを追って、2人もその場を離脱した。

 

杳馬「こりゃ、面白れぇ事になったぜ!んじゃ、俺達はこの辺で」

 

アタバク「また、どこかで私達は出てくるぞ」

 

 サンジェルマンが変貌したのを見た杳馬はこれで十分だと判断し、アタバクと共に戦闘をやめて離脱した。

 

星矢「くそっ、また杳馬達に嵌められたか!」

 

パルティータ「サンジェルマン……!」

 

 パルティータは杳馬に邪魔され、サンジェルマンがカルマノイズと融合して逃走した先を見つめていた。




これで今回の話は終わりです。
今回はサンジェルマンが1人でカルマノイズに挑んだ挙句、融合してしまうというとんでもない事態になるのを描きました。
また、AXZ編で杳馬にフルボッコにされて連れて行かれた訃堂がどうなったかも描きました。風鳴のクソジジイこと訃堂はシンフォギア史上最低最悪の存在であるため、やっぱり死ななければスッキリしないと思っていたものの、ある掲示板で訃堂をただフルボッコにして殺しても苦しみから解放されるだけなのではないかというのがあったため、死後の世界も描いている聖闘士星矢の要素も入れ、杳馬がXVでの訃堂の末路を未来予知という形で訃堂に見せ、死後の世界でも逃げ場を完全になくして絶望させて殺すという、杳馬の外道ぶりを示すかませとしての末路を描きました。
次の話は今後の事についての対策が話し合われる際、カリオストロとプレラーティが二課に潜入してきます。

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