セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

154 / 198
154話 ラピスの輝き

???

 

 ある場所では、ベアトリーチェと何者かは話をしていた。

 

???「ベアトリーチェ様、あの杳馬とかいう男を信用して大丈夫なのでしょうか?」

 

ベアトリーチェ「いいじゃない。あの男は私と同じように楽しみを求めているのだから、割と気が合うのよ。おまけに、冥闘士という聖闘士にも対抗できる戦力も提供してくれているのだから」

 

???「ですが、冥闘士は我らの構成員と比べて従うという意識に乏しく、下手をすれば足を引っ張りかねない爆弾みたいなものですが…」

 

ベアトリーチェ「そんな冥闘士でも、聖闘士に対抗できるのだから、それでいいでしょ?」

 

???「(おっしゃる事はわかりますが、どうも私は杳馬という男は信用できないのです…。好き勝手に行動し、腹の内が読めない杳馬は下手をすると、ベアトリーチェに謀反を起こし、抹殺してしまうのでは……?)」

 

 ベアトリーチェとウマが合っても、男はどうしても杳馬を信用できなかったのであった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 共闘が決まった後、すぐにパルティータはカリオストロとプレラーティのラピスの修復に入った。

 

カリオストロ「あのパルティータって女、あーしも驚く程の美人だわねぇ」

 

プレラーティ「それだけじゃない、見た目だけでなく、錬金術師や聖闘士としての実力も破格のものなワケダ」

 

シャカ「当然だ。私もパルティータの話は情報交換の際に聞いていたが、老師をも上回る年齢とそれによって身に付けた膨大な経験と知識、そして膨大な小宇宙を用いて放たれる破格の威力の錬金術によって、下手な黄金よりも強いのだからな」

 

プレラーティ「下手な黄金よりも強いだと!?」

 

カリオストロ「言われてみれば、あのシルクハットの冥闘士と渡り合えてたのは黄金クラスの実力という証みたいだわ…」

 

星矢「しかも、母さんは数千年もの経験で色んな事ができるんだぜ」

 

カリオストロ「あらやだ!とすれば、家事とかもできちゃうの!?」

 

星矢「まあな」

 

カリオストロ「世話になりっぱなしってのも癪だし、何かあれば宿賃くらいは働いてあげるわ」

 

星矢「ああ、そん時は頼むぞ」

 

カリオストロ「それじゃあ、あーし達はラピスの修復状況がどうなのか、見てくるわね」

 

弦十郎「わかった」

 

 カリオストロとプレラーティは研究室へ向かった。

 

響「本当によかった…」

 

切歌「嬉しそうデスね、響さん」

 

響「うん!私達の世界じゃ、星矢さん達としかちゃんと手を取り合えなかった2人とも、こうして協力関係を結べたんだから」

 

調「確かに私達の世界では、パルティータさん達の仲介で協力してくれて」

 

切歌「反応兵器を消し去ってくれたデスけど……」

 

シャカ「調と切歌は今回の協力体制に反対なのか?」

 

切歌「まあ、確かにちょっとは不安デスけど……」

 

調「でも、響さん達が信じるなら、私達も信じたい」

 

響「…うん。ありがとう、2人とも」

 

切歌「今回も、なんだかんだと響さんのペースデスね」

 

調「うん。何だか、懐かしいね」

 

切歌「いつだって響さんは誰にでも手を延ばし続けるデス」

 

調「うん。たとえそれが敵であっても、戦いの最中でも」

 

切歌「響さんが手を延ばしてくれたから、あたし達もこうしているんデスからね……」

 

調「うん、そうだね。通じるといいね、今回も」

 

切歌「そうデスね。…星矢にパルティータさん、シャカさんもいるからきっと大丈夫デス!」

 

奏「やれやれ…」

 

弦十郎「お前は不服そうだな」

 

奏「不服と不安、半々ってところかな。懐に爆弾を抱え込んだ心境さ」

 

弦十郎「まあ確かに、言い得て妙だな」

 

奏「なんだ、弦十郎のダンナは全面賛成だったかと思ったけど、違うのか」

 

弦十郎「俺も了子君達に説得された口でな……。だが、この局面ではリスクを取らずにいては事態収拾の機会を失いかねないと、最終的に判断した。納得してくれとは言えんが、できるだけ理解してほしい」

 

奏「ダンナ達の決めた事だ。協力はするさ。それに、あいつらの気持ちを汲んでやりたいっていうのもある」

 

弦十郎「響君達の事か?」

 

奏「ああ、だけど、流石に完全に信用するってわけにはいかない。いつ敵になってもおかしくない連中だからな」

 

弦十郎「そうだな。今はそれでいい」

 

シャカ「何かあれば、私達が対処しよう」

 

 そんな時、警報が鳴った。

 

あおい「司令、ノイズの反応を検知しました!」

 

弦十郎「何?カルマノイズのか?」

 

あおい「いえ、ノイズの模様です」

 

朔也「確かにアルカノイズではなく、ノイズですね」

 

弦十郎「ふむ…ならば響君達」

 

切歌「出撃デスね!?」

 

弦十郎「いや、今回は流石に全員出撃というわけにはいかない」

 

調「どうしてですか?」

 

弦十郎「装者なしであの錬金術師達をここに残すのは、流石に少々不安がな……」

 

星矢「心配すんなよ。母さんがラピスを修復しているんだから、あいつらが何かしでかしても母さんが止めてくれる」

 

 そう言ってると、パルティータが来た。

 

パルティータ「ラピスの修復は終わったわ」

 

了子「流石は世界最高の錬金術師ともいうべきだわ」

 

シャカ「ちょうどいい時だ。彼女達がどれほどの実力か、実際にその目で見てはどうかね?」

 

弦十郎「シャカ君の言う事ももっともだな。よし、錬金術師達も出撃させる!」

 

 一同は出撃する際、パルティータが2人を呼び出しに向かった際、誰かと電話をしているのを見た。

 

パルティータ「どうしたの?」

 

プレラーティ「ちょ、ちょっとした連絡なワケダ…」

 

カリオストロ「別に、スパイとかはしてないわよ……」

 

パルティータ「そう。だったら、身体を動かすのも兼ねて、ノイズを倒しに行ったら?」

 

プレラーティ「それもよさそうなワケダ」

 

カリオストロ「色々と鬱憤も溜まっているし、ノイズ相手に発散させなきゃ!」

 

 カリオストロとプレラーティは自分達に言えない連絡をした事をパルティータは見て見ぬふりをして察していた。

 

 

 

???

 

 同じ頃、カリオストロ達と連絡を終えたアダムは錬金術師達達と対峙しながら、何かを考えていた。

 

アダム「ふむ…やはりね。間違いないね、これは。あったみたいだ、何かが……。まあ、いいさ。信じて待つだけだよ、僕はね。さて、すまないね。待たせてしまって」

 

錬金術師A「くっ、錬金術師協会、局長、アダム・ヴァイスハウプト…」

 

錬金術師B「まさか、本人がこんな辺境の地まで来るとは……」

 

アダム「ここで受け取る算段だった、という事だろう。日本から送られてきたアダムスフィアを。だけど残念だね。永遠に来ないよ、アダムスフィアがここに運ばれてくる時は。僕の可愛い部下達が回収するからね。日本で」

 

錬金術師A「ふ…全てお見通しというわけか…。だが、同志たちの力を舐めてもらっては困る」

 

錬金術師B「当然、我らの力もな」

 

 錬金術師達はアルカノイズを出した。

 

錬金術師A「いくら錬金術師の長とはいえ、所詮は人間」

 

錬金術師B「この大量のアルカノイズを、一度も触れずに対処できるかな?」

 

アダム「人間か…。久しぶりだよ、そう呼ばれたのは。いいだろう。少しだけ見せてあげるよ、錬金術師協会、統制局長である僕の力を」

 

 アダムの絶大な力により、アルカノイズは全滅した。

 

錬金術師A「な、何が起きたんだ……」

 

錬金術師B「あれだけのアルカノイズが…一瞬で……」

 

アダム「所詮はこの程度か。運動にもならなかったよ。悲しいかな、無知というものは…」

 

錬金術師A「人間じゃない…。お前は一体なんなんだ!?」

 

アダム「知っているだろう?君達の長だよ。ああ、君達にとっては、元か。それじゃあ、この辺にしておこうか。無駄な時間は。吐いてもらうよ。何もかも」

 

錬金術師B「くっ……」

 

アダム「(さて、信じて待つとは言ったが、気になるな。少々……。仕方ない、挨拶にでも行くとするか、日本へ)」

 

 日本へ向かう事にしたアダムであった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 そして翌日、警報が鳴った。

 

あおい「司令、カルマノイズの反応を検知しました!」

 

弦十郎「ついに来たか!」

 

朔也「待ってください!周囲にアルカノイズの反応も多数検知!」

 

弦十郎「何?アルカノイズもだと!?」

 

朔也「はい、それもこれまでとは比べ物にならない規模です!」

 

了子「例のはぐれ錬金術師達がアダムスフィアを奪還しようと総力戦を仕掛けているというところかしらね……」

 

 そんな発令所へ響達が来た。

 

響「出撃ですか?」

 

カリオストロ「何の騒ぎなの?」

 

弦十郎「たった今、例のカルマノイズとアルカノイズ多数の反応を検知した」

 

響「カルマノイズの?それじゃあ…」

 

カリオストロ「サンジェルマンがそこにいるというわけね」

 

あおい「そうなるね…」

 

響「すぐに出撃します!」

 

弦十郎「ああ、頼んだ。ヘリの準備はできている」

 

星矢「相手が相手だし、杳馬達も邪魔してくるだろうな。奏も行くか?」

 

奏「こいつらを放ってか?」

 

カリオストロ「何よ?」

 

パルティータ「念のため、ファウストローブが正常に機能するかどうかも兼ねて、出撃したら?」

 

プレラーティ「そうだな、正常に機能できるかどうかも確かめる必要があるワケダ」

 

カリオストロ「じゃ、行くわよ!」

 

 一同は出撃した。

 

 

 

 

 一同はサンジェルマンの方へ向かっていった。

 

奏「な~んかあいつらといると、気になってしょうがねえ…」

 

プレラーティ「言っておくが、邪魔をしてはならないワケダ」

 

カリオストロ「そうよ!突撃癖のある誰かさんは少しは大人しくしてなさい!」

 

奏「何だとォ!?」

 

 ところが、口論しながら向かっている途中で響達の動きが止まってしまった。

 

星矢「おい、お前達!どうしたんだ!?」

 

 動きが止まったが、それは何かに気付いて走るのをやめたのではなく、まるで時間が止まったかのようだった。

 

シャカ「星矢、響達はまるで時間が止まったかのようだぞ」

 

星矢「言われてみりゃ、時間が止まってしまったかのようだ」

 

パルティータ「こんな事ができるのは……!」

 

 響達の動きを止めたのは杳馬であり、アタバクも一緒であった。

 

杳馬「はーい、俺の仕業だよ~。こいつは時の牢獄という、俺の結界。その中では、小宇宙の弱い連中の時間は止まっちまうのさ!」

 

シャカ「なるほど。だから、響達の時間は止まってしまったというのか」

 

星矢「邪魔ばっかりしやがって……!」

 

杳馬「んははははっ!俺はこういうの、だ~いすき!助けようと思っていたサンジェルマンちゃんに手が届かない気分はどうかなぁ?あ、響ちゃん達の時間は止まってるんだった」

 

パルティータ「杳馬…強行突破してでも行くわよ!」

 

アタバク「こうしている間に時間がきてしまったようだぞ」

 

杳馬「んじゃ、俺達はこの辺でさいならさん!」

 

 杳馬は星矢達を足止めし、錬金術師達が全滅してサンジェルマンがいなくなったのを感じてから時の牢獄を解除してその場から消えた。

 

奏「あれ?」

 

カリオストロ「急にサンジェルマンの気配が消えちゃったわ」

 

プレラーティ「どうなっているワケダ?」

 

シャカ「君達は杳馬の時の牢獄で時間を止められていたのだよ。私達は小宇宙が強いから、時間を止められなかったのだがな」

 

カリオストロ「あ~ん、もう、悔しい!」

 

 またしても杳馬に邪魔され、サンジェルマンと会う事すらできなかった響達であった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 星矢達は帰還した。

 

弦十郎「そうか、逃したか……」

 

カリオストロ「全く、散々だったわよ。杳馬のせいでね!」

 

了子「杳馬…。あのシルクハットの冥闘士ね」

 

星矢「あいつの時の牢獄のせいで杳馬達の相手を俺達が引き受け、響達を先に行かせるというのができなかったからな」

 

弦十郎「フットワークが軽い上、時間操作の力を使える。あの男は本当に厄介極まりない存在だ…」

 

シャカ「それより、奏とカリオストロ達はまだお互いが信用出来ていないようだな」

 

奏「当たり前だ!」

 

プレラーティ「付け焼刃の連携なんて、あてにならないワケダ」

 

響「そんな…」

 

カリオストロ「サンジェルマンの師匠にラピスを修復してもらったから、できる限りは協力するわ。けど、戦場では不可侵以外、ちょっと約束できないわね」

 

プレラーティ「仲良しごっこはここまでというワケダ」

 

響「カリオストロさん、プレラーティさん……」

 

シャカ「響よ、無理に協力させようとすると、逆効果だ。彼等の頭を冷やさせたまえ。そうすれば、次の日には協力し合えるかも知れんぞ」

 

 協力してほしい響であったが、シャカは無理に協力させても逆効果であり、頭を冷やさせる必要があると語った。

 

 

 

 そして翌日…。

 

プレラーティ「起きろ、カリオストロ!」

 

カリオストロ「ん……ふわぁあっ…。どうしたのよ、大きな声で……」

 

プレラーティ「昨日は杳馬という奴のせいで正常に稼働するかどうかができなかったから、今日こそはラピスが正常に稼働するかどうか試すぞ」

 

カリオストロ「ああ、そうだったわ。稼働さえできれば、やっとこんなところからおさらばできるわけね」

 

プレラーティ「ああ。だが立ち去る前に、一応、奴等にも伝えておくワケダ」

 

カリオストロ「ま、一宿一飯の義理ってやつもあるし。一応、ね……」

 

 早速、稼働するかどうか試すためにトレーニングルームを借りる事となった。

 

カリオストロ「なんか悪いわね、訓練場まで借りちゃって」

 

パルティータ「いいのよ。ラピスが完全に直っているかどうかは、動作テストをしないとわからないでしょ?昨日は杳馬のせいで台無しになったのだから」

 

プレラーティ「流石はサンジェルマンの師匠だ」

 

カリオストロ「まさか共闘関係を考え直せとか、言わないわよね?」

 

パルティータ「言わないわよ。集団行動が得意な人もいれば苦手な人もいる。人それぞれってとこかしら」

 

プレラーティ「人それぞれ、か……」

 

 奏は警戒している様子でカリオストロとプレラーティを見ていた。

 

響「奏さん……」

 

カリオストロ「ま、いいけどね。あんた達になんと思われていたって」

 

プレラーティ「まずは起動実験と行くワケダ」

 

カリオストロ「ええ、行くわよ!」

 

 パルティータの手で修復されたラピスは問題なく起動し、ファウストローブを纏う事に成功した。

 

調「ファウストローブが…」

 

切歌「無事起動したデス!」

 

プレラーティ「ふむ、基本動作に支障はないワケダが」

 

カリオストロ「あとは実際に魔力を使ってみないとね。早速、シミュレータを起動してもらおうかしら」

 

了子「了解、少し待ってて」

 

奏「ちょっと待った」

 

カリオストロ「何よ。まさか使わせないっていうの?」

 

奏「そうじゃない。せっかくの動作テストなんだろ?シミュレータのノイズなんかより手応えのある奴の方がいいんじゃないか?」

 

カリオストロ「どういう意味よ?」

 

奏「あたしが手合わせしてやるって言ってんだよ。ファウストローブのパワーの回復度合いを見るには、一度手合わせしてる、このあたしが最適だろ?」

 

了子「そうね…。確かにそれならば前回の交戦データが比較になるわ」

 

カリオストロ「そりゃ、あーし達もその方が助かるけど」

 

プレラーティ「どういう風の吹き回しなワケダ?」

 

奏「なに。こっちとしても、前に倒されたままってのは癪なんでな」

 

カリオストロ「リベンジってわけ」

 

プレラーティ「だが、今回も同じ結果になるワケダ」

 

奏「そいつはどうかな」

 

 奏はギアを装着し、ブリーシンガメンを起動させた。

 

プレラーティ「本気の力を見せてくれるというワケダね」

 

カリオストロ「面白いじゃない」

 

響「あ、あの!私も参加します!」

 

奏「ん?」

 

響「だって1対2じゃ奏さんが不利ですし、戦闘データをとるなら対等の人数でやった方がいいんじゃないですか?」

 

了子「まあ、そうね」

 

カリオストロ「こちらは構わないわよ」

 

プレラーティ「だが、負けた時の言い訳がなくなるワケダ」

 

奏「言ってろ。吠え面かかせてやる!」

 

 そして、元通りになったかどうかのテストは終わった。

 

弦十郎「そうか。ファウストローブは元通りの性能を発揮したか」

 

了子「ええ。しかも、修復したパルティータの親切心のせいか、先日の戦闘データより1割増しの性能の向上が確認できたわ」

 

カリオストロ「完璧に修復したばかりか、性能も前より1割増しにしてくれるなんて、気前がいいじゃない」

 

パルティータ「どういたしまして」

 

プレラーティ「これでサンジェルマンを救えるというワケダ」

 

弦十郎「問題はどのようにサンジェルマンを救うかだが…。具体的方法について協議したいと思う」

 

カリオストロ「ええ、いいわ(すぐにお暇するけどね)」

 

プレラーティ「(話は聞いておいても無駄にはならないワケダ)」

 

了子「それに関連して、私から再確認だけど…」

 

カリオストロ「な、何かしら?」

 

了子「ファウストローブの核となるラピス・フィロソフィカスは、あらゆる不浄を払う力を持つ…それで間違いないわね?」

 

パルティータ「ええ。現に私はその不浄を払う特性を医療でも使っているわ」

 

了子「ならば、本来はカルマノイズという呪いの集積体に対しても、有効な手段となる可能性が高いわ」

 

プレラーティ「だが、アダムスフィアを吸収したカルマノイズにはそこまで通用しなかったワケダ」

 

カリオストロ「それどころかカルマノイズの攻撃をまとみに食らったせいで、あーし達のラピス、破損しちゃったのよね……」

 

了子「それは仕方ないわ。言ってみれば、真逆のエネルギーが衝突した形だもの」

 

カリオストロ「どういう事?」

 

了子「双方の出力次第だけど、コア付近に直撃を受ければ、今度もラピスが破損、ないし砕け散ってしまう可能性はあるわ」

 

カリオストロ「それじゃどうしろっていうの?」

 

星矢「出力の問題なら、それこそカリオストロ達とは実力の次元が違う母さんの出番じゃないか?」

 

 その星矢の言葉に一同はパルティータへ視線を向けた。

 

了子「確かに、黄金のラピスの出力はどれほどのものかわからないけど、パルティータの実力ならば真正面からでも対抗できるわ」

 

カリオストロ「あーし達はどうしろっていうの?」

 

了子「当たり前だけど、相手の攻撃の直撃は受けない事」

 

プレラーティ「言うだけなら簡単なワケダが?」

 

了子「ええ、そうね。でも、ここからが本番よ。それは反対の事も言えるはず。2人のラピスの力をコアに…つまり彼女に直接注ぎ込めば、呪いの力を消滅とまではいかずとも抑制する事は可能なはずよ」

 

プレラーティ「動きを止めてどうするワケダ?」

 

了子「カルマノイズの呪いの力の支配が弱まれば、サンジェルマンの意識が表層に現れるはず。意識さえ取り戻す事ができれば、きっと次の手が打てるはずよ」

 

シャカ「パルティータの黄金のラピスを用いるという方法もあるぞ」

 

了子「それならば2人のラピス以上の効果が見込めるけど、杳馬達が邪魔をするのは確定よ」

 

星矢「そん時は俺とシャカの2人で何とかする。だから、母さんはサンジェルマン救出に専念してくれ。もう目の前でサンジェルマンを喪うのは嫌なんだろ?」

 

パルティータ「星矢…」

 

 自分の本心を察し、杳馬の相手は自分に任せて娘のサンジェルマン救出に専念してほしいと言う星矢にパルティータは決心した。

 

パルティータ「わかったわ、サンジェルマン救出に専念するわよ」

 

星矢「母さん…」

 

プレラーティ「サンジェルマン救出のカギが私達とパルティータである事がわかれば十分なワケダ」

 

カリオストロ「長い事お邪魔したわね。あとはあーしらでやるわ」

 

 そのままカリオストロとプレラーティは発令所を出ようとした。

 

響「えっ、そんな…どこに行くんですか?」

 

プレラーティ「どこであろうと我々の勝手なワケダ」

 

響「そんな…。一緒に」

 

星矢「響、あいつらにはあいつらなりのやり方があるんだ。一輝みたいに好きにさせてやれよ」

 

カリオストロ「あら、あーし達のやり方も尊重してくれる星矢は見た目も中身もいい男そのものじゃない」

 

星矢「元男に褒められもあんまり嬉しくはないけどな」

 

カリオストロ「ちょっと、もうあーしは完全に女だから、言いっこなしよ!」

 

奏「はっ、思った通り、自分勝手な奴等だな」

 

プレラーティ「何とでも言えばいいワケダ」

 

響「2人だけでだなんて…危険すぎますよ!」

 

 心配する響にパルティータは肩に手を置いてくれた。

 

パルティータ「この場は行かせてあげて。私に考えがあるわ」

 

響「考え…?」

 

カリオストロ「どうしたのかしら?」

 

パルティータ「ちょっとね。それじゃあ、サンジェルマン救出へ行って救ってくるのよ」

 

プレラーティ「言われなくても、そのつもりなワケダ」

 

カリオストロ「それじゃ、お邪魔したわね」

 

 カリオストロとプレラーティは部屋を出た。

 

響「2人を行かせたなんて…」

 

調「でも、パルティータさんの言う通りにすべきだと思う」

 

切歌「連携が乱れて、大惨事になる恐れがあるのデス…」

 

響「そんな……」

 

 ふと、響が見回してみると、いつの間にかパルティータがいなくなっていた。

 

響「あれ?パルティータさんがいない!」

 

切歌「ほんとデス!」

 

奏「知らないうちに消えちまうなんて、どうしたんだよ!」

 

シャカ「うろたえるな、君達!パルティータはある考えがあって、君達では知らぬ間に姿を消したのだ」

 

調「それは何?」

 

シャカ「それは」

 

 シャカが言おうとした途端、警報が鳴った。

 

あおい「司令!カルマノイズの反応を検知しました!」

 

弦十郎「来たか」

 

朔也「波形照合!カルマノイズと融合したサンジェルマンと目されます!」

 

了子「罪と呪いを背負いしサンジェルマン……。さしずめクリミナル・サンジェルマンといったところかしら」

 

弦十郎「クリミナル・サンジェルマンか…言い得て妙だな。だが、カリオストロ達が去って数時間も経たずにとは。間の悪い事だ。一応、彼女達にも知らせてやってくれ。そのための通信機は持たせたはずだ」

 

 あおいと朔也は通信機の信号を探っていた。

 

あおい「その通信機からの信号を検知しました!」

 

朔也「既にクリミナル・サンジェルマンの反応ポイントへと向かっている模様!」

 

弦十郎「彼女達もアダムスフィアの反応を捉えたか」

 

星矢「それなら、俺達も行くぞ!」

 

奏「そうだな…。奴等が失敗したら、あたし達の出番だしな」

 

星矢「そういう意味じゃねえぞ」

 

切歌「仮に2人が本当にサンジェルマンを助けられたとしてもデス」

 

調「アダムスフィアだけは、こちらで押さえないと危険です」

 

奏「ああ。あんな連中に持たせといたら安心できないしな」

 

響「それは…」

 

シャカ「そこは私達に任せたまえ。今は現場へ急ぐのが先決であろう」

 

弦十郎「彼女達との連携やアダムスフィアの処遇に関しては、こちらから指示を出す」

 

星矢「んじゃ、行くぜ!」

 

響「…はい。了解しました」

 

 星矢達は出撃した。

 

 

 

荒野

 

 カリオストロ達はサンジェルマンのところに来た。

 

カリオストロ「サンジェルマン、助けに来たわよ」

 

サンジェルマン「……」

 

カリオストロ「サンジェルマン?」

 

プレラーティ「最早言葉も話せないのか、それとも話す気がないのか…。だが、なんという激しい憎しみを宿した瞳なワケダ」

 

サンジェルマン「……」

 

カリオストロ「そうね。でも、とても悲しい瞳……。サンジェルマンの負ってきた苦しみや悲しみ、心の底に埋めた憎しみを、呪いが増幅してるってわけね……」

 

プレラーティ「ああ。それこそ千年に渡って受けてきた心の痛みに、サンジェルマンは今再び苛まれているというワケダ……」

 

カリオストロ「苦しいよね、サンジェルマン。悲しいよね……。でも…その痛みから、今助けてあげるわ!」

 

 2人はファウストローブを纏った。

 

カリオストロ「あーし達がサンジェルマンに受けた恩を」

 

プレラーティ「返す時は、今なワケダ!」

 

カリオストロ「サンジェルマンと共に辿り着いたこの錬金術の叡智の結晶」

 

プレラーティ「ラピス・フィロソフィカスの力をもって!」

 

 その頃、響達は向かっていたが、案の定、杳馬とアタバクが出てきた。

 

杳馬「ハァ~イ、また邪魔させてもらうよ~!」

 

星矢「出やがったな、杳馬!」

 

シャカ「君達は急いで向かうのだ!」

 

響「はい!」

 

 響達は急いで杳馬とアタバクを通り抜けようとした。

 

杳馬「だから、こっから先は」

 

星矢「だから言っただろ、杳馬!」

 

シャカ「ここからは私達が相手だ!あのような非力な者達を相手にしても、退屈で仕方なかろう」

 

アタバク「実にそうだな」

 

杳馬「あれ?パルティータちゃんがいないぞ!どこ行ったんだ!?」

 

星矢「さあ、どこだろうな。俺は知らねーぞ!」

 

 星矢とシャカは杳馬とアタバクを足止めするために戦いを挑んだ。同じ頃、カリオストロ達はカルマノイズと融合したサンジェルマンに大苦戦していた。

 

カリオストロ「あっぶなーい!」

 

プレラーティ「あれを食らったらひとたまりもないワケダ」

 

カリオストロ「当たらなければいいかとか、まったくあのオバハン、よくも簡単に言ってくれたもんよね」

 

プレラーティ「避ける事だけならば、さほど難しくないワケダが……」

 

カリオストロ「けど、これじゃサンジェルマンに近寄れやしない」

 

???「だったら、私がフォローするわ」

 

 声がした方を向くと、そこにパルティータがいた。

 

カリオストロ「サンジェルマンの師匠…!」

 

パルティータ「サンジェルマンの攻撃は全て私が防御するわ。だから、進みなさい!」

 

プレラーティ「あれ程の攻撃を受け止める!?」

 

 そう言ってると、サンジェルマンが第二波の瘴気を凝縮したビームを放ったが、パルティータは掌で軽々と防いだ。

 

パルティータ「あの程度の攻撃、私には涼風に等しいわ」

 

カリオストロ「さ、流石はサンジェルマンの師匠…」

 

プレラーティ「障壁なしで、防いだ……?」

 

 今度は響達が来た。

 

カリオストロ「あちゃ…装者達が到着しちゃったわ」

 

プレラーティ「協力はいらないといったワケダが?」

 

奏「誰が協力なんてするかよ。あたし達はあたし達で勝手にやらせてもらう!」

 

響「そんな、いがみ合わないで手を取り合って」

 

カリオストロ「そんなきれいごとで世の中回ったらこんな醜い世界になってないのよ!」

 

プレラーティ「その歪んだ世界を正すためにも、我々はサンジェルマンを救い出さなければならないワケダ!」

 

奏「お前らの都合なんて知った事か!」

 

切歌「あたし達はカルマノイズと」

 

調「アダムスフィアの暴走を止めるだけ!」

 

パルティータ「装者達はフォローをする程度に留めて。サンジェルマンは私が真正面からぶつかるわ

 

調「はい!」

 

切歌「ガッテン承知デス!」

 

 装者達はフォローに徹し、パルティータがサンジェルマンと直接ぶつかった。アダムスフィアを取り込んだカルマノイズと融合しているサンジェルマンはとても装者や錬金術師が正面からぶつかって勝てる相手ではなかったが、パルティータからすれば大した事はなかった。

 

奏「な、なんて強さだ…。あたしらやあいつらでは正面からでは勝てない相手を正面から押している…!」

 

 パルティータに圧倒されたサンジェルマンはビームを撃つためにエネルギーを溜めようとしたが…。

 

パルティータ「遅い!」

 

 光速で動けるパルティータには手も足も出ず、エネルギーを溜める暇さえなかった。そして、錬成陣から出た光の鎖で拘束する技でサンジェルマンの動きを拘束して封じた。

 

響「あっさり動きを封じちゃった…」

 

パルティータ「2人共、今のうちにやるわよ!」

 

プレラーティ「そのチャンス、逃すわけにはいかないワケダ!」

 

カリオストロ「なんだか連携してるみたいで癪だけど…それしかなさそうね!」

 

 パルティータはカリオストロとプレラーティと共にサンジェルマンに近づいた。

 

プレラーティ「我々のラピスの力を」

 

カリオストロ「サンジェルマンに注ぎ込む!」

 

パルティータ「(サンジェルマン、今度こそあなたを助けるわ…!)」

 

 3人はラピスの力をサンジェルマンに注ぎ込んだ。

 

サンジェルマン「ぐああああああっ!?」

 

 サンジェルマンの身体から瘴気が出たものの、出力が桁違いな黄金のラピスの前では無力であった。

 

カリオストロ「これが…黄金のラピスの力…?」

 

プレラーティ「パルティータは我々の何年先を行っているワケダ……?」

 

パルティータ「2人共、サンジェルマンに自分達の声を届けて!」

 

カリオストロ「そうだったわ!戻ってきて、サンジェルマン!」

 

プレラーティ「我々にはお前が必要なワケダ!」

 

サンジェルマン「あ……ああああ……。あなた…達は……?」

 

カリオストロ「サンジェルマン!?」

 

プレラーティ「意識をしっかり持つワケダ!」

 

カリオストロ「そうよ、サンジェルマン!」

 

プレラーティ「お前を救いに来たワケダ!」

 

サンジェルマン「ダメ、だ……」

 

プレラーティ「何ッ!?」

 

サンジェルマン「に、逃げ、ろ…」

 

カリオストロ「ど、どうしてこんな事を!?」

 

サンジェルマン「だ、だが」

 

パルティータ「私は逃げないわ!」

 

 そう言ってパルティータはサンジェルマンを抱きしめた。

 

サンジェルマン「(この温かさは……!)」

 

パルティータ「私はあなたからは絶対に逃げない!心に決めたの!そして、あなたの仲間、いえ、友達も助けようとしているのよ!」

 

サンジェルマン「友…達……」

 

カリオストロ「友達って表現はちょっと恥ずかしいけど、あーし達は部下じゃないしね~」

 

プレラーティ「苦楽を共にしてきたのは事実だ」

 

 カリオストロとプレラーティの言葉を聞いたサンジェルマンは2人を同志とした事を思い出した。

 

サンジェルマン「そうか、確かに私は2人を、同志として……(それに、私を抱きしめている人は……お母さん……?)」

 

パルティータ「いい案がなければ、このまま黄金のラピスで一気に浄化するわ」

 

サンジェルマン「だったら、アダムスフィアを!」

 

プレラーティ「どういうワケダ?」

 

サンジェルマン「アダムスフィアは純粋な魔力の結晶…。それが今はカルマノイズの呪いを乗算的に強化しているわ。しかし、アダムスフィアの力そのものは、特定のベクトルを持たぬ、ただの力に過ぎない。なればこそ。アダムスフィアとラピスとの間にパスを通し、呪いと同様にラピスの浄化の力を乗算強化すれば…」

 

プレラーティ「そうか!」

 

サンジェルマン「ええ、黄金のラピスで無理矢理浄化しなくてもカルマノイズの呪いに打ち克てるはずよ!」

 

パルティータ「繋ぐのなら、響ちゃんの出番よ!私が黄金のラピスで瘴気を消し飛ばしているから、見えるでしょ!?」

 

響「はい!」

 

 パルティータの指示通り、響はサンジェルマンの方へ向かっていった。

 

調「今はパルティータさんが動きを封じてるけど」

 

切歌「1人で突っ込むなんて無茶デスよ!」

 

響「サンジェルマンさん、パルティータさんと一緒に今助けます!」

 

サンジェルマン「お前は…立花、響…!?」

 

カリオストロ「あーし達の間に首を突っ込んでくるなんて無粋じゃない?」

 

プレラーティ「ほんとなワケダ」

 

響「サンジェルマンさん、あなたを抱きしめている人は誰なのか、わかりますか?」

 

サンジェルマン「その前に聞きたい。なぜおまえは、そうまでして、私達に手を延ばし続けるんだ?」

 

響「だって、私は知っているから…」

 

サンジェルマン「何をだ?」

 

響「あなた達が本当に願っているものを」

 

サンジェルマン「世迷言を!」

 

パルティータ「いいえ、本当にあの子達も私も知っているわ!あなたは誰もが虐げられない明日を願って、私に弟子入りした事を!」

 

サンジェルマン「弟子入り!?お母さんはあの時に…」

 

パルティータ「実を言うと私達、本当は別の世界の人間なの。あなたが言うように、この世界の私は既にあなたの目の前で死んだわ」

 

サンジェルマン「じゃあ、再び目の前に現れたお母さんは誰かが化けた偽者ではなかった……」

 

パルティータ「私もこの世界の私のように、元の世界のあなたを弟子にしたのだけど、活動方針の食い違いで仲がこじれてしまって絶縁状態が続いていたの。だけど、響ちゃん達のお陰で最後は再び寄りを戻し、分かり合う事ができたの。その過程で私達の世界のあなたは響ちゃん達と戦ったけど、最後は分かり合えたわ」

 

カリオストロ「何ですって?」

 

プレラーティ「死んだり昏睡状態になったはずの聖闘士や二課にいないはずの装者達の存在…そういう仕掛けだったワケダね!」

 

サンジェルマン「馬鹿げている!他人の世界のため、その命を張るというの?」

 

パルティータ「そうね。私は元の世界で娘を喪ったから、あなたを助けようとしているのは、私達の世界のあなたを喪ってぽっかり空いた心の穴をふさぐための自己満足なのかも知れない…」

 

響「だとしても、どの世界だって、違いはないです。どれも大切な世界だから…。大切な人達が暮らす世界だから!」

 

サンジェルマン「傲慢に過ぎるぞ!自分の世界一つ救えない人の身風情が望むべきものではない!」

 

響「わかってます…。でも、放ってはいられないんです。誰かが悲しんだり、苦しんだりする姿を。諦めたくないんです。分かり合えるはずの人達との絆を」

 

サンジェルマン「それこそ傲慢の上に強欲の極みというものだ!全てを取りこぼさずにいられるはずがない!」

 

響「知ってます…。それがとても難しい、高望みだって事も。これまでも、届かなかった思いも、たくさんある。届いても、手遅れだった事だって。何度も、何度も…たくさん、取りこぼしてきた」

 

サンジェルマン「ならば、なぜ…」

 

響「だとしてもーっ!私は、絶対に諦めたりしない!みんなを救うために、この拳を握る事を!絶対に止めたりはしない!分かり合うために、この手を延ばす事を!」

 

サンジェルマン「(なんという、無限の欲望…身の丈に合わぬにも程があるわ。でも、人の世のためならば、それは無限の希望でもあるというの…?その手を、私も…。いや、今更)」

 

パルティータ「いいえ、掴めるわ!」

 

 例え生まれた世界は違えど、育ての母親であるパルティータの言葉にはサンジェルマンも考えが止まってしまった。

 

パルティータ「例え生まれた世界は違っても、罪を背負っていても、あなたは私の誇れる娘なのよ、サンジェルマン!」

 

サンジェルマン「(お母…さん…。間違いない、この人は本物のお母さんだ…!私に叡智を、錬金術を教え、育ててくれた…)」

 

 母親の言葉にはしっかり耳を傾けていた。

 

サンジェルマン「(志を同じくし、同じ方向を向く者として、一時でも並び立ち、共に戦う事が許されるならば…)わかった、立花響…お前を、信じよう。少なくとも、今、この時、この場だけは」

 

響「サンジェルマン…!」

 

カリオストロ「サンジェルマン、本気なの?」

 

サンジェルマン「ええ…本気よ。そしてお母さん、私のところに来てくれて、ありがとう…」

 

パルティータ「どういたしまして、サンジェルマン」

 

カリオストロ「ほんと、親子水入らずとはこの事ね」

 

プレラーティ「私達の入る隙間もないワケダ…」

 

 サンジェルマンとパルティータの親子の絆はカリオストロとプレラーティでさえ、入る隙間がないと悟るほどであった。

 

サンジェルマン「そして見せてもらおうか、立花響。その言葉が、覚悟が、決して口先だけではない事を」

 

響「はい!」

 

 そう言って、パルティータの傍に来た。

 

パルティータ「さあ、今からカルマノイズを引きはがすわよ!」

 

響「おおおおおおーっ!!」

 

 黄金のラピスの輝きと響のパンチにより、カルマノイズはサンジェルマンから引きはがされた上、アダムスフィアも出てきた。

 

奏「カルマノイズを完全に引きはがしちまいやがった…!」

 

調「見て、アダムスフィアが」

 

切歌「出てきたデス!」

 

 そして、即座にパルティータは光の鎖でカルマノイズを拘束した。

 

パルティータ「さあ、3人とも!ラピスの力をアダムスフィアに注ぎなさい!」

 

カリオストロ「それとサンジェルマン、ラピスを受け取りなさいな!」

 

 カリオストロはパルティータが修復してくれたラピスをサンジェルマンに渡した。

 

サンジェルマン「私のラピスを修復した上で持っていてくれたのか…」

 

カリオストロ「サンジェルマンの師匠が修復してくれた上、出力も1割増しの大サービスよ!」

 

サンジェルマン「ありがとう、お母さん…!」

 

 何から何まで自分のためにしてくれた事にお礼を言ったサンジェルマンに対し、パルティータは微笑んだ。

 

プレラーティ「今からアダムスフィアと接続する魔力回路を作るワケダ!」

 

 カルマノイズが動けない隙にカリオストロはアダムスフィアとラピスを接続した。

 

カリオストロ「OK!接続完了したわ!」

 

 ところが、サンジェルマン達のラピスに異変が起こった。

 

カリオストロ「こ、これって…アダムスフィアの力が!?」

 

プレラーティ「回路を通じて、大量の魔力がラピスへと流れ込んでくるワケダ!」

 

サンジェルマン「一体、何がどうなって…」

 

 どうこうしている間に、サンジェルマン達のファウストローブが変化した。

 

カリオストロ「な、なんなの、これ?ファウストローブが!?」

 

プレラーティ「アダムスフィアの魔力を受けて、変化したというワケダ!?」

 

パルティータ「(この変化、まるで黄金聖闘士の血や神の血によって聖衣が黄金に輝いたり、神聖衣に変化するのに似ているわ…)」

 

サンジェルマン「私達のラピスに輝きが戻ったわ!」

 

プレラーティ「ただ戻ったわけじゃない…」

 

カリオストロ「うんうん、こんな眩い輝き見た事ないわ!」

 

サンジェルマン「…ありがとう、2人とも…」

 

カリオストロ「お帰り、サンジェルマン」

 

サンジェルマン「色々と世話をかけた」

 

プレラーティ「無事ならば問題ないワケダ」

 

サンジェルマン「それと…立花響。そしてその他の装者達も、助力に感謝する」

 

響「サンジェルマンさん…。よかったです、戻ってこられて」

 

奏「…別にお前を助けたんじゃない。大切な仲間を手伝っただけさ」

 

切歌「まったまた、奏さんったら素直じゃないデスね」

 

奏「茶化すなよ」

 

サンジェルマン「そしてお母さん、ただいま…」

 

パルティータ「お帰り、サンジェルマン…」

 

 世界の壁を超え、親子が対面したのであった。

 

調「でも、アダムスフィアはまだカルマノイズの中……」

 

パルティータ「ええ。後はカルマノイズを倒すだけよ。行きなさい、サンジェルマン!仲間と共に!」

 

サンジェルマン「うん、お母さん!」

 

 サンジェルマンは仲間達と共にカルマノイズと対峙した。




これで今回の話は終わりです。
今回は装者サイドと錬金術師サイドのいざこざの発生とサンジェルマンの救出を描きました。
ベアトリーチェも出てきましたが、杳馬がウロボロスの協力者になっているのが判明した事とまだ名前は出てはいないものの、石屋恭二は杳馬の危険性をベアトリーチェに伝えるのを描いています。
次の話はカルマノイズとの決着を描きますが、いよいよ並行世界のアダムが響達の前に姿を現します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。