セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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155話 アルケミックオーダー

荒野

 

 その頃、星矢とシャカは響達を先に行かせるために杳馬とアタバクの2人と戦っていた。アタバクはシャカと格闘戦を繰り広げていたが、実力が互角であるせいですぐに千日戦争状態になった。

 

杳馬「やっぱ、ダンナと乙女座はベストコンディションだと決着が着かねえのか」

 

星矢「よそ見してる場合か、杳馬!」

 

 星矢の拳を杳馬は受け止めた。その際、小宇宙の変化でサンジェルマンからカルマノイズが引きはがされたのを感じ取った。

 

杳馬「パルティータちゃん、俺を出し抜いて娘のサンジェルマンちゃんを助け出したとはな。そんじゃ、場所を変えるとするか!」

 

 早速、杳馬は黒い渦を発生させ、自分達を移動させ、響達がいる場所までワープした。

 

 響達はカルマノイズと交戦していたが、黒い渦から星矢達が出てきた事に驚いた。

 

響「せ、星矢さん達が!」

 

切歌「出てきちゃったデス!」

 

杳馬「パルティータちゃ~んって、本当に流石だよねえ!この俺を出し抜く術を持ってたなんて。それってさ、光の屈折率をかなり上げて透明化し、小宇宙を始めとした気配を一切遮断するって奴?」

 

パルティータ「まさか、杳馬にそれを見抜かれてしまうとはね」

 

杳馬「いや~、気配の遮断と光の屈折率をかなり上げての透明化はどっちかが得意な奴はいても、それを高いレベルで両立できる奴なんて聞いた事がないんでねぇ、やっぱり数千年生きた事による経験故のものかなぁ?」

 

パルティータ「そうでしょうね。シャカ、千日戦争の状態が続いているなら、交代してみようかしら?」

 

シャカ「それもよかろう」

 

 交代すれば好転するのではと思い、シャカが杳馬と、パルティータがアタバクと戦う事となった。

 

アタバク「なるほど、相手を変える事で事態を変えようというのか。それも結構」

 

パルティータ「私を甘く見てると、地獄行きよ!」

 

 そう言ってパルティータはビームを放った。アタバクは小宇宙による障壁で防ごうとしたものの、防ぎ切れずに腕に直撃を受けた。

 

アタバク「さっきの攻撃、ただ力で障壁を破ったわけではないな?」

 

パルティータ「うふふっ、私はラピス・フィロソフィカスの中でも改良を重ねて生み出した極上品、黄金のラピスを所有しているのよ。黄金のラピスによる強力な浄化の力は冥闘士にも有効でね、幾多の聖戦の際に多くの冥闘士を葬ってきたの」

 

アタバク「賢者の石の極上品で私に優位に立つとは…、流石は人間の身で数千年生きた女だ(だが、黄金のラピスの効果が薄すぎる杳馬は一体、何者だ……?)」

 

 冥闘士にも効果的な賢者の石が効果的でない杳馬にアタバクは疑問を覚えた。

 

杳馬「まさか、神に最も近い男が相手とはな」

 

星矢「俺も忘れるなよ、杳馬!」

 

シャカ「事態を混乱させ、混沌とした状況を楽しむ悪魔よ、今より地獄へ赴くがいい!六道輪廻!」

 

 悪魔ともいうべき杳馬に対し、シャカは六道輪廻を放った。

 

杳馬「こ、これが六道輪廻!?うわあああああっ!!」

 

 そのまま杳馬の精神はは餓鬼界、地獄界、畜生界、修羅界、人界、天界の6つの地獄を見るはめになって倒れはしたものの、すぐに立ち上がった。

 

シャカ「すぐに立ち上がるとは。君は6つの地獄のうち、どの地獄へ行ったのかな?」

 

杳馬「へ、へへ…。天界さ…。恐ろしい世界へ転がり落ちたお陰で思い出したくもねえ事を思い出しちまった…!」

 

シャカ「(思い出したくもない事だと…?)」

 

星矢「何を思い出したくないのか知らねえが、ここでお前の愉快犯染みた悪事を終わりにしてやるぜ!」

 

杳馬「そうはいかねえな、今日はこの辺で退くとするぜ。まだ命をかけて戦う時じゃねえしな。んじゃ、またな!」

 

アタバク「さらばだ、現代の乙女座、シャカよ!」

 

 まだ決着を着ける段階ではないという考えの杳馬はアタバクと共に姿を消した。

 

星矢「また逃げやがったか…!」

 

シャカ「(あの杳馬という男、まさか六道輪廻で天界に落ちたとはな…。もしや、奴は天界と何やら関わりでも……?)」

 

 六道輪廻で杳馬の落ちた地獄が天界であり、しかもそれに関する口ぶりであったため、疑問に思うシャカであった。星矢達が杳馬達と戦っていた頃、響達はカルマノイズと戦っていた。サンジェルマン達はファウストローブが変化したため、いつも以上の戦闘力で戦えていた。

 

サンジェルマン「アダムスフィアはまだカルマノイズの中、なるほど大した出力のようね」

 

プレラーティ「ああ。依然、奴の破壊力と再生能力は健在というワケダ」

 

カリオストロ「でも、今のあーし達の力を合わせれば」

 

プレラーティ「この程度の魔力、弾けぬわけがないワケダ!」

 

 サンジェルマン達は力を合わせた障壁でカルマノイズのビームを捻じ曲げ、明後日の咆哮へ弾いた。

 

調「あ、あのビームを」

 

切歌「ローブの放つ光で捻じ曲げたデス!?」

 

響「凄い…凄いです、3人とも!」

 

サンジェルマン「感心してる場合か!」

 

カリオストロ「そうよ。あーし達が攻撃を抑えている間に」

 

プレラーティ「お前達が奴を削るというワケダ!」

 

響「それなら、任せてください!」

 

調「切ったり削ったりなら」

 

切歌「大の得意なんデスよ!」

 

奏「お前らに言われなくたって!」

 

 響達は波状にカルマノイズへ攻撃を仕掛けた。

 

カリオストロ「効いている!けど」

 

プレラーティ「超再生能力の速度がそれを上回っているワケダ!」

 

サンジェルマン「ならば再生箇所の瘴気をラピスの光で中和するまで!」

 

カリオストロ「あいつの攻撃をいなしながら、それをやれっての!?」

 

プレラーティ「随分無茶な注文というワケダ」

 

サンジェルマン「あなた達ならその程度、できると思っていってるのだけど?」

 

カリオストロ「もう…。そんな事言われちゃったらやれるって言うしかないじゃないの!」

 

プレラーティ「相変わらず、人を乗せるのが上手いワケダ」

 

サンジェルマン「ふっ…さあ、行くわよ!」

 

 装者と錬金術師達は次第にカルマノイズを追い詰めていった。

 

サンジェルマン「2人とも…。私がこうして戻ってこられたのは、あなた達のお陰よ」

 

カリオストロ「それを言うなら、あーしがこーんなに魅力的になれたのはサンジェルマンのお陰だし?」

 

プレラーティ「私も心ゆくまで研究を進められているのは、サンジェルマンのお陰なワケダ」

 

サンジェルマン「そうか…そうね。仲間だもの」

 

カリオストロ「そういう事」

 

プレラーティ「なワケダ」

 

サンジェルマン「ふふ……(…ああ。私はよい友、よい仲間…、そして……よい母を持った。これがきっと、永く虚ろな生の中で私が得た、最も大切な、秘宝だったのね)さあ、決着の時だ!行くわよ、2人とも!我ら錬金術師の力を示すために!成し遂げよう、我ら錬金術師の矜持と理想を顕すために!」

 

カリオストロ「ええ、サンジェルマンと一緒なら」

 

プレラーティ「地獄の果てでもどこへでも一緒に行ってやるワケダ!」

 

サンジェルマン「我らのラピスの輝きを持って!」

 

 ちょうどその時、杳馬とアタバクを退けた星矢達が現場に来た。

 

星矢「母さん、あいつら、やってるぜ!」

 

パルティータ「ええ(やっぱり、こっちのサンジェルマンも素晴らしい仲間を持ったみたいね。私は母親として、そんなあなたがとても誇らしく思えるわ)」

 

 母親として、パルティータは娘のサンジェルマンの戦いを見守っていた。そんなこんなでカルマノイズは追い詰められていった。

 

サンジェルマン「今こそ、我ら錬金術師の三位一体の秘奥…受けるがいい!」

 

カリオストロ「あーしの水銀の力で変成を」

 

プレラーティ「私の硫黄の力で昇華を」

 

サンジェルマン「私の塩の力で正しき力の安定を。消え去れ、不浄の者よ!数多の穢徳と罪業の申し子よ!」

 

サンジェルマン達「はああああっ!!」

 

 サンジェルマン達の三位一体の秘奥でカルマノイズは消滅した。

 

切歌「カルマノイズが…」

 

調「跡形もなく消え去った……」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 二課でもカルマノイズの消滅は確認された。

 

あおい「カルマノイズの消滅を確認」

 

弦十郎「終わった…、いや、まだ安心はできないか」

 

了子「ええ、この後、彼女達がどう動くか」

 

 

 

荒野

 

 カルマノイズが消滅した場所にアダムスフィアが転がっていた。

 

奏「あれは」

 

響「アダムスフィア!サンジェルマン、さん……?どうしたんですか、怖い顔をして……」

 

サンジェルマン「カルマノイズとの戦いは終わった。はぐれ錬金術師も既にない。そして…私達はこれを回収する使命がある」

 

パルティータ「ええ、アダムスフィアはあなた達が持って行っていいわ」

 

サンジェルマン「お母さん…」

 

パルティータ「でも、あなたの母親として聞かせてほしいの。アダムスフィアは一体、何なのか、あなた達はどうしてそれが必要なのかを」

 

サンジェルマン「それは…」

 

???「終わったようだね、どうやら」

 

 母親に聞かれた事は素直に答えようとしたサンジェルマンであったが、響達には聞き覚えのある声がした。

 

星矢「この声…!」

 

奏「なんだ…空に浮いてる……」

 

サンジェルマン「局長、いつから?」

 

アダム「来たばかりだよ、これでもね。具体的には…そうだな。分離する直前辺りだよ。君があれからね」

 

カリオストロ「それってかなり前じゃないの!?」

 

プレラーティ「今まで何一つ手伝わずにおきながら、よくのうのうと出てこられたワケダ」

 

アダム「どうにも苦手でね、荒事は」

 

奏「お前は何者だ?」

 

アダム「ああ、まだだったね、自己紹介が」

 

 アダムは空から降りてきた。

 

アダム「初めまして、装者に聖闘士達、そして聞いている二課の諸君。我が名は」

 

パルティータ「統制局長、アダム・ヴァイスハウプト…」

 

切歌「やっぱり、お前もいたんデスね!」

 

調「うん、アダムスフィアって聞いた時にそうだと思った」

 

アダム「おや、ご存知のようだね。君達は」

 

奏「一体何者なんだ、こいつは」

 

調「私達の真の敵です」

 

奏「じゃあ、こいつが黒幕ってわけか!」

 

アダム「随分なご挨拶だね。初対面のはずだけどね、少なくともこの僕とは。まあ、平たく言えば上司というわけさ、彼女達のね」

 

奏「ならば全部、お前に聞いた方が早いって事だな」

 

アダム「まあまあ…。そんなに荒くしないでほしいね、レディなのだから」

 

奏「何だと!?」

 

 アダムはアダムスフィアを回収した。

 

アダム「ともあれ、ご苦労だったね、3人とも。これで終了だよ、回収任務も」

 

調「アダムスフィアが」

 

切歌「魔力で吸い寄せられたデス!」

 

アダム「はぐれ錬金術師達もほとんど処理できたし、残党は抑えている。既にね。まあ、残党からは聞きだせなかったが、米国政府辺りだろう。連中の裏にいたのは」

 

カリオストロ「権威失墜した米国が失地回復を狙って」

 

プレラーティ「奴等ならやりそうなワケダ」

 

サンジェルマン「おのれ、権勢欲の亡者どもめ……」

 

アダム「そんな次第なわけだよ。そして次の任務がある、君達には。帰るとしようか」

 

響「行かせません!」

 

奏「ああ、そのアダムスフィアを返してもらうまではな!」

 

アダム「僕の方だよ、返してもらったのは」

 

切歌「確かに名前からしたらあいつの物デスね……」

 

調「魔力の出所はあなただったのね」

 

アダム「ご名答。僕の魔力を封じた物だよ、これは。知りたかったんだろう?アダムスフィアの正体を。その答えだよ」

 

奏「どうしてそんなもんを作った?」

 

アダム「必要だったんだよ。僕から溢れ出る行き場のない魔力を貯めておくものが」

 

シャカ「君のいう事もわからなくもないがな」

 

切歌「そんな物騒な物を作るなデス!」

 

アダム「魔力をぶっ放せればいいんだけどね。定期的に。だけどないだろう、そんな機会はめったに。でも、役に立つ時もあるんだ。こうしておくとね」

 

奏「一体、何に使うんだ?」

 

アダム「見ているといい、その目で。その答えをね!」

 

 アダムがアダムスフィアを掲げると、黄金錬成のような光が出た。

 

調「この光は…黄金錬成!?」

 

切歌「風鳴機関を吹き飛ばした…!」

 

響「みんな、逃げ」

 

シャカ「逃げる必要はない!」

 

響「何を言ってるのですか、シャカさん!」

 

アダム「彼の言う通りだよ」

 

 なんと、アダムは被害の出た場所を全て元通りにしたのであった。

 

響「えっ……?」

 

星矢「戦いでぶっ壊れた周りの建物とかが……」

 

パルティータ「元通りになった…」

 

アダム「ふむ…残ってなかったか、この程度しか。使ってくれたようだね、随分と。カルマノイズと、君達が。ねえ、サンジェルマン?」

 

サンジェルマン「申し訳ありません……」

 

アダム「まあいいさ。見られたしね、興味深いものも。恐れ入ったよ、まさかファウストローブの上位形態とはね。まるで聖衣の変化みたいだ。研究してみよう、戻ってからね」

 

サンジェルマン「はっ…」

 

アダム「ま、内輪の話はとにかく…こういうわけだよ。君達装者や聖闘士は満足したかい、僕の回答に」

 

 シャカ以外の装者一同はアダムに困惑していた。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 二課でもアダムが起こした事に困惑していた。

 

朔也「周辺地域の建物が、修復された!?」

 

あおい「そんな、どうやって……」

 

朔也「……彼は、味方なのでしょうか?」

 

弦十郎「わからん…。だが、警戒は続けるんだ」

 

了子「(アダム・ヴァイスハウプト……。あの魔力の根源が、彼だというの?だとしたら、どれほどの力が……)」

 

 

 

響「(どういう事?この人は)」

 

シャカ「疑問に思っているようだな、立花響よ。君達の世界のアダムは救いようのない悪人であったようだが、この世界のアダムは善人だ」

 

切歌「シャカは何を寝ぼけた事を言ってるのデスか!?」

 

響「シャカさん、あの人は敵です!私達の世界では、この人はサンジェルマンさん達の理想を利用していた…自分の目的のために」

 

調「私達を油断させようとしているのかも知れない」

 

切歌「十分あり得る話デスよ」

 

シャカ「君達の世界のアダムの悪行で目の前にいるアダムを信用できないのも無理はないと思うが、落ち着きたまえ!」

 

響「どうしてなんですか?シャカさん!」

 

星矢「俺もまだアダムは怪しいと思っているが、シャカは二重人格とかでなければ、一目見ただけで善人か悪人かがわかるんだ」

 

奏「何だって!?」

 

パルティータ「(だから、アダムの雰囲気が違っていたのね)」

 

シャカ「私は正義のために戦う事はあっても、決して悪のためには戦わない。雰囲気的には胡散臭いだろうが、彼の根底にあるのは紛れもない正義だ!」

 

 シャカがどんな人間でも一目見ただけで善人か悪人かがわかると知っても、まだ響達は信用できなかった。

 

アダム「ああ、そうだった。忘れていたよ、言うのを」

 

響「何を!?」

 

アダム「礼さ。僕の部下達を助けてくれた事への。そして詫びも。アリシア・バーンスタイン一派の引き起こした事件についての、ね」

 

調「お礼と…」

 

切歌「詫びデスと!?」

 

アダム「これでも長だからね、錬金術師の協会の。本来なら、こちらでやるべきだった。事件の処理は」

 

奏「事件の……処理…?まさか、ブラックアウト事件の時、飛行機墜落の犠牲者がなかったのは!?」

 

アダム「ああ、そうだよ。できなかったからね。それくらいしか」

 

プレラーティ「だが、実行したのは我々というワケダ」

 

カリオストロ「局長はいつも口だけだものね。人使い荒すぎよ、ほんと」

 

星矢「人助けだって!?」

 

アダム「当然だよ。我らが追及する目的のためにはね」

 

調「あなた達の目的って……」

 

アダム「真理の追究と、それによって得られる人の幸福…。人類を影ながら保護、支援する事かな。平たく言えばね。支配に、権力に、決しておもねる事なく、無力な人々を導くのが我々の目的だよ」

 

響「それって…サンジェルマンさん達のと同じ…」

 

パルティータ「それだけじゃないわ、陰ながら人類の敵と戦うというのは聖闘士とも共通している…」

 

切歌「もしかして、いい組織って事デスか?」

 

響「で、でもアルカノイズは…!」

 

切歌「そ、そうデスよ!あんな物騒な物作っといていい組織なわけないデスよ!」

 

アダム「作ってないよ、我々はね。利用してもいないさ。協会から抜け出た者達の仕業だよ、あれは。頭が痛い事にね」

 

調「言われてみれば…」

 

切歌「アルカノイズをけしかけてきたのは、はぐれ錬金術師達だけデスね……」

 

アダム「とはいえ、元は協会の人間。責任はあるよ、我々にもね。だから取り締まってるのさ。協会から抜け出たはぐれ者、錬金術の力を利用して不貢を働く者達を。手が回らない時は応援も呼んでいたよ、聖域からね」

 

星矢「アダムが…聖闘士と協力関係にあるだと!?」

 

調「でも、口先だけなら何とでも言える」

 

アダム「やれやれ。よほどの悪人だったのかな?そちらの世界の僕は」

 

切歌「どういう意味デスか!?」

 

アダム「言葉のままだよ。来たんだろう、君達は。並行世界から」

 

響「ど、どういう事…?」

 

アダム「調べさせてもらっただけだよ。企業秘密だけどね、方法は。聖闘士の方はすぐにわかったよ。既に死んでいたり、昏睡状態にある聖闘士が普通にいたのだから。そして知っている者はいないよ、協会でも。君達自身と、僕以外にはね。初耳だっただろう、サンジェルマン達も」

 

サンジェルマン「ええ。先刻、お母さんや彼女から聞いたのが初めてです」

 

アダム「そうだろうとも。僕た1人で行ったからね。調査も確認も、全て」

 

サンジェルマン「そう…。だから、あなた達は最初から私達の事を知っていたのね」

 

カリオストロ「初対面なのに名前呼んだりするから、新手のストーカーとか思っちゃったわ」

 

プレラーティ「冗談はともかく、二課の諜報部に内偵されたと思ったワケダ」

 

響「あ、あの…」

 

サンジェルマン「何だ?」

 

響「私達の世界で、私達とサンジェルマンさん達は…」

 

サンジェルマン「何も言わなくていいわ」

 

響「えっ…」

 

サンジェルマン「並行世界の自分など知っても意味はない。私達は私達。支配に抗い、錬金術によって人を導くのが私達の矜持だから。でも、お母さんにまた会えたのは、とても嬉しかった…」

 

 母親と出会えた事がサンジェルマンの心を救った事にアダムも微笑んでいた。

 

響「本当に信じていいんですね、アダムさんの事も」

 

サンジェルマン「ええ。もし、あなたが私の事を信じてくれているなら、それと同じくらいにはね。彼は私達錬金術師協会のトップ、あまたの錬金術師を率いる統制局長。錬金術を用いて、歴史の影から弱者を救い続けている、この世界の番人なのだから……。そして、この世界のお母さんは生きていた頃は聖域とのパイプ役にして、局長の補佐を行っていたわ」

 

パルティータ「この世界の私が…アダムの補佐を…?」

 

響「…わかりました。あなた達の事を信じます」

 

アダム「何よりだよ、誤解が解けたようで。もっとも、シャカにはわかっていたようだけどね、初めから」

 

 この世界のアダムが善人である事をいち早く見抜いたシャカは口元に微笑みを浮かべた。

 

星矢「全く、正義の味方なら、さっさと言えってんだよ」

 

アダム「信じたかね、行動なき言を。受け容れられたかね、我々の存在を」

 

奏「そ、それは…」

 

響「アリシアさん達の事件の後だから、正直、難しかったと思います」

 

切歌「きっと、裏があると思ったデスからね…」

 

調「実際、今もそうだったし」

 

アダム「そうだろうとも。だが仕方ないよ。歴史の影に潜む者だから、錬金術師という存在は現れたりしないものさ、無暗には。語らないものさ、饒舌には。花というものだよ、秘してこその、ね」

 

星矢「そういや、聖闘士も歴史の表舞台には滅多に立たないしな」

 

サンジェルマン「花は花でも仇花の類いでしょうがね」

 

アダム「手厳しいね。だが、いつか必ず返させてもらうよ。この借りはね」

 

響「アダムさん…」

 

奏「別に貸した覚えはないけどな」

 

プレラーティ「最後まで可愛くないワケダ」

 

カリオストロ「ほんとにね…。でもま、嫌いじゃなかったわよ、その性格」

 

奏「な、何だって!?」

 

プレラーティ「だが、流石にその顔は見飽きたというワケダ。しばらく見なくていいくらいにはな」

 

奏「ったく…居候どもが好き放題言いやがって」

 

アダム「では、帰るとしようか。借りぐらしの宿から、愛しき我らが家へとね」

 

 アダム達は順次に帰っていった。

 

サンジェルマン「私も帰るとしよう」

 

響「さようなら、サンジェルマンさん」

 

サンジェルマン「ああ…。お前のような者と出会えた事は望外の僥倖だった」

 

響「私もです、サンジェルマンさん…。今度こそ、最後まで一緒に戦えてうれしかったです。戦い終えて、みんな無事で…」

 

サンジェルマン「(ああ、そうだったのか。だからこそ、お前とお母さんはああまでも必死に…。いや、今更問うまい)」

 

パルティータ「サンジェルマン、元気にするのよ」

 

サンジェルマン「お母さんこそ…。さらばだ、立花響。幾久しく、壮健であれ。そして叶うなら、いつかまた会おう。お母さんと…我が…異世界の友よ」

 

響「!はい!また会いましょう!いつかまた、きっと!」

 

 母親と響に別れを告げ、サンジェルマンも帰っていった。

 

シャカ「(錬金術師達という協力者ができたが、カルマノイズがまた出た上、杳馬の暗躍…。これは、何かが起こる前触れなのかも知れん…)」

 

 カルマノイズにアタバク、杳馬の存在をシャカは何かの前触れだと思っていた。

 

 

 

???

 

 そしてしばらく経った後、パルティータは再び奏の世界を訪れ、アダムの気配を辿ってテレポートしてきた。

 

アダム「パルティータか。よく突き止める事ができたね、ここを」

 

パルティータ「伊達に何千年も生きているわけじゃないのよ」

 

アダム「それもそうだね。それで何かね、用件は?」

 

パルティータ「サンジェルマン達へのお弁当よ。お昼になったら、届けてくれる?」

 

 パルティータはサンジェルマン達への弁当を見せた。

 

アダム「わざわざ作ってきてくれたのかい?サンジェルマン達のために」

 

パルティータ「母親としての責務だからね」

 

アダム「カリオストロとプレラーティが虚偽の報告をした事は叱っておいたよ、大切な同志を失わせたりしないためにね。それにしても、並行世界の同一人物とはいえ、君とまた対面できるとは思ってなかったよ。お陰でサンジェルマンのためにもなったしね」

 

パルティータ「アダム、この世界の私とあなたは親しかったのかしら?」

 

アダム「そうだよ。とても働き者で大切な友人だったよ、この世界の君はね」

 

パルティータ「そうなのね。それとアダム、この世界の私の娘同然のサンジェルマンの面倒を見てくれて、ありがとう…」

 

アダム「言われるほどの事じゃないさ、この世界の君との約束はね…」

 

 アダムの座っている机に壊れた黄金のラピスがあった。

 

パルティータ「これは…黄金のラピス…!」

 

アダム「これは形見だよ、死んでしまったこの世界の君のね。手元の置いてるのさ、彼女の事を忘れないために」

 

パルティータ「そうなの…。それじゃあ、私は帰るわね」

 

 帰ろうとしたが…。

 

アダム「待ちたまえ。君達に頼みがある」

 

パルティータ「何かしら?」

 

アダム「もしも、イザークの忘れ形見を見つけたら、僕に報告してくれないかい?」

 

 その言葉にパルティータはかつて自分が救った少年の頃のイザークを思い出していた。

 

パルティータ「わかったわ。イザークの忘れ形見、見つけたら必ず報告するからね」

 

 頼まれ事を聞いたパルティータは帰っていった。

 

アダム「(さて…どこに行ったのだろうね…イザーク、君の忘れ形見は…)」

 

 『亡き友の忘れ形見』がどこにいるのか気になっているアダムであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はカルマノイズを倒し終わるのと、アダムの出現を描きました。
杳馬達がいる事以外はだいたいXD本編と同じですが、最後はアダムとパルティータの会話、そしてキャロルの存在を示唆するのを描いています。
キャロルも結構後になれば出てきますので、今小説ではこの段階でキャロルに関する伏線を出しておきました。
これでアルケミックオーダー編は終わり、次は再びまどか達の世界がメインとなるマギアレコードのイベントクエストであり、歌と魔法の物語編で語られた風鳴と時女の関係も取り入れた深碧の巫編になります。まどか達の世界が舞台でもまどか達は出て来ず、装者サイドは和の要素が似合う翼と調が主役となります。また、シャアなどでおなじみの池田ボイスが似合うOTONAも出てくるので、お楽しみに。

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