156話 時女一族
見滝原
奏が生き残った世界でのサンジェルマン達も関わった騒動の後、翼はせっかくの休みは魔法少女がいる世界の八紘の様子を見に行く事にした。
翼「(この世界は私達の世界とは半年もズレがあるから、5月だったな。鹿目達と共に戦った世界…。ここのお父様は今、市長として見滝原の復興でもしているのだろうか……?)」
そういった事を考えながら、翼は市庁舎へ赴いた。
市庁舎
同じ頃、八紘は市長としての仕事をやりつつ、ある国会議員から情報を受け取っていた。
八紘「七井覇万議員、ボディガード兼調査員の夫や他の調査員を使っての特異災害である魔女や魔法少女の情報収集に感謝する」
覇万「私は国政に携わる者として、当然の事をしただけに過ぎん。近頃の男の議員は無能で国民を軽視している俗物ばかりだ。新入りの女の議員の大幅な増加がそれを証明している」
八紘「俗物、か…。どこかの米国大統領と同様の過激な発言とカリスマ性溢れる君が支持や他の女性に議員への立候補を呼び掛けたからこそ、女性議員が全体の10%程度から半数近くに増加したのだろう」
覇万「過激な事もやらなければ、支持など集まりはしない。私が所属している民自党でも無能な総裁への支持はなくなり、私の支持は集まりつつある。ゆくゆくは、女性初の総理にでもなるつもりだ。そして、女主導による男女平等という名の女の逆襲でもやってみせようではないか!」
無能な男性議員を蹴落とし、総理になる事も視野に入れて野心全開の覇万であった。政治の話が中断されるかのように翼が来た。
翼「おとう…いえ、市長、今はどうしているのかを見に来ました」
覇万「八紘、この娘は…?」
八紘「この世界とは別の世界の私の娘だ」
翼「お父様、このような事は」
覇万「大丈夫だ。私は八紘とは知り合いである上、並行世界などというのは他の俗物たる無能な議員共は信じたりはしない。だから、自然と私達だけの秘密となる」
翼「そうですか…。あの、あなたは議員なのでしょうか?」
覇万「いかにも。私は七井覇万だ。まあ、よろしく頼むぞ」
翼「こちらこそ…(しかし、とてつもないプレッシャーを感じる人だ…。出会い頭から威圧されてしまった……)」
覇万の威圧感に威圧されつつも、翼はお辞儀した。
八紘「話を戻すが、このデータは本当なのか?」
覇万「本当だ。私の夫、清十郎は現に様々な街へ赴き、魔女などの怪物を倒したりして魔法少女の現状を調査した結果だ」
翼「そのデータは何ですか?」
八紘「これは魔法少女の数のデータだ。覇万議員の夫の七井清十郎はボディガード兼調査員でな、魔女退治や魔法少女同士の争いの仲裁もしながら魔法少女の調査をしているんだ。彼の調査によると、魔法少女の数は治安が良ければ少なく、逆に悪いと多い傾向にある」
翼「では、見滝原の魔法少女の数は6人なので…」
八紘「相当治安が良い証拠なのだろう。逆に魔法少女の数が多く、治安が悪い傾向にあるのが神浜市と二木市だ」
覇万「それも当然だ。治安が悪ければ不安などが生まれ、それにキュゥべえが付け込んで簡単に契約できてしまうのだからな」
翼「見滝原には現さなくなったようだが、他の街ではいまだに魔女を増やしているとは……!」
覇万「だが、数か月前から神浜市ではキュゥべえが出没しなくなったそうだ」
八紘「神浜でもか?」
覇万「そうだ。厳密に言えば、小さいキュゥべえが現れるようになって、普通のキュゥべえは姿を見せなくなったのだがな」
翼「小さい…キュゥべえ……?」
覇万「聞き込みや目撃情報によると、言葉は話さないし、契約なんてしようともしないから、無害ではある」
翼「七井議員は神浜市へ夫を赴かせるのですか?」
覇万「いや、清十郎には私と共にやらねばならん事がある。ちょうどいいから、お前もそれに付き合うか?」
八紘「覇万、翼を風鳴と時女の問題に巻き込むな!」
覇万「今の時女に巣食う悪を倒さねば、次代を担う若者が奴に潰されるのだぞ!」
翼「(お父様、あなたはどの世界でも、私を風鳴のしきたりから…)」
例え自分が生まれていない世界でも自分を風鳴のしきたりから遠ざけたい八紘は健在なのだと、翼は思った。それと同時に、時女が引っかかった。
翼「お父様、時女とは何なのですか?それがわからなければ、どうすればいいのか判断しかねます」
八紘「それもそうだな。時女一族についても教えなければならん。時女一族とは、日本の暗部を担う一族で、かつての風鳴一族と肩を並べるほどの発言力を持っている一族だ」
翼「かつて?どういう事なんですか?」
覇万「風鳴と時女は日本の暗部を担う者同士で対立していたのだ。とはいっても、厳密に言えば風鳴一族の長の風鳴訃堂と時女一族内で強い発言力を持つ神官の神子柴家が対立していたのだがな」
八紘「訃堂と神子柴は互いに邪魔者を排除し、日本政府を牛耳ろうと対立していたのだが、弦が高校生の頃に訃堂は病に倒れ、そのまま亡くなった」
翼「この世界のお爺様は、既に亡くなられた…?」
八紘「訃堂の死で風鳴の発言力は急速に衰え、代わりに時女一族…というよりは神子柴の発言力が増していったのだ。私や弦が市長や教師といった、自由な生き方をしているのも皮肉な事に風鳴が衰えてしまった結果だ」
翼「そうだったのですか…」
覇万「お陰で神子柴はやりたい放題になっている。翼よ、風鳴と時女の問題に首を突っ込むか、親の言う通りにこの問題に関わらないのかはお前次第だ。すぐに答えを出せとは言わん。元の世界へ帰って事情を説明し、気持ちを整理してから決めろ」
翼「わかりました。では、今日は元の世界に戻ります」
翼は元の世界へ帰った。
八紘「答えを急かさないとはな」
覇万「この問題は翼自身が首を突っ込むかどうかを決めなければならん。本人の選択次第ではあるが、八紘の巻き込ませたくない意向も取り入れはしたつもりだ」
八紘「そうか…」
そこへ、和服姿で重りと身体の筋肉を反るためのバネがついたマントを羽織っている恵まれた体格と凄い筋肉、そして高い身長の男が入ってきた。
八紘「清十郎か」
清十郎「八紘、翼とかいう奴が並行世界のお前の娘か」
八紘「ああ、そうだ」
清十郎「並行世界の存在であるとはいえ、風鳴の血を引いているとだけあって俺程ではないが、それなりに鍛えてはいるようだな」
覇万「本人の希望次第だが、清十郎と共に時女一族の集落へ同行させようと思う」
清十郎「シンフォギア装者の活躍は弦や了子、八紘から聞いている。だが、俺としては自分でシンフォギア装者達の実力を見定めなければ同行させるわけにはいかない」
覇万「相変わらず子供相手だと心配性だな、清十郎」
八紘「お前は当初は復讐しか頭になかったのだが、例え相手が人殺しに慣れている魔法少女であっても子供は殺さないなどのモットーを掲げるようになったな」
清十郎「そもそも、新しい時代は老人ではなく、未来ある子供達だ。俺達大人は子供達を導き、護らねばならん。この形見の刀に誓ってな…」
清十郎は自分が持っている太刀に目を向けた。
S.O.N.G潜水艦
翼は元の世界へ帰り、まどか達の世界の風鳴と時女の事を伝えた。
弦十郎「なるほど、向こうの風鳴は発言力を失い、代わりに時女…というよりは神子柴の発言力が強まったという事か…」
翼「はい。覇万議員もこの事を元の世界の司令達に伝え、どうするかは私が決めろと言っていました」
沙織「その議員が仰る通り、翼さん自身が決める事です」
弦十郎「一応、念のためというのもある。お前1人を行かせるわけにはいかない。風鳴と時女の問題に首を突っ込むのなら、他に装者を1人連れて行った方がいい」
話をしていると、調が来た。
調「どうしたのですか?」
弦十郎「ちょうどいい所に来たな、調君。明日、翼と共に魔法少女のいる世界へ向かってくれないか?」
翼「月読の予定も尊重したいのだが…」
調「予定は空いているので、大丈夫です」
沙織「わかりました」
翼「私達が1週間以上帰ってこない場合は星矢達を送っても構いません」
弦十郎「わかった。では、今日はゆっくり休んで、次の日に向けて英気を養うんだ」
その後、訓練後の響達と会話した。
マリア「魔法少女の世界での日本政府の暗部にも関わる事件に首を突っ込むのかは自分で決めろって言われたのね。どうするの?」
翼「……私は向こうの世界では風鳴にとってかわった一族である時女を知りたい。だから、月読と共に行く。一応、1週間程度経っても帰ってこない場合は星矢と紫龍を送ってほしいとも頼んでおいた」
マリア「わかったわ。この事は星矢と紫龍にも伝えておくからね」
色々と知りたい事もあり、翼は当初から覇万の提案に乗るつもりであった。
切歌「調は翼さんと並んで和服が似合うから、ちょうどいいと思うのデス!」
クリス「和服と今回の頼まれ事は関係ねえだろ!」
響「でも、切歌ちゃんの言ってる事は本当だよ。調ちゃんは和服だと、まさに大和撫子って感じだし!」
未来「家事も得意だから、掃除とかが苦手な翼さんのアシストにももってこいだよ!」
調「そうかな…」
マリア「ともかく翼、調の事を頼むわ」
翼「わかってる。月読、次の日は鹿目達の世界に向かうぞ!」
調「はい!」
気合満々の翼と調であった。
見滝原 郊外
翌日の早朝、翼と調は魔法少女の世界に来た。すると、了子の家に清十郎が待っていた。
調「あなたは…」
清十郎「お前達が俺と共に時女の集落に同行するシンフォギア装者か。俺は七井清十郎、一応ボディガード兼主夫っていったところだ」
翼「七井議員の夫であるあなたが何の用で待っていたのですか?」
清十郎「勿論、お前達の実力がどれほどのものか見極めるためさ。2人共、今からシンフォギアとやらを纏って俺と戦え。本気でこい!」
調「で、でも生身の人相手だと…」
清十郎「俺をそんじょそこらの奴と一緒にしないでもらおう。何しろ、俺は剣術の超天才で若き日の護国ジジイよりも強いのだからな。手を抜いたら…俺が殺す気じゃなくても死ぬぞ」
殺気を放った清十郎の言葉に、翼と調は気を引き締めた。
翼「月読、あの人の言う通り、手を抜いたらこちらが死ぬぞ!私達も全力で立ち向かおう!」
調「確かに、あの人は普通じゃない…。行きましょう!」
翼「Imyuteus amenohabakiri tron」
調「Various shul shagana tron」
2人はシンフォギアを纏い、久方ぶりの魔法少女ギアの姿となった。
清十郎「なるほど、これがシンフォギアか…。まさか、コスプレの機能もあったとは」
翼「お言葉ですが七井さん、これはコスプレではなく、心象変化というれっきとした機能なのです」
清十郎「コスプレではなく、れっきとした機能か…。まあいい、それでは見せてもらおうか、シンフォギアの性能と、シンフォギア装者の実力とやらを!」
清十郎は刀を抜き、構えた。先に動いたのは調であった。
調「まずは面で制圧する!」
先手で調はα式・百輪廻を放ったが、清十郎はその場から動かず、刀を高速で360°回転させる事で小型鋸を全て弾いた。
調「攻撃を全て弾いた!?」
清十郎「その程度の技、避けるまでもない」
翼「月読、攻撃の密度を上げるぞ!」
調「はい!」
α式・百輪廻に加え、翼も千ノ落涙を放ってさらに攻撃の密度を上げたが、清十郎は再び刀を高速回転させる事で弾ききった。
翼「攻撃はまだ終わっていないぞ!」
続いて、翼は蒼ノ一閃を放ったが…。
清十郎「紅ノ一閃!」
対する清十郎は蒼ノ一閃の色違いにしか見えない技、紅ノ一閃を放った。紅ノ一閃は蒼ノ一閃を簡単に打ち破り、翼を吹っ飛ばした。
翼「うわっ!」
調「翼さん!」
清十郎「さっきの攻撃は今の俺の紅ノ一閃の3分の1程度の威力ってとこだな」
清十郎が蒼ノ一閃の威力がどれほどのものか、紅ノ一閃と比較してみた後、翼は立ち上がった。
翼「まだ勝負は終わりではない…。私の中の跳ね馬が躍り高ぶる!」
次に翼は天ノ逆鱗を放ち、調も裏γ式・滅多卍切を放ったが、清十郎は刀で簡単に受け止め、瞬時に回り込んで峰で当てて吹っ飛ばした。
翼「うぐっ!七井さんの動きが速すぎて、身体の動きや思考が追いつかない…!」
調「翼さんとの同時攻撃で!」
攻撃を弾かれても翼と調は同時に攻撃を放とうとしたが…。
清十郎「俺がこれまで戦った魔法少女よりもやるじゃねえか。褒美に俺の得意技を見せてやろう。九頭蛇閃!」
九つの斬撃を放つ、防御も回避も不可能な攻撃に翼と調は吹っ飛ばされた。
翼「うわあああっ!」
調「ぐうっ!」
2人は華麗に車田飛びした後、盛大に車田落ちした。
翼「七井議員の夫の実力がこれほどのものとは……!」
調「司令より強いかも知れない…」
清十郎「当たり前だろ?俺は弦や護国ジジイよりも強いのさ。まさに、正真正銘の天才とでも呼ぶべきではないか?」
調「(この人、ドクター以上のナルシストみたい…)」
翼「(口先だけでなく、きちんとその天才ともいうべき実力も伴っているのが、ますますとんでもないな……)」
清十郎「俺には全然及ばないが、お前達の実力は俺の予想以上だ。これなら、十分魔女にも通じる」
翼「そうですか…」
調「とすれば、私達は時女一族の集落へ向かっていいんですね?」
清十郎「ああ。朝飯を食べてないのなら、今から食べるか?」
翼「朝食?」
ちょうど早朝だったため、清十郎はエプロンを着て、バーベキュー形式で翼達に朝食を振る舞った。
清十郎「お前は調って言ってたな。朝食の準備を手伝ってくれて感謝するぞ」
調「私、こういうのは得意です。そういう清十郎さんが家事もできるなんて、驚きです」
清十郎「妻の覇万は家事ができないから、必然的に俺がやる事になってるのさ。世の中、家事ができる男や、家事ができない女がいたって不思議じゃないだろ?」
調「そうですね」
清十郎「翼は、家事はできないのか?」
図星を突かれた翼は逸らそうと気まずそうな表情を浮かべるだけで、何も言えなかった。
清十郎「できないか…。ま、できなくてもいいじゃねえか」
???「俺達も混ぜてくれよ」
声と共に弦十郎と了子が来た。
清十郎「弦に了子じゃねえか」
了子「水臭いわねえ、私達も朝バーベキューに混ぜなさいよ」
結局、弦十郎と了子も朝バーベキューに参加した。
弦十郎「翼と調君は時女の集落に行くのか…」
翼「はい。どうするのかは七井議員に自分で決めろと言われ、自分の本心に従い、自分で決めました」
弦十郎「翼、調君、今回は日本政府の暗部も絡む事だ。気を引き締めて行け!俺達も状況次第では向かうぞ」
調「ありがとうございます」
了子「清十郎君、奥さんはどうしたのかしらぁ?」
清十郎「覇万は国会議員としての仕事さ。今日は大波乱になるぞ」
翼「どうしてですか?」
了子「防衛省職員による犯罪を警察庁が隠蔽しててね、それで大波乱の国会になっちゃってるの」
調「それ、許せません…!」
了子「そこは国会議員の覇万にお任せしましょう。ちょうどお迎えも来たみたいよ」
時女の集落に向かうための送迎車が到着した。
清十郎「さあ、時女の集落に向かうぞ!」
翼達は送迎車に乗り、時女の集落に向かった。
了子「そう言えば弦、弦の親父さんは病死したけど、不自然だったってお医者さんは言ってたわよね?」
弦十郎「ああ。たったの1日で全身ガンになって死ぬなんて、あまりにも不自然だと言ってた」
了子「もしかすると、弦の親父さんの死って、何者かが魔法少女の願い事を使って起こしたものじゃないかしら?」
弦十郎「かも知れんな。瀕死の重傷を負った仁美君が助かるぐらいだから、逆に健康な人を全身ガンで死なせるというのも可能なはずだ」
車内
翼達は車の中で景色を眺めていた。
清十郎「お前達は以前も見滝原に来て、魔女と戦ったそうだな」
翼「はい。魔女の正体も、魔法少女の秘密も全て知っています」
清十郎「なら、説明する手間も省けた」
調「魔女退治とかがない時はどうしてるんですか?」
清十郎「どうしてるも何も、普通に主夫とか、道場の師範とかをしているぞ。後、覇万の妹のららあと共に俺の子供の世話もしてて、授業参観にも行ってたぞ」
翼「(あんな風貌で主夫というのも、意外なものだ……)」
体格がいい上にマッチョな体をしている清十郎がエプロンを着て料理などをしている姿は翼にとって衝撃的であった。
調「清十郎さんは見滝原以外の魔法少女とも会った事があるんですか?」
清十郎「仕事柄、たくさんあったぞ。俺が褒めたくなるぐらいいい奴も、どうしようもねえほど悪い奴もいたしな。俺がこれまで行った街の中で一番開いた口が塞がらない程の衝撃を受けたのが二木市だ」
翼「どうしてその街が?」
清十郎「あそこはとんでもねえとこだったのさ…」
回想
清十郎は二木市に来た時の事を思い出していた。
清十郎『そう、ありゃ漫画に出てくるような世紀末みたいな場所だった……』
調査で訪れた清十郎であったが、二木市は魔法少女同士の争いが絶えない場所であった。
清十郎「やれやれ、治安が悪いとは聞いていたが、これ程のものだったとはな…」
呆れながらも、清十郎は魔法少女同士の争いを見てられないために介入する事にした。
魔法少女A「おい、あたしらの争いに普通の人間が介入するなんざ、いい度胸じゃねえか!」
清十郎「無駄な殺し合いをして何になるんだ?まだ若いお前らの人生はこれからなんだぞ。そんな人生をつまらん殺し合いに費やすぐらいなら、もっとマシな人生の歩み方でもしておけ」
魔法少女B「何だと!?何の力もない大人の分際で生意気
な口の利き方をしやがって!ぶっ殺してやる!!」
清十郎の言葉に激怒した魔法少女達は一斉に襲い掛かった。
清十郎「お前らはとんでもない勘違いをしているようだな。俺は…そんじょそこらの大人よりも遥かに強いんだぜ!」
刀を抜いた清十郎は目にも止まらぬ速さで魔法少女達を通り過ぎていった。清十郎が刀を鞘にしまうと、通り過ぎた魔法少女達の武器は跡形もなく破壊され、本人達も斬られて盛大に血を流した。
魔法少女A「うわあああっ!」
魔法少女B「な、何が起こったんだ……?」
清十郎「これでわかっただろう?お前らみたいな子供が俺のような大人に勝てるわけがねえって事がな。俺は子供を殺さないがモットーなんで急所は外しておいた。これからは殺し合いなんかやめて、折り合いをつけて魔女退治をしつつ、普通に暮らせよ」
魔法少女を誰一人殺さず、清十郎は忠告してから去っていった。
清十郎の話に翼は杏子とさやかの戦いを見て、魔法少女同士の争いがある事はわかったが、それが当たり前になっている二木市の状況には衝撃を受けていた。
翼「こんなにも恐ろしい街があったとは…」
調「そんな魔法少女達を歯牙にもかけずに無力化した清十郎さんは凄い…!」
清十郎「そうだろう?天才の俺だからこそできる芸当だ。それと、時女の集落では魔法少女の事は話してもいいが、呼び方が違うのを覚えといてくれ」
調「呼び方が違う?どういう事ですか?」
清十郎「まず、魔法少女は巫、魔女は悪鬼、使い魔は悪鬼の子分、ソウルジェムは宝石、グリーフシードは悪鬼の魂魄、キュゥべえは久兵衛様…って呼ぶのさ。というか、昔の日本の他の地域でもこういった呼び方だったらしい」
調「そうなんですか…」
翼「それにしても、七井さんは時女一族に随分と詳しいですね。呼び方が違うのを熟知しているので」
清十郎「ま、あそこは俺もガキの頃はよく出入りしていた場所で、庭みたいなとこだしな。呼び方も時女の集落での呼び方の方が慣れている」
調「庭…?」
清十郎「言っておくが、あっちは山奥の村だからスマホは圏外になってて通じねえし、テレビもパソコンもねえからな」
翼「わかりました」
調「楽しみ…」
翼達を乗せた車は時女一族の集落へ進み続けていた。
森林
一同は時女の集落がある山の近くにある七井家の自宅に車を置いた後、森を進んでいった。
調「清十郎さん、凄い…!」
翼「私達と違ってこんな山道を苦も無く進んでいくとは……」
清十郎「なぁに、慣れてくりゃ、お前達だってこの山道が快適な道に感じてくるぞ」
翼「(七井さんは本当に人間なのか…?)」
調「(それも、司令や翼さんのお爺さんより強いなんて……)」
何事もなく山道を進む清十郎を見て、翼と調は清十郎が人間なのか疑わしく思った。ふと、清十郎の刀が震え出した。
調「清十郎さん、刀が…」
清十郎「……どうやら、悪鬼が近いようだな…!」
翼「その刀、魔女が近いのを知らせてくれるのですか?」
清十郎「まあな。この刀は形見にして、特別な刀だ。さぁ、行くぞ!」
悪鬼の結界へ清十郎達は入っていった。
魔女の結界
早速、悪鬼の手下が出てきたが、魔女との戦いも経験している翼と調、そして桁違いの強さの清十郎の敵ではなく、あっけなく蹴散らされ、3人はさっさと最深部に来た。
翼「お前のような魔女は」
清十郎「翼、この辺では魔女の事は悪鬼と呼べ」
翼「そ、そうだった…。悪鬼よ、お前は私達が成敗してくれようぞ!」
そう言って翼は調と共に悪鬼を倒したのであった。
森林
悪鬼が倒されたのと同時に、結界も崩れ、悪鬼の魂魄が残った。
調「悪鬼の魂魄、回収しました」
清十郎「よし、集落へ向かうと」
???「あれ?悪鬼の気配が消えちゃった…」
悪鬼を倒し終わった際、和装の少女と占い師みたいな少女が困惑した様子で来た。
翼「私達が倒したのだが…不満だったか?」
少女A「いえ、不満はありません」
少女B「もしかして、あなた達が悪鬼を…?」
翼「その通りだ。詳しい説明は集落に向かう最中にする。悪鬼の魂魄を受け取れ」
翼は悪鬼の魂魄を少女に渡した。
少女A「ありがとうございます」
清十郎「俺達は悪鬼退治の手伝いに来た、通りすがりの用心棒さ。事前調査で巫については既に知ってるし、腕はかなり立つぞ」
静香「用心棒…ですか…。自己紹介がまだでした。私は時女一族本家出身、時女静香といいます」
すなお「私は分家である土岐家の土岐すなおと申します」
翼「私は風鳴翼だ」
調「月読調と言います」
清十郎「俺は七井清十郎だ」
静香「あの…翼さんは風鳴の生まれなんですか?」
翼「よ、養子ではあるが、一応な…」
静香たちに翼は自分が風鳴の養子と言ったのは、元の世界では八紘とは本当は血が繋がっていないのを逆手に取り、素性を隠すため、翼なりに考えた嘘であった。
静香「例え養子でも、あなたは時女と同じく、日ノ本を護るために戦う立派な風鳴一族の一員です」
調「2人は風鳴を知ってるの?」
すなお「ええ、知っていますよ」
静香「当然!風鳴は時女と共に日ノ本を護ってきた一族として、母様から聞かされてきたわ」
清十郎「そうか。だったらちょうどいい、俺達を集落まで案内してくれないか?」
静香「喜んで案内します!」
清十郎達を案内する静香であった。案内している際、すなおが清十郎達に視線を向けているのを3人は見過ごさなかった。
これで今回の話は終わりです。
今回は清十郎が弦十郎や訃堂を凌駕する圧倒的な強さを見せつけたのと、翼と調が時女の集落に向かうのを描きました。
七井清十郎はガンダムのシャアとるろうに剣心の比古清十郎、ワンピースのシャンクスを足して3で割ったようなOTONAとして描いており、シャンクスの親しみやすさと比古清十郎の圧倒的強さとナルシストぶりが同居した形となっていて、シャアの名言も可能な限りアレンジして使っています。清十郎の妻の元ネタは言うまでもなくガンダムのハマーンとナナイで、美樹さやかはデビルマンの美樹とマジンガーのさやかが名前の元ネタになっているため、ハマーンとナナイの名前をくっつけて、七井覇万としました。
清十郎が持っている刀にはある秘密があります。
次の話は一行が時女の集落に到着するのと、ちゃること広江ちはるが登場します。