セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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157話 謎の般若武者

森林

 

 一同は時女の集落を目指していた。

 

すなお「さっきの姿と悪鬼を倒したという事は…翼さんと調は巫なのでしょうか?」

 

翼「いや、私達は巫ではない。ある科学者に巫の力を再現した装備を開発してもらい、その装備の力で悪鬼と戦っている」

 

静香「ええっ!?そんなのアリ!?」

 

調「何を驚いているの?」

 

すなお「すみません。静香は集落を出た事がないので、世間知らずなんです。おまけに、箱入り娘でもあるので…」

 

翼「驚いた…、静香は世間知らずで箱入り娘だったのか…」

 

 静香が世間知らずで箱入り娘である事は翼と調も衝撃的だった。

 

静香「清十郎さんは、悪鬼と戦えるんですか?男の人は巫になれないし、翼さんと調のような装備もないから…」

 

清十郎「ああ、俺も戦えるぞ。といっても、もう悪鬼なんて俺からしたら雑魚でしかないけどな」

 

 悪鬼なんて雑魚でしかないとはっきり言った清十郎に静香とすなおは衝撃を受けた。

 

静香「あ、あなたってそんなに強い人なんですか!?」

 

すなお「刀1本で…ですか…?」

 

清十郎「ああ、そうさ。俺の剣の腕は世界一だ。そんな男が来たんだぞ。集落に着いたら、お前達を鍛えてやろう!」

 

 とんでもない事を平然と言う清十郎に静香とすなおは衝撃を受けまくっていた。

 

翼「時女、土岐、聞きたい事があるのだが…近頃、何か変わった事はあるか?」

 

調「小さい事でもいいから、何かない?」

 

静香「変わった事……、あるわよ!」

 

翼「それは何だ?」

 

すなお「この辺りに最近、般若の面を被った武者が現れるんです」

 

翼「般若の…武者?」

 

すなお「はい、その般若武者は度々私達の前に現れて襲ってくるんです」

 

静香「しかも、手下はおろか、悪鬼よりも圧倒的に強くて、私達では全く歯が立たないの」

 

清十郎「とんでもねえ野郎だな…!」

 

すなお「でも、私達が悪鬼に苦戦していると助けに来てくれたり、悪鬼の魂魄を渡す事もあったりと、敵か味方かよくわからないんです」

 

静香「信じられない事に、般若武者は時女の集落に伝わる剣術、時女一心流の動きをしていたの」

 

翼「時女の集落にしか伝わらないはずの剣術を使う者、か……」

 

静香「母様に般若武者ほどの実力の時女一心流の使い手がいるかどうか聞いてみたのだけど、そのような強さの人は今まで存在した事はないって言われたの」

 

調「ますます謎が深まる…」

 

 まだ翼達は見ていないものの、神出鬼没の般若武者と般若武者が使う時女一心流という、大きな謎が気にかかる翼達であった。

 

 

 

時女の集落

 

 話をしているうちに時女の集落に到着した。

 

翼「ここが時女の集落か…!」

 

清十郎「いやぁ、ここは空気がおいしいし、懐かしい匂いがプンプンするぜ!」

 

静香「な、懐かしい…?」

 

清十郎「俺はお前達ぐらいの頃はよくここに来ててな、色々楽しんでたのさ!」

 

 それを語る清十郎はまるで少年の頃に戻ったかのような表情であった。すると、集落の人間達がやってきた。

 

静香「母様、ただいま戻りました!」

 

静香の母「お帰り。悪鬼は倒してきたの?」

 

すなお「それが、この方達が倒したそうで…」

 

 静香の母達は清十郎らへ視線を向けた。

 

静香の母「(あれ?あの人、どこかで……)」

 

調「どうかしましたか?」

 

静香の母「な、何でもないわ(そうよね、ただの見間違いよね…。彼は優男でひょろっとした体格だから、あんな筋骨隆々な感じなわけがないしね……)」

 

 清十郎の事が気になる静香の母であった。

 

男「それにしても、巫でもないのに悪鬼を倒せる人間がいたなんて、とても驚いたぞ」

 

清十郎「そうだろそうだろ?何しろ、俺は剣術の超天才だし、この2人は巫の力を再現した装備を持ってるんだからな!」

 

男「は、はぁ…」

 

翼「ともあれ、当面の間はお世話になりますので、よろしくお願いします」

 

静香の母「こちらこそね」

 

清十郎「早速だが静香、すなお、俺と訓練でもしてみないか?」

 

静香「あ、あなたと?」

 

清十郎「超天才の俺と訓練をしてみたら、今まで以上に学べるものがたくさんあるかも知れんぞ」

 

すなお「と、とりあえず……」

 

 清十郎と訓練をする事にした静香とすなおであったが、訓練でも清十郎の実力は驚異的であり、静香の母親からしごいてもらった静香とすなおの2人も音を上げるほどであった。

 

すなお「つ、強すぎる…!」

 

静香「母様より遥かに強い人がいたなんて…!」

 

清十郎「あっははははっ!世の中は広いぞ!静香のおふくろよりも強い奴はゴロゴロいるのだからな」

 

 すなおと静香はバテていても、清十郎は大笑いするほど楽しそうにしていた。

 

静香の母「(やっぱりあの動きは、時女一心流…!でも、どうやって時女一心流を…?)」

 

 ふと、静香の母親は自分以上の時女一心流の使い手がいた事を思い出していた。

 

静香の母「(そういえば、私が静香ぐらいの時には私以上の時女一心流の使い手がいたわね。それも、分家も含めて時女一族始まって以来の超天才と謳われた男の子が。でも、彼は家族共々事故で死んだそうだけど…まさかね)」

 

調「何か考え事ですか?」

 

静香の母「そ、そうね…」

 

翼「時女のお母様、次は私が時女と手合わせしてよろしいでしょうか?」

 

静香の母「そうね。実力がそこまで変わらないぐらいのあなたとやってみても、勉強になると思うわ」

 

翼「わかりました」

 

 次は翼と静香が手合わせする事になり、予想通りに実力伯仲のものとなった。

 

静香「ありがとうございます、翼さん!」

 

翼「私の方こそ、時女一族の剣の腕前がどれほどのものか確かめてみたかったんだ」

 

静香「それと思ったんですけど、久兵衛様に魂を捧げていなくても、あなた達は日ノ本を護る巫です」

 

翼「そういうお前達こそ、日ノ本を護る立派な防人だ。風鳴と時女、日ノ本と人々を護る存在として、互いに頑張ろうではないか!」

 

 意気投合した翼と静香であった。そして、そんな中で老婆が来た。

 

すなお「神子柴様!」

 

 神子柴という老婆が来た際、清十郎は表情を変え、警戒している様子になった。

 

神子柴「お前さん達、客人が来たのか?」

 

静香の母「はい、この人達は悪鬼退治を手伝ってくれる流浪の用心棒だとおっしゃってます」

 

翼「あの、この方は?」

 

男「この集落の神官様で、一番偉いお方だよ」

 

調「神子柴様、私は月読調と言います」

 

翼「風鳴翼です」

 

清十郎「七井清十郎だ」

 

神子柴「風鳴…」

 

 神子柴は3人を凝視した後、翼の苗字が風鳴だという事に反応した。

 

神子柴「翼という小娘よ、お前は風鳴一族の者か?」

 

翼「風鳴の養子ではありますが、どうかなさったのですか?」

 

神子柴「あ、いや、ただ聞いてみたかっただけじゃよ。泊まる所はワシらが手配するから、ついてきなされ」

 

調「はい」

 

 

 

宿泊所

 

 清十郎達は宿泊所へ案内された。

 

神子柴「お前さん達はここで休まれなされ」

 

翼「では、そうさせていただきます」

 

神子柴「それでは、ごゆっくりな」

 

 そう言って神子柴は出ていった。神子柴に強く警戒している清十郎の姿に翼と調は気付いた。

 

 

 

神子柴の家

 

 一方、すなおは神子柴に呼び出されていた。

 

すなお「何の用でしょうか、神子柴様」

 

神子柴「すなおよ、お前に頼みがある?」

 

すなお「頼み…ですか?」

 

 その頼みとは、すなおにとって衝撃的だった。

 

すなお「そ、そんな…!」

 

神子柴「よいな?」

 

すなお「は、はい……」

 

 有無を言わせない神子柴の態度にすなおは従うしかなく、部屋を出た。

 

神子柴「(あの清十郎という男、どこかで見た覚えがあるのう…。どこかで……)」

 

 清十郎を見た際、神子柴はどこか引っかかっていた。

 

 

 

時女の集落

 

 夕方になった際、翼達はいざという時に備えて集落を詳しく知るために見回っていた。

 

翼「清十郎さんが言う通り、時女の集落は空気がおいしいな」

 

調「豊かな自然に囲まれてますし、清十郎さんが絶賛するのもわかります」

 

清十郎「だろう?こんな秘境なんて、そうそうみられるもんじゃねえしさ!」

 

 自然いっぱいの時女の集落に感心していると、大人達に案内されている中学生ぐらいの少女を発見した。

 

翼「ちょっと君、この集落の人間か?」

 

少女「違うよ。私、お母さんと一緒に呼び出されて…」

 

ちはるの母「ちはる、置いて行くわよ」

 

ちはる「ちょっと待ってよ~!」

 

 母親に呼び出され、ちはるは慌てて追いかけた。

 

翼「何だったんだ…?」

 

調「清十郎さん、ちょっと追いかけてみます」

 

清十郎「ああ。だが、神子柴に気を付けろ」

 

翼「(神子柴に?そう言えば、そうだったな…)」

 

 清十郎からの忠告を聞いた翼と調はちはるの後を追ってみる事にした。

 

調「翼さん、ちはるがさっき、等々力耕一って言ってましたけど…」

 

翼「何かの探偵番組なのだろう。このまま聞いてみよう」

 

 ちはる達が建物に入ったため、翼と調は話を聞いてみる事にした。

 

翼「あの子の苗字は広江というのか」

 

調「どうやら、あの子も時女の分家みたいですね」

 

翼「日ノ本のために魂を献げろ、か……。あの神子柴という老婆、何か裏があるようなそぶりだ。七井さんの言った通りに気を付けないといけないのかも知れん」

 

調「そうですね。巫が魔法少女なら、キュゥべえがいる可能性は高いですし」

 

翼「神子柴とキュゥべえのどっちか、あるいは両方とも黒幕なのだろうが、どちらかが尻尾を出すまでは迂闊な行動はできないか…」

 

 盗み聞きした後、翼と調は宿となっている家へ戻る事にした。翼と調が盗み聞きしていた事は神子柴も気付いていた。

 

 

 

宿泊所

 

 その晩、翼と調が寝ているところへ、巫の姿に変身したすなおが入ってきた。

 

すなお「……清十郎さんが、いない…?」

 

 翼達と同じ部屋で寝ているはずの清十郎がいない事を疑問に思いつつ、震えている手で水晶を寝ていて無防備な翼と調に向けた。ところが、凄まじい殺気を感じて振り向くと、そこには集落の周辺に出没している般若武者がいた。

 

すなお「般若、武者…!」

 

 殺気によって、翼と調も起きた。

 

翼「土岐、こいつがお前達の言っていた般若武者か!?」

 

すなお「そうです!」

 

調「凄い殺気…!まだ戦闘に入ってないのに、とても強いのがわかる……!」

 

翼「(それにこの殺気、どこかで感じた事のある殺気だ…)」

 

 3人は般若武者と共に外に出た後、般若武者がどう出るのかを警戒した。そんな3人のところへ静香が来た。

 

静香「出たわね、般若武者!今回は助っ人の防人2人もいるから、今日こそは倒してみせるわ!」

 

 意気込む4人に対し、般若武者は刀を持ち換え、峰を4人に向けた。

 

静香「私達だと刃を向けて戦うに値しないというのね!」

 

翼「余程の自信があるようだが、甘く見ていると痛い目に遭うぞ!」

 

 静香と翼が先陣を切って斬りかかったが、2人の攻撃を般若武者は難なく刀で受け止めた。

 

静香「2人がかりでも全然押せない…!」

 

翼「何というパワーだ……!」

 

 静香と翼が般若武者と鍔迫り合いをしている間にすなおと調は攻撃を仕掛けてきた。

 

すなお「2人に気をとられている今なら!」

 

調「私達の攻撃で!」

 

 しかし、般若武者は静香と翼を弾いた後、跳び上がって回避した。

 

般若武者「でりゃああああっ!!」

 

 落下の勢いをつけて般若武者は刀を振り下ろした。その速さはあまりにも速く、慌てて一同は回避したが、刀が地面に振り下ろされ、大きな穴ができあがるほどの威力は翼達を驚愕させた。そして、即座に般若武者は九つの避ける事も、防ぐ事もできない斬撃で4人を吹っ飛ばした。

 

翼「うぐっ!」

 

静香「パワーもスピードも桁違い…!どうすれば般若武者を…?」

 

 しかし、般若武者は去っていった。

 

調「どこかへ行っちゃった…」

 

翼「あのまま戦い続けていたら、勝ち目はなかっただろう…(さっきの攻撃、もしや九頭蛇閃か?時女一心流のような動きといい、見覚えがある…。一体、奴は…)」

 

静香「そういえばすなお、清十郎さんはどうしたの?」

 

すなお「それが、清十郎さんは」

 

???「俺に何か用か?」

 

 声をかけたのは清十郎であった。

 

すなお「清十郎さん、夜中にどこへ行ってたんですか!?」

 

清十郎「悪い悪い、悪鬼がいないか見回っていたのさ」

 

すなお「何も言わないで急にいなくならないでください!さっき、般若武者が現れたんです!」

 

清十郎「何ッ!?くそう、出たのを知ったら即座に駆け付ける事ができたのに!」

 

 静香達の様子を舞人らしき女が見つめ、どこかへ行った。それを清十郎は見逃さなかった。

 

 そして翌日…。ちはるは朝食を食べ終わった。

 

ちはる「ごちそうさま!」

 

ちはるの母「お粗末様でした。もらったお野菜、すごくおいしかったね」

 

ちはる「ピーマン、苦かったけどね…」

 

ちはるの母「それだけ栄養が豊富なのかも知れないわよ?」

 

ちはる「そういえば、昨日は夜中に何か大騒ぎがなかった?」

 

ちはるの母「ええ。何でも、最近では時女の集落に般若の面を被った武者が出没しているらしいの」

 

ちはる「それって、もしかして悪者!?」

 

ちはるの母「それが、微妙なところみたい。基本的には襲い掛かってくるのだけど、悪鬼を代わりに倒してくれたり、悪鬼の魂魄をくれたりする事もあって、完全な敵か味方かがわからないらしいのよ」

 

ちはる「般若武者か…」

 

 般若武者の事を考えていると、何か声がした。

 

???「ごめんくださ~い!」

 

ちはる「昨日、言ってた巫の人かな?」

 

ちはるの母「多分、そうね」

 

 

 

時女の集落

 

 ちはるは出てみた。

 

ちはる「はーい」

 

翼「お前が広江ちはるだな?」

 

ちはる「うん、そうだよ。そう言えば、あなたは昨日の…」

 

翼「自己紹介がまだだったな。私は風鳴翼だ」

 

調「私は月読調」

 

清十郎「七井清十郎だ。俺達3人はさすらいの悪鬼退治屋ってとこだな」

 

ちはる「それって、ヒーローなの!?」

 

清十郎「まあ、そういう感じでいい」

 

静香「次は私達の番ね。はじめまして、私は時女静香。この集落の巫よ」

 

ちはる「はじめまして、私は広江ちは…あ、時女!?」

 

静香「そ、集落と同じ名字。そしてうちは時女の本家なのよ」

 

ちはる「へえー、かっこいい!あれだよね?オババに言われてきたの?」

 

静香「ん?オババ…?もしかして神子柴様の事?」

 

ちはる「そう、あのおばあちゃんの事!」

 

 ちはるが神子柴をオババと言った事に静香は吹いてしまった。

 

静香「すなお、聞いた?神子柴様の事オババだって」

 

すなお「そんな呼び方をする人は初めてですね」

 

ちはる「わ、もう1人いた!」

 

すなお「はじめまして、土岐すなおです。よろしくお願いしますね」

 

ちはる「もしかして、お姉ちゃんも巫?」

 

すなお「はい、神子柴様の家に住み込んで巫をしています。麓にある村の出身なんですけど、うちも時女の家系ですので」

 

ちはるの母「あの、今日はよろしくお願いします。何卒…」

 

ちはる「お母さん…」

 

 堅いちはるの母の態度に清十郎は手を置いた。

 

清十郎「そう堅くなるなよ。あのババアに何言われたのか知らねえが、俺達は巫の説明をするだけだ。いざってなりゃ、俺達がどうにかするから、大船に乗ったつもりで安心しろ!」

 

ちはるの母「そ、そうですよね…(あの清十郎って人、傍にいてくれるだけで言葉に表せない安心感を与えてくれる…)」

 

清十郎「さあて、巫の説明もしながら、集落は俺達が案内するぞ!」

 

 意気込んで行こうとした矢先、神子柴が来た。

 

静香「神子柴様?どうしたのですか?」

 

神子柴「ちはるの國兵衛神楽に参加するはずの舞人の1人がいなくなった上、連絡がとれなくなってな、困ってしまったのじゃ」

 

すなお「舞人さんが?」

 

翼「その國兵衛神楽というのは、何ですか?」

 

神子柴「簡単に言えば儀式じゃよ。じゃが、舞人が揃わんのは、祟りが起こりそうじゃわい…。せめて、代理の者でもおったら…」

 

調「それ、私にやらせてくれませんか?」

 

 連絡がとれない舞人の代理として、調が國兵衛神楽に参加すると言い出した事に神子柴達は驚いていた。

 

静香「調が!?」

 

調「実を言うと、その舞に少し興味があるから…」

 

神子柴「そうかい。なら、舞人の衣装が合うかどうかを確かめねばな」

 

 早速、調は舞人の衣装を着てみる事にした。

 

調「翼さん、みんな、似合ってるかな…?」

 

ちはる「めっちゃ似合ってるよ!」

 

すなお「まさに、大和撫子を地で行くような姿」

 

神子柴「さ、調とやら。他の舞人に教わってきなされ」

 

調「はい」

 

 調は舞を舞人に教わってもらいに行った。

 

清十郎「あっ、俺も般若武者がいないか見回ってくる」

 

 思い出したかのように清十郎はその場を離れた。

 

ちはる「2人は用事ができて参加できなくなっちゃったね…」

 

翼「仕方あるまい。私達だけで行こう」

 

 翼達だけで集落を見回る事にした。

 

静香「ほら、こっちに行くちょね、魚が釣れるスポットがあるのよ」

 

ちはる「釣りたーい!」

 

すなお「この辺りにみんなが集まる集会場があるんです」

 

ちはる「道場みたーい!」

 

 次の場所へ向かった。

 

静香「で、ここを登っていくと集落の神社があるのよ」

 

ちはる「へー、何もないけど、新鮮な事がいっぱいだよ!」

 

すなお「昔から外との交流が薄いので古い物を大切にしているんです。私も最初はスマホもパソコンもなかったので驚きました」

 

ちはる「私もスマホを見たらね、電波が圏外で驚いたよ」

 

静香「私も本物は見た事ないのよね」

 

ちはる「ひょえー!」

 

翼「さ、行こう」

 

 さらに進んでいった。

 

静香「ふう…歩いたわねー」

 

翼「だな」

 

ちはる「すっごく楽しかった」

 

静香「それは何より!それじゃあ、気持ちもほぐれたところでそろそろ本題に入りましょう」

 

ちはる「あ、オババの言ってた」

 

静香「そう、オババの言ってた話」

 

すなお「ちはるさんのオババ、静香にうつってしまいましたね」

 

翼「すなおも言っているぞ」

 

ちはる「神子柴オババ」

 

静香「語感がよい」

 

すなお「ふふっ」

 

静香「で、その神子柴オババの話だけど、さわりだけでも聞いてるかしら?」

 

ちはる「えと…魂を献げる……?」

 

静香「そこじゃなくて」

 

ちはる「……?」

 

静香「私達が人と国を助ける存在だという事」

 

ちはる「あ、言ってた。そんな事言ってた」

 

静香「実は、その話だけどね、例えじゃなくて本当の事なのよ。私達には日ノ本を救うために願いを叶える力があって、願いを叶えた後に、悪鬼と戦う力を持つ巫になるの」

 

ちはる「願い…?悪鬼……?」

 

翼「(本当だったら契約を阻止したいのだが、それがしきたりだというのがもどかしいな…)」

 

 見滝原での経験もあり、できれば契約を阻止したい翼であったが、無理に阻止すると神子柴が何をしでかすかわからないため、迂闊に阻止できないのがもどかしかった。

 

すなお「願いは日ノ本をよくするために、言った事を実現させる神秘の力。そして悪鬼は、言葉の通り悪い鬼。人の幸福のために倒すべき敵です。普通の人には見えませんけど、放置していれば被害が出ます」

 

ちはる「……2人は本当にそんな神秘の力を使えて危なそうな奴と戦えるの?だって、私と歳だって変わらないよね…?」

 

静香「ちはる。私達はできるんじゃない、もう、すでにやっているのよ」

 

すなお「そして私達の歳でしか実現できない事なんです」

 

ちはる「…凄い、かっこいい!って言いたいところだけど、正直なところわからないや…」

 

すなお「えっ…」

 

ちはる「ここまで呼び出すぐらいだから、信じたいところだし、そんな存在に憧れるよ。でも、どうやって確信を持てばいいのかわからない…」

 

翼「ならば、その目でしかと見るがいい!Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 翼はギアを纏い、静香とすなおは変身した。そして、軽く攻撃をちはるに見せた。

 

ちはる「ええっ!?」

 

静香「これが神秘を願って得た力」

 

すなお「悪鬼を打ち破る力です」

 

翼「私のは巫のように見えるが、あくまでも巫の力を再現した装備に過ぎない。それでも、巫にひけをとらない戦闘力を出せるがな」

 

ちはる「(どうしよう…、すごくドキドキしている…。でも、怖いんじゃない…。このドキドキは、憧れだ…!!)」

 

すなお「なりますか?」

 

静香「私達と同じ巫に」

 

ちはる「ううううん……」

 

 巫になるかどうか、ちはるは迷っていた。

 

静香「そんな簡単に決めるのは難しいわよね…」

 

翼「ああ。しっかり考え、確固とした覚悟を決めてからなる必要がある」

 

 そんな折、すなお達が悪鬼の気配を感じ、翼の魔法少女ギアにあるソウルジェム型センサーにも反応があった。

 

すなお「!静香、この気配…」

 

静香「うん、私も感じたわ」

 

翼「私の装備にも反応があった」

 

ちはる「えっ、な、何の事!?」

 

翼「集落の外に悪鬼がいるぞ」

 

ちはる「うぇええ!?」

 

すなお「…静香、ちょうどいいタイミングです。せっかくですから、巫の雄姿を見てもらいましょう」

 

静香「でもすなお、さすがに危なくないかしら?」

 

翼「私もいるんだ。私達の中の誰か1人が広江を護り、残りが悪鬼と戦えばいいのではないか?」

 

 翼の鶴の一声にすなおと静香は納得した。

 

静香「…そうね。今回は助っ人がいるのだし、翼さんのいう事が一番最善だと思うわ」

 

翼「広江、私達が悪鬼と戦う姿を見てみるか?」

 

静香「種も仕掛けもない、本当に何かを守る力を」

 

ちはる「…うん、見せて!静香ちゃん、すなおちゃん!」

 

翼「今回は私がちはるの護衛をして、おいしいところは時女と土岐に譲るとしよう」

 

静香「それじゃあ、行きましょう」

 

 

 

 

 一同は悪鬼が潜んでいる場所に来た。

 

ちはる「ここに悪鬼がいるの?」

 

翼「そうだ。奴等は普段、私達の前に姿を現さない」

 

静香「こうしてコソコソ人を狙っているのよ」

 

すなお「入りましょう」

 

ちはる「うん…!」

 

 4人は結界の中に入っていった。同じ頃、神子柴が連絡がとれないといった舞人は森の中を進んでいた。

 

舞人「さて、山を下りたら神子柴様の」

 

???「どこへ行く?」

 

 山を下りる舞人に声をかけたのは、般若武者であった。

 

舞人「般若…武者……!」

 

般若武者「俺が神子柴のクソババアの手下である貴様らをこのまま野放しにするとでも思っていたのか?」

 

舞人「貴様、神子柴様を愚弄する気か!何奴!?」

 

般若武者「冥途の土産に教えてやろう、俺の名と素性はーー」

 

 般若武者は自分の名前と素性を言った後、舞人の反応速度を遥かに超えたスピードで刀を振り下ろし、舞人の息の根を止めて文字通り、自分の名前と素性を舞人への『冥途の土産』としたのであった。

 

 

 

悪鬼の結界

 

 結界に入り込んだ4人は翼がちはるの護衛をしつつ、静香とすなおが悪鬼やその手下と戦っていた。悪鬼との戦いも終わりに近づいていた。

 

静香「ふんっ、最後のあがきってわけね。そんなの無駄よ!」

 

すなお「これで止め!」

 

 静香とすなおによって悪鬼は倒された。

 

 

 

 

 悪鬼が倒され、結界は崩れ落ちた。

 

静香「ふう…ま、これぐらいなら余裕ね」

 

すなお「流石は時女の本家」

 

静香「えへへっ。どう、ちはる。これが私達の力よ」

 

???「こんな程度で浮かれているようだが、俺からすればまだまだだな」

 

 声と共に清十郎が来た。

 

静香「清十郎さん!」

 

清十郎「世の中、街を吹っ飛ばしちまうほど強力な悪鬼だっているんだぜ。その程度で浮かれてたら、足元をすくわれてあの世行きだ」

 

静香「ギクッ…!」

 

すなお「痛い所を突かれてしまいましたね」

 

 しかし、ちはるは黙り込んでいた。

 

静香「ちはる?」

 

翼「広江?」

 

すなお「ちはるさーん」

 

 呼ばれてちはるははっと気づいた。

 

ちはる「あ、うん、凄い…。普通の人じゃ、あんな跳び回って動けない…」

 

静香「巫にとっては普通よ。誰かを守る力なんだから」

 

清十郎「生身の人間があんな風に跳び回るのなら、俺ぐらい鍛えなきゃできねえ事だ」

 

ちはる「そう…だよね…」

 

 

 

時女の集落

 

 その頃、調は舞人達から舞を教わっていた。

 

調「うわっ!」

 

 しかし、その道は決して楽なものではなく、何度も転んでしまうという、失敗の連続であった。

 

調「やっぱり、簡単にはいかない…」

 

舞人A「そうね。でも、あなたは素質がある方よ」

 

舞人B「私達なんか、この舞を覚えるのに数か月はかかったのだから」

 

舞人C「たったの半日程度でこれほど早く覚えられた子はあなたが初めてよ」

 

調「そうですか…。だったら、身体が覚えるまで続けます!」

 

 調はそのまま舞の練習を続けた。しかし、自分を何かが見つめているような視線があるような気がしていた。

 

調「(誰?私を見つめているのは…)」

 

 視線がした気がするために集中力を切らし、また転んでしまった。

 

調「うぐっ!」

 

舞人A「あなた、集中力を切らしてしまったようね。最後まで持続させなければダメよ」

 

調「申し訳ありません!」

 

 とりあえず、視線の事よりも舞を覚えるのを優先した調であった。その視線の正体は神子柴であった。




これで今回の話は終わりです。
今回は翼達が時女の集落に着いたのと、謎の般若武者が現れるのを描きました。
時女の集落辺りに出没し、翼達4人がかりでも圧倒されるほどの実力を誇る般若武者ですが、既に正体のヒントは出しています。
翼達が到着した際にすなおは神子柴にある事を頼まれていましたが、それが何なのかは次第に明らかとなります。
また、調が舞人に舞を習うという、夕暮れに舞う巫女へと繋がる展開も入れています。
次の話はいよいよちはるが巫になります。

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