セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

158 / 198
158話 巫の儀

時女の集落

 

 悪鬼を倒した後、一同は集落に帰ってきた。

 

ちはる「ただいまー」

 

ちはるの母「ちはる、お帰り!遅いから心配したのよ!?」

 

ちはる「ご、ごめんなさい…」

 

翼「申し訳ありません。本来は説明だけだったのですが、悪鬼の捜索、及びその戦闘で時間がかかってしまいました」

 

ちはるの母「悪鬼…?」

 

ちはる「お母さん、私見たよ。2人が巫として戦うところ、人の悪をくじく瞬間を見た!」

 

ちはるの母「……ちはる、あなたまさか…」

 

ちはる「うん、巫になる」

 

ちはるの母「どうして…!」

 

ちはる「2人から話を聞いた時はね、私も信じられなかった。でも、巫の姿を見せてもらって実際に戦う姿を見たらね、私も力になりたいって思ったの。本当に巫になる資格があるのならだけど…」

 

ちはるの母「ちはる…憧れでなるものじゃないわよ…」

 

静香「恐らくお母様は神子柴様の言葉を気にされていると思います。ですが、私達は既に巫です。魂を神に献げてもなお、こうして健常にしております。ゆえに、どうかご安心ください」

 

ちはるの母「そんな、当事者の言葉を聞いたところで…」

 

 会話の最中、神子柴が来た。

 

神子柴「決まったかの」

 

ちはる「オババ!」

 

神子柴「オババ?」

 

すなお「ちはるさん!」

 

神子柴「ふぉふぉっ!そんな呼ばれ方は初めてじゃな」

 

ちはる「すみません…」

 

神子柴「いや愉快じゃ、構わぬぞ。して、答えは?」

 

ちはる「…なります!巫に!」

 

神子柴「うむ、その意気やよし。既に儀式の準備は進めておるゆえ明日の夜、神社にくるがよい」

 

ちはる「うん、わかりました」

 

すなお「それで神子柴様…、ちはるさんが願う事は」

 

神子柴「うむ、これじゃ。しっかりと読んで覚えておくのじゃぞ」

 

 ちはるが儀式の際に叶えてもらう願い事は『警察庁が隠蔽している防衛省職員による事件の証拠を表舞台に出す』であった。

 

翼「割り込む形ですみません。お言葉ですが、巫は自分で願い事を決め、その願い事を叶えてはいけないのですか?」

 

神子柴「そうじゃが、何か不満でもあるのか?」

 

翼「いえ、気になってお聞きしたかっただけです」

 

神子柴「そうかい…(あの風鳴の娘、不器用ではあるが侮れぬ。風鳴である以上、必ずや…)」

 

 黒い邪な視線で神子柴は翼を見つめていた。

 

ちはる「これ……」

 

 それこそ、ちはるが時女一族の集落に来る前、ニュースで見ていたものであった。

 

神子柴「今の日ノ本の暗部。我らの国と人々を守るために叶えるべき必要な願いじゃ。…正義の味方なのに、正義に巣くう悪もおる」

 

 神子柴の言葉を聞いた清十郎は神子柴を睨みつけていた。

 

ちはる「許せない」

 

神子柴「じゃからお前さんの力で良き方向へ導くのじゃよ。わかるか?」

 

ちはる「うん」

 

神子柴「それじゃあ、静香とすなおは神社に向かってくれんかの。舞人が明日の準備をしとるから、お主らも手伝っておくれ」

 

静香「あ、わかりました」

 

すなお「はい。それではちはるさん、また明日にお会いしましょう」

 

静香「ちはる、明日の昼は稽古しよう。母様が手伝ってくれると思うから」

 

清十郎「俺も混ぜてくれよ。超天才の俺の稽古はとてもためになるぞ」

 

翼「(だが、私達でさえ音を上げるほどハードだがな…)」

 

ちはる「え?あ、うん…」

 

神子柴「あと、広江の母君。少し話をせんか」

 

 

 

宿泊所

 

 翼達は宿泊所へ戻ってきた。

 

翼「月読、舞の方はどうだ?」

 

調「色々と転んで失敗が多かったんですけど、舞人さん達からは自分達よりもセンスがいいと言われました」

 

清十郎「そうか…。お前はもともと巫女っぽいからな」

 

調「あと、一つ気になる事が」

 

翼「何だ?」

 

調「舞の練習をしていた際、何か気になる視線を感じて…」

 

清十郎「その視線が般若武者かどうかはわからんが、警戒しておくことに変わりはない。ともかく、明日の舞は頼むぞ」

 

調「はい!」

 

 ちはるは先に帰った後、しばらくしてちはるの母も帰ってきた。

 

ちはるの母「ただいま」

 

ちはる「あ、お帰りなさい」

 

ちはるの母「……」

 

ちはる「お母さん…?」

 

ちはるの母「ちはる、本当に巫になるの?好奇心は身を滅ぼすわよ。等々力さんも言ってたでしょ…?」

 

ちはる「うん…。でも、奇怪な真実もある。それを受け入れろとも言ってた」

 

ちはるの母「そうね…」

 

ちはる「ごめんなさい」

 

ちはるの母「ううん、お母さんも神子柴様から話を聞いて腹を括ったから…」

 

 

 

時女の集落

 

 翌日、ちはるは静香の母親に稽古をつけてもらう事となった。

 

ちはるの母「私、広江ちはるの母です。今日はよろしくお願いいたします」

 

静香の母「ご丁寧にありがとうございます。私は時女静香の母です。同じ巫の母親として、今後ともよろしくお願いします」

 

ちはるの母「はい…」

 

静香の母「心配なのはわかりますが大丈夫、あの子達は強いですから」

 

 ちはるは昨日言ってた稽古が戦闘である事に驚いていた。

 

ちはる「稽古って何かと思ったら、戦う稽古なの!?」

 

静香「昨日見た通り、悪鬼と戦うには感覚を磨く必要があるからね」

 

ちはる「でも…どうして静香ちゃんのお母さんなのさ?」

 

静香「母様は時女一心流の猛者。男が束でかかっても蹴散らすぐらい強いから」

 

ちはる「へえー!」

 

すなお「それに基礎がしっかりしてるので、技術の底上げにつながるんです」

 

ちはる「静香ちゃんのお母さんって、凄いんだ…」

 

???「おいおい、俺達も忘れんなよ」

 

 声をかけたのは清十郎達であった。

 

静香「清十郎さん!」

 

清十郎「俺も稽古をつけるって約束、昨日してたじゃねえか。静香のおふくろ、ちょっと俺と手合わせしてみないか?」

 

静香の母「望むところよ。超天才と自称しているあなたに1発叩き込んであげる!」

 

清十郎「さあて、俺に1発叩き込めるかな?」

 

 清十郎と静香の母親は竹刀を持ち、手合わせしてみた。しかし、静香の母親の打ち込みは清十郎に全くかすりもしなかった。

 

静香「母様が1発も当てられないなんて!」

 

翼「私達が手合わせした時もそうだが、凄い見切りの技術と速さだ…!」

 

 手合わせをしている静香の母親はある事に気付いた。

 

静香の母「(この動き、もしや彼は…!)」

 

清十郎「これで終わりだ!」

 

 静香の母親が反応できない速さで清十郎は静香の母親が持つ竹刀を弾き飛ばした。

 

清十郎「勝負あったな」

 

静香の母「私の負けね…。本当にあなたは自称している通り、超天才よ」

 

清十郎「そうだろそうだろ」

 

翼「割り込む形ですみませんが、そろそろ広江の稽古をつけていただけないでしょうか?」

 

清十郎「そうだな。んじゃ、まずは静香のおふくろがやってみなよ」

 

 そう言って、清十郎は竹刀をちはるに渡した。

 

静香の母「じゃあ、まずはこの竹刀を使って自由に打ち込んでみて。手加減抜きの本気でいいから」

 

 言われた通りちはるは手加減抜きで打ち込んでみたものの、当たらなかった。

 

ちはる「はぁ…はぁ…はぁ…ぜんっぜん当たらないよぉ」

 

静香の母「体力が尽きたのかな?」

 

ちはる「うん、疲れちゃった…」

 

翼「なら、今度は私が1本いかせてもらおう」

 

ちはる「えぇ!?」

 

翼「と言いたいところだが、少し休むべきだな」

 

ちはる「よかったー…」

 

すなお「ちはるさんはどうでしたか?」

 

静香の母「飛び込む度胸は一級品だけど、他は全然って感じかな」

 

ちはる「全然!?しょぼん…」

 

翼「落ち込むな、広江。誰だって最初はこんな感じだ」

 

すなお「輝く点がひとつあれば十分です」

 

静香「そうそう、私なんて最初はゼロって言われたもの」

 

ちはる「そうなの?」

 

静香の母「そうだね。それに、度胸は大切だよ。力や技術と違って心を変えるのは難しいから」

 

ちはる「そっか…」

 

静香の母「なので、今からは基礎的な練習をしていきましょう」

 

ちはる「はいっ!」

 

調「割り込んですみませんけど、清十郎さんの刀って、いつから使ってるんですか?」

 

清十郎「もう十数年は使っているぞ。それがどうした?」

 

調「十数年使っているって言ってたのに、人や悪鬼などを斬った痕がない新品同然なので…」

 

 清十郎は鞘から刀を抜いてみた。

 

静香「凄い!とても十数年使っているとは思えない!」

 

翼「私達との手合わせの後でも刃こぼれ一つない」

 

静香の母「でも、悪鬼との戦いに使っているとなると、刃こぼれを起こしてもおかしくないはず。それなのに、どうして?」

 

清十郎「そいつは企業秘密って奴だ。ま、普通の刀を俺が扱うと、1回の戦闘で折れちまうけどな」

 

調「(確かに清十郎さんのあのパワーじゃ、普通の刀では耐えられない…)」

 

翼「(だが、どんなに頑強な刀に仕上げたとしても、刃こぼれはおろか、シンフォギアや巫の攻撃さえも容易く受け止められる刀にならないはず。悪鬼に反応して震えるのといい、何か秘密でもあるというのか…?)」

 

 シンフォギアや巫の攻撃を受け止められるほどとても頑強な上、刃こぼれひとつしていない清十郎の刀を翼達は不思議に思っていた。

 

清十郎「剣術の超天才の俺も教えるとしよう。まず、体の軸を整えつつ、動きの無駄を減らせ」

 

翼「今度は私が広江を扱く。さぁ、休息が済んだら私に向かって打ち込め!」

 

 ちはるの稽古は夕方まで続けられた。

 

ちはる「はあ…はあ…」

 

静香の母「お疲れ様、ちはるちゃん。たった半日なら上出来だよ」

 

ちはる「ほんとに!?」

 

静香の母「うん、うちの娘に負けないぐらい」

 

静香「そう言われると悔しいわ……」

 

静香の母「ふふっ。だから、その度胸を持ったまま自信を持って儀式を迎えなさい。あなたの中にある何かを守りたいという心は間違いなく国を守り、人を救う事になるはずだから」

 

ちはる「うん、ありがとうございます!」

 

調「あの、私は舞の準備もあるので先に失礼します」

 

 志願する形で連絡のとれない舞人の代理を務める事となった調は舞の準備のため、先に神社へ向かった。調と入れ替わるのと同時に男が来た。

 

男「ああ、嬢ちゃんたち。ここにいたんだね」

 

ちはる「あ、案内してくれたおじさん」

 

男「こりゃ、本家にしごかれた後かな?」

 

静香の母「そんな聞こえの悪い言い方はやめて」

 

男「がはは、悪いな」

 

翼「どうかしましたか?」

 

男「神社での準備が整ったから、その連絡に来たんだよ。とはいっても、まだ時間があるし夕飯でも食べてからおいで」

 

静香「わかりました」

 

ちはるの母「いよいよね、ちはる」

 

ちはる「うん、大丈夫。いっぱい自信をもらったから」

 

 夕食のため、一同は一旦戻る事となった。そして、夜…。

 

翼「いよいよだな、月読…」

 

調「舞は他の舞人さん達と何ら変わらないレベルにまで覚えました。ただ…」

 

翼「ただ?」

 

調「舞の練習の際、舞人さん達にどうして巫になる子が叶えてもらう願いを自分で決めてはいけないのか聞いたんです」

 

清十郎「調も疑問に思ったのか」

 

翼「国をよくする願いであれば、自分で考え、決めてもおかしくないはず。ましてや、キュゥべえの叶える願い事はしっぺ返しがくるものだからな」

 

調「もしも、それを破ってしまった場合、どうなるのでしょうか…?」

 

清十郎「それを破れば、神子柴は何かしでかすに違いない。今は神子柴の動きに注意が必要だ。よし、俺達も行くとするか」

 

 清十郎達も神社へ向かった。神社には多くの人が集まっていて、にぎやかになった後で静かになった。

 

ちはる「(さっきまで賑やかだったのに、みんな静かになっちゃった…。昔あった、お爺ちゃんのお葬式みたいだな……。あー…何考えてるんだろ……)」

 

神子柴「ちはる」

 

ちはる「は、はい!」

 

神子柴「舞台の前に行きなさい」

 

ちはる「はい…」

 

 かつてないほどの緊張感でちはるは舞台の前に行った。

 

ちはる「(今になって重く感じる…。本当は私、好奇心に負けただけなのかな…。みんなの明るさに誤魔化されてたとか…)」

 

 そんな中、ちはるの母親はちはるを見つめていた。

 

ちはる「お母さん…?(違うよ…大丈夫だよ…。だって心配なのは私以上にお母さんの方だもん。だけど、お母さんは…)」

 

ちはるの母『ううん、お母さんも神子柴様から話を聞いて腹を括ったから…』

 

ちはる「(そう言ってた…。だから安心して自信を持とう…)」

 

神子柴「ではこれより、國兵衛神楽並びに巫の儀を始める」

 

翼「(いよいよか…!)」

 

 國兵衛神楽の開始にちはるやそれを見守る静香達はもちろん、翼と清十郎も注視していた。

 

ちはる「(いつもだったらすごいってワクワクするのに、ただ、圧倒されちゃう…。立ったまま体が動かない…。熱いよ…、さっきまで何も感じなかったのに…いまはすごく周りの火が熱い気がするよ…。どうしよう…早く終わってほしい…。こんなに緊張するなんて思わなかったよ…。だって、こんなの……)」

 

 ちはるが緊張する中、調は他の舞人と共に舞に集中していた。

 

ちはる「(本当に私、神様に魂を捧げるみたいだ…)」

 

 舞が進んでいくと、舞台に何かいる事にちはるは気付いた。

 

ちはる「(……何かいる…)」

 

 その何かこそ、キュゥべえであった。

 

翼「(やはりか…)」

 

調「(黒幕かどうかはまだわからないけど…)」

 

キュゥべえ「また時女が僕を呼ぶだなんて驚いたな。最近も呼ばれたような気がするんだけど…。もしかして君が、願いを叶えたいという女の子かい?」

 

ちはる「喋ってる…」

 

神子柴「神のお遣いであらせられる久兵衛(キュゥべえ)様じゃ。わしらには見る事はできぬ。じゃが、巫になる資格のあるお主になら話ができるはずじゃて。願いを叶えてもらいなさい」

 

 自分達には見る事はできないという神子柴であったが、翼と調、そして清十郎にはキュゥべえが見えていた。

 

ちはる「あなたが神の遣いなの?」

 

キュゥべえ「昔から彼女は僕の事をそう呼んでいるね。水害や飢饉を鎮める願いも多かったから、無理はないと思うけど」

 

ちはる「それじゃあ、本当にあなたが願いを叶えて巫にしてくれるの…?」

 

キュゥべえ「そうだね。君達で言うところの巫に僕はできる。それに、君には願いを叶えるだけの素質があるみたいだからね。僕をこうして呼んだっていう事は、君が巫になりたいんだよね?」

 

ちはる「う、うん…」

 

キュゥべえ「それなら、願い事を叶えてあげるよ。君は何を願いたいんだい?」

 

ちはる「私は…警察庁が隠蔽している防衛省職員による事件の証拠を表舞台に出す」

 

 願い事を言った途端、光り出した。

 

ちはる「うわっ!」

 

キュゥべえ「君の願いはエントロピーを凌駕した。そしてこれが、君が戦うための新しい姿だ」

 

 願い事を叶えたのと同時に、ちはるの服装は岡っ引きのような服装へと変化した。

 

ちはる「これが、巫になった私…」

 

 儀式が終わった後、一同はちはるに駆け寄った。

 

ちはるの母「ちはる…本当に何ともないの…?」

 

ちはる「うん、本当に何もないよ。むしろ前より元気なぐらい」

 

静香「それで正しいと思うわ。だってちはるは今、悪鬼と戦う力を得たんだから」

 

すなお「おめでとうございます。これで3人お揃いですね」

 

静香「だねっ」

 

ちはる「う、うん…」

 

静香「…微妙な反応、何かおかしなところある…?」

 

ちはる「えっ!?全然!凄く健康!たぶん!」

 

すなお「じゃあ、どうしたんですか?」

 

ちはる「何て言うか実感がなくて…本当に願いは叶ったのかな…」

 

すなお「そういう事ですか」

 

静香「きっと、すぐにわかるわよ」

 

すなお「ですね」

 

 ちはるはあまり納得していなかった。そんなちはる達の様子を翼達は少し引いた立ち位置で見つめていた。

 

神子柴「調とやら、普段であれば舞なんて経験などできんから、ええ経験になったじゃろ?」

 

調「はい、舞人の衣装といい、貴重な経験になりました」

 

神子柴「それはよかった…」

 

 調が舞の経験が貴重な経験になったと言ってくれた事に神子柴は喜んだ様子になったが、片付けのため、後ろを向いた後、横目で翼達を見ていた。

 

神子柴「(あの調という小娘も風鳴の娘と関わりがある。風鳴の者、そして、風鳴に関わる輩はどの道…)」

 

 邪な目で神子柴は翼達を見つめ、その場を離れた。

 

調「結局、契約を止める事はできませんでしたね…」

 

翼「ああ…。それに、この集落は一般人にも魔法少女が知られている上、それについての文化も根付いている。無理に契約を阻止してしまうと白い目で見られてしまうからな…」

 

調「それと、すなおが度々私達を見つめているの、気付いてましたか?」

 

清十郎「ああ」

 

翼「私達を見つめていたとなれば、彼女の素性は……」

 

 ある程度の予測はついていたが、本人を刺激しないよう、口に出さなかった。

 

 

 

国会

 

 翌日、国会は想像を超えた展開になっていた。

 

覇万「ほう、正直に認める気になったか」

 

警察庁職員「はい…。貴方方の指摘通りです……」

 

覇万「素直でよろしい(昨日はあれほど頑なに隠蔽している事件を認めたくなかったのに今日は一転して認めたとは…。誰かが巫になったな…?)」

 

 この様子に覇万は時女の集落で誰かが巫になったのを察したのであった。そして会議の後、連絡を入れてきた清十郎と情報交換をしていた。

 

覇万「そうか、やはり新しい巫が生まれたのか」

 

清十郎『ああ。願い事は警察庁が隠蔽している防衛省職員が起こした事件の証拠を表舞台に出す、だ。そっちではどうだったんだ?』

 

覇万「お前の言った通り、一転して証拠を認めたぞ。お前はやるべき事を続けろ。私も準備が整い次第、特異災害対策委員会の委員長としての業務でそちらへ向かう」

 

 指示を出した後、覇万は電話を切った。そこへ、美形男性の秘書が来た。

 

秘書「覇万様、旦那様とご連絡をとったのでしょうか?」

 

覇万「ああ。私はこれから特異災害対策委員会の委員長としての業務で連中の追及を行う。新しい時代を作る子供達の未来を摘み、私腹を肥やす俗物共は駆除せねばならんからな」

 

秘書「でしたら、第一秘書である私を始めとした面々で覇万様をお守りします!そして、覇万様御用達の無刃刀もお持ちしています」

 

 秘書が持っている無刃刀は刃がなく、峰しかない刀で鈍器に近い代物であった。

 

覇万「頼もしいな。では、行くぞ」

 

 明らかにヤクザにしか見えない護衛達と共に、覇万はある議員の方へ向かった。

 

 

 

時女の集落

 

 時女の集落にいるちはる達もその情報を新聞で知る事となった。

 

翼「なるほど、広江が願った事は叶ったのか」

 

ちはる「これ、守ったって事だよね?私がこの国と色んな人を守ったんだー!静香ちゃんとすなおちゃんが言ってた通り、すぐにわかった!それに、神秘の力もあった!きっと悪鬼を倒す力も!お母さん!」

 

ちはるの母「な、何!?」

 

ちはる「静香ちゃんのお母さんに稽古つけてもらってくる!」

 

清十郎「おい、俺を忘れるな!」

 

 ちはるは大喜びで静香の母親の元へ向かった。

 

ちはるの母「ちょっとちはる!まだ早いから迷惑よ!せめてご飯食べてからにして!」

 

 そんなちはるの様子を見た後、翼と調はある事が気になっていた。

 

翼「清十郎さん、電波の入る場所で情報交換をしていたようですが、何かありましたか?」

 

清十郎「覇万の方では、新聞の通りに警察庁が証拠を認めたそうだ。それで、とある取引をしている連中の駆除に向かった」

 

調「取引をしている…人達ですか?」

 

清十郎「ああ。あの戦いはあいつにしかできない戦いだ。俺達は俺達のできる事をやろう」

 

翼「それと、私は月読と共に般若武者が使う時女一心流について、キュゥべえが何か知っているのではないかと思うので、昨日の儀式の場へ向かいます」

 

調「その現場を神子柴に見られないようにしないと…」

 

清十郎「そうだな。神子柴には警戒が必要だ。俺はちはる達に稽古をつけてやるから、お前達はお前達のやりたいようにするんだ」

 

 翼と調を神社へ行かせ、清十郎はちはる達の稽古へ向かった。




これで今回の話は終わりです。
今回はちはるが巫になるのと、清十郎の刀には秘密がある事が判明する話になっています。
るろうに剣心の比古清十郎の刀は不二の攻撃でも折れないばかりか、清十郎の剛腕と合わさって受け止めるほどの強度でしたが、今小説では七井清十郎が使う刀の強度には秘密があるという理由付けをする事にしました。
次はちはるが巫になってから、悪鬼と戦うのを描きますが、般若武者もまた出てきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。