セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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16話 原因究明

S.O.N.G潜水艦

 

 星矢達は元の世界に帰ってきた。

 

クリス「…やれやれ。やっと帰って来れたな」

 

マリア「あら?向こうがお気に召さなかったの?」

 

クリス「そういうわけじゃねーけど、どうも調子狂うんだよな。…久しぶりにあのバカの顔でも見たい気分だ」

 

???「お帰り、みんな」

 

 その場には元気になった瞬が待っていた。

 

星矢「瞬、元気になったのか!?よかったな!」

 

瞬「うん。急に悪夢を見なくなって元気になったんだ。僕が元気になったから、兄さんは安心してまた単独行動をとったよ。さ、発令所へ行こうか」

 

 星矢達は発令所に向かっていた。

 

瞬「えっ、向こうでは僕と兄さんの纏う聖衣が逆になっているの!?」

 

星矢「ああ。一輝がアンドロメダっていうのも、瞬がフェニックスなのもメチャクチャ衝撃的だったぞ」

 

クリス「(あたしの場合は夢にまで出てきたぐらいだからな…。やっぱ、アンドロメダの聖衣は瞬が着ている方が似合う…)」

 

 そう言ってると、ノイズ警報が鳴った。

 

星矢「ノイズ警報だって!?」

 

クリス「いくら何でもタイミング良すぎだろ!」

 

 星矢達は発令所へ来た。

 

弦十郎「戻ったか、3人とも!戻って早々悪いが、ノイズが出現した。すぐに迎撃に出てくれ」

 

クリス「全く、休む暇もないのかよ…!」

 

星矢「つべこべ言わずに行くぞ!」

 

 そのまま星矢達は出撃したのであった。

 

 

 

道路

 

 現地で翼達と合流し、ノイズを殲滅したのであった。

 

紫龍「戻ってきたのか」

 

マリア「つい今しがたね」

 

氷河「お帰り、星矢」

 

星矢「ただいまっと」

 

翼「星矢達は並行世界で何を見てきたんだ?」

 

星矢「メチャクチャ驚くぞ…」

 

 星矢は今回向かった並行世界では一輝がアンドロメダ、瞬がフェニックスの聖闘士になっている事をみんなに教えた。

 

切歌「ええっ!?一輝がアンドロメダで瞬がフェニックス!?」

 

調「想像したくない…!」

 

翼「(並行世界では2人の聖衣が逆になっているとは…。纏う姿は想像したくもないが…興味が…)」

 

 翼達は並行世界の一輝と瞬が纏う聖衣が逆になっている事に衝撃を受け、想像したくないのと同時に、興味もあった。

 

星矢「でも、驚いたぞ。瞬が元気になったなんて。この調子なら響も」

 

調「響さんは…」

 

星矢「どうした?何だか暗いぞ」

 

紫龍「…ついてこい。これだけは言っておくが、響は深刻な状態だ」

 

星矢「深刻な状態?」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 星矢達はメディカルルームに来た。

 

星矢「入るぞ」

 

未来「…響、クリスと星矢さんとマリアさんだよ?」

 

響「え…あ……ほんとだ…」

 

 メディカルルームに来た星矢達は病人のように青ざめ、やつれて衰弱している響の姿に衝撃を受けた。

 

マリア「(どういう事…?)」

 

クリス「(まるで病人じゃねーか…)」

 

響「お帰り、いつ帰ってきたの…?」

 

星矢「ついさっきだ」

 

響「よかった…3人とも無事で…」

 

星矢「へばるわけにはいかねえからな」

 

クリス「帰ってきたと思ったら出撃なんてな。ノイズも少しは空気読めってんだ、ったく…」

 

響「ごめんね…私が、こんなだから…」

 

星矢「変な気は使うなよ、響。今はゆっくり休むんだ」

 

響「うん…」

 

 響の衰弱にクリスの苛立ちは溜まっていく一方だった。

 

クリス「何とかならねーのかよ!」

 

エルフナイン「すみません、僕が不甲斐ないばかりに…」

 

紫龍「クリス、ここで苛立っても何も始まりはしない」

 

切歌「エルフナインは寝る間も惜しんで毎日必死に原因を調べているのデスよ」

 

調「うん…。この状況は誰のせいでもないもの」

 

星矢「けどよ…、瞬は元気になったのに響の方は何とかならねえのかよ!」

 

 クリス程ではないにしろ、星矢も響の衰弱にやるせない気持ちであった。

 

沙織「星矢…」

 

エルフナイン「先程もお伝えしたように、響さんの不調の原因はわかりません…。ただ、ずっと悪夢を見続けている事で、心身ともにかなりの衰弱が見られます」

 

マリア「ええ、さっき会って来たわ。いつからあんなになったの?」

 

エルフナイン「それが、衰弱にも波があるのか、急に悪化する事もあるみたいで…。一昨日まではそこまでではなかったのですが、昨日、一気に症状が悪化して…」

 

星矢「波がある?その悪夢ってのは…」

 

未来「響、寝ている間中、『私は独りだ…』とか『どうせ誰も助けてくれない』って、ずっと呟いているんです」

 

マリア「その言葉…」

 

星矢「まるで、向こうの瞬や響の言ってたのと同じだ!」

 

未来「向こうの瞬や響って…、向こうにも響と瞬さんがいるの?」

 

クリス「ああ。向こうの瞬の事は星矢からの話では結局はこっちと変わらなかったけど、向こうのあいつはこっちのと性格が真逆だけどな。…ちょうどこの前のカルマノイズとの戦いの時も、『どうせみんな独り』とかなんとかって言ってたような」

 

未来「それ、詳しい話を聞かせて!お願い!」

 

クリス「え?お、おう…」

 

 未来の態度に押されてクリスは並行世界の響の事を話した。そして、未来は星矢達と共に響がいる部屋へ向かっていた。

 

未来「向こうの瞬さんもうなされていた時の瞬さんと同じ事を言ってたんですか?」

 

星矢「ああ。瞬の悪夢はデスクイーン島で一輝の師匠にボコボコにされてたものなんだが、向こうの瞬はデスクイーン島で修業してたんだ」

 

瞬「向こうの僕は兄さんが行ったデスクイーン島で修業していたなんて…」

 

紫龍「これは単なる偶然とは思えないな…。向こうの瞬が味わった生き地獄をこっちの瞬が悪夢として見るのは」

 

星矢「それで、俺は瞬とぶつかり合って改心させたんだ。と言っても、おいしい所は一輝に取られたけどな。ところで瞬、いつぐらいから元気になったんだ?」

 

瞬「星矢達が帰ってくる割と前かな。急に悪夢を見なくなって気分もすっきりしたんだ」

 

星矢「おい、それって…俺と一輝が瞬を改心させたのと同じぐらいじゃねえか!」

 

 その事実に一同は驚いた。

 

紫龍「もしかすると瞬の不調の原因は向こうの瞬にあったんじゃないのか!?」

 

星矢「そんな事って…」

 

氷河「俺も瞬の回復と向こうの瞬の改心のタイミングの重なり方は偶然とは思えない」

 

瞬「当事者の僕も偶然じゃないと思う」

 

未来「じゃあ、響の方も…」

 

 星矢達は響の様子を見に来た。

 

未来「(よかった。今日は昨日ほどうなされてないみたい…。でも、これ以上衰弱が進んだら…、本当に響の身体がもたなくなっちゃう…。星矢さん達から聞いた、もう1人の響の話…。別の世界があるだなんて、すぐには信じられなかったけど…。でも、響と同じ不調を抱えた瞬さんが向こうの瞬さんの改心と同じタイミングで元気になったのなら、きっと、向こうの響がこっちの響の衰弱に関係している…。今はそうとしか思えない)」

 

 今までにないほどの響の命の危機に、未来はどうすればいいのか悩んでいた。

 

未来「(響のために、今の私ができる事って、何だろう…?)」

 

 響の衰弱に未来の抑え込めないほどの感情が爆発寸前になっていた。

 

未来「星矢さん、沙織さんと一緒にいいですか?」

 

星矢「ああ、いいけど…」

 

 

 

 

 未来は星矢や沙織と共にS.O.N.Gの潜水艦が停泊している港に来た。

 

沙織「どうしたのですか?未来さん」

 

未来「星矢さん…沙織さん…私、響の衰弱が進行していくのを黙って見てる事しかできない事に耐えられないんです!」

 

 響が衰弱していくのを見ている事しかできない未来の抑えきれない感情が爆発したのであった。

 

星矢「未来…」

 

未来「響の衰弱が進めば死んでしまうかもしれないのに、私は何もできないのが辛いんです!一度は戦う力と決別したのに、またその力が欲しいと思うようになって…。でも、修業に数年必要な聖闘士にはすぐになれないし、神獣鏡ももうない!私、私…」

 

 何もできない事に未来は涙を流し、本音を星矢と沙織に打ち明けたのであった。

 

星矢「何もできなくて悔しいのは俺も同じだよ、未来。俺は戦う力があるのに、向こうの響の支えになってあげられない。せめて、向こうの瞬の特効薬となった一輝のように、向こうにも未来がいてくれたらな…」

 

 涙を流す未来を沙織は抱き締めて慰めたのであった。そして、星矢の『向こうにも未来がいてくれたら』と言った事と未来の『神獣鏡ももうない』という言葉に沙織はある事が閃いたのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 各自帰る中、沙織はその事を弦十郎とエルフナインに打ち明けた。

 

弦十郎「何っ!?それを沙織お嬢様はやるつもりですか!?」

 

沙織「今はもうこれしか方法がありません」

 

エルフナイン「しかし、それに必要な例のものは」

 

沙織「それならこの世界になくても、並行世界にあるかもしれないではないですか。例え今回、繋がった世界になくても、奏さんがいる世界にもあるかも知れないのです」

 

エルフナイン「わかりました。それに、星矢さんの話と合わせて響さんの衰弱の原因もようやく判明しました」

 

沙織「では、また明日」

 

 沙織は自宅へ帰った。

 

 

 

城戸邸

 

 そして翌日…。

 

星矢「沙織さん、響を救う方法が思いついただって!?」

 

沙織「はい。これも、星矢の思いがけない発言のお陰です。向こうの響さんに効く特効薬を届ければいいのですから」

 

瞬「その特効薬って…?」

 

沙織「あなた達もよく知っていますよ」

 

氷河「それって…」

 

紫龍「もしかすると…!」

 

 向こうの響によく効く特効薬というのは、星矢達には理解できた。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 装者一同は朝の訓練に来ていたが、呼び出しがかかって急いで駆け付けた。

 

弦十郎「お前達…早いな」

 

クリス「そんな事より、何かわかったのか!」

 

翼「そうです。話とやらを聞かせてください!」

 

弦十郎「まあ、そう急かすな。話は未来君が着いてからにさせてくれ。じきに来るはずだ」

 

 そして、星矢達と共に未来が来た。

 

未来「お待たせしました」

 

弦十郎「いや、それ程でもないさ」

 

沙織「それでは始めましょうか。エルフナイン、頼みます」

 

エルフナイン「はい。星矢さんの話と瞬さんの回復で、ようやく響さんと瞬さんの不調の原因がわかったかも知れません」

 

未来「本当なの?」

 

エルフナイン「まだ科学的根拠がなく、確証とまではいきませんが、恐らくは」

 

マリア「聞かせてもらえるかしら、その仮説を」

 

エルフナイン「今回の響さんと瞬さんの不調の原因は、響さんと瞬さんの精神が並行世界の響さんと瞬さんの精神と同調してしまった事にあると思います」

 

紫龍「(やはり、瞬の回復と向こうの瞬の改心の重なり方は偶然ではなかったのか…!)」

 

マリア「同調って…どういう事?」

 

エルフナイン「つまり、並行世界側の響さんと瞬さんの持つ負の感情などがこちらの響さんと瞬さんへと流れ込み、それが響さんと瞬さんを苦しめているんです」

 

クリス「待てよ。向こうにいたのはあのバカと瞬だけじゃねーぞ。なのにどうして、あいつらだけ…」

 

瞬「エルフナインの仮説が正しいなら、兄さんも同調してるよ。アンドロメダ島で修業している夢を見たって言ってたし」

 

クリス「それでも、あいつらだけが苦しんだっていうのが納得できねえんだよ」

 

エルフナイン「それは恐らく、2人の響さんと2人の瞬さんの精神性の問題なんです。」

 

氷河「精神性の問題だと?」

 

エルフナイン「こちらの響さんと瞬さんは正の感情が強く、対して向こうの響さんと瞬さんは負の感情が強い。そうですね?」

 

星矢「ああ。確かに、向こうの響と改心する前の向こうの瞬はこっちの響と瞬とは真逆といってもいいほどだ」

 

エルフナイン「共鳴しあう双方の間に発生した精神ポテンシャルの差。この落差のために、どちらも一方通行に近い形で相手の感情が流れ込んでいるようなんです。正の感情は悪いものではないので、向こうの響さんと瞬さんへの影響はほぼ皆無、もしくは自覚がない状態なのでしょうが…、負の感情を急激に受け取ってしまったこちらの響さんと瞬さんは、それが心身への不調へと繋がってしまっているのでしょう。他の人にそういった影響がほとんどないのは、双方が近い精神性を持つからではないでしょうか。例えば、向こうの一輝さんはどうでしたか?」

 

マリア「ええ、そうね…。一時期憎しみに囚われていた時期があってもなくても、弟想いや群れるのが嫌いとかは同じだったわ」

 

エルフナイン「並行世界とは本来、同じような歴史を同じような人が歩むものなんです。小さな違いはありますが、それこそ、その人が本来持つ精神性まで変わってしまうような事はまれです。今回はそれが悪い方に働き、さらにカルマノイズから攻撃を受けた事で大きな負荷がかかってしまったのではないかと。カルマ化したノイズはそういった負の感情を強烈なまでに増幅する呪いを持っています。向こうでカルマ化したノイズと、向こうの響さんが対峙する事でその影響がより大きくなったと考えられます」

 

翼「だが、瞬は軽くで済んだが…」

 

エルフナイン「瞬さんの不調が響さんのようにならずに済んだのは、向こうの瞬さんがカルマノイズと戦わなかった事と、星矢さんと向こうの一輝さんの活躍によって改心し、精神が安定した事で負の感情が流れ込むのが止まった事によって軽くで済んだのでしょう」

 

瞬「星矢と向こうの兄さんによって僕も向こうの僕も救われたんだね…」

 

未来「響はどうすれば…」

 

エルフナイン「カギは…恐らく、未来さんです」

 

未来「私…?」

 

 そんな折、警報が鳴った。

 

クリス「またかよ!いつもいつも肝心な時に」

 

紫龍「敵はこちらを待ってくれん。この場は俺達に任せて、お前達は体力を温存しろ」

 

 紫龍と氷河と瞬は出撃したのであった。

 

マリア「紫龍達が出撃したから、話の続きを聞かせてちょうだい」

 

 話を聞いた後、星矢はマリアとクリスを連れて並行世界へ向かった。

 

星矢「それじゃ、行ってくる」

 

未来「うん…お願いします、星矢さん。クリスとマリアさんも…」

 

マリア「任せておきなさい」

 

 

 

回想

 

 それは、紫龍達が出撃した後の事だった。

 

エルフナイン「並行世界の瞬さんの精神の安定によってこちらの瞬さんが回復したのであれば、同じように並行世界の響さんの精神が安定すればこちらへの影響はなくなっていくはずです。その鍵となるのは…恐らく、未来さんでしょう」

 

未来「私が…?」

 

エルフナイン「ええ。響さんにとって、未来さんは欠かせない存在ですから。ただ、一輝さんと違って向こうの世界に未来さんがいるのかどうか、その状況がわからないようですし…」

 

クリス「ああ、少なくとも向こうの二課は把握してなかった」

 

エルフナイン「もし、見つけ出しても事情を一から伝えて協力を得る事は非常に困難を要する事が予測されます」

 

マリア「それじゃあ、どうしようもないって事?」

 

沙織「いいえ、賭けに近いですが一つだけ方法があります」

 

未来「沙織さん、その方法を教えて!」

 

沙織「その前に、さっきも言いましたがその方法は賭けをするようなものです。そして、危険も伴います。それでもいいのですか?」

 

未来「はい!」

 

 未来の力強い視線に沙織は話す事にした。

 

沙織「それは未来さん、あなたも星矢達と一緒に向こうの世界へ渡ってもらう事です」

 

未来「私が…?」

 

クリス「なっ!?いくらなんでも、そりゃ言った通り危険すぎるだろ!」

 

沙織「クリスさんの言う通りです。ですが、それ以外に方法はありません」

 

翼「待て、ギャラルホルンを通過できるのは装者だけではないのか?小日向は装者ではない。それに、賭けというのは」

 

沙織「皆さん、未来さんはかつて一時的ではありましたが、ギアを纏った事があります。その事をお忘れですか?」

 

 その言葉に一同はその事実を思い出した。

 

未来「神獣鏡…」

 

エルフナイン「はい、そうです」

 

切歌「けど、あれはあの時分解されたのデスよ?」

 

沙織「確かに、こちらの世界のものはそうです」

 

調「もしかして…」

 

エルフナイン「はい。こちらの世界にはなくても、向こうの世界になら、まだあるかも知れません」

 

沙織「例え向こうの世界にもなかったとしても、奏さんのいる世界にもまだある可能性も残されています」

 

翼「それが、賭けをするようなものといった理由なのか…」

 

 

 

クリス「心配すんな。必ず神獣鏡を見つけてくる」

 

マリア「あなたはいつでも向こうの世界に行けるように、体調を整えて待ってなさい」

 

未来「…はい。わかりました」

 

弦十郎「カルマ化したノイズに対抗するために、二つの世界への対応を考えても、戦力の増強と向こうの装者と聖闘士の協力は不可欠だ。難しい任務だとは思うが、なんとかやり遂げてくれ!」

 

星矢「ああ、任しとけ!」

 

マリア「すぐに朗報を届けてみせるわ」

 

 3人はゲートに飛び込んだ。

 

未来「(お願い、3人とも…。私に響を助ける力を…)」

 

 未来は響の所へ向かった。弦十郎と沙織の元に麻森博士が来たのであった。

 

弦十郎「麻森博士!」

 

麻森「沙織お嬢様に頼まれてやってきました」

 

弦十郎「麻森博士、沙織お嬢様は未来を並行世界へ連れて行くというのは賭けをやるようなものと言っていましたが…」

 

麻森「それは至って単純です。あるかどうかわからない神獣鏡を見つけ出し、未来君が神獣鏡を纏えるかどうかが賭けも同然なんです。例えるなら、数億の宝くじの一等を2回連続で当てるようなものです」

 

弦十郎「宝くじの一等を2回連続で…」

 

麻森「向こうには神獣鏡があるかどうかわからない上、ウェル博士の残したデータにある未来君の適合係数では、無茶な処置なしで纏えるかどうかもわからないんです」

 

弦十郎「まさに、賭けともいうべきか…」

 

麻森「まだ確証には至ってませんが、適合には『愛』が重要であるというのがウェル博士の残したデータにあります。ですが…適合できるかどうかは運を天に任せる他、ないでしょう…」

 

 了子亡き後の櫻井理論の第一人者である麻森の話した現実はまさに『賭け』をせざるを得ないものであった。未来は帰ってきた紫龍達や翼達と共に響の所に来ていた。

 

翼「立花の容態はどうだ?」

 

未来「正直言って、あまりよくありません。一日の大半を眠って過ごしている状態ですし。なにより…」

 

 響は未だにうなされていた。

 

切歌「相変わらずひどくうなされてるデスね…」

 

調「苦しそう…」

 

未来「響…ほら、みんないるよ?だから、大丈夫…。お願い、翼さん、紫龍さん…。そっちの手、握ってあげてもらえますか?」

 

翼「わかった、こうか?」

 

 未来は響の右手を、翼と紫龍は左手を握った。

 

未来「ありがとうございます。こうすると、少しだけ響の表情が和らぐんです…」

 

 未来が言った通り、響の表情が和らいだ。

 

未来「ほら、ね?」

 

切歌「それならあたし達の握るデス!」

 

調「うん…私達の温もりが、少しでも響さんの心に伝わるなら…」

 

氷河「敵が来なければ一日中繋ごう」

 

未来「ありがとう、みんな…」

 

 そんな雰囲気を壊すようにノイズ警報が鳴った。

 

切歌「ゲゲゲっ!全くどうしてこんな時ばかり現れるデスか!?」

 

翼「次は私達が出よう」

 

未来「響は私と紫龍さん達が見てるから。みんな、お願いします」

 

翼「ああ、すぐに倒して戻ってくる」

 

調「それまでの間、響さんの事、お願いします」

 

瞬「わかったよ」

 

 翼達は出撃したのであった。

 

 

 

道路

 

 響の衰弱が命に係わるほどになっている上にノイズまで来たため、切歌と調は殺気立っていた。

 

切歌「この!木っ端微塵にされたいデスか!」

 

 切歌はノイズを斬った。

 

調「ノイズはどんな倒し方しても最後は炭素化で木っ端微塵になるよ、切ちゃん…。でも…響さんが大変な時に現れた事、許せないのは…」

 

 調もヨーヨーでノイズを斬った。

 

調「私も同じだよ」

 

切歌「響さんがいないからって、ノイズなんかに苦戦してなるものかデス!」

 

調「うん。マリアやクリス先輩に星矢さんが頑張ってるんだもの」

 

翼「その通りだ!私達がノイズ如きに後れを取っていては、立花にも無用の心配をかけてしまうからな!」

 

 2人を奮い立たせ、翼はノイズを次々と切り捨てていった。

 

翼「もはや残敵はわずかだ。2人共、一気阿成に平らげるぞ!」

 

 残ったノイズ達を倒していったのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 そして、翼達がノイズと戦っている間、未来は紫龍達と共に響の傍にいた。

 

響「あ…未来…」

 

未来「おはよう、響」

 

響「もしかして、ずっと傍で、こうして…?」

 

紫龍「ずっとではないが、大体の時間は傍にいる」

 

響「ごめんね…、紫龍さん達も…」

 

未来「もう、ごめんはなしだよ」

 

響「うん、わかった。ごめん…あっ」

 

未来「ふふ、もう、言ってる傍から」

 

響「はは…ほんと、私ってばおかしいね…」

 

未来「あのね、響…。ずっとこうしてついていてあげたいんだけど、行かなくちゃいけない所ができたの」

 

響「行くって…どこへ…」

 

未来「ギャラルホルンを通って、並行世界へ」

 

響「な、なんで!?未来がどうして並行世界なんかに?」

 

未来「落ち着いて聞いて」

 

響「う、うん…」

 

未来「響の具合が悪くなった原因が並行世界にあるんだって。並行世界にいる、もう1人の響の心が…響の中に流れ込んで苦しめてるの。だから、私…響を助けに行きたいの。そして、向こうの世界の響も…」

 

響「とめても…」

 

未来「…うん。もう決めたんだ」

 

響「…だよ、ね…。あのね、未来…お願いがあるんだ」

 

未来「何?」

 

響「あの子…並行世界の私なんだけど、多分、ずっと真っ暗な所で独りっきりで、辛い思いを抱え込んでるんだ…。誰も助けてくれないから、誰も信じれない、どんなに悲しくても言えない、そんな気持ちを感じるんだ…。だから…星矢さんと一緒に助けてあげてほしい。私は1人じゃないって、一番辛い時に私に教えてくれたのは、未来だから…。何度も暗い夜から私を助けてくれたのは、未来だから…」

 

未来「うん…。でも、その夜を終わらせてくれたのは私以外にも星矢さんと沙織さんもだよ」

 

響「そうだね…」

 

未来「でもね、響。私だって、何度も何度も響に助けられてきたんだよ?私達、ずっとそうして一緒に生きてきたんじゃない。だから、もう一回、私の番。響の事、私に助けさせて?」

 

響「うん…ありがとう、未来。待ってるから…。だから、絶対に、無茶はしないでね?」

 

未来「ふふ…いつもと反対だね」

 

響「うん、本当だ。反対だね…。私、未来をいつもこんな気持ちにさせてたんだね」

 

未来「私の気持ちがわかったら、次からはもう少し無茶は控えてね?」

 

響「うん…できるだけ頑張ってみる」

 

 

 

公園(並行世界)

 

 星矢達は並行世界に来た。

 

マリア「星矢、エルフナインは向こうの響には正の感情が流れ込むのは無自覚とか言ってたけど、実際は割と並行世界の響にも影響が出ていると思わない?」

 

星矢「確かにそうだな。俺達の世界の響は俺と沙織さんに助けられたというのが、何年経っても忘れられない思い出となっているからな」

 

クリス「それに、ここの瞬の経験があたし達の世界の瞬の悪夢になっているのなら、こっちのあいつも星矢に助けられた夢を見てるんじゃないか?」

 

マリア「そう考えるのが妥当よ。何より、この世界の響は初めて会った星矢にあんなに驚いた表情をしていたもの。未来ほどじゃないけど、星矢もあの子を救うカギになるわ」

 

星矢「流石に未来には及ばねえけど、そうかもな。だったら、すぐに神獣鏡を探して未来に届けるぞ!」

 

 星矢達は二課本部へ向かったのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は瞬と響の不調の原因が明らかになるのと同時に、星矢達が再び並行世界へ渡って並行世界にある神獣鏡を取りに行くのを描きました。
今回の翳り裂く閃光編で瞬も響と同じ不調に襲われる事にしたのは、星矢達青銅一軍も話に絡めたかったのと、前の話でも描いた一輝と瞬の修行地が逆になり、守護星座まで逆になってしまったら、というのを描きたかったからです。
そして、瞬の回復という形で響の不調の原因がわかる流れとなっております。また、未来が自分の無力さを星矢と沙織に打ち明けるというもの入れています。
次の話で未来は再びギアを纏います。また、ギャグシーンに戦姫絶唱しないシンフォギアのネタも入れます。

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