時女の集落
九頭蛇閃を超える速度の抜刀術で遂に静香たちは般若武者に1発打ち込み、勝利したのであった。
調「般若武者に…勝った……!」
ちはる「凄い…凄いよ、静香ちゃん!翼さん!今まで敵わなかった般若武者を一撃で吹っ飛ばしたなんて!」
翼「これも、清十郎さんの秘訣のお陰だ…(だが、妙だ。あの時、私と時女の斬撃は確かに般若武者を捉えたはず。なのに、何かに阻まれたような感じがして、奴を押し出してしまった。一体、何が起こったんだ…?)」
抜刀術を般若武者に叩き込んだ際、ある違和感を翼は感じていた。ところが、静香は倒れてしまい、変身も解除された。それと同時に雨も降り出した。
ちはる「静香ちゃん!?」
翼「いかん!般若武者に斬られた傷の出血が激しいぞ!」
ちはる「ど、どうしよう……!」
般若武者に斬られた上、九頭蛇閃を超える速さの抜刀術の反動でさらに激しく静香は出血していて、ちはるは気が動転していた。
調「せめて、こういった時にブラックジャックかパルティータさんがいてくれたら…」
翼「ないものねだりをしても仕方あるまい。誰か、医療に携わっている人がいれば…」
ちはる「うぅ……おかあさーーーん!!」
翼「月読は集落の人に時女の事を伝えてくれ!」
調「わかりました!」
調はすぐに集落へ向かい、事情を説明した。
村人「何だって!?」
調「出血がひどいから、誰か医療に携わっている人がいたらと思って…」
ちはるの母「それだったわ、私が行くわ。調ちゃん、すぐに私達を連れて行って!」
調「わかりました!」
調の案内でちはるの母親と村人たちが来た。
ちはるの母「はぁ、はぁ、はぁ…」
村人A「下手に動かしちゃいかん!」
村人B「そこ、空き家だろ!扉一枚剥がして担架にしろ!」
ちはるの母「ちはる…」
ちはる「お母さん、静香ちゃんが!」
静香の母「静香!」
静香の母親も来たのであった。
ちはるの母「!?…(知人の娘が傷ついて…私は何をほっとしているのだろう…)」
翼「月読、この場は大人の人達に任せよう」
調「どうしてですか?」
翼「奴に聞きたい事がある」
調「聞きたい事?」
その場を大人達に任せ、翼と調は般若武者が吹っ飛ばされた場所に来た。そこには般若武者が待っていた。
調「無傷だなんて…」
翼「もう隠す必要はありませんよ。そろそろ顔を見せたらどうですか、七井さん」
翼に指摘された般若武者は般若の面をとり、素顔を見せた。その素顔は翼が言った通り、清十郎であった。
清十郎「よく般若武者の正体が俺だと気付けたな」
翼「その理由は至って簡単です。まず、あなたがいるときには般若武者はおらず、般若武者がいるときはあなたがいない事。そして何より、決定打となったのは九頭蛇閃とあなたの太刀筋です。九頭蛇閃を始めとした静香の母様が扱えない技を扱える時女一心流の使い手はあなただけなのですから」
清十郎「ご名答。といっても、勘のいい奴ならすぐに気付けるように振る舞っていたのだがな」
調「清十郎さんはどうして般若の面を被って私達を襲ったりしていたのですか?」
清十郎「一言で言えば、お前達を鍛え上げ、翼と静香に最終奥義を伝授させるためだ」
翼「般若武者として振る舞っていた時の言葉が本当だったのはわかりましたが、私達に最終奥義を伝授するのであれば、正体を隠さなくてもよかったのではないでしょうか?」
清十郎「今日はもう遅いから詳しい説明は明日にするけど、手短に言う。ああでもしなければ、最終奥義の習得なんてできやしないからさ」
調「ああしないと、時女一心流の最終奥義が習得できない…?」
翼「死の恐怖を乗り越えさせるためとはいえ、時女にあれほどの斬り傷を負わせたのは…」
清十郎「傷自体は斬る際に急所を外し、浅くしておいた。あれほど出血したのは、宝石がかなり濁った状態で最終奥義を使った反動でああなったのさ」
調「最終奥義の反動?」
清十郎「それも詳しい事は明日、話す。今日はもう寝よう」
色々と知りたい事は次の日に話す事にし、翼達は寝る事にした。
事務所
翌日の朝、覇万は秘書や支援者である元ヤクザの面々と共に事務所で色々と整理をしていた。
秘書「覇万様、例の取引をしていた議員から大量の賠償金を得る事に成功しましたね」
覇万「そうだな。ま、賠償金の引き渡しや様々な疑惑を認めるのはおろか、議員や閣僚の職をやめるのにさえ応じず、逆ギレして私に襲い掛かった前の総理の倍阿三晋やその妻の麻恵を始めとした愚か者には制裁として、元ヤクザの支援者たちによるタコ殴りで徹底的に痛めつけるなり、脊椎を粉々にして寝たきりなどの再起不能の状態にするなりし、事実上の政界からの追放を行った。特に見苦しかった前の総理の三晋とその妻の麻恵については顔さえも原型を留めないほど痛めつける他にも私財を全て奪い取り、無一文にしてやったがな」
秘書「そして、多くの一般人に暴言を吐かれながら路頭に迷って2人とも死んだのはまさしく因果応報。全ては逆ギレして先に覇万様に手を出した愚かな老人共が悪いのです。我々がヤクザだった時に覇万様と旦那様に叩きのめされ、『通報しない代わりに地域に貢献せよ』というお慈悲を頂いて改心し、地域支援のために汗水流して頑張っている我々を害悪な犯罪者上がりなどと揶揄し、覇万様を冷酷なマフィアのボスだと言い放っていたのはまさしく侮辱の極み!慈悲の心に溢れている覇万様に比べて、自分達の事しか考えていない無能な老人共はまさしく日本のガン細胞だ!そんなガン細胞に生きる価値など全くない!」
覇万「ガン細胞というのは同意見だが、老人共の戯言は言わせておけ。私が追及し、愚かな老人共が逆ギレして手を出してきたのであれば、再起不能にしてやればいい。そうすれば、殺すよりも罪の軽い過剰防衛程度で済む。国会や官僚の新陳代謝を促したり、例の取引の落とし前をつけるには非合法的な手段でなければもうダメなのだからな」
秘書「あなたの代わりに罪を犯す事自体、我々は何も恥じておりません!悪だとわかって悪事を行う連中より、悪だとわからずに悪事を行う連中の方が愚かですから」
覇万「そうだな。それに、さっき清十郎から連絡が入った。静香のソウルジェムがかなり濁ってて、裳着の儀式をやるのは恐らく、今日辺りらしい」
秘書「何ですって!?でしたら、すぐに我々も時女の集落に乗り込みましょう!」
覇万「急ぐ時でも焦り過ぎは禁物だ。それに、頼もしい助っ人も連れてきたのだからな…」
覇万の言う頼もしい助っ人とは、弦十郎達の事であった。
秘書「そう言えば、そうでしたね。あの子の両親も並行世界の八紘の娘の仲間が護衛についているので大丈夫です。お行きましょう!」
元ヤクザ「野郎共、俺達の命に代えても姉御や一般人をお守りするぞ!」
元ヤクザ達「おーーっ!!」
支度を整え、覇万は秘書や元ヤクザ達と共に時女の集落へ向かった。
時女の集落
翼達は静香の容態を確認しに来た。
翼「それで、時女の容態はどうなんですか?」
ちはるの母「斬り傷自体は浅いんだけど、それがさらに開いたって感じだったわ。傷を負った状態でとても体に負担のかかる戦い方をしたんじゃないかしら?」
それは事実であり、翼達は何とも言えなかった。
調「(あの技の反動がこれほどまでに恐ろしいものだなんて…)」
翼「(私の場合はシンフォギアによって衝撃が吸収されたお陰で負担がかなり軽くなったが、生身の状態であの技を放つのは厳禁のようだな…)」
そんな場へ神子柴が来た。
神子柴「じゃが、もう大丈夫じゃ。会いにいっておやり」
翼「では」
静香の家
翼達は静香に会いに行ったが、静香の母親とちはるの母親はある書物を見ていた。
ちはるの母「何を見てるの?」
静香の母「時女一心流の書物よ。清十郎さんは私さえも知らない時女一心流の技を使えるから、あれは私達が知らない技なのか、清十郎さんが編み出した技なのか気になってね」
ちはるの母「私達の知らない技…」
書物を漁っていると、静香の母親はあるものを見つけた。
静香の母「九頭蛇閃…?時女一心流……裏奥義ですって!?」
ちはるの母「裏奥義?」
静香の母「私も初めて知ったわ。時女一心流の技を学んで免許皆伝になったと思っていたけど、隠された奥義があったなんて!」
ちはるの母「どのような技なの?」
静香の母「それが技の名前が記されているだけで、どのような技なのかわからないのよ。時女一心流の技がどのようなものか記された書物があるのに、裏奥義が記された書物は全くないなんて…」
ちはるの母「どうなっているのかしら…?」
裏奥義に関する書物が全くない事に2人は疑問に思った。一方、翼達は静香に会いに行っていた。
ちはる「静香ちゃん!」
静香「ちゃる!それに翼さん達も!」
翼「大怪我にならずに済んだな。お前の無事を聞いて安心した」
静香「いえ、清十郎さんが般若武者に一撃入れるための秘訣が身体にすごい負担がくるとは思ったなかったから…。でも、もう動けるようになったよ」
清十郎「だが、凄い技を会得できたのは事実だ。凄かっただろう?」
ちはる「傍で見ていた私も凄いと思ったよ!般若武者の九頭蛇閃をかいくぐって一撃入れられたんだから!」
静香「この抜刀術、悪鬼との戦いにも使えそうだわ。いつでも出せるように、…いたたたっ」
調「また痛むんだ」
清十郎「まだ痛むのか。だったら、無理すんじゃねえぞ」
娘達を母親たちは見ていた。
静香の母「広江さん、ありがとうございます。丁寧に手当てをしてくださって…」
ちはるの母「そんな、私はできる事をやろうと思っただけですから…。でも、思ったよりひどい怪我じゃなくて驚きました。斬り傷自体は浅く、身体にすごく負担のかかる戦い方で傷がさらに開いた感じなので」
静香の母「悪鬼と戦う巫はすごく頑丈ですから」
ちはる「じゃあ、何日か経ってもっと元気になったらmた、一緒に遊べる?もう少し悪鬼と戦える?」
静香「ちゃる…」
しかし、静香たちは黙りこくっていた。
調「どうしたんですか…?」
神子柴「お前さん達を来させたのはな、最後に挨拶をさせるためじゃよ」
ちはる「最後!?」
静香「この怪我を治すのにかなり力を消費したみたいで。…見ればわかるわ」
静香はほとんど黒く濁っている宝石を見せた。
ちはる「宝石がほとんど黒くなってる…。それじゃあ、静香ちゃん…。この集落を出て行くの?」
静香「…うん。ごめんね、もう少しだけ一緒にいられるかと思ったけど…ダメだった…」
翼「謝ったところで何も変わりはしない」
神子柴「とりあえず、時間もそこまで残されておらん。早々で申し訳ないがの、今日、裳着の儀式を行う」
ちはる「静香ちゃん…」
静香「大丈夫、また外で会おう、ちゃる!」
ちはる「うん、また会おう!あと、すなおちゃんも最後に挨拶しないと」
神子柴「あの子は間に合わないじゃろ」
ちはる「そんな…」
静香「だから、外で会おうってよろしく伝えておいて」
ちはる「……わかった」
ちはる達は外へ出た。その後、神子柴は舞人に視線で合図らしきものを送ったのであった。
森
翼達は時女の集落から離れ、ある場所にいた。
調「森の中で誰を待っているの?」
清十郎「頼もしい助っ人さ。俺は度々、スマホの電波が入る場所で覇万と連絡をとり、状況を伝え続けていたんだからな」
調「凄い…!」
翼「清十郎さん、あなたはとても時女一族に詳しいようですけど、その理由を聞かせてもらえないでしょうか?これは前々から思っていた事だったので…」
清十郎「どの道、お前達には話すつもりだった。ちょうどいい、俺がなぜ時女一心流を扱えるのか、時女に詳しい理由を教えるとしよう」
ちょうど森の中というのもあり、清十郎は自分がなぜ、時女一族に詳しいのかを教えた。
翼「裏奥義…。清十郎さんにそんな事が…!」
調「清十郎さんの家族はもう…」
清十郎「そんな事を考えても、家族を失った過去は変わらんのだからな。大切なのは、変える事ができる今と未来なんだ。そのために、俺は次の時代を担う子供達1人でも多く救うために、次の世代を摘もうとする愚かな老人を始めとした悪党を斬るために裏奥義の習得と鍛錬を行って力をつけ、過去のけじめをつけるために時女の集落に戻ってきたんだ」
翼「次の世代を摘もうとする老人を…斬った…?」
調「それって、目上の人を大事にしないのと同じじゃないですか!」
清十郎「言っておくが、俺は目上でも敬うのに値しなければ軽蔑するし、年下でも敬うのに値すればそうする。あと、俺の言う老人は自分達の事しか考えてないベテラン議員や官僚共の事だ。覇万の追及に逆ギレして先に手を出した愚かな老人たちには制裁として、俺や秘書たちが二度と政治に関われないように再起不能にするなり、そいつらの全財産を賠償金という形で奪い、福祉や医療政策の費用にしたりしてやった。あと、テロリスト共などは容赦なく殺したがな」
翼「なるほど、清十郎さんは一般市民の老人を大事にしないわけではないのか…」
調「だけど、容赦なくお金を奪ったり、人を殺した事があるなんて…」
清十郎「生憎、俺のモットーは弦やお前達のように『罪を憎んで人を憎まず』ではなく、『悪党を決して許さず』だ。あんなバカ老人共が金や権力を持ったり、テロリスト共の理不尽な行動自体が間違いなのだからな。俺のもう一つのモットー通りに子供は殺さないが、大人の悪人、特に老人相手なら容赦はしねえ!そいつらは死ぬか、無一文になって路頭を彷徨えばいい。だが、悪鬼の正体を考えれば、お前達や俺もある意味では既に子供を殺しているようなものなのかも知れんがな…」
調「私達も悪鬼はもう元に戻らないからと割り切ってはいるのですが、ある意味ではそうかも知れません…」
話をしていると、清十郎の刀が震え出した。
調「悪鬼ですか?」
清十郎「ああ。奴等の罠だという可能性もあるが、結界に人がいるかも知れん。人命尊重を最優先にし、敢えてそれに嵌ってやるとしよう」
翼「では、行きましょう!」
清十郎達は悪鬼の結界に入り込んだ。
魔女の結界
結界に入り込んだ清十郎達は中を進んでいると、何やら戦闘が繰り広げられているのを見つけた。
調「誰か、悪鬼の子分と戦ってますよ」
清十郎「あの戦いぶり、あいつらか!」
悪鬼の子分と戦っていたのは弦十郎達であった。
覇万「汚らわしい俗物共め!」
覇万や秘書、元ヤクザ達は悪鬼の子分相手に戦えており、弦十郎に至っては今まで通り、悪鬼を圧倒していた。
弦十郎「うおおおおおおっ!!」
弦十郎の拳をまともに受け、悪鬼は倒された。
森
悪鬼が倒された事で結界は崩れ落ちた。
翼「叔父様、どうしてここに?」
弦十郎「七井議員に頼まれてな」
調「覇万さんって、剣術を習ってたんだ…」
覇万「時女一心流免許皆伝となった夫に教えてもらったものでな。流石に夫には及ばないが、それでも普通の人間や悪鬼の子分程度であれば応戦できる」
翼「それより、何だかヤクザのような人達が…」
秘書「見ての通り、私達は元ヤクザだ。我々が地元で恐れられていたヤクザであった頃、治安を守るために立ち上がった覇万様に叩きのめされ、お慈悲をいただいて改心し、それ以降は覇万様の活動や地域清掃などといった慈善活動を行っているのだ!」
やたらとテンションが高く、覇万に心酔している秘書に翼と調はポカンとしていた。
調「(この秘書さん、見た目は美形男子だけど中身は普通じゃない…)」
秘書「よかったら、君達もこのフリーズドライ加工が施された薔薇を受け取らないか?」
翼「い、いえ…。結構です……」
秘書「そうか、ならば気が向いたら声をかけるといい」
会話をしている最中、清十郎は空模様を見ると、夕方が近くなっていた。
清十郎「もう夕方も近いか…。そろそろ戻らないと、取り返しがつかなくなっちまう!」
覇万「すまん、私達が悪鬼の結界に閉じ込められたのを助けるために」
清十郎「結界に閉じ込められているのが誰なのか、俺もわかんなかったからな。命は失ったら戻らないから、俺は復讐を第一に優先する気は全くない。急ぐぞ!」
一同は集落に戻る事にしたが、その際に清十郎はある場所へ視線を向けた後、翼達についていった。清十郎が視線を向けた先にはすなおがいたのであった。
時女の集落
その頃、ちはるは般若武者との戦った場へ来ていた。
ちはる「血、雨で流されてる…(今頃、静香ちゃんは成人になる儀式をしてるんだ…。笑顔で送り出すって、最後の挨拶は笑顔でできた…。なのに、どうしてこんなに喜べないんだろう…)」
悩んだちはるだったが…。
ちはる「等々力さん…この気持ちは何でしょうか…」
『僕は精神科医ではないからね、広江君の疑問には答えられないな』
ちはる「役立たず…。……ごめんなさい…(けど、気持ちには理由がある…。もしもそうなら…)私の素直な気持ちは、物足りないと言ってる…。私は静香ちゃんを見送りたいと思っている…」
しかし、本当は違った。
ちはる「違う…!ほんとは…(安心してないんだ…。この集落は何かにおうから…。翼さん達も怪しいと思っているようだし…)」
そんな中、ちはるは何かに気付いた。
ちはる「(静香ちゃんの力の反応…)少しだけ、遠くから見るだけでいいから…」
ちはるは反応を頼りに向かった。
ちはる「集落の反対側…。あの、神社がある方だ…。お願い…間に合って…。無事に旅立つところが見たい…。安心できないから…。ここは、においが充満して安心できないから…」
急ぐちはるであったが、急いでいると何かを見た。
ちはる「はぁ…はぁ…見つけた…」
視線の先に静香がいたのであった。
ちはる「静香ちゃん…、オババと何を話してるんだろう…」
気になるちはるだが、離れていてちはるの方からは聞き取れなかった。
ちはる「(なんか、様子が変…。これって本当に儀式…?ただ、喋ってるようにしか見えないんだけど…)」
話が聞こえなくても、ちはるは様子を察していた。
ちはる「(静香ちゃん…泣いてる…。におう、何か起きる…?わからない…何なの…)」
しかし、静香の様子が変わった。
ちはる「(持ち直した…?それだけ辛い儀式…?)」
だが、ちはるの悪い予感は的中した。
静香「神子柴ーーーー!!」
神子柴「すまんのぉ…」
そう言って神子柴は静香を川へ突き落した。
ちはる「静香ちゃーん!」
ちはるは変身して神子柴のところへ来た。
神子柴「!?広江の…」
ちはる「どうしてさ!」
ちはるの疑問に答えず、神子柴はちはるを川へ突き落した。神子柴が去った後、清十郎達が来た。
翼「遅かったか…!」
清十郎「いや、反応がある。まだ間に合うぞ!」
川に落とされたちはるは流れに押し流されていた。
ちはる「冷たい…息ができない…。すごい力で押し流されてる…。私は今、どこを向いてるんだろう…。上なの?下なの?右?左?グルグルグルグル揉みくちゃにされて、私は何をしてるんだろう…」
そんな中でも、ちはるは何をすべきかわかっていた。
ちはる「静香ちゃんを助けないと!どこ…静香ちゃん…、どこ…」
そう思っていると、何かを見つけた。
ちはる「これは、布…?柔らかい……」
布を見たちはるは手に取った。
ちはる「落ちる…」
さらに沈んだが、掴んだ布は静香の服であり、静香を見つけたのであった。
ちはる「(よかった、本当に静香ちゃんだった…)」
静香「(ちゃる…!?)」
ちはる「(静香ちゃんの宝石、真っ黒になってる…)」
ふと、ちはるは静香から巫になってからの初勝利の祝いとしたもらった悪鬼の魂魄の事を思い出し、取り出した。
ちはる「(よかった、まだ持ってて…)」
悪鬼の魂魄で静香の宝石の穢れをとったのであった。
静香「(ありがとう…ちはる…)!?」
ちはる「(静香ちゃん…?)!?」
2人が川の底を見ると、そこには人骨があった。
ちはる「(なに、これ…)」
静香「これは…巫よ……」
ちはる「(今、静香ちゃんの声が…。また、流される…)」
とんでもないものを見た2人はまた流されたのであった。
川辺
その後、2人はすなおに引き上げられた。
すなお「私にこんな事、させないでくださいよ…。ちゃる…あなたは厄介な力を身につけてしまった…。静香、あなたはちゃるを守ろうとしすぎた…。しょせんは伝聞です…。でも、こうしないと、私は…!」
???「そこまでにしてもらおうか、すなお」
声と共にすなおの首元に刀が突き付けられた。突き付けたのは清十郎であり、翼達も来ていた。
すなお「あなた達、いつの間に…?」
翼「七井さんの刀の反応を頼りに、川を下ってここまでやってきた」
清十郎「すなお、お前が俺達を監視し、隙あらば暗殺しようとしていたのはわかっていたぞ。それも、初日の段階でな」
これまでの自分の行動が既に清十郎達に見抜かれていた事にすなおは動揺した。
すなお「なぜ、それを…?」
翼「この集落に来た時からお前の行動はまるで私達を監視しているかのようで怪しくてな、お前の事は神子柴のスパイか何かではないかと思っていた」
調「でも、それを口にしたらすなおを刺激して何をするかわからなかったから、私達はずっと黙って接していた」
翼と調の指摘にすなおは抵抗は愚か、反論さえしなかった。もう抵抗しない様子である事を察した清十郎は刀を突き付けるのをやめ、鞘に収めた。
静香「…私も、水底の躯に」
すなお「え…?」
清十郎「どうやら2人は俺と同じく、水底でこの集落の真実の一端を見てしまったようだな」
すなお「真実…。清十郎さん、あなたは一体……?」
翼「土岐、お前は時女や広江と共に七井さんやこの集落の真実を知らなければならない」
覇万「今日はもう遅い。神子柴とその手の者達にこの2人が生きているのがわかる前に急いでこの場から離れるぞ。2人の意識が戻ったら、お前達に真実を話す。お前達は2人を担いでゆけ」
元ヤクザ「お安い御用です、姉御!」
ちはると静香は元ヤクザ達が抱え、一同は神子柴の手の者に見つかる前に急いでこの場から離れたのであった。
これで今回の話は終わりです。
今回は般若武者の正体が七井清十郎だと明らかになるのと、遂に神子柴が本性を現すのを描きました。
また、覇万が大きく関わる政治がらみの事も描かれていましたが、これは最近の国会議員のだらしなさをかなり批判的に描くのと共に、ある取引というのが後で明らかになる重大な謎であり、時女が国の暗部を担ってきた理由として挿入しました。
次の話は静香が何を聞かされたのかと、清十郎の過去が明らかになります。