セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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162話 結界に覆われた集落

 

 すなおの両親の護衛を星矢と紫龍に任せ、一同は時女の集落へ向かっていた。

 

翼「悪鬼の反応が強くなっているぞ!」

 

調「静香の推測は当たってたかも知れない…」

 

すなお「みなさん無事でしょうか…」

 

覇万「だからこそ、急いでいるのだろう!急がねば、助かる命も助からんぞ!」

 

すなお「元々悪鬼は人を食う存在です。想定から外れ過ぎた以上は…」

 

静香「まずは村の状況を確認しないと…」

 

清十郎「そうだな」

 

 

 

時女の集落

 

 一同は集落についた。

 

静香「人の気配がない…」

 

ちはる「うん…」

 

静香「この集落の事が外に漏れてしまう前に集落の人達を片付けた?」

 

翼「いや、そう考えるのはこの時点では早計であろう」

 

すなお「そうですね」

 

弦十郎「今は手分けして集落の状況がどうなっているのかを確かめるのが先だ」

 

ちはる「あと、私達を待ってたって事はないかな?」

 

すなお「考えられるとすれば…悪鬼にとって、巫を利用した食事は魅力的だから、ここで私達を葬って状況をリセットしようとしてる…」

 

ちはる「うん、私達が戻ってくる事は想定済みで…!」

 

静香「一部の関係者さえいなくなれば、悪鬼にとって問題がない…。それなら集落を残すためにみんなを生かす意味があるわね…」

 

ちはる「でも、考えたところで答えは出ないよね…」

 

静香「残念だけど、事実としてわかっているのは悪鬼が健在で、集落の人の安否がわからない事だけね…」

 

 そんな中、すなおの様子がおかしかった。

 

調「どうしたの?すなお」

 

すなお「いえ、ちょっと何だかモヤモヤとする事があって」

 

 すなおは少し考えていた。

 

すなお「(そういえば神子柴が…)」

 

 

 

回想

 

 それは、悪鬼の魂魄を取りに行くと言う名目で別行動し、監視していた時の事だった。

 

神子柴「しかし、本家の娘から聞いたがの、広江の娘はずいぶんと厄介な力を得たようじゃのぉ…」

 

すなお「はい…」

 

神子柴「土岐の娘よ…。本当はお主に頼るところじゃが、情も湧いては役に立たぬ。おまけに謎の般若武者まで出没しておって対処もできておらん。しょせんは小娘じゃの」

 

すなお「…でも。では、どうやって広江ちはるを消すんですか…」

 

神子柴「放っておいても、影が食いよるわ」

 

 

 

 思い出したすなおはどうすべきかがわかった。

 

すなお「みんな、影よ!」

 

 その言葉に清十郎はいち早く動き、ちはるの後ろにいた悪鬼の子分を串刺しにして倒してしまった。

 

調「影から悪鬼の子分が…!」

 

静香「すなおはよく影から悪鬼の子分が出てくる事に気付いたよね?」

 

すなお「神子柴が言ってたのを思い出したんです。影がちゃるを食うって。いち早く動けた清十郎さんもわかってたんですか?」

 

清十郎「ああ。俺も集落から逃げ出す際、影から出てくる子分に襲われたんだからな」

 

翼「神子柴が知っていたというという事は…」

 

すなお「集落の中心である以上、深く支配されてるようです…」

 

ちはる「それより、夜になる前に何とかした方がいいよね?」

 

弦十郎「それはそうだが、今の俺達には悪鬼の居場所はわからん…」

 

静香「まずはみんなの安否を確認しましょう。動いている間に、悪鬼の力を感知できるかも知れないわ」

 

ちはる「ん、そうだね」

 

覇万「では、私と弦十郎とすなおは神子柴の家に行く」

 

ちはる「危険じゃない…?」

 

弦十郎「安心しろ。俺もいる上に覇万は清十郎から時女一心流を習っていて、悪鬼の子分程度なら戦える」

 

秘書「では、無刃刀を!」

 

 覇万は秘書から無刃刀を受け取った。

 

調「それに、この人は悪鬼を素手で倒せる上、私達でも敵わないほど強いから心配はいらないよ」

 

すなお「まだ収穫できる情報があるかも知れませんし、集落の中心である彼女の家に悪鬼がいる可能性もあります」

 

清十郎「わかった。俺達は手分けして人々の安否を確かめる。3人とも、くれぐれも無理はするな」

 

すなお「はい」

 

弦十郎「さぁ、急いでいくぞ!」

 

 すなお達は神子柴の家に向かった。

 

静香「手分けする前に念話のしかたを教えるわ。私達巫が使える、心の声を届ける技術よ」

 

ちはる「あっ(滝つぼで聞こえた声はそういう事だったんだ)」

 

清十郎「よし、念話を覚えたら俺と静香と翼、ちはると調で分かれるぞ!」

 

翼「了解しました!」

 

秘書「我々団体行動で逃げ遅れた人達がいないか確かめるんだ!」

 

元ヤクザ「合点承知の助だ!」

 

 ちはるに念話のやり方を教えた後、清十郎と翼と静香のチームとちはると調のチームに分かれ、人がいないか確かめる事にした。

 

静香「私の故郷には悪鬼が巣くっている(自分で言ってみてなんだけど、わからなくなってくるわね…。今まで守ってきたしきたりも、日ノ本のために願った事も、悪鬼が巣くってるというだけで信用できるかわからなくなる…。私達が悪鬼になる事も、悪趣味な殺す方をするため…?そのために隠してきた…?ううん、この話そのものが、作り話かも知れない…。……今まで好きだったのに…好きだった自分の故郷が、全て偽物みたいに見える…。その偽者の世界で私は巫を食べる規則に縛られてた…)」

 

清十郎「悲観的になるな、静香!お前はここが大好きなんだろ!?」

 

静香「清十郎さん…」

 

翼「時女、お前は私と比べて幼少の頃から母様などといった理解者にとても恵まれているはずだ!例えしきたりなどが神子柴による偽りのものだったとしても、母様達と共に過ごした日々は嘘偽りのないものであるだろう!」

 

 翼に言われ、静香は悲観的な気持ちが少し吹き飛んだ。

 

静香「翼さん…(悲観的になっちゃダメ…。たとえ偽物の世界で生まれ育った私だとしても…、母様達の存在は本物だもの…。翼さんの言う通りだ)」

 

 気持ちが楽になったそんな時、明かりがついている家を見つけた。

 

静香「あの家…明かりが点いてる…!」

 

清十郎「行くぞ!」

 

 

 

 

 清十郎達は明かりの点いてる家に来た。

 

静香「誰かいる!?」

 

 そこには、住人達がいた。

 

住人A「おおっ、みんなやったぞ!」

 

住人B「うちの巫が帰ってきた!」

 

 静香が帰ってきた事に住人達は喜んだ。

 

住人C「お帰り、静香ちゃん」

 

住人D「ありがとう、よく戻ってきてくれたな…!裳着の後だったから、戻ってこないかと思ったぞ」

 

静香「えっと…、何かあったんじゃないかって、ちゃるとすなお達も一緒よ」

 

住人B「3人も?」

 

住人E「そういや、前から思ってたんだが、清十郎はどっかで見たような覚えが…」

 

清十郎「体格も変わっちまったからすぐにはわからんだろうが、俺は昴だ」

 

住人A「昴…?」

 

住人C「ああ、あの大君の息子さんの昴!事故で死んだって聞いたけど、生きていたのか!」

 

住人D「随分といい男になって帰ってきたわね…」

 

清十郎「再会を喜びたいところだが、今はその時じゃない」

 

翼「どうしてここに集まっているのですか?」

 

住人A「急に神子柴様がやってきたと思ったら、化け物が現れたからほとぼりが冷めるまで隠れろって」

 

静香「(私達が戻るのを察知して、村人を避難させた…?)」

 

翼「(やはり、私達を葬って口封じと元の状態に戻す目論見だな…!)」

 

住人D「静香ちゃん、どうしたの?」

 

静香「(だけど、みんなも子分とか…作り物)」

 

 静香の不安を清十郎は察していた。

 

清十郎「静香、この人達は紛れもない本物だ。不安になってると、住人達が心配するぞ」

 

静香「清十郎さん…」

 

住人D「さっき、本物とかって…」

 

清十郎「静香は自分の故郷がこんな様子になってるから、不安になってるのさ。俺の直感や守り刀には何の反応もないんだから、保証する。だから、安心しなよ」

 

 そう言って清十郎は静香の肩に手を置いた。

 

住人A「昴の奴、不安になってる静香ちゃんを励ますなんて。本当に一人前の大人になったな」

 

住人D「私達はあなた達を信じてる。昴が先に言ったけど、安心してちょうだい」

 

静香「(多分、本物…。そう思える……)大丈夫、ありがとうおばちゃん」

 

翼「時女、不安は解消されたようだな。では、悪鬼を倒しに行くぞ!」

 

静香「はい!」

 

住人B「こういう時は頼り切りで悪いけど、頑張ってくれよ!」

 

静香「もちろん。私達巫はこういう時のためにいるんだから!」

 

清十郎「そして、今回は巫だけでなく、俺や翼達といった巫以外で悪鬼に対抗できる人間もいるぞ」

 

静香「ちなみに集落の人は、全員ここに集まってる?緊急時だし、神社の大神殿に避難してるとかは」

 

住人D「いいえ、みんなここに集まってるはずよ」

 

静香「…じゃあ有事の際でも母様がいれば大丈夫かしら…」

 

住人C「確かに、本家がいれば俺達も安心だな」

 

清十郎「それと、心強い助っ人も連れてきた」

 

 清十郎の声と同意に元ヤクザ達が来た。

 

住人E「彼等は?」

 

翼「彼等は七井さんの奥さんの支援者である元ヤクザです」

 

秘書「あなた方の身は我々が命をかけてお守りせよとの命を受け、来ました!」

 

住人A「こりゃ、頼もしいな…」

 

静香「誰か母様を呼んできてくれる?」

 

住人B「いや、待て…。俺、本家の人間は見てないぞ」

 

 その言葉に一同は衝撃を受けた。

 

翼「誰も見てないというのか…?」

 

静香「あと、そう…ちはるのお母さんは!?」

 

住人D「あの、看護師をされてた方よね?」

 

静香「そう、私の手当をしてくれた!」

 

住人D「だが、見てない…」

 

清十郎「面倒な事になったな…」

 

秘書「旦那様、お二人は我々の仲間の半数も捜索に混ぜてください」

 

清十郎「わかった。だが、無理はするなよ」

 

静香「秘書さんと支援者さん達も…?」

 

住人A「柄は悪そうだけど、かなり優しい人達じゃないか」

 

秘書「柄が悪いのは元々ヤクザだったからだ。一刻も早く2人を探さねば!」

 

 

 

時女の集落

 

 翼達はちはるの母親と静香の母親の捜索に向かった。

 

静香「まさか、私とちゃるの親だけ避難してないなんて…、狙い撃ちされたとしか思えない…。でも、どうして…?」

 

翼「至って簡単だろう。神子柴は以前、口封じで七井さんの家族を皆殺しにしたから、それと同じではないのか?」

 

静香「可能性は高いわね…」

 

 すると、すなおからの念話が来た。

 

清十郎「どうした?」

 

静香「すなおからの念話です」

 

 静香を呼び出す前、すなお達は神子柴の家に迫っていた。

 

すなお「…(ここまで話が複雑になったのは私のせいかも知れない…。神子柴の許可もなく、巫になってしまったから…、誰かを殺さなくちゃいけない罰を受ける事に…)」

 

 

 

回想

 

 それは、神子柴がすなおの家に来た時だった。

 

神子柴「なっ、既に巫になっておると!?」

 

すなおの父「でも、すなおは悪くありません!巫について伝えていなかった私達夫婦の落ち度です…!」

 

神子柴「重罪じゃ…。お主らは時女の分家から生まれた家である事を忘れたか!」

 

すなおの父「重々承知しております…」

 

神子柴「であれば、このような事態にはなっておらんはず。認識が甘かったとはいえ、初潮のきた娘がいる家よ。何か理由があって、あえて伝えてなかったのじゃろ…」

 

すなおの母「…興味を持ってほしくなかった。この子に、巫の事を…」

 

神子柴「うつけが!」

 

すなお「やめて!パパもママも悪くない!私が、私が勝手に願って魔法少女にしてもらったんです」

 

神子柴「今の世ではそのような名前になっておるのか。……何を願った?」

 

すなお「…パパと、ママのために」

 

神子柴「…小さいの、もったいない…」

 

すなお「何が小さいの…!?大切な人のために願う事がそんなに悪い事なの!?」

 

神子柴「時女の血脈におるものが、願いのがいかんと言うとる。…どれ、耳を貸せ」

 

すなお「なん…ですか…?」

 

 神子柴はすなおの耳元で囁いた。

 

神子柴「お主と両親が犯した罪を、自分自身の行動で贖罪するがよい。たとえ無駄に巫になってしまったとしても、お主にやれる事は集落には山ほどある。もし、意にそぐわぬ者が現れたら、その時を殺しておくれ。嫌だとは言わせん。これはお主が誰かを殺して贖罪とするか、お主の両親が死して贖罪とするか、二つに一つじゃ」

 

 

 

 星矢と紫龍が両親の護衛をしているとはいえ、まだすなおには恐怖心があった。

 

すなお「(まだ、怖い…)」

 

弦十郎「そもそも、なぜすなお君は暗殺などといった事を?」

 

覇万「それは両親の悩みを解決するために願い事を自分で決め、巫になったからだ」

 

弦十郎「なっ!?この霧峰村では巫になる少女は自分で願い事を決めてはならないという掟があったが、それを破ると…」

 

覇万「他人を殺すという罰を受ける事になる」

 

弦十郎「神子柴め、年端もいかない子供にこんな事をさせるとは、それが大人のやる事なのか!?」

 

すなお「(弦十郎さん…)」

 

 年端もいかないすなおに暗殺を命じた神子柴に弦十郎は憤っていた。

 

弦十郎「すなお君は両親の事が心配のようだが、心配は無用だ。護衛の2人は恐ろしく強いのだからな」

 

覇万「今度はお前があの醜い老婆へ報復を行う番だ」

 

すなお「2人とも…」

 

覇万「そして、神子柴には惨い死か、死よりも苦しい地獄を味あわせる予定だ。清十郎の家族や次の時代を担う巫達を私利私欲で殺してきた罪でな」

 

すなお「私利私欲で…?」

 

 神子柴から聞き出そうと思っていたすなおだが、覇万はそれよりも過激な事を考えていた。神子柴の家の近くに来ると、悪鬼の子分が出てきた。

 

覇万「すんなりとは通さんようだな」

 

弦十郎「すぐに片付けてやる!」

 

 子分はあっさりと弦十郎の鉄拳で倒された。

 

 

 

神子柴の家

 

 その後、一同は神子柴の家に入った。

 

すなお「(武器もなしに拳だけで悪鬼の子分を…!)」

 

覇万「さて、証拠となるノートパソコンを見つけ出し、データを引っ張り出さねば」

 

すなお「(パソコン?そう言えば、清十郎さんが過去を語る時にも言ってた。集落にそんなもの、絶対にないはずなのに…)」

 

弦十郎「それにしても、神子柴はいないな…」

 

すなお「他の村人と一緒に避難したのではないでしょうか…?」

 

覇万「あり得んな。あの老婆はきっと、どこかで舞人と共に私達を抹殺しようとしている。国会に巣食う俗物共と同様、骨の髄まで欲にまみれた醜い老婆だ。あの老婆に似合う末路は二つ、法で裁かれて終身刑か死刑になるか、清十郎に惨たらしく殺されるかだ」

 

すなお「どうして、国会議員のあなたがわざわざここまで…?」

 

覇万「俗物共と無駄な議論をするより、こっちがいいのでな」

 

すなお「あの、あなたは独裁者のように自分に従わない人は…」

 

覇万「いや、私に批判的であっても議員として精進してくれるならむしろ大歓迎だ。私が嫌悪しているのは私利私欲で次の時代を担う若者達の芽を摘み取ろうとする俗物、特に老害議員や官僚共なのだからな」

 

すなお「次の、時代を担う…?」

 

弦十郎「彼女が議員になったのも、さっき話した事以外に清十郎が親から託されたCDに記録されたデータを証拠として、例の取引をしている議員を全員あらゆる手段で抹殺するためでもあるんだ」

 

 そう言ってると、ノートパソコンを見つけた。

 

覇万「早速、証拠が出たぞ…」

 

 ところが、子分たちが出てきた。

 

弦十郎「パソコンに触らせないのか…」

 

覇万「パソコンの方は私に任せて、2人は子分を頼む!」

 

すなお「わかりました!念のため、静香たちにも応援を要請します!」

 

 子分たちでは弦十郎とすなおの相手にすらならなかった。2人が子分を倒し終わった時には…。

 

弦十郎「倒し終わったか」

 

すなお「あの、何かありましたか?」

 

覇万「ああ、例の取引の証拠が見つかった。ちょっと来い」

 

 2人は覇万の近くに来た。

 

覇万「イヤホンをつけて聞いてみろ」

 

 イヤホンをつけてすなおは証拠となる音声データを聞いた。

 

すなお「これは…!」

 

 その内容はすなおはもちろん、弦十郎も憤る内容であった。しばらくした後、静香たちが来た。

 

翼「遅れてすまん、土岐!道中で子分と交戦して遅れてしまった」

 

覇万「だが、すなおと弦によって子分共は全滅した」

 

静香「でも…、顔色悪くない…?」

 

すなお「ちょっと、苦戦してしまったので」

 

覇万「本当はある事情があるのだが、今はそれを聞き出す時ではない。そこは了承してくれ」

 

静香「それなら、仕方ないけど…」

 

すなお「(私を気遣って…)」

 

 すなおの心境を察して覇万はパソコンから引っ張り出した『例の取引の証拠』の事は今は聞きださないでほしいと頼んだ。

 

清十郎「さて、次は静香とちはるの親の捜索だ」

 

すなお「捜索?」

 

翼「ああ。2人の行方がわからなくなってるんだ」

 

 すると、ちはるから念話が来た。

 

静香「待って、ちゃるから念話…」

 

 

 

時女の集落

 

 ちはると調は捜索していた。

 

ちはる「(みんな逃げたのかな…。もしくは、悪鬼にやられちゃったとか…?それだと、お母さんも大変だよ!)」

 

調「早とちりするのは早いよ。まだ、どうなのかわかってないから」

 

ちはる「調ちゃん…。何だか変な気がするんだよね…。悪鬼が人を傷つける存在でこの集落を支配してるなら、日ノ本のために願うって何だか変だよ」

 

調「うん。私もおかしいと思ってるし、矛盾してる気がする」

 

ちはる「それに巫を食べたいなら、サクッとやっちゃえばいいもん」

 

調「それに、成人の話とか舞人による儀式とか細かいルールを作るのは回りくどい」

 

ちはる「それに、うちにまで電話をかけてくるんだもんね…。ん、んん?電話はオババが…。あーもう!頭の中がグチャグチャだよぅ」

 

調「だったら、悪鬼も神子柴も全て叩き潰せばいい」

 

ちはる「だけど、等々力耕一さんだったら、こういう時はどう考えるかな…」

 

『奇怪な真実を受け入れるんだ』

 

ちはる「それは解決後の決め台詞だから、今言われると、何でもありに…」

 

調「うん、私も割と混乱してるから、排除すべき悪鬼と神子柴を倒せば終わる」

 

ちはる「調ちゃんって、大人しそうに見えて意外と体の方が先に動くタイプなんだね…(ただ、奇怪さは混じってる…。その範囲がどこまでなのか、それが重要って事だよね…!)」

 

 しばらく歩き回ったが…。

 

ちはる「ふぅ…これ以上は探しても意味ないかな」

 

 そんな時、ちはるは反応した。

 

調「どうしたの?」

 

ちはる「(これは…悪鬼の子分じゃない。神社の方から漂ってくるあの妙な事件のにおい…?前より強くなったような…)」

 

調「さっきから黙りこくっているけど…」

 

ちはる「ああ、いけないいけない!ここで他に気移りしてる場合じゃないよぅ」

 

 次は調のギアのセンサーにも反応があった。

 

調「これは…悪鬼の子分だね」

 

 大量の悪鬼の子分が出てきた。

 

調「悪鬼も子分も1匹たりとも逃がさない…!」

 

ちはる「私がしょっびいてお仕置きしてやる!」

 

 2人で戦っているため、子分たちは大した敵ではなかった。

 

ちはる「成敗!」

 

 ちはるが最後の1体を倒した。

 

ちはる「よしよし、いい感じだね」

 

 ところが、誰かが倒れる音がした。

 

ちはる「ん?」

 

 そこへ視線を向けると、倒れている舞人がいた。

 

ちはる「うわわっ…だ、大丈夫…!?」

 

調「この人、私に舞の指導をしてくれた人だ…」

 

ちはる「なんか悪鬼の子分がやられて一緒に倒れてきたような…?調ちゃん、この人は悪鬼に操られていたのかな…?」

 

調「わからない。清十郎さんに聞いてみる必要がある」

 

ちはる「(やっぱり、逃げてきた人かな…?もういないと思ってたけど、逃げ遅れてる人がいる…)」 

 

 そう思っていると、また反応があった。

 

ちはる「(立て続けに…!?)」

 

 音がしたため、ちはると調は身構えた。

 

ちはる「覚悟ぉ!」

 

 音がする方には、静香の母親とちはるの母親がいた。

 

静香の母「広江さんこっち!開けてるから戦いやすい!」

 

ちはるの母「戦いやすいって時女さん、そんな刀じゃ無理ですって!」

 

静香の母「けど、自分達でやるしかないでしょう!」

 

 そこへ、ちはると調が来た。

 

ちはる「お母さんと静香ちゃんとこの母様!」

 

ちはるの母「ちはる…?」

 

静香の母「ちはるちゃん!?それに調ちゃんまで!」

 

 驚いている双方だが、悪鬼の子分が迫っていた。

 

静香の母「と、その前に…時女一心流、三尺蹴詰ノ首落し!!」

 

調「さんしゃくけりづめのしるしおとし!?」

 

 子分を斬ろうとした静香の母親だったが、通用せずに刀が折れた。

 

静香の母「っ、刀が…」

 

調「ここは私達に任せて」

 

ちはる「あと、静香ちゃんとすなおちゃんにも連絡するね!」

 

 ちはるは念話で連絡した。そして、悪鬼の子分は調とちはるに倒された。

 

ちはる「ふぅ、これでひと」

 

 ところが、新手でどんどん悪鬼の子分が出てきた。

 

調「新手!?」

 

ちはる「お母さん、あぶ」

 

???「時女一心流、九頭蛇閃!」

 

 新手の子分がちはるの母親と静香の母親に迫ろうとした途端、一足先に清十郎が駆け付け、清十郎の斬撃によって子分の大半が消滅した。

 

調「清十郎さん!」

 

静香の母「(あの身のこなし、太刀筋、まさか……)」

 

清十郎「久しぶりだな。本当は集落に帰ってきた初日に素性を明かしたかったが…」

 

静香の母「まさかあなた、私と一緒に時女一心流を学んでいた昴なの!?生きていたのね!」

 

清十郎「ああ。何とか生き延びて、裏奥義を会得して帰ってきた」

 

 一緒に時女一心流を学んでいた昴が帰ってきた事で、静香の母親は再会を喜んでいた。

 

ちはる「お母さん大丈夫!?静香ちゃんの母様も」

 

ちはるの母「うん、私は平気よ。ありがとう、ちはる…」

 

静香の母「昴、やっぱりあなたは天才ね。子供の時からあなたは剣術において年上のはずの私の何歩も先を行き、巫でさえ会得できなかった時女一心流裏奥義を会得して子分はおろか、悪鬼とさえ戦えるようになった。この壁は超えられないわ」

 

清十郎「だが、お前も大した奴だ。一般人であそこまで粘れた奴なんか、あまり見た事がないぞ」

 

静香の母「ふ、ありがとう」

 

調「2人共、まだ逃げてなかったんですか?」

 

ちはる「探し回っても見当たらなかったのに…」

 

ちはるの母「もちろん、私達も他の人と一緒に避難してたわ…。けどね、途中で今の化け物が影の中から現れて、他の人達と離されちゃったのよ」

 

静香の母「どうして私達が狙われたのか、理由はまるでわからないけどね…」

 

ちはるの母「それで、ちはる」

 

ちはる「ん?」

 

ちはるの母「ん?じゃないわよ!あなたどこに行ってたのぉ!!」

 

ちはる「ひっ!」

 

ちはるの母「急にいなくなっちゃうし、帰ってこないし、こんな化け物まで出てくるし、どれだけ心配したか…!」

 

ちはる「え、と…ごめんなさい…。成人の儀式が不安になって見に行ったら、静香ちゃんと一緒に滝つぼに落とされちゃって…」

 

ちはる「滝つぼに…?それは誰に…!?体は大丈夫なの…!?」

 

調「ちはるの体の方は問題ありません」

 

清十郎「ちはると静香を滝つぼに落とした張本人は…神子柴のクソババアだ!」

 

 清十郎の言葉は母親2人に衝撃を与えた。

 

静香の母「神子柴…様…?」

 

清十郎「そうだ!それに、裳着の儀式は巫を殺し、悪鬼に変える最悪のものだ!それを見てしまった事で一家共々口封じで狙われ、両親と妹のせいらはクソババアに殺されたんだ!」

 

 家族を殺された清十郎の怒りは伝わったが、衝撃の事実は2人の頭がこんがらがるほどであった。

 

ちはるの母「信じられない…」

 

静香の母「衝撃的だから状況が掴めないわ。静香は大丈夫なのよね?連絡するって言ってたし」

 

ちはる「うん、一緒に来てるよ」

 

静香の母「…詳しい話は家に避難してからにしましょう」

 

ちはる「それなら、さっきの舞人さんも連れていかないと」

 

静香の母「舞人?」

 

調「はい、さっき倒れてしまって…」

 

 しかし、見回したが見当たらなかった。

 

静香の母「誰もいないわよ…?」

 

ちはる「え?」

 

調「ほんとだ…」

 

ちはるの母「本当にいたの?」

 

ちはる「いたよぅ!」

 

清十郎「しょうがない、俺が超特急で探しに行く。ちょうど静香たちも来たようだから、先に行っててくれ」

 

 ちょうどその時に静香たちも来た。

 

静香「母様、無事だったのね!」

 

静香の母「戻ってきてくれてよかったわ、静香…!」

 

静香「ただいま、母様…」

 

翼「避難した住人や陣頭指揮をとりにきた七井議員等がお待ちしています。私達も」

 

調「清十郎さんは舞人さんを探しに行くから、先に行ってていいそうです」

 

すなお「どうしますか?」

 

翼「ここで考えても敵に隙を見せるようなものだ。私達は先に戻ろう」

 

 清十郎を残し、翼達は先に戻った。

 

清十郎「さて…」

 

 清十郎が見回すと、悪鬼の子分達がゾロゾロと出てきた上、今度は羊の悪鬼まで出てきた。

 

清十郎「こいつはこの結界の主ではないな。だが、そいつらを出したところで無駄だ!」

 

 紅ノ一閃の連発で子分は全滅した。

 

清十郎「時女一心流、蛇槌閃!」

 

 ジャンプしてから、落下の勢いもつけて振り下ろす一撃に羊の悪鬼はあっけなくやられた。その直後、清十郎は再び紅ノ一閃を放ち、何者かを斬った。

 

清十郎「そこに隠れてたのはわかってたぞ。そして、クソババアの手下の貴様らを斬殺するのを静香たちに見せたくなかったからな」

 

???「おのれ……!」

 

 清十郎が斬殺したのは、いつの間にかいなくなったはずの舞人であった。

 

 

 

 

 清十郎も帰ってきて、一同は避難場所に集合していた。

 

ちはるの母「はぁ…。巫や時女一族…それだけでもやっと受け入れてるぐらいなのに…」

 

静香の母「私も集落が結界の中だなんて話は想像できないもの…」

 

ちはるの母「おまけに、国会議員まで来る始末だから…」

 

ちはる「ごめんなさい、急にこんな事を話して…」

 

ちはるの母「謝らないで、ちはる。ちょっと驚いたぐらいだから。あなたが巫になるって決めた時にお母さんも腹を括った。自分の常識を捻じ曲げて受け入れるぐらいできるわ」

 

静香の母「それに巫であるあなた達の方が辛い話よ…」

 

静香「でも、まだどこまで本当かはわからない…」

 

清十郎「はっきりしている事は、クソババアが諸悪の根源である事だ」

 

 清十郎のこれまで抑え込んできた神子柴への憎悪と怒りにちはるの母親と静香の母親も娘を殺されればと思えば、清十郎の言ってる事を否定できないほど自分達の事だと思っていた。そんな中、静香が不安そうにしていた。

 

翼「どうした?」

 

静香「…さっき、考えてて不安になったの。もしも、この集落が本当に悪鬼の結界なんだとしたら、私が見てきた景色や人々も幻なのかも知れないって…」

 

清十郎「何言ってやがる!?ちはるや翼達は外から来たし、俺もこの集落に生まれ、神子柴から逃げるために外へ行った後、十数年の時を経て帰ってきた。偽物なわけがあるか!」

 

翼「その通りだ。時女の母様が悪鬼の子分に襲われたのであれば、間違いなく本物だ!」

 

静香「清十郎さん、翼さん…」

 

静香の母「じゃあ、あんたは誰の腹から出てきたっていうの?」

 

静香「それは…」

 

すなお「編に深く考えるのはやめて、目の前の事に集中しましょう」

 

静香「そうね、ごめん」

 

静香の母「それにしても、神子柴はどうして時女一心流裏奥義を闇に葬ろうとしたのかしら…?あれは昴の動きを見てわかったんだけど、裏奥義は男女問わず、昴みたいな天才でなければまともに扱うのはおろか、会得すらできない技よ」

 

覇万「そう、奴等では裏奥義の会得さえできないからこそ、裏奥義を会得した巫が現れて自分達の手に負えなくなるのを恐れて裏奥義を闇に葬ろうとしたのだろう」

 

静香の母「でも、よく闇に葬られた裏奥義を会得できたわね」

 

清十郎「親父が神子柴の家から秘伝書を盗み出し、俺に託してくれたからな」

 

 覇万は裏奥義の秘伝書を静香の母親に見せ、静香の母親は秘伝書を読み漁った。

 

ちはる「何が書いてあるの?」

 

静香の母「これは間違いなく、裏奥義の秘伝書よ。九頭蛇閃を始めとした裏奥義の内容が収められているわ。やっぱり、この裏奥義は凄い威力を誇る反面、反動が凄いから本来は普通の人間では扱えない巫専用の剣術よ。それに…本当の時女一心流免許皆伝の条件は、師の放つ九頭蛇閃を最終奥義の龍閃天翔で破る事ってあるわ」

 

翼「つまり…、師匠を殺す事なんですか?」

 

静香の母「そうなるわ。でも、静香が最終奥義を会得したのに昴が生きてるのは…」

 

清十郎「そりゃあ、俺は守り刀の結界で守られて死なずに済んだからさ。もしも刀の結界がなければ、俺は危うく死んでいるところだった」

 

 1歩間違えていたら清十郎を殺していたという事実に静香と翼は戦慄した。それと、静香の母親は刀の結界が引っかかっていた。

 

弦十郎「俺達のやるべき事は、悪鬼を倒し、神子柴の身柄を確保する事だ。そうしなければ、何も聞けんからな」

 

静香「悪鬼に操られてたとしたら、忘れてるかも知れない…」

 

すなお「あっ、それは…」

 

静香の母「…あなた達、そろそろ行った方がいいわよ」

 

 言われたら、既に夕方になっていた。

 

ちはる「もう夕方だ…!」

 

調「日が沈む前に倒さないと、子分達がどんどん出てくる…」

 

翼「そうだな。闇に包まれれば、悪鬼とその子分達が自由に動ける」

 

ちはる「でも、私達が行ったらお母さんたちは大丈夫なの!?」

 

静香の母「悪鬼の子分ぐらいなら、私ひとりで十分よ」

 

ちはる「刀が折れたのに?」

 

静香の母「だから、ちょっと出て行く前に手伝ってほしい事があるの」

 

ちはる「何?」

 

 静香の母親は押入れを開けると、そこには大量の刀があった。

 

翼「押入れの中に…大量の刀が…」

 

静香の母「この刀に巫としての力を込めていってくれるかしら?」

 

静香「そういう事ね」

 

調「そう言えば、清十郎さんの刀には妹さんの魔力が込められてる。巫の力を入れれば…」

 

静香「悪鬼と戦える武器になる」

 

静香の母「そうよ。昴の刀が悪鬼の子分斬ったからすぐにわかったの。だから悪いけど、行く前に力を込めていって。おばさん、技術はあってもあなた達の力はないんだから」

 

ちはる「わかった、じゃんじゃん入れる!」

 

静香「すなおも手伝って!」

 

すなお「う、うん!」

 

静香「あとは、悪鬼の居場所だけが問題ね…」

 

 魔力を入れる作業中、すなおは気付いた。

 

すなお「あの、刀が一振り残ってますけど…」

 

静香の母「それは虎の子だから、置いておいてくれるかしら?」

 

清十郎「時女の巫達が代々力を込めている代物だ。ある悪鬼を倒すためのとっておきだからな」

 

すなお「大切なものなんですね。わかりました」

 

静香の母「ただ、その刀の話、帰ってきたら静かに続きを話す必要があるかも」

 

静香「何?その中途半端な話」

 

清十郎「大事な話だ。まずは、神子柴のクソババアと悪鬼をブチのめすのが先だ!」

 

静香「…うん、わかったわ」

 

弦十郎「万一の事もある。俺はここに残って関係者達の防衛にあたる」

 

清十郎「賢明な判断だ、弦十郎。結界の主ではない悪鬼が出てくる可能性もあり得るからな」

 

覇万「防衛する私の支援者達もいる以上、私は指揮するためにここに残る」

 

ちはる「清十郎さんは…」

 

清十郎「俺はお前達と共に向かう。あのクソババアは許せん…!」

 

翼「七井さん…」

 

弦十郎「よし、翼達は急いで悪鬼を倒しに行くんだ!」

 

静香「はい!」

 

 翼達は出撃した。

 

 

 

???

 

 ある場所で神子柴は待っていた。

 

神子柴「まさか、時女一心流裏奥義を会得した者が現れるとは…、ワシも想定外じゃったわい…。だからこそ、裏奥義を会得した者を殺し、今度こそ闇に葬らねば…」

 

 神子柴の傍には、あまりにも高い椅子に座り、水瓶から水を浴び続けている悪鬼がいた。

 

神子柴「穢れを吸いきった悪鬼の魂魄を集めておいて正解じゃったわい。幸い、時女一心流裏奥義を破るための武器、剣砕きを持った悪鬼もおる。裏奥義を会得した者、会得した家の者、そして風鳴には死を!」

 

 その神子柴自慢の武器を持った武者の悪鬼もいたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は集落での悪鬼や子分との戦いを描きました。
本当は一気に神子柴との対決まで行きたかったのですが、予想以上に長くなって神子柴との対峙は次に持ち越しとなりました。
神子柴の秘策はシンフォギア本編を見ていれば何なのかわかります。
次の話は神子柴との戦いになります。そして、例の取引が何なのかも判明します。
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