病院
ある病院でブラックジャックが手術を終えた際の事だった。
ブラックジャック「例の新型肺炎の重症患者の手術は終わりました、山田野先生」
山田野「助かったよ、ブラックジャック君。相変わらず君のメス捌きは見事なものだ。感服した」
ブラックジャック「いえ、それ程でも」
山田野「君は動物はおろか、幽霊や宇宙人までも手術したと聞いている。もしかすると、透明人間までも手術するのではないか?」
ブラックジャック「透明人間?まさか…」
山田野「聖闘士や錬金術師がいるんだ。人間の体は理屈通りに治せない時もあるように、どこかに透明人間がいてもおかしくないのかも知れない。それと、新型肺炎の特効薬は持っているかな?」
ブラックジャック「最近は新型肺炎が流行していますから、常備していますよ。では…」
ブラックジャックは帰った。
リディアン
翼と調が帰ってきた、次の日の事だった。
切歌「何デスと!?調と翼さんはパソコンとかのない集落に行ったのデスか!?」
調「うん、時女一族の集落では神子柴っていう、魔法少女の願い事を悪用して私腹を肥やしていた悪いお婆さんがいた」
切歌「その神子柴ってお婆さんはマムとは正反対なのデス!」
クリス「で、そいつはどうなった?」
調「結局は操っていた魔女を私達に倒された後、十数年前に神子柴によって家族を殺された恨みを持っていた清十郎さんに頭をかち割られて死んだ」
響「清十郎さんって、どういう人?」
調「まどか達の世界にいる、世界で一番強い剣術の達人。清十郎さんは司令はおろか、翼さんのお爺さんより強いっても豪語してた」
響「師匠より強い人…」
未来「普通の人間で弦十郎さんより強い人がいたなんて…」
清十郎の存在は衝撃的だった。
切歌「調、その時女一族の集落でそこでしか体験できない事を体験できたデスか?」
調「ちょうど舞人が足りなかったから、私が代理になって舞を習った」
切歌「おおっ、調は舞人の衣装が一番似合うのデス!」
他にも時女一族の話題で調達の方は盛り上がった。
S.O.N.G潜水艦
一方、翼は弦十郎らに報告をしていた。
弦十郎「なるほど、向こうには時女一族という日ノ本を蔭から支えてきた魔法少女を輩出している一族があり、その集落の長で悪事を働いていた神子柴を倒してきたのか」
翼「はい。といっても、罪を償おうとしなかったために、十数年前に神子柴に家族を殺された恨みを持つ七井さんによって殺されました…」
沙織「罪を償おうとしない悪人ですか…。司令のモットーではどうにもならない悪人ですね…」
弦十郎「何はともあれ、お疲れさん」
ふと、ブラックジャックが発令所の前を通るのを見かけた。
瞬「ブラックジャック先生、何しに来たのかな?」
星矢「恭介の様子でも見に行くつもりだろ?ほんと、並行世界までも股にかけるようになったんだろうな」
星矢の言う通り、ブラックジャックは並行世界を渡るために来たのであった。
ブラックジャックの家
同じ頃、ピノコは…。
ピノコ「ああ~~っ、ピノコもへいこうちぇかいに行きたい行きたい!!」
ラルゴ「クゥン…」
並行世界に行けないため、駄々をこねるピノコであった。
見滝原
ブラックジャックは並行世界の見滝原に来た。
ブラックジャック「さてと、恭介やまどか達はどうしてるのかを見てくるか」
そう考えながら街中を歩いていると、何やら恭介が入院していた病院の医師が慌てて来るのを目の当たりにした。
医師「ブラックジャック先生、ちょうどいいところに!」
ブラックジャック「ちょうどいい所?」
医師「実は…」
車内
ブラックジャックは医師が運転する車で神浜市へ向かっていた。
ブラックジャック「何?整形をしてほしいだと?」
医師「はい、私と同じ大学に通っていた同期が勤める神浜市の病院に1か月ほど前に二葉さんの子供さん2人が交通事故とそれに関連した火事に巻き込まれ、入院したんです」
ブラックジャック「命に関わるほどなのか?」
医師「いえ。ですが、交通事故で顔がひどく崩れた上に火傷の痕もひどくてとても人前に出せないと二葉さんの両親は言っていました。おまけに『火傷の痕が全くない、人前に出せる顔にしてほしい』と無理難題を吹っかけてきたんです。私の同期を始めとした医師達では手に負えないのでその相談が来た時、ブラックジャック先生がいてくれたらって思ったんです」
ブラックジャック「お前さん達も無理難題で苦労してますなぁ」
医師「あの…、整形は専門外でしょうか…?」
ブラックジャック「別に。その気になれば、どんな顔にでも整形できますよ」
医師「それは心強い!こんな依頼を引き受けてくれて、ありがとうございます!」
神浜市
ブラックジャックと医師は神浜市に到着した。
医師「ホテルのチェックインはしておきますので、この辺の下見に行ったらどうですか?」
ブラックジャック「そうさせてもらおう」
チェックインを送迎してくれた医師に任せ、ブラックジャックは神浜の下見に行った。
ブラックジャック「神浜市は大都会だな…。ここの魔法少女は」
???「自害します~~!!」
その言葉にブラックジャックは反応し、慌てて向かった。そこには、何やら少女2人がおり、もう1人は止めようとしていた。
ブラックジャック「よせ、自殺するな!!医者の私が見てる前での自殺は絶対に許さん!!」
少女「ちょっと、明日香の悪い癖で通りすがりの人に間違われちゃったじゃない!」
明日香「はっ、失礼しました!」
ブラックジャック「お前さん達は?」
ささら「私は美凪ささらで、この子は竜城明日香です。明日香の悪い癖でご迷惑をおかけして申し訳ありません」
ブラックジャック「悪い癖なのか…。全く、何かあれば自害するとかいう発想はどこから湧いてくるのやら…」
呆れてブラックジャックはその場を後にした。
ブラックジャック「全く、とんだ街に来てしまったようだ……」
???「誰か、誰かお医者さんはいませんか!?」
明日香の自害癖をぼやいていると、医者を求める声が聞こえた。
ブラックジャック「早速、助けを求める人が現れたか…」
そこへ向かうと、そこにはピンクの髪の少女がいた。
ブラックジャック「お前さんが医者の助けを求めているのか?」
いろは「はい、私は環いろはといいます。あの…、あなたはお医者さんですか…?」
ブラックジャック「そうだが…、どうした?」
いろは「ちょうどいい所に!急いで来ていただけませんか?」
???「待ちなさい、環さん。その医者は魔法少女の事を信じてくれるの?」
いろはに制止をかけたのは、何やら大人びている大学生ぐらいの女性だった。
いろは「やちよさん!」
やちよ「あなたは医者みたいだけど、魔法少女の事は」
ブラックジャック「知っている。魔法少女の存在も伏せておく」
やちよ「全く、魔法少女の存在を信じてくれる医者が現れたとはね…」
ブラックジャック「それで、患者は?」
いろは「とりあえず、みかづき壮に来てください!」
やちよ「(あの医者…、もしかして…)」
ブラックジャックの姿にやちよは引っかかっていた。
みかづき荘
いろはとやちよの案内でブラックジャックはみかづき荘に来た。
いろは「鶴乃ちゃん、フェリシアちゃん、お医者さんを連れてきたよ!」
鶴乃「こんな時に救世主が来るなんて!」
しかし、ブラックジャックは医者には見えなかった。
フェリシア「なぁ、ほんとにこいつは医者なのか?」
ブラックジャック「こう見えても私は医者なんでな。患者はどこだ?」
フェリシア「あっち」
フェリシアが指差したが、そこを見ても患者はいなかった。
ブラックジャック「どこにもいないではないか!イタズラで私を呼んだのか!?」
鶴乃「そんな事は断じてありません!お医者さんが必要だからこそ、いろはちゃんは探してたんです!」
ブラックジャック「患者はどこにいる!?」
いろは「ひょっとして…、あの人はさなちゃんが見えないんじゃ…」
やちよ「魔法少女の存在を知っていても、見えないのはまずかったかも知れないわ…」
見えないという言葉を聞いたブラックジャックは並行世界に行く前の事を思い出していた。
山田野『どこかに透明人間がいてもおかしくないのかも知れない』
ブラックジャック「(山田野先生の言った事が現実になっただと…)まさか、そのさなという患者は透明人間なのか?」
やちよ「ええ」
ブラックジャック「まいったな…。透明人間だと手術はおろか、診察すらできん。見えるようにならないとどうにもならん…」
鶴乃「せっかくお医者さんが来てくれたのに…」
ブラックジャックはさなが見えないために手の施しようがない中、やちよはある事を閃いた。
やちよ「見えるように…?だったら、いい考えがあるわ」
やちよはその場を離れた後、眼鏡を持ってきた。
いろは「それは?」
やちよ「これはモデルの仕事の際に使っていた伊達眼鏡に魔力を注いだものよ。これがあれば、あなたでも二葉さんが見えるはずよ」
ブラックジャック「二葉…?」
やちよの言葉にブラックジャックは一緒に神浜市に来ている医者から依頼人の二葉という名字を聞いてて、それが引っかかっていた。眼鏡をかけてみると、ブラックジャックでも熱を出してて苦しそうな様子のさなが見えるようになった。
ブラックジャック「よし、これならいける!」
早速、診察を行った。
いろは「どうですか…?」
ブラックジャック「こいつはこの頃流行っている新型肺炎だ。しかも、血栓ができててかなりの重症だ。魔法少女でなければとっくに死んでいる」
やちよ「新型肺炎…、やはりね」
ブラックジャック「いつ、発症した?」
いろは「それは…」
回想
それは、ウワサのアイやアリナが『作品』と称している魔女との戦いが終わった後だった。
やちよ「二葉さん、体の方はどう?」
さな「私は…だいじょう…」
ウワサの結界にいた時から、いかにも熱があるような様子だったさなは倒れてしまった。
いろは「さなちゃん!?」
急いでやちよは熱があるかどうか確かめた。
やちよ「熱があるわ!それも、高熱よ!」
鶴乃「ええっ!?それってインフルエンザ!?それとも新型肺炎!?」
やちよ「どちらにせよ、医者に診てもらわないといけないわ!それも、魔法少女の存在を知り、且つその存在を明かさない医者でなければダメよ!」
フェリシア「そんな医者って…」
いろは「私、そのお医者さんを探してきます!」
いろは「という訳なんです」
ブラックジャック「なるほど、そんじょそこらの医者ではダメなのか」
鶴乃「急いで手術をお願いします!」
ブラックジャック「わかってる。今からオペの準備を行い、整い次第開始する!」
やちよ「ちょっと待って。あなた、もしかして噂になっている神出鬼没の天才外科医、ブラックジャックじゃないの?」
ブラックジャック「ほう、私の名前を知っているとはな」
いろは「ブラックジャック!?」
鶴乃「ブラックジャックって、トランプのゲームの?」
フェリシア「そういや、あったな」
やちよ「トランプのゲームじゃなくて、この人の名前なのよ。それも、現代医学では治せないものを治してしまう超天才の医者よ」
鶴乃「凄く腕のいいお医者さん!?」
フェリシア「こりゃ、超ラッキーだな!」
ブラックジャック「だが、治療費は高いですぜ」
いろは「いくら払えばいいんですか?」
ブラックジャック「3千万円!」
その金額に凄まじい衝撃が走った。
鶴乃「さ、3千万円!?」
フェリシア「高すぎだろ!!」
いろは「こんな高い治療費、払えません!もっと安くできないのですか!?」
ブラックジャック「払えないのなら、お断りだ」
やちよ「待って。その治療費は分割で支払うわ!一括でなければダメなの?」
ブラックジャック「分割でも結構」
いろは「すぐにお願いします!」
やちよが分割で支払うと言ったため、ブラックジャックは無菌室を展開し、白衣とマスクを装着して手術を開始した。
ブラックジャック「(新型肺炎の特効薬を持っていて正解だったな…。この患者が透明人間なのは、キュゥべえとの契約のせいだろう。だが、どんな願い事で透明になったんだ…?)」
そして1時間半後、手術は終わった。
ブラックジャック「手術の方は終了だ」
鶴乃「じゃあ、助かったんだね!?」
ブラックジャック「ああ。新型肺炎の特効薬を置いておく。意識が戻ったらさなに食後にしっかり飲むよう伝えてくれ」
そう言ってブラックジャックはみかづき荘を出た。
ホテル
手術が終わった後、泊まる部屋に来た。
医師「ブラックジャック先生、やけに遅かったですね」
ブラックジャック「ちょっと、下見の際にすぐに手術が必要な患者を発見してな。それより、二葉家の家族構成はどうなんだ?」
医師「同級生からの話によれば、両親と子供2人の4人家族です。前は女の子もいたそうですが、何か月か前に行方不明になっているようで…」
ブラックジャック「捜索願は出されなかったのか?」
医師「家族は出さなかった上、善意でパトロールのついでに捜索していた警察官も発見できていないようです」
ブラックジャック「(行方不明…?まさか、行方不明になった二葉家の女の子は…!)」
さなの苗字が二葉である事、そして今回の手術の依頼人である二葉一家と名字が同じであり、行方不明になった女の子がいるとわかってブラックジャックが抱いていた疑問が解けた。
ブラックジャック「(そして、なぜ捜索しないのかを問い質す必要もある…)」
今日はもう遅いため、ブラックジャックは寝る事にした。
病院
翌日、ブラックジャックは依頼人である二葉一家の子供2人を診察した。
さなの父「あなたが私達の子供二人の顔を治してくれる医者、ブラックジャック先生なんですね?」
ブラックジャック「いかにも」
さなの母「すぐに手術してください。子供達があんな顔では、学校でどれだけバカにされるか…。もうこの際、前よりももっといい顔にしてください。いい顔ならば、どんな顔でも構いません」
ブラックジャック「その前に聞きたい事がある。あなた方の娘さんのさなって子は行方不明だと聞いております。なぜ、捜索願を出さないんですか?」
さなの母「あの子の事は口にしないで!前の夫との結婚が人生で最大の失敗だったの。その前の夫との間に生まれ、出来も悪い娘のさなはいなくなっても何の問題もないわ」
ブラックジャック「(さながいなくなっても何の問題もない…?同じだ、俺と母さんを捨てたあの男と……!)」
その心ない言葉を聞いたブラックジャックは爆発事故に巻き込まれた自分と母親のみおを捨て、愛人を作ってマカオに行ってしまった父親、景三の事を思い出し、さなの両親への激しい怒りが燃え上がった。
ブラックジャック「失礼な事を聞いて申し訳ありませんでした」
さなの父「あの…手術代はいくら払えばいいのでしょうか?」
ブラックジャック「そうですな…。手術費は…5千万円だ!今から払ってもらおう。びた一文たりともまけない」
法外かつ膨大な手術費に2人は驚愕した。
さなの母「ご、5千万円!?」
さなの父「いくら何でも高すぎですよ!」
ブラックジャック「これだけ払えば子供さんがいわれなき差別で苦しまなくなる上、もっといい顔になるんですぜ。そう考えれば安いものでしょう?さぁ、払わずに子供達をずっと差別で苦しませるか、払って子供達にこれから訪れる差別による苦しみを回避するか、どちらにしますかい?」
ブラックジャックが提示する理不尽な二択にさなの両親は大いに悩み、決断した。
さなの父「…わかりました、5千万円支払います…」
さなの母「いい顔であればどんな顔でもいいので、お願いします!」
ブラックジャック「……確かに聞きましたぜ」
手術のため、部屋を出ようとしたが…。
ブラックジャック「そうだ、一つだけ聞いておきたい事がある」
さなの父「何だ?」
ブラックジャック「…今でも娘さんの事、少しは愛してますか?」
さなの母「あんな二葉家の恥を愛するわけないでしょ!」
ブラックジャック「……そうですか」
返事はそれだけだったが、ブラックジャックの怒りは凄まじかった。しかし、その怒りにさなの両親は気付いていなかった。そして、送迎してくれた医師や二葉家の子供二人が入院している病院の医師達が助手となり、手術が始まった。数時間経過した後、手術が終わってブラックジャックは手術室から出た。
さなの母「手術は成功しましたか?」
ブラックジャック「ええ。あと一月もすれば、包帯がとれますよ。しかも、前よりももっといい顔になっています」
さなの父「そうですか!それと、5千万円を受け取ってください!」
さなの父親はブラックジャックに5千万円を渡した。
ブラックジャック「確かに受け取りましたよ」
受け取った後、ブラックジャックは病院を出た。
みかづき荘
前日に手術が終わったさなはもう起きていた。
いろは「もう大丈夫なの?」
さな「うん。とても楽になったよ。ブラックジャックっていうお医者さんのお陰だよね?」
いろは「うん。さなちゃんが元気になってよかった…」
鶴乃「これも、ブラックジャック先生のお陰だよ!」
フェリシア「けど、やちよにとんでもない借金ができちまったぞ…」
そう言ってると、ブラックジャックが来た。
鶴乃「フェリシアが言ってたら来ちゃったよ!」
フェリシア「お、俺は呼んでねえぞ!」
ブラックジャック「やちよ、手術費は3千万円と言ったが、帳消しにしよう」
やちよ「帳消しですって?」
ブラックジャック「その代わり、お前さん達に大金を渡す」
ブラックジャックはさなの両親から受け取ったお金をやちよ達に渡した。
やちよ「これを…私達に?じゃあ、昨日言った手術費は…」
ブラックジャック「お前さん達の覚悟を見定めるためのものだ。そして、この金はさなの両親から搾り取ったもので必要経費として1千万円もらうが、残りはお前さん達で使うといい」
さな「お父さんと、お母さんから…?」
ブラックジャック「さなの義理の兄弟の手術でな。そして、あの一家はこれから地獄を見る事になる」
鶴乃「地獄って、そのまま地獄に叩き落とすの!?」
フェリシア「違うだろ!」
ブラックジャック「ところで、この中に回復魔法が使える魔法少女はいるか?」
いろは「わ、私が使えます!」
ブラックジャック「ちょっとお前の力が必要だ」
いろはと共にブラックジャックは病院に向かおうとしたが…。
さな「あの…、ブラックジャック先生は何で私を気にかけてくれるのですか…?」
ブラックジャック「…実を言うと、私も父親に捨てられた身なのでな…。お前さんと違って今でも父親の事を憎んでいる」
そう言って、ブラックジャックはいろはと共に病院へ向かった。
病院
ブラックジャックと共にいろはは魔法でさなの兄弟にある事をした。
ブラックジャック「よし、これでOKだ」
いろは「どうして、私の力が必要だったんですか?」
ブラックジャック「あの毒家族に地獄を見せなければならないのだからな…」
いろは「毒家族って、もしかして…」
ブラックジャックの怒りと憎しみにいろはは戦慄していた。そして翌日、さなの両親はブラックジャックに呼ばれた。
さなの母「予定よりも早く包帯がとれるなんて…」
さなの父「ああ、前よりもいい顔になった子供達の楽しみだ…」
予定よりも早く包帯がとれるため、ブラックジャックが包帯をとっているのを見て子供達が前よりもいい顔になってるという期待でさなの両親はワクワクしていた。しかし、それこそブラックジャックのいう地獄への入口であった。
ブラックジャック「包帯がとれましたぜ」
包帯がとれて子供達の新しい顔が明らかになった。だが、その顔にさなの両親は衝撃を受けた。
さなの父「そ、そんな……」
さなの母「何で…、何でさなの顔になっているのよ!!」
そう、さなの兄弟の新しい顔はさなそっくりに整形されていたのであった。その事で頭に血が上ったさなの父親はブラックジャックの胸倉を掴んだ。
さなの父「どういう事なんだ!?なぜ…、なぜ私達の大切な子供達の顔をよりにもよってさなの顔なんかに!?」
ブラックジャック「お前さん達はいい顔ならば何だっていいと言ったじゃないですか。私はそれを守り、整形しただけですよ」
さなの母「すぐに元通りに整形し直しなさいよ!あんな恥さらしの顔に見つめられたら生きていけないわ!!」
ブラックジャック「それこそ、さなを捨てたお前さん達の罪だ!これから一生、お前さん達は捨てた娘の顔と向き合って生きていくんだ」
あまりのショックにさなの両親はうなだれてしまった。病室を出ようとしたブラックジャックは一旦、立ち止まった。
ブラックジャック「あの時、嘘でもさなを愛していると言ってくれたら、別の顔にするつもりでした」
うなだれるさなの両親を横目にブラックジャックは病室を出て、迎えに来た医師と共に見滝原へ帰り、元の世界へと帰った。
S.O.N.G潜水艦
帰ってきたブラックジャックの様子がいつもと違う事に沙織達は気付いていた。
氷河「ブラックジャック、いつもと様子が違うな…」
沙織「きっと、向こうで何かあったのだと思います」
紫龍「そう言えば、ブラックジャックは幼い頃に父親に捨てられたそうだ」
星矢「もしかすると、自分の親父みたいな人間を見かけて、そいつに報復したんじゃないのか…?」
並行世界でブラックジャックがやった事の予想はある程度はできていた。
ブラックジャック「(待っていろ、間影三…。お前が俺を呼び出した時こそ、復讐の時だ…。どう復讐すべきかのプランは既に考えてある…。さなの家族への報復を行った時にな…)」
自分と母親を捨てた恨みで、父親が自分に電話をかける時こそ、復讐の時だとブラックジャックは判断していた。
みかづき荘
そして翌日…。
フェリシア「おい、テレビを見ろよ!すげえニュースがあるぞ!」
いろは達がニュースを見ると、衝撃的な内容であった。
キャスター『今朝5時頃、里見メディカルセンターで二葉一家が死亡しているのが見つかりました。死因は刃物を使った事による失血死で、争った痕跡もない事から、警察は無理心中を図ったものとみて、捜査しています』
いろは「ブラックジャック先生…、さなちゃんの家族を無理心中に追いやったなんて…」
やちよ「それだけ、あの人は二葉さんを自分と重ねてて、二葉さんを捨てたあの家族が許せなかったのよ。あの人の尋常でない怒りと憎しみはあなたも肌で感じたでしょ?」
やちよの指摘にいろはは返事はないながらも、一緒に病院に来た際にブラックジャックの怒りと憎しみを感じ取っていた。
鶴乃「いくらさなを傷つけてたとはいえ、家族が死んだのは…」
さな「もう気にしてません。だって…私の居場所はここだから…」
いろは「さなちゃん…」
フェリシア「もう腹減ったぞ…。さっさと飯にしようぜ!」
フェリシアが空腹に耐えられなくなったために食事となったが…。
鶴乃「ねえ、もしかしてブラックジャック先生がモデルの天才外科医のウワサが出てくる可能性って…あり得る?」
やちよ「出てくるかどうかはわからないけど、出てこない確率は特別高いわけじゃなければ、特別低いわけでもないと思うわ」
フェリシア「天才外科医のウワサが実在したら、メスで切り刻んだりするんじゃねえか…?」
鶴乃「それって、超怖いんじゃない!?」
新しいウワサとして、ブラックジャックモデルの天才外科医のウワサが出てくるのではないかと思ういろは達であった。ブラックジャックの報復によってさなの家族は無理心中によっていっぺんに死んだが、さなは新しい居場所を見つけ、決意して生きる事となった。
町
一方、静香達は七井夫婦とその支援者達の力を借りて時女の血を引く魔法少女達に連絡をとって時女一族の魔法少女集団を作る一方、都会に行った事がない静香のために麓の街を訪れ、街中に慣らさせていた。
静香「こ、これは人間の川…。人の作った水流そのもの…」
清十郎「おいおい、神浜はもっと人通りが多いぞ。これくらいで立ち止まってたら、まともに街中を歩けなくなるぜ」
静香「そんな事言われても…」
すなお「意識をしっかり保って、静香。これは、ただの人の流れです。そのうち慣れますから…」
ちはる「あぁ、ダメ……」
清十郎「ちはるの方は悪意を嗅ぎ取る能力が裏目に出ちまったみたいだ」
すなお「神浜市を移動するだけでも大変な事になりそうですね、清十郎さん…」
清十郎「ああ、田舎育ちと都会育ちでは、価値観も違うからな。超が付くほどのド田舎で生まれ育った静香が慣れるのは、当分先だろうな…」
静香とちはるに呆れ、呟く清十郎であった。
これで今回の話は終わりです。
今回はブラックジャックが透明人間のさなの手術を行った他、今小説では今まで描かれなかったブラックジャックの復讐者としての一面が露わになり、さなを捨てたさなの家族に対し、火傷を負って顔が崩れた子供二人の顔をさなそっくりに整形するという、とんでもない報復を行う話です。
この話の元ネタは『えらばれたマスク』が元ネタで、さなを捨てたさなの家族に罰が当たるのであれば、こんな感じがいいと思って考え、執筆しました。
これで深碧の巫編は終わり、次は前倒しする形で竜姫咆哮メックヴァラヌス編となります。ちなみに、深碧の巫編と同じく訃堂のクソジジイは黒幕ですらなく、ある組織のメンバーが黒幕となります。
そして、久しぶりに杳馬もまた出てきます。