セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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竜姫咆哮メックヴァラヌス編
167話 メックヴァラヌス


リディアン

 

 時女の集落での騒動からしばらくしてからの事であった。

 

弓美「星矢さん達って、世界の支配を企む色んな敵と戦ってきたんですよね?」

 

星矢「ああ、俺達聖闘士は神話の時代から神々などのずっとこの世に蔓延る邪悪と戦ってきたからな」

 

詩織「何だか、身近にいるヒーロー的な感じがしますよ」

 

弓美「うんうん、まさしく星矢さん達は漫画から飛び出したスーパーヒーローだよ!」

 

星矢「こうも俺達がヒーローと言われるとはなぁ…」

 

創世「でも、星矢さん達はヒーローっていうより、割とどこにでもいるようなお兄さんに見えるよ」

 

氷河「そうだろうな。お前達からはヒーローに見えても、俺達だって人間だ」

 

紫龍「喜び、怒り、悲しみ、それらは俺達にも持ち合わせているものだ」

 

瞬「それじゃあ、僕達は帰るね」

 

 星矢達はS.O.N.Gの本部へ向かった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 星矢達は本部に来て、並行世界の聖域から代表として来ていたムウとある事を話していた。

 

ムウ「近頃のカルマノイズ絡みの事件は必ずといっていい程、杳馬が絡んでいますね…」

 

パルティータ「ええ。あの男はヴィマーナがあった並行世界で初めて遭遇し、それからは神出鬼没でどの世界にも現れ、騒動を煽るような行動をとったわ」

 

星矢「そもそも、杳馬はどうやって並行世界を渡っているんだ?」

 

紫龍「奴はギャラルホルンのゲートを使っている様子はない。何か別の方法で並行世界を移動しているんだろう」

 

氷河「その方法は何だろうな…?」

 

 そう言ってると、警報が鳴った。

 

弦十郎『総員、聞こえるか!緊急事態だ!本艦内に正体不明の敵性体を複数確認!聖闘士と装者各員は至急、指定のブロックに向かってくれ!』

 

瞬「わかりました!」

 

星矢「さて、どんな奴が侵入してきやがった?」

 

 星矢達は指定の箇所に向かった。そこには、何やら蛇のような怪物がいた。

 

氷河「蛇のような怪物か…」

 

ムウ「油断は禁物ですが、慎重さと豪胆さをもって挑みましょう!」

 

 ちょうど来ていたムウも助っ人に入り、あっという間に怪物達を一掃していった。発令所でも多くの機能がやられていたものの、星矢達の活躍はしっかり確認されていた。

 

あおい「聖闘士と装者達による掃討が開始されました。現在、聖闘士の圧倒的な攻撃力と速さにより、一気に数を減らしているようです!」

 

沙織「あの敵は一体…?」

 

エルフナイン「パターンの照合、完了しました!」

 

朔也「恐らくは、ネフィリムと同タイプ…自律稼働型の聖遺物に近しい存在と思われます!」

 

弦十郎「(どこだ?敵の狙いはどこにある…?新たなる超常兵器を送り込む、その理由は…)」

 

 一方、星矢達はあっという間に敵の大半を倒してしまった。

 

切歌「あまりにも早く星矢達が敵を倒したせいで、あたし達は1体程度しか倒してないのデス…」

 

マリア「そう言わないの。星矢達のお陰で被害も最小限にとどまっているのだから」

 

沙織『皆さん達にはこれから、3チームに分かれて行動してもらいます。まず、響さんと翼さんにクリスさんとパルティータで遊撃隊チームを、星矢達のチームとマリアさん達の残りの装者チームはそれぞれ、艦内の敵を掃討して負傷者の救助にあたってください』

 

瞬「わかりました!」

 

星矢「母さん、頼んだぜ!」

 

パルティータ「ええ!」

 

 パルティータがリーダーの遊撃隊チームは一気に進んでいった。一方、発令所では…。

 

美衣「敵はどこから来ましたか?」

 

エルフナイン「それが、ギャラルホルンにも異常がなかったので、急に現れたとしか言いようがありません!」

 

弦十郎「とすると、杳馬が絡んでいるのか…?」

 

慎次「遂に杳馬はS.O.N.Gの壊滅を目論んで」

 

沙織「いいえ、まだ侵入者が杳馬とは断定できない上に杳馬は愉快犯であるが故に行動が読めませんが、S.O.N.Gを壊滅させると楽しみがなくなるが故に今の段階で我々を徹底的に潰す気は毛頭ないでしょう」

 

 ふと、弦十郎はある事に気付いた。

 

弦十郎「そうか、敵は何かを求めて…、ここにしかない何かを!ここにしかない異端技術を、シンフォギア・システムの秘密を!!」

 

 その事は翼達に伝えられた。

 

翼「なるほど、敵の目的はシンフォギア・システム…。なのに、こちらに直接手を出してこないという事は…」

 

クリス「本部電算室!そこに記録されたありとあらゆるシンフォギアのデータを狙って」

 

 そこに、誰かがいたのであった。

 

響「翼さん、クリスちゃん、あそこに!」

 

 視線の先にフードを被って正体を隠している奴がいた。

 

翼「S.O.N.G本部を強襲し、職員らを害した…この一連の狼藉はお前の仕業か!」

 

 しかし、何も答えなかった。

 

クリス「おい、なんとか答えやがれ!今の相場、金(ちんもく)よりも銀(ゆうべん)の方が価値は高いぞ?」

 

???「賊心より産まれ這う、口縄の蒼きよ…」

 

 何者かは怪物を出してきた。

 

響「ずっと巨大で…、さらに炎を纏わせた怪物を」

 

クリス「はっ、姿を隠してみたけれど、声はずいぶんと可愛らしい…。中身は女か?それもあたしらと大差ない」

 

???「怒涛せよ、アングィスマシリアス!(全く、あの人はいつもいつもこんな事ばかり押し付けて…)」

 

 『あの人』に愚痴りつつ、何者かはアングィスマシリアスという蛇の怪物を差し向けたが、パルティータに瞬殺された。

 

パルティータ「私も忘れてもらっては困るわ」

 

???「まだなの?予想以上に敵が強すぎるせいで」

 

???A「もう終わったよ」

 

 何者かを追い詰める中、本部電算室から長い金髪で仮面を被ったいかにも怪しい男が現れた。

 

???「エンブリヲ様、このままだと敵に包囲されて袋のネズミです!」

 

エンブリヲ「焦らない焦らない。あの子達を招待するのも作戦のうちじゃないか」

 

翼「貴様がこの一連の狼藉を働いた親玉か!」

 

エンブリヲ「ふふふ…。君達を今から、私達の世界の招待しよう!」

 

 そう言って、エンブリヲはカギを出し、起動させた。

 

響「な、何が起こるの!?」

 

クリス「そんなの、知るかよ!」

 

パルティータ「みんな、衝撃に備えて!」

 

 エンブリヲが起動させたカギにより、響達はエンブリヲ達共々、姿を消してしまった。それから後…。

 

朔也「全ての不明敵性体、活動を停止。その後に自壊を確認しています…」

 

ムウ「ようやく落ち着いたようですが…」

 

美衣「こちらの被害は甚大です」

 

沙織「さらには…、パルティータ率いる遊撃チームがエンブリヲと名乗る謎の襲撃者により、共に消えてしまいました…」

 

未来「もしかして…」

 

紫龍「いや、通信ではエンブリヲと名乗る男は『私達の世界に招待しよう』と言っていた」

 

氷河「ならば、エンブリヲのいる世界に飛ばされたと考えるべきか…」

 

切歌「すぐに追いかけるデスよ!」

 

調「私達もエンブリヲがいる世界に!」

 

エルフナイン「それが…、敵はギャラルホルンとは別の方法で並行世界を渡ったので、できないんです」

 

未来「そんな…」

 

ムウ「逆に考えましょう。敵がギャラルホルンなしで並行世界を渡った方法がわかれば、杳馬がどうやって並行世界を渡り歩いているのかなどがわかるかも知れませんよ」

 

マリア「ムウ…」

 

星矢「まぁ、ウジウジしてたってしょうがねえし、前向きに行こうぜ!」

 

未来「星矢さん…」

 

弦十郎「星矢の言う通りだ。意気消沈してる暇なんかはない!俺達は今、やるべき事をやるしかないんだ!」

 

 星矢の言う通り、前向きに行くしか方法はなかった。

 

 

 

学校

 

 エンブリヲにより、エンブリヲの世界に飛ばされた響は意識を失っていたが…。

 

翼「起きろ、目を覚ませ、立花!」

 

クリス「いつまで寝こけてやがる、敵だ!すっかり敵に囲まれて!」

 

響「…敵?あの、炎を纏った正体不明の…!?」

 

 起き上がると、何やら学校の敷地内である上、ノイズの群れに包囲された。

 

響「違う…、ノイズの、群れ?何が…どうなって……?」

 

 状況が呑み込めない響は混乱していた。

 

翼「呆けるな、立花!今、パルティータ女医はこの辺りの調査をしてて不在だ!」

 

クリス「さっさとこっちを手伝いやがれ!」

 

響「は、はいっ!」

 

 響は翼達と共にノイズを全滅させた。

 

響「さっきまで、S.O.N.Gの本部で戦っていたはずなのに…」

 

???「恐らく、あのエンブリヲという男が持つカギのせいでこの世界に来てしまったのかも知れないわ」

 

 調査を終えたのか、パルティータが戻ってきた。ふと、響は見回すとある事に気付いた。

 

響「ここって…」

 

クリス「だな。リディアン音楽院だ。しかも、フィーネにメチャクチャにされる前の…」

 

パルティータ「私達はどこかの並行世界に来てしまったとみるべきよ」

 

翼「しかも、今回はギャラルホルンによるものではないから、ゲートも見当たらないな…」

 

パルティータ「襲撃者なら、エンブリヲという男と共に姿を消したわ。しかも、奴は『私達の世界に招待しよう』って言ってたわよ」

 

クリス「何の目的であたしらをこの世界に引きずり込んだよ?」

 

パルティータ「そこまではまだわからないわ」

 

響「そうだ!さっきの戦闘で襲撃者のマントの下がチラリと見えたんです」

 

クリス「マントの下?中身の事か」

 

響「うん…、あれは間違いなく…私達の通う、私立リディアン音楽院の制服だった」

 

クリス「リディアンの、制服ぅ!?」

 

翼「旧校舎という事は、地下に二課の施設があるかも知れない。まさか、あの敵は…」

 

パルティータ「誰か来るみたいよ」

 

 五感を研ぎ澄ましているパルティータはいち早く誰かが接近する事に気付いた。来たのは、黒服達であった。

 

黒服A「動くなっ、侵入者ども!発砲の許可は下りている!」

 

響「もしかして、この人達は…」

 

黒服B「我々は特異災害対策機動部二課!速やかに身に纏った武装を解除するんだ!」

 

黒服C「本部、聞こえますか、本部っ!ノイズ反応の検知地点にて、不審人物を発見!指示をお願いします!」

 

クリス「指示も何も、豆鉄砲でどうにかできるあたしらじゃないぞ」

 

 突如、パルティータは光速で黒服に迫り、拳を寸止めした。

 

パルティータ「わかったのなら、手荒な真似はしないで。そうすれば、私達も何もしないから」

 

黒服C「くっ、どうすれば…」

 

???「どうにかするわよ」

 

響「この声…、もしかして…」

 

黒服B「来てくれたのか!」

 

 現場に駆け付けたのは、弓美、詩織、創世といった元の世界での響と未来のクラスメイトであった。

 

創世「みんな、お待たせ!」

 

詩織「そちらの方々が、二課敷地内への侵入者ですか?」

 

弓美「へぇ、面白そうなの纏ってるじゃない」

 

響「な、なんで…みんながここに?」

 

弓美「だけど、その輝きは…悪の手先に似合わない!行くわよ!」

 

弓美達「メックヴァラヌス、テイクオフ!」

 

 掛け声とともに弓美達はシンフォギアでもファウストローブでもないエネルギー固着プロテクター、メックヴァラヌスを装着した。

 

パルティータ「メック……ヴァラヌス…?」

 

響「うぇええええっ!?ど、どういう事おおおおっ!?」

 

翼「リディアンの隠された目的の一つに、適合者の選出がある…」

 

クリス「つまり、あたしらのいないこっちの世界では、あいつらが装者として…」

 

弓美「ごちゃごちゃ言わない、パチモン三馬鹿と怪しい鎧の女!」

 

響「パチモンなんかじゃない!ぶっ飛びのオリジナリティ、シンフォギアだっ!」

 

創世「あ、三馬鹿ってのは否定しないんだ?」

 

翼とクリス「断固否定させてもらう!」

 

弓美「機密の機密ゆえに、著作権保護されてないあたし達のメックヴァラヌスをパチるなんて…ほんと、絶対に許せない!」

 

詩織「え?怒りの矛先、そこであってるのでしょうか?」

 

響「む、向かってくるよ!どうすれば、感情が追いつかない!」

 

弓美「これより、メックヴァラヌス盗用裁判を開廷する!即、言い渡す、私情にまみれた判決は…!!!」

 

 弓美達は襲い掛かってきたが、数々の戦いを経験してきた響達に一蹴された。

 

翼「勝ったな」

 

クリス「っていうか、弱ぇ…」

 

パルティータ「私が出るまでもなかったわね」

 

弓美「…逆転された…、裁判に…」

 

詩織「随分と…舐められたものです…。メックヴァラヌスを相手に鼻歌混じりだなんて…。おまけに、大人の人に至っては手を下すまでもないという様子でしたし…」

 

創世「違うよテラジ…。彼女達、鼻歌なんかじゃなく本意気で唄ってた…」

 

弓美「まさかまさかの、本気の舐めプ?伝え聞く、全力の手加減って、そういう…」

 

創世「たとえ手加減だろうと、相手の全力には全力で…。こちらの全力、『Dモジュール』さえ解除されていたら…」

 

パルティータ「(Dモジュール…?何だか、イグナイトを連想させるようだわ…)」

 

響「悔しさはわかりますが、そろそろお話しさせていただけないでしょうか?」

 

 響の言うお話は黒服達は歪曲して明後日の方向に考えていた。

 

黒服A「くっ、『お話し』とは一体何を指す隠語なのか!?ああ、みるからに狂猛な黄色い子が間合いを詰めて…」

 

黒服B「メックヴァラヌスを…、竜姫達を守るんだ…。夷荻の走狗に国の宝を踏み躙らせるものか!」

 

黒服C「俺達に正義と勇気を教えてくれたちっさい人を…、今度はこの手で助けるんだ!」

 

黒服達「うおおおおおおっ!やらいでかぁああああっ!!」

 

 向かっていく黒服達だったが、動けなくなった。

 

翼「影縫い」

 

黒服B「か、身体が…」

 

翼「動きを封じる対人戦技だ。いい加減状況を前に進めたくてな」

 

 響は弓美に近づいた。

 

響「あの…」

 

弓美「何よ…止めでも刺すつもり?」

 

響「ううん、手をとって」

 

 響は手を差し伸べた。

 

弓美「え…?」

 

響「私達は戦いに来たんじゃないんです。だから、攻撃してごめんなさい」

 

 響はギアの装着を解除した。

 

クリス「おい、ここでギアの装着を解除したら」

 

翼「大丈夫。ここは立花に任せるんだ」

 

響「もしよかったら、お話しを聞かせてくれませんか?大切な人が気付かせてくれたんです。武器を向けてじゃなく、こうしてお花みたいに手を開いて…」

 

弓美「あんた…何なの…?」

 

響「私は立花響。あなた達の…友達。友達になりたいんだ」

 

弓美「友達…?」

 

 その場にいる一同は装着を解除した。

 

クリス「ったく、いつもながらにヒヤヒヤさせる…」

 

翼「立花に付き合うのは並大抵の覚悟では済まないな」

 

 ギアの装着を解除した際に影縫いに使っていた小太刀も消えた。

 

黒服A「う、動ける!動けるようになったぞ!影を縫い留めていた、小太刀が消えると…」

 

 弓美達は黙り込んでいた。

 

響「…お話し、ダメ?」

 

詩織「わかりました。降参いたします。敗者は大人しく、勝者の言う事に従います」

 

弓美「って、なんであんたが答えてるの!?」

 

詩織「悪い人とは思えなかったので…」

 

創世「話をするのは構わないけど、込み入った内容なら、代行と直でしてもらえないかな?」

 

クリス「…代行?」

 

???「やれやれ、さっきの騒動は何だったんだい?」

 

 突然、声がしてその方へ視線を向けると、そこにはいつの間にか髪が長くて金髪である上、特徴的な前髪の美形の男がいた。

 

黒服A「いつの間に…?」

 

詩織「大二さんはいつも神出鬼没ですね」

 

大二「よく言われるよ」

 

翼「あなたは…?」

 

大二「自己紹介がまだだったね。僕の名前は風鳴大二」

 

クリス「風鳴?ってか、先輩の」

 

翼「雪音!」

 

 翼に言われ、クリスはそれ以上は言わなかった。

 

創世「話に割り込んでますけど…」

 

大二「まぁまぁ、ここからは僕が言うとしよう。凪景義は特異災害対策機動部二課の司令代行でね、さなぎマンという通称があるんだ」

 

 そこへ、通信が入った。

 

景義『わーおっ、失敬な!僕(ボキ)はそんなあだ名でも、ましてや司令代行などというまだるっこしい官職でもない!特異災害対策機動部二課、期待の新司令、凪景義と覚えてくれたまえ!』

 

翼「私は風鳴翼。私達に交戦の意志はなく、協力を仰ぎたく参上した」

 

景義『か、カザナリ!?』

 

パルティータ「声が裏返ったわね」

 

弓美「時々、ああなるんだよね」

 

翼「何か、おかしな事でも?」

 

大二「いや。景義君、彼女達は僕が本部へと案内するよ」

 

景義『わ、わかりました!』

 

大二「さ、行こうか。二課本部へ」

 

クリス「何だ?あのへんな前髪の男は。それにしても、急展開に次ぐ急展開だな」

 

響「でもこれで、ようやく話ができそうだね」

 

翼「2人とも気を抜くな。この先もきっと伏魔殿」

 

大二「大丈夫だよ。そこには鬼も蛇も出ないから」

 

 謎の美形の男、風鳴大二をパルティータは注視していた。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 大二に案内されて響達はこの世界の二課本部へ向かっていた。

 

翼「しかしなんといったものか…。なかなかに趣きある人物が司令なのだな…」

 

創世「司令代行ね。本来の司令は」

 

大二「創世君」

 

創世「あ、すみません」

 

クリス「間が悪いな。話がしたいと言ったのはこっちだが、正直嫌な予感しかしない…。ま、どんな奴かは実際に会ってみればわかるか。あたしは雪音クリス。よろしく頼む」

 

パルティータ「私は真倉闇音よ」

 

弓美「こっちもちゃんと名乗ってなかったわね。あたしは板場弓美。そっちが安藤創世と寺島詩織よ」

 

響「やっぱり!」

 

詩織「やっぱり…?どこかでお会いしていましたでしょうか?」

 

クリス「……今は気にしないでくれ。その辺の事情も、おいおい説明するから」

 

創世「説明…。うん、どんな事情があってあそこにいたのか、司令代行のところに着いたらしっかり説明してほしいな」

 

翼「もちろんだ。にわかには、信じられないかも知れないが……」

 

詩織「板場さんは突飛なアニメを見ていらっしゃいますので、多少の事では動じたりしませんわ」

 

弓美「そうよ!あたしは鍛えているんだからねっ!って、何であんたが言ってるの?」

 

 こうして、発令所に来たが、そこには太っていて冴えない男で、司令代行である景義がカンカンに怒っていた。

 

景義「よくも、特異災害対策機動部二課を率いる僕を謀ったな!調べさせてもらったが、風鳴の家に翼という名の人物は存在していないっ!」

 

詩織「この短時間で、身辺調査を…」

 

弓美「昔からキーワード検索とか、Web上のリンクを辿るとか得意だもんね、代行は…」

 

景義「検索とかリンクだとかではない!ハッキングだ!データベースに侵入し、個人情報を覗かせてもらったんだ!」

 

弓美「それはそれで、犯罪的というか変態的というか」

 

景義「ビッグネームをちらつかせれば、うぶな僕が怯むとでも思ったようだが、そうはいかん!こうなったら、全部洗いざらい吐いてもらう!まず、君達はどうやって二課敷地内に侵入した!?仰陽館女学院からの出入り口はすべて厳重なセキュリティが作動しているはずなのに!」

 

パルティータ「(私にしてみれば、とっても緩いものよ…)」

 

響「仰陽館女学院!?」

 

クリス「ここって、リディアン音楽院の地下じゃないのか?」

 

景義「何を騒いでいる!?特異災害対策機動部二課は、仰陽館女学院の血かに位置する隠し砦!特異災害ノイズに対抗しうる技術、メックヴァラヌスの機密を探りにやってきたのだろう!」

 

クリス「…先輩」

 

翼「ああ、そろそろ頃合いだな」

 

 その様子を響とパルティータも横目で見ていた。

 

翼「…信じていただけるかはわかりませんが、順を追ってお話ししましょう」

 

景義「…許可する。さっさと話したまえ」

 

クリス「…こいつ、いちいち気に障る話し方だな……」

 

翼「発端は私達の所属する組織に、予期せぬ襲撃者が現れた事でした」

 

 翼は説明していった。

 

翼「そうして、その襲撃者によって私達は並行世界を渡り、事故に近い形でこの場所に出現したのです」

 

パルティータ「そうよ。そして、その襲撃者のうちの1人は長い金髪と仮面が特徴の男です」

 

景義「無数に存在する並行世界!?メックヴァラヌスに比肩するシンフォギア!?夢がある!だがリアリティは欠片もない!つくならもっとうまい嘘にするべきではないかね!?おおかた、どこかの国の」

 

大二「まあまあ、どこかの国の特殊機関所属だとは僕は思えないよ。特に響って子は嘘をつくのがダメっぽいし…」

 

景義「た、大二様!」

 

クリス「(大二様…?)」

 

大二「木陰で見てたけど、メックヴァラヌスを纏う竜姫はシンフォギアを纏う戦姫に負けたんだよ。それをわざわざ奪いに来るのかい?」

 

景義「大二様まで肩を持つ気ですか!?」

 

弓美「代行、あたしは彼女達を信じようと思う。さっきのあんた達、アニメみたいでちょっとかっこよかったよ。戦闘の強さも、その後の優しさも。…だから、あたしは信じてみる事にしたんだ」

 

景義「殴り合って分かり合うなんて、アニメかね!?」

 

弓美「アニメじゃない!本当の事だよ。…だよね?」

 

響「そうだよ」

 

大二「そこについてはとても興味深い。私も信じるよ。だから、君も信じてみたまえ」

 

景義「大二様、正気ですか!?」

 

クリス「さっきから、そいつについて大二様って言ってたけど…、そいつは何者なんだ?」

 

弓美「大二さんは仰陽館女学院の理事長でね、アニメから飛び出してきたようなすっごいイケメンなんだよ!」

 

創世「この人のお父さんは1年前に失踪した前の仰陽館女学院の理事長の風鳴訃堂って人で、おじいちゃんがこれまでやってきた仕事を引き継いでテキパキこなす上、弓美も言ったようなかなりのイケメンぶりで入学したい女子も多くて、入試の倍率も凄くなってるんだ」

 

詩織「それに、いつも学園の草花のお手入れをしてくださったりしています」

 

 大二が訃堂の息子である事に一同は衝撃を受けた。

 

響達「えええ~~~~っ!?」

 

クリス「訃堂のジイさんと全然似てねえぞ!」

 

大二「そこはよく言われるよ。それに、僕はアンチエイジングを積極的にやってて、ここまでの若さと美しさをキープしたのさ」

 

創世「大二さんは学院の理事長さんだと思っていたけど…」

 

景義「き、気安いぞ!仰陽館女学院二代目理事長とは仮の姿、このお方こそ、失踪した特異災害対策機動部二課の初代終身名誉司令、風鳴訃堂様の次男坊にして二代目終身名誉司令、風鳴大二様である!!」

 

装者達と三人娘「えええええええっ!?」

 

詩織「だって、大二さんはいつも板場さんのアニメの話に付き合ってくれますわよ!?」

 

創世「どんな話でも、優しく聞いてくれるよね」

 

弓美「大二さんは凄いんだよ!なんと、ありとあらゆるアニメと特撮の知識を持っている超オタクなんだから!」

 

大二「照れるなぁ…」

 

景義「って、コラーッ!何を楽しく盛り上がっているのだ!?僕だって行方不明になった訃堂様はおろか、大二様とさえそんな話した事ないのに!」

 

大二「済まないね、僕は以前から堅っ苦しいのが苦手だからこういったのが大好きで、お父様によく怒られてたよ」

 

詩織「まさか、大二さんが二課の司令だったなんて…ナイスです!」

 

大二「お父様の後を継いだただの名誉職に過ぎないよ。これまで通り、気軽に声をかけてほしい」

 

弓美「ありがとう、大二さん!」

 

景義「ぬううううん…」

 

翼「(お父様には上の兄弟がいると聞かされていたが、まさか並行世界でとはいえ、次男坊と対面するとは…)」

 

クリス「(会った事はおろか、名前も知らない伯父に会ったからな…)」

 

大二「さて、並行世界からのお客さん方。僕達に接触してきた目的を教えていただきたい」

 

翼「…私達の世界から盗まれた情報を取り戻し、私達の世界へと無事に帰る事です」

 

大二「なるほど、奪還と帰還…という事か。だったらその目的、僕達も協力しよう」

 

景義「協力!?」

 

大二「そうだよ」

 

響「私達の話、信じてくれたんですね!」

 

大二「そうだよ。そして、竜姫達が信じてくれたから、僕も君達を信じることにした」

 

クリス「そこまで物わかりがいいと、逆に裏があるんじゃないかって思えてくるんだが…」

 

大二「まぁ、君の言ってる事も間違いではないよ。僕は協力に対して見返りを期待している」

 

翼「見返りとは…?」

 

大二「この世界にはノイズが出現するのを君達はご存知かな?」

 

翼「はい。私達の世界にもノイズは存在しましたし、この世界でも既に相対しています」

 

大二「だったら話が早い。竜姫達と共に出現するノイズを倒してほしい。ダメかい?」

 

弓美「…あたし達からも、お願い。シンフォギアが協力してくれれば、きっとみんなを守れる…」

 

詩織「私達は、1人でも多くの人を助けたいんです」

 

創世「ずっととは言わない。ここにいてくれる間だけでも、一緒に戦ってくれないかな?」

 

響「翼さん…、クリスちゃん…。私からも」

 

弓美「…みんなの明日を、救いたいんだ」

 

クリス「……わかった。こっちの目的に協力してくれるなら、その分ぐらいは働くさ」

 

翼「人を守るのが、シンフォギア装者の責務。その信念は、いかなる世界に在ろうと揺るぎはしない」

 

弓美「ありがとう!」

 

詩織「心強いですわ」

 

創世「本当に助かるよ。よろしくね」

 

大二「滞在に必要なものはこっちで用意するよ。今日は、ゆっくり休みたまえ」

 

響「はい!」

 

 一方、パルティータはほとんどしゃべらず、警戒している様子であった。

 

大二「君はどうするんだい?」

 

パルティータ「私は戦姫と竜姫のサポートをやらせていただきます。一応、ノイズと戦えますので」

 

景義「シンフォギアもメックヴァラヌスもないのにか?」

 

パルティータ「私は、それらとは違う特殊な力でノイズに対抗できます。あと、聞きたい事があります」

 

大二「何だい?」

 

パルティータ「あなた達はシルクハットにスーツを身に纏い、顔に無精ひげが生えている男に心当たりはありませんか?」

 

景義「スーツに無精ひげ…。僕は知らないよ」

 

大二「僕も知らないが、もし会った時は連絡しよう」

 

パルティータ「わかったわ」

 

 杳馬の名前を伏せてパルティータは杳馬を知らないか聞いたところ、2人とも心当たりはなかった。しかし、大二はほんのわずかだが、反応した。それをパルティータは見逃さず、その場は追及しないでおいた。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は響達が謎の仮面の男、エンブリヲによって並行世界へ飛ばされるのと、そこでメックヴァラヌスを纏う弓美達と遭遇するのを描きました。
今小説のメックヴァラヌス編ではギャラルホルン編に収束して終わるようにするため、黒幕は訃堂ではなく、ある組織のメンバーがそれを担っており、訃堂の扱いは最悪な事になっています。
そして今回、謎の襲撃者の親玉と思わしき仮面の男、エンブリヲは福田監督が大きく携わった電童、ガンダムSEEDシリーズ、クロスアンジュの3作品のラスボスの要素を詰め込んだ悪役として描いていくので、原作でもスパロボでも最低最悪ぶりを存分に発揮したゲス男であるクロスアンジュのエンブリヲがガンダムSEEDのクルーゼの仮面を被っているものと思ってください。エンブリヲの正体についても、もうこの段階で伏線は張っています。残る電童のガルファ皇帝とその分身のゼロの要素については、話が進めば判明していきます。
次の話は響達の仰陽館女学院での生活が始まります。

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