セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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168話 仰陽館女学院と背負う理由

S.O.N.G潜水艦

 

 本部修復の作業中、弦十郎はある事を考えていた。

 

沙織「どうされましたか?」

 

弦十郎「……近頃、鎌倉の方から何も言わないのが不気味でな…」

 

慎次「そうですね。今までは色々と言ってましたが、アダムとの戦いの後はピタリと何も言わなくなりましたね」

 

弦十郎「こちらが通信を入れたら逆に『つべこべ言う暇があるなら、成果を出せ!』と言われるぐらいだしな」

 

沙織「何か、企んでいるのでしょうか…・」

 

弦十郎「わからん…。八紘兄貴も逆におかしく思っているぐらいだが…、一体親父に何があったんだ…?」

 

 

 

???

 

 そんな弦十郎の様子を杳馬は小宇宙によるモニターで見つめていた。

 

杳馬「んははははっ!あいつら、ジジイそっくりな上、ジジイの人格をコピーして完成させたオートスコアラーを本物だと思い込んでやがる!本物は既にぶっ殺してダンナが取り込んだけどな!」

 

 訃堂そっくりに造ったオートスコアラーをモニターで杳馬は見つめていた。

 

杳馬「ただ、本物と違う所は俺の命令に忠実である事。ま、当面の間は人形ジジイを通して色々とシナリオを進めてみるか」

 

 訃堂そっくりのオートスコアラーを使って訃堂の権威を利用し、杳馬は自分の描くシナリオを進める事にした。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 響達はこの世界の二課に元の世界に帰るために協力してもらう代わりに、この世界のノイズ退治を手伝う事となった。

 

景義「非常に不本意ではあるが、これより君達の事は客人として扱わせてもらう。ただし、管理者である僕の目が届くよう、闇音君以外は竜姫と同じように生活してもらうからそのつもりで。いいね?」

 

クリス「いいも悪いも、つまりどういう事なんだ?」

 

大二「仰陽館女学院の生徒として過ごし、寝泊まりは学生寮でしてもらうよ」

 

響「私達が学院の生徒に!?なにゆえ!?」

 

詩織「代行は、仰陽館女学院の校長も兼任していらっしゃいますから」

 

創世「そっちも代行だけどね。管理下に置くつもりだとしたら、都合がいいんじゃないかな」

 

クリス「いろいろ気になるが仕方がない。元の世界の生活とそれほど変わらないのが救いだな」

 

翼「私は既に卒業した身…」

 

響「つまりはまた、翼さんの制服姿が見られるって事ですよね!?」

 

翼「今更面映ゆいを通り越し、身体の細胞達が悲鳴を上げるように拒絶しているのだが……」

 

詩織「映像作品の種類によっては、30代40代を過ぎても、学生服に袖を通して演じる俳優さんがいらっしゃいます」

 

翼「果たして…それはそれで、私への説得になっているのか甚だ疑問ではあるのだが……」

 

詩織「ナイスです」

 

景義「何を楽しそうにしている。学院編入の手続きや準備は済ませているのかね!」

 

弓美「そんなに簡単にできるわけないでしょ?うるさいのは放っておいて、次は学生寮に案内しちゃうね」

 

 響達は学生寮に向かった。

 

大二「闇音君はどうするのかね?一応、学校職員寮を提供するが…」

 

パルティータ「私は向こうで医師免許をとっているので、何かあった時にいつでも動ける医療スタッフ兼戦闘員として行動させていただきます」

 

景義「だが、いつでもとはいっても、遠ければ」

 

 何か言おうとした時には、パルティータはいなくなっていた。

 

景義「や、闇音君が消えた!?どうなっているのかね!?」

 

大二「恐らく、彼女は忍者か何かだよ。これなら、彼女のいう『いつでも動ける』にちょうどいいじゃないか」

 

景義「そういうものかね…」

 

 実際は小宇宙錬金術による光の屈折に加え、あらゆるセンサーに感知されない透明化と気配の遮断、そして数千年に及ぶ隠密行動を重ねた経験によるものであった。パルティータは発令所を出た後、透明化と気配遮断をしてから二課を散策していた。

 

パルティータ「(さて、少し二課を散策してみたけど、ギャラルホルンはあったわ。でも、起動していないから、当面は帰るのは無理そうね)」

 

 そんな時、何かの呻き声がした。

 

パルティータ「(呻き声…?何かあるわ。今日のところはこの辺にしておくべきね)」

 

 気になったものの、それについてはまた後日調査するべきと判断したパルティータはその場から離れた。

 

 

 

学生寮

 

 響達は学生寮に来た。

 

響「この部屋のつくり!何もかもみな懐かしい!」

 

創世「竜姫も装者も管理下にあるとはいえ、腐ってもここは女子寮。盗聴器とかはないから安心していいよ」

 

響「え?盗聴器…?」

 

詩織「元々が政府お抱えのハッカーだからなのでしょうか…。代行は人のプライバシーを覗きたがるところがありまして……」

 

クリス「変態だ…人の上に立ちたがる変態がいる…」

 

弓美「まあ、実際そんなだったら、とっくの昔にあたし達が爆散させてるから、安心して」

 

翼「不安しかないな、この世界は」

 

弓美「いろいろ不慣れは慣れるからさ。とりあえず後は任せた」

 

詩織「私達も一旦、自室に失礼いたします」

 

創世「何かあったら、声をかけてねー」

 

 三人娘は一旦、部屋を出た。姿と気配を消して盗聴していたのか、三人娘と入れ替わるようにパルティータが入ってきた。

 

クリス「思いがけない助け舟ってのは、実際、思いがけないところから出向してくるんだな」

 

翼「伯父と思わしき見知らぬ美男のお陰で、存外簡単に協力を得る事ができたわけだが……、どっと疲れた…」

 

パルティータ「無理もないわね。今回はエンブリヲという男のせいで今のところは帰る事もできないこの世界に来てしまったのだし」

 

響「その甲斐あって、雨風凌げる天井と壁以外に新しい情報もいくつか入手できました」

 

翼「この世界に私達が存在しないばかりか、二課の構造、構成も大きく異なっている…」

 

クリス「さらに…資料と手渡されたファイルによると、ノイズの自然発生数は、あたしらの世界とは比べ物にならない。ざっと計算して、3794倍」

 

響「数字がややこしくてよくわからないけれど、私達の協力が必要なのはよくわかった」

 

翼「二課の隠れ蓑…外殻がリディアンでないところから、歌を力に変える櫻井理論が存在しないとも考えられるな」

 

クリス「そんな環境で完成したのが…メックヴァラヌス。竜姫と呼ばれる彼女達が身に纏う兵器ときた」

 

 ふと、クリスは制服に着替えた。

 

響「制服に着替えてどうしたの?クリスちゃん?」

 

クリス「リディアンと同じ、仰陽館女学院の制服…。兵器を纏うあの子達が通う学校、管理する組織…」

 

響「…それって!?ダ、ダメだよ、クリスちゃん!その先を簡単に考えちゃうのは!」

 

翼「異なるとはいえ、この世界に二課が存在しているのなら、ギャラルホルンを保有していてもおかしくはない」

 

パルティータ「それについてだけど、やっぱりあったわ」

 

響「ええっ!?」

 

クリス「仕事が早すぎだろ!?よく見つからなかったな!」

 

パルティータ「あんなセキュリティは大した事はないわ。けど、肝心のギャラルホルンは起動していないからあれで元の世界には帰れないわ」

 

クリス「希望があると思ったら、使えねえのかよ…」

 

パルティータ「でも、これで敵ははっきりとギャラルホルン以外の方法で世界を渡ったのが判明したわ」

 

翼「後は盗まれた情報を取り戻し、敵が持つカギみたいなアイテムを手にする事ができれば帰れる…」

 

 方針は固まった。そして翌日、響と翼も制服に着替え終わったら、弓美達がインターホンを鳴らした。

 

響「はい。どうぞ」

 

 弓美達は入ってきた。

 

創世「あ、ばっちり似合ってる」

 

詩織「確か、あちらの世界でも同じデザインの制服だったとか…。お似合いなのは、そのせいだからでしょうか?」

 

弓美「どう?眠れた?深夜アニメを見たりで、寝不足だったりしていない?」

 

クリス「お陰様で、朝までグッスリさせてもらった」

 

詩織「申し訳ありません。翼さんの制服、身長を合わせると、特待生用のデザインしかご用意できなくて」

 

翼「いや、これでいい。これだからこそ、あの頃の私に戻れる気がする」

 

弓美「授業は明日からなんだって。だから今日は、学院内の案内とか…どうかな?」

 

響「ほんと!?ありがとう!」

 

クリス「ほんと、至れり尽くせりだな」

 

弓美「なんのなんの。これもまた、あたしの務めなんだから!」

 

???「それじゃ、案内をお願いするわ」

 

 声と共にパルティータが姿を現した。

 

弓美「い、いつの間に!?闇音さんって、忍者なの!?」

 

翼「ま、まぁそれに近い存在だ…」

 

創世「とりあえず、行こうか」

 

 

 

仰陽館女学院

 

 案内のため、学院にやってきた。

 

生徒「会長、こんにちは」

 

弓美「オーースっ!もうすぐ新人戦でしょ。頑張って!」

 

生徒「わあ、覚えていてくれたんですね」

 

弓美「もちろん!応援してるから、全力で戦ってきなよ!」

 

生徒「はい、頑張ってきます!」

 

 回っていると、女子生徒から色々声をかけられた。

 

クリス「さっきから気になってたんだけど、会長って…?」

 

弓美「何を隠そうあたし達、生徒会の役員やってんだ」

 

創世「私が副会長でテラジは会計、そいでもってユミが生徒会長なんだよ」

 

響「(……ユミ……?)」

 

弓美「何よ、そんなに驚く事?やっぱ生徒会長たるもの、白ランとか木刀なきゃダメ?」

 

響「いや、すごいなーって思って。それに、生徒のみんなからすごく人気があるんだね」

 

創世「ユミは愛されキャラだからね」

 

詩織「全校集会のスピーチで、アニメの話しかしない困り者でもありますが……」

 

弓美「いいじゃない!あたし、大切な事は全部アニメから教わったんだから!」

 

響「(違うけれど、おんなじだ…。板場さんはアニメが好きで、2人と友達っで…。3人を疑えない…、疑いたくないよ……)」

 

弓美「ねえ、雷童ってロボットアニメ、知ってる?」

 

響「雷童……?」

 

弓美「2人の少女が呼吸を合わせてロボットを動かし、マシン帝国ファルガと戦う王道スーパーロボットアニメなんだよ!それにね、ラスボスのファルガ皇帝が変わり者でね、側近のエックスと同時に倒さなきゃ、いくら倒したってすぐに復活する不死身の怪物なんだ」

 

響「そうなんだ…」

 

翼「こういった敵は非常に厄介だな…。両方とも戦場に出ていなければ、倒す事などできはしない」

 

クリス「つーか、アニメの話でそんな奴が実際にいるわけねえだろ?」

 

創世「まぁ、実際にいたら、お手上げ確定なのは間違いないよ」

 

 そう言っているうちに教室に来た。

 

弓美「ここがあたし達の教室よ見ての通りの2年生。ところであんた達のほんとの学年って……?」

 

響「あ、私はみんなと同じ!」

 

創世「お二人さんも?」

 

クリス「いや、あたしは一つ上だ」

 

翼「私はさらに一つ上になるのだが…」

 

弓美「どうしよう。学年が別れるといろいろ大変よね……」

 

詩織「提案!みんな同じクラスというのはいかがでしょう」

 

創世「おおざっぱではあるけども、やっぱそうなるよね」

 

クリス「まあ、下の年齢に合わせておけば、授業とかでもついていく分には問題ないしな…。ですよね、先輩」

 

 しかし、翼は汗ダラダラであった。

 

パルティータ「やっぱり、これはやめといた方がいいわよ…」

 

 最後に生徒会室に来た。ちょうどそこには、他の生徒もいた。

 

弓美「最後にここが…生徒会室よ。まあ、竜姫としての活動が優先だから、いつもいるってわけじゃないけど……」

 

生徒A「あ、会長!資料の整理、終わりました!」

 

生徒B「細かい分類までバッチリです」

 

生徒C「他に何かお手伝いする事はありますか?」

 

弓美「とりあえずはないかな?3人とも、いつもありがとう」

 

生徒B「いえ、いつも忙しい生徒会長のためですから」

 

生徒A「そうそう!」

 

生徒C「先輩、そちらは?」

 

創世「転校生とこの辺の病院に赴任してきたお医者さん。学園内を案内していたんだ」

 

響「よろしくお願いします!ところで3人も生徒会なの?」

 

生徒C「いえ、私達はたまに手伝ってるだけで」

 

生徒A「あれに忙しい先輩達ですからね」

 

クリス「あれって…」

 

 何か言おうとした時に警報が鳴った。

 

響「えっ!?」

 

弓美「警報!ノイズよ!つまりは、ヒーローの出番!」

 

詩織「参りましょう!」

 

創世「急がないと!」

 

弓美「みんな、学院の事は任せたわ!」

 

生徒A「竜姫のおつとめ、頑張ってきてください!」

 

翼「オツトメ!?」

 

クリス「とにかく、あたしらも行くぞ!」

 

 響達も行く事になったが、パルティータは何人かの女子生徒を横目で凝視していた。

 

パルティータ「(何人かからは小宇宙が感じられない…。ロボットか何か…?)」

 

 何人かの女子生徒から小宇宙を感じないという違和感を感じつつも、パルティータは響達と共に向かった。弓美達の出撃を女子生徒達は見ていた。

 

女生徒D「みんな見て、竜姫が出撃するよ!」

 

 続々と女子生徒達から応援の声が聞こえた。

 

弓美「みんな、ありがと!行ってくるわね!」

 

翼「驚いた。竜姫の存在が学院内に周知の事実だったとは…」

 

創世「あれ?言ってなかったっけ?」

 

弓美「ヒーローは応援されてなんぼでしょ!」

 

詩織「その分、重い責任を担っていますから」

 

響「なんかいいね。みんなの応援があるって」

 

クリス「あたし的にはやりづらそうだな…」

 

 そんな時に通信が入った。

 

景義『遅いではないか!充実した学生生活を満喫している場合かね!』

 

弓美「お小言は後でお願い。それよりも状況を!」

 

二課職員『場所は市街区画46ポイント。ここから西に10キロの地点になります』

 

景義『どうせ僕の小言など聞く君達ではあるまい!精々暴れて、僕の評価を上げてくるがいい!』

 

二課職員『竜姫の皆さん、ご武運を!』

 

 通信の後、ヘリが来た。

 

弓美「いつもながらに腹の立つ、代行の一言」

 

詩織「だけど、その怒りをバネにほんのちょっと頑張れるとしたら」

 

創世「その憎まれ口も許せるかな?」

 

弓美「どっちでもいいよ。それより急ごう、ヒーローの時間だ!」

 

 弓美達は戦場へ向かった。

 

 

 

市街地

 

 指定のポイントでは、ノイズがたくさんいた。

 

弓美「…ねえ、一緒に戦ってくれるんだよね?」

 

響「もちろん、その通り!」

 

弓美「だったら、すぐそばで戦い方を見せてほしい」

 

響「え?」

 

弓美「いつか1人でも戦い抜ける、本物のヒーローになるために…。見上げた空を、目指すために!だからあたしは!」

 

詩織と創世「私達は!」

 

三人娘「メックヴァラヌス、テイクオフ!」

 

 弓美達はメックヴァラヌスを纏った。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 その様子を発令所でもモニターで見ていた。

 

景義「順調快調。今日も今日とてメックヴァラヌス絶好調。君達も診たかね、竜姫達の大活躍を」

 

二課職員「見ました。ですがそれ以上に見るべきはシンフォギアです。スピード、パワー、いずれも目を見張る数値を誇り」

 

景義「どうしてもっとメックヴァラヌスを誉めそやさない!自分達が造った対ノイズ兵装に自信を持てんのかね!?」

 

二課職員「我々が造ったわけではないので、正直そこまでは…」

 

景義「竜姫の活躍は、すなわち二課司令である僕の活躍である!上司の活躍にゴマをするのも公務員の仕事の内だよ、君ぃ!」

 

二課職員「はぁ…」

 

 

 

市街地

 

 竜姫達はノイズと交戦した。

 

創世「スピードで撹乱、相手を乱して!」

 

詩織「私を囮に集めれば!」

 

弓美「必殺必中、この一矢!ごめんあそばせ、あたしにおまかせ!赤射!!」

 

 竜姫達は連携でノイズの群れを撃破していった。

 

3人娘「やったああっ!」

 

翼「なかなかどうして…」

 

クリス「最初の手合わせでは見落としていたが…、あいつらの本領は連携にあるのかもな」

 

響「うん。タイプ的には、調ちゃんや切歌ちゃんみたいだよね」

 

パルティータ「さぁ、無駄口を叩く前に私達も働くわよ!」

 

 響達も応戦したが、パルティータの光速拳や錬金術による攻撃は竜姫達にはとても美しく見えていた。

 

創世「私達と違って、闇音さんは戦う姿や技も軽やかでとても綺麗…」

 

詩織「とても幻想的で…、ナイスです!」

 

弓美「それに、鎧もなしでノイズと戦えるし、威力も桁違い!って、闇音さんは大二さんクラスの魔法使いなの!?」

 

パルティータ「そうね。武闘家であると同時に、あなた達から見れば魔法使いかしらね」

 

弓美「あたし達から見れば、か」

 

パルティータ「(あの大二という男もあの子達からすれば、魔法にしか見えない力が使えるのかしら…?)」

 

 三人娘から見れば、美しい光の筋にしか見えない光速拳やあらゆる属性の錬金術を使いこなすパルティータはどう見ても魔法使いのようにしか見えなかった。そして、あっという間に戦闘は終わった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 戦闘後、一同は帰ってきた。

 

景義「よくぞ生き残ってきた、僕の先鋭達よ!」

 

創世「あれだけの数のノイズを相手にして……」

 

詩織「晩御飯の前に帰ってこられるなんて……」

 

景義「その戦いっぷりは見させてもらったが、確かに頼もしいところは否めない…。大二さまからの通達もあるし、そろそろ君達を信用してもいいのかも知れないな」

 

翼「司令…」

 

 そこへ、大二が入ってきた。

 

大二「信用してくれたようだね。じゃあ、僕が特別に聖遺物保管庫へ案内してあげよう」

 

景義「た、大二様!?そんな事をして」

 

大二「ギャラルホルンの事とかをいずれは見せてあげたりして不満を解消させないと、不満が爆発して協力関係が脆くも崩れ去る危険性だってあるんだよ。保管庫の聖遺物の事は他言無用だとは、僕がちゃんと言って聞かせるから」

 

景義「は、はぁ…」

 

クリス「あんた、物わかりがいいな」

 

大二「そうかい。なら、案内しよう。竜姫達も一緒に行くかい?」

 

弓美「いいの!?ありがとう!」

 

 大二が許可を出してくれたため、響達は大二同伴で向かう事となった。

 

響「大二さんって、本当にいい人だね!」

 

創世「そうだね」

 

弓美「なんたって、あの人は容姿端麗でフェミニストで、仕事も非常に有能で、アニメに出てくるようなスーパーイケメン理事長なんだよ!」

 

大二「いやぁ、僕はお父様に比べるとまだまだだよ」

 

詩織「でも、おじいちゃんがいた時よりも学院の入学倍率が飛躍的に上がっていますし…」

 

大二「そうなのかなぁ…?それと、学院の名前は漢字だけだとちょっと言いにくいから、何かカタカナの入った言いやすい学院名に改名しようかなぁ…」

 

弓美「ええっ!?」

 

大二「でも、今の名前を変に変えるとお父様も怒るだろうしなぁ…」

 

 話をしていると、何やら呻き声がした。

 

パルティータ「(この呻き声、この前と同じ……!)」

 

クリス「何だか、ゾンビみてえな呻き声だな…」

 

 しばらくしてると、呻き声の主が出てきた。暗くてよくわからないものの、見た限りでは人間のようだった。

 

弓美「も、もしかしてゾンビ!?」

 

翼「いざ、推して」

 

大二「君達、ここは私に任せてほしい!」

 

響「で、でも大二さん」

 

創世「任せよう。あの人は闇音さんには及ばないかも知れないけど、凄い魔法使いなんだよ」

 

翼「魔法使い…?」

 

 大二は前に出た。

 

大二「美しい花園を穢す醜い化け物め、消え去るがいい!!」

 

化け物「うぁあああああっ!!!」

 

 大二が手をかざすと、化け物はその場から消え去った。

 

クリス「す、すげぇ……!」

 

翼「あの化け物は一体…?」

 

大二「実を言うと、お父様が失踪してから時折呻き声がしてね、まさかこのような化け物がいたとは…」

 

パルティータ「(あの男が消し飛ばす際、あの呻き声の化け物の顔が見えたけど、間違いなく訃堂ね。でも、何でかしら…?)」

 

翼「私達の世界に現れた襲撃者と何か関係は…?」

 

大二「わからない。だが、あの怪物と何か関わりがあるのかも知れない。警戒しよう」

 

 化け物の正体が訃堂である事をパルティータはいち早く見抜いた。一方、誰も知らない二課のある密室に頭髪が全て抜け落ちてハゲになり、目にも傷がついた訃堂が檻の中に閉じ込められており、その場にいた杳馬はそれを見つめていた。

 

訃堂「デャシェ!!ワシェオゴコガアダシェ!!」

 

杳馬「んははははっ!!勝手に出やがったようだが、何の許可もなくダンナがてめーを出すわけねーだろ、バーカ!!」

 

訃堂「にゃんでゃとぉ!?」

 

 発音さえままならない訃堂は檻を殴りつけたが、凄まじい痛みで逆に苦しみ、転げ回った。

 

訃堂「にゅわああああっ!!!」

 

杳馬「あいつに痛覚の感度を上げられた状態で殴りつけるからこうなるんだよ、ジジイ!パルティータちゃんのいる世界に比べると猫被りをしてて少しは頭も回っていたようだが、今となっては形無しだな。ま、ダンナの許可があるまで檻で大人しくしてろっつーの、んははははっ!!」

 

 あまりにも無様な訃堂を嘲笑い、杳馬はそこを出ていこうとしたが、足を止めた。

 

杳馬「(これから先、戦姫と竜姫の戦いになるけど、いくらパルティータちゃんがいるとはいえ、一方的にならないように俺が牽制するから孤立して疲弊する装者を見てると生き残れるかどうか不安になっちまうなぁ…。よーし、孤立してしまう装者達のためのハンデとして、聖闘士とか以外で対シンフォギアの対策が通じない助っ人を呼ぶとするか。そのために、原料がいくらであるからたくさん作れたこれを……)」

 

 事態を混乱させるため、悪だくみしながら杳馬は懐にいくつもあるデュプリケーターを見つめていた。

 

 

 

ふらわー

 

 響達はこの世界にもあったふらわーで食事をしていた。

 

響「ここにもふらわーがあったなんて!」

 

弓美「そっちの世界にもあるんだ。で、味の方はどう?」

 

響「うん、おいしい!」

 

詩織「たくさん食べますね…」

 

クリス「あいつの食欲はとんでもないもんさ…」

 

弓美「ねえ、あんた達の歌の力…。それって私たちの装備にも取り付けられないかな?」

 

響「うえっ!?藪から棒に!?」

 

創世「お願い、私達には強い力が必要なんだ!」

 

詩織「どんな敵にも遅れをとらない、絶対たる力ですわ」

 

クリス「……んな事、言われてもなぁ…。ギアからの補助があるとはいえ、結局歌は、自分の胸から湧き上がるものだからな」

 

弓美「自分の胸…胸の歌……」

 

翼「逆に問わせてほしい…。竜姫の皆は、なぜそこまで力を欲しているのだ?」

 

創世「そ、それは……」

 

響「うまく言えないけど、みんなは……、自分達で全部を背負いこもうとしてるみたいだよ」

 

詩織「全部を、自分で…、そうですね、おっしゃる通りかも知れません」

 

弓美「どんなヒーローにもヴィランにも、成り立ちのエピソードってあるもんね…。いいよ、話してあげる。私達の始まりの物語、戦い続ける理由を」

 

 

 

回想

 

 弓美達は今までの事を思い出していた。

 

弓美『あたし達がメックヴァラヌスを纏う前。先代の竜姫に憧れ、仰陽館女学院に入ってすぐの事よ。離島での校外学習に参加していた時、大量のノイズが出現したの』

 

 校外学習中、弓美達は大量のノイズに襲われた。

 

弓美「ノイズが!?」

 

創世「ユミ、テラジ、逃げよう!」

 

詩織「こっちですわ!」

 

 3人は必死に逃げ回ったが…。

 

弓美『必死で逃げたけど、気付けば逃げ場がなくなっていた』

 

 しかし、ノイズに取り囲まれた。

 

弓美「そんな、囲まれて…!」

 

詩織「逃げ場がもう、どこにも…」

 

創世「私達、死んじゃうの…!?嫌だよ!」

 

弓美『目の前に迫るノイズ。そんな恐怖からあたし達を救ってくれたのがメックヴァラヌス、先代の竜姫だった』

 

 絶体絶命の状況に先代の竜姫が現れた。

 

先代竜姫「大丈夫?あとは任せて」

 

弓美「でも、たった一人でこの数は…」

 

先代竜姫「危険なのはわかってる。でもね…、それが竜姫の使命なんだ」

 

 弓美達は廃屋に隠れた。

 

弓美『廃屋に隠れて震えるしかなかったあたし達。だけど、その時は突然訪れた。破壊音と衝撃に廃屋ごと吹き飛ばされ、ズタズタに引き裂かれる3人の身体。出血に伴って薄れていく意識。だけどあたし達ははっきりと見た。ゆらめく炎を纏った怪物と、八つの頭を持つ大蛇の姿を。意識を取り戻したのは、10日が経過した島の病院だった。後で聞かされた話では、引き裂かれても命を取り留めたあたし達と…あたし達以上に引き裂かれてしんだ、先代竜姫の亡骸だけが、現場に残されていたみたい』

 

 

 

 弓美達の話を聞いて、翼達にはその怪物に心当たりがあった。

 

翼「(炎を纏った怪物…いささかだが覚えがある)」

 

クリス「(そいつが、本部に土足で踏み込んできたあいつだとしたら…)」

 

パルティータ「(それに、八つの頭を持つ大蛇も気になるわね。八つの頭を持つ大蛇で有名なものと言えば……あれしかないわね)」

 

響「その…炎を纏った怪物って…?」

 

詩織「詳しい事はわかっていません。ただ…」

 

創世「状況からして、大蛇共々、先代竜姫が命をかけて追い払ってくれたみたい」

 

響「(私と…同じかも知れない…)」

 

翼「(奏……)」

 

 この世界の弓美達の境遇は似てると、響は思ったのであった。

 

弓美「あたし達3人はあの人に命を、明日を救われて、今日を過ごせてる。重たいメックヴァラヌスを背負う理由…。つまんない話だけど、ま、そんなところかな」

 

パルティータ「聞かせてくれてありがとう。ところで、大蛇についてわかってる事はあるの?」

 

創世「それが、全然…」

 

パルティータ「そう…。なら、いいわ。ところで、その先代竜姫の遺体の写真はあるの?」

 

詩織「遺体の…写真ですか?とりあえず、代行に頼めば何とかなるかも知れません」

 

パルティータ「済まないわね。ちょっと、医者として興味があるから」

 

 急に遺体の写真が見たいと言ったパルティータの姿は響達にも珍しいと思われていた。

 

響「パルティータさんが遺体の写真を見たいというなんて…」

 

クリス「ネクロマンサーでもあるまいし…」

 

翼「彼女は医者である以上、興味があるのかも知れないな」

 

パルティータ「(遺体は既に処理されても、写真さえあれば何かわかるかも知れない…。あの子達の言う怪物や、大蛇について…)」

 

 手掛かりがあるかも知れないため、遺体の写真を見たいというパルティータであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は響達が仰陽館女学院の生徒として転入する事になるのと、パルティータが小宇宙を感じる事ができない女子生徒を見つけたり、まともに言葉を話せない訃堂が出てきたり、弓美達がメックヴァラヌスをきっかけとなった出来事が語られるのを描きました。
パルティータが小宇宙を感じる事ができない女子生徒はこれから事件に関わってくるかも知れません。今小説のメックヴァラヌス編の訃堂は黒幕ですらなく、何やら言葉をまともに話せない状態になっていますが、今回の世界の訃堂のモデルは言うまでもなく、中の人が同じロックマンx6の時のゾンビシグマがモデルで、扱いも散々な事になります。また、元の世界の訃堂は杳馬に殺されたわけですが、杳馬がすぐに殺さずに訃堂を拉致した行動の答えとして、訃堂そっくりのオートスコアラー製造のためというのが明らかになりました。主人公サイドが訃堂の死を知るのは当面先となります。
弓美達が過去を話す際に少し出た八つの頭を持つ大蛇ですが、この大蛇は後に話しに大きく関わってくる形で出てきます。そして、杳馬の言う助っ人とは誰なのか、想像してみてください。
次の話は、大二が訃堂について語るとともに、アングィスマシリアスがまた出てきます。

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