セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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169話 敵の目的

学生寮

 

 仰陽館女学院での生活が始まって数日後…。

 

弓美「なんと、あたしだよ!学校に行く時間だよ!」

 

響「あと少し…。徐々に起きるから、むにゃむにゃ…」

 

クリス「おい起きろ!あたしに早朝バズーカ撃たせるな!」

 

 

 

仰陽館女学院

 

 そして、響はある事で怒られてしまった。

 

教師「立花さん!」

 

響「はうっ!すびばぜん!」

 

教師「全く、転校してきて早々に課題を忘れるだなんて……」

 

クリス「(…あのバカ……)」

 

翼「(いや。どのような戦場にあっても普段と変わらぬ不動心…。立花の強さとはこういうところにあるのだろうな)」

 

クリス「(…はあ、そういうもんすか……)」

 

教師「仕方ないわね。今回は大目に見ますから、次までにきちんとやってきなさい」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 一方、パルティータは先代竜姫の遺体の写真がないか、景義に確かめていた。

 

景義「遺体の写真…?」

 

パルティータ「なければ、パソコンの画像でもいいの」

 

景義「特に見られて困るというわけではないから、一応は見せるが…。先代竜姫の遺体に興味を示すなんて、君は変わり者だよ」

 

 そう言って、パソコンで回収される際の先代竜姫の遺体の画像を見せた。

 

パルティータ「ズーム」

 

 拡大して画像解析をすると、パルティータは医者の観点から、何かおかしい事に気付いた。

 

パルティータ「(この遺体、引き裂かれたというよりは…鋭い牙によって喰いちぎられたとみるのが妥当ね。恐らく、先代竜姫を食い殺したのは……!)」

 

 弓美達の話では引き裂かれたと言っていたが、パルティータの医者としての観点では喰いちぎられたと判断し、犯人についてもある程度は特定していた。

 

景義「もう用が済んだのなら、画像を閉じるぞ」

 

パルティータ「ええ、もういいわ」

 

 もういいと返事が来たため、景義は先代竜姫の画像を閉じた。パルティータの行動を何者かが見ていた。

 

 

 

仰陽館女学院

 

 授業に苦戦している響と翼を弓美達は目の当たりにした。

 

弓美「いやー、よかったよかった!いいもの見させてもらったよ!」

 

 響と翼は落ち込んでいた。

 

創世「お陰で親近感がわいてきた」

 

詩織「あんなにお強い装者のみなさんでも、同じ人間に思えてくるから不思議ですよね」

 

弓美「逆に考えれば、まだまだ人間クラスの強さであるあたし達も、頑張れば超人クラスの強さを身に付けられる期待が持てるわね。きっと、Dモジュールに頼らなくたって…」

 

響「Dモジュール…?」

 

弓美「デンジャラスだかドリームだかわからないけど…、とにもかくにも、Dなモジュール」

 

創世「私達のメックヴァラヌスに取りつけられている、決戦機能、なんだけど……」

 

詩織「うまく機能しないという理由で、普段は制限がかけられているみたいなんです」

 

クリス「だとしたら、デンジャラスのDでない事を祈りたいんだが…」

 

 そうしているうちに…。

 

創世「さてと、おしゃべりしてたら休み時間なんてあっという間だね」

 

詩織「確か次は、音楽の授業でしたわね。装者のみなさんの戦いじゃない歌が聴けると思うとナイスです」

 

 音楽の授業が始まった。

 

音楽教師「それでは転校生もいる事ですし、校歌の合唱から行いましょう」

 

弓美「校歌ね…。嫌いじゃないけど、アニソンの方が盛り上がらない?」

 

 仰陽館女学院の校歌は意外にも、リディアンと同じであった。

 

響「学院の名前は違っても、校歌は同じだったね」

 

クリス「ああ。ちょっと驚いたけどな…」

 

翼「…懐かしい歌であった。卒業式で歌って以来か……」

 

クリス「(確か記憶では…濡れ雑巾みたいに泣きじゃくって、まともに歌えてなかった気がするんだが……)」

 

詩織「それにしても風鳴さんって、まるでプロみたいな歌声でしたわね」

 

クリス「そりゃ、あたし達の世界じゃ正真正銘のプロだからな」

 

弓美「出たわね、並行世界…。正直、もうかなり信じてしまっているあたしがいるわ」

 

創世「立ち居振る舞いもきれいだし、放っておけない一部の過激派がファンクラブ作っちゃうかも」

 

翼「ファ、ファンクラブだって…?」

 

弓美「嫌そうな顔しないで。あたし達竜姫にだってそのくらいあるんだから」

 

クリス「人気があるってのは知ってたが、それほどなのか……」

 

創世「もちろん非公認だし、一部の生徒だけだよ?ユミと違って、流石に私はちょっと恥ずかしいんだよね」

 

響「でも、なんかいいな。みんなが竜姫を応援してるんだね」

 

弓美「その分、期待には応えなくちゃいけない」

 

 そう言ってると、ノイズ出現の警報が鳴り、出撃した。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 同じ頃、パルティータは二課を散策していた。

 

パルティータ「(呻き声といい、あの子達の言っていた八つの頭を持つ大蛇といい、何かがある。きっと、それがエンブリヲに繋がっているのかも知れない……)」

 

 透明化と気配遮断でセキュリティをかいくぐり、色々と調べていたが、ある程度したところで動きを止めた。

 

パルティータ「私を待ち伏せしていたのはわかっていたわよ。出てらっしゃい!」

 

 パルティータに気付かれ、フードを被った襲撃者の仲間と思わしきフードを被った者達が現れた。

 

???A「なぜ、我らに気付いた?」

 

パルティータ「至って簡単よ。あなた達は殺気を放っていたから、気付いたの。それに、私の方もあなた達から小宇宙を感じなかったから怪しんでいたけど、あなた達は人間ではないようね」

 

???B「その通り。冥土の土産に教えてやろう、我らは護国の七支刀、防人兵器なり」

 

パルティータ「護国…、あなた達は訃堂の…」

 

???C「左様。我らは訃堂様に作られし兵器。今の日本は夷荻に乗っ取られているという、恥ずべき状態」

 

???A「必ずや、我らは訃堂様をお助けし、夷荻を駆逐して全並行世界を訃堂様の手に!」

 

パルティータ「要するに、全並行世界制服が目的ってわけね。その夷荻って、何かしら?」

 

???A「知る必要はない。ここで我らに始末されるお前にはな!」

 

 謎の襲撃者とその仲間達は一斉に襲い掛かったが、黄金クラスであり、世界最強の錬金術師でもあるパルティータに一撃を入れる前に光速拳で一蹴された。

 

???達「ぬわぁああああっ!!」

 

パルティータ「この程度で全並行世界制服だなんて、たかが知れているわ。所詮、訃堂は歳をとっただけの子供老人ね。世の中にはあなた達より強い奴がゴロゴロいるのよ」

 

???B「おのれ…!」

 

パルティータ「冥土の土産にするばかりか、私がいたせいで正体がバレて学院での活動に支障が出てしまったわね。さぁ、あなた達には色々と」

 

???「ここまでにしてもらうよ」

 

 突如として声がしたのと共に、仮面の男、エンブリヲが姿を現した。

 

???A「エンブリヲ様…!」

 

パルティータ「どういう事かしら?」

 

エンブリヲ「君を襲ったのは彼女達の独断で、私は命令していない。だから、君に詫びようと思ってね」

 

パルティータ「随分と律儀ね」

 

エンブリヲ「それじゃあ、私は七支刀へのお仕置きがあるから、帰らせてもらうよ」

 

 七支刀と共に、エンブリヲは姿を消した。

 

パルティータ「(あの男、何を企んでいるの…?)」

 

 

 

???

 

 独断でパルティータを襲撃した七支刀達はエンブリヲに眼力でフードの下の服を脱がされ、感覚を操作されるというお仕置きを受けていた。

 

???A「アン、アァ、ァ……!私を…犯して……」

 

???B「エンブリヲ様…、もう、許してください……!」

 

エンブリヲ「そうはいかないよ。君達は私の命令を無視して勝手な行動をしたのだからね。お仕置きとして、痛覚を全て快感に変え、感度3000倍だ」

 

???C「そ、そんな……!」

 

エンブリヲ「それと、今の君達の主人は私だ。だから、もう裸の王様も同然の醜い老人を助け出すなどという、下らない事は考えないでおくれよ。君達には期待しているんだからね」

 

 痛覚を快感に変換して感度を3000倍に上げるという、とんでもないお仕置きで悶え苦しむ七支刀達を見て悦楽に浸るエンブリヲであった。そして、エンブリヲの近くに巨大な龍とも蛇ともとれる怪物がいた。

 

 

 

学生寮

 

 その日のノイズとの戦いや訓練が終わり、響達は部屋に戻ってきた。

 

響「はああああ、今日も疲れたあああああ。明日は追試もあるし、無駄なあがきを頑張らないと」

 

クリス「お前…バカだけど真面目なんだな。っていうか馴染み過ぎだ。もっと気を引き締めろ!」

 

翼「確かに。このところあの3人からの視線が今まで以上に感じるからな」

 

響「えっ…?3人って……」

 

翼「ああ、念のため警戒しているだけなのか、他の意図があるのか…」

 

響「翼さんとクリスちゃんも、そんな事を考えながら過ごしてたんだ…」

 

翼「それでも立花のお陰で、向こうの警戒が緩んだのも確かだ。私や雪音ではこうも距離を縮められなかったに違いない」

 

クリス「いずれにしろ、動きがあるならそろそろかもな」

 

翼「足元をすくわれないように注意しよう」

 

響「(私は、竜姫のみんなを信じたい…。一緒に過ごして、笑い合った時間に嘘はなかったはずだから。それでも、戦う事になったら……。歌でぶん殴るのは簡単だ。だけどそうしてしまったら…、戦いの犠牲者の数が1人増えて終わるだけ。私がシンフォギアをやっているのは、きっと…たぶん、そうするためじゃない…)」

 

クリス「パルティータの方は何かあったか?」

 

パルティータ「私の方は二課内部の調査中にあの襲撃者とその仲間が襲ってきてね」

 

翼「襲撃者に仲間がいただと!?」

 

パルティータ「でも、私の敵ではなかったわ。そして、独断で襲撃したみたいだからエンブリヲに連れていかれ、お仕置きを受けてるみたい」

 

クリス「またエンブリヲかよ…!」

 

翼「襲撃者が独断で襲ってくるとは、敵は一枚岩ではないという事なのだろうか…?」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 一方、竜姫達は景義に呼び出されていた。

 

景義「何で呼び出されたのか、察しはついているのかね?」

 

弓美「あの子達の事だよね?言われた通り、怪しいところがないか見張っていたわよ」

 

景義「そろそろ尻尾を掴めたという報告を聞かせてはもらえると嬉しいのだが」

 

創世「掴むも何も、出てないんだから尻尾」

 

詩織「ノイズと戦える戦士という以外、どこもかしこも普通の女子高生としか思えませんわ」

 

景義「制服着るのがそろそろつらそうなのが約1名いるというのに普通の女子高生とはこれいかに!」

 

詩織「映像作品の種類によっては、30代40代になっても学生服に袖を」

 

景義「何をいっているのだね、君は!ほんとにもう、何の成果もないとは…。君達は一体何をやっていたのだ!」

 

弓美「そういう代行こそ、あの魔法使いみたいな人の尻尾は掴めたの?」

 

景義「医療技術はここの医療スタッフを凌駕しているのだが……、気付けば現れ、気付くといなくなり、全く掴めん…」

 

創世「人の事は言えないよ」

 

景義「ぬううううん」

 

創世「あ、一つ気になる事があるとすれば、学院の中で何かを探しているような素振りがある事かな」

 

詩織「そうですわね。敵意や嘘はなくとも、全てを話してくれている、というわけでもなさそうです」

 

弓美「彼女達の世界を襲ったという襲撃者が、仰陽館の生徒の中に紛れているとでも思ってるのかな?」

 

三人娘「……まさかねー」

 

景義「だが、本当にその場合、学院の生徒達に危害が及ぶ事態に発展しかねない。奴等が本性を晒して、あまつさえ二課が打撃を受けるなんて事があったら、僕の評価にも影響しかねない!竜姫はなんとしてでもシンフォギア装者の目的を暴くのだ!」

 

 

 

仰陽館女学院

 

 夕方、翼はたまたま大二と対面した。

 

翼「司令…」

 

大二「堅っ苦しくしなくていいよ。翼君、気軽に話していいんだ。それと…君の戸籍上のお父さんと本当のお父さんは違うんだよね?」

 

 話してもいないのに、自分の生まれを見抜いた大二に翼は衝撃を受けた。

 

大二「驚かせてすまないね。これ以上は言わないでおくよ」

 

翼「あなたは風鳴訃堂の次男坊だと聞いておりますが…、こっちのお爺様はどんな人だったのでしょうか…?それと、伯父様は自分の親は好きでしょうか?」

 

大二「……単刀直入に言わせてもらうと、こっちの風鳴訃堂は最低最悪で人間未満のケダモノだ。だから、死ぬほど嫌いなんだよ」

 

翼「(やはりか……)」

 

大二「反応ではそっちの訃堂も最低最悪のようだね。あの醜いケダモノは出来の悪い子供は捨てるし、『風鳴の血を濃く絶やさぬ』という考えで親戚や子供の奥さんを寝取って子供を産ませたり、護国と言ってる癖に人を守る気は全くないし、並行世界を渡れないくせに全並行世界を支配しようなどと考えていたりと、自分に酔いしれている本当にどうしようもない大悪党なんだよ」

 

翼「……それは本当なんですか?」

 

大二「そうだよ。それに怒った僕は長い時間をかけて風鳴機関を掌握し、訃堂の逃げ場を一切断った上で奴を駆逐して二代目終身名誉司令になったのさ」

 

翼「では、こっちのお爺様は…」

 

大二「何もかも失ったから、きっと世捨て人になって人知れず死んだのだろうね。君も護国などという信念なんか抱いていると、第二第三の訃堂になってしまうよ。そこは心の隅にでも留めておいてくれ」

 

 風鳴の血を引く大二が徹底的に防人の信念を否定する事に翼の心境は複雑だった。そして、大二からの視線は翼からしたら少し気持ち悪く感じた。

 

大二「君が風鳴の血を引いていなければ、結婚したかったよ」

 

翼「結婚!?」

 

大二「冗談だよ、冗談。これはあくまでも僕の冗談だから、ね」

 

 そんな折、警報が鳴った。

 

大二「ノイズが出現したみたいだね。僕は避難誘導にあたるから、ノイズの方は頼んだよ!」

 

翼「はい!」

 

 大二は避難誘導に向かい、翼は仲間と共に戦場へ向かった。

 

 

 

市街地

 

 到着後、装者と竜姫は現れたノイズをあっという間に蹴散らした。

 

創世「ふう、ユミもテラジもお疲れ様。装者達の協力で今回も手早く片付けられたね」

 

詩織「はい。被害もほとんど抑えられています」

 

弓美「理想を言えば、あたし達だけでもこれぐらいやれたらいいんだけどね……」

 

創世「慌てない慌てない」

 

詩織「一休み一休み、ですわ」

 

弓美「って、なんであんた達がそれを」

 

翼「待て!ほのぼのはそのぐらいにしておくんだ!」

 

 そのムードをぶち壊すかのように蛇の怪物、アングィスマシリアスが出現した。

 

響「あ、あれ!私達の世界で見た」

 

クリス「ああ…。S.O.N.G本部で好き勝手に暴れた奴だ!」

 

弓美「ノイズじゃない…怪物!?」

 

翼「私達はあの怪物の襲撃を受け、仮面の男によってこちらの世界に飛ばされてきたのだ!」

 

クリス「こいつらとパルティータの話を合わせれば、あの襲撃者は間違いなくいる!」

 

 蛇の怪物は街を攻撃した。

 

創世「あいつら、街を…!」

 

詩織「大切な…人達を…!」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 発令所の方では…。

 

二課職員「司令代行、竜姫達になんとか指示を与えれば」

 

景義「……」

 

二課職員「代行!指示をお願いします!」

 

景義「そ、そうだった!竜姫、そして装者の諸君!攻撃だ!その怪物を食い止めて、僕の査定を守りたまえ!」

 

 

 

市街地

 

 景義の指示は届いた。

 

弓美「今更だけど、迎撃命令よ!」

 

詩織「ですが、私達の纏うメックヴァラヌスが…」

 

 竜姫は違和感を感じていた。

 

響「どうしたの!?」

 

弓美「何よこれ…?プロテクターの下を小さな蛇が這いまわっているみたい!」

 

翼「システムの不調!?動けるのか!?」

 

詩織「は、はい…。違和感はありますが、動きに支障はありませんわ」

 

創世「これくらいで怯むわけには…」

 

弓美「やろう、みんな!あたし達は竜姫だ!竜姫なんだからあああっ!」

 

 竜姫達は戦闘を続けた

 

創世「(やってやれない相手じゃない)」

 

詩織「(ですが、メックヴァラヌスが叫びをあげて……)」

 

弓美「(拒絶じゃない…、これは…まるで互いに呼び合っているような……。メックヴァラヌスって、一体……)うわああああああああっ!」

 

 弓美達は蛇の怪物を全滅させた。

 

翼「(指揮を執るあの襲撃者の姿は見られない…。だが、それよりも今は)」

 

響「みんな、へいき、へっちゃら?」

 

クリス「よく頑張って押し返した!」

 

弓美「あれが…、あの怪物が、あんた達の世界に現れたっていう…」

 

響「うん…。そして、3人が竜姫になったきっかけの…、炎を纏った怪物……」

 

 ところが、弓美達からの返事は意外なものだった。

 

詩織「え?」

 

響「ん?」

 

弓美「…ち、違うよ、全然違う!あたし達を襲ったのはさっきの怪物なんかじゃない!」

 

クリス「はぁっ!?」

 

翼「どういう事だ!?」

 

弓美「炎を纏ってあたし達を襲ったのは…、爪を備えた四つ脚の…獰猛なケモノみたいな怪物だ!!」

 

 その言葉に響達は驚いていた。そして、姿と気配を消して様子を見ていたパルティータも話を聞いていた。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 帰還した後、メックヴァラヌスはオーバーホールが行われる事となった。一方、パルティータは景義がなかなか情報を話さないのを見越した上で独自に調べ上げる事にした。

 

パルティータ「(司令代行が話そうとしない以上、自由に動ける私の方で調べ上げるしかないわね……)」

 

 そう考えていると、景義と対面した。

 

景義「君、何をしているのかね?」

 

パルティータ「私の方で独自に色々と調べようと思ってね。二代目終身名誉司令の風鳴大二について何か知っているの?」

 

景義「……仕方ない。どうせ君は話さないと忍者みたいに忍び込んで色々と調べ上げるに違いない。大二さまについて話そう。風鳴大二様はご存知の通り、訃堂様の次男坊であった。だが、彼は運動も頭脳も優れていないがために訃堂様の不興を買い、15歳ぐらいの頃に勘当されてしまったのだよ」

 

パルティータ「優れていなければ実子さえも捨てる…。ほんと、最悪ね」

 

景義「すぐに親戚に引き取られたが、5年後に親戚と共に交通事故に遭った。親戚は死亡したが、大二様は奇跡的に助かったそうだ」

 

パルティータ「それからは?」

 

景義「助かった大二様は頭でも打った影響なのか、以前とは桁違いの頭脳を誇るようになり、訃堂様に親子の縁を戻すのを許されて風鳴機関の研究者として頭角を現し、今日までに至ったそうだ。僕が知っているのはここまでだ」

 

パルティータ「ありがとう(あの男の経歴、怪しいわね…)」

 

景義「それと君、僕は司令代行であるが故、触れる事ができない機密もあるのだ。だから、君の諜報活動を許す代わりに何か重要そうな情報を手に入れたら僕に送ってくれないかね?」

 

パルティータ「いいわよ」

 

 ギブアンドテイクでパルティータは諜報活動を認められた。

 

 

 

 翌日、オーバーホールで出撃できない竜姫達に代わり、響達が敵と交戦していた。

 

景義「相手がどれほどの数で圧倒しようと、あの子達の強さの前には意味がないのかね!?」

 

創世「シンフォギアは強い…。確かに強い…」

 

詩織「その強さを支えているもの、それは彼女達の歌ですわ」

 

景義「あー、竜姫がもっと、ちゃんと、メックヴァラヌスを使いこなせていたなら、僕の査定も…」

 

詩織「!?」

 

創世「わ、私達以外に」

 

弓美「あたし達以外に、あたし達以外に、メックヴァラヌスを扱えるものか!!」

 

創世「ユ、ユミ……」

 

詩織「そうですわ!私達こそが竜姫なんです!」

 

景義「……僕だって、査定を下げたくないから、君達に代わる新たなる竜姫を選抜したくないのだよ!」

 

 景義の言葉に三人娘は黙り込んだ。装者達の帰還後、パルティータはある事を聞く事にした。

 

パルティータ「ねえ、あなた達はどうして、自分達の力だけでみんなを守る事に固執しているの?発令所の様子を見て、気になったけど…」

 

創世「あ、ああ、それは…」

 

詩織「そ、それについては……」

 

弓美「隠す必要もないので教えます」

 

詩織「離島での郊外授業で私達の命を救ってくれたのは、先代の竜姫だけではありませんでした」

 

弓美「そう。って、どうしてあんたが言うの!?」

 

創世「出血多量で瀕死となった私達。だけど離島には、必要な分の血液が用意されていませんでした」

 

弓美「あんたまで…」

 

詩織「ですが、仰陽館女学院の何人かが輸血をしてくれたおかげで何とか命を取り留める事ができたのです」

 

パルティータ「…そんな事があったのね…」

 

弓美「問題はその後…。あたし達はお礼がしたくて、血液提供をしてくれた生徒を探したけど…、一切わからなかった…」

 

詩織「私達を助けてくれたのは、あくまでも善意だと、その方々は名乗り出る事をよしとしなかったのです」

 

創世「病院の関係者に口止めまでしてね」

 

パルティータ「誰に助けられたのかわからない…」

 

弓美「そりゃもう悔しかったわよ。感謝も、恩返しもさせてもらえなかったんだから……」

 

創世「そんな時、先代竜姫の死と次の竜姫候補が私達になった事を聞いたんだよね…」

 

詩織「ええ、そうでしたわ。そうしたら、板場さんが…」

 

弓美「あたしは気付いたの!昨日に誰かに助けられたのなら、今日に明日に、誰かじゃない、誰もを救えばいいんだって!」

 

創世「そうすれば、私達を助けてくれた、誰だかわからない誰かにも、きっと恩返しできるはずだから」

 

詩織「そして、私達がまけなければ、戦い続けていれば、新たな竜姫となって誰も戦いに身を投じる事もありません」

 

パルティータ「そうなの…」

 

弓美「仰陽館女学院に通う生徒は、みんな身寄りがなかったり、育てるのを放棄された子達ばかりでね、篤志家であるおじいちゃん、風鳴訃堂前理事長とその息子で今の理事長の大二さんによって、日本中から集められてきたんだ。もちろん、自主的な入学も受け付けているけど…」

 

パルティータ「(…似てるわね、星矢達の生い立ちと…。でも、同時にこのやり方はまるでF.I.Sと同じ…)」

 

弓美「特異災害ノイズから日本を守るために、メックヴァラヌスの技術を奪おうとする外国と戦うために」

 

創世「私達が倒れるような事があれば、仰陽館女学院の誰かが竜姫の使命を背負う事になる」

 

詩織「誰だがわからない、私達の恩人に血を吐き続ける宿命を背負わせたりなんかしたくありません」

 

弓美「だから、あたし達竜姫は…みんなを守れるメックヴァラヌスでなきゃダメなんだ」

 

パルティータ「(なんか、訃堂によって半ば洗脳を施されているみたいだわ…)よくわかったわ。けど、無理のしすぎもダメよ」

 

 その後、弓美達は響達にも同じような話をした。

 

 

 

城戸邸

 

 その頃、元の世界では…。

 

星矢「そういや、エンブリヲって奴にシンフォギアのデータを盗まれたんだろ?」

 

紫龍「ああ」

 

沙織「それも、シンフォギア・システムの歌を力と変えるメカニズムにアクセスしています」

 

瞬「一体、何のために…?」

 

美衣「考えられるのは、シンフォギアと敵対する事を想定し、その弱点を探る事…。もしくは…」

 

沙織「シンフォギアと同等、もしくは超える兵器を造ろうとしているのかも知れません」

 

氷河「だが、敵は過ちを犯した」

 

星矢「シンフォギアを超える脅威である、俺達聖闘士にはノータッチだからな。造れたとしても、俺達が」

 

???「ぬふふふっ、星矢の言う通り浅はかだもんねぇ!」

 

 声の主は杳馬であった。

 

星矢「杳馬、お前はいつもいつも」

 

杳馬「待て待て!今回は戦う気はねえ」

 

紫龍「なら、何の用で来た?」

 

杳馬「今回の敵の目的を教えに来たんだよ。知りたいか?」

 

氷河「教えろ!さもないと…」

 

杳馬「じゃあ、教えよう。敵の本当の目的は…」

 

 杳馬から聞かされた敵の目的は、星矢達の常識を遥かに超越したものであった。

 

瞬「そ、そんな事をエンブリヲが…?」

 

杳馬「嘘は言ってねえぞ。そんじゃ、あと数日すればお前達をエンブリヲのいる世界へ連れてってくれる奴が現れるぜ。じゃあな!」

 

 そう言って、杳馬は姿を消した。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 翌日、響達が戦っている際、弓美達は驚くべき事を聞かされた。

 

創世「えっ!?メックヴァラヌスはもう動かせるのですか!?」

 

詩織「でしたら今からでも、あの方たちの助けに参らないと!」

 

景義「…その必要はない、とのお達しである!」

 

弓美「どうして!?みんなはあたし達の代わりに戦っているんだよ!」

 

景義「君達にはシミュレータで模擬戦を行ってもらう。新生メックヴァラヌスの稼働試験だと理解したまえ」

 

創世「メックヴァラヌスの…」

 

詩織「確かに、慣らし運転は必要ですが…」

 

弓美「わかった。明日を救うために今日を甘んじてあげる!新生メックヴァラヌスを使いこなすために!」

 

 シミュレータで弓美達は新生メックヴァラヌスを纏った。

 

創世「こ、これが…身体に漲るこの力が…」

 

詩織「新たに生まれ変わったメックヴァラヌスの…」

 

弓美「…って、前とあんまり変わらないじゃない!」

 

景義『ゴチャゴチャ言わずに体を動かしたまえ!君達は口から先に生まれてきたのかね!?』

 

 体を動かしてみると…。

 

創世「うん、確かに動きが軽いかも」

 

詩織「動かそうと思ってからの反動速度が大幅に上昇しているように思えますわ」

 

景義『藩清真博士の』

 

弓美「いいから、そんなの!大事なのは、あたし達がより強くなれるという事だよ!」

 

景義『強くなる…。そう、新生メックヴァラヌスには強くなるために更なる新機能が搭載されているのだ!』

 

創世「更なる、新機能…?」

 

詩織「メックヴァラヌスが…、強くなる……?」

 

弓美「それって、Dモジュールとも違う別の機能なの?」

 

景義「うぉっほん!あー、あー、静粛に仰聴したまえ。メックヴァラヌスに歌を力と変える機能を取り付けてみたのだよ」

 

三人娘「………ええええええっ!?」

 

創世「いとも簡単に、さらっと凄い事を!」

 

詩織「こんな短期間に、ですか?」

 

弓美「いや…あたしはそろそろかなって思ってた。新たな敵の出現に伴う、こちらの戦力強化。むしろ王道ね」

 

創世「そ、そんなのまるで…」

 

詩織「アニメですわ!」

 

弓美「アニメじゃない、本当の事だ!長く生きてると(高校二年生)、こういう事はままあるんだ!」

 

創世「ユミがそういうのなら…」

 

詩織「ですが、肝心の歌はどこから用意すればいいのか……」

 

 試行錯誤してみたものの、思ったような結果は得られなかった。オーバーホールと称してメックヴァラヌスにシンフォギアと同じ歌を力にする機能が加えられたが、想定通りにならない事に景義は悩んでいた。

 

景義「(もたらされた資料にあるフォニックゲインの数値がまるで規定値に達していない…。装者達のノイズ戦を観測する事で得られたデータと、シミュレータからのフィードバックだけでは、やはり…。竜姫の唄う歌に問題があるのか、それともシステムの機能不全、あるいは…。オーバーホールに偽装した、メックヴァラヌスの改良…。シンフォギア装者と闇音君に知られる前に終えるつもりだったが…。いざとなったら僕達はやはり、Dモジュールに頼るしかないのだろうか…)そうなる前に、メックヴァラヌスを完成させねば…」

 

 色々と周囲からの評価は低いものの、Dモジュールに頼らなくていいように色々と手を打っている景義であった。

 

 

 

???

 

 その日の夜、とある国の首都は大雨で月の出ていない闇夜の中で火の海と化していた。その地獄絵画のような光景の空にエンブリヲは浮かんでいた。

 

エンブリヲ「ふふふっ!こうやって他の国の首都や大都市を火の海に変えるのは実に愉快愉快!第二次大戦の連合国の首都を襲撃して火の海にした時はその国の国家元首共を弱腰にしてあらゆる問題を日本政府有利に交渉を進める事ができ、訃堂も上機嫌になっていた程だからね!特にロシア大統領と中国の国家主席が頭を擦り付けて跪き、領土を返還した時は笑いものだったよ!」

 

 エンブリヲはその国の大統領に視線を向けた。

 

大統領「ば、化け物め~~!!」

 

エンブリヲ「私は化け物じゃなくて、調律者だ」

 

 落雷と共に暗闇に紛れていた八つの頭を持つ大蛇の姿が露わになり、大蛇はそれぞれの頭がビームを乱射し、辺り一面で破壊と殺戮を繰り広げた。

 

大統領「ぬわあああっ!!」

 

 大統領はビームに呑まれ、消滅した。その光景を帰ってきた杳馬は見つめていた。

 

杳馬「こりゃ、エンブリヲのダンナはロクでもない事をしてるな…。怪物を使って首都を火の海にしちまうなんてさ」

 

 それから、杳馬はある世界の様子を小宇宙によるモニターで見ていた。

 

杳馬「そろそろ、もうじき装者と竜姫は激突する事になるぜ…。けど安心しな、響ちゃん達よぉ。俺が助っ人を連れてくるからな。そして、Dモジュールの正体を見た時、竜姫の嬢ちゃん達は地獄を見るぜ……」

 

 これから起こりうる未来を予知し、アレンジを加えてより混沌とした状況を企む杳馬であった。




これで今回の話は終わりです。
今回は自立型兵器たる七支刀達がパルティータに挑んで返り討ちに遭った挙句、独断でやったがためにエンブリヲによって服を脱がされ、感度3000倍という辱めを受ける羽目になったり、大二が翼に対して本当は訃堂が大嫌いなのを打ち明けるのを描きました。
七支刀へのお仕置きのネタは対魔忍アサギの感度3000倍と、クロスアンジュのエンブリヲの眼力による脱衣です。
また、全貌は明らかになっていないものの、弓美達が見た大蛇も出しています。
次はいよいよ杳馬が響達の助っ人を連れてくるものの、大変な事態が発生してしまいます。そして、八つの頭を持つ大蛇の正体も明らかになります。

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