セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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178話 巫女型ギア

調神社

 

 その後、調神社を始めとしたあちこちに災禍の魔物が出現した。

 

マリア「相変わらずすごい数ね…」

 

セレナ「うん…やっぱり倒しても、龍脈に戻っていってるみたい」

 

調「巫女神楽ができれば、何とかなるのかな?」

 

切歌「古文書の通りならそのはずデスよね」

 

マリア「ええ。でもないものねだりをしても仕方ないわ。今は私達にできる事を」

 

 そんな中、宮司が来た。

 

宮司「ないものねだりではありませんぞ」

 

調「宮司さん!?」

 

切歌「あ…危ないデスよ!?」

 

セレナ「下がってください、災禍の魔物が…」

 

宮司「ええ、だから来たのですよ。あれが古文書にある災禍の魔物の魔であるなら、それを鎮めるのは私の役目です。…私もこの調神社の宮司として、見ているばかりはできないのですよ。…私が何とか鎮めてみますよ」

 

 宮司は巫女神楽を始めた。

 

宮司「掛けまくも畏き伊邪耶岐の大神筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に…」

 

 宮司が行った巫女神楽により、災禍の魔物の1体は霧になった後、地面に戻らずに消滅した。

 

切歌「見るデスよ!霧が、地面に戻らずに消えていくデス!」

 

マリア「これが、鎮めの力…。今のうちになるべく多くの災禍の魔物を倒しましょう!」

 

セレナ「うん、姉さん」

 

調「宮司さん、凄い…」

 

 戦闘の最中、魔物が宮司の方へ向かっていった。

 

マリア「まずいわ、魔物が!?」

 

シャカ「宮司については私に任せたまえ!カーン!」

 

 現れたウサギたちと共に、シャカはカーンで魔物の攻撃を弾いた。巫女神楽が中断されたために霧になった魔物は再び地面に吸い込まれた。

 

マリア「くっ…霧がまた!」

 

調「どちらにしても、今は倒すしかないよ」

 

切歌「そうデスよ、マリア!」

 

セレナ「マリア姉さん」

 

マリア「わかってるわ。今は祝詞や舞が有効ってわかっただけでも収穫よ。さあ、一気に決めましょう!」

 

 マリア達は魔物を全滅させた。

 

調「切ちゃん、大丈夫?」

 

切歌「全然大丈夫…とは言えないデスね。流石に生傷が絶えないデス…」

 

調「うん…今日の戦いも大変だったもんね」

 

マリア「龍脈の乱れが拡大している、という事かしら。私達が戦ってしまうからでもあるんだけど…」

 

セレナ「でも、宮司さんの祝詞と舞は有効だったよね?」

 

マリア「ええ。おかげで鎮めるという手段が間違いない事は確認できたわ。でも…」

 

調「…うん。やっぱり普通の人にあの場で舞をしてもらうのは危険すぎる。今回だってシャカとウサギさん達が庇わなかったら…」

 

シャカ「私が宮司の防衛に専念するという手もあるぞ」

 

マリア「ただでさえシャカがいないと数が減らないのにシャカが防衛に専念したら、私達では手に負えない敵の数に対応できないわ」

 

切歌「せっかく可能性が見えたんデスが……」

 

セレナ「難しいですね…」

 

宮司「皆さん、先程はすみません。いや、お恥ずかしいところを」

 

調「あ、宮司さん」

 

宮司「…この子達にも迷惑をかけてしまいましたな」

 

ウサギ「……」

 

 この子達とは、ウサギの事であった。

 

宮司「ですが、お願いです。次も私にやらせていただけませんか?」

 

調「えっ!?」

 

切歌「それは流石に無理デスよ!」

 

宮司「確かに無茶かも知れません。ですが、私は宮司としてこの調神社を守りたいのです。この神社を守るのが私の使命。ならば、私が体を張らなければご先祖様にも顔向けできません」

 

マリア「でも…それは……」

 

宮司「古文書の通り、祝詞や舞は有効だったのでしょう?誰かがそれを行い、鎮める必要があるのではないですかな」

 

切歌「それはそうデスけど、やっぱり無茶デスよ。戦いながら舞ができるくらいじゃないと、とても…」

 

シャカ「ならば、君達が舞を覚え、そうすべきであろう」

 

切歌「シャカはメチャクチャな事を注文してるのデス!」

 

調「戦いながら…舞を……?」

 

マリア「調…?」

 

調「…そうだ!もしかしたら…」

 

セレナ「何かいい方法を思いついたんですか?」

 

調「うん。…宮司さん、私達に舞を教えてください。以前、巫女神楽とは別の舞を習った事があるので一朝一夕では難しいのはわかっています。だけど、災禍の魔物を鎮める神楽舞について、少しでも理解する事ができたなら…」

 

マリア「心象変化ね」

 

調「うん。舞について理解して、鎮めるためのギアを発現させる事ができたなら…」

 

切歌「シャカが言ったように、まさに舞いながら戦えるって事ですか!」

 

セレナ「凄いです、月読さん」

 

調「どこまで効果が出るかはわからないけどね。…宮司さん、お願いできますか?」

 

宮司「わかりました。この老骨でよければ、皆さんに神楽舞を伝授いたしましょう」

 

調「ありがとうございます」

 

宮司「ところで、あなたが習った舞はどんなものでしたか?」

 

調「ある山奥の集落の行事の時に舞人の人数が足りなかったため、代理で出た際に國兵衛神楽という舞を教えてもらいました」

 

宮司「キュゥべえ神楽…?これまた変わった名前の舞のようですな。もしかすると、久兵衛なる神様がいるのかも知れませんぞ」

 

 ワクワク気味な宮司と違い、調達はキュゥべえの悪事を知っているが故、複雑であった。その後、調達はウサギと戯れていた。

 

ウサギ「……♪」

 

調「よしよし…」

 

切歌「今日もフワフワデース…。もう中毒になってるデスよ。それにしても、やっぱり調に一番懐いてるデスね。気付くといつも調の傍にいるデス」

 

調「うーん、ツインテールがウサギみたいだからかな?」

 

切歌「どうデスかね?こう見ると普通のウサギみたいデスけど、普通の餌も水も全く食べないデスよね…」

 

調「うん。でもどうして宮司さんのキッシュだけは食べるんだろう…」

 

切歌「キッシュばっかりなんて贅沢なウサギデス…」

 

調「そうだね」

 

切歌「フランス出身のウサギなんデスかね?もしくは、すごくグルメなウサギとか?」

 

調「出身とかあるのかなぁ…?グルメ…もどうなんだろう?」

 

切歌「謎は深まるばかりデース…」

 

調「でも、何度も私達の事を守ってくれているし、きっと悪いものとか聞けんなものじゃないよ」

 

切歌「同感デース」

 

調「…いつもありがとう」

 

ウサギ「……♪」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 他の装者と聖闘士は本部に集合していた。

 

弦十郎「疲れているところ、すまないな」

 

翼「いえ。それより何でしょうか?」

 

弦十郎「ああ、かねてからの災禍の魔物の件について、意見の交換をと思ってな」

 

エルフナイン「前回の古文書の事もありましたし、皆さんにも改めて聞き取りをした方がいいと思ったんです。調神社については、敵の数と宮司さんが避難していないという状況もあるので、今回は警備の方を優先してもらいました」

 

弦十郎「そういう事だ。悪いが付き合ってくれ。まずは各自の防衛状況と人的被害について改めて報告してくれるか?」

 

響「えっと。私の担当神社は鳥居の一部が欠けたのと、近所のおじいちゃんが驚いて転んだくらいです」

 

弦十郎「鳥居は災禍の魔物が破壊したのか?」

 

響「えーと、その…い、勢いあまって!」

 

弦十郎「壊したのは響君の方だったか…。未来君はどうだ?」

 

未来「私も同じようなところです。建物に被害はでていませんが、偶然からの怪我人が少し」

 

弦十郎「そうか…。クリス君は?」

 

クリス「怪我人は出てない」

 

弦十郎「…それは何よりだ。神社の方は?」

 

クリス「…ちょっと穴が開いた」

 

弦十郎「そ、そうか…。本当にちょっとだな?」

 

クリス「…数は多いけど、一つ一つの穴は小さいから、ちょっとでいいんだよ!」

 

美衣「(それだとちょっとではなく、蜂の巣と言うべきですね…)」

 

弦十郎「つ、翼はどうだ?」

 

翼「防衛対象の建物、人的被害共にほぼありません。ただ…」

 

弦十郎「ただ?」

 

翼「交戦中に電線を切断してしまいまして、付近一帯が停電になりました…」

 

弦十郎「…ま、まあ仕方ないだろう…」

 

星矢「俺達はどっちもゼロだぜ」

 

氷河「俺の場合は凍気で雪が降ったけどな」

 

弦十郎「この時期に雪は普通だろう。人的被害についてはお陰で軽微といっていいだろう。建物も修繕すれば済む範囲…だとは思う」

 

沙織「敵の数については増えているのですか?」

 

瞬「はい。戦えば戦うほど、敵の数は増えるみたいです」

 

クリス「なあ、このままだといつか無理が出るんじゃないか?」

 

未来「確かに、だんだんと星矢さん達抜きではさばききれなくなってきてる…」

 

沙織「装者の皆さんにとっては厳しくなりつつある状況ですが、今、打開策ができつつあります。それまでは時間稼ぎを兼ね、防衛をお願いします」

 

アイオリア「言われるまでもない、アテナ。俺達はこの世に蔓延る邪悪と戦わなければならないのだからな」

 

響「打開策!?」

 

紫龍「弦十郎、その打開策は巫女神楽に関係しているのか?」

 

弦十郎「ああ、上手く行くかは半々だが、期待はできる」

 

エルフナイン「つい先日の戦闘にて、宮司さんの協力により一部の災禍の魔物の浄化に成功したんです。それをもっと大規模化するために、マリアさん達が『巫女型ギア』の心象訓練に入りました」

 

響「こういった敵って、セーラームーンとかプリキュアがいたら倒せたんじゃないかな?」

 

クリス「は?セーラームーンとかプリキュアはアニメでの存在だろ!現実にいるわけねえじゃねーか!!」

 

 

 

調神社

 

 マリア達は舞を習っていた。

 

宮司「さて、それでは舞についてのお勉強を始めましょうか」

 

調「お願いします」

 

切歌「お願いするデース」

 

宮司「天照大神が岩戸に篭もってしまったのを、楽しい宴会でおびき出したってお話しなんですけど」

 

セレナ「ごめんなさい、不勉強です…」

 

宮司「いえいえ、そんな事はないですよ。舞の起源はその岩戸隠れの時、アメノウズメが舞った舞と言われています」

 

調「(知らなかった…)」

 

切歌「(アメノ…なんちゃらって翼さんが持ってそうな名前デース…)」

 

宮司「つまり舞とは、神にささげられるものなのです。神への感謝、尊敬、そういった心がなくては、舞足りえません。これは常に忘れないようにしてください」

 

マリア「感謝と尊敬の気持ち…」

 

宮司「さて、次に具体的に舞に使うものがあるのですが、それについては知っておりますかな?」

 

切歌「なんかこう、鈴がたくさんついた棒とかデス!」

 

宮司「正解ですぞ」

 

切歌「やったデス!」

 

調「扇とか?」

 

セレナ「えっと、ギザギザの紙のついたハタキみたいな…」

 

マリア「確か、植物なんかもなかったかしら?」

 

宮司「皆さん、正解です。他にも剣や弓といった武器的なものもありますな」

 

マリア「剣……」

 

セレナ「なんか親近感がわくね、姉さん」

 

宮司「剣舞というのもありますからね」

 

切歌「か、鎌はないデスか!」

 

調「鋸……」

 

宮司「流石に鎌や鋸を使った舞は私も知りませんな……」

 

切歌「これが格差社会というものデスか……」

 

調「私達は日陰者なんだね、切ちゃん……」

 

宮司「…コホン。採者とは舞の際に持つ物の事を指し、これは神の依り代とする意味があります。何でなければいけない、というわけではないですが、舞の種類によっておおむね決まっているのが普通です」

 

切歌「色々とあるのデスね」

 

宮司「さて、退屈な話はこれくらいにして、実技の方に参りましょうか」

 

 宮司は手本を見せた。

 

宮司「…と、こんな感じです。足の運びからまず覚えるようにしてください」

 

 マリア達もやってみたが…。

 

マリア「…え、違う、こっちじゃなくて…ああっ!」

 

 マリアは転んでしまった。

 

セレナ「マリア姉さん、大丈夫?」

 

マリア「ええ…これは予想以上に難しいわね」

 

セレナ「私もやってみる」

 

 セレナも舞を始めた。

 

セレナ「えっと、こうして…次にこっち…きゃっ!」

 

 マリアに続き、セレナも転んでしまった。

 

マリア「セレナ!」

 

セレナ「だ、大丈夫…。確かに難しいね……」

 

切歌「次はあたしデス!この華麗なステップを…わっ!」

 

 マリアとセレナ以上にあっけなく、切歌は転んでしまった。

 

切歌「痛いデス……」

 

マリア「もう、背伸びして無理するからよ?さて、最後は調ね」

 

切歌「調は時女の集落で舞を習ったから、楽勝デス!」

 

調「そうかなぁ?時女の集落で習った舞とはだいぶ違うから、自信はないけど…」

 

 最後は調の番になった。

 

調「えっと、こっち…それからこうして…」

 

切歌「流石、調!別の舞を習っただけあって、いい調子デスよ!」

 

調「うん、ありがとう、切ちゃ…わっ!」

 

 切歌の声に気をとられ、調は転んでしまった。

 

宮司「どうやら集中が途切れてしまったようですな」

 

切歌「ごめんなさいデース…」

 

調「ううん、切ちゃんは悪くないよ」

 

マリア「足の運びだけでもこんなに難しいなんて…」

 

セレナ「うん。巫女さんって大変なんだね」

 

宮司「最初はみんなそんなものですよ。さて、練習を続けましょうか」

 

 その後も練習は続いたが、時女の集落で別の舞を習ったため、割とできていた調はともかく、他の3人は悪戦苦闘していた。

 

宮司「いやはや、こうして皆さんが一生懸命、舞の練習をしている姿を見ていると、娘の事を思い出しますな」

 

セレナ「宮司さんの娘さんも巫女さんなんですか?」

 

宮司「ええ。巫女修業は娘も大変苦労していましたなー。さて、今日はこれぐらいにしましょうか」

 

一同「ありがとうございました(デース)……」

 

 その日の巫女修業は終わった。そして翌日…。

 

宮司「さあ、今日も練習を始めるとしましょう」

 

 続きが始まったが、やはり調以外は悪戦苦闘していた。

 

宮司「少し休憩しましょうか。だんだんと形になってはきています。後少しですぞ」

 

切歌「ずっと同じ事言われている気がするデスよ…」

 

マリア「くっ…自分がこんなに不器用だったなんて!」

 

セレナ「後少しなんですけど…うーん……」

 

宮司「皆さんなかなかの上達ぶりですが、あなたは特に筋がいいですな」

 

調「え、そうですか?一応、これとはだいぶ違う別の舞を習ったぐらいで…」

 

宮司「はい。この短期間に、転ばなくなっただけでもすごい事です。ただ、足の運びに集中して、気持ちがまだ足りていませんな」

 

調「気持ち…?」

 

宮司「最初に教えた、神様への感謝と尊敬の気持ちです。これがある事で、舞は舞たりえるのですよ」

 

調「…精進します」

 

宮司「期待しておりますぞ。あなたは10年に一度のスペシャルなセンスの持ち主かも知れませんからな」

 

調「横文字で言われるとすごく胡散臭く感じる…」

 

マリア「そこは特別な才能を感じるとかでいいでしょうに…」

 

切歌「何にしても、さっすが調デス!」

 

セレナ「やっぱり月読さんは凄いです」

 

調「前にちょっと神社に興味があって、色々調べてたから…。みんなより、ちょっと詳しいだけだよ」

 

宮司「神職に興味を持ってくださって、嬉しいですよ。さて、もう少し練習を」

 

ウサギ「!?」

 

 シャカと共にマリア達の舞の練習を見守っていたウサギ達が反応し、境内に向かった。

 

調「あっ、ウサギたちが!」

 

シャカ「境内へ向かったとなると、やはり災禍の魔物が出たようだ」

 

マリア「だったら」

 

シャカ「この場は私とウサギに任せ、君達は舞の練習を続けたまえ」

 

切歌「シャカとウサギさんだけで行くのデスか!?」

 

シャカ「いかにも。災禍の魔物は私だけでも殲滅は可能だ。さぁ、君達は打開策を完成させるのを急ぐのだ!宮司よ」

 

宮司「わかりました。どうか、ご武運を」

 

 災禍の魔物をシャカとウサギ達に任せる事にし、マリア達は心象訓練を続けた。やはり、シャカの力の前に災禍の魔物はあっけなく倒されていった。

 

シャカ「魔物は一掃したが、倒し続けていては穢れが溜まる一方だ。ん?」

 

 ウサギの様子がおかしい事にシャカは気付いた。

 

シャカ「ウサギが要石の方を睨んでいる…」

 

 そんな時、地震が起こった。そして、他の個体よりも大きな災禍の魔物が現れた。

 

シャカ「他の魔物よりも大きいな。だいぶ穢れが溜まったせいで育ったらしい。だが、私の敵ではない!天魔降伏!!」

 

 この個体もシャカにあっさり倒されたのであった。しかし、他にも大きな個体が出てきていた。

 

シャカ「ここから先へは一歩も通さん!」

 

 ところが、災禍の魔物は消えてしまった。

 

シャカ「消えたか…。なぜ消えたのかを聞いてみる必要があるな」

 

 戦いが終わった時にはもう夜になっていた。シャカはマリア達と共に宮司から聞く事にした。

 

宮司「…それはきっと、夜になったからではないでしょうか」

 

マリア「どういう事ですか?」

 

宮司「神道では、夕方の時間帯を『大禍時』と云います。これは『逢魔ヶ時』とも書くのです。古神道において、この時間は魔と遭遇する時間、日が落ち、常世から常夜に切り替わる合間の時間とされています。逢魔ヶ時であるからこそ、あの大きな災禍の魔物が実体化し、それが過ぎた事で消え去ったのでしょう」

 

シャカ「なるほど。そうなれば、次の日の夕方にまた出てくるな」

 

宮司「そこまではわかりません。ですが、その可能性もあるでしょうな」

 

マリア「…舞の練習を急ぎましょう。私達が早く『鎮め』を行えるようにならないと、大変な事になるわ」

 

 また次の日、舞の練習は続いていた。

 

宮司「…今日はこれくらいにしておきますか?」

 

セレナ「いえ、もう少しお願いします!」

 

宮司「わかりました。皆さんの熱意に私も全力で応えましょう」

 

調「よろしくお願いします!」

 

 舞の練習は続き…。

 

マリア「調だけじゃなくて、やっと私達も転ばずに済むようにはなったわね」

 

切歌「でも、まだ何か足りない気がするデスよ」

 

セレナ「そうですね。ギアの変化も起こせてませんし…」

 

調「うん…ちゃんと真似てるつもるなんだけど、どこが違うんだろう……?」

 

マリア「とにかく練習あるのみ、よ。ギアの変化については舞の動きをマスターしてから考えましょう」

 

 舞の練習を重ね…。

 

宮司「それではもう一度、最初からやってみてもらえますか?」

 

調「はい」

 

 最初から舞を行った。

 

調「(…足の運びは、これで合っているはず。次はこうして…)」

 

ウサギ「……」

 

 舞の最中、ウサギが調に寄ってきた。

 

切歌「わっ、ウサギさん達が!?」

 

調「(えっ!?足にまとわりついて…避けないと!)」

 

 ウサギが寄ってきたのは調にとっては予想外の事だったが、その際の動きは意外な評価となった。

 

セレナ「わあ…」

 

マリア「さっきまでと、全然違うわね…」

 

宮司「…どうやら、掴めたようですな」

 

 ウサギの乱入で調の動きに変化がついた。

 

切歌「調、さっきのすごかったデスよ!ものすごく綺麗だったデス!」

 

調「え?さっきのって…」

 

マリア「今の舞よ。ウサギが乱入した時、すごくゆったりとした足運びで」

 

セレナ「私も、思わず見とれちゃいました」

 

調「え……?あの時は確か…」

 

 ウサギが乱入した時の動きをやってみた。

 

調「こんな感じだったような…」

 

切歌「そうそう、それデス」

 

宮司「素晴らしい足運びです。もう動きについては教える事はありません」

 

調「…そうなんだ(ウサギさん…もしかしてこれを教えるために?)」

 

ウサギ「……」

 

 ウサギは調を見つめていた。

 

マリア「どう?調。いけそうかしら?」

 

調「うん。…多分だけど、いけそうな気がする。ウサギさんのお陰だよね。…ありがとう」

 

ウサギ「……♪」

 

 お礼を言われ、ウサギは喜んでいる素振りを見せた。

 

切歌「なんだか喜んでいるように見えるデスね」

 

セレナ「やっぱり可愛いです…。月読さん、あんなに懐かれていいなぁ…」

 

切歌「仕方ないデス。ツインテールの差デスよ」

 

セレナ「マリア姉さん、私もツインテールにしたら、もっとウサギさんに懐いてもらえるかな?」

 

マリア「セレナがツインテールに…?(想像した時点でもう可愛すぎる!)」

 

セレナ「試してみようかなぁ」

 

シャカ「どうやら、怪物の出る時間になったぞ」

 

 シャカの言う通り、ウサギに反応があった。

 

調「あっ!」

 

切歌「また出たデスか!」

 

 災禍の魔物が出現し、今度はマリア達も出撃した。

 

マリア「やっぱり…調!」

 

調「うん…やってみる!(舞への心得…神様への感謝と尊敬の心で……)高天原に神留り坐す……。Various shul shagana tron」

 

 舞を行いながらギアを纏うと、いつもと違うギアになった。

 

シャカ「成果が出たか」

 

マリア「調、そのギアで!」

 

調「うん、任せて!はあーっ!」

 

 舞をやりながら調は災禍の魔物に攻撃を仕掛けた。

 

調「(祓え給い、清め給え、神ながら守り給い、幸え給えーっ!)」

 

 新たなギアに変化した調の攻撃を受けた災禍の魔物は霧になったものの、龍脈に戻る事はなかった。

 

切歌「やったデス!霧が龍脈に戻らずに消えたデス!」

 

調「やった…。これならきっと…いける!」

 

マリア「調はそのまま敵を薙ぎ払って!私達も行くわよ、止めは調に!」

 

セレナ「はい、月読さんを援護します!」

 

 調が中心となって、災禍の魔物への反撃が始まり、一気に災禍の魔物を全滅させた。

 

マリア「…やったわね。あとは、私達も調に続きましょう」

 

切歌「はいデス」

 

セレナ「うん」

 

 やっと打開策ができたと意気込んでいる調達に対し、シャカは何やら、調に倒された災禍の魔物が気になっていた。

 

切歌「シャカ、どうしたのデスか?」

 

シャカ「いや、少し気になっただけだ」

 

 少し気になるものの、今はまだ様子を見るべきだと判断した。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 本部でも心象変化を確認した。

 

エルフナイン「調さんの心象変化、確認しました」

 

あおい「調神社周辺の監視カメラの映像、回します!」

 

朔也「やった…災禍の魔物が消えていってる!」

 

弦十郎「ああ、見えてきたぞ。光明が!」

 

 

 

神社

 

 その連絡は響達にも知らされた。

 

弦十郎『聞こえるか!たった今、調君が心象変化に成功した!効果についても予想通り…いや、予想以上だ!これで災禍の魔物を鎮める事ができるぞ!』

 

響「やった!調ちゃん、流石!」

 

星矢「遂にやったぜ、調!だったら俺達も!」

 

紫龍「調達が心象変化させたギアで鎮めに来るまで」

 

アイオリア「叩き潰し続けるだけだ!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 響達は活気づき、星矢達はいつものペースで倒し続ける姿を沙織達はモニターで目撃した。

 

美衣「星矢さん達が時間稼ぎした成果が出ましたね!」

 

沙織「ええ。星矢達が倒し続けている間に新たな心象変化に成功した事で、終わりの見えない戦いを終わらせる可能性が出てきたのです」

 

美衣「あとはマリアさん達が続いて巫女型ギアを習得できれば、一気に傾きます!」

 

 それから後…。

 

弦十郎「よし、始めてくれ」

 

調「Various shul shagana tron」

 

切歌「Zeios igalima raizen tron」

 

セレナ「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

マリア「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

 調に続き、切歌達も巫女型ギアに変化させる事に成功した。

 

氷河「おお、それが巫女型ギアか!」

 

瞬「これで、災禍の魔物を倒せるよ」

 

未来「確かに神秘的な雰囲気があるかも…」

 

翼「…ああ、そうだな。ん?なあ、マリア…」

 

マリア「…何かしら?」

 

翼「いや…マリアのそれも巫女型ギア、なのか?何だか少し他の3人とは違うように見えるが……」

 

マリア「自分でもなぜかわからないけど、こういうイメージが浮かんでしまったのよ…」

 

セレナ「マリア姉さん、似合ってるから大丈夫だよ」

 

切歌「平安時代の貴族みたいデース。麻呂ギアと呼べばいいデスかね」

 

マリア「やめてちょうだい…」

 

エルフナイン「心象変化はあくまで装者の心象がベースとなって起きる変化ですので、マリアさんの中でのイメージに影響されたのかと」

 

紫龍「…そうなのか?」

 

マリア「わからないわよ!」

 

弦十郎「よーし、雑談はそれくらいにしておけ。どうだ、エルフナイン君?」

 

エルフナイン「計測したところでは、一番最初に発現した調さんのギアの出力が最も高いようです。これは恐らくですが、災禍の魔物を鎮める力も調さんの巫女型ギアが一番高いのではないかと思われます」

 

切歌「ふっふっ…どんなもんかデス!神楽舞の練習でも、調が一番上手いデスからね!」

 

クリス「なんでお前が偉そうなんだよ…」

 

翼「見た目だけならマリアが一番派手だというのに…」

 

マリア「悪かったわね!」

 

弦十郎「とにかく、これで反撃の準備は整った。巫女型ギアを発現した装者4名を中心に、災禍の魔物の対処を進める。終わりの見えなかった迎撃から、反撃に移る時だ。後少し、みんな気合を入れろ!」

 

一同「はい(おう)!」

 

 その晩、シャカは1人で夜空を眺めていた。

 

シャカ「何か不吉な予感がするな。外れればよいが…」

 

 不吉な予感が外れてほしいと思いつつ、シャカは瞑想に入ったのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は調達が巫女神楽を習い、そして巫女型ギアへの心象変化を行うというのを描きました。
この時点では反撃の策が整ったと意気込んでいますが、現場で何かを見たシャカは1人、不吉な予感を感じていますが、これはある出来事に伏線になるかも知れません。
次は巫女型ギアによる反撃が始まります。

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