神社
災禍の魔物が出現する時間帯になり、装者と聖闘士は出撃した。
アイオリア「ライトニングプラズマ!!」
無数の光の筋のように見える光速拳で災禍の魔物を複数まとめて一気に倒した。
氷河「おい、止めは装者にすべきだろう?」
アイオリア「それはそうだが、止めを刺してはいけないというのが歯がゆいぞ…!」
自分達聖闘士の攻撃で災禍の魔物を倒してはいけないという事にアイオリアのみならず、星矢達も少なからず歯がゆさを感じていた。加減を間違えてアイオリアが倒した災禍の魔物の様子に瞬は気付いた。
瞬「ねえ、アイオリアが倒した魔物も龍脈に戻っていないんだけど…」
アイオリア「何だと!?」
氷河「どうなっているんだ?」
S.O.N.G潜水艦
本部でも響に加え、アイオリアが倒した魔物の様子も確認された。
弦十郎「今響君とアイオリアが倒した敵を確認したか!」
あおい「はい、確かに空に霧散しています!」
朔也「これは一体…」
エルフナイン「わかりません…ですが、魔物を鎮められていないのは間違いないと思います」
朔也「そ、それじゃあ今まで倒してきた魔物も…」
そんな折、警報が鳴った。
弦十郎「どうした!?」
あおい「か、各神社周辺に設置されたカメラから、一斉に大型の災禍の魔物の姿が!」
朔也「あんな奴が何体も…」
弦十郎「くっ…急ぎ装者を向かわせろ!」
朔也「ですが、鎮めが効かないのでは…」
沙織「そうだとしても、あのような魔物を暴れさせるわけにはいきません!星矢達にも知らせてください!」
あおい「わかりました!」
神社
すぐに連絡は来た。
あおい『すぐに手分けして回ってほしいの!大型の災禍の魔物が大量に!』
響「わ、わかりました!」
マリア「これは一体どういう事なの…。巫女型ギアで鎮めができていたんじゃなかったの!?」
調「付け焼刃じゃダメだったのかな…?」
アイオリア「ええい、この場でこんな話をしても時間の無駄だ!巫女型ギアならば災禍の魔物を倒しやすい事に変わりはないだろ!?」
マリア「…そうね、ごめんなさい」
氷河「で、どうする?」
翼「最低2人で組んで戦う事にしよう」
クリス「巫女型ギアありなしで組むのか?」
マリア「それはやめておきましょう。このギアが有効だからこそ、戦力の分散のしすぎは避けたいわ。調、切歌。あなた達2人と私とセレナの2人。この2チームに分かれましょう。私達2チームは遊撃を担当するわ。大型の災禍の魔物が複数いるようだし」
翼「ではこちらは私と雪音、立花と小日向で行こう。私達には巫女型ギアがない。したがって時間稼ぎだな」
クリス「また時間稼ぎかよ…。ま、仕方ないな…」
切歌「あたし達がすぐ倒しに行くデス!」
調「ここまで来て被害を出させません…」
アイオリア「よし、この際俺達も行くぞ!」
一同はある程度まとまって分散し、魔物を倒しに向かった。
氷河「ダイヤモンドダストォ!!」
瞬「サンダーウェイブ!」
氷河と瞬も次々と災禍の魔物を粉砕していった。
氷河「俺達の攻撃でも煙のようになっている…」
瞬「何か、恐ろしい事でも起こるのかな…?」
一方、翼達は…。
クリス「ちっ、後輩達かアイオリア達はまだかよ!」
翼「仕方あるまい。これだけあちこちで一気呵成に敵から攻められては…」
クリス「それにしても、こんな事ならもっとまじめに心象訓練やっとけばよかったな…」
翼「なんだ、雪音は真面目にやっていなかったのか?」
クリス「やってはいたけど、こんなに早く本当に必要になるなんて思ってなかったからな…」
翼「同感だな」
話をしている間に災禍の魔物が襲ってきた。
翼「来るぞ、私達の役目はわかってるな!」
クリス「足止めだろう?わかってるって。どうせこっちの攻撃は効かないしな」
翼「ああ。歯がゆくはあるが、これが最上の方法である以上、月読と暁、もしくはマリアとセレナを待つ以外にあるまい」
クリス「さて、どっちが先に来る事やら…。それまで何とか時間を稼ぐとするか」
???「その必要はないデス!」
言ってると、切歌と調が来た。
調「到着しました!」
翼「2人とも早かったな」
クリス「そっちはもう倒してきたのかよ?」
切歌「あたしと調の手にかかれば余裕デース!」
調「ウサギさんの協力もあったので、早く片付きました」
翼「そうか。ならばこの大型の敵を頼む。私と雪音は一緒に現れた小物の方を何とかしよう」
調「わかりました」
切歌「了解デス!」
クリス「はっ、2人ともいい返事じゃねーか。それじゃ、戦闘開始だ!」
一方、響達の方は別の神社で災禍の魔物と交戦しており、災禍の魔物は未来に向けて攻撃してきた。
未来「きゃあああっ!」
響「未来、大丈夫!?」
未来「う、うん。何とか…。でも、こんなのどうしたら…」
響「とにかく注意を引いて、攻撃を躱すしかないよ。私が前に出るから、未来は援護をお願い」
未来「ううん、私も一緒に前に出るよ。この相手に遠距離じゃ援護にもならないし」
響「でも…」
未来「大丈夫。幸い攻撃の威力はそこまでじゃないから」
響「わかった。でも、無理はしないでね」
再び戦闘を開始したが、魔物には攻撃が効かず、逆に魔物の攻撃が迫ったために慌てて未来は響とともに攻撃をかわした。
響「あ、ありがとう。危なかった…」
未来「間に合ってよかった。でも、ちょっと厳しくなってきたね」
響「うん。でも、それも調ちゃん達が来るまでの辛抱だから!」
未来「そうだね。……あ!」
話をしていれば、切歌と調が到着した。
切歌「デストローイ!」
響「切歌ちゃん!」
調「あとは私達が!」
未来「調ちゃんも!」
調「この大型の災禍の魔物は引き受けます。お二人は、小型の相手をお願いします」
響「わかったよ。未来!」
未来「うん。調ちゃん達も気を付けて!」
調神社
一方、シャカは空を見上げていた。
シャカ「邪気が集まりつつある…。一体、何が起こるのやら…」
神に最も近い男であるが故、何かが起こる予感がしたシャカであった。
神社
この神社に現れた災禍の魔物を撃破した後、2人は次の場所へ向かっていた。
調「あとは、この先で最後!」
切歌「もう一暴れしてやるデス」
到着したが…。
調「到着ーーって、あれ?」
切歌「敵がいないデスね」
そこにはマリアとセレナがいた。
マリア「調に切歌?もう他の場所を片付けてきたの?」
セレナ「流石、おふたりです。私達は、今さっきここの魔物を倒したところです」
調「よかった。それじゃこれで全部なのかな?」
切歌「そうデスね」
マリア「……ところで、以前に戦った大型の災禍の魔物よりも弱く感じなかった?」
調「どうだろう…確かに簡単に倒せたような気はするけど」
セレナ「向こうの攻撃はあんまり威力がなかったかも…」
切歌「きっと出がらしデスよ」
マリア「出がらし、ね。その中身が他の小型の災禍の魔物ならいいんでしょうけど…」
切歌「とにかく敵は倒したし、みんなで神社に戻るデスよ。ウサギさん達も待ってるデス」
調「そうだね」
ところが、ある方角を見て調は驚愕した。
調「!?あれ、調神社の方!」
調神社の方に邪気が集まっていた。
マリア「…何が起きてるの!?」
そこへ、通信が入った。
弦十郎『お前達、どうした!?』
切歌「調神社の上に、なんか真っ黒いのが集まってるデスよ!」
S.O.N.G潜水艦
その報告は弦十郎も驚いた。
弦十郎「何だと!?」
あおい「モニター、回します!」
モニターで見た黒いものに発令所の面々も驚いていた。
朔也「なんだ…あれ……」
エルフナイン「やっぱり…大地じゃなく、天のオリオン座!龍脈の穢れがそちらに呼応して…!」
神社
すぐに返事が来た。
沙織『こちらでも確認しました!何が起こるのかはわかりません!十分注意しながら、現場へ急いでください!』
マリア「了解!」
黒い霧は集まり、巨大な災禍の魔物となった。
調「霧が…災禍の魔物に!」
セレナ「お、大きい…」
切歌「特大サイズデスよ!?」
調「調神社には、宮司さんとウサギさん達が…。急いで戻ろう!」
調達は調神社へ向かった。
調神社
特大の災禍の魔物は調神社に降りた。
宮司「…なんと」
シャカ「ここは私に任せてもらおう。私では魔物を倒せても鎮める事はできぬが、調達が来る時間を稼ぐ事はできよう」
宮司「シャカさん、あなたは信仰している宗教が根本的に違うのに、助けてもらって感謝しますぞ。この調神社には思い出が多すぎますからね…」
シャカ「宗教など関係ない。地上の平和と愛を守る、これが聖闘士の使命なのだからな」
シャカが迎撃しようとしたが、ウサギ達も来た。
宮司「シャカさんを手伝ってくれますか、ありがとう。…昔からこの神社を見守ってくれて、感謝しております。シャカさん、魔物を頼みます」
シャカ「任せたまえ」
宮司が舞っている間にシャカは止めを刺さないようにしつつ、足止めを行っていた。しかし、特大の災禍の魔物の攻撃は予想以上の威力と範囲であり…。
シャカ「(まずいな、私は余裕で防げるが、攻撃範囲とその余波が著しい。ウサギ達では長くは持たんぞ…。その前に宮司の祝詞が届けばいいが…)」
そう思っている時に調が来た。
調「宮司さん!」
しかし、魔物の攻撃でウサギ共々、宮司は吹っ飛ばされてしまった。
切歌「気を失ってるデス…」
セレナ「ウサギさんも怪我してる…」
マリア「…この災禍の魔物の仕業ね」
シャカ「すまん、アイオリア。私は」
アイオリア「いや、シャカは出来る事を可能な限りやった。お前がいなければ、もっとひどい有様になってもおかしくはない」
調「この魔物は…私達で倒す!」
戦闘に入ったが…。
調「私達の攻撃も効いてない……?」
切歌「巫女型ギアなのに、鎮められないデスか!?」
マリア「くっ、このままだと…」
特大に続き、災禍の魔物も大量に出た。
セレナ「そんな…どうしてこんなに…」
星矢「今までの数倍以上か!」
紫龍「それよりも、こいつらはどこから出てきている!?」
未来「もしかして、天のオリオン座が関係して…」
響「そんな…!」
そんな折、通信が入った。
エルフナイン『皆さん、聞こえますか?』
響「エルフナインちゃん!」
エルフナイン『恐らくですが、今まで祓えた、鎮められたと思っていたのは違ったんです。龍脈へは戻らなかっただけで、残っていた。それが大地のオリオン座同様に門として開かれた天のオリオン座に繋がり、集積して大きな災いになってしまったと考えられます』
切歌「でも、それじゃどうしたらいいデスか!鎮める事も」
アイオリア「ええい、面倒だ!だったら、俺達が災禍の魔物を倒すまでだ!ライトニング」
もう我慢できず、災禍の魔物を倒そうとしたアイオリアであったが、シャカに止められた。
アイオリア「止めるな、シャカ!」
シャカ「アイオリア、君がここであの魔物を倒せば、ますます強大になるだけだ!それを繰り返していくと、やがて私達黄金聖闘士でも手に負えなくなるぞ!」
アイオリア「じゃあ、どうしたらいいんだ!?何か方法はあるのか!?」
エルフナイン『それは…』
シャカ「方法は一つ、本職の神職の人間が舞を行い、鎮める事だ」
マリア「宮司さんが?」
シャカ「そうだ。彼が祝詞と舞で鎮めた魔物は完全に消えていた。宮司が舞を行えなければ、舞が得意な神職の血筋の人間がいればいいのだが……」
調「関係ない」
マリア「調…?」
調「祓うとか、鎮めるとかなんて関係ない。…宮司さんを、ウサギさん達を、この神社を傷つけたあいつが許せない!私が絶対に倒すんだ!」
調は先走って災禍の魔物へ向かっていった。
マリア「調、危ない!」
調「えっ?」
災禍の魔物の攻撃が迫ったが…。
シャカ「カーン!」
シャカにあっけなく防がれた。
セレナ「シャカさん!」
切歌「あの魔物の攻撃をあっさりと防いだデス…」
シャカ「調よ、あの魔物を倒さない程度に私も戦うぞ。そして、落ち着きたまえ」
調「……わかってる!」
魔物の特性を知っているため、シャカにできる事は力を加減して魔物を弱らせたり、攻撃を防ぐぐらいであった。
マリア「エルフナイン、私達のギアじゃ鎮められないのね?」
エルフナイン『はい、恐らくは…。何が足りないのかはわかりませんが、本職の舞による鎮めとは何かが違うんだと思います…』
宮司「そ、そんな事はありません…」
なんと、宮司は立ち上がった。
マリア「宮司さん!?」
宮司「いやはや、みっともない姿をお見せしてしまいましたね…。年はとりたくないものですな。あの子を…月読さんを呼んでいただけますかな。あの子ならきっと、あの荒ぶる神にも心を届かせる事ができます」
シャカ「その話は聞こえているぞ。調よ、宮司が呼んでいるぞ!」
調「(許さない…絶対に!優しい宮司さんを、あの子達を!この場所を荒らす奴は!)」
切歌「調、出すぎデス!無茶しすぎデスよ!」
セレナ「落ち着いてください、月読さん!」
調「…許さないんだから!!」
シャカ「落ち着け、調!」
シャカの一喝に調は思わず怯んだ。
マリア「調、宮司さんが目を覚ましたわ!」
調「え?」
シャカ「この場は私に任せて、宮司から鎮める心得を聞いてくるのだ」
調「う、うん…」
調は宮司のところへ向かった。
宮司「…こんなボロボロで失礼しますよ」
調「宮司さん…大丈夫ですか?私がもう少し早く戻ってこられたら…」
宮司「そんな事はありません。シャカさんやその子達もいましたからな。お陰で命を拾う事ができました」
ウサギ「……」
調「宮司さんも、ウサギさんも、神社もこんなにして…。やっぱり許せない…。待っていてください。あんなのすぐ倒して、病院に連れていきますから」
宮司「それではダメなのですよ」
調「え…?」
宮司「思い出してください。舞とは何のためにあったのか。間違った心では、災禍を鎮める事などできません。災禍とはすなわち神からの試練のひとつ。魔と呼ばれようとも、総じて神に繋がるものです。大事な事は、感謝と尊敬です」
調「感謝と、尊敬…?」
宮司「その気持ちさえあれば、きっとあなたの心は届きます。怒りでも、悲しみでもなく、感謝を込めて災禍に抗うのです」
調「やってみます…」
宮司「素直ですな。あなたを見ていると、行方不明の孫娘を思い出します。私の言葉もよく聞く、素直な子でした」
調「こんな時まで神社ジョーク…?」
宮司「ふふ、緊張はとれましたかな?あとは、お願いしますぞ」
調は戦場へ戻った。
マリア「調、宮司さんは?」
調「安全なところまで下がってもらったよ」
マリア「それで、何か秘策でももらえたの?」
切歌「あれだけデカいのに、聖闘士以外の攻撃が効かないなんて反則デスよ」
セレナ「私達の巫女型ギアが全く通用しないなんて…」
調「…気持ちを教えてもらった。感謝と尊敬の気持ちさえあれば、届くからって…」
マリア「…それだけ?」
調「うん。でもやってみる」
マリア「…いいわ。なら、調に任せましょう」
調「ありがとう…」
マリア「その子達もいるしね。調を信じてるみたい」
いつの間にか、ウサギがいた。
調「あれ?いつの間に…」
突如として、ウサギが光り出した。
切歌「な、何だかウサギさん達が光り出したデスよ!?」
セレナ「綺麗…」
調「これは!?」
なんと、調も光り出した。
調「(何だろう、温かくて懐かしくて…この子達の力?私に流れ込んでくる…)」
切歌「し、調まで光り出したデス!」
調「切ちゃん、大丈夫だよ。この子達が、力を貸してくれたみたい」
ウサギ「……」
調「ありがとう。後は任せてね。セレナ、この子達をお願い」
セレナ「わ、わかりました」
切歌「調…?」
調「心配しないで、切ちゃん。あの大きな災禍は私が何とかするから。みんなも、この神社も、全部守ってみせる!」
そうしている間にも特大の災禍の魔物はシャカになすすべもなくやられていた。
シャカ「私が足止めし、弱らせておいた」
切歌「やったデス、シャカ!」
マリア「あとは止めよ!」
シャカ「待て!止めを刺すとまたあの魔物は力をつけて復活するぞ!(調よ、今やるべき事はわかっているな?)」
マリア達を制止し、シャカは調が舞に専念できるようにした。
調「(大事なのは、感謝と、尊敬の心…)」
響「神楽舞…?」
未来「綺麗…」
調「高天原に神坐す…(この神社に来れた事、宮司さんに、ウサギさんに会えた事、みんなで楽しい時間を過ごせた事…。全て神様のお導きです。だから、あなたへの感謝と尊敬を、この舞と祝詞に込めて)」
さらに調は舞った。
調「筑紫の日向の橘の、小門の阿波岐原に…」
舞を続けていると、災禍の魔物に異変が起こった。
クリス「なあ…あれ、災禍の魔物が薄く…?」
調「(ありがとうございます。でも、この神社は、私にとって大事な場所なんです。だから…)祓へ給ひ、清め給ふと、申す事の由を…」
更に調は舞を続けた。
調「(この場所を、壊さないでください。どうか、お帰りください。この舞を、感謝の心を、捧げますので)天津神、地津神、八百万神等ともに、聞こし食せと、畏み畏みも白す…」
舞い終わった後、災禍の魔物は消え去ったのであった。
切歌「消えた…デス」
セレナ「やった、やりましたよ!」
マリア「ええ、よくやったわ、調」
調「ううん、みんなのお陰だよ。それと…、あれ?」
いつの間にか、ウサギがいなくなっていた。
切歌「どうしたんデスか?」
調「ウサギさん達、どこに行ったんだろう?」
アイオリア「言われてみれば、どこに行ったのだろうな…?」
ウサギがいなくなった事を疑問に思う中、シャカだけはウサギの正体等に気付いていた。
夢
そしてその晩、調は不思議な夢を見ていた。
調「あれ?ウサギさん、何で変なものの傍にいるの…?」
夢の中で、いなくなったはずのウサギが変なものと一緒にいる事に調は驚きを隠せなかった。
???『ふふふ、調とやら。今回の活躍は見事じゃったぞ』
調「あなたは誰?どうしてウサギさんが傍に…?」
???『それはまだ秘密じゃ。調よ、力が欲しくなった時は…』
調神社
何かが言い終わる前に調は起きた。
調「今のは…夢…?(でも、悪い夢じゃなくて、何だか不思議な…)」
悪夢ではなく、ウサギもいたりと不思議な夢であったため、調はすぐにまた寝つけた。それから後日…。
切歌「到着デース。おお、狛兎も変わってないデスね」
マリア「それにしても不思議な事もあるものね」
セレナ「うん…気づいたらあのウサギさん達がいなくなってて、代わりにこの狛兎さん達が戻ってたなんて…」
調「やっぱりこの子達があのウサギさん達だったのかな?」
切歌「きっとそうデスよ!」
セレナ「…でも、もう少しあの子達を撫でたかったです」
切歌「あの手触りは魔性のモフモフデスよ…。とても忘れられないデス」
調「そう言えば、クリス先輩は悔しがってたね」
切歌「『あたしだけほとんど撫でてねーじゃねーか!』って怒ってたデス。それで今日は未来さんがペットショップに…」
調「そうだったんだ…」
マリア「さて、それじゃ掃除を始めましょうか。宮司さんの怪我がよくなるまで、しっかりとお手伝いしなくちゃね」
マリア達は神社の掃除を始めた。
調「(…ありがとう。何度も守ったり、助けてくれて。今日もきれいに磨かせてもらうね)」
切歌「うーん、やっぱり硬いデスね。手触りは前の方がよかったデス…」
調「仕方ないよ、切ちゃん。でも、こうして撫でると、少しは狛兎さんも気持ちよさそうに見えない?」
切歌「おおっ!?確かにそんな気もするデスね。ならもっと撫でるデス。うりうり」
調「ふふ、ほどほどにね」
宮司「皆さん、キッシュが焼けましたよ。今日のキッシュも自信作です」
調「あ、はい。もう少し磨いたら来ます」
そんな調を見て、宮司は反応した。
調「…どうかしましたか?」
宮司「…いえ、何でもありません。それでは落ち着いたらお昼にしましょう」
調「はい」
マリア「それにしても、怪我がまだ治ってないのにお料理なんて負担になりませんか?」
宮司「いえいえ。むしろ何かしてないと退屈で退屈で。それに、もっとキッシュのレシピも開拓しなければ」
セレナ「わぁ、もっとおいしくできるんですか?」
宮司「料理の道は険しいですからな。探究に終わりはないのですよ」
切歌「言っている事が完全に料理人デース……」
宮司「それに、せっかくこの私の料理を継いでくれる人材もできた事ですしな」
マリア「ふふ、調が宮司さんのレシピを覚えてくれるなら、私達もおいしいお料理が食べられるわね」
切歌「いい事デース!」
セレナ「あの、宮司さん、何か私にも手伝える事はありませんか?」
宮司「え?」
セレナ「私も、この神社やウサギさんにとてもお世話になりましたし、何かお手伝いをしたいのですが」
宮司「そうですなー…、それでは、料理と配膳のお手伝いをお願いできますかな」
セレナ「はい、任せてください。それじゃ、私、先に行って準備してますね」
切歌「あたしは早くお昼にありつくために、もっと調を手伝うデスよ!」
宮司「本当に元気なお嬢さん方ですな」
マリア「あの、少しお時間よろしいでしょうか?」
宮司「おお、どうしましたか?心配せずとも、食後にはフィナンシェを焼きますが」
マリア「いえ、それはそれで嬉しい事なんですけど、そうじゃなくて。少しだけ聞きたい事が」
宮司「何でしょうか…?」
マリア「宮司さんのご家族についてなんですが…」
宮司「娘夫婦と孫についてですか?」
マリア「ええ。…神社ジョークじゃなくて、本当は何があったのか聞いてもいいでしょうか?」
宮司「…そうですね。もう、あの事故から10年以上経ちますか…」
マリア「事故…?」
宮司「ええ。旅行中に起きた、ひどい事故でした。多くの人が亡くなり、その中に娘夫婦の姿もありました」
マリア「!?」
宮司「どうして娘夫婦がこんな事にと、随分神様を恨みもしました。ですが、ほんの小さな希望が残っていたんです。それが、孫娘でした。一緒にいたはずの孫娘の名前だけ、亡くなった者のリストになかったんですよ」
マリア「…生きていたんですか?」
宮司「わかりません。状況が状況なだけに、正式には行方不明となっていました。ただ、変わり果てた姿で対面した娘夫婦は、2人で何かを庇ったまま、亡くなったような姿だったのです。そんなの、孫娘以外にあり得ません。だから、きっと生きていると信じて捜したのですが…」
マリア「見つからなかったんですね…」
宮司「ええ、そうです。ですが、きっと生きているはずです。だから、私はこの神社を、孫娘の帰る場所を残したかった」
マリア「……ごめんなさい。辛い話で…」
宮司「いいえ、そんな事はありません。…最近思うんですよ。孫娘はきっと生きていて、幸せに過ごしていると。あれから、どんな人生を歩んでいるかはわかりません。もしかしたら辛い事もあったのかも知れない。ですが、今は良い人達に巡り会い、心から笑って過ごしている、そう感じるんです」
話をしている最中、調は切歌と共に掃除を続けていた。
調「…あ、ここにも汚れがある。切ちゃん、洗剤取ってくれる?」
切歌「了解デース」
マリア「(…事故で両親を。それに十数年前…)…きっと、そうかも知れませんね。でも、実際にその子が現れたらどうするんですか?」
宮司「どうもしません。孫娘が幸せなら、それだけで満足です。ただ…もし機会があれば、料理でもしながらゆっくり語らいたい、といったぐらいですかな。叶っているといいのですが」
マリア「どうでしょうか。…もしかすると、叶っているのかも知れませんね」
調「あの、宮司さん。一つお願いがあるんですけど」
宮司「おや、どうしましたかな?」
調「焼けたキッシュを、ウサギさんにもあげていいですか?」
宮司「ふふ、もちろんいいですとも」
調「ありがとうございます。ウサギさん、後でおいしいキッシュを持ってくるね(あの夢は何だったんだろう…?別に悪い夢でもなかったし…)」
ウサギが何かと傍にいる不思議な夢を調は不思議に思った。
これで今回の話は終わりです。
今回は災禍の魔物との決着を描きました。
話の終わり辺りに調が不思議な夢を見ましたが、これは後のギャラルホルン編の伏線です。
今回で夕暮れに舞う巫女編は終わり、次はギャラルホルン編序章になり、いよいよ名前不明だった謎の蛇のような怪物の素性が判明し、ミーナが装者と対面する事となります。また、他にも杳馬が蘇らせた冥闘士が出てくるかも知れません。