セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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銀弾の軌跡編
184話 黒炎の不死鳥


???

 

 世界蛇の影が出現し、しばらく経ってからの事であった。冥闘士の中でも一匹狼気質の輝火は他の冥闘士が出撃しても一緒に出撃しようとせず、待機していた。そこへ、杳馬が来た。

 

杳馬「輝火のダンナ、またこうして動かないでいるのか?」

 

輝火「メフィストか…。お前はいつもこんなヘラヘラした態度で話しかける…」

 

杳馬「これは元からだからそう言うなよ。それより、他の冥闘士が挨拶で出撃したのに出撃しねえなんて、一匹狼気質も前と変わらねえな」

 

輝火「俺は殺したい敵も、守りたい奴も俺が決める!そして、出撃したい時も俺の意向次第だ!ハーデス様以外が俺に命令する事自体、許さん!」

 

杳馬「強情だねえ。だったらさ、ハーデス様が目覚める前に邪魔者を排除しに行ったらどうだ?」

 

輝火「邪魔者の排除だと?」

 

杳馬「ああ。並行世界には聖闘士はもちろん、神闘士などといった邪魔者がいるのさ。ハーデス様が降臨される前にそいつらを倒しに行ったらどうだ?」

 

輝火「それは命令か?」

 

杳馬「命令じゃねえよ。それこそ、お前の気分次第だ。ま、気が向いたら俺に声をかけな。そしたら、俺が邪魔者のいる世界へ送ってやるぜ」

 

 命令ではなく、輝火の気分次第という事にして杳馬はその場を離れた。

 

輝火「(メフィストの言う事は信用できないが、ハーデス様が目覚める前に邪魔者は排除しておくべきだな…)」

 

 ハーデスが目覚める前に邪魔者を排除するのは合理的だと判断した輝火は杳馬のところへ来た。

 

杳馬「その気になったようだな」

 

輝火「メフィスト、邪魔者を排除するための俺を連れて行け」

 

杳馬「(そういや、セレナちゃんの世界で吸血鬼の野郎が暴れている頃だったな。よし…)俺に任せとけ!今から邪魔者を排除しに行くぞ!」

 

 デュプリケーターを使い、杳馬は輝火と共にセレナの世界へ向かった。

 

 

 

 

 杳馬と輝火はセレナの世界に来た。

 

輝火「ここは…?」

 

杳馬「この世界はセレナちゃんが生き残った世界さ」

 

輝火「セレナ…。確か、シンフォギア装者とやらの名前だったな」

 

杳馬「ああ、そうさ。そんじゃ、後はダンナの気の赴くままにハーデス様の邪魔になりそうな奴等を倒しときな!俺はやる事があるから、この辺で」

 

 やる事があると言って、杳馬はその場を離れた。

 

輝火「メフィストはいなくなったか…。よし、この世界にハーデス様を脅かす奴等がいないか、見回るとしよう」

 

 ハーデスを脅かす者を排除するため、輝火はその場から飛び立った。肝心の杳馬はまだ森におり、輝火の様子を見ていた。その後、小宇宙によるモニターでマリア達が苦しむ様子を見ていた。

 

杳馬「さてと、マリアちゃんとセレナちゃん、調ちゃんがこのまま鮮血の針で吸血鬼になるか、死んでしまったら俺の計画に支障が出るな…。よし、遊び心溢れる仕掛けを作るのも兼ねて3人を助けるとするか!」

 

 しかし、杳馬のそれは善意ではなく、計画に支障が出るが故に助けるだけの事であった。しかも、遊び心溢れる仕掛けと言ってはいるものの、明らかに悪だくみをしていた。

 

 

 

上空

 

 輝火は冥衣の翼で空を飛び、ハーデスの邪魔者となる敵がいないか探していた。

 

輝火「思ったよりも見つからないものだな…。このまま見つからなければ、帰ってからまた気の向いた時に別の世界で…」

 

 しかし、上空から何か戦いがあるのを目撃した。

 

輝火「そう思ってたら、あそこに邪魔者たり得る奴等がいるのかもな…」

 

 邪魔者がいるのではと思い、輝火は降りてみる事にした。

 

 

 

研究所

 

 その頃、ナスターシャのいる研究所では吸血鬼ヴラドの手下の狼が襲撃し、ただ一人戦える状態であった切歌が応戦していた。

 

切歌「あ、あたしがどうにかしないといけないのデス…!」

 

 ところが、戦っていた狼のうちの1匹が黒い炎に焼かれて灰になったのであった。

 

切歌「な、何デスと!?黒い炎が急に!」

 

???「ふん、こんな惰弱な狼如きに何を手古摺っている?」

 

 切歌をバカにしたかのように輝火が降りてきた。

 

輝火「どうやら、この狼は吸血鬼の手下のようだな。面倒だから、すぐに蹴散らしてやる!!」

 

 黒炎で狼たちはあっけなく全滅し、灰と化したのであった。

 

切歌「その黒い鎧は冥衣…。だとすると…冥闘士デス!(それにあの冥闘士、何となく一輝に似てるのデス…)」

 

輝火「当たり前だ。それより、貴様の仲間はどうした?」

 

 輝火の問いに切歌は答えられなかった。

 

輝火「答えられない様子では、お前の仲間は惰弱な吸血鬼にやられたのだろうな。貴様も惰弱だが、仲間はもっと惰弱だ!そんな惰弱な奴等の末路は吸血鬼になるか、死ぬだけだ!」

 

切歌「惰弱…!その言葉、取り消すのデス!」

 

 怒った切歌は輝火へ攻撃を仕掛けたが、あっさりと輝火に首を掴まれ、壁に打ち付けられた。

 

切歌「ぐあっ!」

 

輝火「惰弱な奴を惰弱と言って何が悪い?貴様の仲間がやられたのも、貴様がこんな惨めな想いをしているのも、全て貴様らが惰弱だからだ」

 

切歌「あたしの家族は惰弱なんかじゃないのデス!」

 

輝火「惰弱な吸血鬼にやられた時点で」

 

 ところが、輝火は切歌の言った『家族』に反応したのであった。

 

輝火「家族……だと…!?」

 

 掴んでいる切歌を放り投げた後、輝火は空を飛んでいった。

 

切歌「あいつ…、何だったのデスか…?」

 

 その後、ナスターシャのところへ切歌は戻った。

 

ナスターシャ「狼の撃退、ご苦労様でした」

 

切歌「狼はあの冥闘士が灰にしてしまったデス…」

 

ナスターシャ「冥闘士?それは何なのですか?」

 

切歌「冥闘士は冥王ハーデスの手下で、最近では星矢達の世界とは別の世界から来た冥闘士が出没するようになったのデス…」

 

ナスターシャ「冥王ハーデス…、あのギリシャ神話に出てくる冥府の神、ハーデスの事のようですね。となると、ヴァンパイアに加えてハーデスの配下の冥闘士が現れたとなれば、さらに大変な事態になっているのは間違いないでしょう。幸いなのは、あの冥闘士がヴァンパイアと手を組んでいない事です」

 

切歌「あの冥闘士はあたしやマリア達の事を惰弱と容赦なく言ってバカにした上、全く敵わなかったから悔しいのデス…」

 

ナスターシャ「今はあの冥闘士よりも、ヴァンパイアの対処が先です。切歌は過去に冥闘士と戦った事があるようですね」

 

切歌「あったのデスけど…、全く敵わなかったのデス…」

 

ナスターシャ「そうなれば、聖闘士を呼ばなければならないようです。マリア達の事についても、あの医療スペシャリストの彼女がいれば何とかなるのではないですか?」

 

切歌「あ、その手があったデス!」

 

ナスターシャ「それに、今、様々な角度から情報を洗い出しています」

 

切歌「それで、何かわかったデスか?」

 

ナスターシャ「敵の本拠地の候補ならば、いくつか」

 

切歌「それはどこデスか!?」

 

ナスターシャ「狼の襲撃して来た咆哮、マリアが知覚するヴァンパイアの気配、ヴァンパイアの伝承に縁のある土地や建物…それらを統合する事で、ヴァンパイア本体がいる可能性のある場所を何か所かに絞り込む事ができました」

 

切歌「どうして、マリアがヴァンパイアの気配なんかを?」

 

???「それはですねえ、彼女がヴァンパイアの眷属になりかかってるからかも知れませんよぉ」

 

 突如、男の声がして2人が振り向くと、そこにはモノクルの男に変装した杳馬がいたのであった。

 

ナスターシャ「あなたは何者ですか!?」

 

モノクルの男「私が通りすがりの名医でしてねぇ、マリアちゃん達の具合が悪いようなので、代わりに私が説明する事にしたのですよ」

 

切歌「(あれ?この男はどこかで…。気のせいデスかね…?)だ、だったらなおさら、今すぐにでもその場所に乗り込んであいつを倒すデス!」

 

ナスターシャ「待ってください。まだ敵の本拠地の候補はいくつもあります。どれが本物か、見極めてからにしなければ時間の無駄になります」

 

切歌「見極めるって…どうやってデスか?」

 

ナスターシャ「複数ある候補地に、こちらから人員を送って調査を行います」

 

切歌「ならあたしも行くデスよ!」

 

ナスターシャ「いいえ。切歌には、それとは別にやっておいてもらいたい事があります」

 

切歌「あたしに…デスか?」

 

ナスターシャ「ええ。私達が調査を進めるうちに、あなた達の世界に戻ってこの状況をS.O.N.Gに報告してもらいたいのです」

 

切歌「そんな!今戻ってる暇なんてないデスよ!」

 

ナスターシャ「切歌。今一番必要な事は何かを考えてください」

 

モノクルの男「そうだぜぇ。話では第三勢力の冥闘士って奴もいるから、それ相応の助っ人も必要だろう?」

 

切歌「(なんか、聞いた覚えのある話し方なのデス…)…確かに、そうデスね…」

 

モノクルの男「んじゃ、報告してきなよ。マリアちゃん達の方は私に任せときな!」

 

 モノクルの男に変装している杳馬に対し、似てるのは気のせいと思いつつも、切歌は報告へ向かった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 戻った切歌はヴァンパイアと輝火の事を報告した。

 

切歌「という訳なんデス」

 

弦十郎「何という事だ…」

 

あおい「マリアさん達が、ヴァンパイアに…」

 

朔也「まさか、そんなものが実在するなんてね」

 

あおい「おまけに、第三勢力としてベヌウと思わしき冥闘士まで現れるなんて最悪だわ…」

 

沙織「状況はわかりました。ですが、肝心のパルティータは難病や重傷患者の手術の予定がびっしり入っていて、向かわせる事ができないのです」

 

美衣「それに、響さん達は魔法少女の世界で発生しているマギウスという秘密結社絡みの事件でまだ帰ってきておらず、星矢さん達も聖闘士の任務で不在です」

 

切歌「こんな時に…」

 

???「何か深刻な事態のようですね」

 

 そこへ、瞬が帰ってきた。

 

切歌「瞬!」

 

沙織「ちょうどいい所に帰ってきましたね、瞬。あなたは直ちに響さん達を迎えに行ってあげてください」

 

瞬「何か、あったんですか?」

 

 瞬も事情を聞く事にした。

 

瞬「ヴァンパイアにベヌウの冥闘士…、これは厄介ですね…」

 

弦十郎「瞬は魔法少女の世界へ行き、迎えに行ってくれ」

 

瞬「はい」

 

沙織「何とか、私達の方でパルティータに可能な限り早く向かわせるようにしてみます」

 

美衣「それでもダメなようでしたら、黄金のラピスだけでも瞬さんに持たせ、向かわせます」

 

切歌「沙織さん…、美衣さん…」

 

沙織「切歌さん、くれぐれも瞬が来るまではベヌウの冥闘士に出会っても刺激してはいけません。最初の襲撃時は見逃してくれたようですが、次も見逃してくれる保証はないのですよ」

 

切歌「…わかったデス…」

 

瞬「それじゃあ切歌、準備が整ったら僕も来るからね」

 

 本当はマリア達をバカにした輝火を倒したかった切歌であったが、実力差も十分に理解していた。

 

 

 

研究所

 

 モノクルの男に変装した杳馬の処置は見事なものであり、マリア達の容態も安定していた。

 

ナスターシャ「まさか、これ程の腕前とは…」

 

モノクルの男「そうでしょう。今から私が手術を行います。私の腕前でマリアちゃん達を助けてみましょう」

 

 早速、杳馬は手術の準備に取り掛かった。そこへ切歌が帰ってきた。

 

切歌「マム、何かあったんデスか?」

 

ナスターシャ「たった今、通りすがりの名医が手術を開始します」

 

切歌「あのおじさんが手術を…」

 

ナスターシャ「S.O.N.Gには伝えていただけましたか?」

 

切歌「勿論デス。あの針への特効薬となるのが賢者の石だと判明したのデス!ただ、増援と賢者の石の持ち主の到着はすぐには難しそうデス…」

 

ナスターシャ「伝説にあるあの賢者の石が…。そうですか。まずはご苦労様でした。あなたのいない間に、新たな情報が入りました」

 

切歌「新たな情報?」

 

ナスターシャ「ヴァンパイアの本拠地が判明しました」

 

切歌「本当デスか!?」

 

ナスターシャ「調査隊を送った場所のひとつ、とある古城付近でミイラ化した遺体が複数発見されました。他にも多数の痕跡が見つかり、間違いはないかと」

 

切歌「なら早速乗り込むデス!」

 

ナスターシャ「待ってください。装者4人がかりでも歯が立たなかった相手です。さらにあの冥闘士の存在もあり、あなた1人では…」

 

切歌「猶予がないと言ってたのはマムデスよ。いくらあのおじさんがいるからといって、悩んでいる暇なんてないデス!」

 

ナスターシャ「ですが…。…すみません、わかってはいるのです。今、セレナ達を救える可能性があるのは、あなただけという事を、ですが…この状況はあまりにも…、切歌、もしあなたまで…」

 

切歌「マムは難しく考えすぎデス。あたしに任せておけば何も問題ないデスよ。3人とも、あたしが必ず助けてみせるデス。それに、秘策もあるデス」

 

ナスターシャ「秘策…?」

 

 話し終わった後、切歌は手術室へ運ばれるマリア達を見ていた。

 

切歌「おじさん、必ずマリア達を助けるデスよ」

 

モノクルの男「任しときな!この俺の超テクニックで、マリアちゃん達の呪毒なんてきれいさっぱり消し去ってやるからよ!」

 

切歌「頼むデスよ、おじさん!」

 

 マリア達の事をモノクルの男に変装している杳馬に任せ、切歌は出撃した。

 

 

 

荒野

 

 指定の場所へ進む切歌であったが…。

 

切歌「こうして歩いてきたデスけど…まさか1人で、こんな遠くまで来るとは…(マムが用意してくれたヘリがコウモリ達に落とされちゃったから、仕方ないんデスけどね…)それにしても、周りに何もなさすぎデスよ!GPSがあるからって、こう何もないと本当に正しい方向に進んでるのか不安になるデス…。このまま進んでちゃんと辿り着くんデスかね…?」

 

 ふと、何かが高速で飛んでいるのを目撃した。

 

切歌「はぇ?物凄いスピードで何か飛んでいったデス…」

 

 高速で飛んでいったのは輝火であった。

 

切歌「はぁ…。お腹も空いたし、少しだけ休憩するデス。確か、リュックに研究所の人が用意してくれた食べ物が」

 

 その中身はお菓子であった。

 

切歌「こ、これは…『竹の木の小枝・イチゴ味』デス!こんなお菓子見た事ないデス!流石のあたしもこれには驚きを禁じ得ないデスよ。いただくデス!」

 

 早速、切歌はお菓子を食べた。

 

切歌「ん~、ポリポリ食感にイチゴクリームのマイルドな甘さがベストマッチデスよ!」

 

 そんな時、爆発がした。

 

切歌「もう、こんな時に何なのデスか!?」

 

 そこへ向かってみると、黒い炎で焼かれた狼とコウモリがいた。

 

切歌「黒い炎…、あいつがやったのデスね…!(こいつらがいるって事は、マムの調査が正しかったって事デスからね)道も間違ってなかったようデスし…。この先を進んだ先にあいつが…。なら、余計にいつまでも休んでなんていられないデス!」

 

 狼とコウモリを燃やしたのは輝火であった。一方の輝火は狼とコウモリが相手では不満げであった。

 

輝火「どいつもこいつも惰弱だ!メフィストの言った、ハーデス様を脅かす奴はこの世界にいないとでもいうのか!?(だが、なぜこの俺が惰弱な奴に構う…?あの惰弱なシンフォギア装者の言葉を聞いたせいか…?)」

 

 『家族』という言葉を聞き、自分もその言葉で昔を思い出したからヴァンパイアの手下である狼とコウモリを倒しているのではないかと輝火は思った。日が暮れて力を増した狼とコウモリでも輝火の敵ではなかった。

 

輝火「日が暮れて少しは強くなったようだが、俺の敵ではない!」

 

 一方、切歌は力を増したコウモリと狼を苦戦の末に倒した。その際、黒い炎で焼かれた狼とコウモリをまたしても見かけた。

 

切歌「やっと片付いた、デス…(何だか、研究所やさっき相手したのよりも手古摺った気が…。まさか、敵が強くなっているデスか?それに、黒い炎で焼かれた奴もまた見かけたデス…)…気のせいデス?ちょっとばかしあたしが疲れてるからデスよね。何しろ、ほとんど歩き通しだったデスから…。でもこのくらい、気合で何とかするデスよ!」

 

 切歌は銀色の弾丸をポケットから取り出した。

 

切歌「(マムから受け取った『コレ』もあるデス。あいつのところにまで辿り着けさえすれば…)」

 

 

 

回想

 

 それは、出撃前の事であった。

 

切歌「それに、秘策もあるデス」

 

ナスターシャ「…秘策?」

 

切歌「そうデス。思い出したデス。あの時、あいつはあたしの絶唱を嫌って逃げたデス。だから、絶唱なら」

 

ナスターシャ「いけません!」

 

切歌「どうしてデスか?」

 

ナスターシャ「伝承でヴァンパイアは不死とされていますが、不死とはいえ、魂を失えば生き永らえる事は流石にできないでしょう。ですから、確かにあなたの『魂を刈り取る』イガリマを警戒したとも考えられます」

 

切歌「そうデス!エンブリヲのようなトンデモじゃない奴にイガリマの刃なら、不死のヴァンパイアにだって!」

 

ナスターシャ「…ですが、今のあなたは絶唱のバックファイアを受けたばかり。それに、戦いの傷自体も、まだ完全には癒えていません。そんな状態で絶唱をすれば恐らく…」

 

切歌「それじゃ、どうすれば…?」

 

ナスターシャ「…あなたにこれを預けます」

 

 ナスターシャは銃を渡した。

 

切歌「…銃、デスか?」

 

ナスターシャ「ただの銃ではありません。これに込められているのは、私達の研究所で調査中だった、純銀の弾丸です」

 

切歌「あの時の話の…」

 

ナスターシャ「ええ。この弾丸は元はと言えば、あのヴァンパイアのミイラに撃ち込まれていた代物。そのままミイラの体内に残っていた事から考えても、あのヴァンパイアは過去、これにより倒された可能性が高い…」

 

切歌「なるほどデス。でも、まだ起動していないんじゃないデスか?」

 

ナスターシャ「いえ…。実は、あの襲撃の際に起動していたのです」

 

切歌「えっ!?どうして急にデスか!?」

 

ナスターシャ「恐らくは、あなたの絶唱のフォニックゲインを受けてでしょう」

 

切歌「それじゃ、これを使えばあのヴァンパイアを倒せるデスか?」

 

ナスターシャ「その可能性は高いと思います。ですが、それでも厳しい戦いになる事には変わりありません。相手は、装者の攻撃をいとも簡単にあしらう強敵なのですから。おまけに、ヴァンパイアと同じぐらいかそれ以上の強さと思われる冥闘士と鉢合わせする危険もあります」

 

切歌「…それは、わかってるデス」

 

ナスターシャ「S.O.N.Gからの増援を待ちたいところですが、あなたの心配するように、猶予はもうありません。切歌、くれぐれも気を付けるのですよ。間違っても先程やってきた冥闘士とは絶対に戦わないように」

 

切歌「…わかったデス。任せるデスよ。ところで、この弾丸の力ってどんなものなんデスか?」

 

ナスターシャ「以前話した通り、この弾丸には強力な破魔の特性があります。残念ながら切歌の話した賢者の石と違ってマリア達の治療に生かせるようなものではありませんでしたが、ヴァンパイアには天敵とも言えるでしょう」

 

切歌「つまり、これがあのヴァンパイアの弱点って事デスね!」

 

ナスターシャ「恐らくは…。ですが同時に、危険もある事を忘れてはいけません」

 

切歌「危険…デスか?」

 

ナスターシャ「ええ…その銀の弾丸も、強力な聖遺物の一種。同じ聖遺物であるギアと干渉し、ぶつかり合えば使用者にどんな影響が現れるかわかりません。ですから、くれぐれも使い方を誤らないように気を付けてください」

 

切歌「わかったデス。気を付けるデスよ。この弾丸を、あいつの胸にぶち込んで来るデス!あたしの命に代えてでも!」

 

ナスターシャ「バカな事を言ってはいけません!」

 

切歌「マ…マム?」

 

ナスターシャ「この1発の銀の弾丸同様、あなた1人が私達の最後の希望だという事を忘れてはいけません。そしてあなたが大事に想っている者達も、あなたの事を大事に想っているという事を…。だから…軽々しく命に代えるなどと言ってはなりませんよ」

 

切歌「わかったデスよ、マム」

 

ナスターシャ「ならいいのです。さあ…お行きなさい。務めを果たして、そして、必ず無事に戻ってくるのですよ」

 

切歌「…はいデス!」

 

 

 

 

 そして、夜になった。

 

切歌「ふう…コウモリ達を追い散らしてたら夜になっちゃったデスよ」

 

 切歌は銀色の弾丸を見つめていた。

 

切歌「お前って、あたしの絶唱で起動したんデスよね…。ヴァンパイアを倒したいってあたしの想いに答えた…デスか?もしかして、お前もヴァンパイアを倒したいと思っているデスか?なーんて。答えが返ってくるわけないデスよね」

 

 ふと、切歌はナスターシャから言われた事を思い出した。

 

切歌「(それにしても。マムの言っていた、複数の聖遺物の干渉って…。そういえば、奏さんの…。ブリーシンガメンを起動する際に奏さんが大変だったって聞いたデス。でも…逆にうまくいったら奏さんのギアのように強くなれるかも…?)いやいやいやいや。暴走なんかしたら、誰も止めてくれる人がいないデス…。そうなったらおしまいデス!はあ…確かに、使い方を間違えたらダメデスよね」

 

 そんな時、またまた爆発音がした。

 

切歌「さっきの爆発音は輝火に間違いないのデス!」

 

 切歌が思った通り、離れた場所で輝火はコウモリと狼を黒炎で焼き尽くしていた。切歌が苦戦する敵でも輝火からすればあまりにも弱く、情けない敵の集団でしかなかった。

 

輝火「そう言えば、吸血鬼の弱点は十字架、太陽の光、ニンニクなどだったな。こいつらの力が昼間より強いのは、太陽の光がないからなのだろう」

 

 手下ばかり差し向けてくるヴァンパイア、ヴラドに対し、いつまでも弱い敵を相手にする事に苛立っていた輝火はある事を思いつき、それを実行に移した。

 

輝火「惰弱な吸血鬼め!あまりにも惰弱な狼とコウモリばかり差し向けてくるのは、俺が怖いからなのか!?怖くないのであれば、さっさと自分から出てこい!今の状況ならば貴様の全力が出せるはずだ!これ以上俺に罵られてもヘラヘラしていられるほど呑気でなければ苛立つはずだ!さぁ、言われて嫌な事を言われたくないのであれば、さっさと出てこい!!」

 

 大声で輝火が叫んだため、その大声は切歌に聞こえていた。

 

切歌「と、トンデモな大声なのデス!!」

 

 

 

???

 

 輝火の大声はヴラドの本拠地にも聞こえていた。

 

ヴラド「人間の分際で随分と生意気な事を言うものだな…。我をここまで侮辱した人間はいなかった…。どれ、惰弱などといった生意気な事を言う者にヴァンパイアの恐ろしさを叩き込むとしよう」

 

 ヴラドもまた、輝火の挑発を不愉快に思っており、ヴァンパイアの恐ろしさを見せるために輝火の挑発に乗り、向かったのであった。冥闘士とヴァンパイア、冥界の不死者と闇の不死者の対決が始まろうとしていた。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は輝火が杳馬と共にセレナの世界にやってきて、ヴァンパイア騒動の時に第三勢力として乱入するのを描きました。この話の本来のメインの敵はヴラドなのですが、あまりにも濃い敵である輝火や杳馬の乱入のせいで脇に追いやられ、切歌が銀の弾丸を受け取り、出発する辺りから始めました。(オイ!)
輝火が乱入したものの、作中の通りに輝火は別に切歌と手を組むわけでもなければヴラドと手を組むわけでもなく、ハーデスの邪魔になる奴を排除するために第三勢力として双方に牙を向く事となります。
XD本編と違って杳馬が鮮血の針で苦しむマリア達を救うために手術を行う事となりますが、杳馬の所業故に不安になっている人は多いと思います。その予感は的中するかも知れません。
次の話は輝火とヴラドの戦いの他、銀の弾丸に残っているある人物の残留思念が現れます。
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