セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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186話 決戦に向けて

 

 少し寝た後、切歌は報告した。

 

ナスターシャ『なるほど、状況はわかりました。対ヴァンパイアの専門知識と力を得られたのは僥倖でしたね』

 

切歌「はいデス。これからまた、あいつの元に向かうデス」

 

ナスターシャ『本当は夜が明けるのを待った方がよいのでしょうが…、できれば早めに倒した方がいいでしょう。くれぐれも頼みましたよ』

 

切歌「もちろんデス。マム…3人の事をよろしくデス」

 

 切歌は通信を切った。

 

クルースニク「行くのか?」

 

切歌「時間もないデスからね。道案内、お願いするデス」

 

クルースニク「ああ、任せておけ。奴の気配ならば、どこに行こうとも追跡可能だ」

 

切歌「ありがたいデスけど、どうしてわかるんデスか?」

 

クルースニク「恐らくだが、長い間奴を封じる弾丸として、奴の遺骸の中にいたせいだろうな。だが同じ理由で、奴も銀の弾丸の気配は感知しているだろう。その分危険も増す事になるがな」

 

切歌「どうせこっちの居場所は最初からバレバレデス。あいつにはコウモリも狼もついてるデスからね」

 

クルースニク「違いない」

 

切歌「それに、向こうからかかってくるなら、望むところデス」

 

クルースニク「ああ。賢者の石の効果がどれほどのものかはわからないが、奴を倒した方が確実に鮮血の針の呪いは解けるだろう」

 

切歌「あ、針っていえば…。どうしてあの時、あたしはあの針を弾けたんデスかね?自分で弾いた覚えはないデス…」

 

クルースニク「ああ、その事か。俺達ヴァンパイアハンターはヴァンパイアと戦う際に、いくつかの準備をするようにしている。その一つが、呪い対策だ」

 

切歌「バリアみたいなものデスか?」

 

クルースニク「バリア?なんだそれは?」

 

切歌「あ、何でもないデスよ…」

 

クルースニク「お前の纏う聖遺物…確か、イガリマと言ったか?それの本来の力についてはよくわからないが…さっきのお前の姿からは、俺達と同質の力を感じた」

 

切歌「それって、やっぱり心象変化の影響デスかね…?」

 

クルースニク「恐らく、心象変化というものだろうな。我々ハンターの力の影響を受けたという事なら、その特性を受け継いだ装備と化したというところだろうな」

 

切歌「とにかく、あの針は心配しなくていいって事デスか?」

 

クルースニク「まあ、そういう事だろう」

 

切歌「なら、思う存分戦えるデスよ!あたしまで呪いにやられたら即ゲームオーバーだと思うと、戦いにくかったデス。けど、これで真っ向勝負に持ち込めるデス!」

 

クルースニク「そうだな…」

 

切歌「さて、と。ちょっと休んで疲れもとれたし、あいつを追うとするデスよ!それじゃ、出発…あ!」

 

クルースニク「どうした?」

 

切歌「こっちの気配が向こうにも筒抜けって事は、あいつは逃げようと思えばいつでも逃げられるって事じゃ…?通りすがりの名医に治してもらったとはいえ、そのまま時間切れまで逃げられたら、マリア達が…」

 

クルースニク「いや、それはないだろう」

 

切歌「なんでデスか?」

 

クルースニク「支配者であり被虐者である奴の性格とプライドは狩人から逃げ続ける事など、己に許さないだろう。逆に己を狙ってきた狩人を返り討ちにする事を愉しむような、傲慢で残虐な性格だからな」

 

切歌「森で会った時に分身のあいつに余裕がなかったのは…」

 

クルースニク「奴は初めて自分をゴミのように蹂躙できる奴に出会い、徹底的にやられ、プライドをズタズタにされてしまってあんな風になってしまったのだろうな…。全く、ヴラドより強い奴等がいるこの世の中は広いものだな」

 

 見回してみると、黒い炎で焼かれた狼やコウモリの死骸があちこちにあった。

 

切歌「黒い炎…、あいつの仕業なのデス…!」

 

クルースニク「あの黒い炎に拳で殺された狼やコウモリ……、見てるだけで恐ろしく見えるな…」

 

 黒い炎で輝火の仕業だとわかった。

 

 

 

???

 

 その深夜、ヴラドはロンドンで鮮血の針の雨を降らせた後、本拠地に戻った。

 

ヴラド「おのれ、人間というゴミの分際で我を侮辱し、誇りを踏み躙った黒炎の不死鳥め!我が眷属を増やした暁には」

 

???「逆襲でもするつもりか?薄汚くて惰弱な吸血鬼」

 

 なんと、ヴラド不在時に輝火がヴラドの本拠地に到着し、待っていたのであった。

 

ヴラド「貴様、我が神聖なる根城に土足で入り込んだな!!」

 

輝火「土足?神聖?薄汚い吸血鬼がその言葉を口にするとは片腹痛い!所詮、貴様は雑魚無双しかした事がない惰弱な吸血鬼に過ぎんのだ!」

 

ヴラド「おのれぇ!我の誇りを何度も侮辱した挙句、根城に土足で踏み入るとは!八つ裂きにしてくれようぞ!!」

 

 とうとう自分の根城にまで侵入した輝火にヴラドの怒りは頂点に達し、激昂して襲い掛かった。しかし、前に戦った時のように輝火との力の差は歴然であり、自分がゴミのように殺し続けた人間の如く、ゴミのように蹂躙されたのであった。

 

ヴラド「ぬわあああああっ!ゴミの分際で我がこれほどまでに惨めにやられるとは…」

 

 地面に叩きつけられた後、ヴラドは頭を輝火に足でグリグリされるというあまりにも惨めな目に遭い、蹴り飛ばされた。

 

輝火「貴様、確か不死の存在だと言ってたな。焼き尽くせば死ぬかどうか、確かめてやる!そして、仮に死ななくても貴様は俺という、自分を凌駕する存在にずっと怯えていろ!この図体がでかいだけのコウモリ野郎が!」

 

ヴラド「ふざけるなぁああああっ!!我は、我は支配者なのだぞ!貴様のようなゴミの小僧如きに負けてなるものかぁあああっ!!」

 

 度重なる輝火による侮辱によって、ヴラドは怒りで我も誇りも忘れ、突っ込んで来た。

 

輝火「怒りで我を忘れたか、この惰弱な吸血鬼が!これで燃え尽きてしまえ、コロナブラスト!!」

 

 輝火の炎の拳でヴラドは火だるまになってしまった。

 

ヴラド「ぬわああああっ!!熱い、熱い、熱ぃいいいいっ!!!」

 

 凄まじい業火に焼かれ、ヴラドはのたうち回った後に動かなくなり、黒焦げになったのであった。

 

輝火「ふん、所詮は惰弱な吸血鬼か…」

 

 ヴラドを惰弱と吐き捨て、輝火は根城を後にした。

 

 

 

 

 翌朝になった。

 

クルースニク「暁。起きろ」

 

 クルースニクに言われ、寝ていた切歌は起きた。

 

切歌「どうしたんデス…。ま、また、敵なんデスか!?」

 

クルースニク「落ち着け。どうも、それがお前を呼んでいるようだ」

 

切歌「あ、通信機…。マムからの呼び出しみたいデス…」

 

 切歌は呼び出しに出た。

 

切歌「ごめんデス、マム…ちょっと寝てたデス」

 

ナスターシャ『ああ、無事でしたか。よかった…』

 

切歌「何とか無事デス…。夜中じゅう、敵に襲われて散々だったデスけど…どうしたんデスか?」

 

ナスターシャ『悪い知らせがあります』

 

切歌「まさか、マリア達が…」

 

ナスターシャ『いえ、今は気持ちよさそうに寝ていて、経過は順調なようです。ですが、昨夜の深夜、ロンドンでヴァンパイアらしき姿が確認されました』

 

切歌「ロ、ロンドンデスか!?いつに間に」

 

クルースニク「お前が力尽きて寝ている間、確かにひととき、奴の気配が大きく動いた事があったが…その時だろう」

 

切歌「それで、あいつはロンドンで一体何をやってるんデスか?」

 

ナスターシャ『空から赤い雨が降り注いだ事で謎の疫病が広がり、人々が次々と倒れ、大混乱となっているという話です』

 

切歌「赤い雨…それに疫病!?まさか…」

 

ナスターシャ『ええ。届いた情報から判断するに、症状はマリア達に極めて酷似しています』

 

クルースニク「間違いなく、鮮血の針によるものだろうな。奴は過去にも同じ事を行い、実際にある都市が滅んだ…」

 

切歌「昨日話していた計画デスか!?」

 

クルースニク「そうだ。放っておけば、数日で奴の仲間が誕生する。そして同時に、選別に漏れた多くの者が死ぬ事になる。しかも、その被害はその都市だけで済むまい。奴は次々と、その選別と淘汰を進めていくつもりだろう」

 

切歌「それまでに絶対止めるデスよ!」

 

ナスターシャ『ええ…無茶はしないように、と言いたいところですが、今はあなただけが頼りです。頼みましたよ』

 

 通信はここで終わった。

 

切歌「大変な事になったデス…。もし、お医者さんが言った通り、後遺症か何かがあったら…」

 

クルースニク「そっちの可能性の方が高いな。経験からして、どんなに耐性が強くとも、あと一晩か二晩といったところだろう」

 

切歌「そう、デスか…。それに、あいつにやられた他の人達も、今苦しんでいるんデスよね…なら…あたしが絶対の絶対に、あいつを止めるデスよ!」

 

 切歌は前進していった。

 

 

 

研究所

 

 一方、研究所の方ではようやく翼達が到着し、響とクリスは切歌の増援へ向かった。

 

翼「教授、マリア達が危機的状況だと聞いて駆け付けました!」

 

ナスターシャ「ありがとうございます。マリア達に関しては、モノクルが特徴の通りすがりの名医に治してもらい、今は経過を見ているところです」

 

未来「丸一日かかった手術で吸血鬼化をあっさり止めたなんて…」

 

翼「(特徴がモノクル…、異端技術にも詳しい…、かなり怪しい上、特徴に覚えがあるな…)」

 

ナスターシャ「あの名医は、来れなかったのでしょうか…?」

 

未来「今、瞬さんが迎えに行っているところです。来れない場合は、賢者の石を瞬さんに渡すそうで…」

 

ナスターシャ「向こうにもやむを得ない事情があるのであれば、仕方ないですね…」

 

 翼と未来はメディカルルームでマリア達の様子を見ていた。

 

未来「切歌ちゃんの言った事が直前にあったとは思えないほど気持ちよさそうに寝てる…」

 

 気持ちよさそうに寝ているマリア達に安心した未来と違い、翼は名医が気になっていた。

 

翼「小日向はマリア達の様子を見ていてくれ。私はナスターシャ教授と話してくる」

 

 その場を未来に任せ、翼はナスターシャの元へ向かった。そんな中、ほんの少しだけマリアの手が動いた事を2人は知らなかった。

 

 

 

病院

 

 その頃、瞬はグラード財団の医療機関へ来ていた。

 

瞬「パルティータさんは手術の予定がたくさん入っているのでしょうか?」

 

医師「はい。残念ながら、彼女でなければ手に負えない患者の手術の予定がびっしりと入っており、聖闘士としての任務に行く事はできません…」

 

看護師「パルティータ先生から、どうしても並行世界へ行く事ができない場合は、黄金のラピスを渡すように言われました」

 

 看護師は黄金のラピスを瞬に渡した。

 

瞬「ありがとうございます!では、沙織さん、美衣さん!」

 

沙織「ええ!」

 

美衣「では、並行世界へ向かいましょう!」

 

 すぐに送迎してもらい、並行世界へ向かう瞬であった。

 

 

 

 

 夜になり、切歌は視線の先にヴラドの根城を見つけた。

 

切歌「あれが、そうデスか…」

 

クルースニク「ああ、そうだ。あの城こそ忌々しきヴァンパイアの本拠地だ」

 

切歌「やっとたどり着いたデス…。まさか、こんな遅くなるとは思わなかったデスよ…」

 

クルースニク「妙だな…、俺が根城へ向かった時よりも下僕の数がかなり少なかった…」

 

切歌「下僕の数が少ない…?じゃあ、本当だったらもっと多いのデスか!?」

 

クルースニク「ああ。だが、何が起こっているのかはわからん。今頃は奴等も力を増している頃合いだろう。今仕掛けるべきか、日が昇るのを待つべきかは、慎重に考えた方がいいだろうな」

 

切歌「やっぱり…」

 

???「切歌ちゃ~ん!」

 

 声をかけたのは響であり、クリスも一緒だった。

 

切歌「響さん、クリス先輩!」

 

響「遅くなってごめん!」

 

クリス「全く、ここは薄気味悪いな…」

 

 ふと、響とクリスはクルースニクを見て、驚愕した。

 

響「わわっ、幽霊!?」

 

クリス「おい、どうして幽霊と」

 

切歌「あ…いや、これには深い事情があってデスね…。マムから話、聞いてないデスか?」

 

クリス「あたしらは研究員からお前の居場所がわかるGPS受信機をもらって、すぐに飛んできたからな」

 

響「文字通り、クリスちゃんのミサイルに乗ってね。あはは…」

 

切歌「よーし、今から」

 

 ところが、切歌はふらついて倒れてしまった。

 

クルースニク「まずいな…、少し休んでから突入した方がいい。夜のヴァンパイアは昼の間のそれとは完全に別物だからな」

 

切歌「そんな暇なんてないデス…!すぐに行かないと……」

 

 そこへ、通信が入った。

 

響「どうしましたか?」

 

ナスターシャ『大変です!マリア達が』

 

???『きゃああああっ!!』

 

 突如、悲鳴が聞こえて通信が途切れたが、悲鳴の主はすぐにわかった。

 

クリス「さっきの悲鳴、まさか…!」

 

響「未来だ!でも、マリアさん達の容態は安定したって聞いたのに…」

 

クリス「一体、何が起こってるんだ…?」

 

 

 

研究所

 

 その頃、研究所では夜になって突如としてマリア達が起き、その場にいた未来を取り押さえてしまった。未来の悲鳴を聞いた翼はナスターシャと共に慌てて駆け付けると、目が映ろで瞳が赤く染まっているマリア達の姿があった。

 

翼「小日向、何があった!?」

 

未来「翼さん、ナスターシャ教授、マリアさん達が急に…!」

 

ナスターシャ「3人とも、何をしているのですか!?」

 

マリア「ふふふ…。マム、私達は今、無性に生き血を啜りたくて仕方ないのよ…」

 

ナスターシャ「生き血を啜りたい…?まさか、マリア達はヴァンパイアの眷属に…?」

 

翼「(モノクルの男と聞いて怪しいと思っていたが、手術をした医者の正体は杳馬で間違いない!)」

 

セレナ「姉さん、月読さん、まずは小日向さんの生き血を啜りましょうか…」

 

調「そうだね…。もう私はすぐにでも生き血を啜りたい…」

 

マリア「安心しなさい、翼。あなたの生き血を啜るのはお楽しみにしてあげる。まずは、この子の生き血を存分に」

 

 言い終わろうとした途端、鎖が飛んできてマリア達は縛られた。

 

マリア「な、何!?」

 

調「これって…、あああああっ!!」

 

セレナ「きゃああああっ!!」

 

 鎖に縛られて振りほどこうと触った途端、鎖から電撃が流れてマリア達は感電した。感電して気を失った後、鎖は戻っていった。それと同時にマリア達の身体から針が落ちた後、砕け散って砂と化した。

 

未来「さっきの鎖って、まさか…!」

 

 その鎖はネビュラチェーンであり、瞬が駆け付けたのであった。しかも、聖衣もいつものと違い、黄金の装飾がなされていた。

 

瞬「遅くなって申し訳ありませんでした、ナスターシャ教授!」

 

ナスターシャ「間一髪で間に合いましたね、瞬。ネビュラチェーンには電気も流れているのですか?」

 

瞬「はい、ネビュラチェーンにはその機能もあります」

 

ナスターシャ「来て早々にすみませんが、すぐに賢者の石を」

 

瞬「賢者の石なら、もう使っていますよ」

 

ナスターシャ「使っている…?」

 

 いつもの聖衣と違い、黄金の装飾がある事に翼と未来は気付いた。

 

翼「その黄金の装飾と関係があるのか?」

 

瞬「はい。ファウストローブは本来、シンフォギアと同じように女性しか纏えないのですが、パルティータさんの開発した黄金のラピスは聖衣の上に聖衣を纏うような感じで男でも使用可能なんです。もちろん、男が使用する際は聖衣を纏う事が前提で、直接纏う事はできませんが…」

 

ナスターシャ「なるほど、だから瞬の聖衣に黄金の装飾がなされていたのですか…」

 

未来「だけど、瞬さんのお陰でマリアさん達はもう大丈夫みたい。鮮血の針も、ほら」

 

 黄金のラピスの力で砕け散り、砂となった鮮血の針を見せた。

 

ナスターシャ「これなら、もう大丈夫なようですね」

 

 砂となった鮮血の針を見て、ナスターシャ達は安心した。

 

 

 

 

 その様子は、小宇宙のモニターで杳馬も見ていて、現場と研究所の連絡が途絶えるように細工もしていた。

 

杳馬「やはり、賢者の石で治療したか。鮮血の針に細工し、強烈な催眠術をかける俺の仕掛けは最初から未来ちゃん達を襲わせるものではなく、ダンナを呼ぶためのブービートラップなのさ!」

 

 杳馬の仕掛けは最初から星矢達の誰かと輝火を戦わせるためのものであった。黄金のラピスの力を使った際の小宇宙に輝火は気付いた。

 

輝火「この小宇宙…、いかにもハーデス様に害を及ぼすほどの大きさだ!蹴散らしてやる!!」

 

 瞬の小宇宙を感じた輝火は研究所へ一直線に飛んでいった。

 

 

 

研究所

 

 瞬が到着して安心したのも束の間、警報が鳴った。

 

ナスターシャ「何事ですか!?」

 

研究員『たった今、物凄いスピードでこちらに向かっている未確認飛行物体を検知!これは…』

 

 チェーンも反応していた。

 

瞬「チェーンが反応している…!ナスターシャ教授、切歌が言っていたヴァンパイアを凌駕する敵が来ています!」

 

ナスターシャ「ヴァンパイアを凌駕する敵、まさか…!」

 

 それは、輝火であった。瞬もチェーンの反応にある事を思っていた。

 

瞬「(このチェーンの反応、以前にも同じような反応をした事がある…。それに、この攻撃的な小宇宙は憎しみに染まっていた時の兄さんの小宇宙にそっくりだ…!)」

 

未来「瞬さん、どうしたんですか?」

 

瞬「気を付けてください!こちらに来ているのは相当な実力の冥闘士みたいです!」

 

翼「冥闘士、暁の報告にあった冥闘士か!」

 

ナスターシャ「わかりました。ですが、瞬の方も無理は禁物ですよ」

 

 瞬が研究所を出ると、ちょうどその時に輝火が到着した。

 

瞬「(チェーンの緊張が最高潮に達している…!そして、この攻撃的な小宇宙…、こんな反応は憎しみに染まっていた頃の兄さんと対峙した時と同じ反応だ!それに…、あの冥闘士は小宇宙だけでなく、顔や姿も兄さんに似ている…!)」

 

輝火「貴様があの強大な小宇宙の持ち主のアンドロメダの聖闘士か。思った以上に優男で惰弱に見えるな」

 

瞬「君は何者なんだ?」

 

輝火「これからハーデス様の邪魔になるから殺す貴様に言っても無駄だが、あえて名乗ろう。俺の名は輝火、天暴星ベヌウの輝火だ!!」

 

 そう言って輝火は攻撃的な小宇宙を全開にし、黒炎を放出した。

 

瞬「なんて威力の炎なんだ!?あの色の炎は見た事がない!」

 

輝火「アンドロメダ、ハーデス様のためにも、貴様を殺す!」

 

 殺意全開で輝火は黒炎の拳で瞬に襲い掛かった。対する瞬もチェーンでガードした。

 

瞬「輝火、君はなぜこの世界に来たんだ!?」

 

輝火「メフィストからハーデス様を脅かすほどの邪魔者がいると聞いて、排除しに来た。だが、シンフォギアも吸血鬼も惰弱でメフィストの言う奴はいないから帰ろうと思っていたのだが、まさかそんな時に現れた邪魔者が聖闘士だったとはな!」

 

瞬「邪魔者を、排除する…?」

 

輝火「俺にとってはアテナも聖闘士も、冥闘士も、並行世界も、世界蛇も全て下らん!俺にとって意味のあるものは…ハーデス様だけだぁ!!」

 

瞬「うわああああっ!!」

 

 輝火の凄まじい憎悪と気迫に瞬は押され、殴り飛ばされた。

 

 

 

 

 眠った切歌は昔の夢を見た後、起きたのであった。

 

切歌「(あれ…ここは…?焚火、それに…)」

 

 目の前にヴラドの根城が見えた。

 

切歌「はっ!」

 

クリス「おっ、起きたな」

 

切歌「クリス先輩…」

 

響「よかった~。目が覚めたんだね!」

 

切歌「響さんも…(そうだったデス…。あいつの根城へ行こうとした時に2人が来てくれて、一緒に向かおうと思ったら…)」

 

クリス「ようやく起きたが、これからどうするか決めないとな」

 

響「うん。連絡が途絶えてしまったから、時間がないもんね」

 

切歌「あの、あたしはどのくらい…」

 

響「えーと、2時間くらいかな?」

 

切歌「そ、そんなにデスか…」

 

クリス「バカ。まだ全然足りないくらいだ」

 

響「そうそう。クルースニクさんに聞いたら、ずっと戦い通しだったんだって?」

 

切歌「あ、…話したデスか…」

 

クルースニク「ああ。俺が目覚めて以降の話に限られるがな」

 

クリス「てなわけで、簡単な事情はこいつに聞いたけどよ、相手がヴァンパイアってのは、マジなのか?」

 

切歌「そ、そこからデスか?マジの大マジデスよ!」

 

クリス「ただの確認だ。いちいち怒鳴るなって」

 

響「でも、本当にそんなのいるんだねえ。考えただけで背筋がゾクゾクしちゃうよ」

 

クリス「で、そいつにあいつらがやられたんだよな。そんなに奴は強いのか?」

 

切歌「そうじゃないデス」

 

響「ん?なら、どうして…」

 

切歌「いや、強いは強いデスけど…鮮血の針が…。おまけに、ヴァンパイアより圧倒的に強い冥闘士まで現れて…」

 

クリス「鮮血の針…例の呪いの毒を注ぎ込むって奴か。って、冥闘士まで現れたのか!?」

 

響「マリアさん達は、それに刺されて倒れちゃったんだよね」

 

切歌「そうデス。刺されて少しすると、熱が出て、身体の自由が利かなくなって…ギアまで解除されちゃうデスよ」

 

クルースニク「そうだ。犠牲者は苦しんだ末にヴァンパイアの眷属と化すか、さもなければ死ぬしかない…。奴はそうやって、多くの人間を犠牲にしながら、己に従う眷属を増やしてきたのだ」

 

クリス「その呪いを解けそうなのが、黄金のラピスだったな」

 

響「でも、急に通信が途絶えちゃって…」

 

クルースニク「恐らく、暁の仲間の治療を行った医者が言った通り、後遺症が出たか、あるいは…」

 

切歌「ま、まさか…」

 

響「まだ連絡が来てないから、どうなのかわからないよ!」

 

クリス「そういや、そのヴァンパイアの名前は何だ?」

 

クルースニク「ヴラドだ」

 

クリス「ヴラド…そいつ、まさか…、ヴラド・ツェベシュか?」

 

クルースニク「知っていたか。そのまさかだ。暁が知らぬと言うので、長い年月の間に存在が忘れ去れてしまったのかと思ったぞ」

 

クリス「なわけあるか。なんで知らないんだ、有名だろ」

 

切歌「え、そうなんデスか…?」

 

クリス「ったく、もう少し勉強しろって…」

 

 ヴラドの説明とヴァンパイアハンター型ギアへの変化が終わった後、そろそろ出発する準備をしていた。

 

クリス「よし…なら、もう少しだけ休んだら行くぞ」

 

響「うん、そうだね。切歌ちゃんもそれまでしっかり休んでね」

 

切歌「わかったデス」

 

クルースニク「待て、お前達。まさか、夜が明ける前に仕掛けるつもりか?いくらお前達にもハンターの力が宿ったとはいえ、夜間の奴の強さは半端ではないのだぞ?ここは大人しく、日が昇るまで待つべきだ」

 

クリス「いや…流石にそこまでは待てないな。急に通信が途絶えてしまったんだ。夜が明ける前に何とかしないと、針にやられたあいつらはおろか、先輩達にまで危害が及ぶ危険性もある」

 

響「おまけに、冥闘士までいるし…」

 

切歌「みんな…」

 

 しばらくしてから、切歌は何かを書き始めた。

 

切歌「ええっと…『はいけい』…ってどう書くんでしたっけ?ひらがなじゃ、流石にカッコ悪いデスし…。ええい、無難に『ぜんりゃく』でいいデス」

 

クルースニク「何をしているんだ?」

 

切歌「おわっ、びっ、ビックリしたデス!」

 

響「どうしたの?」

 

クリス「敵でも襲ってきたのか?」

 

切歌「ち、違うデス!ちょ、ちょっとでっかい虫がデスね。ははは…」

 

クリス「んだよ、人騒がせな…」

 

響「ちゃんと休んでおいてね?」

 

切歌「わ、わかってるデス…」

 

クルースニク「やれやら。俺は虫扱いか?」

 

切歌「急に後ろに現れないでほしいデス。心臓に悪いデスよ」

 

クルースニク「それはすまなかったな。それより、さっきから何を書いているんだ?」

 

 切歌が書いていたのは、手紙みたいなものであった。

 

切歌「ああ、まあ…。何が起きるかわからないデスからね。だから、もしもの時のための手紙デス」

 

クルースニク「もしもの…?ああ…そうか。だが、どうして急に言葉を残そうなんて思ったんだ?」

 

切歌「さっき、夢を見たデス」

 

クルースニク「夢?」

 

切歌「…辛くて寂しくて死にたかった時の夢。そんな時に、みんながあたしに手を延ばしてくれた事を思い出したんデス」

 

クルースニク「…ヴラドにやられた仲間達か?」

 

切歌「そうデス。そしたら、みんなに伝えたかった事とかが、あれこれ湧いて止まらなくなっちゃったデスよ。リュックに紙とペンが入ってて助かったデス」

 

クルースニク「だが、お前も、あの者達も負ける気はないのだろう?」

 

切歌「勿論デス。でも、3人で戦ってもダメだったら…、今度こそ、最後の手を使うしかないデス」

 

クルースニク「最後の手?」

 

切歌「あたしのイガリマの絶唱特性は、斬った相手の魂を刈り取る刃デス」

 

クルースニク「絶唱とは何の事かわからないが…。魂を刈り取る?そんな力があるのか?」

 

切歌「そうデス。ヴラドは最初に会った時、あたしの絶唱から逃げたデス。だから…もしこのギアで倒しきれなくても…きっとあたしの絶唱なら、あいつを何とかできるはずデス」

 

クルースニク「なるほど、な。あのプライドの高いヴラドが意味なく逃げるとは考えにくい。奴がお前の絶唱というものに脅威を感じたのは、確かだろう。だが、だとしたら。ヴラドと対峙した時、どうして早く使わなかった?」

 

切歌「それは…」

 

クルースニク「いや、そんな都合のいい力がおいそれと使えるはずがない。それ相応のリスクがあるという事だな?」

 

切歌「…ご名答デス。今のあたしが使えば、どうなるかわからないデス。それこそ命すらも…」

 

クルースニク「それほどまでに…」

 

切歌「そういう意味では、あの時、ヴラドの分身相手に使わなくてよかったデスよ。それも、クルースニクさんのお陰デスね」

 

クルースニク「俺の?」

 

切歌「そうデスよ。実はあの時、使いかけてたデスけど、クルースニクさんが現れてびっくりして止めたんデスから」

 

クルースニク「そうだったのか。あの時、既に…。もしかすると、お前が絶唱を使おうとした事も、俺の意識が覚醒した原因かも知れないな」

 

切歌「そう…なんデスかね…?」

 

クルースニク「まあ、何の根拠もないがな」

 

切歌「とにかく、そんな理由で前回は不発に終わらなくて済んだデスけど…でも、もし今度こそ必要になったら…、あいつを倒すために、倒してあたしの家族を救うために、それが必要なら…もう躊躇うつもりはないデスよ(マムからは使うなって言われてるデス。でも、調達がいなくなるぐらいなら…)」

 

クルースニク「暁…」

 

切歌「っと!早く書いちゃわないと、本当に休む暇がなくなっちゃうデスよ!」

 

クルースニク「(…お前はそこまで覚悟して仲間を救おうと…。だが、今お前の選ぼうとしている道は…。俺達が通った、誤りの道かも知れないぞ)」

 

 休んでいる時、クルースニクはヴラドに銀の弾丸を撃ち込んだものの、自分達のやってきた事が誤りだという夢を見た。

 

クルースニク「今のは…夢…か?バカな。死者である俺が、夢を見るとでもいうのか?(いや、違う。俺と共に銀の弾丸に宿りし一族の想いが、俺に思い出させたのだ。この俺の…最後の、後悔を…。数奇なる縁で、想いと使命を受け継ぐ者に巡り会う事ができた。遥かな過去に果てた身には、あまりに過ぎた僥倖というものだろう。だが…、お前はこのまま同じ過ちを繰り返させようというのかと…。そう、問いているのだな…)」

 

 そして、出発の時…。

 

切歌「クルースニクさん…」

 

クルースニク「どうした?暁」

 

切歌「あたしにもしもの事があったら、さっきの手紙を渡してほしいデス」

 

クルースニク「何を言っている」

 

切歌「あたしは、死んでもあいつを倒すデス。だけど、絶唱を使えばあたしは恐らく…。だから、調達に…あたしの家族にあれを渡してほしいデスよ」

 

クルースニク「暁…命を捨てる覚悟では、真に勝つ事はできないぞ」

 

切歌「でも、クルースニクさんだって、命を賭けて戦ったって、そう言ったデスよ」

 

クルースニク「確かに、な。だが、思い出したのだ…。自分や仲間達も、確かに、そうだった…。命を賭して戦って、奴さえ滅ぼせればいいと思っていた。だが、俺達の後には…結局は何も残らなかった。しかもヴラド自身は滅ぼし損ね、後世にまでツケを残す始末だ。お前には同じ轍を踏んでほしくない。同じ後悔を味わってはほしくないのだ」

 

切歌「そんなの、今度こそキチッと倒せばいいんデス!あたしは勝つデス。勝って、みんなを救ってみせるデスよ」

 

クルースニク「違う、それだけでは、奴に勝ったとは」

 

クリス「おい、何してんだ?」

 

響「切歌ちゃん、ひょっとして、まだ具合悪いの?」

 

切歌「大丈夫デス。ちょっと靴の紐がほどけたから、結んでただけデスよ!」

 

響「そうなの?だといいけど…」

 

クリス「あまり離れると迷子になるぞ」

 

切歌「すぐに追いつくデス!…とにかく、頼んだデスよ」

 

 切歌達はヴラドの根城へ進んだ。

 

クルースニク「それでは勝てないのだ…。勝つために、負けないために、本当に必要な事は…。言葉で伝えても意味はないか…、ならば、己で気付くほかあるまい」

 

 

 

根城

 

 ヴラドの根城に来たものの、何の気配も感じなかった。

 

響「ここに…ヴァンパイアがいるの?」

 

クリス「妙だな。ここへ来る道中に狼やコウモリはほとんど見かけなかった…」

 

クルースニク「間違いなく、奴は最上階にいるはずだが…(おかしい、このあちこちにある炎で焦げたような痕、明らかに俺達とは別に誰かがこの根城に来た証拠だ…!)」

 

 疑問に思いつつ、切歌達が進んで最上階へ行くと、そこには輝火との戦いに敗れ、黒炎で黒焦げになって倒れていたヴラドの姿があった。

 

クリス「黒焦げだ……!」

 

響「死んでる、の…?」

 

クルースニク「そんなはずはない。奴は不死の存在だ」

 

切歌「でも、あいつを黒焦げにできる奴といえば…」

 

 輝火の姿が思い浮かんだ途端、ヴラドが起きた。

 

切歌「ヴラド!」

 

ヴラド「おのれ……おのれぇ……、おのれぇえええええっ!!!」

 

響「な、なんか怒ってるみたい…」

 

クリス「だが、この怒り方は尋常じゃねえぞ!」

 

ヴラド「おのれ、鎧の小僧が!!この夜を統べる王たる我にここまで恥をかかせたな!!!ぶっ殺す、ぶっ殺してやる!!!!」

 

 ちょうどヴラドは切歌達の方へ向けた。

 

ヴラド「あの鎧の小僧を血祭りに上げる前に貴様らからぶっ殺してやる!!!」

 

切歌「それはこっちのセリフデス!こっちが息の根を止めてやるデス!」

 

 輝火に敗れてプライドが傷つき、怒り心頭のヴラドは切歌達に襲い掛かった。




これで今回の話は終わりです。
今回は響達が到着したのと、ヴラドが輝火に前以上にプライドをズタズタにされ、フルボッコにされて黒焦げになるのを描きました。
遂に聖闘士の増援として瞬が到着しましたが、杳馬の仕掛けは最初から星矢達の誰かと輝火を戦わせるために細工された鮮血の針によって強力な催眠術をかけられたマリア達を元に戻すために黄金のラピスを使わせ、その際の小宇宙を輝火に感知させるというブービートラップが思いつきました。
次の話は輝火にやられて怒り心頭のヴラドとの戦いと輝火との戦いが同時に行われます。そして、瞬の危機にはあの男が…。
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