セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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187話 夜明け

研究所

 

 その頃、研究所では瞬と輝火の戦いが続き、翼と未来はナスターシャらと共に次元の違う戦いをモニターで見ている事しかできなかった。パルティータから借りた黄金のラピスというアドバンテージがあるのにも関わらず、瞬は輝火の猛攻に押されていた。

 

瞬「(な、何て強さなんだ!?下手をしたら三巨頭並みの強さだ…!)」

 

輝火「どうしたどうした!?防御してばかりで反撃すらできんとは、この見た目通りの惰弱な奴め!」

 

 輝火の猛攻に瞬は防御するだけで精一杯であった。

 

瞬「(防御するだけでは倒せないし、攻撃しようにも攻撃が激しすぎて反撃できない…!)」

 

輝火「俺の攻撃の前に反撃さえままならないようだな。俺の黒炎を受けてみろ!」

 

 輝火の黒炎を瞬はローリングディフェンスで防いだ後、チェーンを蜘蛛の巣のように張り巡らせる攻防一体の陣形、アンドロメダ星雲(ネビュラ)の配置をとった。

 

瞬「さあ、この中に入ろうとすると、死を覚悟しなければならない!」

 

輝火「死だと?そんなものはとっくの昔に覚悟している!蜘蛛の巣みたいに配置した鎖如きでこの俺の猛攻を止められると思うな!!」

 

 上空に飛び上がり、一見すると無防備な上から輝火は攻撃しようとした。

 

瞬「裏をかいたと思っているけど、真上が一番強固だ!そこを攻める者には確実に死をもたらす!」

 

 瞬の言う通り、アンドロメダ星雲(ネビュラ)は真上が強固で、ギャラクシアンウォーズの時は実力の差もあって邪武を完封できた。しかし、輝火はその鎖の猛攻を受けても怯まず、その猛攻を防ぎもしなかった。

 

瞬「そんな!真上から防御もしないで傷つきながら突っ込んでくるなんて!?」

 

輝火「だから言っただろう、死などとっくの昔に覚悟していると!ハーデス様のためであれば、強大な敵が相手でもこの命に代えてでも必ず殺す!俺を他の冥闘士と一緒にするなぁあああっ!!」

 

 あっという間に距離を詰められ、瞬は殴り飛ばされた。

 

瞬「うわああああっ!!」

 

輝火「アンドロメダ、貴様も惰弱な吸血鬼のように炎で燃やし尽くしてやる!コロナブラスト!」

 

 火球が瞬目掛けて飛んできて、瞬は火球をまともに受けてしまった。

 

瞬「うわああああっ!!」

 

 コロナブラストを受けた瞬は吹っ飛び、車田落ちしたのであった。

 

輝火「ふん、アンドロメダがどれ程の奴かと思えば、メフィストから聞いた賢者の石さえまともに扱えない惰弱な奴でがっかりした。それでも貴様はこの時代の聖戦で神と戦い、生き残った聖闘士なのか!?」

 

瞬「輝火、君は…何であれほどの憎しみを持っているんだ…?」

 

輝火「そんなの、貴様に教えたところでわかるはずもあるまい!惰弱な貴様は」

 

 杳馬の情報とは大違いであまりにも弱いと感じた輝火は瞬の胸倉を掴んだ。ところが、その際に瞬の顔を見て、驚いたのであった。

 

輝火「(な、何だと!?この男の顔………あの方にそっくりだ!あの方がこのような惰弱な男に生まれ変わったなど…あり得るはずがない!!)貴様はどこまでも惰弱な奴だ!そんな奴はこの俺が灰になるまで焼き尽くしてやる!」

 

 瞬の顔が『あの方』に似ている事に輝火は衝撃を受け、瞬を放り投げてから輝火は黒炎を放ち、黒炎は瞬を呑み込んだ。

 

瞬「うわああああっ!!」

 

輝火「貴様の顔があの方に似てるだけで不愉快だ!燃え尽きろ、惰弱な優男め!」

 

 モニターでも輝火の強さに一同は衝撃を受けていて、未来は慌てて外へ出た。

 

未来「瞬さん!」

 

 未来は瞬を助けに行こうとしたが、翼に止められた。

 

翼「小日向!このまま私達が奴と戦っても焼き殺されるだけだ…」

 

 聖闘士と冥闘士の戦いでは力になれない事に未来は悔しかったが、翼も心境は同じであった。ところが、黒炎に変化が生じた。

 

ナスターシャ「黒炎が赤く…?まさか…!」

 

 もう勝負は終わったと輝火は判断したが…。

 

輝火「何だ…?さっきから感じるこの攻撃的な小宇宙は…?」

 

???「この程度の炎では、俺の薄皮一枚焼く事はできんぞ…!」

 

 炎が赤くなり、フェニックスの姿となった後、炎の中から一輝が瞬を抱えて現れた。

 

未来「一輝さん!」

 

輝火「何ッ!?この時代には今まで現れなかったフェニックスの聖闘士までいるだと!?」

 

 一輝は未来と翼のところまで来た。

 

一輝「大丈夫か?瞬!」

 

瞬「兄さん、やっぱり来てくれたんだね!」

 

輝火「兄さん!?あの惰弱な男には兄がいたのか!?」

 

 瞬には一輝という兄がいる事に輝火は衝撃を受けた。

 

一輝「翼、未来、死にたくなければ、瞬と共にもっと離れろ!」

 

翼「わかった。一輝こそ、死ぬな…」

 

瞬「兄さん、輝火は尋常ではないから、気を付けて!」

 

一輝「ふっ、誰に向かって言っている?」

 

 弟の事を未来と翼に任せ、一輝は輝火と対峙した。

 

輝火「ほう、貴様はあの惰弱なアンドロメダに比べるとマシな戦いができそうだな」

 

一輝「輝火とか言ったな。お前からすれば、瞬は惰弱に見えるかも知れん。だが、俺にとってはかけがえのない弟だ!」

 

輝火「兄弟…、貴様を見てるとアンドロメダ以上に腹が立ってくる…!貴様も殺す!」

 

一輝「俺は何度でも蘇る不死鳥だ。殺せるものなら…、殺してみろ!!でりゃあああっ!」

 

輝火「とあああああっ!」

 

 一輝の赤い炎の拳と輝火の黒い炎の拳がぶつかり合った。

 

輝火「ぐぐぐぐっ…!(何だ…?この今までにないほどの苛立ちは!俺自身も整理がつかんほどだ…!)」

 

一輝「ぬぅううううっ…!(この男の憎悪が手に取るようにわかるぞ…。その顔といい、まるで昔の俺そのものだ…!)」

 

 一旦、2人共離れた後、今度は超スピードでの殴り合いとなった。

 

翼「なんてスピードだ…!」

 

未来「何が起こっているのかわからない…!」

 

 一見すると、互角のように見えたが…。

 

輝火「俺にここまでついてくるとはな。だが、俺の速さは冥闘士一だ!まだまだスピードを上げられるぞ!!」

 

一輝「何ッ!?」

 

 輝火はさらにスピードを上げると、これまで互角だった状況が一変し、輝火が優勢になった。

 

一輝「ぐはっ!奴のスピードはアリシア以上だ…!」

 

輝火「腹立たしい、いくら貴様を殴り続けても腹立たしいままだ!このまま貴様を灰にしてやる!コロナブラスト!!」

 

 黒炎の火球に一輝は呑み込まれてしまった。

 

一輝「ぐあああああっ!!」

 

未来「一輝さん!」

 

瞬「兄さ~~ん!!」

 

 輝火は仕留めたと思ったが、聖衣が灰になって地面に膝をついていたものの、一輝はまだ生きていた。

 

輝火「不死鳥とだけあってしぶとさも弟以上か。だが、貴様の身を守る聖衣は灰となった!今度こそ貴様も灰にしてやる!コロナブラスト!!」

 

 再び一輝に向けて輝火はコロナブラストを放ち、また一輝は火球に呑み込まれた。

 

翼「一輝!」

 

輝火「ふっ、今度こそフェニックスは灰となって死んだな。次は」

 

???「笑止!輝火、お前は何か勘違いしていないか?」

 

 声がしたのと共に黒炎は赤い炎へと変わり、炎の中から一輝が聖衣を纏った状態で歩いてきた。

 

輝火「な、何だと!?なぜ貴様は生きている!?それにその聖衣、俺が灰にしたはずの聖衣が蘇ったとでもいうのか!?」

 

一輝「聖闘士に同じ技は二度も通じぬ。これは常識!そして、不死鳥は…炎の中から蘇る!俺の小宇宙が燃え続ける限り、何度でも!」

 

輝火「何度でも蘇る聖衣だと!?おのれぇ!フェニックス、貴様は絶対に殺す!殺す!」

 

 更に激怒して輝火は殴りかかったが、さっきと違って一輝は見切っていた。

 

輝火「何ッ!?」

 

一輝「輝火、お前のスピードは見せてもらった。輝火、お前を倒すにはその上をいけばいいだけの事だ!」

 

 そう言って、一輝は輝火の顔面にパンチを打ち込んだ。

 

輝火「ぐはっ!」

 

一輝「輝火、お前のその強烈な憎悪、その顔、全てを拒絶するかのような黒い炎、本当に昔の俺を鏡で見ているような気分だ」

 

輝火「何だと!?」

 

一輝「俺は昔、瞬と同じぐらい大切な人を失い、そのショックで全てを恨み、憎み、弟にさえ拳を向けた…。だが、星矢達の友情が、瞬の兄弟愛が、憎しみで凍てついた惰弱な俺を叩きのめし、立ち直らせてくれたのだ。お前のその強烈な憎悪は過去に大切な人を失ったが故のものではないのか?」

 

 一輝の指摘に輝火は魔星に目覚める前、弟の翠と共に過ごしていた日々とその翠が自ら命を絶ち、途方もない絶望に駆られた時を思い出した。

 

輝火「……下らん!下らん下らん!フェニックスは自分の経験で俺にシンパシーを感じているとでもいうのか!?」

 

一輝「ならば、お前の本心を暴いてやろう。鳳凰幻魔拳!」

 

 輝火は一輝の幻魔拳を叩き込まれた。

 

翼「出たぞ、鳳凰幻魔拳が!」

 

未来「精神を破壊して、全神経をズタズタに引き裂く、一輝さんの技…!」

 

輝火「ふん、そんな痛くも痒くもない技を受けたところで…」

 

 ところが、翠と一緒に過ごしていた日々が甦り、衝撃を受けた。

 

輝火「翠…?なぜ翠が…?うわあああっ!や、やめろ!この俺にそんな幻覚を見せるなぁあああっ!!」

 

 再び弟の翠と過ごしていた日々と翠が死んだ時を見せられるのに耐えられない輝火は自分の身体を傷つけ、幻魔拳の効果を消した。

 

一輝「自分の身体を傷つけて幻魔拳を打ち消したか。ほんの小手調べではあったが、やはりお前も大切な人を失っていたか…」

 

輝火「フェニックス…、よくも思い出したくない過去を思い出させてくれたな!!ぶっ殺す!!」

 

一輝「輝火よ、お前にはシンパシーを感じる。だからこそ、お前を大切な人の元へ送ってやろう!」

 

輝火「ほざけ!死ぬのは貴様だぁあああっ!!」

 

一輝「喰らえ、フェニックスの羽ばたきを!鳳翼天翔!!」

 

 フェニックスの羽ばたきで輝火は吹っ飛ばされた。

 

輝火「ぐあああああっ!!」

 

 吹っ飛ばされた輝火は赤い炎に焼かれ、そのまま車田落ちした。

 

未来「一輝さんが勝った!」

 

翼「ああ、さっきのは間違いなく…」

 

 しかし、輝火は立ち上がった。

 

未来「そんな!まだ立ち上がれるなんて…!」

 

輝火「…フェニックス、貴様のような奴はハーデス様を脅かす存在だ…!刺し違えてでも絶対に殺す!殺す!」

 

一輝「まだやるか!」

 

輝火「貴様に二度目が通じないように、俺も一度見た技は通じんぞ!今度は」

 

???「ハァーイ、ここでストップ!」

 

 戦いの中、杳馬が乱入した。

 

瞬「杳馬!」

 

輝火「邪魔をするな、メフィスト!フェニックスはこの俺の命に代えてでも」

 

杳馬「ベヌウのダンナ、熱くなりすぎだぜ。フェニックスと燃える戦いをやるのはもっと後なのに、ここで死んじまったら盛り上がらねーっつ~の!」

 

輝火「黙れ!邪魔をするのなら」

 

 ところが、杳馬は輝火の腹に強烈な膝蹴りを打ち込んだ。

 

輝火「ぐはっ!」

 

 膝蹴りを受けた輝火は気を失った。

 

杳馬「戦闘中悪いな、今回はお前らが命をかけて戦う時じゃねえ。その時が来たら、存分に戦っていいからさ。じゃあね~!」

 

 そう言って、杳馬はデュプリケーターで別の並行世界へ行った。

 

翼「杳馬め…、空気を読まずにどこにでも現れる…!」

 

瞬「一体、杳馬は何を企んでいるのだろう…?」

 

一輝「(輝火…、お前の憎悪と怒りに満ちた姿は間違いなく、昔の俺そのものだ…。それに…、お前の憎悪は手に取るようにわかる…。もしかすると、お前は…俺の前世の姿なのか…?)」

 

 杳馬が輝火と共に姿を消した先を一輝は見つめていた。そこへ、ナスターシャが来た。

 

ナスターシャ「冥闘士の撃退、ご苦労様でした。戦いが終わって休みたい時に申し訳ありませんが一輝、瞬、切歌の救援に行ってくれませんか?」

 

瞬「切歌の救援…?」

 

 

 

根城

 

 その頃、輝火に負けたショックで怒り心頭のヴラドの猛攻に切歌達は大苦戦していた。

 

ヴラド「うおおおおっ!!殺す、殺す、殺してやる~~~!!」

 

クリス「な、なんて攻撃の激しさなんだよ!」

 

響「反撃もまともにできない…」

 

切歌「くっ…。調、マリア、セレナ、もう少しの辛抱デスよ…。今あたしが、あいつの魂を刈り取って」

 

ヴラド「殺す殺す殺す!!」

 

 絶唱を使おうとしても、ヴラドの猛攻でできなかった。

 

クルースニク『よせ、暁!』

 

切歌「他に方法はないんデス!調達を助けるためには、こいつを倒すしかないんデスよ。例え…あたしの命に代えてでも!」

 

ヴラド「邪魔だあ~~っ!死ね、死ね、死ね~~~っ!!!」

 

 プライドを打ち砕かれたヴラドは理性がなく、最早、輝火への憎悪と怒りに任せて殺戮を行う事しかできなかった。

 

切歌「全然隙がないデス…」

 

クルースニク「絶唱を使うな!」

 

切歌「うるさいデス!あたしには、命に代えてでもあいつを倒さなければいけない理由があるんデス!大切な家族のためなら、この命!くれてやったって全然惜しくないデス!それは、あいつに一族を滅ぼされたクルースニクさんだって、知ってるはずデスよ!」

 

クルースニク「ああ…確かに、俺も過去にこの命を捨てて奴を討った…。しかし、思念だけとなった俺に残ったのは、後悔だけだった。大切な者がいるなら、尚更その命の使い方を間違えるな!お前の家族にとっても、お前は大切な者のはずだ!」

 

切歌「あたし…も…」

 

クルースニク「大切な者が消えた世界では、誰も笑えないんだ!お前の家族が、お前が死んで喜ぶと思うのか?」

 

響「そうだよ!マリアさんだって、セレナちゃんだって、調ちゃんだって!何よりも、切歌ちゃんが無事に帰ってくるのを待ってるはずだよ!」

 

切歌「あ、あたしは…」

 

クルースニク「暁、ヴァンパイアを倒すのに必要なのは」

 

ヴラド「亡霊如きがもう喋るな~~~っ!!」

 

 ヴラドの攻撃でクルースニクは消えてしまった。

 

切歌「あ…あああ…、あたしは…(あたしは、みんなに笑っていてほしい。あたしが死んでも、調達が悲しむのは一刻デス。少しでも時間が経てば…笑うようになってくれるはずデス。だから、あの手紙も…、少しでも悲しみが和らげれればって…。…本当にそうデス?調達は…、笑ってくれるデスか?)」

 

???『ふっ、切歌は最初から勝つ事を放棄したのか?』

 

 頭に響いてきた声は、小宇宙で遠くから話しかけている一輝であった。

 

切歌「一輝!」

 

一輝『切歌、刺し違えてでもというのは勝つ事を放棄した奴がやる事。それをやろうとするお前は…戦う前から敵に負けた惰弱な奴だ!』

 

切歌「またあたしを惰弱とバカにして!」

 

一輝『それが嫌なら、何としてもヴァンパイアとやらに勝ち、生きて帰ってみせろ!それができなければ、お前は戦う前からヴァンパイアに負けた惰弱なお調子者だ!』

 

 刺し違えようとする切歌をバカにした事を言った一輝だが、これは切歌を生きて帰らせるための一輝なりの優しさであった。

 

切歌「どこまでもあたしをバカにして…!(響さんやクリス先輩の今の状態ではS2CAはダメデスし、絶唱は…ダメ、デス…。それじゃ、調達が笑えなくなってしまって、一輝の言う惰弱な奴と認めた事になるデス…)」

 

 ふと、切歌はクルースニクが消えた先にある銀の弾丸を見つけた。

 

切歌「(あれは…銀の弾丸…。クルースニクさんが消えて、銀の弾丸に戻ったデスか…?)」

 

 出発する前、切歌はナスターシャに言われた事を思い出した。

 

切歌「(聖遺物と聖遺物の反発…。奏さんのブリーシンガメンみたいに…!)先輩方、あたしに命を預けてくれるデスか!」

 

クリス「何か思いついたみたいだな…」

 

響「勿論だよ!」

 

クリス「ああ…後輩を支えるのは先輩の役目って決まってんだよ!」

 

切歌「ありがとうデス!」

 

ヴラド「うおおおおっ!!いい加減にくたばれ、くたばれ、くたばれ~~っ!!」

 

 ヴラドの猛攻に晒される中、切歌は銀の弾丸を手にした。

 

切歌「クルースニクさん…あたしに力を貸してほしいデス!」

 

ヴラド「そんなガラクタで」

 

 ところが、切歌に異変が起こった。

 

切歌「ううう…ああああーっ!!」

 

響「あれは、聖遺物の暴走…?」

 

クリス「そうか、イガリマと銀の弾丸か!」

 

響「それって、まさか…奏さんの時みたいな?」

 

クリス「ああ…ぶっつけであれをやろうってのか!」

 

響「切歌ちゃん…」

 

ヴラド「くたばれ、くたばれ、くたばれ~~っ!!」

 

 最早、怒りと憎悪の赴くがままに動くヴラドは切歌を攻撃しようとしたが、響とクリスが立ちはだかった。

 

クリス「あいつに手を出したいなら、先にあたしらを倒してからにしてもらおうか!」

 

響「切歌ちゃんがあれを制御するまで…私達が時間を稼ぐんだ!」

 

ヴラド「邪魔だ!死ね、死ね~~っ!!」

 

 

 

???

 

 切歌は聖遺物同士の反発に苦しんでいた。

 

切歌「ああああーっ!」

 

切歌の心『憎いデス。あたし達に戦いを押し付けた大人達が…、あたし達を実験動物みたいに扱って利用した人達が!滅びればいいデス!こんな世界なんて、何もかも!』

 

切歌「だ…ダメ、デスよ…。あたしはそんな事…望んでない…デス…。あたしは、世界を…みんなを、守りたいんデス…」

 

切歌の心『消えてしまいたいほど辛い思いをしたのにデスか?怯えて、縮こまって、目を閉じて、耳を塞いで、ただ震えていただけのあたしが?この世界のすべてを拒絶していたあたしが、それを言うデスか?』

 

切歌「そ、それでも…あたしは出会ったデスよ。かけがえのないものに…大切な家族に!」

 

切歌の心『それはただの家族ごっこデス。それは望んでも手に入らなかった物を、代わりのオモチャで満足してるだけの子供デス』

 

切歌「そ…そんな事はないデスよ。マリアは、セレナは…そして調は!あたしにとって血の繋がった家族以上の…本当の家族デス!」

 

切歌の心『そう思い込みたいだけデス』

 

切歌「確かに、思い込みかも知れないデス。他人の本当の気持ちは、見えないデスから…」

 

切歌の心『そうデス!』

 

切歌「でも…それでも!自分の気持ちだけは裏切れないデス!思い込みだってなんだって…。それはあたしの大切な想いデス!それを人は『願い』って言うんデスよ!」

 

切歌の心『願い…』

 

切歌「そうデス…。あたしはみんなの元に帰りたい…。もう一度、調の笑顔が見たいんデス!だから…あたしに…力を貸してほしいデス…。ヴァンパイアに勝つための…、みんなの元に、生きて帰るための力を!」

 

 今度は目の前にクルースニクが現れた。

 

クルースニク「よく生への道を選んでくれた、暁」

 

切歌「クルースニクさん…」

 

クルースニク「ヴァンパイアと違い、俺達は不死じゃない。だからこそ、命を捨てずに、生きて帰らなければならない。生きて、不死なる者達に対抗する知識を、技術を、そして何より心を、伝え、繋いでいかなければ…命に限りある人間は、いつかヴァンパイアに負けてしまう。奴を倒す事ができるのは、日の光でも、十字架でも、銀の弾丸でもない。人が生きようとする力、生きようと最後まで諦めない心だ。なのに…俺達の戦い方は間違っていた。だからこそ、俺達は滅びた。だが…お前は、間違えずに進んでくれた。お前こそ、真のヴァンパイアハンターにふさわしい」

 

切歌「それは…先輩達が…、一輝が…、それにクルースニクさんが、止めてくれたからデスよ」

 

クルースニク「それはよかった…」

 

切歌「でも…これが制御できないと…帰れないデス。あいつを倒して、調達の所に…帰りたいんデス。なのに…身体が…引き裂かれるみたいデス…。それに気を抜くと、暗闇に飲み込まれそうで…」

 

クルースニク「ならば、それは俺が何とかしよう。出来の悪いヴァンパイアハンターの…、先輩からの、贈り物だ」

 

 ある異変が起こった。

 

切歌「あれ…?さっきまでの破壊衝動が…嘘みたいに収まっていくデス…」

 

クルースニク「さあ…今こそ、暁の名を示す時!その力を解き放て!」

 

切歌「わかったデス!一緒に戦うデスよ!」

 

 

 

根城

 

 響とクリスはヴラドの猛攻に晒されていた。もっとも、ヴラドは輝火との戦いに負けて大火傷を負っていたため、倒せずとも怯ませるぐらいはできたが。

 

ヴラド「ぬあああああっ!!我の邪魔をするなぁああっ、死ねぇええええっ!!」

 

 ヴラドは2人を吹っ飛ばした。

 

ヴラド「黒い炎の不死鳥め…、殺す、殺してやる~~~っ!!」

 

 そんな時、眩い光が放たれた。

 

ヴラド「な、何だ!?この光は!?目障りだ!どこが発生源だ!?」

 

 制御に成功し、新たな力を得た切歌が戻ってきた。

 

切歌「待たせたデスよ、先輩達…!」

 

響「切歌ちゃん、やったんだね…」

 

クリス「ったく、世話焼かせやがって。あとは任せたからな…」

 

切歌「了解デス!」

 

ヴラド「それは…その光は!忌まわしい、日の光…!目障りだ、途方もなく目障りだ!!」

 

切歌「覚悟するデスよ!偉大な先輩ハンターや先輩装者の…。そして今もお前に苦しめられてるみんなの想い…あたしが全部、お前にぶつけてやるデス!そして…」

 

 切歌は遺書を破り捨てた。

 

切歌「みんなで家族のところに帰るんデス!」

 

 ヴラドは切歌と交戦したが、輝火との戦いの傷が癒えておらず、逆に切歌に一方的に蹂躙されていた。

 

ヴラド「おのれぇえええええっ!!我が三度もゴミのように蹂躙されるなど、認めんぞぉおおおっ!!」

 

 そんな時、ヴラドの頭部をある閃光が貫通した。閃光が貫通した後、ヴラドの目の前に輝火がいたのであった。

 

ヴラド「黒炎の不死鳥め!貴様を殺してやる~~っ!!」

 

輝火「死ぬのは貴様だ!俺の炎で燃え尽きてしまえ!コロナブラスト!」

 

ヴラド「ぬわあああああっ!!」

 

 ヴラドはまたしても燃やされたが、輝火も含め、これは全て幻覚であった。

 

切歌「これで…止めデース!!」

 

 幻覚で錯乱している中、ヴラドは切歌に頭から真っ二つに両断された。

 

ヴラド「ぬわあああああっ!!奴を殺せぬまま…、我が滅びるというのかぁああっ!!こんなのは認めん、認めんぞぉおおおおっ!!」

 

 輝火によってプライドを完全に打ち砕かれ、切歌によってヴラドは完全に消滅したのであった。

 

切歌「これで全部、終わった…デス…」

 

 切歌はギアの装着を解除した。

 

クルースニク『見事やり遂げたな、暁』

 

切歌「銀の弾丸から…声が…」

 

クルースニク『まさからヴラドを完全に消滅させるとはな。我が一族が為し得なかった事を、お前が…。流石は当代のヴァンパイアハンターだ』

 

切歌「クルースニクさんや先輩達が力を貸してくれたおかげデス」

 

クルースニク『時代を超えてこの戦いに携われた事を感謝する。そして何より、お前という良き友に会えた事もな。もし、俺の力が必要な事があれば、いつでも言ってくれ』

 

切歌「ありがとうデス」

 

クルースニク『では、また会おう、暁。わが友よ…』

 

切歌「勿論デス…。それまで、おやすみなさいデス」

 

 ちょうどその時、一輝と瞬が来た。

 

一輝「よくやったな、切歌。ヴァンパイアを完全消滅させる事ができたのは見事だ。ヴァンパイアが完全に消滅する前に幻魔拳を打ち込んで地獄を見せたがな」

 

切歌「一輝、瞬!」

 

瞬「僕が来た時点でマリアさん達は賢者の石で治療したから、もう大丈夫だよ。ヴァンパイアを倒したから、ロンドンの人達も助かったよ」

 

切歌「瞬…、ありがとうデス…!」

 

 切歌は帰ろうと思ったが、ふらついたために一輝が背負った。

 

一輝「生きて帰るためにヴァンパイアを倒した褒美だ。俺が研究所までお前を背負って送ってやろう」

 

切歌「一輝も、ありがとうデス…!」

 

瞬「さあ、響もクリスも帰ろう!」

 

クリス「そうだな」

 

 

 

 

 一同は帰る事となった。

 

響「遅れたのは、研究所に冥闘士が現れたからなんですか!?」

 

瞬「うん。輝火という冥闘士はどうやら冥王ハーデスが降臨する際に邪魔な者達の排除を行っていたようなんだ」

 

一輝「それで、マリア達を賢者の石による荒治療を行った際の小宇宙に奴は気付き、瞬が危機に陥ったから俺は駆け付け、奴を撃退した」

 

クリス「ほんと、輝火って奴がヴラドと手を組んでなくてよかったぞ…。ヴァンパイアだけでなく、冥闘士もいたらお手上げだったからな…」

 

一輝「それは事実だな」

 

切歌「ところで、先輩達はマギウスとかいう秘密結社が関わる魔法少女の世界の事件で遅れたそうデスけど、そんなに凄い組織だったんデスか…?」

 

クリス「ま、色々とな…」

 

響「清十郎さんと静香ちゃん達時女一族や師匠も加わらないとどうにもならなかった大事件だったんだよ…」

 

クリス「だが、マギウスはぶっ潰れて何とかなったけどな…」

 

 そんな時、太陽が昇る時刻となった。

 

瞬「太陽だ…」

 

一輝「日の出は綺麗なものだな、切歌」

 

 しかし、一輝が背負っている切歌はいつの間にか寝てしまっていた。

 

響「寝ちゃってるね…」

 

瞬「まともに寝ていなかったようだし、マリアさん達の無事がわかって緊張の糸が切れて、ぐっすり寝ちゃったんだと思う」

 

一輝「そのまま俺が研究所へ運び、ベットに寝かせてやろう」

 

 研究所へ進む一同だった。

 

 

 

研究所

 

 賢者の石で元気になったマリア達は外で切歌達の帰りを待っていた。ちょうどそこへ、一輝達が帰ってきた。

 

マリア「一輝、切歌は…?」

 

一輝「俺が背負ってる。安心していつの間にか寝てしまったようだ」

 

セレナ「一輝さんや瞬さんも来てたなんて、驚きでした」

 

瞬「調、切歌が起きる時間を見計らってご飯でも作ろうか」

 

調「うん」

 

 そのまま一輝は寝ている切歌を研究所のベットに寝かせた。切歌が帰ってきた事に一同は喜び、ナスターシャも微笑んだのであった。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は一輝と輝火の戦いと、ヴラドとの決着を描きました。
今小説の銀弾の軌跡編はヴラドとの戦いよりも輝火との戦いに力を入れて執筆したため、ヴラドの扱いがぞんざいになっています。
ロストキャンバスの冥闘士を出すなら、一輝と輝火の戦いをやってみようと思い、銀弾の軌跡編に輝火を第三勢力として出し、巡り巡って一輝と戦うのに繋げました。
輝火はどう見ても一輝の前世としか思えないので、今小説では明確に一輝の前世の姿と位置付けています。
一輝は輝火との不死鳥同士の激戦をし、刺し違えてでもヴラドを倒そうとする切歌に一輝なりの激励で生きて帰る決心をさせるという、大きな見せ場を作りました。一輝が切歌に対し、刺し違える事を『勝つ事を放棄した奴がやる事』というシーンがありますが、これは映画の真紅の少年伝説でサガが星矢に対して同じような事を言ったので、それを挿入してみました。
これで銀弾の軌跡編は終わり、次は他の並行世界と違って半年ものズレが生じている設定にした魔法少女世界が舞台の神浜サマーバケーション編となります。
その時に響達が遅れた原因であるマギウス事件がほんの少しですが描かれる他、アニメ版ジャイアントロボのある集団を意識したトンデモ超人軍団も現れます。
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