セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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20話 大暴走!

 

 響の事で気分が落ち着かないのか、弦十郎は氷河と組手をしていた。

 

氷河「響の事で気分が落ち着かないのか?」

 

弦十郎「ああ、そうさ。こんな状況が続いてたら、気が参っちまうからな。だから、身体を動かして気分転換をしたいんだ!お前達聖闘士相手なら、俺も全力を出して思いっきり体を動かせるからな!」

 

氷河「俺も落ち着かなかった所だ。付き合ってくれて感謝するぞ!」

 

 これはあくまでも気分転換のための運動なのだが、一般人から見れば明らかにアクション映画顔負けの格闘戦も同然であった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 元の世界の響は安眠していた。

 

切歌「よく寝てるデスね…」

 

調「こうして手を握ってるのが効いてるのかな?」

 

紫龍「さっきまでうなされていたからな」

 

調「あっちは…大丈夫かな?」

 

沙織「大丈夫です。星矢と未来さんだけでなく、マリアさんやクリスさんもついているのですから」

 

切歌「うん…そうデスね」

 

調「……はい」

 

 そんな雰囲気を壊すかのように、突如として響の目が赤くなり、暴れ出した。

 

響「!?あああああっ!」

 

調「きゃあっ!?」

 

切歌「わっ!?どうしたデスか!?」

 

響「うううっ、あああああっ!!」

 

翼「錯乱しているのか?」

 

沙織「(これは…暴走の時と同じ…!)」

 

紫龍「いや、あまりにも強烈な負の感情が向こうの世界の響から流れて込んでいるようだ!」

 

翼「何だと!?」

 

瞬「とにかく、今は押さえつけなきゃ!」

 

切歌「は、はいデス!」

 

調「しっかりしてください!」

 

 紫龍と瞬が中心となって暴れる響を押さえつけた。

 

 

 

公園(並行世界)

 

 負の感情が爆発して響は暴走した挙句、ゴールドカルマノイズを取り込んでしまった。

 

響「ガアアアアッ!!」

 

未来「響!正気に戻って!」

 

 暴走した響は敵味方の区別もつかず、未来を攻撃した。

 

未来「うっ!」

 

響「ガアアアアーーッ!!」

 

未来「(カルマノイズの呪いを吸収してそんな姿に…)」

 

響「ぐるるる…ぐあああああっ!」

 

未来「響、意識をしっかり持って!」

 

 しかし、暴走した響には届いていなかった。

 

未来「響…絶対、助けるから!」

 

 暴走した響を助けるために戦う決意を固めた未来であった。その構図はフロンティア事変の際、一発攻撃を受けた事でウェルのダイレクトフィードバックシステムの制御も受け付けなくなってクリス以外の人間を見境なく襲い、特にウェルと響を最優先で殺そうとする謎の暴走をした未来と、それを止めて救おうとした響の立場が逆転したものであった。そして、暴走した響の拳が容赦なく未来に向けられたのであった。

 

未来「うっ…!」

 

 響の素早い動きと拳や蹴りを未来は扇で防いだり、何とかよけたりするので精一杯だった。その間にも響の猛攻で押されていた。

 

未来「あああああっ!」

 

 パンチをまともに受けてしまい、未来は吹っ飛ばされた。

 

未来「はぁ…、はぁ…、はぁ…(とにかく、大人しくさせないと…。ギアの力に振り回されてるのなら…、ギア自体を無効化するか、意識を奪えば…。上手くできるかな…?ううん…できるかじゃない。響のために、やるしかない!)響!」

 

 攻撃はあっさりかわされ、次にどうすれば大人しくさせる事ができるのか考える暇を与えないほど、響は次の攻撃を仕掛けてきた。

 

未来「(失敗、した…。動きが速すぎて当たらない…。このままじゃ…)あっ!」

 

 未来の目前にまで攻撃が迫ったが、ある人物が響の攻撃を受け止めてくれた。

 

未来「星矢さん!」

 

星矢「未来、遅くなってごめん!それよりも、この響の状態は何だ!?」

 

未来「ゴールドカルマノイズと戦っている最中に響が暴走して、ゴールドカルマノイズを…」

 

星矢「(響の小宇宙が邪悪なものになったのも、カルマノイズが関係していたのか!?)」

 

 そう考えている間にも、響は一旦離れてから、また攻撃を仕掛けた。しかし、またしても星矢に受け止められたのであった。

 

未来「星矢さんは女の人はフィーネのような極悪人でないと殴れないと聞いています。大丈夫なんですか?」

 

星矢「確かに俺は女の人は極悪人以外は殴れない。でも、攻撃を受け止めて未来の盾になるぐらいはできる!」

 

 暴走した響は星矢に猛攻を仕掛けたが、光速はおろか、マッハにさえ届いていない響の攻撃は星矢からすればスローモーションの中のスローモーションに過ぎず、全ての攻撃を受け止められていた。フロンティア事変の時でも未来の攻撃を涼しい顔で簡単に受け止めていたが、その時の未来より数段危険極まりない暴走響の攻撃でさえも容易く受け止めていた。

 

星矢「響、お前の拳はそんな破壊のために使うものじゃない!その拳は誰かと手を繋ぐため、そして俺達聖闘士と同じように守りたいものを護るために振るうものだ!決して破壊のためだけに使ってはいけない!」

 

 フェミニストであるために攻撃は一切しないものの、すべての攻撃を軽々と受け止める星矢の姿に響は苛立ち、攻撃の方法を変えたが、星矢には軽々とかわされていた。

 

星矢「響、自分の心の闇に呑まれるな!お前が心の闇の赴くがままに動けば、お前は本当に大切なものを自分の手でなくしてしまう事になるんだぞ!心の闇に負けるな!」

 

 渾身の響の一撃を受けとめ、星矢は響に呼びかけた。

 

未来「(凄い…、響が全く攻撃を当てる事ができない…。これが、黄金聖闘士の力…)」

 

星矢「未来、俺は女の人を殴れない!だから、俺が響を受け止めている間に攻撃するんだ!」

 

未来「(そうだった!見とれてちゃいけない!星矢さんの言った通り、今がチャンスだ!)たあああああっ!」

 

 星矢が響の拳を受け止めて動きを止めている間に、未来は扇で響に一撃を加えた。すると、響の暴走は止まり、元に戻ったのであった。

 

未来「よかった、響…。元に戻ったのね」

 

響「ううっ…」

 

 しかし、響は倒れてしまった。

 

未来「響、どうしたの?しっかりして!」

 

星矢「急いで運ぶぞ!」

 

 行こうとした途端、星矢は何かに反応した。

 

未来「どうしたんですか?」

 

星矢「いや、何でもない。気のせいだ…(誰かが俺を見てるようだ…。誰かが…)」

 

 星矢を見ていたのは一輝と瞬に会った謎の女であった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 並行世界の響の暴走が止まったのと同時に、響も大人しくなった。

 

切歌「…お、治まったデス?」

 

調「そうみたい。呼吸も落ち着いてるし…」

 

紫龍「向こうの響の暴走が止まったのだろうな」

 

翼「しかし、この状態になるとは…」

 

切歌「心配デス…」

 

調「うん、心配だよ…」

 

瞬「(この様子は僕の不調の時よりも深刻になってて、尋常じゃない…。僕と響の不調は、向こうの僕と響の精神が同調したせいで起こってしまったのが原因だけど…、向こうでは恐ろしい事態が起こっているに違いない…!)」

 

 自分も当事者であるが故、瞬は並行世界で恐ろしい事が起こっている事を響の異変を通して察していた。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 戦いが終わった星矢達は本部に帰還した。

 

マリア「それで、翼の容態は…」

 

弦十郎「瞬の応急処置もあって一命は取り留めたが…絶唱の反動により、心身に深刻なダメージを受けてしまった。瞬の小宇宙による応急処置で深刻な状態にならなかったとはいえ、当面は入院が必要だろう」

 

クリス「くっ…あたしらがついていながら…」

 

弦十郎「君達がついていたからこそ、これで済んだというべきだろう。翼1人では、ゴールドカルマノイズを倒した所で、その後現れたカルマノイズの大群や奴にとどめを刺されていたに違いあるまい」

 

マリア「後から現れたあの化け物…。あれは一体何?」

 

弦十郎「…あれはゴライアスと言って、永田町地下『記憶の遺跡』で保管されていた、自立稼働型の完全聖遺物だ」

 

マリア「ゴライアス…?旧約聖書の『第一サムエル記』にある、英雄ダビデと戦い倒された巨人、ゴリアテの事?」

 

弦十郎「そうだ。米国より研究のために譲り受けて、先日永田町に移送した代物だったのだが…」

 

マリア「そう言えば…私達が来たばかりの時、そのような事を言ってたような…」

 

弦十郎「ああ。奴は幼体の状態で記憶の遺跡に保管されていたのだが…、君達とゴールドカルマノイズの戦いで高まったフォニックゲインを受けて活性化、成体へと進化してしまったようだ。まさか地表での戦いのフォニックゲインが、記憶の遺跡内部に保管されていたゴライアスにまで影響を及ぼすとはな…」

 

マリア「あれは翼の絶唱で極限まで高まったフォニックゲインが影響した結果かも知れない。流石に計算外の出来事だわ」

 

弦十郎「いや…あらゆる局面を想定しなければならない立場だというのに、このザマだ…」

 

クリス「うだうだ後悔してても始まらないだろ。それより、これからどうするかじゃねーのか?」

 

弦十郎「そうだったな…すまない」

 

 弦十郎の動揺はマリア達も察していた。

 

マリア「(翼が倒れた事で、見た目以上に動揺してるみたいね…)」

 

クリス「(オッサンも人間ってこったな…)」

 

弦十郎「とにかく、だ。ゴライアスは起動してしまった。我々はこの新たな脅威にも対処しなくてはならない。ゴライアスは自立稼働型のため、いつまた現れるかわからない。しかし翼は絶唱を使った影響で当分は絶対安静だ…。この世界の者ではない君達にこんな危険な事を頼むのは非常に気が引けるが…頼む、力を貸してほしい」

 

星矢「今更、水臭い事なんていう必要はない。俺達は元々そのつもりだ!」

 

マリア「ええ。私達はそのために来たのだから」

 

未来「…私もできるだけの事をしたいと思ってます」

 

マリア「それに、翼が倒れた責任の一端は私達にあるわ。…だから、私達にやらせてほしい」

 

弦十郎「4人とも…ありがとう、恩に着る」

 

マリア「それで、あの完全聖遺物について分かっている事を教えてもらえるかしら」

 

弦十郎「ゴライアスは、伝説では朝夕に現れてイスラエル軍を蹂躙し、夜の訪れと共にその力が弱まったという。今までの研究でも、麻と夕方に活発化するが、夜になると休眠に近い状態となるのが確認されている。この性質を突く事ができれば、あるいは…」

 

クリス「要するに、夜には弱るって事か。ならその時を狙って仕掛けりゃいい」

 

マリア「問題は、相手がそうさせてくれるか、ね」

 

弦十郎「…ああ、その通りだ」

 

クリス「どういう事だ?」

 

マリア「日没を迎えると、この前みたいに地中へと逃げられる可能性が高いという事よ。いつ現れて、いつ消えるかは向こうに主導権がある。都合よく逃げずに夜までいてくれるとは思えないわ」

 

クリス「ちっ…それじゃ意味ないって事かよ」

 

弦十郎「どこかで有効活用できるかもわからん。一応、念頭に置いておいてくれ」

 

マリア「了解」

 

未来「あの…響の具合は…?」

 

弦十郎「彼女については、暴走の後遺症も、目立った外傷も特には見受けられなかったとの報告だ」

 

未来「……よかった…」

 

弦十郎「だが、精密検査を行う前に意識を取り戻し、気付いた時にはもぬけの空でな…」

 

星矢「何?それじゃあ、もうここにはいないじゃねえか!」

 

弦十郎「すまん。スタッフが目を離したわずかな隙に、そのまま出て行ってしまったようだ」

 

未来「響…」

 

弦十郎「ともあれ、星矢達の活躍もあって何十体ものカルマノイズの撃退には成功したものの、新たにゴライアスという問題も増えてしまったのが現状だ。カルマノイズにしても、一輝たちの話では発生源があるそうだから、そこを潰さなければ新たな個体が現れるだろう。君達には当分は不自由を強いてしまうが…」

 

クリス「さっきも言ったろ。あたしらに任せとけっての」

 

弦十郎「ああ、頼りにさせてもらう。すまないが何かあった時、すぐに動けるよう待機していてほしい。…だが、事は我々の世界の問題だ。君達に頼るだけではなく、我々二課もできる限りの事はするつもりだ。さしあたって…これは直接的には関係ある話ではないのだが…小日向未来君について、報告が上がってきた」

 

未来「えっ?私…ですか?」

 

弦十郎「いや、こちらの世界の彼女についての報告だ」

 

未来「こっちの私…」

 

星矢「こっちの未来はどうなってるんだ?」

 

弦十郎「心配するな、彼女はこの世界でも健在だ。響君と関係があると君達に聞いた後、彼女の過去について調べ直し、その名前を発見した。小日向未来君…響君の同級生であり、ライブ事変の以前、響君がリディアンに進学する前の幼馴染との事だ」

 

未来「リディアンに進学する前って…」

 

弦十郎「こちらの小日向未来君は、リディアンには進学していない。ライブ事変の直後、両親の都合で転校していた…」

 

星矢「だから、この世界の響の傍に未来がいなかったのか…!」

 

弦十郎「ああ。響君がリディアンに進学した事も、もちろん装者となった事も知るはずがない。…恐らくは響君がライブ事変後に味わった、謂れのない中傷や、それに起因する地獄のような日々についても」

 

未来「響…だから『誰も助けてくれない』だなんて…」

 

星矢「それで、どこにいるのかわかったのか?」

 

弦十郎「ああ、何とか見つけ出す事に成功した。ただ、まだこちらから接触はしていない」

 

クリス「何でだよ?あいつの事教えてやればいいんじゃないか?」

 

弦十郎「幼馴染…とはいってもな。離れてもう、かなり経っている。こちらの事情に巻き込むのはどうだろうか…。それに…流石にこれだけの年月が経っていては、響君の事を忘れている可能性も…」

 

未来「いえ、そんな事は絶対にありません」

 

弦十郎「未来……?」

 

未来「私が響を忘れる事なんてないです」

 

星矢「未来の友達想いは俺が保証する。何しろ、友のためなら無茶をするもんだからな」

 

未来「星矢さん…」

 

弦十郎「…そうか、すまなかったな。ひとまず、彼女の事は機関の監視下においておく。どうするかは響君の状況を見つつ、また改めて考えよう」

 

未来「わかりました…」

 

 待機と言われ、星矢達は部屋を出た。

 

クリス「それで、待機って言われたけど、どうする?」

 

マリア「こっちでの日課でもあるし、少し訓練をしようかしら」

 

未来「私もお願いします。もっと神獣鏡を上手く使えるようにならないと…。響がまた暴走したら止められるように…。ううん、暴走しなくて済むように、護れるくらいに」

 

星矢「あんまり気負い過ぎるなよ。俺達もいるんだからな」

 

未来「…うん、わかってる(響と約束したんだもの…)」

 

クリス「そうか。わかってるんなら、いいけどよ…。ま、そういう事ならあたしも手伝ってやらぁ」

 

未来「ありがとう。やっぱりクリスは優しいね」

 

クリス「や、優しいとかそんなんじゃねー!あ、あたしはただ…」

 

星矢「さっさと訓練に入るぞ」

 

 マリア達は訓練を始め、しばらくして一区切りした。

 

マリア「ふう…この辺で一休みしましょうか」

 

クリス「そうだな。なあ、大丈夫か?かなりハードにやってたけど…」

 

未来「大丈夫。それより、もっと頑張らないと…。もう少しだけ付き合ってもらえるかな?」

 

星矢「ここからは俺が付き合おう。女の子に攻撃はできないけどな。けど、一旦休憩だ」

 

未来「はい」

 

クリス「ところで、さっきの話だけどさ…。やっぱり、こっちにもお前がいたんだな」

 

未来「うん…そうみたいだね。でも今の響の傍にはいられてないんだよね…」

 

マリア「親の仕事の都合じゃ、仕方ないでしょう」

 

星矢「いつだって子供は大人に振り回されるんだよ。俺なんか、姉さんと引き離されて光政に引き取られたんだからな…」

 

未来「(そう言えば、星矢さんは聖闘士の修業に行く前にお姉さんと引き離されたって言ってた…)」

 

星矢「でも、俺は引き離されても姉さんに会いたいという気持ちは消えなかった。きっと、こっちの世界の未来も同じ心境じゃないのか?」

 

未来「私も星矢さんと同じ事を思ってました。だから、響にもそれをわかってほしい。響は、独りなんかじゃないんだって…」

 

 

 

市街地(並行世界)

 

 それから待機の状態は続き、未来は星矢と共に買い物をしていた。

 

未来「待機もしばらく続きそうだし。少し身の周りの物、揃えておかないと…」

 

星矢「俺も護衛で付き合うぞ。沙織さんに未来の事を頼まれてるし、こういった女の子を狙う輩も出てくるからな」

 

未来「星矢さんが護衛だと、とても安心します」

 

星矢「なーに、ウェルみたいなクソ野郎が出たら、ペガサス流星拳やアトミックサンダーボルトでぶっ飛ばしてやるまでだ!」

 

未来「こ、光速拳は…」

 

 星矢にとって、これまで見てきた聖遺物関連の敵の中で一番印象が悪く、嫌っているのウェルであった。実際、ウェルは星矢を怒らせる度にペガサス流星拳やアトミックサンダーボルトでタコ殴りにされ、全身の骨を粉々にされるという報いを受けた。さらにその果てには、黒幕に見捨てられて左腕を潰されて精神を破壊された挙句、大火傷を負わされるという因果応報を受ける事となった。歩いていると、響を見かけた。

 

未来「あれは…響?」

 

 未来と星矢は響が人助けしている所を目の当たりにした。

 

未来「(荷物を持ってあげて、お婆さんの歩幅に合わせて…人助け、してるんだ…)」

 

星矢「(やっぱり、響は響だ)」

 

 2人は響を見守り、老人を送っていく所を見ていた。

 

未来「お疲れ様。はい、飲み物」

 

響「…いつからいたの?」

 

星矢「結構前からさ。あのお婆さん、感謝してたぞ」

 

響「…関係ない。あんなところでウロウロされたら邪魔だっただけ。それより、何の用?用がないなら…」

 

老人「ひゃああっ!?化け物ーー!!」

 

未来「今の声は…さっきのお婆さん!?」

 

 老人の悲鳴を聞いた星矢は目にも止まらぬ速さでその場へ向かった。

 

響「は、速い!!」

 

弦十郎『未来君、星矢!君達のすぐ傍でノイズの反応を検知した!済まないが急行してくれ!』

 

未来「ノイズが?」

 

 急いで響は老人が通り去って行った方へ向かった。

 

未来「…あ、待って響!私も行く!」

 

 急行する2人はギアを纏って到着したものの、そこには老人はいなかった。

 

未来「さっきのお婆さんは…?」

 

 しかも、老人が持っていた風呂敷があった。

 

響「これ…は…?」

 

未来「さっきの…お婆さんの風呂敷…そんな…」

 

響「ううっ…お前らあああああっ!」

 

未来「落ち着いて、響!」

 

響「うるさい!私に指図」

 

 ところが、ノイズ達は閃光が走った途端、あっけなく全滅した。

 

響「これは…?」

 

 すると、黄金聖衣を纏った星矢が老人を抱えたまま、空から降りてきた。

 

未来「星矢さん!お婆さんを助けてくれたんですね!?」

 

星矢「ああ。お婆さんの悲鳴を聞いて、一足先に来て助けたんだ」

 

老人「あれあれ。さっきのお嬢さんじゃないかい」

 

響「え…?」

 

老人「さっきはびっくりしたよ。あの、ノイズとかいうんだっけ?オバケが出てきてね。もう、腰抜かすかと思ったよ。そんで、今度は音より速く走ってきたいい男のお兄さんに助けてもらったんだよ。その金色の鎧は孫が見たら大喜びしそうなぐらいかっこいいじゃないか!」

 

星矢「いやぁ、それ程でも…」

 

響「…そっか」

 

老人「音より速く走るお兄さんに助けられなかったら、あたしゃ今頃どうなってたかねぇ…」

 

響「星矢さんが…、助けた…?」

 

老人「お嬢ちゃん、あんたも無事でよかったよ」

 

響「はい、これ…」

 

 響は老人の風呂敷を渡した。

 

老人「ああ、私の荷物。拾ってくれたのかい?ありがとうねえ」

 

響「それじゃ…」

 

老人「気を付けて帰るんだよぉ」

 

 老人に見送られて響は帰った。

 

響「…よかった、本当に。でも…(あのお婆さんは助けられた。助けてくれる人がいた。…なのに!)」

 

 誰も助けてくれなかったが故に自分に苛立っていた。

 

響「どうして…どうして私には!」

 

 しかし、響は自分自身に違和感を感じていた。

 

響「…気持ち悪い…。何なの…この、胸のむかつきは…」

 

 その頃、未来と星矢は…。

 

未来「(お婆さんに荷物を返す時…響、少しだけ笑ってた…。やっぱり響は…)」

 

 一方、星矢は響にある違和感を感じていた。

 

星矢「(暴走が止まっても響の小宇宙はそれ程でもないのだが、邪悪なままだ…。何か、起きなければいいんだが…)」

 

 

 

セーフハウス

 

 待機の状態となって、数日経過した。

 

マリア「待機となってから数日。普通のノイズこそ現れたけど、カルマ化したノイズが現れる気配は一向にないわね…」

 

星矢「発生源は一輝と瞬が探しているが、いまだに見つからないらしい」

 

クリス「あのでかいのも出てこないしな…。ったく、モグラじゃねーんだぞ…」

 

マリア「ゴライアスね。…ねえ、思ったんだけど、私達の世界にゴライアスはいるのかしら?」

 

未来「どういう事ですか?」

 

マリア「並行世界はどこかで違う可能性が選択された世界。だから類似する点は多い。こちらのゴライアスは起動してしまって、捕捉ができない。けれど、私達の世界にもいるなら…」

 

未来「休眠状態のそれを調べて捕捉する方法も見つけれれる…?」

 

クリス「いい考えじゃねーか。このまま待ち続けてるより、よっぽど性に合ってる!」

 

マリア「…いるかどうかはわからないけどね。聖遺物関連は並行世界とも特に差異が大きいみたいだし」

 

クリス「なんにしても、一度戻ってS.O.N.Gで聞けばわかるだろ」

 

未来「…思ったんですけど、ゴライアスの件は、ギャラルホルンのアラートとは関係ないんでしょうか?」

 

マリア「脅威といえば脅威だけど、どうなのかしらね。こればっかりはわからないわ」

 

星矢「俺としちゃ、カルマノイズとその発生源がアラートに関係してるんじゃないかって思うんだ」

 

未来「そう言えば、カルマノイズが新たに現れたのも、その発生源が関係していると言ってましたね」

 

星矢「だったら、発生源がある限り、カルマノイズはどんどん湧いてくる。そうなったら、大変な事になるぞ」

 

マリア「念のため、一度戻りましょう」

 

クリス「向こうのあいつの様子も知っておきたいしな。案外、もうけろっとしてるかも知れねーし」

 

星矢「そいつはあり得ないな。ここの響の心境が変わらなきゃ、俺達の世界の響は元気にならない。ここの瞬の心が救われてようやく俺達の世界の瞬が元気になったのを見ただろ?」

 

マリア「確かにそうね」

 

星矢「俺は響の事もあるから、この世界に残ってあいつが無茶しないようにしておく」

 

未来「星矢さん、私達が戻ってくるまで響の事をお願いします」

 

星矢「ああ、任しとけ!」

 

 並行世界の響の事を星矢に任せ、マリア達は一旦元の世界に帰る事にした。

 

未来「(どこにいても、響は響だってわかったから。だから、きっと…大丈夫)」

 

 

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は暴走した響が未来に襲い掛かるのと星矢の乱入を描きました。
今小説のアイデア元となったロストキャンバスとシンフォギアの小説ではウェルが真の黒幕にプライドをズタズタにされて見捨てられるという、報いを受けるのが印象に残ったため、今小説でも未来に1発攻撃を受けると暴走する洗脳を施し、ウェルを利用するだけ利用し、最後は見捨てて粛清したフロンティア事変の真の黒幕を後で出します。
次の話は響がカルマノイズを吸収した影響が表面化します。

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