セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

21 / 198
21話 溢れる破壊衝動

???

 

 並行世界の響は自分の家でこれまで味わった事のない苦しみに襲われていた。

 

響「(…胸が苦しい、熱い…。痛いよ…星矢さん…。…違う、誰かなんていないんだ…。どんなに近くにいても、みんないなくなる…)」

 

 そんな中、響は未来と朝の支度をしている夢を見たのであった。

 

響「!?はぁ、はぁ…。また、夢…?(なんで…並行世界から来たとか言ってた、あの子に会ったから?どうしてこんな夢を…何度も)…だからって、関係ない。どうせ、私は独りなんだから…」

 

 並行世界の響の身体にも異変が起こっていた。その異変は、元の世界の響と同じ異変であり、沙織の危惧が的中していた。

 

響「まただ…これは何?石…金属…?(…胸から剥がれ落ちる石…段々、増えてる気がする。胸の痛みに比例して…)」

 

 

 

荒野

 

 その頃、元の世界ではノイズが大量発生しており、翼達はその対応に追われていた。

 

翼「これだけのノイズが現れるとは…。向こうの4人は大丈夫だろうか…」

 

切歌「今は向こうの心配よりこっちの心配デス…。紫龍達も別の地点のノイズ退治でいないし、かなりキツくなってきてるデスよ…」

 

調「それでも…やるしかないよ。切ちゃん、頑張ろう?」

 

切歌「もちろんデス…けど、いっそエクスドライブならただのノイズなんて一掃できるのに…」

 

翼「ないものねだりをしても仕方ない。私達にできるのは、ただ自らの全力を尽くすのみだ!」

 

 その後も戦闘は続き、翼達の体力は尽きようとしていた。

 

切歌「も、もうダメデス…!」

 

調「私も…、動けなくなってきた…!」

 

翼「それは私も同じだ…。だが、私達がやらねば…」

 

???「今のノイズと戦う力も残っていないお前達では俺達の邪魔だ。だから、とっとと帰って寝ていろ!」

 

 突然、声がしたためにその方を向くと、そこには紫龍達と一輝がいた。

 

翼「一輝、それに紫龍達も!」

 

切歌「瞬が元気になったから、どこかへ行ってたんじゃないデスか!?」

 

一輝「ふっ、たまたま通りかかっただけだ」

 

瞬「君達は本当にここまでよく頑張ったよ。だから、ここからは僕達に任せて今はゆっくり休むんだ」

 

翼「だが…」

 

沙織『翼さん、あなた達は苦しい戦いの中、本当によく頑張りました。この場は紫龍達に任せ、撤収してゆっくり休んでください』

 

 一輝達や沙織に言われ、翼達はその後を一輝達に任せて撤収した。

 

氷河「星矢やマリア達も向こうで頑張っているんだ」

 

紫龍「翼達が限界になった以上、今度は俺達がノイズを倒す!」

 

 装者を遥かに凌駕する黄金聖闘士2人と黄金クラスの青銅聖闘士2人の前にはノイズなどただの塵芥も同然であった。結局、あっさりとノイズは全滅した。

 

弦十郎『よくやった、お前達。これでノイズは全滅した』

 

紫龍「では、これより帰還します」

 

 紫龍達は帰る事にした。

 

瞬「兄さん、僕が元気になってから帰ってきた星矢の話によれば、今回繋がった並行世界の僕と兄さんは守護星座が逆になってたんだ」

 

一輝「という事は…、俺がアンドロメダで瞬がフェニックスなのか!?」

 

 並行世界では守護星座が逆になっていたという事実には一輝も驚愕した。

 

紫龍「(話は聞いたが、にわかには信じがたいな…)」

 

氷河「(一輝にアンドロメダは似合わなさそうだし、かといって瞬にフェニックスは似合ってるとも言い難いからな…)」

 

瞬「それに、僕の悪夢と兄さんのおかしな夢の正体はその並行世界の僕と兄さんの精神が同調したせいで、そこの僕と兄さんのこれまでの経験などが流れ込んだせいなんだ」

 

一輝「何だと?そうだとすれば、並行世界の俺はアンドロメダ島へ行き、瞬はデスクイーン島へ行った事になるぞ!」

 

 まさか並行世界では守護星座だけでなく、修行地まで逆になっていた事にまたしても一輝は驚愕したのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その後、一輝は再びいつもの単独行動をとり、紫龍達が戻ったのと同時にマリア達が帰ってきた。

 

弦十郎「よく戻ってきたな、3人とも」

 

エルフナイン「ご無事で何よりです」

 

沙織「星矢はどうしたのですか?」

 

未来「星矢さんは向こうの響の事が気になるので、残っています」

 

沙織「そうですか」

 

マリア「それより、こっちはどんな状況?」

 

クリス「なあ…やけに空気がピリピリしてねーか?」

 

未来「翼さん達もいませんし…」

 

 そこへ、紫龍達が入ってきた。

 

紫龍「それは、数日前からこっちでノイズが大量発生して、連戦で3人とも深刻なレベルで疲労が溜まり、今は療養中だ」

 

氷河「その間、俺達がノイズ殲滅を担当する事となった」

 

未来「大丈夫ですか!?」

 

瞬「大丈夫だよ。さっきも紫龍が言った通り、疲れが溜まり過ぎただけなんだ。3人とも1日ゆっくり休めば元気になるよ」

 

未来「よかった…」

 

クリス「やれやれ。ちょうどいい時に戻ってきたわけだ」

 

マリア「ええ。紫龍達がいなかったら、危なかったわね」

 

未来「それでその…響の容態は?」

 

エルフナイン「たびたび発作が起きて暴れ出すような状況です。ひどい時には鎮静剤を投与して抑えています」

 

未来「そんな…。…あの、私様子を見てきます!」

 

 未来は響の様子を見に行った。

 

マリア「行っちゃったわね…。…あの子の事は任せましょう。それで、ギャラルホルンのアラートは?」

 

弦十郎「以前、収まっていない。いや、むしろひどくなっているようだ…」

 

クリス「酷くなってるって…」

 

マリア「やはり、カルマノイズの発生源を潰していないのが原因なのかしら?」

 

紫龍「発生源って、どういう事だ?」

 

マリア「向こうの一輝の話では、カルマノイズは自然発生するんじゃなくて、その発生源から生み出されるらしいのよ」

 

クリス「おまけに、向こうでは大量発生したんだ」

 

氷河「カルマノイズが大量発生しただと!?」

 

マリア「ええ。でも、星矢達の前では簡単に全滅したわ」

 

瞬「それはよかった…」

 

クリス「それに、アラートにはデカブツも関係してるだろうよ」

 

弦十郎「デカブツ…?向こうで何があったんだ…?」

 

マリア「これから説明するわ。完全聖遺物ゴライアス。この名前に聞き覚えは?」

 

 響の様子を見に行った未来だが、響の様子は並行世界に行く前よりやつれていた。

 

未来「響…、寝てるの…?(やつれてる…私が向こうへ行く前より、ずっと…。手…私の大好きな響の手…)絶対、助けるから…。だから…もう少しだけ、待ってて…」

 

 マリア達はゴライアスの情報を探ってみたものに、ないという結論になった。

 

クリス「それじゃあ、無駄足だったじゃねーか!」

 

エルフナイン「待ってください。今ある情報だけでも打開策は検討できると思います」

 

マリア「エルフナイン?」

 

 エルフナインはゴライアスは光量の変化で昼夜の区別をしているとマリア達に説明した。

 

マリア「…やってみる価値はありそうね…」

 

クリス「面白れぇ。だけど、そんな光なんてどう準備すりゃいいんだ?」

 

弦十郎「それは、向こうの二課に頼めばいい。二課なら、それくらいの融通は利かせられるはずだ」

 

マリア「そうね。…なら、行けるかも知れないわ」

 

クリス「よし!なら早速向こうに戻って、あのデカブツをやっつけに行くぞ!」

 

マリア「待って。そうしたら」

 

紫龍「そこは俺達に任せろ」

 

氷河「翼達が動けるようになるまでは俺達がノイズを掃討する」

 

瞬「だから、行っていいよ」

 

マリア「みんな…」

 

紫龍「それに、響の容態は深刻だ。俺達でも見てられない程にな…」

 

エルフナイン「…響さんの発作はだんだんと感覚が短く、そして激しくなってきています。それに比例して体力も低下、このままの状態が続いてしまうと、遠からず命の危険にも…」

 

クリス「マジかよ…」

 

マリア「わかったわ。すぐに向こうへ戻りましょう」

 

クリス「ああ、そうだな」

 

 すぐにマリア達は並行世界へ行く事にした。

 

 

 

公園(並行世界)

 

 一方、一輝と瞬は発生源探しを続けていた。

 

瞬「見つからないね…」

 

一輝「だが、必ず見つけ出してカルマノイズの発生を止めてやる!」

 

 そう言ってると、チェーンが反応した。そして、カルマノイズや蠍のような化け物が出てきた。

 

一輝「邪魔者か!」

 

 その頃、星矢はノイズ退治に向かっていた。

 

星矢「(何だか、沙織さんの言った事が本当になってきそうな気がしてきたぞ…!とにかく、響を可能な限り戦わないようにしなければ!)」

 

 ところが、星矢の道中をある人物が邪魔してきた。

 

???「待ちなさい、そこのあなた」

 

星矢「誰なんだ!?」

 

ベアトリーチェ「自己紹介がまだだったわね。私はベアトリーチェ」

 

星矢「君に構っている暇はない!さっさと」

 

ベアトリーチェ「あなたになくても私にはあるのよ。あなたは私の大事なあの子を仲間達と一緒に傷つけたじゃない。お陰であの子が受けた深い傷は完全に癒えるまで膨大な時間がかかるのよ!」

 

 ベアトリーチェは不機嫌そうに星矢にチクチク文句を言った。

 

星矢「あの子?知らんな」

 

ベアトリーチェ「単細胞のあなたに言っても無駄だったようね。だったら、ガンド達に消されなさい!」

 

 ベアトリーチェが扇子を閉じると、カルマノイズや蠍のような化け物が出てきた。

 

星矢「カルマノイズに見慣れない化け物が出てきたぞ!おい、その化け物の名前は何だ!?」

 

 気付いた時にはベアトリーチェはいなくなっていた。

 

星矢「何者かはわからんが、どうやらカルマノイズ大量発生にかかわっているのには間違いないようだ!行くぞ、化け物達!ペガサス流星拳!」

 

 光速拳の前にはカルマノイズや怪物はなすすべもなかった。あっという間に怪物達は全滅したのであった。

 

星矢「時間をとられちまったな…。急いで」

 

???「あなたがカオスビーストまで倒してしまったの?」

 

 またしても声をかけたのは、星矢を見ていた女だった。

 

星矢「君は?」

 

ミーナ「私はミーナ。ところで…、さっき出たガンドやカオスビーストは全部あなたがやっつけたの?」

 

星矢「そうだが…」

 

ミーナ「やはり、アテナの聖闘士、それも最高位の黄金聖闘士ともなればガンド、いえ、カルマノイズはおろか、カオスビーストさえも寄せ付けないのは流石ね」

 

星矢「ミーナさん、済まないけど、俺は今、急いでてゆっくり話ができないんだ!また今度な!」

 

 星矢は急いで現場へ向かった。

 

ミーナ「(カオスビーストさえ雑魚扱いなんて…、でも、カオスビーストを倒してくれたおかげで必要なあれも手に入れる事ができたし、あの聖闘士の言う通り、ゆっくり話をするのはまた今度にするわ)」

 

 急ぐ星矢の様子をベアトリーチェは不機嫌そうに見ていた。

 

ベアトリーチェ「ウロボロスのメンバーに奴等の事を調べさせてようやくわかったけど、アテナの聖闘士ははっきり言って今までにないほどの邪魔者よ。こうなれば、奴等にも匹敵する連中を見つけ出すしかなさそうね…」

 

 星矢達の対処を考えるベアトリーチェであった。

 

 

 

市街地(並行世界)

 

 ベアトリーチェに邪魔されて星矢は駆け付けるのが遅れてしまい、駆け付けた時にはノイズはいなくなっていた。

 

星矢「(敵に邪魔されて遅れたせいで響を戦わせてしまったか…)」

 

 響が苦しそうにしていたため、星矢は響をおぶって運ぶ事にした。

 

星矢「(やけに体温が高いな…!)」

 

響「星矢さん…。なんで…、私を家まで運んでくれるの…?」

 

星矢「苦しそうにしてる人を放っておけるかよ。それに、苦しいのなら俺に何か言ってみなよ。そうしたら、俺は力になるぜ」

 

 そうしている間にも、響の自宅に来た。

 

星矢「それじゃ、俺は帰るぞ」

 

 響を送迎した星矢は帰ったのであった。

 

響「(あの人の手、背中、とっても温かかった…)」

 

 帰っていく星矢の姿を響は見つめていたのであった。

 

 

 

???

 

 それから翌日、響は不思議な夢を見てしまい、跳ね起きた。

 

響「ぐっ…がっ、くぅぅ…はぁ、はぁ、はぁ…。酷い目覚め…(あれは、向こうの世界の私…?どうしてあんなに違うの?どうして笑っていられるの?どうして、私には誰も)」

 

 浸食による異変がより強くなりつつあった。

 

響「胸から石が…何なの?私の中から…?(何なの、これ…意味が分からないよ…。)」

 

 そして、更なる異変が起こっていた。

 

響「それに…胸のこの熱さ…(あの化け物と戦った時、熱くなって…戻らない…)おかしいよ…何もかも…(あの黒いノイズの感じは今はしない…だけど、まだ残ってる気がする…)」

 

 最早、響の心は不安で押し潰されそうだった。

 

響「自分の身体なのに訳がわからない事ばかり…。誰か、教えてよ…誰か、助けてよ……(独りは…怖いよ…)」

 

 不安に耐えきれず、響は泣き出してしまった。

 

響「(助けなんて…ない…。そうだ。今までだってそうだった…何を今さら…)どうせみんないなくなる。私だって…」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 そして、マリア達は戻ってきた。

 

星矢「戻ってきたか」

 

クリス「…ああ」

 

弦十郎「その様子だと、向こうの様子もあまりよくないようだな」

 

マリア「原因不明のノイズの大量発生と、立花響の重篤化…。こちらの異変を一刻も早く解消する必要が出てきたわ」

 

弦十郎「なるほど…」

 

マリア「こちらの様子はどう?」

 

弦十郎「昨日、響君がノイズを相手にしていた所、再びゴライアスが急襲してきた」

 

未来「響が?無事なんですか?」

 

星矢「ああ、無事だった。でも、何だか具合が悪そうにしてたけどな…」

 

クリス「星矢、お前は何してたんだ!?」

 

星矢「俺だってすぐに駆け付けようとしたんだが、カルマノイズやカオスビーストとかいう化け物の群れと戦って遅れてしまったんだ」

 

マリア「カオスビースト?聞きなれないわね」

 

星矢「実際に戦った俺に言わせれば、カオスビーストは装者じゃ手に負えない化け物だ」

 

弦十郎「ゴライアスの方はまた地面に潜って撤退したために、響君は事なきを得たんだ」

 

マリア「ゴライアスとカルマノイズの発生源を潰さない限り、異変は収束しないのかしら…」

 

星矢「それと、この世界の響の事もどうにかしないといけない」

 

未来「うん…」

 

マリア「ところで風鳴司令。ゴライアス対策の事で相談があるのだけど」

 

弦十郎「何…?」

 

 マリアはゴライアス対策の件を話した。

 

弦十郎「なるほど、ゴライアスの撤退を防ぐためにそんな手を…」

 

クリス「ああ。準備できるか?」

 

弦十郎「ふっ…任せておけ。そういう事なら、俺達二課の腕の見せ所だ」

 

マリア「お願いするわ」

 

 そんな折、ノイズ警報が鳴った。

 

星矢「ノイズか…」

 

弦十郎「早速だが…」

 

星矢「全部いう必要はねえよ。今から出撃する!」

 

あおい「待ってください!ノイズの反応が……凄い速さで減っていきます!」

 

マリア「何ですって!?」

 

あおい「波形パターンの照合完了!これは…」

 

弦十郎「ガングニール…響君か…」

 

 

 

市街地(並行世界)

 

 響によって、現れたノイズは全滅した。その直後に星矢達は駆け付けた。

 

響「はぁ、はぁはぁ…」

 

未来「響!」

 

クリス「全部お前が倒しちまったのか?」

 

マリア「(聖闘士でもないのにかなりの規模の反応だったのを、彼女一人で…)」

 

響「はぁ、はぁ…。見ればわかるでしょ」

 

未来「大丈夫?怪我はない?」

 

 未来は響に触ろうとしたが、響の体温はあまりにも高温であった。

 

未来「熱っ!?」

 

星矢「どうした?」

 

未来「すごい熱…」

 

星矢「熱だって…まさか!?」

 

未来「ガングニールの…浸食!?」

 

響「触らないで!」

 

 機嫌を悪くした響は帰ろうとした。

 

未来「待って!私と一緒に二課に来て!身体、ちゃんと診てもらわないとダメ!」

 

響「関係ない…放っておいて…」

 

 響は帰った。

 

星矢「(昨日、具合が悪そうだったのは薄々気付いてはいたけど、ガングニールの浸食だったか…)」

 

マリア「融合症例ね…。まさかこちらでも同じ事になるなんて…」

 

星矢「未来を連れて行く前に沙織さんもこういったのを予想していたからな」

 

未来「なんとかしないと…」

 

 

 

公園(並行世界)

 

 その晩、響は公園にいた。

 

響「ガングニールの、浸食…?それがこの熱さと関係あるの…?(浸食されたら、どうなるの…?わからないのは怖い…でも知ってしまったら、知ってしれがどうしようもないとわかってしまったら…、もっと怖いよ…)」

 

 そんな中、誰かの気配に気付いた。

 

響「誰!?」

 

 いたのは未来と星矢であった。

 

未来「ここにいたんだ」

 

響「またあなたなの?(なんで私、ほっとしてるんだろう…)」

 

星矢「何してたんだ?」

 

響「別に…ただ星を見てただけ」

 

未来「こっちの響も星を見るのが好きなのかな?だったら、星がきれいに見える場所を知ってるんだ。今度一緒に行こう」

 

響「…ちょっと、見てみたいかも」

 

未来「うん、なら約束しよう。きっと一緒に行くって」

 

響「…(約束…一緒に?しても、いいのかな…)ぐっ…ああああっ!?熱い…ぐうううっ!?」

 

未来「響!えっ!?」

 

星矢「(響の小宇宙がより邪悪なものになっている…)」

 

 突然苦しみ出した響からカルマノイズの黒い霧が噴き出した。

 

響「(殺さなきゃ…)」

 

未来「黒い…霧…?これは…(あの、カルマノイズと戦った時に見た…)」

 

響「(殺さなきゃ…)」

 

未来「響、しっかりして、響!」

 

響「!黙れええええっ!」

 

 突然、殺意を剥き出しにして叫んだが、すぐに我に返った。

 

未来「!?ひ、響…?」

 

響「あ…。…何でもない、とにかく私は行くから」

 

未来「待って、響!」

 

響「私に構わないで」

 

未来「そのままガングニールを使うと命に関わるかも知れないの。だから…ちゃんと調べてもらおう?それに、今の…」

 

響「うるさい!」

 

 響はそのまま帰った。

 

未来「響…」

 

星矢「未来、これは沙織さんの予想以上に深刻な事態になってるかも知れないな…」

 

 星矢の思っていた通り、響の身体は予想以上に深刻になっていたのであった。

 

 

 

セーフハウス

 

 翌日、星矢達は集まっていた。

 

クリス「あの発熱の様子…やっぱりガングニールとの融合、だよな…」

 

星矢「ああ。あの頃の響もあんな風に異常な熱を出していたからな…」

 

マリア「融合症例…私達と戦ってた時に起こっていた症状よね。資料では見たけど…」

 

クリス「そういや、そんな時期だったっけな」

 

星矢「S2CAなどが使えないから、こんな時期にずれ込んだと思うけどな」

 

未来「響を助けるには、どうすればいいだろう…」

 

クリス「融合を進ませないためには、とにかく戦わせない事だろ」

 

星矢「そいつは響の性格上、無理だろうな。もうこうなれば沙織さんの言った最終手段、未来の神獣鏡でガングニールを分解する以外に方法がない」

 

未来「神獣鏡…」

 

マリア「元の世界の響を助けているという事実を考えれば、沙織お嬢様の言った通り」

 

未来「…それなんですけど、もしかしたら響は…元の世界の響とは違う症状かも知れません」

 

マリア「…どういう事?何かあったの?」

 

星矢「響の体から、カルマノイズのような黒い霧が噴き出すのを見たんだ。まぁ、その前から俺は響の小宇宙が邪悪なものに変化してるのを感じてたんだが…」

 

クリス「は?なんだよそりゃ!」

 

マリア「詳しく聞かせて」

 

未来「…多分、原因は前に倒したカルマノイズなんですけど…」

 

 未来は響が暴走した際にゴールドカルマノイズを吸収した事を教えた。

 

マリア「…そんな事があったの。暴走した立花響が、カルマノイズを吸収とはね…」

 

未来「最初は見間違いかと思ったんですけど、この前、響からあの黒い霧が出ているのを見て、そうじゃなかったって…」

 

クリス「くそっ!何であいつばっかりこんな目に遭ってんだよ…」

 

マリア「彼女の体がどうなっているかはわからないけど、それが本当だとしたら、神獣鏡での攻撃がどう作用するか…。もしカルマノイズとも融合してしまっているとしたら、下手をすれば彼女の体ごと消滅させかねないわね」

 

未来「そんな…それじゃ響をどうやって!」

 

星矢「落ち着け、未来!最後まで希望を捨ててはダメだ!」

 

未来「星矢さん…」

 

マリア「とにかく、まずはメディカルチェックを受けさせて、状態を把握する事が先決よ」

 

クリス「…そんな悠長な事言ってられるのかよ?」

 

マリア「こちらの彼女の症状がガングニールの浸食なら、極力使わないようにさせれば進行は遅くなるはず…でしょう?」

 

未来「…はい、前の時はそう聞きました」

 

マリア「なら、メディカルチェックを行ってからでも遅くはないわ」

 

クリス「問題はどうやってあいつを引っ張ってくるかだな…。力づくで抵抗されても厄介だし…」

 

マリア「それこそギアを纏われたら本末転倒よ。穏便に説得して連れてくるしかないでしょうね」

 

クリス「…そうなると、やっぱりお前達に頼むしかないよな」

 

未来「うん…わかってる。私と星矢さんに任せてほしい」

 

クリス「頼むぞ」

 

マリア「あと一つの問題は、アラートの原因ね」

 

星矢「俺としては、カルマノイズの発生源や響が原因じゃないかって思ってる」

 

マリア「決めつけはよくないけど、原因と思われるものを一つ一つ潰していくしかなさそうね…」

 

 そう言ってると、通信が入った。

 

弦十郎『ノイズの反応を検知した。転送したポイントに急行してもらえるか?』

 

マリア「了解です」

 

 星矢達は現場へ向かおうとした。だが、星矢はミーナを見かけたのであった。

 

未来「星矢さん…?」

 

星矢「どうやら、俺に用がある奴がいるようだ。未来達は先に行っててくれ。用が済んだら俺もすぐに駆け付ける」

 

クリス「言ったからには用が済んだらすぐに来るんだぞ!」

 

 星矢はミーナの元に来た。

 

星矢「ミーナさん、何の用なんだ?」

 

ミーナ「あなた、名前は?」

 

星矢「俺は星矢。射手座の黄金聖闘士、サジタリアス星矢だ」

 

ミーナ「星矢というのね。あなたに話があって来たの」

 

星矢「話?」

 

ミーナ「ある怪物を倒すために、あなた達アテナの聖闘士と協力体制を築きたいのよ」

 

星矢「ある怪物を倒すために、協力したいだって?」

 

ミーナ「その怪物は並行世界を駆け巡り、星を喰らい尽くす化け物よ。あなた達の世界にも来た事があるわ」

 

星矢「俺達の世界にだって!?」

 

 その言葉を聞いた星矢は、5人の力を合わせて致命傷寸前のダメージを与えた怪物を思い出した。

 

星矢「あの化け物がその怪物なのか!?」

 

ミーナ「そうよ。でも、あなた達との協力の件はすぐに決めるわけじゃないわ。あの化け物も深い傷で長い間動けないだろうから、時間がある時にあなた達をまとめ上げるアテナともよく話し合った上で決めたいの。今日はそれを伝えに来たわ」

 

星矢「そうか。それじゃ、俺達は」

 

ミーナ「待ちなさい。もう一つ言いたい事があるわ」

 

星矢「何だ?」

 

ミーナ「この世界の立花響って子の事についてよ。私からはっきり言わせてもらうわ、あの子はもう助からない」

 

星矢「何で勝手にそう決めつけるんだ!?」

 

ミーナ「あの子は聖遺物の浸食がひどくなっている上、ガンドまでも取り込んでしまっている。本来だったら死んでてもおかしくない状態で、生きている事自体が不思議なの。だから、もう助からないわ」

 

星矢「何で助けようとする努力もしないで助からないと決めつけるんだ!?例えそう言われても俺と未来は響を助ける!」

 

ミーナ「そんなのは奇跡でも起きなきゃ無理よ!」

 

星矢「ならば、奇跡を起こしてやるまでだ!俺は今まで、どんな強敵が相手でも奇跡を起こして打ち勝ってきたんだ!だから、今回も未来と一緒に奇跡を起こして響を助ける!」

 

 そのまま星矢は現場へ向かった。

 

ミーナ「き、奇跡を起こさなきゃ助からない子を助けるために、奇跡を起こす!?なんて無謀な…」

 

 奇跡を起こすという途方もなく無謀な星矢の発言にミーナは衝撃を隠しきれなかった。しかし、星矢の言ったそれは決してただの無謀ではなく、今までの経験を踏まえた重みがある事が星矢の力強い眼差しでわかったのであった。

 

 

 

公園(並行世界)

 

 マリア達は現場へ向かったものの、しばらくして別のポイントでノイズ出現を聞いたため、未来がそこへ向かう事となった。

 

未来「…いた、響!」

 

 響はガングニールの浸食に苦しんでいた。

 

未来「なんでそんあに無茶するの!?」

 

響「あなたには関係ない。これは…私の戦いだから…」

 

未来「ダメ、響!それ以上ガングニールの力を使ったら浸食が…」

 

響「邪魔をしないで!このおぉぉーーーっ!!」

 

未来「響ーーーっ!」

 

 未来の制止も聞かず、響は戦い続けた。

 

響「はぁぁーーっ!!」

 

 ノイズを倒し終わったものの、負荷が祟って響は倒れてしまった。

 

未来「響ーーーっ!」

 

 響の身体から石が出たため、昨日の異様な熱もあったため、響のガングニールの浸食が激しくなっていた。

 

未来「その石は!?やっぱり…ガングニールの浸食…。お願い、もうギアを使わないで、私が響を」

 

 しかし、響は未来を振り払った。

 

響「助けるなんて嘘はいらない!誰も、私を助けてくれない!あなただって自分の世界の響が大事だから、そのついでで私に関わっているだけでしょ!?(そうだ、夢で見たあの光景…私がどんなに望んでも、どんなに欲しくても手に入らないあの日常!)」

 

 別の世界の自分の夢を見てしまった事で、響は望んでいても手に入らない日常を見てしまった事で心が不安定になっていた。

 

響「もうこれ以上、私に構わないで!(手に入らないのに、わかってるのに…期待なんてさせないで!)」

 

未来「私が響を放っておけるはずないでしょ!」

 

響「私は天あなたの響じゃない(あんな風に笑えない、あんな風に暮らせない。…だって、私には誰もいないんだから!)」

 

未来「関係ない、響は響だから!」

 

響「なら、あなたの響じゃないって証明してあげる…(そうだ、手に入らないなら、いっそ…)」

 

 響の負の感情の高まりに反応するかのように、カルマノイズの黒い霧が噴き出した。

 

未来「響…(あの、黒い霧が見える…あれは…響の感情に反応してるの?それなら…)なら、私は…響を止める!」

 

響「アームドギアがあるくらいで調子に乗らないで!」

 

未来「響はどうしてアームドギアを持っていないのか、考えた事はないの!?」

 

響「それがどうした!私はアームドギアなんかなくても、この手で何でも砕ける…壊せるんだ!」

 

未来「違うよ、響のその手は…」

 

響「そう、こうやって!立ちふさがる何もかもを砕くために!(そう、壊すんだ!目の前のこいつを!)」

 

 そこへ、ノイズが現れた。

 

響「な!?」

 

未来「ノイズが!?」

 

 ノイズは響の方へ突撃してきた。

 

未来「響、危ない!」

 

 咄嗟に未来は響を庇い、ノイズの攻撃を受けてしまった。

 

未来「くうっ!?」

 

響「(今!これでこいつを殺し!?)違う、止まれえええええっ!」

 

 破壊衝動に動かされ、響は未来を攻撃してしまった。

 

未来「きゃあああっ!!」

 

???「未来!!」

 

 そこへ、星矢が到着して吹っ飛ばされた未来をキャッチした。

 

響「星矢さん…。うぅ…違う、違う…。あたしは、こんな事がしたかったんじゃ…」

 

星矢「未来、すぐに俺が応急処置をするからな」

 

未来「星矢さん…。ひび、き…大丈夫、だった…?」

 

響「人の心配をしてる場合じゃないでしょ!?」

 

未来「よかった、響に…けが、なくて…」

 

 すぐに星矢は自身の小宇宙で未来の応急処置を行った。

 

響「(違う、どうして私は…こんな事しなくないのに、どうして殺せるだなんて、そんな恐ろしい事を…)ごめん…未来、ごめんなさい…」

 

星矢「やっと未来の名前を言ったようだな、響」

 

響「星矢さん、私は…」

 

星矢「今はそんな事を問い詰めている場合じゃない」

 

 ノイズが湧いてきていた。

 

響「性懲りもなく湧いて出て…。未来には指一本触れさせない…。みんな、この拳でバラバラに砕いてやる!」

 

 響は1人でノイズを全滅させた。今の響を刺激してはいけないと判断した星矢は手出ししなかった。

 

響「未来!しっかりして、未来!」

 

星矢「大丈夫だ。お前が戦っている間に応急処置は済んだ」

 

響「ありがとう、星矢さん…」

 

星矢「それと、お前に言っておく。心の闇に呑まれてはいけない。心の闇に呑まれればどうなるか、お前もよくわかっただろう?」

 

 星矢の言葉に響は自分の犯した過ちが理解できた。そして、未来が起きた。

 

未来「響…やっと名前、呼んでくれたね…」

 

響「けがは…星矢さんが治してくれたか…」

 

未来「でも、それより響が心配だよ」

 

響「何を…?」

 

未来「ガングニールの浸食は…ギアを使えば使うほど、進むの…」

 

響「なんでそんな事、あなたが…」

 

未来「もう1人の響がそうだったから、よく知ってるの…。あの時、どれだけ響が悩んでいたかも…。今、あなたがどれだけ苦しんでいるのかも…。だから、響にはちゃんとメディカルチェックを受けて…。無理をしないでほしいって思ってる」

 

星矢「俺からも頼む。未来はお前の事を心から心配してるから、並行世界までやってきたんだ」

 

 助けてくれた未来と夢に出てきた男にそっくりな星矢に言われては、響も断れなかった。

 

響「…ずるいよ。助けられて、そんな風にまで言われたら、逆らえないじゃない…」

 

 結局、響はメディカルチェックに行く事にした。




これで今回の話は終わりです。
今回はガングニールの浸食によって響の不調がさらに悪化していくのを描きました。
また、ギャラルホルン編に先駆けてミーナの再登場とベアトリーチェの本格的な登場を描きました。
次の話はカルマノイズの発生源が発見されます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。